(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114993
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】実装基板および実装方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240819BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
H05K13/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020402
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 進平
(72)【発明者】
【氏名】晴 孝志
(72)【発明者】
【氏名】三原 健太郎
【テーマコード(参考)】
5E353
5F044
【Fターム(参考)】
5E353BB03
5E353BC01
5E353EE02
5E353EE84
5E353EE86
5E353JJ02
5E353JJ21
5E353KK02
5E353KK14
5E353KK21
5E353KK24
5E353QQ12
5F044KK21
5F044PP17
(57)【要約】
【課題】 フェイスダウン実装で、チップ部品を透過する光を用いてチップ部品を実装基板に位置合わせして実装する際に、チップ認識マークと基板認識マークの両方をコントラスト高く認識できるようにすることができる実装基板およびこれを用いた実装方法を提供すること。
【解決手段】 基板認識マークを備え、前記基板認識マークと同じ面側に、前記基板認識マークに対する前記チップ認識マークが位置合わせされた状態において、少なくとも前記チップ認識マークを包含する形状で、前記チップ部品を透過する光を反射する反射領域を備えた実装基板およびこれを用いた実装方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置合わせ用のチップ認識マークを有するチップ部品を実装する実装基板であって、
基板認識マークを備え、
前記基板認識マークと同じ面側に、基板認識
少なくとも前記チップ認識マークを包含する形状で、前記チップ部品を透過する光を反射する反射領域を備えた実装基板。
【請求項2】
請求項1に記載の実装基板であって、前記反射領域は前記基板認識マークと重複せず、
前記基板認識マークは前記チップ部品を透過する光を反射する特徴を有する実装基板。
【請求項3】
請求項1に記載の実装基板であって、前記反射領域は前記基板認識マークも包含する形状で、前記チップ部品を透過する光に対する反射率が前記反射領域に比べて前記基板認識マーク部分で低い実装基板。
【請求項4】
請求項1から3に記載の実装基板にチップ部品を実装する実装方法であって、
前記チップ部品側から前記チップ部品を透過する波長を含む光を照射し、
前記チップ部品を透過する光に対する感度を有した撮像手段を用いて、前記チップ部品側から、前記基板認識マークと前記チップ認識マークを撮像して、それぞれの位置情報に基づき、前記実装基板と前記チップ部品の位置合わせを行った後に、前記チップ部品を前記実装基板に密着して実装する実装方法。
【請求項5】
請求項4に記載の実装方法であって、
前記チップ部品側から照射する光が780nmから2500nmの範囲内の波長を含む実装方法。
【請求項6】
請求項4に記載の実装方法であって、
前記チップ認識マークと前記基板認識マークの両方が前記撮像手段の被写界深度に入る状態まで接近させて前記位置合わせを行う実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチップ部品を実装する実装基板およびこれを用いた実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板等の実装基板に半導体チップ等のチップ部品を実装する一つの形態として、実装基板の電極面にチップ部品の電極面を対向させて実装するフェイスダウン実装がある。
【0003】
図10にはフェイスダウン実装を行う実装基板Sの例を示すが、実装基板Sに複数配された実装箇所SC個々にチップ部品を、電極面同士を対向させて接合する。この際、実装基板Sの個々の実装箇所SCに精度よくチップ部品を配置しないと、実装基板Sとチップ部品の電気的な接合が不完全となり、半導体装置の品質不良の原因となる。このため、実装基板Sの各実装箇所SCの位置指標となる基板認識マークASとして、基板認識第1マークAS1および基板認識第2マークAS2が
図10に示したように電極面側に設けてある。一方、チップ部品の電極面側にもチップ認識マークACとして、チップ認識第1マークAC1およびチップ認識第2マークAC2が設けてあり、
図11に示すような状態で、基板認識第1マークAS1とチップ認識第1マークAC1の位置関係および基板認識第2マークAS2とチップ認識第2マークAC2の位置関係から実装基板Sの実装箇所SCに対するチップ部品Cの(実装基板S面内方向における)相対位置が求まり、これを是正することで位置精度を高められる。
【0004】
従来、チップ認識マークACと基板認識マークASの相対位置を求めるのに際して、
図12に示すような、上下2視野カメラ500が用いられており、上下2視野カメラ500の上視野50Uがチップ認識第1マークAC1(またはチップ認識第2マークAC2)を視野に入れ、下視野50Dが基板認識第1マークAS1(または基板認識第2マークAS2)を視野にいれて撮像を行なっている。
【0005】
この上下2視野カメラ500を用いて、実装基板Sの実装箇所SCに対するチップ部品Cの(実装基板S面内方向における)相対位置を求め是正することにより、最大誤差数μm程度の実装が可能である。
【0006】
最大誤差数μmという数値は、所謂フリップチップ実装と言われるフェイスダウン実装において、チップ部品Cの電極としてハンダバンプを用いるような電極ピッチが100μm以上であれば十分であったが、Cuピラーバンプを用いるような電極ピッチが50μm強の場合には余裕がなく、更に高密度実装が進み電極ピッチが狭くなる現状において精度が不十分な用途もある。
【0007】
そこで、上下2視野カメラを用いて更なる高精度化を図っているが、
図12に示す状態において、実装基板Sの実装箇所SCに対してチップ部品Cを(実装基板S面内方向で)誤差1μm未満で位置合わせしても、実装段階の最大誤差が1μmを超えることがある。これは、
図12の状態からチップCが実装基板Sに向かって降下する際に、降下方向に僅かな傾きがあること等に起因している。このため、実装基板Sを保持する面に対する降下方向が垂直となるよう実装装置各部の加工精度や剛性を高めることで解決しようと試みているが、装置コストに影響が及ぶ。また、上下2視野カメラでは、上カメラと下カメラの光軸を合わせるのが難しく、相対ズレが発生するため、相対ズレの補正が必要である。
【0008】
一方において、近年、
図13に示すように、基板Sに実装箇所SCを僅かな隙間で配置する形態が登場している。このような形態では、
図13に示した基板認識マークASが実装箇所SCより外側にある様式と異なり、
図14に示すように基板認識マークASを実装箇所SC内に設けることになり、実装段階において基板認識マークASはチップ部品Cに覆われた状態となる。
【0009】
このような背景により、チップ部品Cを透過する光として近赤外光を用い、チップ部品Cを実装基板Sに極力接近させた状態でチップ認識マークACと基板認識マークASを撮像して両者の位置情報を得る手法が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近赤外光を用いて位置情報を得る手法は既にシリコンウェハ接合等で用いられており、
図15はシリコンウェハ同士を接合する際の位置合わせに用いられている装置構成の一例を示す。
図15に示す装置構成により、
図16(a)に示す下側ウェハの認識マークAWBと、
図16(b)に示す上側ウェハの認識マークAWTを、透過用光源720から発せられた近赤外光を(近赤外光に感度を有する)画像取込部50から観察することで、
図16(c)のように観測できるものである(例えば特許文献1)。
【0012】
しかし、
図17のように、実装基板Sに対してチップ部品Cを実装する形態に
図15と同様な装置構成で観察してもシリコンウェハの接合と同様な透過光による観測はできなかった。これは、実装基板S内に存在する内部配線CWが近赤外光を遮断するため、基板認識マークAS(およびチップ認識マークAC)が識別できないためである。また、実装基板を保持する基板ステージにヒーターを内蔵することが多いため、ヒーター下に光源を設けることもできない。
【0013】
そこで、
図18に示す実装装置1のように、チップ部品Cを保持するアタッチメントツール42の上側から、アタッチメントツール42およびチップ部品Cを透過する近赤外光を照射する反射用光源71を設け、チップ認識マークACと基板認識マークACで反射する画像を取得することを試みた。すなわち、
図19に断面図を示すように、チップ部品Cの上側から照射してアタッチメントツール42およびチップ部品Cを透過する波長を含む光を照射することで、(チップ部品Cを透過する光を反射する特性を有する)チップ認識マークACおよび基板認識マークASで反射させ、画像取込部50から取り込んで(チップ部品Cを透過する光に対して感度を有する)撮像手段により
図20に示すような画像を得られることを期待した。
図20において、IASは基板認識マークAS部分の画像、IACはチップ認識マークAC部分の画像、IFSは実装基板表面FS部分の画像であり、基板表面FS部分の画像IFSに対し基板認識マーク部分の画像IASおよびチップ認識マーク部分の画像IACのコントラストが高ければ、両認識マークの位置情報を精度高く求めることができる。
【0014】
しかし、実際には実装基板表面部分の画像IFSに対してチップ認識マーク部分の画像IACのコントラストを高くできないチップ部品Cがあった。この現象は、
図21に示すようにチップ認識マークACがチップ部品Cのバリア層BC上に設けられている場合に生じており、バリア層BCが(チップ部品Cを透過する波長の)光に対する反射率が低いことに起因し、
図22に示すような画像となりチップ認識マークAC部分を識別することが難しくなり、正確な位置情報も得にくくなる。
【0015】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、フェイスダウン実装で、チップ部品を透過する光を用いてチップ部品を実装基板に位置合わせして実装する際に、チップ認識マークと基板認識マークの両方をコントラスト高く認識できるようにすることができる実装基板およびこれを用いた実装方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
位置合わせ用のチップ認識マークを有するチップ部品を実装する実装基板であって、
基板認識マークを備え、
前記基板認識マークと同じ面側に、前記基板認識マークに対する前記チップ認識マークが位置合わせされた状態において、少なくとも前記チップ認識マークを包含する形状で、前記チップ部品を透過する光を反射する反射領域を備えた実装基板である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の実装基板であって、
前記反射領域は前記基板認識マークと重複せず、前記基板認識マークは前記チップ部品を透過する光を反射する特徴を有する実装基板である。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の実装基板であって、
前記反射領域は前記基板認識マークも包含する形状で、前記チップ部品を透過する光に対する反射率が前記反射領域に比べて前記基板認識マーク部分で低い実装基板である。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3に記載の実装基板にチップ部品を実装する実装方法であって、
前記チップ部品側から前記チップ部品を透過する波長を含む光を照射し、前記チップ部品を透過する光に対する感度を有した撮像手段を用いて、前記チップ部品側から、前記基板認識マークと前記チップ認識マークを撮像して、それぞれの位置情報に基づき、前記実装基板と前記チップ部品の位置合わせを行った後に、前記チップ部品を前記実装基板に密着して実装する実装方法である。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の実装方法であって、
前記チップ部品側から照射する光が780nmから2500nmの範囲内の波長を含む実装方法である。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の実装方法であって、
前記チップ認識マークと前記基板認識マークの両方が前記撮像手段の被写界深度に入る状態まで接近させて前記位置合わせを行う実装方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、フェイスダウン実装で、チップ部品を透過する光を用いてチップ部品を実装基板に位置合わせして実装する際に、比較的簡単な装置構成でチップ認識マークと基板認識マークの両方をコントラスト高く認識できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る実装基板全体の上面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る実装基板の基板認識マーク周辺を示した、(a)上面図であり、(b)断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る実装基板を用いてチップ認識マークと基板認識マークの画像を取得する状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る実装基板を用いて取得した、チップ認識マークと基板認識マークの画像を示す図である。
【
図5】チップ部品のチップ認識マーク周辺の断面図であり、(a)チップ認識マークが表面に露出した例、(b)チップ認識マーク上に膜が形成された例を示す。
【
図6】本発明の実施形態の変形例に係る実装基板の基板認識マーク周辺を示した、(a)上面図であり、(b)断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の変形例に係る実装基板を用いてチップ認識マークと基板認識マークの画像を取得する状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施形態の変形例に係る実装基板を用いて取得した、チップ認識マークと基板認識マークの画像を示す図である。
【
図9】本発明の実装基板全体にチップ部品の実装を行った後の上面図である。
【
図10】複数のチップ部品を実装する実装基板の個々のチップ部品を実装する実装箇所と個々の基板認識マークについて説明する図である。
【
図11】チップ部品を実装基板に実装する際の、チップ認識マークと基板認識マークが対向した状態を示す図である。
【
図12】チップ部品のチップ認識マークと実装基板の基板認識マークを対向させて、位置合わせを行なう従来例について説明する図である。
【
図13】複数のチップ部品を僅かな隙間で実装する実装基板の個々のチップ部品を実装する実装箇所と個々の基板認識マークについて説明する図である。
【
図14】複数のチップ部品を僅かな隙間で実装する際の、チップ認識マークと基板認識マークが対向した状態を示す図である。
【
図15】ウェハ接合に用いられている近赤外光透過を利用した位置合わせについて説明する図である。
【
図16】ウェハ接合の位置合わせに用いられる(a)下側ウェハの認識マークの形状例、(b)上側ウェハの認識マークの形状例、(c)位置合わせが出来た状態の上下の認識マークの透過画像を示す図である。
【
図17】近赤外光透過を利用した位置合わせを、内部配線のある実装基板へのチップ部品実装に適用する際の問題点を説明する図である。
【
図18】実装装置の一例を示すもので、位置合わせに際して近赤外線を用いる構成を示す図である。
【
図19】実装基板の基板認識マークとチップ部品のチップ認識マークで近赤外光を反射させて画像を取得するための構成を示すものである。
【
図20】実装基板の基板認識マークとチップ部品のチップ認識マークで近赤外光を反射させることで取得されることが期待される画像の例である。
【
図21】実装基板の基板認識マークとチップ部品のチップ認識マークで近赤外光を反射させて画像を取得するための構成を示すものであり、チップ部品のチップ認識マークがバリア層を介して設けられた例を示す図である。
【
図22】実装基板の基板認識マークとチップ部品のチップ認識マークで近赤外光を反射させることで得られる画像で、チップ部品のチップ認識マークがバリア層を介して設けられた場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、図を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る実装基板S全体を示す上面図であり、本発明の実装基板Sの具体的な特徴を
図2の拡大図に示している。
【0025】
図1における基板認識マークASは、
図13に示す基板認識第2マークAS2に相当する位置にあるが、
図2に示した特徴は基板認識第1マークAS1の位置についても同様であり、実装基板S全面の基板認識マークAS(基板認識第1マークAS1および基板認識第2マークAS2)に共通する。
【0026】
図2は基板認識マークAS周辺を示すもので、
図2(a)が上面図で
図2(b)が断面図である。
図2(a)において、基板認識マークASがリング形状で反射領域RSを囲った例を示しているがこれに限定されるものではなく、基板認識マークASの形状はチップ部品Cと実装基板Sの位置合わせに適したものであれば、任意の形状や大きさとすることができる。
【0027】
図2の基板認識マークASでは、チップ部品Cを透過する波長の光(例えば近赤外光)を反射する性質が基板表面FSに比べて大きく、同波長に対する反射率の差は30%以上必要で、50%以上であることが望ましい。
【0028】
図19および
図21に示した従来の実装基板Sの基板認識マークASと比較して、
図2示す本発明の実施形態の実装基板Sでは反射領域RSが形成されている。この反射領域RSは、
図2の基板認識マークASと同様に、チップ部品Cを透過する波長の光(例えば近赤外光)を反射する性質が基板表面FSに比べて大きく、同波長に対する反射率の差は30%以上必要で、50%以上であることが望ましい。なお、
図2における基板認識マークASと反射領域RSの材質は同じであっても良いが、異なっていても良い。
【0029】
反射領域RSは、少なくとも、チップ部品Cのチップ認識マークACを包含する形状を有しており、チップ部品Cを実装基板Sに位置合わせして実装した状態において、反射領域RS内にチップ認識マークAC全体が収まるように配置してある。
【0030】
図3は本発明の実装基板Sとチップ部品Cを位置あわせするために、基板認識マークASとチップ認識マークACを撮像して夫々の位置情報を取得する状態を示している。
図3において、光IRはチップ部品Cを透過する波長を有している。光IRに含まれチップ部品Cを透過する波長として780μm以上2500μm以下の範囲内の近赤外を想定しているが、これに限定されるものではなく、チップ部品Cを透過する波長でチップ部品Cの機能に有害でなければよい。また、画像取込部50は認識手段5の構成要素で、撮像される視野を定めるものであり、認識手段5を構成する撮像手段はチップ部品Cを透過する波長に対して感度を有している。
【0031】
図3において、アタッチメントツール42に保持されたチップ部品Cと基板Sの垂直(Z方向)距離が離れているように描いているが、実際は実装基板表面FSとチップ部品C(の下面)が認識手段5の被写界深度内に入るよう、接触しない範囲で極力接近させている。このため、基板認識マークASとチップ認識マークACを同時に撮像することができる。ここで、アタッチメントツール42はチップ部品Cを透過する波長の光に対して高い透過率を有し、反射率は低い材質によって形成されている。
【0032】
図4は、チップ部品Cを透過する波長の光により画像取込部50から得られる画像である。具体的には、照射した光IRのチップ部品Cを透過して実装基板Sの上面で反射して再度チップ部品Cを透過した成分と、チップ部品Cの内部(或いは下面)で反射した成分とが合わさったものの強度分布である。なお、チップ部品Cの上面やアタッチメントツール42(の上面および下面)で反射する成分もあるが、比較的弱く、画像取込部50から得られる画像全面で均一であるため、画像のコントラストには殆ど影響ない。
【0033】
図4において、IASは基板認識マークAS部分の画像、IACはチップ認識マークAC部分の画像、IFSは実装基板表面FS部分の画像に相当する。
【0034】
前述のとおり、チップ部品Cを透過する波長の光に対して、基板認識マークASと反射領域RSの反射率は、実装基板表面FSに比べて高い。このため、
図4において、実装基板表面部分の画像IFSに比べて、基板認識マーク部分の画像IASと反射領域部分の画像IRSは明るくなり、明瞭なコントラストが得られる。この結果、画像処理により、基板認識マークASの形状および位置情報を得ることができる。
【0035】
他方において、通常、チップ認識マークAC部分はチップ部品Cを透過する波長の光を透過し難い。このため、チップ部品Cを透過する波長の光であっても、チップ認識マークAC直下の反射領域RSに到達しない。このため、チップ認識マーク部分の画像IACは、チップ部品Cを透過してチップ認識マークACとの界面にあるバリア層BCで反射する光の強度となる。ここで、
図21および
図22で説明したように、チップ部品Cを透過する波長の光に対してバリア層BCの反射率は低い。このため、チップ部品Cを包含する形状の反射領域RSが直下にある場合、
図4に示すように反射領域部分の画像IRSの明るさとチップ認識マーク部分の画像IACの暗さのコントラストが高くなる。この結果、画像処理により、チップ認識マークACの形状および位置情報を得ることができる。
【0036】
基板認識マークASの形状および位置情報と、チップ認識マークACの形状および位置情報を高コントラストな画像から得ることにより、実装基板Sに対してチップ部品Cを高精度に位置合わせすることが可能になり、精密な実装が行える。
【0037】
なお、
図3においてチップ認識マークACが下面側(電極面側)に露出している形態を示しているが、必ずしも露出している(
図5(a))必要はなく、チップ認識マークACの(電極面側)表面がチップ部品Cを透過する光に対して透明性を有する膜で覆われていても良い(
図5(b))。具体的には、ハイブリッド接合用のチップ部品Cのように電極表面と同高さまで絶縁層が形成されるような形態において、チップ部品C本体を透過する光に対して透明性を有する絶縁層(例えばSiO2)が形成されていても
図4と同様な画像が得られる(以下の
図7の場合も同様)。
【0038】
ところで、反射領域RSはチップ認識マークACを包括する形状でないとチップ認識マークAC全体の形状を認識できなくなるが、
図2において反射領域RSが基板認識マークASに接近し過ぎるのは好ましくない。特に、反射領域RSが基板認識マークASと重複すると実装基板FS部分との反射率差によるコントラストを得ることができず、基板認識マークAS全体の形状が認識できなくなる。
【0039】
ただし、反射領域RSを基板認識マークASをも包含する形状に拡大して、チップ部品Cを透過する光に対する基板認識マークASの反射率を低くすることで、明暗差を付けることができる。具体的には本発明の実施形態の変形例として
図6から
図8を用いて説明する。
【0040】
図6は、本発明の実施形態の変形例に係る、基板認識マークAS周辺を示すもので、
図6(a)が上面図で
図6(b)が断面図である。
【0041】
図6において基板認識マークASは反射領域RS内に包含されている。また、基板認識マークASは、チップ部品Cを透過する波長の光に対する反射率が反射領域RSに比べて30%以上低いことが望ましく、実装基板表面FSと同等な反射率でもよい。
【0042】
図7は本発明の実装基板Sとチップ部品Cを位置あわせするために、基板認識マークASとチップ認識マークACを撮像して夫々の位置情報を取得する状態を示している。
図7において、光IRはチップ部品Cを透過する波長を有している。光IRに含まれチップ部品Cを透過する波長としては近赤外域を想定しているが、これに限定されるものではない。また、画像取込部50は認識手段5を構成要素で、撮像される視野を定めるものであり、認識手段5を構成する撮像手段はチップ部品Cを透過する波長に対して感度を有している。
【0043】
図7において、アタッチメントツール42に保持されたチップ部品Cと基板Sの垂直(Z方向)距離が離れているように描いているが、実際は実装基板表面FSとチップ部品C(の下面)が認識手段5の被写界深度内に入るよう、接触しない範囲で極力接近させている。このため、基板認識マークASとチップ認識マークACを同時に撮像することができる。ここで、アタッチメントツール42はチップ部品Cを透過する波長の光に対して高透過率と低反射率を有した材質によって形成されている。
【0044】
図8は、チップ部品Cを透過する波長の光により画像取込部50から得られる画像である。具体的には、照射した光IRがチップ部品Cを透過して実装基板Sの上面で反射して再度チップ部品Cを透過した成分と、チップ部品Cの内部(或いは下面)で反射した成分とが合わさったものの強度分布である。なお、チップ部品Cの上面とアタッチメントツール42(の上面および下面)で反射する成分もあるが、画像取込部50から得られる画像全面で均一であるため、画像のコントラストには殆ど影響ない。
【0045】
図8において、IASは基板認識マークAS部分の画像、IACはチップ認識マークAC部分の画像、IFSは実装基板表面FS部分の画像に相当する。
【0046】
チップ部品Cを透過する波長の光に対して、反射領域RSの反射率は、基板認識マークに比べて高い。このため、
図8において、基板認識マーク部分の画像IASに比べて反射領域部分の画像IRSは明るくなり、明瞭なコントラストが得られる。この結果、画像処理により、基板認識マークASの形状および位置情報を得ることができる。
【0047】
他方において、通常、チップ認識マークAC部分はチップ部品Cを透過する波長の光を透過し難い。このため、チップ部品Cを透過する波長の光であっても、チップ認識マークAC直下の反射領域RSに到達しない。このため、チップ認識マーク部分の画像IACは、チップ部品Cを透過してチップ認識マークACとの界面にあるバリア層BCで反射する光の強度となる。ここで、チップ部品Cを透過する波長の光に対してバリア層BCの反射率は低い。このため、チップ部品Cを包含する形状の反射領域RSが直下にある場合、
図8に示すように反射領域部分の画像IRSの明るさとチップ認識マーク部分の画像IACの暗さのコントラストが高い。この結果、画像処理により、チップ認識マークACの形状および位置情報を得ることができる。
【0048】
以上の本発明の実施形態の変形例においても、基板認識マークASの形状および位置情報と、チップ認識マークACの形状および位置情報を高コントラストな画像から得ることにより、実装基板Sに対してチップ部品Cを高精度に位置合わせすることが可能になり、精密な実装が行える。
【0049】
以上のように、本発明の実施形態および実施形態の変形例の実装基板Sを用いることで、チップ部品Cを接近させた状態で、チップ認識マークACと基板認識マークASの相対位置情報を正確に得ることができ、その後にチップ部品Cを密着させるまでの降下(Z方向)距離は僅かであるので、高精度な実装が可能となる。高精度な実装が可能となることいから、
図9のように、1枚の実装基板Sに多数の半導体チップCを僅かな間隔で高密度に実装することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 実装装置
2 基板ステージ
3 昇降手段
4 実装ヘッド
5 認識手段
6 チップ搬送手段
20 ステージ移動制御手段
21 X方向ステージ移動制御手段
22 Y方向ステージ移動制御手段
23 吸着テーブル
40 ヘッド本体
41 ヒーター部
42 アタッチメントツール
43 ツール位置制御手段
50 画像取込部
52 光路
53 撮像手段
60 搬送レール
61 チップスライダ
71 反射用光源
AC、AC1、AC2 チップ認識マーク
AS、AS1、AS2 基板認識マーク
BC バリア層
C チップ部品
FS 実装基板表面
RS 反射領域
S 実装基板
IAC チップ認識マーク部分の画像
IAS 基板認識マーク部分の画像
IFS 実装基板表面部分の画像
IRS 反射領域部分の画像