(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114999
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】カートリッジ用アンプへの電源供給システム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20240819BHJP
H03F 3/181 20060101ALI20240819BHJP
H04R 11/08 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H03F3/181
H04R11/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020421
(22)【出願日】2023-02-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】505422202
【氏名又は名称】有限会社オーディオデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100194180
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 豊博
(72)【発明者】
【氏名】大藤 武
【テーマコード(参考)】
5D220
5J500
【Fターム(参考)】
5D220BA30
5D220BB01
5J500AA02
5J500AC51
5J500AC92
5J500AF10
5J500AF14
5J500AH09
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH42
5J500AK01
5J500AQ04
5J500AQ06
5J500AS01
5J500AS05
5J500AT01
5J500LV07
5J500RU14
(57)【要約】
【課題】カートリッジ用アンプへ電源供給する電池をヘッドシェル内に設けないようにすることで、ノイズを低減し、ヘッドシェルの重量を軽減し、電源電圧の制約が無いように構成する。
【解決手段】レコードプレーヤ16のトーンアーム3と、当該トーンアームと着脱可能なプラグイン式のヘッドシェル2と、MC型カートリッジ10と、当該MC型カートリッジの近傍にアンプを備えたカートリッジ用アンプへの電源供給システムであって、前記ヘッドシェルに前記MC型カートリッジと前記アンプを設けて、前記アンプへの電源供給を、前記トーンアームの導電部及び当該ヘッドシェルの導電性部材を経由して一定の直流電圧17を供給するように構成した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レコードプレーヤのトーンアームと、カートリッジと、当該カートリッジの近傍に設置されたアンプとを備えた当該アンプへの電源供給システムにおいて、
前記アンプへの電源供給は、前記トーンアームの導電部を経由して一定の電圧を供給するように構成したことを特徴とする、カートリッジ用アンプへの電源供給システム。
【請求項2】
前記アンプは、前記カートリッジからの出力信号が接続されたFET、及び、当該FETに一端が接続され他端が前記トーンアームの導電部に接続された抵抗とから構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ用アンプへの電源供給システム。
【請求項3】
前記アンプは、オペアンプから構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ用アンプへの電源供給システム。
【請求項4】
前記アンプがフォノイコライザアンプであることを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ用アンプへの電源供給システム。
【請求項5】
前記トーンアームと着脱可能なプラグイン式のヘッドシェルを更に備え、当該ヘッドシェルに前記カートリッジとしてMC型カートリッジと前記アンプとを設けて、前記アンプへの前記電源供給を前記トーンアームの導電部及び前記ヘッドシェルの導電性部材を経由して行うように構成したことを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ用アンプへの電源供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジ用アンプへの電源供給システムに関するものであり、特に、MC(Moving Coil)型カートリッジが取り付けられているヘッドアンプなどのカートリッジ用アンプへの電源供給するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レコードプレーヤに用いられるMC型カートリッジは、MM(Moving Magnet)型カートリッジと比べて音質の良さから人気があるが、MM型と比べて出力電圧が約1/10と小さく、MC型カートリッジを用いる場合は、フォノイコライザアンプの前段にヘッドアンプが必要となる。また、出力電圧が0.3mmV程度と微小な信号であるため、伝送ラインが長くなると外来ノイズの影響を受けやすい欠点がある。
このため、MC型カートリッジとヘッドアンプを一体的に取り付けたヘッドシェルが実用化されている。
【0003】
特許文献1には、
図1に、コンデンサ型ピックアップカートリッジに初段増幅用のFET(Field Effect Transistor)を設け、電源部の電源によりFETで増幅された電流が、静電シールドされたトーンアームを伝達して、電源部でオーディオ信号としてプリアンプに出力される構成が開示されている。MC型カートリッジにおいても、同様の方法がサテライトアンプ(ヤマハ)として知られている。
また、非特許文献1の「オーディオ回路の世界・・・真・MCアンプの製作」記事には、ヘッドシェルの上部にMCヘッドアンプを載置してその電源である電池(リチウムイオン電池、ボタン電池)も一緒に載置した構成が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、トーンアームの信号線を介して電源部からカートリッジのFETに電源を供給する構成であるため、別途電源供給用の配線を電源部からカートリッジに増設する必要はないが、カートリッジのFETと電源部が一体となって1つのアンプを構成することになるため、カートリッジ専用の電源部が必要となり、汎用性に欠けて高額なものになる。また、FETからの信号がトーンアームを経由することで、信号増幅のループが大きくなり、接続部分などで外来ノイズの影響を招きやすい。
非特許文献1の方法では、ヘッドシェルのアンプで増幅された信号がトーンアームを伝達するため、このような外来ノイズの影響を受けにくくなるが、ヘッドシェルの上部に電源を載置する構成上、リチウムイオン電池やボタン電池を使用することになるため駆動電圧が制約され、3V程度の電圧で駆動させるIdssの小さなFET(Field Effect Transistor)では、特性上、動作点の直線性が悪く歪率が大きくなりやすい欠点があり、高性能なヘッドアンプを設計しずらいという問題がある。また、ボタン電池を使用する場合は1.3V程度の電圧であるため昇圧回路が必要となってノイズが発生しやすくなったり、電池交換できる構造にする必要があることや、ヘッドシェルの重量が全体として増加するなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「トランジスタ技術」CQ出版2022年11月号144-151頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、上記のようなヘッドアンプ一体型ヘッドシェルに、MC型カートリッジの性能を生かす、性能のよいヘッドアンプとするための必要な電源の簡易で有効な供給方法が提案されていないことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヘッドアンプなどのカートリッジ用アンプの性能を高めるために必要な電源を、トーンアームの導電性部材(導電部)やヘッドシェルの導電性本体を経由させてヘッドアンプなどのカートリッジ用アンプに供給するように構成したことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカートリッジ用アンプへの電源供給システムは、必要な電源をトーンアームの導電性部材(導電部)やヘッドシェルの導電性本体を経由させて供給するため、既存のレコードプレーヤの出力線であるアース線(シールド線)から電源を供給するように構成することで実現できる。また、ヘッドアンプなどの電源をヘッドシェルに載置していないため、供給する電源電圧に制約を受けることがなく、高性能なアンプが実現できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るカートリッジ用アンプへの電源供給システムの全体構成を示す概念図である。
【
図2】本発明に係るヘッドアンプ一体型ヘッドシェルの側面を示す図である。
【
図3】本発明に係るカートリッジ用アンプへの電源供給システムの回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ヘッドアンプなどのアンプの性能を向上させるという目的を、トーンアームの導電性部材(導電部)やヘッドシェルの導電性本体を経由して必要な電圧を供給することで実現した。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において、同 一又は機能的に同様の構成要素については、同一符号を付しその説明を省略する。
【実施例0012】
図1は、本発明に係るカートリッジ用アンプへの電源供給システムの全体構成を示す概念図である。図中1は、LP盤、EP盤などのレコード盤であり、レコードプレーヤに設けられているターンテーブルの回転にともなって所定の速度で回転する。2は、ヘッドシェルであり、後述するピックアップカートリッジやヘッドアンプなどが一体的に取り付けられている。3は、トーンアームであり、一端にヘッドシェル2が着脱可能に取り付けられており、他端には支持体6を貫通してバランスウェイト5が取り付けられている。4は、フィンガーフックであり、使用者がレコード針をレコード盤から持ち上げて移動させるために、使用者の指を掛ける絶縁体の部材であり、ヘッドシェル2の側面に取り付けられている。バランスウェイト5は、レコード針のレコード盤への針圧を調整することができるように構成されている。支持体6は、支持体6を回転軸として回転するトーンアーム3の移動を規制している。7は、後述する電源供給部であり、レコードプレーヤの支持体6から取り出された、ステレオレコードを再生する左チャンネルの再生信号及び右チャンネルの再生信号の各出力信号線と、トーンアーム3をシールドするためのアース線が、接続されている。8は、電源供給部7に接続されるフォノイコライザアンプ(RIAAアンプ)である。
【0013】
ここで、トーンアーム3は、細長いパイプ状の部材であり、外部がアルミニウムなどの導電性の金属(導電部)で構成され、内部には防振材を充填して空洞共振を低減している。また、支持体6によりその基部がピポット構造などにより支持されて上下左右に自由に揺動することができる。そして、トーンアーム3はヘッドシェル2と接続されており、ヘッドシェル2からの出力信号が防振材の中に配線された信号線を経由して、支持体6から左右チャンネルごとの出力信号線として取り出されるように構成されている。トーンアーム3内の信号線は、外部からのノイズを除去するために、パイプ状の外部の金属(導電部)により等電位に、本実施態様では後述する直流電圧で、シールドされている。
【0014】
図2は、本発明に係るヘッドアンプ一体型ヘッドシェルの側面を示す図であり、ステレオ方式の左右チャンネルは構造が同一であるため、一方のチャンネルについての構成の概要を示している。9は、ヘッドシェル2のヘッドシェル本体であり、装着されているコネクタプラグ14によりトーンアーム3とプラグイン式に接合される。ヘッドシェル本体9はアルミニウムなどの導電体で形成されており(導電性部材)、トーンアーム3と接合されることにより、コネクタプラグ14を介してトーンアーム3の導電部と電気的に導通接続されることになる。
ヘッドシェル本体9の先端部には、レコード盤の音源をトレースする再生針(レコード針)11を有するMC型のピックアップカートリッジ(MC型カートリッジ)10が、ヘッドシェル本体9と電気的に絶縁又は非接触に取り付けられている。コネクタプラグ14は、ヘッドシェル本体9の後端壁に設けられた貫通孔に嵌合することにより装着されており、左右両チャンネルの出力端子がそれぞれ2端子ずつ、合計4本のピン端子がヘッドシェル本体9と絶縁されてコネクタプラグ14の内部に設けられている。トーンアーム3と接合したときに、各ピン端子15を介してトーンアーム3の内部に設けた配線と接続される。
【0015】
ヘッドアンプ12は、ピックアップカートリッジ10とコネクタプラグ14の間に、ピックアップカートリッジ10の近傍に位置して、FET13と抵抗Rdから構成されており、ピックアップカートリッジ10の+端子がFET13のゲート電極に、-端子がFET13のソース電極とコネクタプラグ14の1つのピン端子に接続されている。また、FET13のドレイン電極は抵抗Rdの一端とコネクタプラグ14の他の1つのピン端子に接続されている。そして、抵抗Rdの他端は、ヘッドシェル本体9と電気的に接続されている。
このように構成することで、トーンアーム3の導電部に電源を供給すると、両チャンネルへの電源がヘッドシェル本体9を経由して左右両チャンネルのヘッドアンプ12に供給されることになる。
【0016】
図3は、本発明に係るカートリッジ用アンプへの電源供給システムの回路構成を示す図であり、左右一方のチャンネルについての回路構成を示している。他チャンネルも同様の構成を有している。
同図において、電源供給部7には、直流電圧(Vcc)を供給する電池17が設けられており、+(プラス)電極がレコードプレーヤ16の支持体6から取り出されているシールド線に接続され、-(マイナス)電極が電源供給部7の基板(シャーシ)に接続されて、接地されている。したがって、直流電圧(Vcc)がシールド線を介してトーンアーム3の導電部及びヘッドシェル本体9の導電性部材に供給されることになる。
【0017】
FET13のドレイン電極とソース電極から出力された信号は、トーンアーム3の内部の配線を経由してオーディオ信号として電源供給部7に出力される。ドレイン電極に接続されている出力信号は、電源供給部7に設けたコンデンサCに接続されて、直流成分が除去され、電源供給部7の出力信号となる(+信号線)。また、ソース電極に接続されている出力信号は、そのまま電源供給部7の出力信号となる(-信号線)。
【0018】
フォノイコライザアンプ8では、グランド端子(G端子)に電源供給部7に設けた電池17の-電極に接続されたグランド線が接続され、フォノイコライザアンプ8の基板(シャーシ)に接続されるとともに、電圧供給部7から入力された出力信号(-信号線)に接続される。
これにより、ヘッドアンプ12への電源供給ループが、電源供給部7、トーンアーム3、ヘッドシェル本体9、ヘッドアンプ12、トーンアーム3、電源供給部7、フォノイコライザアンプ8、電源供給部7で構成される、1つの閉回路ループで形成されている。複数の機器を接続することによって発生するハムなどのノイズの原因となる、いわゆるグランドループ(Ground Loop)の問題を考慮して、-信号線は、電源供給部7内では基板に接続又は接地しないように構成し、フォノイコライザアンプ8と接続して初めて1つの閉回路が形成されるようにしている。
【0019】
ここで、直流電圧(Vcc)は、FET13を特性上、直線性の良い動作点で駆動させるように適切な電圧に設定することができる(本実施態様では15Vに設定している)。したがって、ヘッドシェル2に電池を載置した場合のような電圧に搭載上の制約を受けることがなく、また、昇圧回路が必要となることもない。
本実施態様では、直流分を除去するコンデンサCを電源供給部7に設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、ヘッドアンプ12内に設けることも可能である。また、FET13に代えて、オペアンプ(Operational Amplifier)を使用することもできる。
トーンアームは一定電圧(15V)でシールドされることになるが、接地電圧(ゼロボルト)でシールドされる従来の場合と同等のシールド効果がある。
【0020】
従来から使用されているトーンアームをシールドするアース線を利用して一定の電圧を供給することで、別途新たに配線を設けることなく、ヘッドシェルに設けたヘッドアンプに電源を供給することができる。このため、既存のレコードプレーヤを改造することなく、そのまま出力端子を利用でき、ヘッドシェルにはヘッドアンプだけ搭載すればよいため軽量に構成できる。また、ヘッドアンプには、電源供給部から最適な電圧を提供できるようになるため、レコードプレーヤの性能を向上させることができる。
本実施態様では、ヘッドシェルと電源供給部を個別のオプションとして構成したが、レコードプレーヤと電源供給部を一体として構成とすることもできるし、電源供給部とフォノイコライザアンプを一体として構成することもできる。また、ヘッドシェルをトーンアームと一体的に構成して、トーンアームにヘッドシェルの機能を持たせることもできる。電源供給部の出力信号(±)は、既存のフォノイコライザアンプに接続してオーディオ信号を再生することができる。
本実施態様では、トーンアームのシールド線(アース線)に電源電圧を接続することで、信号線に対してシールド効果を維持するとともに、ヘッドアンプに所望の電圧の供給を可能としている。このように、シールド線と出力信号線との間で電源電圧が供給できる回路、例えば、MM型カートリッジを使用する場合にあっては、本実施態様におけるヘッドアンプの代わりにフォノイコライザアンプ(RIAAアンプ)をカートリッジの近傍に設けた場合、フォノイコライザアンプに必要となる電源供給においても同様の効果が得られる。この場合は、例えば、電源供給部における-信号線は接地するようにして電源供給ループを構成することができる。