(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115018
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】立坑掘削方法及び掘削ガイド
(51)【国際特許分類】
E02D 13/04 20060101AFI20240819BHJP
E02D 5/18 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
E02D13/04
E02D5/18 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020454
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】522236626
【氏名又は名称】株式会社東洋工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】安田 剛
【テーマコード(参考)】
2D049
2D050
【Fターム(参考)】
2D049GA02
2D049GA14
2D049GB06
2D050AA07
2D050CB03
2D050CB12
2D050EE10
(57)【要約】
【課題】
列状を為す複数の立坑を容易に掘削することができる立坑掘削方法を提供する。
【解決手段】
掘削機を用いて施工面A
1に複数の立坑βを列状に掘削する際に、掘削機の掘削体21を上下方向に案内するためのN個(Nは2以上の整数)のガイド部α
1~α
Nが一側から他側に向かって列状に配された掘削ガイド10を、施工面A
1に設置する掘削ガイド設置工程と、掘削ガイド10におけるそれぞれのガイド部α
1~α
Nを用いて掘削体21を順次案内しながら、N個の立坑βを順次掘削する掘削工程とを経るようにした。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機を用いて施工面に複数の立坑を列状に掘削する立坑掘削方法であって、
掘削機の掘削体を上下方向に案内するためのN個(Nは2以上の整数)のガイド部α1~αNが一側から他側に向かって列状に配された掘削ガイドを、施工面に設置する掘削ガイド設置工程と、
掘削ガイドにおけるそれぞれのガイド部α1~αNを用いて掘削体を順次案内しながら、N個の立坑を順次掘削する掘削工程と
を経ることを特徴とする立坑掘削方法。
【請求項2】
掘削工程において、
まず、ガイド部α1を用いて岩盤に1個目の立坑を掘削し、
続いて、掘削体を上昇させて、1個目の立坑及びガイド部α1から掘削体を抜き、
さらに、ガイド部α1を通じて1個目の立坑に第一の位置決めパイルを挿入してから、
残りのガイド部α2~αNを用いて残りのN-1個の立坑を掘削する
請求項1記載の立坑掘削方法。
【請求項3】
掘削工程において、
ガイド部α1を通じて1個目の立坑に第一の位置決めパイルを挿入した後、
ガイド部αNを用いて岩盤に2個目の立坑を掘削し、
続いて、掘削体を上昇させて、2個目の立坑及びガイド部αNから掘削体を抜き、
さらに、ガイド部αNを通じて2個目の立坑に第二の位置決めパイルを挿入してから、
残りのガイド部α2~αN-1を用いて残りのN-2個の立坑を掘削する
請求項2記載の立坑掘削方法。
【請求項4】
掘削工程において、
ガイド部α1~αNを用いてN個の立坑を掘削した後、
1個目又は2個目の立坑から第一又は第二の位置決めパイルを抜き、
残った方の位置決めパイルを中心として掘削ガイドを水平回転させてから、
既に掘削したN個の立坑に続くN-1個の立坑を新たに掘削する
請求項3記載の立坑掘削方法。
【請求項5】
掘削機を用いて施工面に立坑を掘削する際に、掘削機の掘削体を案内する掘削ガイドであって、
掘削体を上下方向に案内するためのN個(Nは2以上の整数)のガイド部α1~αNが一側から他側に向かって列状に配されたガイド部材と、
施工面に設置するための設置部材と
を備え、
それぞれのガイド部α1~αNを用いて掘削体を順次案内することによって、N個の立坑を列状に掘削できるようにしたことを特徴とする掘削ガイド。
【請求項6】
設置部材が施工面に対して動かないようにするための定着手段をさらに備えた請求項5記載の掘削手段用ガイド部材。
【請求項7】
ガイド部材を水平に調節するための水平調節手段をさらに備えた請求項6記載の掘削手段用ガイド部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機を用いて施工面に複数の立坑を列状に掘削する立坑掘削方法と、その立坑掘削方法で用いる掘削ガイドとに関する。
【背景技術】
【0002】
基礎工事や土木工事等を行う際には、その工事に先立って、工事区域を囲うように矢板(土留め板)を打ち込むことがある。ただし、矢板打込箇所が硬質な岩盤で構成されている等の理由で、矢板の打ち込みが難しい場合には、矢板打込箇所を予め掘削しておき、矢板を打ち込みやすくすることが行われる。例えば、特許文献1には、このような矢板施工方法の一例が開示されている。具体的には、掘削体(同文献の第3図における「岩盤掘削機(6)」)の昇降を繰り返して、複数の立坑(同図における「岩盤掘削孔(7)」)を岩盤に掘削した後、それらの立坑に矢板を打ち込むことが記載されている。特許文献1の矢板施工方法では、立坑を掘削する際に、掘削体を上下方向に案内するための掘削ガイド(同図における「ケーシング(3)」)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の掘削ガイドは、1個の立坑を掘削する度に移動させる必要があり、この移動に多大な手間を要する。また、掘削ガイドを適切な位置に設置していかないと、立坑の列が乱れ、矢板を綺麗な列状に立てることができなくなるおそれがある。このため、掘削ガイドを移動させる度に、掘削ガイドの正確な位置合わせを行う必要もある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、列状を為す複数の立坑を容易に掘削することができる立坑掘削方法を提供することを目的とする。また、その立坑掘削方法で好適に用いることができる掘削ガイドを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
掘削機を用いて施工面に複数の立坑を列状に掘削する立坑掘削方法であって、
掘削機の掘削体を上下方向に案内するためのN個(Nは2以上の整数)のガイド部α1~αNが一側から他側に向かって列状に配された掘削ガイドを、施工面に設置する掘削ガイド設置工程と、
掘削ガイドにおけるそれぞれのガイド部α1~αNを用いて掘削体を順次案内しながら、N個の立坑を順次掘削する掘削工程と
を経ることを特徴とする立坑掘削方法
を提供することによって解決される。
【0007】
ここで、「順次」という語は、「所定の順番で」という意味で用いている。このため、「ガイド部α1~αNを用いて掘削体を順次案内」という記載は、必ずしも、ガイド部α1,α2,・・・,αNをこの順(昇順)で用いることを意味しない。同記載の概念には、例えば、ガイド部α1の次に、ガイド部α2以外のガイド部α3~αNを用いる場合も含まれるし、最初に、ガイド部α1以外のガイド部α2~αNを用いる場合も含まれる。
【0008】
本発明の立坑掘削方法では、N個のガイド部α1~αNが列状に配された掘削ガイドを用いるため、掘削ガイドの位置を変えることなく、N個の立坑を立て続けに掘削することができる。このため、掘削ガイドの移動や位置合わせに要する手間を軽減することができる。
【0009】
ただし、立坑を掘削する際に掘削ガイドが動いてしまうと、掘削される立坑の列が乱れるおそれがある。このため、本発明の立坑掘削方法では、
掘削工程において、
まず、ガイド部α1を用いて岩盤に1個目の立坑を掘削し、
続いて、掘削体を上昇させて、1個目の立坑及びガイド部α1から掘削体を抜き、
さらに、ガイド部α1を通じて1個目の立坑に第一の位置決めパイルを挿入してから、
残りのガイド部α2~αNを用いて残りのN-1個の立坑を掘削する
ことが好ましい。
第一の位置決めパイルによって掘削ガイドを拘束することで、掘削ガイドの位置ズレ(特に水平方向の位置ズレ)を生じにくくすることができる。
【0010】
ただし、第一の位置決めパイルを用いても、掘削ガイドが、第一の位置決めパイルを中心に回転移動するおそれがある。このため、本発明の立坑掘削方法では、
掘削工程において、
ガイド部α1を通じて1個目の立坑に第一の位置決めパイルを挿入した後、
ガイド部αNを用いて岩盤に2個目の立坑を掘削し、
続いて、掘削体を上昇させて、2個目の立坑及びガイド部αNから掘削体を抜き、
さらに、ガイド部αNを通じて2個目の立坑に第二の位置決めパイルを挿入してから、
残りのガイド部α2~αN-1を用いて残りのN-2個の立坑を掘削する
ことが好ましい。
ガイド部α1とは反対側のガイド部αNに第二の位置決めパイルを挿入することで、掘削ガイドが第一の位置決めパイルを中心に回転移動しないようにすることができる。
【0011】
ところで、上記掘削ガイドを用いても、N個よりも多い数の立坑を掘削する場合には、N+1個目以降の立坑を掘削するために、掘削ガイドを最初のN個の立坑を掘削した位置から、次の立坑を掘削する位置まで移動させなければならない。この際には、掘削ガイドの位置合わせを正確に行う必要がある。この点、
掘削工程において、
ガイド部α1~αNを用いてN個の立坑を掘削した後、
1個目又は2個目の立坑から第一又は第二の位置決めパイルを抜き、
残った方の位置決めパイルを中心として掘削ガイドを水平回転させてから、
既に掘削したN個の立坑に続くN-1個の立坑を新たに掘削する
ことで、掘削ガイドの移動時における位置合わせの手間を軽減することができる。また、N個目とN+1個目の立坑の間隔を、他の立坑の間隔と揃えることも容易になる。
【0012】
また、上記課題は、
掘削機を用いて施工面に立坑を掘削する際に、掘削機の掘削体を案内する掘削ガイドであって、
掘削体を上下方向に案内するためのN個(Nは2以上の整数)のガイド部α1~αNが一側から他側に向かって列状に配されたガイド部材と、
施工面に設置するための設置部材と
を備え、
それぞれのガイド部α1~αNを用いて掘削体を順次案内することによって、N個の立坑を列状に掘削できるようにしたことを特徴とする掘削ガイド
を提供することによっても解決される。
この掘削ガイドは、上述の立坑掘削方法で好適に用いることができる。
【0013】
本発明の掘削ガイドにおいては、設置部材が施工面に対して動かないようにするための定着手段をさらに設けることが好ましい。これにより、正しい位置に設置した掘削ガイドを、その位置から動きにくくすることができる。
【0014】
本発明の掘削ガイドにおいては、ガイド部材を水平に調節するための水平調節手段をさらに設けることが好ましい。これにより、ガイド部材の水平を確認しながら掘削ガイドを設置することが可能になる。したがって、より正確な位置に立坑を掘削することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によって、列状を為す複数の立坑を容易に掘削することができる立坑掘削方法を提供することが可能になる。また、その立坑掘削方法で好適に用いることができる掘削ガイドを提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の立坑掘削方法で掘削した立坑に矢板を施工した現場の一例を示した平面図である。
【
図2】本発明の立坑掘削方法で用いる掘削機の一例を示した側面図である。
【
図3】本発明の立坑掘削方法で好適に用いることができる掘削ガイドの斜視図である。
【
図4】本発明の立坑掘削方法における流れの一例を説明するフロー図である。
【
図5】
図3に示した掘削ガイドを用いて、1個目の立坑を掘削している様子を、立坑の中心線を含む平面で切断して示した断面図である。
【
図6】1個目の立坑に第一の位置決めパイルを挿入している様子を、立坑の中心線を含む平面で切断して示した断面図である。
【
図7】
図3に示した掘削ガイドを用いて、2個目の立坑を掘削している様子を、立坑の中心線を含む平面で切断して示した断面図である。
【
図8】2個目の立坑に第二の位置決めパイルを挿入している様子を、立坑の中心線を含む平面で切断して示した断面図である。
【
図9】
図3に示した掘削ガイドを用いて、3~5個目までの立坑を掘削している様子を、立坑の中心線を含む平面で切断して示した断面図である。
【
図10】第二の位置決めパイルを中心として掘削ガイドを回転移動する様子を、立坑の中心線を含む平面で切断して示した断面図である。
【
図11】掘削ガイドを回転移動した後、複数の立坑を列状に掘削している様子を、立坑の中心線を含む平面で切断して示した断面図である。
【
図12】既に掘削した立坑に連続して、さらに複数の立坑を列状に掘削している様子を、立坑の中心線を含む平面で切断して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の立坑掘削方法及び掘削ガイドについて、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで好適な実施形態であり、本発明の立坑掘削方法及び掘削ガイドの技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の立坑掘削方法及び掘削ガイドには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0018】
本発明の立坑掘削方法は、複数の立坑を列状に掘削する各種工事で採用することができる。以下においては、その一例として、矢板(鋼矢板)を施工する予定の現場で、矢板の下穴(立坑)を掘削する場合を例に挙げて説明する。
【0019】
図1は、本発明の立坑掘削方法で掘削した立坑βに矢板(鋼矢板)Pを施工した現場の一例を示した平面図である。基礎工事や土木工事等に先立って、施工面A
1に矢板Pを打ち込む場合には、その施工面A
1に予め複数の下穴(立坑β)を列状(溝状)に掘削しておき、矢板Pを打ち込みやすくすることが行われる。本発明の立坑掘削方法は、このように、施工面A
1に複数の立坑βを列状に掘削する際に好適に採用することができる。
【0020】
立坑βは、
図2に示すような掘削機20を用いて掘削される。
図2は、本発明の立坑掘削方法で用いる掘削機の一例を示した側面図である。掘削機20には、スクリューオーガやダウンザホールハンマー等の掘削体21が取り付けられており、この掘削体21を施工面A
1に下ろしてそのまま地中に掘り下げていくことで、立坑βが掘削される。このとき、掘削体21の位置がブレると、立坑βの位置ズレが生じるおそれや、立坑βが真直ぐ形成されないおそれがある。このため、本実施形態においては、
図3に示す掘削ガイド10を用いて、掘削体21の掘削方向を案内しながら、立坑βを掘削するようにしている。
図3は、本発明の立坑掘削方法で好適に用いることができる掘削ガイド10の斜視図である。
【0021】
この掘削ガイド10は、施工面A1に設置するための設置部材12と、設置部材12に一体的に固定されたガイド部材11とを備えている。ガイド部材11には、掘削体21を上下方向に案内するための複数のガイド部α1~αN(Nは2以上の整数)が、一側から他側に向かって列状に設けられている。本実施形態においては、ガイド部材11に、5個のガイド部α1~α5を設けている。ガイド部α1~α5を用いて(ガイド部α1~α5に掘削体21を通して)立坑βを掘削していけば、複数の立坑βを列状に掘削することが容易になる。
【0022】
以下、立坑掘削方法の具体例について説明する。
図4は、本発明の立坑掘削方法における流れの一例を説明するフロー図である。
【0023】
本実施形態の立坑掘削方法は、
図4に示すように、工程S
0~S
8を経ることによって行われる。本実施形態の立坑掘削方法は、主に、掘削ガイド10を設置する工程(掘削ガイド設置工程)S
2と、立坑βを掘削する工程(掘削工程)S
4と、掘削ガイド10を移動する工程(掘削ガイド移動工程)S
6とで構成されるところ、掘削工程S
4及び掘削ガイド移動工程S
6は、目的の全ての立坑β(例えば216個の立坑β)を掘削し終えるまで、繰り返し行われる(工程S
4、工程S
5、工程S
6及び工程S
7)。以下においては、繰り返し行われる掘削工程S
4のそれぞれを、「1回目の掘削工程S
4」や「2回目の掘削工程S
4」等といったように、それが何回目の掘削工程S
4なのかを示して表すことがある。掘削ガイド移動工程S
6についても同様である。
【0024】
また、本説明では、掘削工程S4で掘削する個々の立坑βを示すために、変数m,nを付した「βm,n」という符号を用いて立坑βを表す。変数mは、掘削ガイド10のセット数(掘削ガイド設置工程S2と掘削ガイド移動工程S6とを行った回数を合計した数)を示す。以下のおいては、変数mを「セット数m」と表記する。セット数mは、0以上M以下(Mは、目的の全ての立坑βを掘削するのに必要なセット数である。)の整数で表される。セット数mの初期値は0であり(工程S1)、後述する掘削ガイド設置工程S2又は掘削ガイド移動工程S6を行うたびに、セット数mが1つずつ加算される(工程S3及び工程S7)。一方、変数nは、セット数mにおける、立坑βの掘削順を表す番号(掘削番号)である。以下においては、変数nを「掘削番号n」と表記する。掘削番号nは、0以上N以下の整数で表される。掘削番号nの初期値は1であり(工程S1)、立坑βを1つ掘削する(工程4,1)たびに、掘削番号nが1つずつ加算される(工程S4,3)。掘削番号nがNである立坑βm,Nを掘削し、その後、掘削ガイド移動工程S6を行った後は、掘削番号nに2が代入される(工程S7)。掘削番号nに1ではなく、2が代入される理由は、後で詳しく説明する。
【0025】
以下では、立坑掘削方法の主な工程(掘削ガイド設置工程S2、掘削工程S4及び掘削ガイド移動工程S6)についてより詳しく説明する。
【0026】
1.掘削ガイド設置工程
立坑掘削方法を開始すると(工程S0)、まず、掘削ガイド設置工程S2を開始する。掘削ガイド設置工程S2は、掘削ガイド10を施工面A1における立坑掘削箇所に設置する工程である。掘削ガイド設置工程S2を開始する直前において、セット数mは0であり、掘削番号nは1となっている(工程S1)。
【0027】
掘削ガイド10には、既に述べたように(
図3参照)、掘削体を上下方向に案内するためのガイド部材11(ガイド部α
1~α
5)が設けられているところ、このガイド部材11が水平面に対して傾斜していると、立坑βが正確な位置に掘削できないおそれがある。このため、本実施形態においては、ガイド部材11が水平になるように掘削ガイド10を設置している。具体的には、後で詳しく説明するように、掘削ガイド10が、ガイド部材11を水平に調節するための水平調節手段(油圧シリンダ等からなる脚部12b及び水準器14)を備えているところ、水準器14でガイド部材11の水平を確認しながら脚部12bの高さを調節することで、ガイド部材11が水平になるようにしている。
【0028】
2.掘削工程(1回目)
掘削ガイド設置工程S2を終えると、続いて、1回目の掘削工程S4を開始する。掘削工程S4は、掘削ガイド10におけるそれぞれのガイド部α1~α5を用いて掘削体21を順次案内しながら、立坑βm,nを順次掘削する工程である。1回目の掘削工程S4を開始する直前において、セット数mは1(工程S3において0から1つ加算された値)であり、掘削番号nは1となっている。このため、1回目の掘削工程S4では、立坑β1,1から掘削し、N個目の立坑β1,N(本例では5個目の立坑β1,5)を掘削し終えるまで、立坑β1,nの掘削を繰り返し行う(工程S4,1、工程S4,2及び工程S4,3)。本実施形態では、以下の順番で、立坑β1,1~β1,5を掘削するようにしている。
【0029】
図5は、掘削ガイド10を用いて、1個目の立坑β
1,1を掘削している様子を、立坑β
1,1の中心線を含む平面で切断して示した断面図である。
図5に示すように、1個目の立坑β
1,1は、掘削ガイド10における一側のガイド部α
1で掘削体21を案内しながら掘削する。具体的には、掘削体21をガイド部α
1に通して下降させて、立坑β
1,1を掘削する。1個目の立坑β
1,1を掘削し終えると、掘削体21を上昇させて、立坑β
1,1及びガイド部α
1から掘削体21を引き抜く。
【0030】
本実施形態では、1回目の工程S
4,1において立坑β
1,1を掘削した後に、ガイド部α
1及び立坑β
1,1に位置決めパイルを挿入する位置決めパイル挿入工程(
図4では図示せず。)を行うようにしている。以下では、立坑
m,1に挿入する位置決めパイルを、「第一の位置決めパイルγ
m,1」と表わすことがある。
図6に、ガイド部α
1及び立坑β
1,1に第一の位置決めパイルγ
1,1を挿入している様子を示す。これにより、掘削ガイド10の移動が拘束されるため、掘削ガイド10の位置ズレ(特に水平方向の位置ズレ)を生じにくくする(第一の位置決めパイルγ
1,1を中心とした回転移動は許容されるが、この回転移動は、後述する第二の位置決めパイルγ
1,2によって規制される。)ことができる。第一の位置決めパイルγ
1,1は、鋼管やコンクリートパイル等、容易に曲がらない強度の高い素材によって形成される。
【0031】
1個目の立坑β
1,1を掘削し終えると、続いて、立坑β
1,2を掘削する(
図4の工程S
4,2、工程S
4,3及び工程S
4,1)。
図7に、掘削ガイド10を用いて、2個目の立坑β
1,2を掘削している様子を示す。
図7に示すように、2個目の立坑β
1,2は、掘削ガイド10における他側のガイド部α
5で掘削体21を案内しながら掘削する。2個目の立坑β
1,2を掘削し終えると、掘削体21を上昇させて、立坑β
1,2及びガイド部α
5から掘削体21を引き抜く。
【0032】
本実施形態では、2回目の工程S
4,1において立坑β
1,2を掘削した後には、ガイド部α
5及び立坑β
1,2に位置決めパイルを挿入する位置決めパイル挿入工程(
図4では図示せず。)を行うようにしている。以下では、立坑
m,2に挿入する位置決めパイルを、「第二の位置決めパイルγ
m,2」と表わすことがある。
図8に、ガイド部α
5及び立坑β
1,2に第二の位置決めパイルγ
1,2を挿入している様子を示す。このように、掘削ガイド10を、第一の位置決めパイルγ
1,1だけでなく、第二の位置決めパイルγ
1,2でも固定することによって、掘削ガイド10が第一の位置決めパイルγ
1,1を中心として回転移動しないようにすることができる。第二の位置決めパイルγ
1,2も、第一の位置決めパイルγ
1,1と同様に、容易に曲がらない強度の高い素材によって形成される。
【0033】
2個目の立坑β
1,2を掘削し終えると、続いて、残りの立坑β
1,3,β
1,4,β
1,5を掘削する(
図4の工程
4,2、工程
4,3及び工程
4,1)。
図9に、立坑β
1,3,β
1,4,β
1,5を掘削している様子を示す。本実施形態では、
図9に示すように、3個目の立坑β
1,3は、掘削ガイド10のガイド部α
2で掘削体21を案内しながら掘削し、4個目の立坑β
1,4は、掘削ガイド10のガイド部α
3で掘削体21を案内しながら掘削し、5個目の立坑β
1,5は、掘削ガイド10のガイド部α
4で掘削体21を案内しながら掘削している。
【0034】
1回目の掘削工程S
4で掘削すべきN個の立坑β
1,1~β
1,N(本例では5個の立坑β
1,1~β
1,5)を全て掘削し終えると、1回目の掘削工程S
4を終了する(
図4の工程
4,2及び工程
5)。1回目の掘削工程S
4を終えた段階では、目的の全ての立坑β
1,1~β
1,5,β
2,1~β
2,5,・・・,β
M,1~β
M,5を掘削し終えていないので、1回目の掘削ガイド移動工程S
6を行った後、2回目の掘削工程S
4を行う(
図4における工程S
5、工程S
6、工程S
7を経た後、再度、工程S
4を行う)。
【0035】
3.掘削ガイド移動工程(1回目)
掘削ガイド移動工程S
6は、施工面A
1で立坑βを掘削していない箇所に、掘削ガイド10を移動する工程である。掘削ガイド移動工程S
6において、掘削ガイドは、平行移動してもよいが、本実施形態では回転移動するようにしている。
図10に、掘削ガイド10を回転移動している様子を示す。
図10に示すように、1個目の立坑β
1,1及びガイド部α
1から第一の位置決めパイルγ
1,1を抜いて、残った方の位置決めパイルγ
1,2を中心として掘削ガイド10を水平回転することによって、掘削ガイド移動工程S
6を行う。これにより、掘削ガイド10の位置合わせを容易に行うことができ、既設の立坑β
1,1~β
1,5の列と、新設する立坑β
2,1~β
2,5の列とをズレにくくすることができる。
【0036】
このとき、立坑β1,1~β1,5に続く立坑β2,1~β2,5を、β1,1~β1,5の延長線上に掘削する場合には、掘削ガイド10を180°回転させる。また、立坑β2,1~β2,5を、立坑β1,1~β1,5の垂直線上に掘削する場合には、掘削ガイド10を90°回転させる。このように、掘削ガイド10の回転角度は、既設の立坑β1,1~β1,5に続く立坑β2,1~β2,5の配置に応じて、適宜決定される。本実施形態では、1回目の掘削ガイド移動工程S6において、掘削ガイド10を180°回転している。
【0037】
1回目の掘削ガイド移動工程S6を終えると、セット数mに1が加算されてセット数mが2になるとともに、掘削番号nが2に戻される(工程S7)。工程S7において、掘削番号nが1まで戻らないのは、上記のように、1回目の掘削ガイド移動工程S6において掘削ガイド10を回転移動した結果、セット数mが2のときに1個目に掘削すべき立坑β2,1は、立坑β1,2として既に掘削された状態になっているからであり、2回目の掘削工程S4では、2個目の立坑β2,2から掘削すればよいからである。
【0038】
4.掘削工程(2回目)
図11に、2回目の掘削工程S
4を行っている様子を示す。2回目の掘削工程S
4は、1回目の掘削工程S
4と同様の手順で行う。しかし、上述したように、2回目の掘削工程S
4(セット数mが2のとき)に1個目として掘削すべき立坑β
2,1は、1回目の掘削工程S
4(セット数mが1のとき)の2個目の立坑β
1,2として既に掘削された状態にある。また、この立坑β
2,1には、位置決めパイルγ
2,1(1回目の掘削工程S
4においては、第二の位置決めパイルγ
1,2であったが、2回目の掘削工程S
4においては、第一の位置決めパイルγ
2,1となる。)が既に挿入された状態となっている。このため、2回目の掘削工程S
4では、2個目の立坑β
2,2から掘削を開始する。
【0039】
加えて、2回目の掘削工程S4では、掘削ガイド10の向きが反転した状態になっている。このため、2回目の掘削工程S4では、1回目の掘削工程S4とは異なり、2個目の立坑β2,2は、ガイド部α1で掘削体21を案内しながら掘削し、第二の位置決めパイルγ2,2も、ガイド部α1を通じて立坑β2,2に挿入される。同様の理由で、2回目の掘削工程S4においては、3個目の立坑β2,3は、ガイド部α4で掘削体21を案内しながら掘削し、4個目の立坑β2,4は、ガイド部α3で掘削体21を案内しながら掘削し、5個目の立坑β2,5は、ガイド部α2で掘削体21を案内しながら掘削している。
【0040】
2回目の掘削工程S
4で掘削すべきN-1個の立坑β
2,2~β
2,N(本例では4個の立坑β
2,2~β
2,5)を全て掘削し終えると、2回目の掘削工程S
4を終了する(
図4の工程S
4,2及び工程S
5)。2回目の掘削工程S
4を終えた段階では、目的の全ての立坑β
1,1~β
1,5,β
2,1~β
2,5,・・・,β
M,1~β
M,5の掘削を終えていないので、さらに、2回目の掘削ガイド移動工程S
6を行った後、3回目の掘削工程S
4を行う(
図4における工程S
5、工程S
6、工程S
7を経た後、再度、工程S
4を行う)。
【0041】
5.掘削ガイド移動工程(2回目)
2回目の掘削ガイド移動工程S6は、1回目の掘削ガイド移動工程S6と同様の手順で行う。2回目の掘削ガイド移動工程S6を終えると、セット数mに1が加算されてセット数mが3になるとともに、掘削番号nが2に戻される(工程S7)。
【0042】
6.掘削工程(3回目)
図12に、3回目の掘削工程S
4を行っている様子を示す。3回目の掘削工程S
4は、1回目の掘削工程S
4と同様の手順で行う。掘削ガイド10が1回目及び2回目の掘削ガイド移動工程S
6で2回反転した結果、3回目の掘削工程S
4においては、掘削ガイド10の向きが、1回目の掘削工程S
4と同じになる。このため、3回目の掘削工程S
4では、2個目(計10個目)の立坑β
3,2から掘削を開始する以外の手順(ガイド部α
1~α
5の使用順)も、1回目の掘削工程S
4と同じに行うことができる。
【0043】
7.その後
以下、目的の立坑β1,1~β1,5,β2,1~β2,5,・・・,βM,1~βM,5を全て掘削し終えるまで、上記の掘削ガイド移動工程S6と掘削工程S4とを繰り返し行う(工程S4、工程S5、工程S6及び工程S7)。奇数回目の掘削ガイド移動工程S6は、1回目の掘削ガイド移動工程S6と同じ手順(上記「3.掘削ガイド移動工程(1回目)」で説明した手順)で行うことができ、偶数回目の掘削ガイド移動工程S6は、2回目の掘削ガイド移動工程S6と同じ手順(上記「5.掘削ガイド移動工程(2回目)」で説明した手順)で行うことができる。また、奇数回目の掘削工程S4は、3回目の掘削工程S4と同じ手順(上記「6.掘削工程(3回目)」で説明した手順)で行うことができ、偶数回目の掘削工程S4は、2回目の掘削工程S4と同じ手順(上記「4.掘削工程(2回目)」で説明した手順)で行うことができる。目的の全ての立坑β1,1~β1,5,β2,1~β2,5,・・・,βM,1~βM,5を掘削し終えると、立坑掘削方法を終了する(工程S5及び工程S8)。ただし、M回目(最後)の掘削工程S4においては、工程S4,2で変数nがNに達する前に、目的の全ての立坑β1,1~β1,5,β2,1~β2,5,・・・,βM,1~βM,N’(N’は2以上N-1以下の整数)を掘削し終えることもありうる。この場合には、最後の立坑βM,N’を掘削し終えたときに、立坑掘削方法を終了する(工程S4,1及び工程S8)。
【0044】
8.まとめ
本実施形態の立坑掘削方法では、N個のガイド部α1~αN(本例では、5個のガイド部α1~α5)が列状に設けられた掘削ガイド10を用いて、立坑βm,1~βm,Nを列状に掘削している。このため、立坑βを掘削するたびに掘削ガイド10を移動させる必要がなく、その移動にかかる手間を軽減することができる。また、本実施形態の立坑掘削方法では、第一及び第二の位置決めパイルγm,1,γm,2を用いて、掘削ガイド10を水平方向に動かないようにしながら立坑βm,2~βm,N-1を掘削している。このため、立坑βm,1~βm,Nを綺麗な列状に掘削することが容易である。さらに、本実施形態の立坑掘削方法では、第一又は第二の位置決めパイルγm,1,γm,2のいずれかを中心として掘削ガイド10を水平回転させることで、掘削ガイド10を移動している。このため、掘削ガイド10を正確な位置に移動することが容易である。
【0045】
9.掘削ガイドの詳細な構造
以下、
図3に示した掘削ガイド10の詳細な構造について説明する。掘削ガイド10は、既に述べたように、ガイド部材11と、設置部材12とを備えている。
【0046】
ガイド部材11は、列状を為す複数のガイド部α1~αNで構成されている。ガイド部α1~αNの個数は、複数あれば(Nが2以上の整数であれば)特に限定されない。ただし、ガイド部α1~αNの個数が多すぎると、掘削ガイド10のサイズが大きくなり、その運搬等に手間がかかるおそれがある。一方、ガイド部α1~αNの個数が少なすぎると、一度に掘削できる立坑βの数も少なくなる(掘削の効率性が低くなる)。このため、ガイド部α1~αNの個数は、3~10個程度の範囲内にすることが好ましい。本実施形態では、既に述べたように、5個のガイド部α1~α5で、ガイド部材11を構成している。
【0047】
ガイド部α1~αNのそれぞれの形状は、掘削体21の形状等に応じて、適宜決定することができる。掘削体21として用いるスクリューオーガやダウンザホールハンマー等は、円柱状を為すものが多いため、本実施形態では、ガイド部α1~αNのそれぞれを円筒状とし、その中空部分に掘削体21を通せるようにしている。また、ガイド部α1~αNのそれぞれの寸法や間隔は、立坑βに立てる矢板Pの寸法や種類等に応じて、適宜決定することができる。本実施形態では、ガイド部α1~αNのそれぞれの直径を約60cmとし、ガイド部α1~αNの間隔を約50cmとしている。
【0048】
設置部材12は、掘削ガイド10(特にガイド部材11)を施工面A1に設置するためのものである。この設置部材12は、施工面に対して動かないようにするための定着手段を備えていることが好ましい。というのも、設置部材12が施工面A1に対して動くと、ガイド部α1~αNも動いてしまう結果、立坑βm,1~βm,Nの列が乱れるおそれがあるからである。このため、本実施形態では、設置部材12を、ガイド部材用支持板部12aと、4本の脚部12bとで構成し、それら脚部12bの接地面に定着手段としてのスパイク(釘)13を設けている。これにより、スパイク13が施工面A1に食い込んで、掘削ガイド10を動きにくくすることができる。ただし、定着手段は、このようなスパイク13に限定されない。例えば、定着手段を、接地面積が広く、重量も大きい台座とし、施工面A1との間に作用する摩擦力によって掘削ガイド10を動きにくくしてもよい。
【0049】
本実施形態では、上記「1.掘削ガイド設置工程」で述べたように、設置部材12が、ガイド部材11を水平に調節するための水平調節手段を備えている。具体的には、脚部12bを油圧シリンダで構成するとともに、ガイド部材用支持板部12aに水準器14を設けて、これらの脚部(油圧シリンダ)12bと水準器14とで水平調節手段を構成している。既に述べたように、この水準器14でガイド部材11(ガイド部材用支持板部12a)の水平を確認しながら、それぞれの脚部(油圧シリンダ)12bの高さを調節することで、ガイド部材11を水平に調節することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 掘削ガイド
11 ガイド部材
12 設置部材
12a ガイド部材用支持板部
12b 脚部(油圧シリンダ)
13 スパイク
14 水準器
20 掘削機
21 掘削体(ダウンザホールハンマー)
m 掘削ガイドのセット数
n 立坑の掘削番号
α1~αN ガイド部
β(βm,n) 立坑(下穴)
γm,1 第一の位置決めパイル
γm,2 第二の位置決めパイル