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特開2024-115042ファイバ保持部品およびファイバモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115042
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ファイバ保持部品およびファイバモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
G02B6/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020483
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】本田 真也
【テーマコード(参考)】
2H038
【Fターム(参考)】
2H038CA32
(57)【要約】
【課題】接着剤の体積変化に伴う光ファイバの回転の向きを安定させることができるファイバ保持部品およびファイバモジュールを提供する。
【解決手段】ファイバ保持部品は、回転方向性を有する光ファイバを載置可能な少なくとも1つの溝を有する本体を備え、前記溝は第1壁部および第2壁部を有し、基準面に対する前記第1壁部の傾きと、前記基準面に対する前記第2壁部の傾きとが、非対称である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転方向性を有する光ファイバを固定するためのファイバ保持部品であって、
前記光ファイバを載置可能な少なくとも1つの溝を有する本体を備え、
前記溝は第1壁部および第2壁部を有し、
基準面に対する前記第1壁部の傾きと、前記基準面に対する前記第2壁部の傾きとが、非対称である、ファイバ保持部品。
【請求項2】
前記溝は、前記本体の上面に形成されており、
前記第1壁部または前記第2壁部は、前記上面に対して略垂直である、請求項1に記載のファイバ保持部品。
【請求項3】
請求項1または2に記載のファイバ保持部品と、
前記第1壁部および前記第2壁部に接した状態で前記溝に配置された前記光ファイバと、
前記光ファイバを前記溝に固定する接着剤と、を備える、ファイバモジュール。
【請求項4】
前記第1壁部と前記光ファイバとの第1接点と、前記第2壁部と前記光ファイバとの第2接点とは、前記溝の深さ方向において、位置が異なっている、請求項3に記載のファイバモジュール。
【請求項5】
前記溝の内側には、前記第1壁部および前記光ファイバに接する第1領域と、前記第2壁部および前記光ファイバに接する第2領域と、前記第1壁部および前記第2壁部の双方に接する第3領域と、が含まれ、
前記第1領域には前記接着剤が充填されていない、請求項3に記載のファイバモジュール。
【請求項6】
前記光ファイバは、偏波保持ファイバまたはマルチコアファイバである、請求項3に記載のファイバモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバ保持部品およびファイバモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、溝を有する基板と、溝によって位置決めされた光ファイバと、を備える構成が開示されている。光ファイバは、接着剤によって、溝に対して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-93950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバは、回転方向性を有する場合がある。回転方向性を有する光ファイバとしては、例えばマルチコアファイバが挙げられる。回転方向性を有する光ファイバにおいては、光の接続を安定させるために、回転調心が行われる。回転調心とは、光ファイバの回転方向の位置(位相)を調整することである。例えば、2つの光ファイバ同士を接続する際に、一方の光ファイバを回転させ、他方の光ファイバの位相に一致させる。以後、回転調心のことを単なる調心と呼ぶことがある。
【0005】
ここで、接着剤によって光ファイバを溝に固定する場合、接着剤が硬化する際の膨張または収縮により、光ファイバが回転する場合がある。特に、溝の形状が左右対称なV字状である場合には、接着剤の影響による光ファイバの回転の向きが定まらない。つまり、溝に対する接着剤の充填のバランス次第で、光ファイバが時計回りに回転したり、反時計回りに回転したりする。このように回転の向きが定まらないと、調心が困難になる場合がある。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、接着剤の体積変化に伴う光ファイバの回転の向きを安定させることができるファイバ保持部品およびファイバモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の態様1は、回転方向性を有する光ファイバを固定するためのファイバ保持部品であって、前記光ファイバを載置可能な少なくとも1つの溝を有する本体を備え、前記溝は第1壁部および第2壁部を有し、基準面に対する前記第1壁部の傾きと、前記基準面に対する前記第2壁部の傾きとが、非対称である。
【0008】
本発明の態様2は、態様1に係るファイバ保持部品であって、前記溝は、前記本体の上面に形成されており、前記第1壁部または前記第2壁部は、前記上面に対して略垂直である。
【0009】
本発明の態様3に係るファイバモジュールは、態様1または2に係るファイバ保持部品と、前記第1壁部および前記第2壁部に接した状態で前記溝に配置された前記光ファイバと、前記光ファイバを前記溝に固定する接着剤と、を備える。
【0010】
本発明の態様4は、態様3に係るファイバモジュールであって、前記第1壁部と前記光ファイバとの第1接点と、前記第2壁部と前記光ファイバとの第2接点とは、前記溝の深さ方向において、位置が異なっている。
【0011】
本発明の態様5は、態様3または4に記載のファイバモジュールであって、前記溝の内側には、前記第1壁部および前記光ファイバに接する第1領域と、前記第2壁部および前記光ファイバに接する第2領域と、前記第1壁部および前記第2壁部の双方に接する第3領域と、が含まれ、前記第1領域には前記接着剤が充填されていない。
【0012】
本発明の態様6は、態様3から5のいずれかに係るファイバモジュールであって、前記光ファイバは、偏波保持ファイバまたはマルチコアファイバである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記態様によれば、接着剤の体積変化に伴う光ファイバの回転の向きが安定したファイバ保持部品およびファイバモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係るファイバモジュールの斜視図である。
図2図1のファイバモジュールを矢印II方向から見た図である。
図3図2の拡大図である。
図4図1のファイバモジュールを上方から見た図である。
図5】第1実施形態の第1の変形例を示す図である。
図6】第1実施形態の第2の変形例を示す図である。
図7】第2実施形態に係るファイバモジュールの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態のファイバ保持部品およびファイバモジュールについて図面に基づいて説明する。
図1図3に示すように、ファイバモジュール1は、ファイバ保持部品10と、複数の光ファイバ20と、接着剤30と、を備えている。
【0016】
ファイバ保持部品10は、本体Mを備えている。本体Mには、光ファイバ20を保持するための、少なくとも1つの溝15が形成されている。溝15の内側に、光ファイバ20の少なくとも一部が収容される。接着剤30は、光ファイバ20を溝15に固定する役割を有する。本実施形態のファイバ保持部品10は、複数の溝15を有するが、溝15の数は1つでもよい。また、ファイバ保持部品10は、本体M以外の構成要素を備えてもよい。
【0017】
光ファイバ20は、ベアファイバ21と、被覆22と、を有している。ベアファイバ21は、例えば石英ガラス等によって形成されている。被覆22は、ベアファイバ21を部分的に覆っており、ベアファイバ21を保護する役割を有する。被覆22は、樹脂等によって形成されている。各光ファイバ20の端部では、被覆22が設けられておらず、ベアファイバ21が露出している。露出したベアファイバ21が、溝15に載置されている。
【0018】
図2図3に示すように、本実施形態に係る光ファイバ20(ベアファイバ21)は、複数のコア21aと、これらのコア21aを囲うクラッド21bと、を有する。すなわち、光ファイバ20はいわゆるマルチコアファイバであり、回転方向性を有する。本明細書において「回転方向性を有する」とは、光ファイバ20を中心軸線O(図1参照)まわりに回転させた際に、当該回転に伴ってコア21aの配置または光の伝送特性が変化することを意味する。
【0019】
つまり、光ファイバ20を回転させると、その回転に伴って、中心軸線Oに垂直な断面構造が変化する。ここで、断面構造とは、光ファイバ20を構成する材料の分布、またはこれによって生じる屈折率分布などが該当する。なお、光ファイバ20は、マルチコアファイバ以外の、回転方向性を有する光ファイバであってもよい。回転方向性を有する光ファイバの例としては、偏波保持ファイバが挙げられる。偏波保持ファイバの具体例としては、PANDA型、ボウタイ型、楕円クラッド型のファイバが挙げられる。
【0020】
なお、ファイバ保持部品10の複数の溝15のうち、一部の溝15にのみ、回転方向性を有する光ファイバ20が保持されてもよい。回転方向性を有さない光ファイバ(例えばシングルモードファイバ)が、一部の溝15に保持されてもよい。言い換えると、ファイバモジュール1は、回転方向性を有する光ファイバ20と、回転方向性を有さない光ファイバと、を備えてもよい。
【0021】
(方向定義)
本実施形態では、複数の溝15が延びる方向を長手方向Xと称する。長手方向Xに直交する一方向を第1方向Yと称する。第1方向Yおよび長手方向Xの双方に直交する方向を第2方向Zと称する。第2方向Zにおける一方側(+Z側)を上方と称し、他方側(-Z側)を下方と称する。第2方向Zは、溝15の深さ方向とも一致する。第2方向Zと鉛直方向とは一致していなくてもよい。
【0022】
図3等に示すように、ベアファイバ21の直径は、溝15の深さより小さくてもよい。この場合、長手方向Xから見て、ベアファイバ21の全体を溝15の内側に収容することができる。ただし、ベアファイバ21の直径が溝15の深さより大きくてもよい。つまり、ベアファイバ21の一部が溝15から上方に突出していてもよい。
【0023】
図1に示すように、ファイバ保持部品10は、下面11と、上面12と、第1側面13と、第2側面14と、を有する。ファイバ保持部品10は、直方体状である。下面11は、ファイバ保持部品10の下方の端面である。上面12は、ファイバ保持部品10の上方の端面である。上面12および下面11は互いに平行である。第1側面13および第2側面14は、第1方向Yに対して垂直である。複数の溝15は、上面12に形成されている。すなわち、複数の溝15は、上面12から下方に向かって窪んでいる。
【0024】
ファイバ保持部品10は、基準面を有する。基準面とは、ファイバ保持部品10が加工される際、あるいは、ファイバ保持部品10の各寸法が測定される際に、基準となり得る面である。ファイバ保持部品10が備える任意の面を、基準面として用いることができる。例えば、下面11を基準面として、ファイバ保持部品10の各寸法を測定する場合を考える。測定機(例えば、三次元測定機)の載置台に、下面11が下になるように、ファイバ保持部品10を載せる。すると、基準面である下面11を基準として、溝15の位置、姿勢が定まる。したがって、この基準面を基準として、寸法の測定を行うことができる。
【0025】
以下では、下面11が基準面である場合を例にして説明する。ただし、下面11以外の面(上面12あるいは第1側面13等)を、基準面として用いてもよい。また、製造時と寸法測定時とで、基準面が異なってもよい。基準面としての下面11は、長手方向Xおよび第1方向Yに延在している。
【0026】
図3に示すように、溝15は、第1壁部15aおよび第2壁部15bを有している。第1壁部15aおよび第2壁部15bは、長手方向Xに延在している。光ファイバ20は、第1壁部15aおよび第2壁部15bの両方に接する。これにより、光ファイバ20の位置が定まる。第1壁部15aおよび第2壁部15bの接続部(溝15の底部)は、例えば下面11側に向けて凸の曲面である。本明細書では、第1壁部15aと基準面とがなす角を第1角度θ1と称する。第2壁部15bと基準面とがなす角を第2角度θ2と称する。
【0027】
第1壁部15aおよび第2壁部15bは、上面12から、下方に向けて延びている。第1壁部15aは、第2方向Zに平行である。言い換えると、第1壁部15aは上面12に対して略垂直である。これに対して第2壁部15bは、第2方向Zに対して傾斜している。
【0028】
このように、本実施形態の溝15は、非対称な形状を有している。より具体的には、基準面に対する第1壁部15aの傾きと、基準面に対する第2壁部15bの傾きとは、非対称となっている。「基準面に対する傾きが非対称」とは、第1角度θ1および第2角度θ2を用いて表現すると、θ1+θ2≠180°の場合を指す。例えば図3では、θ1=90°、θ2=45°であるから、θ1+θ2≠180°となり、「基準面に対する傾きが非対称」の場合に当てはまる。これに対して、仮に溝15が対称なV字状である場合、壁部15a、15bの基準面に対する傾きが対称となる。具体例としては、例えばθ1=120°、θ2=60°の場合、「基準面に対する傾きが対称」であり、θ1+θ2=180°となる。
【0029】
ただし、先述の通り、基準面は下面11でなくてもよい。基準面を下面11から変更した場合、第1角度θ1および第2角度θ2の値も変わる。溝15の形状が非対称であれば、ファイバ保持部品10のいずれの面を基準面とした場合でも、θ1+θ2≠180°となる。
【0030】
図3に示すように、第1壁部15aとベアファイバ21との接点を第1接点P1と称する。第2壁部15bとベアファイバ21との接点を第2接点P2と称する。壁部15a、15bは、基準面に対する傾きが非対称であるため、第2方向Zにおいて、第1接点P1と第2接点P2は異なる位置となる。
【0031】
図3の例では、第1壁部15aが上面12(または下面11)に対して略垂直である。このため図4に示すように、上方から見ると、第1壁部15aとベアファイバ21の輪郭とが一直線上に重なって見える。この構成によれば、溝15に対して光ファイバ20(ベアファイバ21)が平行に取り付けられているかを確認しやすい。例えば、溝15とベアファイバ21とが平行でない場合、第1壁部15aとベアファイバ21との間に隙間が生じる。この隙間の有無を確認することで、ベアファイバ21が溝15によって適切に位置決めされているかを判定できる。なお、「略垂直」には、製造誤差を除けば垂直とみなせる場合を含む。本明細書の他の箇所における「略」についても同様である。
【0032】
図3に示すように、本実施形態では、1つの溝15に対して、3つの領域A1~A3に分かれて接着剤30が充填される。第1領域A1は、第3領域A3よりも上方に位置し、第1壁部15aおよび光ファイバ20に接している。第2領域A2は、第3領域A3よりも上方に位置し、第2壁部15bおよび光ファイバ20に接している。第3領域A3は、第1壁部15a、第2壁部15b、および光ファイバ20に接している。
【0033】
第1領域A1および第2領域A2は、溝15の上方の空間に露出している。第3領域A3は、溝15の底部に位置しており、第1壁部15a、第2壁部15b、および光ファイバ20によって囲まれている。例えば、ファイバモジュール1の製造時に、液状の接着剤30を溝15に充填した後で、溝15に光ファイバ20を載置してもよい。この場合、図3に示すように、第2領域A2に位置する接着剤30の上端と、第3領域A3に位置する接着剤30の上端とで、第2方向Zにおける位置(水位)は、略同じとなる。
【0034】
ここで、本実施形態の溝15は非対称な形状である。このため、第1領域A1に位置する接着剤30の体積(以下、第1体積と称する)と、第2領域A2に位置する接着剤30の体積(以下、第2体積と称する)とは、異なる。図3の例では、第1体積が第2体積よりも小さい。
【0035】
次に、以上のように構成されたファイバ保持部品10およびファイバモジュール1の作用について説明する。
【0036】
ファイバモジュール1の製造時に、接着剤30は、液体の状態で各領域A1~A3に充填される。その後、接着剤30が硬化することで、光ファイバ20が溝15に固定される。例えば、接着剤30が熱硬化型樹脂である場合、硬化のために接着剤30が加熱される。あるいは、接着剤30がUV硬化型樹脂である場合、硬化のために接着剤30にUV光が照射される。
【0037】
ここで、接着剤30は硬化の際に体積が変化する場合がある。例えば、接着剤30が硬化の際に収縮する場合は、第2領域A2における収縮量が、第1領域A1における収縮量よりも大きくなる。これは、第2体積が第1体積よりも大きいためである。第2領域A2の収縮量が大きい場合、図3において、光ファイバ20は、中心軸線Oを中心として時計回りに回転する。光ファイバ20がどちらの方向に回転するかは、以下2つの要素に基づいて定まる。第1の要素は、接着剤30の体積変化が膨張および収縮のどちらか、である。第2の要素は、第1体積および第2体積の大小関係である。
【0038】
例えば、図3の例(第1の体積が第2の体積より小さい)では、接着剤30が膨張する場合、光ファイバ20が半時計回りに回転する。図示は省略するが、第1の体積が第2の体積より大きく、接着剤30が膨張する場合は、光ファイバ20が時計回りに回転する。第1の要素は接着剤30の材質によって決まる。第2の要素は、溝15の形状と、領域A1、A2への接着剤30の充填状態と、によって決まる。
【0039】
ここで、仮に溝15が対称な形状を有する場合、上記した第2の要素が不確実になる。具体的には、第1領域A1および第2領域A2への接着剤30の充填の状態に応じて、第1の体積および第2の体積の大小関係が容易に入れ替わってしまう。結果として、光ファイバ20がどちらの方向に回転するかが、不確実となる。
【0040】
これに対して本実施形態では、溝15が非対称な形状を有している。このため、接着剤30の充填の状態に応じて、第1体積および第2体積の大小関係が入れ替わりにくい。例えば図3の例では、第1領域A1と第2領域A2とで接着剤30の水位を極端に変えない限り、第2体積が第1体積よりも大きくなる。したがって、光ファイバ20の回転の向きが安定する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のファイバ保持部品10は、回転方向性を有する光ファイバ20を固定するために用いられる。ファイバ保持部品10は、光ファイバ20を載置可能な少なくとも1つの溝15を有する本体Mを備える。溝15は第1壁部15aおよび第2壁部15bを有し、基準面(例えば下面11)に対する第1壁部15aの傾きと、基準面に対する第2壁部15bの傾きとが、非対称である。また、本実施形態のファイバモジュール1は、ファイバ保持部品10と、第1壁部15aおよび第2壁部15bに接した状態で溝15に配置された光ファイバ20と、光ファイバ20を溝15に固定する接着剤30と、を備える。
【0042】
この構成のファイバ保持部品10またはファイバモジュール1によれば、溝15が非対称な形状を有するため、接着剤30の体積変化に伴う光ファイバ20の回転の向きが安定する。このように回転の向きが安定することで、光ファイバ20を他の光ファイバ等に接続する際に、より容易に調心を行うことができる。
【0043】
また、溝15は、本体Mの上面12に形成され、第1壁部15aまたは第2壁部15bは、上面12に対して略垂直であってもよい。この場合、溝15に対して光ファイバ20が平行に載置されているかを確認しやすくなる。
【0044】
また、第1壁部15aと光ファイバ20との第1接点P1と、第2壁部15bと光ファイバ20との第2接点P2とは、溝15の深さ方向において、位置が異なっている。この構成によれば、第1領域A1と第2領域A2とで、長手方向Xから見たときの面積が異なる。したがって、第1体積(第1領域A1における接着剤30の体積)および第2体積(第2領域A2における接着剤30の体積)も容易に異ならせることができる。
【0045】
また、光ファイバ20は、偏波保持ファイバまたはマルチコアファイバであってもよい。このような回転方向性を有する光ファイバ20に対して、本実施形態は好適である。
【0046】
(第1実施形態の第1の変形例)
図5に、第1の変形例を示す。図5に示すように、第1領域A1に接着剤30が充填されていなくてもよい。言い換えると、溝15における接着剤30の水位が、第1接点P1より下方であってもよい。この場合、第1体積(第1領域A1における接着剤30の体積)がゼロとなる。したがって、第1体積と第2体積との間の大小関係が、より明確となる。すなわち、接着剤30の体積変化に伴う光ファイバ20の回転の方向が、より安定する。
【0047】
(第2の変形例)
図6に、第1実施形態の第2の変形例を示す。図6の例では、第1角度θ1が90°より大きく、第2角度θ2が90°より小さい。このように、第1角度θ1および第2角度θ2の両者が略90°でなくてもよい。言い換えると、第1壁部15aおよび第2壁部15bの両方が、下面11および上面12に対して垂直でなくてもよい。この場合も、溝15が非対称であることにより、光ファイバ20の回転の方向を安定させることができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0049】
図7に示すように、本実施形態では、ベアファイバ21の外径が溝15の深さより大きい。このため、ベアファイバ21が溝15から上方に突出している。第1角度θ1および第2角度θ2の両方が、90°より小さい。上面12および第1壁部15aが交差する角部が、第1接点P1となっている。言い換えると、第1接点P1が上面12に位置する。
【0050】
この構成によれば、第1実施形態において説明した第1領域A1に相当する部分が存在しなくなる。つまり、第1体積が実質的にゼロとなる。したがって、第1体積と第2体積との間の大小関係が、より明確となる。すなわち、接着剤30の体積変化に伴う光ファイバ20の回転の方向が、より安定する。
【0051】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
例えば、前記実施形態では、ベアファイバ21を溝15に載置した。しかしながら、光ファイバ20のうち被覆22が設けられた部分を、溝15に載置してもよい。つまり、被覆22を接着剤30によって溝15に固定してもよい。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…ファイバモジュール 10…ファイバ保持部品 12…上面 15…溝 15a…第1壁部 15b…第2壁部 20…光ファイバ 21a…コア 30…接着剤 A1…領域 A1…第1領域 A2…第2領域 A3…第3領域 M…本体 P1…第1接点 P2…第2接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7