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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011505
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】車外リスクの視認誘導装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113519
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達郎
(72)【発明者】
【氏名】時崎 淳平
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB04
5H181CC02
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL15
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】車両の車外のリスクが複数ある場合において、その複数のリスクについて警報を出力できるようにする。
【解決手段】車両1のドライバ2へ車外のリスクへの視線誘導のための警報を出力する出力部25~27、を有する車外リスクの視認誘導装置10は、ドライバ2の視線方向を取得可能な情報を検出する車内検出デバイス23と、制御部15と、を有する。制御部15は、車内検出デバイス23の検出情報からドライバ2の視線方向を取得し、取得した視線方向を基準にして複数の車外のリスクとなる警報対象の各々を視認させるための視線移動量を演算し、複数の車外のリスクについての出力部25~27からの警報の出力順を、少なくともリスクとなる警報対象を視認させるための視線移動量に基づいて決定する。出力部25~27は、決定した警報順にしたがって、複数の車外のリスクとなる警報対象を視認させるための警報を出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライバへ車外のリスクへの視線誘導のための警報を出力する出力部、を有する車外リスクの視認誘導装置であって、
前記車両のドライバについての視線方向を取得可能な情報を検出する車内検出デバイスと、
前記車内検出デバイスの検出情報を取得可能な制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記車内検出デバイスから取得する検出情報から、ドライバの視線方向を取得し、
取得したドライバの視線方向を基準にして、複数の車外のリスクとなる警報対象の各々を視認させるための視線移動量を演算し、
複数の車外のリスクについての前記出力部からの警報の出力順を、少なくとも、取得したドライバの視線方向からリスクとなる警報対象を視認させるための視線移動量を用いて決定し、
前記出力部から、決定した警報順にしたがって、複数の車外のリスクとなる警報対象を視認させるための警報を出力する、
車外リスクの視認誘導装置。
【請求項2】
前記制御部は、
複数のリスクとなる警報対象を順番に視認するための合計の視線移動量が最も小さくなるように、警報の出力順を決定する、
請求項1記載の、車外リスクの視認誘導装置。
【請求項3】
前記制御部は、
リスクとなる警報対象を直視する場合の直視の視線移動量とともに、リスクとなる警報対象を前記車両のミラーで視認する場合または前記車両のモニタで視認する場合の間接視の視線移動量を演算し、
直視の視線移動量および間接視の視線移動量の中の、合計の視線移動量が最も小さくなる方を、警報の出力順の決定の際に選択する、
請求項2記載の、車外リスクの視認誘導装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記間接視の視線移動量として、前記車両に設けられるデジタルアウタミラー、反射式のサイドミラー、リアビューモニタ、反射式のルームミラー、またはメータモニタにおいてリスクとなる警報対象を視認するための視線移動量を演算する、
請求項3記載の、車外リスクの視認誘導装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記車内検出デバイスの検出情報から取得されているドライバの視線方向にあるリスクを除いた、車外のリスクとなる警報対象が複数である場合に、視線移動量を演算して、警報の出力順を決定する、
請求項4記載の、車外リスクの視認誘導装置。
【請求項6】
前記制御部は、
リスクとなる警報対象の視線移動量として、前記車両の真後ろ方向を通過しない移動方向での視線移動量を演算する、
請求項5記載の、車外リスクの視認誘導装置。
【請求項7】
前記制御部は、
複数のリスクの各々に対して優先度を付加し、
各優先度のグループに複数の車外のリスクとなる警報対象が含まれる場合に、視線移動量に基づいてグループ内での警報の出力順を決定する、
請求項1から6のいずれか一項記載の、車外リスクの視認誘導装置。
【請求項8】
前記制御部は、
警報を出力した車外のリスクとなる警報対象についての前記車両のドライバの視認を、前記車内検出デバイスの検出情報に基づいて確認した後に、次の車外のリスクとなる警報対象についての警報を前記出力部から出力する、
請求項7記載の、車外リスクの視認誘導装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外リスクの視認誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバは、自動車を運転して走行している最中は、車外のリスクに注意して認識することが望まれる。
しかしながら、ドライバは、人間である。ドライバは、走行中において可能性があるすべての車外のリスクを自らの意思で常に注意して確認し続けることは難しい。たとえば安全性が高い走行環境では、ドライバは、車外に十分に注意することなく、自動車を走行させることに集中してしまう可能性がある。このような場合でも、外乱としての車外のリスクは、生じる可能性が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-197407号公報
【特許文献2】特開2007-065704号公報
【特許文献3】特開2021-174436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、特許文献1~3では、自動車などの車両において、走行中の車外のリスクについて警告をして、ドライバによるリスクの対象の視認を助ける支援技術が提案されている。
しかしながら、特許文献1、2では、複数の車外のリスクに対してリスクレベルなどの優先度を付与し、最大の優先度のリスクについて警告を出力する。この場合、車外のリスクが複数である場合に、その複数のリスクのすべてについて、ドライバの視線を誘導することは難しい。確かに高いリスクの可能性があるものについては警報を出力することは大切であるが、それよりもレベルが低いリスクについてもドライバに対して警報を出力できるようにすることが望ましい、可能性がある。
また、特許文献3では、警報対象がある場合に、その警報の出力を、ドライバの認識状態に応じて変化させる技術を開示している。
【0005】
このように車両では、車外のリスクが複数ある場合において、その複数のリスクについて警報を出力できるようにすることが求められる。
特に、複数の車外のリスクについて警報を出力する場合には、車両には、ドライバの負担を抑えるように警報を出力することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車外リスクの視認誘導装置は、車両のドライバへ車外のリスクへの視線誘導のための警報を出力する出力部、を有する車外リスクの視認誘導装置であって、前記車両のドライバについての視線方向を取得可能な情報を検出する車内検出デバイスと、前記車内検出デバイスの検出情報を取得可能な制御部と、を有し、前記制御部は、前記車内検出デバイスから取得する検出情報から、ドライバの視線方向を取得し、取得したドライバの視線方向を基準にして、複数の車外のリスクとなる警報対象の各々を視認させるための視線移動量を演算し、複数の車外のリスクについての前記出力部からの警報の出力順を、少なくとも、ドライバの視線方向からリスクとなる警報対象を視認させるための視線移動量を用いて決定し、前記出力部から、決定した警報順にしたがって、複数の車外のリスクとなる警報対象を視認させるための警報を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、制御部は、車内検出デバイスから取得する検出情報から、ドライバの視線方向を取得する。そして、制御部は、取得したドライバの視線方向を基準にして、複数の車外のリスクとなる警報対象の各々を視認させるための視線移動量を演算する。また、制御部は、複数の車外のリスクについての警報の出力順を、少なくとも、ドライバの視線方向からリスクとなる警報対象を視認させるための視線移動量を用いて決定する。また、制御部は、出力部から、決定した警報順にしたがって、複数の車外のリスクとなる警報対象を視認させるための警報を出力する。
これにより、本発明では、車外のリスクが複数ある場合において、その複数のリスクについて警報を出力できる。しかも、本発明では、ドライバの負担を抑えるように、複数の車外のリスクについての警報を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る車外リスクの視認誘導装置が適用される自動車と、その一例の走行環境との説明図である。
図2図2は、車外リスクの視認誘導装置として機能する、図1の自動車の制御系についての説明図である。
図3図3は、図2のECUによるリスク認識誘導制御のフローチャートである。
図4図4は、図3の警報順決定制御の詳細なフローチャートである。
図5図5は、図1の自動車の、一例の走行環境での各リスクとなる警報対象の視線方向と視線移動量との対応関係の説明図である。
図6図6は、メモリに記録される警報予定リストの説明図である。
図7図7は、複数の車外のリスクとなる警報対象についての、複数の視認順候補の説明図である。
図8図8は、図3の警報出力制御の詳細なフローチャートである。
図9図9は、複数の車外のリスクとなる警報対象についての警報順の一例の説明図である。
図10図10は、複数の車外のリスクとなる警報対象についての警報順の他の例の説明図である。
図11図11は、複数の車外のリスクとなる警報対象についての警報順のさらに他の例の説明図である。
図12図12は、本発明の第二実施形態に係る車外リスクの視認誘導装置が適用されるサーバ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る車外リスクの視認誘導装置が適用される自動車1と、その一例の走行環境との説明図である。自動車1は、車両の一例である。
図1の自動車1には、ドライバ2が乗車し、ドライバ2の運転操作にしたがって走行できる。なお、自動車1には、この他にも、ドライバ2の運転操作を支援して走行したり、ドライバ2の運転操作によらずに自動制御により走行したり、できるものでよい。このような走行であっても、原則的に、ドライバ2は、自動車1が走行している場合には車外のリスクなどに注意し、リスクを回避するように自動車1の走行を操作することが望まれる。
【0011】
しかしながら、ドライバ2は、人間である。ドライバ2は、走行中において可能性があるすべての車外のリスクを自らの意思で常に注意して確認し続けることは難しい。例えば安全性が高い走行環境では、ドライバ2は、車外に十分に注意することなく、自動車1を走行させることに集中してしまう可能性がある。このような場合でも、外乱としての車外のリスクは、生じる可能性が残されている。
例えば図1の自動車1の前側の周囲には、他の車両である第一自動車91又は第二自動車92や、歩行者93などが存在する可能性がある。他の車両や歩行者93は、自動車1の前を横断する可能性がある。
また、図1の自動車1の後方には、他の車両である第一バイク95、第二バイク96、第三バイク98、第四バイク97などが存在する可能性がある。機動力が高いこれらのバイク95~98は、自動車1の横を通過して自動車1を追い越すことがある。
また、自動車1が走行する道路などには、例えば落下物、石、杭、段差、などの路上物94が存在したり、路地といった他の道路の出口99が接続されたりすることがある。路地の出口99からは、他の車両や歩行者93が出てくることがある。また、自動車1が走行する道路には、信号機、横断歩道、他の道路の合流区間、などが設けられることがある。ドライバは、移動する車外のリスクの対象とともに、道路にある車外のリスクの対象についても、注意する必要がある。
このように自動車1には、走行中に、各種の車外のリスクが生じ得る。また、自動車1には、複数の車外のリスクが同時多発的に発生する可能性がある。自動車1が、これら複数の車外のリスクについて警報を出力することにより、ドライバ2の負担を軽減することが期待できる。
【0012】
図2は、車外リスクの視認誘導装置として機能する、図1の自動車1の制御系10の説明図である。
図2の制御系10は、制御装置11を有する。制御装置11は、入出力部12、タイマ13、メモリ14、ECU15、及び、これらが接続されるシステムバス16、を有する。入出力部12には、複数の車両デバイスとして、車外カメラ21、車外レーダ22、車内カメラ23、デジタルアウタミラー24、リアビューモニタ25、メータモニタ26、スピーカ27、車外通信デバイス28、が接続される。
【0013】
入出力部12は、例えば制御装置11の入出力インタフェースである。入出力部12には、制御装置11で用いる各種の情報が入力され、制御装置11が生成した各種の情報が出力される。自動車1の制御系10では、上述した視認誘導装置の制御装置11を含む複数の制御装置の入出力部12が不図示の車ネットワークに接続される。また、上述した車両デバイスは、視認誘導装置の制御装置11とは別の制御装置に接続されてもよい。この場合、車ネットワークとそれに接続される制御装置とは、入出力部12の一部とすればよい。
【0014】
車外カメラ21は、自動車1の車外を撮像するカメラである。車外カメラ21は、自動車1の車外を、360度の全周において撮像するものが望ましい。例えば図1には、自動車1に設けられる複数のカメラとして、フロントカメラ51、右前カメラ52、右後カメラ53、リアカメラ54、左後カメラ55、左前カメラ56、が示されている。フロントカメラ51は、自動車1の前側を撮像する。右前カメラ52は、自動車1の右前側を撮像する。右後カメラ53は、自動車1の右後側を撮像する。リアカメラ54は、自動車1の後側を撮像する。左後カメラ55は、自動車1の左後側を撮像する。左前カメラ56は、自動車1の左前側を撮像する。このような複数のカメラは、自動車1の車外を、360度の全周において撮像することができる。
そして、車外カメラ21により自動車1の車外を撮像した画像には、例えば図1に示すように、自動車1の周囲に存在している車外のリスク(となる警報対象)が撮像され得る。
【0015】
車外レーダ22は、自動車1の周囲に存在している対象を、ミリ波などの信号波により検出する。車外レーダ22は、ミリ波などの信号波を出力し、その反射波の受光方向及び受光タイミングに基づいて、自動車1を基準とした対象の方向及び距離を検出することができる。車外レーダ22による自動車1の車外の検出結果には、例えば図1に示すように、自動車1の周囲に存在している車外のリスク(となる警報対象)が撮像され得る。
【0016】
車内カメラ23は、自動車1の車内にいるドライバ2を撮像する車内検出デバイスである。車内カメラ23の撮像画像には、車内カメラ23を基準にした、ドライバ2の顔や目の画像成分が含まれる。車内カメラ23は、例えば自動車1の左右方向の中央部分に設けてよい。この場合、自動車1の前方向へ向いているドライバ2の顔は、車内カメラ23により、それらの相対配置によって決まる所定の角度で斜めに撮像されることになる。ドライバ2の顔や目の向きは、車内カメラ23の撮像画像を解析することにより、特定することが可能である。
また、車内カメラ23は、近赤外線LEDなどを備えてもよい。この場合、車内カメラ23の撮像画像には、可視光によるドライバ2の画像成分と、近赤外線によるドライバ2の画像成分とが含まれ得る。近赤外線によるドライバ2の画像成分の経時的変化には、ドライバ2の心拍による画像の変化成分が含まれ得る。このような車内カメラ23は、自動車1のドライバ2についての視線方向を取得可能な情報を検出する車内検出デバイスとして機能し得る。
【0017】
デジタルアウタミラー24は、自動車1の左右両側に設けられる右後カメラ53及び左後カメラ55により撮像された自動車1の左右両側の画像を、ドライバ2に向けて表示する表示デバイスである。デジタルアウタミラー24は、例えば自動車1の左右のAピラーの下端部分などに埋め込まれている複数のモニタにより、自動車1の左右両側の画像を表示するものでよい。このような位置に自動車1の左右両側の画像を表示することにより、デジタルアウタミラー24は、従来から用いられている左右の反射式のドアミラーと同様の視認位置に、自動車1の左右両側の車外の画像を表示することができる。
【0018】
リアビューモニタ25は、自動車1の後部に設けられるリアカメラ54により撮像した自動車1の後側の画像をドライバ2に向けて表示する表示デバイスである。リアビューモニタ25は、例えば反射式のルームミラーのように、自動車1の左右方向の中央部分に設けられてよい。このような位置にリアビューモニタ25を設けることにより、リアビューモニタ25は、自動車1の左右方向の中央上部に設けられる反射式のルームミラーと同様の視認位置に、自動車1の後側の車外の画像を表示することができる。
【0019】
メータモニタ26は、ドライバ2の前に設けられる表示デバイスである。メータパネルには、例えば自動車1に設けられる例えば右後カメラ53の撮像画像、左後カメラ55の撮像画像、リアカメラ54の撮像画像などを表示してよい。この場合、ドライバ2は、ドライバ2の前にあるメータモニタ26において、自動車1の右後側の車外の画像、自動車1の左後側の車外の画像、自動車1の後側の車外の画像を確認することができる。
【0020】
スピーカ27は、自動車1のドライバ2へ向けて、合成音声などの音を出力する出力デバイスである。スピーカ27は、自動車1のドライバ2へ車外のリスクへの視線誘導のための警報を出力する出力部として機能できる。
【0021】
車外通信デバイス28は、自動車1の車外の基地局100などとの間に、無線通信回線を確立する。ここで、基地局100は、キャリア通信網に接続されるものであっても、次世代ITSのためのものであってもよい。また、車外通信デバイス28は、無線通信回線を、他の自動車などの他の移動体との間に確立してもよい。車外通信デバイス28は、基地局100などとの間に確立している無線通信回線を通じて、基地局100に接続されているサーバ装置101との間で、各種の情報を送受してよい。
【0022】
タイマ13は、時間、時刻を計測する。
【0023】
メモリ14は、ECU15が実行するプログラム、情報などをデータとして記録する。メモリ14は、RAM、ROM、HDD、SSDなどの複数の記憶デバイスで構成されてよい。RAMは、高速のランダムアクセスが可能な揮発性の半導体メモリである。ROM又はSSDは、プログラムなどを不揮発に記録可能な半導体メモリである。HDDは、磁気ディスクにプログラムなどを不揮発に記録可能なデバイスである。
【0024】
ECU15は、メモリ14に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、ECU15は、図2の自動車1の制御系10の制御部として機能する。ECU15は、システムバス16に接続されているタイマ13、メモリ14、入出力部12、さらには入出力部12に接続されている各種の車両デバイスの動作を制御して、車外リスクの視認誘導装置を制御系10に実現する。
【0025】
例えば、ECU15は、自動車1に設けられる車外カメラ21、車外レーダ22といった車外の検出デバイスから検出した情報を取得し、車外のリスクとなる警報対象を検出する。
車両のドライバ2へ警報すべき車外のリスクがある場合、ECU15は、車外のリスクとなる警報対象へドライバ2の視線を誘導するための警報を、スピーカ27、メータモニタ26などの出力部から出力する。
【0026】
なお、車両のドライバ2へ警報すべき車外のリスクは、1つであるとは限らない。警報すべき車外のリスクが複数ある場合、ECU15は、各種の条件判断により、警報すべき複数の車外のリスクの警報を出力する順番を決定し、決定した警報順にしたがって警報を出力するとよい。警報すべき複数の車外のリスクについての警報が同時多発的に出力されてしまうと、ドライバ2は、リスクの優劣、確認順を自ら判断して、順番に確認する必要がある。ドライバ2の負担は高い。また、ドライバ2によっては、複数の車外のリスクについての警報が同時多発的に出力されることにより、状況把握にとまどう可能性がある。同時に出力する警報の数は、少なく抑えることが望まれる。また、複数の車外のリスクについての警報は、できるだけ重大なリスクを、重大ではないリスクより優先しつつ、効率よくドライバ2に認識されることが望まれる。
【0027】
車内カメラ23の撮像画像には、ドライバ2の頭部が撮像され得る。ECU15は、車内カメラ23の撮像画像に基づいて、ドライバ2の顔や目の向きを取得することが可能である。この場合、ECU15は、ドライバ2の顔や目の向きをドライバ2の視線方向として用いて、ドライバ2が視認している車外のリスクとなる警報対象を特定することが可能である。また、ECU15は、車内カメラ23の撮像画像に基づいて、ドライバ2の心拍数を取得することが可能である。この場合、ECU15は、ドライバ2の心拍数の増加変化などに基づいて、車外のリスクとなる警報対象を視認したドライバ2の心身状態の変化を判定することが可能である。
【0028】
図3は、図2のECU15によるリスク認識誘導制御のフローチャートである。
図2のECU15は、図3のリスク認識誘導制御を、少なくとも自動車1が走行している場合に繰り返し実行する。ECU15は、自動車1にドライバ2が乗車している場合に、図3のリスク認識誘導制御を繰り返し実行してもよい。
【0029】
ステップST1において、ECU15は、自動車1の例えば車外カメラ21から、車外の検出情報としての撮像画像を取得する。ECU15は、車外レーダ22から、車外の検出情報を取得してもよい。
【0030】
ステップST2において、ECU15は、ステップST1において取得している車外の検出情報において、自動車1の周囲に存在する車外のリスクとなる警報対象を抽出して検出する。これにより、ECU15は、例えば図1に示すように、他の自動車、バイクなどの移動体、歩行者93、路上物94などを、車外のリスクとして検出してよい。ここで抽出する警報対象の種類は、予め定められていてもよい。
車外の撮像画像には、例えば、自動車1の周囲において移動している他の自動車の像が含まれる。大きな移動が生じない微小時間で連続して撮像される複数の撮像画像では、移動しているものなどが含まれない場合、基本的に重なり得る。移動しているものがある部分において、重ならなくなる。この重ならない画像部分の画像成分を解析することにより、ECU15は、自動車1の周囲で移動している例えば他の自動車を抽出できる。ECU15は、画像成分の解析において他の自動車といった警報対象ごとの画像パターンを照合して、合致度が最も高いパターンの属性の警報対象であると推定してよい。
車外レーダ22による車外の検出情報には、自動車1の周囲に存在する物体による反射波の成分が含まれる。ECU15は、例えば自動車1の周囲に物体が存在しない環境下での車外の検出情報との差分を得て、差分が警報対象によるものであるとして、自動車1の周囲に存在する物体を検出してよい。また、ECU15は、反射波の差分成分を、他の自動車といった警報対象ごとの差分パターンと照合して、合致度が最も高いパターンの属性の警報対象が存在すると推定してよい。
そして、ECU15は、において検出した1乃至複数の車外のリスクの情報を、リスクごとに整理して、メモリ14に記録してよい。
【0031】
ステップST3において、ECU15は、ステップST2において検出した1乃至複数の車外のリスクの情報に、警報制御に用いる警報順などを決定するための基本情報を追加する。ここでは、ECU15は、リスクの情報に、警報対象の視認方向の情報と、警報出力についての優先度の情報と、を追加する。
警報対象の視認方向とは、例えば自動車1のドライバ2が警報対象を直視する際に視線を向ける方向をいう。この段階での視認方向は、例えば自動車1の前方を基準とした角度で示してよい。この場合、自動車1の右側に存在する警報対象の視認方向は、プラスの角度で示される。自動車1の左側に存在する警報対象の視認方向は、マイナスの角度で示される。ECU15は、車外の撮像画像での警報対象の撮像位置、車外レーダ22による警報対象の検出情報に基づいて、自動車1を基準にした警報対象の方向を取得することができる。ECU15は、これらの方向を、自動車1のドライバ2が警報対象を直視する際に視線を向ける方向としてよい。
警報出力についての優先度とは、ドライバ2に対する警報の出力順を上げたり、下げたりするための指標をいう。自動車1の車外のリスクとなる警報対象は、例えば自動車1の走行への影響の可能性に基づいて、高いリスクのもの、通常のリスクのもの、低いリスクのもの、などの複数に分類できる。この場合、即時的な確認が要求され得る高いリスクのものは、高い優先度とすればよい。通常の確認が要求され得る通常のリスクのものは、中の優先度とすればよい。念のための確認が望ましい低いリスクのものは、低い優先度とすればよい。ECU15は、警報対象の相対的な位置や距離、警報対象に対しての自動車1の走行状態、自動車1の操作状態、などに応じて、各警報対象の優先度を判定してよい。なお、優先度の種類は、3種類には限られない。
そして、ECU15は、これらの追加情報を、メモリ14においてリスクごとに記録されている車外のリスクの情報に、追加する。
【0032】
ステップST4において、ECU15は、ステップST2において検出した1乃至複数の車外のリスクの情報を、優先度ごとのグループに分ける。ECU15は、例えば、メモリ14においてリスクごとに記録されている車外のリスクの情報を、優先度の高い順にソートしてよい。これにより、複数の車外のリスクの情報は、メモリ14において優先度が高いものから順番に並ぶことになる。複数の車外のリスクの情報は、メモリ14に記録される1つの警報予定リスト30において、優先度が高いものから順番にグループ化され得る。
【0033】
ステップST5において、ECU15は、ドライバ2の現在の視線方向を取得する。ECU15は、例えば、車内検出デバイスとしての車内カメラ23の最新の撮像画像を解析し、ドライバ2の顔の向き又は目の向きを、ドライバ2の現在の視線方向として取得してよい。
【0034】
ステップST6において、ECU15は、ドライバ2が既に認識している認識済みのリスクの有無を判断する。ECU15は、例えば、ステップ5で取得した視線方向を用いて、その視線方向にある車外のリスクとなる警報対象については、ドライバ2が既に認識している認識済みのリスクとしてよい。この他にも例えば、ECU15は、前回までのリスク認識誘導制御において既に警報を出力している車外のリスクとなる警報対象については、ドライバ2が既に認識している認識済みのリスクとしてよい。認識済みのリスクがある場合、ECU15は、処理をステップST7へ進める。認識済みのリスクがない場合、ECU15は、ステップST7の処理を飛ばして、処理をステップST8へ進める。
【0035】
ステップST7において、ECU15は、ステップST6において認識済みとしたリスクについては警報対象から除外する処理を実行する。ECU15は、例えば、メモリ14に記録される1つの警報予定リスト30において、認識済みリスクについて警報出力のスキップを設定する。
【0036】
ステップST8以降の処理において、ECU15は、複数の車外のリスクについての警報順を決定し、警報順にしたがって実際に警報を出力する。ECU15は、まず、未処理の高い優先度のグループを選択する。ステップST8の処理を開始するまでに、メモリ14には、1乃至複数の車外のリスクの情報が、優先度の高い順にソートされて記録されている。ECU15は、メモリ14に記録されている複数の車外のリスクの情報から、先頭の車外のリスクの情報とともに、それと優先度の差がない同じ優先度の車外のリスクの情報とを取得する。これにより、ECU15は、未処理の高い優先度のグループを選択できる。
【0037】
ステップST9において、ECU15は、ステップST8で取得したグループの1乃至複数の車外のリスクについて、不認識のリスクが複数存在するか否かを判断する。ECU15は、ステップST7において、認識済みリスクについて警報出力のスキップを設定する。この場合、ECU15は、取得している1乃至複数の車外のリスクに、警報出力のスキップが設定されていないものが複数存在するか否かを判断することにより、不認識のリスクが複数存在するか否かを判断してよい。
そして、不認識のリスクとして複数が存在する場合、ECU15は、それらの間での警報順を決定するために、処理をステップST10へ進める。
これに対し、不認識のリスクが1つである場合、ECU15は、警報順を決定することなく警報を出力するための、処理をステップST11へ進める。
【0038】
ステップST10において、ECU15は、複数の不認識のリスクについての警報順を決定する。警報順の決定制御については、後述する。
【0039】
ステップST11において、ECU15は、不認識のリスクについての警報を出力する。ECU15は、例えばスピーカ27から、リスクとなる警報対象の視認方向を案内する合成音声を出力する。ECU15は、メータモニタ26に、リスクとなる警報対象の視認方向の案内表示を出力する。ドライバ2は、音声や表示にしたがって、視認方向を見る。これにより、ドライバ2は、視認方向にあるリスクとなる警報対象を視認することができる。
【0040】
ステップST12において、ECU15は、不認識のリスクのすべてのグループについて警報を出力し終えたか否かを判断する。未処理のグループが残っている場合、ECU15は、処理をステップST8へ戻す。ECU15は、ステップST12において未処理のグループがないと判断するまで、ステップST8からステップST12の処理を繰り返す。これにより、ECU15は、優先度の順番で、複数のグループに属する複数の車外のリスクとなる警報対象についての警報を順番に出力することができる。また、ECU15は、優先度に差がない同じ優先度の複数の車外のリスクとなる警報対象について、警報順にしたがって出力することができる。
【0041】
図4は、図3の警報順決定制御の詳細なフローチャートである。
ECU15は、例えば図3のステップST10において、図4の警報順決定制御を実行してよい。
【0042】
ステップST21において、ECU15は、取得している複数の車外のリスクとなる警報対象の中から、未処理の1つの警報対象を選択する。
【0043】
ステップST22において、ECU15は、ステップST21で選択した警報対象についての、視線移動量を演算する。
メモリ14に記録されている車外のリスクの情報には、自動車1を基準にした警報対象の視線方向の情報が含まれる。この自動車1を基準にした警報対象の視線方向は、たとえば自動車1の前方を基準にした警報対象が存在する位置についての方向の角度でよい。
また、ECU15は、ステップST5においてドライバ2の現在の視線方向を取得している。ドライバ2の現在の視線方向は、たとえば自動車1の前方を基準にしたドライバ2の最新の視線方向でよい。
ECU15は、ドライバ2の現在の視線方向を基準にして、選択した警報対象の視線方向へ視線を向けるための視線の移動角度を、視線移動量として演算してよい。このように、視線移動量とは、ドライバ2が、現在の視線方向から、警報対象が存在する位置についての方向へ視線を移動させる角度をいう。
また、ECU15は、選択した警報対象を直視するための直視の視線移動量だけではなく、自動車1に設けられる各種のミラーやモニタにおいて間接的に視認するための視線の移動角度を、間接視の視線移動量として併せて演算してもよい。車外カメラ21は、基本的に、自動車1の周囲360度を撮像している。車外カメラ21の撮像画像には、選択した警報対象の像が含まれる。この警報対象の像が例えばデジタルアウタミラー24、リアビューモニタ25、又はメータモニタ26に表示されることにより、ドライバ2は、警報対象を間接的に視認することができる。また、警報対象の相対的な位置によっては、警報対象は、反射式のルームミラーや、反射式のサイドミラーに映り込む。ECU15は、ドライバ2の現在の視線方向を基準にして、選択したミラー又はモニタへ視線を向けるための視線の移動角度を、間接視の視線移動量として演算してよい。また、ECU15は、リスクとなる警報対象ごとに直視の視認方向に基づいて、リスクとなる警報対象を表示可能なミラー又はモニタを選択し、選択したミラー又はモニタにおける間接視の視線移動量を演算してよい。間接視の視線移動量は、ドライバ2の現在の視線方向に応じて一概に断言することはできないが、直視の視線移動量より小さくなる傾向になることが期待できる。直視の視線移動量とともに間接視の視線移動量を併用することにより、複数の車外のリスクとなる警報対象を視認する必要があるドライバ2の総合的な視線移動を抑えられる可能性がある。
【0044】
ステップST23において、ECU15は、取得している複数の車外のリスクとなる警報対象の中からの選択が終了したか否かを判断する。未処理の警報対象が残っている場合、ECU15は、選択が終了していないと判断して、処理をステップST21へ戻す。ECU15は、選択終了と判断するまで、ステップST21からステップST23の処理を繰り返し、取得している複数の車外のリスクとなる警報対象についての、視線移動量を演算する。選択終了と判断すると、ECU15は、処理をステップST24へ進める。
【0045】
ステップST24において、ECU15は、複数の視認順候補を生成する。
ここで、視認順候補とは、取得している複数の車外のリスクとなる警報対象の視認順を示すものをいう。視認順候補には、例えば取得している複数の車外のリスクとなる警報対象が、視認する順番で格納されてよい。ECU15は、後述するステップST26において、複数の視認順候補の中から1つを、実際の警報出力に使用する警報順として選択する。
例えば車外のリスクとなる警報対象が2つである場合、ECU15は、基本的に2つの視認順候補を生成すればよい。
例えば車外のリスクとなる警報対象が3つである場合、ECU15は、基本的に6つの視認順候補を生成すればよい。
また、1つの警報対象について直視の視線移動量と間接視の視線移動量とが演算されている場合、ECU15は、基本的に上述したものの倍の数の視認順候補を生成すればよい。
各視認順候補は、複数の車外のリスクとなる警報対象を1回ずつ視認する内容とされればよい。
【0046】
ステップST25において、ECU15は、ステップST24において生成した各視認順候補について、各々の視認順の下でドライバ2が視線を移動させる場合での合計の視線移動量を演算する。これにより、ECU15は、例えば、ドライバ2の現在の視線方向の視線位置から、複数の車外のリスクとなる警報対象を、視認順候補の順番で視認する場合の合計の視線移動量を演算できる。
【0047】
ステップST26において、ECU15は、生成した複数の視認順候補の中から1つを、実際の警報出力に使用する警報順として選択する。ここで、ECU15は、合計の視線移動量の絶対値が最も小さい視認順候補を、警報順として選択してよい。
合計の視線移動量の絶対値を小さくするほうが、複数の車外のリスクとなる警報対象を順番に視認する際のドライバ2の負担を軽減できる、と考えられる。ドライバ2は、視線が左右へ繰り返しに降られるように誘導される場合より、左右の一方から他方へ順番に誘導されるほうが、確認する際の負担が減る、と考えられる。
ECU15は、選択した警報順の情報を、メモリ14に記録する。
その後、ECU15は、処理を図3へ戻す。
【0048】
なお、図4の警報順決定制御を図3のステップST10にて実行する場合、ECU15は、複数の車外のリスクとなる警報対象を、単に同一レベルの優先度のものとして一律に扱うのではなく、複数の優先度に分けたグループごとに扱っている。ECU15は、警報順を、優先度に基づくグループごと生成する。ECU15は、優先度のグループごとに、視線移動量に基づいてグループ内での警報の出力順を決定する。これにより、ECU15は、複数の車外のリスクの中で優先して警報する重大な警報対象が存在する場合、それを考慮した順番で警報を出力しつつ、最小限の視線の移動量により視線を誘導することができる。
また、図4において、ECU15は、ドライバ2の視線方向にあるリスクを除いた、車外のリスクとなる警報対象が複数である場合に、視線移動量を演算して、警報の出力順を決定している。これにより、ECU15は、ドライバ2が既に視線を向けて認識している可能性が高い車外のリスクとなる警報対象については、それに対して再度の視線誘導をしないようにできる。ドライバ2の負担は軽減され得る。
【0049】
次に、自動車1の一例の走行環境ごとに、具体的な警報順の生成制御について説明する。
図5は、図1の自動車1の、一例の走行環境でのリスクとなる警報対象ごとの視線方向と視線移動量との対応関係の説明図である。
図5の走行環境では、自動車1の周囲の警報対象として、路上物94、第一自動車91、第一バイク95、第二バイク96、第四バイク97、第三バイク98、が存在している。また、ドライバ2は、第一自動車91が存在する右前方向へ視線を向けている。
この場合、ECU15は、各警報対象についての視線移動量を演算する。例えば路上物94を視認するための視線移動量として-θ1を演算する。第一自動車91を視認するための視線移動量として0を演算する。第一バイク95を視認するための視線移動量として+θ2を演算する。第二バイク96を視認するための視線移動量として+θ3を演算する。第三バイク98を視認するための視線移動量として-θ4を演算する。第四バイク97を視認するための視線移動量として-θ5を演算する。
【0050】
ここで、ECU15は、リスクとなる警報対象の視線移動量として、図中にNG方向として示す自動車1の真後ろ方向を通過しない移動方向での視線移動量を演算する、とよい。自動車1を走行しているドライバ2は、基本的に状態が前を向いている。この場合、ドライバ2の顔や目は、ドライバ2の真後ろを通過するように回すことができない。このため、ECU15は、リスクとなる警報対象の視線移動量として、自動車1の真後ろ方向を通過しない移動方向での視線移動量を演算する。これにより、視線移動量は、それにしたがってドライバ2が視線を回すことができるものとなる。ドライバ2が回すことができない視線の誘導をしてしまうような視線移動量を演算しないようにできる。
図5では、自動車1の後側にいる第四バイク97を視認するための視線移動量として、-θ5とともに、+θ6が示されている。+θ6を視線移動量として演算してしまうと、ドライバ2は、自動車1の前側を向いていた顔や目を、自動車1の後側を通過して、自動車1の左側へ向けるように回す必要がある。
【0051】
図6は、メモリ14に記録される警報予定リスト30の説明図である。
図6の警報予定リスト30には、図5の複数の車外のリスクとなる警報対象ごとのレコードが含まれる。具体的には、図6の警報予定リスト30には、第一自動車91のレコード、路上物94のレコード、第一バイク95のレコード、第二バイク96のレコード、第三バイク98のレコード、第四バイク97のレコード、が含まれる。ここでの各レコードには、リスクとなる警報対象の属性情報と、視線移動量の情報と、優先度のグループを示す情報と、が含まれている。例えば、第一自動車91のレコードには、警報対象の属性情報として第一自動車91、視線移動量の情報として0度、優先度のグループを示す情報として高、が含まれている。路上物94のレコードには、警報対象の属性情報として路上物94、視線移動量の情報として-θ1、優先度のグループを示す情報として低、が含まれている。これらの視線移動量は、直視での視線移動量である。
ECU15は、図4の処理において、図6の警報予定リスト30をメモリ14に記録してよい。
【0052】
そして、図6の警報予定リスト30の場合、ECU15は、第一行の第一自動車91のレコードについては、視線移動量が閾値以下であるため、ドライバ2が既に認識済みであると判断してよい。この場合、ECU15は、警報予定リスト30の第二行以下の複数のレコードの車外のリスクとなる警報対象について、優先度ごとのグループごとに警報順を生成することになる。警報予定リスト30の第二行以下の複数のレコードが、警報出力のためにグループ化される。ここでは、第一バイク95が高い優先度のグループに属する。第二バイク96が中の優先度のグループに属する。路上物94、第三バイク98、第四バイク97、が低い優先度のグループに属する。
【0053】
図7は、複数の車外のリスクとなる警報対象についての、複数の視認順候補のリスト40の説明図である。
図7には、図6の警報予定リスト30の中の、低い優先度のグループに属する複数の車外のリスクとなる警報対象が含まれる。具体的には、路上物94、第三バイク98、第四バイク97、が含まれている。
ECU15は、図4の処理において、図7に示す低い優先度のグループに属する複数の車外のリスクとなる警報対象について、複数の視認順候補を生成する。ここでは、警報対象が3つであるため、ECU15は、同図にNo1からNo6として示すように、そのすべての視認順である6つの視認順候補を生成する。
【0054】
図7のNo1の視認順候補では、路上物94、第三バイク98、第四バイク97を、その順番で視認する。この場合、ECU15は、合計の視線移動量として、「ABS(-θ1)+ABS(-θ4-(-θ1))+ABS(-θ5-(-θ4))」を演算してよい。
図7のNo2の視認順候補では、路上物94、第四バイク97、第三バイク98を、その順番で視認する。この場合、ECU15は、合計の視線移動量として、「ABS(-θ1)+ABS(-θ5-(-θ1))+ABS(-θ4-(-θ5))」を演算してよい。
ここで、ABS(x)は、xの絶対値を意味する。
同様の演算方法により、ECU15は、図7のNo3の視認順候補からNo6の視認順候補について、各々の合計の視線移動量を演算してよい。
ECU15は、図4の処理において、図7の複数の視認順候補のリスト40をメモリ14に記録してよい。
【0055】
そして、図7の場合、No1の視認順候補の合計の視線移動量と、No5の視認順候補の合計の視線移動量とが、それ以外の番号の視認順候補の合計の視線移動量より小さくなる。図7の場合、ドライバ2が視線を移動させて複数のリスクとなる警報対象のすべてを視認する際の、視線を最も大きく移動させる必要がある両端のリスクとなる警報対象の中の、一方から他方へ向けて順番に視線を移動させる視認順が、合計の視線移動量を最小にしている。
また、No1の視認順候補での最初の警報対象は、No5の視認順候補での最初の警報対象より、ドライバ2の最新の視線方向に対して近い。この場合、ECU15は、図7の複数の視認順候補の中から、No1の視認順候補を、警報順として選択してよい。
【0056】
なお、複数の車外のリスクとなる警報対象の中の1つを自動車1のミラーやモニタで視認する間接視を含めて判断する場合、図7の直視のレコードに対して、間接視のレコードを追加すればよい。追加する間接視のレコードは、1つではなく、複数でもよい。そして、ECU15は、直視のレコードと間接視のレコードとの中の一方を視認順に含むように、複数の視認順候補を生成すればよい。また、直視する場合と間接視する場合とを含める警報対象は、複数にしてもよい。ECU15は、例えばドライバ2の現在の視線方向を基準として、例えば90以上で視線を動かして直視する必要がある警報対象については、直視する場合と間接視する場合とを積極的に含めるようにしてもよい。この場合でも、ECU15は、複数の視認順候補の中から、合計の視線移動量の絶対値が最小となるものを、警報順として選択すればよい。ECU15は、直視する場合のみでの複数の合計の視線移動量と、間接視を含む場合での複数の合計の視線移動量との中から、合計の視線移動量の絶対値が最も小さくなるものを、警報の出力順として選択して決定することができる。
自動車1のミラーやモニタで視認する警報対象は、1つに限られない。例えばECU15は、1つのモニタに、複数の警報対象を順番に切り替えて表示することができる。
間接視により視認する警報対象が含まれることにより、ドライバ2が複数の車外のリスクとなる警報対象のすべてを直視により視認する場合と比べて、ドライバ2の負担は軽減され得る。ドライバ2が視認のために視線を向ける合計の移動量が減ることが期待できる。
【0057】
図8は、図3の警報出力制御の詳細なフローチャートである。
ECU15は、例えば図3のステップST11において、優先度のグループごとに、図8の警報出力制御を実行してよい。
【0058】
警報出力制御の最初のステップST31において、ECU15は、現在選択しているグループについて警報順が生成されているか否かを判断する。ECU15は、メモリ14から現在選択しているグループについて警報順の情報が得られるか否かに基づいて、警報順が生成されているか否かを判断してよい。警報順が生成されている場合、ECU15は、処理をステップST32へ進める。警報順が生成されていない場合、すなわち、現在選択しているグループには1つのリスクとなる警報対象しか含まれていない場合、ECU15は、処理をステップST34へ進める。
【0059】
ステップST32において、ECU15は、生成されている警報順において、未処理のリスクの情報を取得する。優先度のグループごとの図8の警報出力制御を開始した直後では、ECU15は、生成されている警報順の最初のリスクの情報を取得する。
【0060】
ステップST33において、ECU15は、ステップST32で取得したリスクの情報に基づいて、そのリスクについての警報を出力する。ECU15は、例えばリスクとなる警報対象の視認方向の案内などを、音声又は表示により警報出力する。ECU15は、スピーカ27、デジタルアウタミラー24、リアビューモニタ25、メータモニタ26、などの出力部から、警報を出力する。ドライバ2は、出力された警報にしたがって、案内された方向を視認し、警報対象を視認することができる。その後、ECU15は、処理をステップST35へ進める。
【0061】
ステップST34において、ECU15は、現在選択しているグループに属している唯一のリスクの情報を取得して、そのリスクについての警報を出力する。ステップST34の処理内容は、ステップST32及びステップST33と同様でよい。ドライバ2は、出力された警報にしたがって、案内された方向を視認し、警報対象を視認することができる。その後、ECU15は、処理をステップST35へ進める。
【0062】
警報を出力した後のステップST35において、ECU15は、ドライバ2による視認状態を確認する。ECU15は、まず、ドライバ2の最新の撮像画像を取得し、ドライバ2の顔や目による最新の視線の方向を取得する。
【0063】
ステップST36において、ECU15は、取得したドライバ2の最新の視線の方向が、例えば各警報対象についてメモリ14に記録されている視線方向と合致するか否かを判断する。これらの視線方向が合致しない場合、ECU15は、処理をステップST35へ戻す。ECU15は、これらの視線方向の合致が判断されるまで、ステップST35からステップST36の処理を繰り返す。これらの視線方向が合致すると、ECU15は、処理をステップST37へ進める。
【0064】
ステップST37において、ECU15は、警報対象を視認する前後のドライバ2の心身状態を示す情報を取得する。ここでは、ECU15は、ドライバ2の心身状態を示す情報として、ドライバ2の心拍数を取得してよい。ドライバ2の心身状態を示す情報には、この他にも、目の瞳孔のサイズ、顔の血流量、などが使用可能と考えられる。これらの心身状態を示す情報の値は、ドライバ2がリスクの高い警報対象に対して注意を向けると、速やかに大きく変化し易いと考えられる。
【0065】
ステップST38において、ECU15は、ステップST37において取得した心拍数などのドライバ2の心身状態を示す情報に基づいて、ドライバ2が警報対象に応じたリスクを十分に認識しているか否かを判断する。警報対象には、上述するように確実に注意を向けた方がよい高いリスクのものや、注意を向けていなくてもよい低いリスクのものが含まれ得る。ECU15は、例えば警報対象の視認前後のドライバ2の心身状態を示す情報の値の変化量を、警報対象のリスクレベルに応じた閾値と比較して、ドライバ2が警報対象に応じたリスクを十分に認識しているか否かを判断してよい。例えば高いリスクとなる警報対象に対しては大きな閾値と比較することにより、ECU15は、ドライバ2が警報対象に応じたリスクを十分に認識していると判断することができる。これに対し、低いリスクとなる警報対象に対しては小さな閾値と比較することにより、ECU15は、ドライバ2が警報対象に応じたリスクを十分に認識していると判断することができる。
そして、ドライバ2が警報対象に応じたリスクを十分に認識していない場合、ECU15は、処理をステップST37へ戻す。ECU15は、ドライバ2が警報対象に応じたリスクを十分に認識していると判断するまで、ステップST37からステップST38の処理を繰り返す。ドライバ2が警報対象に応じたリスクを十分に認識していると判断すると、ECU15は、処理をステップST39へ進める。この時点では、ドライバ2は、警報出力された警報対象へ視線を向けて、その警報対象に応じたリスクを十分に認識している状態にある、といえる。
【0066】
ステップST39において、ECU15は、今回の図8の警報出力制御において、警報を出力していない未処理のリスクが残っているか否かを判断する。
現在選択しているグループについて警報順が生成されていない場合、現在選択しているグループには1つのリスクとなる警報対象しか含まれていない。この場合、ECU15は、今回の図8の警報出力制御において、警報を出力していない未処理のリスクが残っていないと判断する。ECU15は、本制御を終了して、処理を図3の警報出力制御へ戻す。
現在選択しているグループについて警報順が生成されている場合、現在選択しているグループには複数のリスクとなる警報対象が含まれている。この場合、ECU15は、少なくとも最初のステップST39の判断では、警報を出力していない未処理のリスクが残っていると判断する。ECU15は、処理をステップST32へ戻す。ECU15は、未処理のリスクが残っていないと判断するまで、ステップST32からステップST39の処理を繰り返す。これにより、ECU15は、現在選択しているグループに含まれる複数のリスクとなる警報対象について、警報順にしたがった順番で視認させるための警報を出力することができる。また、ECU15は、各警報に係る警報対象をドライバ2が視認してそのリスクを正しく認識していることを車内検出デバイスの検出情報に基づいて確認した上で、次の警報対象についての警報を順番に出力することができる。
これに対して、仮に例えば複数の車外のリスクについての警報を同時に出力してしまうと、ドライバ2は、同時に出力されている複数の警報について自ら視認の順番を判断した上で、複数の車外のリスクとなる警報対象を順番に視認してゆかなければならない。本実施形態では、このようなドライバ2の負担を軽減できる。しかも、本実施形態では、複数の車外のリスクについてドライバ2に確実的に視認させることができる。同時出力における視認ぬけなどのミスが生じ難くなる。
【0067】
なお、このように複数の車外のリスクとなる警報対象についてのドライバ2の視認状態を順番に判断して、複数の車外のリスクについての警報を順番に出力する場合、その制御が終えるまでには時間がかかる可能性がある。しかしながら、上述した本実施形態の制御では、ドライバ2は、警報を視認している間に、自動車1の前方などについても視線を向けることが可能である。複数の車外のリスクとなる警報対象を短時間で一つにまとめて視認する必要はない。車両を走行させているドライバ2にとって、基本的に自らの状況確認をしながら、複数の車外のリスクとなる警報対象を視認することができる。
ただし、複数の車外のリスクについての一連の警報出力に時間がかかると、自動車1の走行環境が警報の出力を開始した時点とは異なる状態になる可能性がある。この場合、ECU15は、ステップST39の処理において、警報開始からの経過期間をタイマ13から取得し、経過期間が所定値を超えていたら、図8の警報出力を強制終了してもよい。この場合、警報が出力されない警報対象が残存してしまうことになるが、仮にその警報対象のリスクが引き続き存在している場合には、次回の制御においてその警報対象についての警報が出力され得る。特に、その警報対象のリスクレベルが上がって、その優先度が高まることにより、次回の制御においてその警報対象についての警報が出力され易くなる。
【0068】
次に、複数の車外のリスクとなる警報対象についての警報の出力順の具体例について、図9から図11を用いて説明する。
図9から図11には、ドライバ2へ警報を出力する自動車1と、その周囲に存在する路上物94、第一バイク95、第二バイク96、とが示されている。
また、ドライバ2の現在の視線方向は、上述したいずれの警報対象の方向を向いていない。
【0069】
そして、図9では、第一バイク95が高い優先度とされ、第二バイク96が中の優先度とされ、路上物94が低い優先度とされている。
この場合、ECU15は、まず、高い優先度のグループにおいて、リスクとなる警報対象の1つである第一バイク95を処理対象として選択し、第一バイク95へ視線を誘導する。この際、ECU15は、第一バイク95を直視する視線移動量により視線を誘導しても、第一バイク95をデジタルアウタミラー24で間接視する視線移動量により視線を誘導してもよい。
次に、ECU15は、中の優先度のグループにおいて、リスクとなる警報対象の1つである第二バイク96を処理対象とし、第二バイク96へ視線を誘導する。この際、ECU15は、第二バイク96を直視する視線移動量により視線を誘導しても、第二バイク96をデジタルアウタミラー24で間接視する視線移動量により視線を誘導してもよい。
次に、ECU15は、低い優先度のグループにおいて、リスクとなる警報対象の1つである路上物94を処理対象とし、路上物94へ視線を誘導する。この際、ECU15は、路上物94を直視する視線移動量により視線を誘導しても、路上物94をリアビューモニタ25又はメータモニタ26で間接視する視線移動量により視線を誘導してもよい。
【0070】
これに対し、図10では、第一バイク95が高い優先度とされ、第二バイク96と路上物94とが低い優先度とされている。
この場合、ECU15は、まず、高い優先度のグループにおいて、リスクとなる警報対象の1つである第一バイク95を処理対象とし、第一バイク95へ視線を誘導する。この際、ECU15は、第一バイク95を直視する視線移動量により視線を誘導しても、第一バイク95をデジタルアウタミラー24で間接視する視線移動量により視線を誘導してもよい。
次に、ECU15は、中の優先度のグループに複数の警報対象が含まれるため、合計の視線移動量などに基づいて警報順を決定する。ここでは、ECU15は、路上物94の後に第二バイク96がくる警報順を決定している。この場合、ECU15は、まず、リスクとなる警報対象の1つである路上物94を処理対象とし、路上物94へ視線を誘導する。この際、ECU15は、直視の視線移動量又は間接視の視線移動量の中から、警報順において選択したものにより視線を誘導する。
次に、ECU15は、中の優先度のグループにおいて未処理として残っているリスクとなる警報対象の1つである第二バイク96を処理対象とし、第二バイク96へ視線を誘導する。この際、ECU15は、直視の視線移動量又は間接視の視線移動量の中から、警報順において選択したものにより視線を誘導する。
【0071】
また、図11では、第二バイク96と路上物94とが高い優先度とされ、第一バイク95が低い優先度とされている。
この場合、ECU15は、まず、高い優先度のグループに複数の警報対象が含まれるため、合計の視線移動量などに基づいて警報順を決定する。ここでは、ECU15は、路上物94の後に第二バイク96がくる警報順を決定している。この場合、ECU15は、まず、リスクとなる警報対象の1つである路上物94を処理対象とし、路上物94へ視線を誘導する。この際、ECU15は、直視の視線移動量又は間接視の視線移動量の中から、警報順において選択したものにより視線を誘導する。
次に、ECU15は、高い優先度のグループにおいて未処理として残っているリスクとなる警報対象の1つである第二バイク96を処理対象とし、第二バイク96へ視線を誘導する。この際、ECU15は、直視の視線移動量又は間接視の視線移動量の中から、警報順において選択したものにより視線を誘導する。
次に、ECU15は、中の優先度のグループに警報対象が含まれていないため、低い優先度のグループについての処理を実行する。ECU15は、低い優先度のグループにおいて、リスクとなる警報対象の1つである第一バイク95を処理対象とし、第一バイク95へ視線を誘導する。この際、ECU15は、第一バイク95を直視する視線移動量により視線を誘導しても、第一バイク95をデジタルアウタミラー24で間接視する視線移動量により視線を誘導してもよい。
【0072】
なお、図9から図11において、自動車1の周囲に存在する複数のリスクとなる警報対象の94~96の優先度が異なっている。ECU15は、図3のステップST3の処理において各リスクとなる警報対象に対して、各々の優先度を付与している。この際、ECU15は、各リスクリスクとなる警報対象の種別や属性を判断して、リスクとなる警報対象を類別し、その類別などに基づいて優先度を決定してよい。
たとえば、路上物94は、図1に示すように自動車1が走行する路面に存在する。路上物94は、路面に、凹凸を形成する。自動車1が路上物94の上を通過する場合、車体が傾いたりする可能性がある。これに対し、自動車1が路上物94の上を通過しない場合、自動車1の走行への影響はない。このため、ECU15は、リスクとなる警報対象が路面に対して動かないものである場合、リスクとなる警報対象をたとえば路上物94と判断してよい。また、ECU15は、路上物94が自動車1の予測走路81内にある場合に優先度を高くし、予測走路81の近くにある場合に通常の優先度とし、予測走路81から離れている場合に低い優先度とすればよい。
ここで、予測走路81は、たとえば図1に示すように、自動車1の進行方向前方に、設定すればよい。予測走路81の幅は、自動車1の幅を基本としつつ、一定のマージンを持たせてよい。予測走路81の長さは、図3の制御の繰り返し周期の間での自動車1の移動距離を基本としつつ、一定のマージンを持たせてよい。
他の自動車91~92、バイク95~98、歩行者9は、路上物94とは異なり移動する。また、移動特性は、移動体の属性ごとに異なる。バイク95~98は、自動車と比べて、自動車1の横をすり抜けるようにして前へ移動し易い。歩行者9は、自動車より速度は低いことが多いものの、進行方向を急に変更したり、道路へ急に飛び出したりすることがある。このため、ECU15は、リスクとなる警報対象が路面に対して動く移動体である場合、その動きの特性に基づいて、リスクとなる警報対象をたとえば他の自動車91~92、バイク95~98、歩行者9のいずれかと類別してよい。また、ECU15は、これらの移動体が自動車1の予測走路81内にある場合または予測走路81へ向けて近づくように移動している場合に優先度を高くし、予測走路81の近くを移動する場合に通常の優先度とし、予測走路81から離れたままである場合に低い優先度とすればよい。
このようにリスクとなる警報対象の種別や属性を判断して類別することにより、警報を出力する必要があるリスクの数の増大を抑制しつつ、必要なものについては優先度にしたがって優先的に警報を出力することができる。
【0073】
以上のように、本実施形態では、優先度に差がないグループごとに車外のリスクが複数で検出されている場合、ECU15は、検出デバイスの検出情報からドライバ2の視線方向を取得し、取得した視線方向を基準とした視線移動量を演算する。そして、ECU15は、複数の車外のリスクについての出力部からの警報の出力順を、少なくともリスクについての視線移動量に基づいて決定する。ここで、ECU15は、例えば、複数の車外のリスクを順番に視認した場合の視線移動量が最も小さくなるように、警報の出力順を決定してよい。また、出力部は、複数の車外のリスクへの視線誘導のための警報を、ECU15により決定された順番で、出力する。
これにより、自動車1のドライバ2は、少ない視線の移動により、複数の車外のリスクを順番に視認することが可能となる。
特に、本実施形態のように、複数の車外のリスクが、少ない視線の移動に視認可能な順番で、順番に出力されることにより、ドライバ2が複数の車外のリスクを視認しようとする際の負担が減る。これに対し、仮に例えば、複数の車外のリスクが一度にまとめて出力されてしまうと、ドライバ2は、複数の車外のリスクが一度に出力されることにより慌てながら、一度に出力される複数の車外のリスクをいそいで確認しようとする可能性がある。ドライバ2は、自失し易くなる。この他にも例えば、複数の車外のリスクの警報がランダムな順番で出力されてしまうと、視線移動量が小さくなるような順番で出力される場合と比べて、ドライバ2がすべての車外のリスクを確認し終えるまでに時間がかかってしまう可能性がある。本発明では、これらの事態が共に発生し難くなる。
このように本発明では、車外のリスクが複数ある場合において、その複数のリスクについて視線移動量が最も小さくなるように警報順を決定し、ドライバ2の負担を抑制するように警報を出力することができる。
【0074】
また、本実施形態では、ECU15は、リスクを直視する場合の直視の視線移動量とともに、リスクを自動車1のミラーで視認する場合又は自動車1の車載モニタで視認する場合の間接視の視線移動量とを演算する。そして、ECU15は、直視の視線移動量及び間接視の視線移動量の中の複数の車外のリスクを順番に視認した場合の視線移動量が最も小さくなる方を、警報の出力順の決定において選択する。これにより、ドライバ2は、警報にしたがって順番に車外のリスクを視認する際に、直視ではなく、自動車1のミラーや車載モニタにおいて間接的に視認することが可能になる。その結果、ドライバ2の視線の移動量は、さらに抑えられることが期待できる。
【0075】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る車外リスクの視認誘導装置について説明する。
【0076】
図12は、本発明の第二実施形態に係る車外リスクの視認誘導装置が適用されるサーバ装置101の説明図である。
図12のサーバ装置101は、サーバ通信デバイス102、サーバタイマ103、サーバメモリ104、サーバCPU105、及び、これらが接続されるサーババス106、を有する。
【0077】
サーバ通信デバイス102は、サーバ装置101の外部との通信デバイスである。サーバ通信デバイス102は、図2に示すように、基地局100を通じて、自動車1の車外通信デバイス28との間で情報を送受する。
サーバタイマ103は、時刻、時間を計測する。
サーバメモリ104は、サーバCPU105が実行するプログラム、情報などをデータとして記録する。
サーバCPU105は、サーバメモリ104に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、サーバCPU105は、図12のサーバ装置101の動作を制御する。サーバCPU105はサーババス106に接続されているサーバタイマ103、サーバメモリ104、サーバ通信デバイス102の動作を制御して、サーバ装置101において、車外リスクの視認誘導制御を実行する。
【0078】
そして、本実施形態において、サーバCPU105は、図3と同様の車外リスクの視認誘導制御を実行する。
この場合、自動車1の制御系10のECU15は、サーバ装置101がリスク認識誘導制御を実行するために使用する情報を、サーバ装置101との送受を制御すればよい。自動車1の制御系10のECU15は、例えば自車で検出している上述した各種の情報を、サーバ装置101へ送信してよい。
また、自動車1の制御系10のECU15は、サーバ装置101から受信した警報出力に関する情報に基づいて、自車のスピーカ27から、リスクとなる警報対象の視認方向を案内する合成音声を出力してよい。
【0079】
このように本実施形態のサーバ装置101は、自動車1と通信して、自動車1のドライバ2の視線を警報対象へ誘導するリスク認識誘導制御を実行することができる。
【0080】
なお、本実施形態において、サーバ装置101は、基地局100と別体のものとして説明している。この他にも例えば、サーバ装置101は、基地局100と一体化されてもよい。5Gなどの次世代通信の基地局100は、高度な演算処理機能を有するものがある。この場合、サーバ装置101は、複数の基地局100に分散して設けられてよい。この場合、各基地局100に対応するサーバ装置101は、各基地局100のゾーンに存在する複数の自動車1について、複数のドライバ2の視線を誘導する制御を実行してよい。また、サーバ装置101のサーバCPU105は、各自動車1のリスクとなる警報対象として、他の自動車などにより検出されている警報対象を選択してもよい。また、サーバCPU105は、複数の自動車1などの移動体や歩行者93を地図データにマッピングして、そのマッピングに基づいて各自動車1のリスクとなる警報対象を選択してもよい。
【0081】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形又は変更が可能である。
【0082】
上述した実施形態では、自動車1の制御系10が、又は自動車1と通信するサーバ装置101が、車外リスクの視認誘導制御を実行している。
この他にも例えば、自動車1の制御系10と、自動車1と通信するサーバ装置101とは、協働して、車外リスクの視認誘導制御を実行してもよい。
【0083】
上述した実施形態では、ECU15は、複数のリスクとなる警報対象について優先度を付与し、優先度のグループごとに複数のリスクの警報順を決定している。
この他にもたとえば、ECU15は、複数のリスクとなる警報対象について優先度を付与することなく、複数のリスクの全体において警報順を決定してもよい。
【0084】
上述した実施形態では、ECU15は、リスクとなる警報対象についての警報を出力した場合に、ドライバ2の視線に基づく認識と、ドライバ2の心拍数といった心身状態の変化とを確認してから、次のリスクの警報を出力している。
この他にもたとえば、ECU15は、ドライバ2の視認と、ドライバ2の心身状態の変化との中の一方のみを確認したら、次のリスクの警報を出力してもよい。
また、ECU15は、ドライバ2についての確認をすることなく、たとえばタイマ13により一定の時間が計測されたら、次のリスクの警報を出力してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…自動車(車両)、2…ドライバ、10…制御系(車外リスクの視認誘導装置)、11…制御装置、12…入出力部、13…タイマ、14…メモリ、15…ECU(制御部)、16…システムバス、21…車外カメラ、22…車外レーダ、23…車内カメラ(車内検出デバイス)、24…デジタルアウタミラー(出力部)、25…リアビューモニタ(出力部)、26…メータモニタ(出力部)、27…スピーカ(出力部)、28…車外通信デバイス、30…警報予定リスト、40…複数の視認順候補のリスト、51…フロントカメラ、52…右前カメラ、53…右後カメラ、54…リアカメラ、55…左後カメラ、56…左前カメラ、81…予測走路、91…第一自動車、92…第二自動車、93…歩行者、94…路上物、95…第一バイク、96…第二バイク、97…第四バイク、98…第三バイク、99…出口、100…基地局、101…サーバ装置、102…サーバ通信デバイス、103…サーバタイマ、104…サーバメモリ、105…サーバCPU、106…サーババス


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12