(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115055
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】抵抗素子及びセメント抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 1/148 20060101AFI20240819BHJP
H01C 1/03 20060101ALI20240819BHJP
H01C 3/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H01C1/148 A
H01C1/03
H01C3/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020506
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】591181908
【氏名又は名称】ミクロン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】森島 誠也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕史
【テーマコード(参考)】
5E028
【Fターム(参考)】
5E028BA02
5E028BB01
5E028CA12
5E028EA03
5E028EA12
5E028EA16
5E028EB06
5E028JA11
5E028JB06
(57)【要約】
【課題】電圧のON/OFFを繰り返しても、抵抗線の断線が起こりにくい抵抗素子及びセメント抵抗器を提供する。
【解決手段】柱状の芯2と、芯に巻回される抵抗線3と、芯の両端部の各々に圧入されるキャップ4とを備え、キャップと抵抗線は一カ所でのみ接続され、接続箇所以外で両者は互いに接触しない抵抗素子1。この抵抗素子を備えたセメント抵抗器であって、抵抗素子のキャップに一体化された端子板4cと、抵抗素子を収容する溝を有するケースとを備え、抵抗素子の端子板以外の部分を溝に収容した状態で、溝の中にセメントを充填して硬化させたセメント抵抗器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の芯と、
該芯に巻回される抵抗線と、
前記芯の両端部の各々に圧入されるキャップとを備え、
該キャップと前記抵抗線は一カ所でのみ接続され、該接続箇所以外で両者は互いに接触しないことを特徴とする抵抗素子。
【請求項2】
前記キャップは、とば口に前記芯の軸線方向に対して垂直な方向に突出する突出部を備え、該突出部に前記抵抗線の端部が接続されることを特徴とする請求項1に記載の抵抗素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抵抗素子を備えたセメント抵抗器であって、
前記抵抗素子のキャップに一体化された端子板と、
前記抵抗素子を収容する溝を有するケースとを備え、
前記抵抗素子の前記端子板以外の部分を前記溝に収容した状態で、該溝の中にセメントを充填して硬化させたことを特徴とするセメント抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状の芯に抵抗線を巻回した抵抗素子、及びこの抵抗素子をセメントで封入した抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成を有するセメント抵抗器は広く一般的に用いられ、一例として、特許文献1には、
図3に示すように、円柱状の芯22に抵抗線23を巻回し、芯22の端部にキャップ24のキャップ部24aを圧入し、キャップ24のとば口24dに抵抗線23の端部が溶接された突出部24bを備える抵抗素子21を、
図4に示す磁器ケース25の溝26に収容し、
図5に示すように、端子板24cの一部を突出させた状態でセメント32を充填して硬化させたセメント抵抗器31が記載されている。
【0003】
上記セメント抵抗器31では、
図6に示すように、キャップ24の突出部24bに抵抗線23の端部23aをスポット溶接している。これにより、発熱による抵抗線23の線膨張に起因する突出部24bのエッジ24eと抵抗線23の接触不良が生じても、両者の接触箇所を限定することで、電圧のON/OFFを繰り返しても抵抗線23が断線する回数のばらつきが小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のセメント抵抗器31は、保守管理が容易となる点で有用であるが、依然として発熱による抵抗線23の線膨張に起因するエッジ24eと抵抗線23の接触不良によって抵抗線23の断線が生じてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、電圧のON/OFFを繰り返しても抵抗線が断線しにくいセメント抵抗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る抵抗素子は、柱状の芯と、該芯に巻回される抵抗線と、前記芯の両端部の各々に圧入されるキャップとを備え、該キャップと前記抵抗線は一カ所でのみ接続され、該接続箇所以外で両者は互いに接触しないことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、キャップと抵抗線が接続箇所以外で接触することがないため、発熱による抵抗線の線膨張に起因する突出部と抵抗線の接触不良が生じず、電圧のON/OFFを繰り返しても抵抗線の断線が生じにくい。
【0009】
上記抵抗素子のとば口に前記芯の軸線方向に対して垂直な方向に突出する突出部を設け、該突出部に前記抵抗線の端部を接続するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明は、上記抵抗素子を備えたセメント抵抗器であって、前記抵抗素子のキャップに一体化された端子板と、前記抵抗素子を収容する溝を有するケースとを備え、前記抵抗素子の前記端子板以外の部分を前記溝に収容した状態で、該溝の中にセメントを充填して硬化させたことを特徴とする。このセメント抵抗器は、上記抵抗素子を備えるため、抵抗線の断線が生じにくい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、電圧のON/OFFを繰り返しても抵抗線の断線が生じにくい抵抗素子及びセメント抵抗器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る抵抗素子の一実施の形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の抵抗素子のキャップ及びその近傍を示す拡大斜視図である。
【
図4】従来の抵抗器の磁器ケースの一例を示す斜視図である。
【
図5】従来のセメント抵抗器の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図3の抵抗素子のキャップ及びその近傍を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1及び
図2は、本発明に係る抵抗素子の一実施の形態を示し、この抵抗素子1は、柱状の芯2と、芯2に巻回される抵抗線3と、芯2の両端部の各々に圧入されるキャップ4とで構成される。
【0015】
芯2は、セラミック等からなり、φ2~20mm、長さ10~400mm程度に形成される。抵抗線3は、銅ニッケル線、ニクロム線等であって、φ0.05~1.5mm程度である。これら芯2及び抵抗線3は、上記従来の芯22及び抵抗線23と同じものである。
【0016】
キャップ4は、鋼板等からなり、キャップ部4aと、とば口4dに突出部4bと、端子板4cとを備える。突出部4bは、芯2の軸線方向に対して垂直な方向に突出し、この突出部4bに抵抗線3の端部3aがスポット溶接等で接続され、キャップ4と抵抗線3はこの一カ所でのみ接続される。
【0017】
図示を省略するが、背景技術の欄で説明したセメント抵抗器31と同様に、上記構成を有する抵抗素子1を絶縁ケース、ダイカストケース、金属絞りケース等の溝に収容し、端子板4c以外の部分を溝に収容した状態で、溝の中にセメントを充填して硬化させてセメント抵抗器を製造する。
【0018】
上記セメント抵抗器によれば、
図2に示すように、キャップ4と抵抗線3は、突出部4bと抵抗線3の端部3aの一カ所でのみ接続され、抵抗線3がキャップ4のその他の部分と接触することがない。そのため、発熱による抵抗線3の線膨張が発生しても、従来のように抵抗線3がとば口4dや突出部4bのエッジに接触することがないため、発熱による抵抗線3の線膨張に起因する抵抗線3の接触不良が生じず、電圧のON/OFFを繰り返しても抵抗線3の断線が生じにくくなり、長期間にわたって安定して使用することができる。
【0019】
尚、上記実施の形態においては、キャップ4の突出部4bと抵抗線3の端部3aを接続したが、キャップ4と抵抗線3を一カ所で接続することができ、線膨張が発生しても抵抗線3がキャップ4の他の部分と接触することがなければ、他の構成を採用することもできる。
【0020】
また、上記実施の形態においては、キャップ部4aに端子板4cを一体的に形成したが、端子板4cを別部材としてもよい。また、キャップ部4aを端子とする抵抗素子とし、セメント抵抗器以外の抵抗器に使用することもできる。
【0021】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0022】
1 抵抗素子
2 芯
3 抵抗線
4 キャップ
4a キャップ部
4b 突出部
4c 端子板
4d とば口