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特開2024-115058洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115058
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/50 20060101AFI20240819BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20240819BHJP
   C11D 7/36 20060101ALI20240819BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20240819BHJP
   C11D 7/24 20060101ALI20240819BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C11D7/50
C11D7/32
C11D7/36
C11D7/26
C11D7/24
H01L21/304 647A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020513
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000123491
【氏名又は名称】化研テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 薫夫
(72)【発明者】
【氏名】赤松 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】谷口 悠希子
【テーマコード(参考)】
4H003
5F157
【Fターム(参考)】
4H003BA12
4H003DA09
4H003DA12
4H003DA15
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB09
4H003EB13
4H003EB14
4H003EB24
4H003ED02
4H003ED04
4H003ED28
4H003ED29
4H003ED31
4H003FA04
4H003FA06
4H003FA28
5F157AA75
5F157AA99
5F157BC03
5F157BC04
5F157BC07
5F157BC13
5F157BE12
5F157BF02
5F157BF22
5F157BF24
5F157BF32
5F157BF34
5F157BF48
5F157BF52
5F157BF54
5F157BF56
5F157BF58
5F157BF59
5F157BF72
5F157BF73
5F157BF96
5F157DB03
5F157DB18
(57)【要約】
【課題】本発明は、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れた洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液を提供することを目的とする。
【解決手段】第1化合物と、溶媒と、水とを含む洗浄剤組成物であって、前記第1化合物は、窒素原子含有有機酸及び/又は前記窒素原子含有有機酸の塩であり、前記窒素原子含有有機酸は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記洗浄剤組成物のpHは6以上である、洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1化合物と、溶媒と、水とを含む洗浄剤組成物であって、
前記第1化合物は、窒素原子含有有機酸及び/又は前記窒素原子含有有機酸の塩であり、
前記窒素原子含有有機酸は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記洗浄剤組成物のpHは6以上である、洗浄剤組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、炭素数2以上4以下のカルボキシアルキル基を示し、Rは、炭素数2以上4以下のカルボキシアルキル基又は水素原子を示し、Rは、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基又は水素原子を示す。)
【化2】

(式(2)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキレン基を示す。)
【化3】

(式(3)中、R及びRは、それぞれ独立にホスホン酸基又は炭素数1以上3以下のホスホノアルキル基を示し、Rは、ヒドロキシ基又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基を示し、R10は、アミノ基又は炭素数1以上3以下のアミノアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記第1化合物の含有率は、有機酸換算で0.1質量%以上4質量%以下である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記洗浄剤組成物のpHは、6以上12以下である、請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記溶媒は、グリコールエーテル、芳香族アルコール、エステル系化合物、炭化水素系化合物、及び脂肪族アルコールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記グリコールエーテルは、親水性グリコールエーテル及び/又は疎水性グリコールエーテルであり、
前記親水性グリコールエーテルは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、2-メトキシブタノール、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、及びエチレングリコールモノプロピルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記疎水性グリコールエーテルは、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ベンジルグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、フェニルプロピレングリコール、ヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記芳香族アルコールは、ベンジルアルコール、4-イソプロピルベンジルアルコール、1-フェニルエタノール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、α,α-ジメチルフェネチルアルコール、1-フェニル-1-プロパノール、及びシンナミルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記エステル系化合物は、グルタル酸ジメチル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジエチル、吉草酸メチル、ヘキサン酸メチル、ヘプタン酸メチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、及びヘプタン酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記炭化水素系化合物の炭素数は、9以上13以下であり、
前記脂肪族アルコールの炭素数は、5以上10以下である、請求項4に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記窒素原子含有有機酸は、イミノ二酢酸、(2-ヒドロキシエチルイミノ)二酢酸、グリシン、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、及びアレンドロン酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物用の原液であって、
前記第1化合物の含有率は、有機酸換算で0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記溶媒の含有率は、11質量%以上99.8質量%以下であり、
水によって体積基準で1.1倍以上20倍以下に希釈して用いられる、洗浄剤組成物用の原液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集積回路(IC)及びコンデンサ等の電子部品をプリント基板、カメラモジュール部品等にはんだ付けする際に、ソルダペーストからフラックスが飛散し、電極の周囲に残渣として付着することが知られている(以下、上述のフラックスの残渣を「フラックス残渣」という場合がある。)。
【0003】
フラックス残渣は、はんだ接合部における腐食等の原因となるほか、ワイヤボンディングを行う工程での接合不良及び、樹脂封止をする工程におけるモールド樹脂との密着不良等の原因となりうる。そのため、フラックス残渣は洗浄剤で除去する必要があり、従来から種々の洗浄剤が提案されている(特許文献1~特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2007/119392号
【特許文献2】国際公開WO2009/020199号
【特許文献3】特開2018-199808号公報
【特許文献4】特開2019-210427号公報
【特許文献5】国際公開WO2020/116524号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、洗浄剤組成物において、フラックス残渣の洗浄性の向上が求められている。例えば、Sn合金のはんだは、リフロー時に合金中のSnとフラックス中の活性剤成分(有機酸、有機ハロゲン化物など)との反応が生じ、フラックス残渣中にSn塩が含まれることとなる。Sn塩は有機溶剤を使用した洗浄剤に難溶であり、これまで、Sn塩のフラックス残渣の除去性に優れた洗浄剤組成物が開発されていた(特許文献1~特許文献5)。
しかしながら、このような洗浄剤組成物は、Sn合金を含むはんだにおいて生じるSn塩のフラックス残渣に対する洗浄性に優れる一方で、In合金を含むはんだにおいて生じるIn塩のフラックス残渣及び/又はBi合金を含むはんだにおいて生じるBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性が十分でない場合があった。また、In元素及びBi元素は、Sn元素に比して、蒸発エンタルピー及び第1イオン化エネルギーの合計が相対的に低いことに起因して、In合金のはんだ及びBi合金のはんだにおいて、金属塩(フラックス残渣)が生じ易い傾向があった。その為、フラックス残渣が生じ易いIn合金を含むはんだ及びBi合金を含むはんだに関し、優れた洗浄性を有する洗浄剤組成物の開発が求められていた。
【0006】
また、特許文献1~特許文献5に開示された洗浄剤組成物は、In合金を含むはんだにおいて生じるIn塩のフラックス残渣及び/又はBi合金を含むはんだにおいて生じるBi塩のフラックス残渣に対し、再付着防止性が十分でない場合があった。なお、ここで「再付着防止性」とは、洗浄剤組成物によって基板から洗浄されたフラックス残渣が、洗浄工程もしくはリンス工程で該基板に再度付着することを防ぐ性質を意味する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れた洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る洗浄剤組成物は、
第1化合物と、溶媒と、水とを含む洗浄剤組成物であって、
該第1化合物は、窒素原子含有有機酸及び/又は該窒素原子含有有機酸の塩であり、
該窒素原子含有有機酸は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
該洗浄剤組成物のpHは6以上である。
【化1】

(式(1)中、Rは、炭素数2以上4以下のカルボキシアルキル基を示し、Rは、炭素数2以上4以下のカルボキシアルキル基又は水素原子を示し、Rは、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基又は水素原子を示す。)
【化2】

(式(2)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキレン基を示す。)
【化3】

(式(3)中、R及びRは、それぞれ独立にホスホン酸基又は炭素数1以上3以下のホスホノアルキル基を示し、Rは、ヒドロキシ基又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基を示し、R10は、アミノ基又は炭素数1以上3以下のアミノアルキル基を示す。)
【0009】
本開示の一態様に係る洗浄剤組成物用の原液は、上記の洗浄剤組成物用の原液であって、
該第1化合物の含有率は、有機酸換算で0.1質量%以上20質量%以下であり、
該溶媒の含有率は、11質量%以上99.8質量%以下であり、
水によって体積基準で1.1倍以上20倍以下に希釈して用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れた洗浄剤組成物、及び洗浄剤組成物用の原液を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示の洗浄剤組成物は、
第1化合物と、溶媒と、水とを含む洗浄剤組成物であって、
前記第1化合物は、窒素原子含有有機酸及び/又は前記窒素原子含有有機酸の塩であり、
前記窒素原子含有有機酸は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記洗浄剤組成物のpHは6以上である。
【化4】

(式(1)中、Rは、炭素数2以上4以下のカルボキシアルキル基を示し、Rは、炭素数2以上4以下のカルボキシアルキル基又は水素原子を示し、Rは、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基又は水素原子を示す。)
【化5】

(式(2)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキレン基を示す。)
【化6】

(式(3)中、R及びRは、それぞれ独立にホスホン酸基又は炭素数1以上3以下のホスホノアルキル基を示し、Rは、ヒドロキシ基又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基を示し、R10は、アミノ基又は炭素数1以上3以下のアミノアルキル基を示す。)
【0012】
これによって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0013】
[2]上記[1]において、前記第1化合物の含有率は、有機酸換算で0.1質量%以上4質量%以下であることが好ましい。これによって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0014】
[3]上記[1]又は[2]において、前記洗浄剤組成物のpHは、6以上12以下であることが好ましい。これによって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0015】
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、前記溶媒は、グリコールエーテル、芳香族アルコール、エステル系化合物、炭化水素系化合物、及び脂肪族アルコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これによって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0016】
[5]上記[4]において、
前記グリコールエーテルは、親水性グリコールエーテル及び/又は疎水性グリコールエーテルであり、
前記親水性グリコールエーテルは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、2-メトキシブタノール、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、及びエチレングリコールモノプロピルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記疎水性グリコールエーテルは、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ベンジルグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、フェニルプロピレングリコール、ヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記芳香族アルコールは、ベンジルアルコール、4-イソプロピルベンジルアルコール、1-フェニルエタノール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、α,α-ジメチルフェネチルアルコール、1-フェニル-1-プロパノール、及びシンナミルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記エステル系化合物は、グルタル酸ジメチル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジエチル、吉草酸メチル、ヘキサン酸メチル、ヘプタン酸メチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、及びヘプタン酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記炭化水素系化合物の炭素数は、9以上13以下であり、
前記脂肪族アルコールの炭素数は、5以上10以下であることが好ましい。これによって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0017】
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、
前記窒素原子含有有機酸は、イミノ二酢酸、(2-ヒドロキシエチルイミノ)二酢酸、グリシン、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、及びアレンドロン酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これによって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0018】
[7]また、本開示の洗浄剤組成物用の原液は、上述の[1]から[6]に記載の洗浄剤組成物用の原液であって、
前記第1化合物の含有率は、有機酸換算で0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記溶媒の含有率は、11質量%以上99.8質量%以下であり、
水によって体積基準で1.1倍以上20倍以下に希釈して用いられる。
【0019】
これによって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れた洗浄剤組成物用の原液を提供することが可能になる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」とも記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。本明細書において「A~Z」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上Z以下)を意味する。Aにおいて単位の記載がなく、Zにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とZの単位とは同じである。
【0021】
[実施形態1:洗浄剤組成物]
本開示の一実施形態に係る洗浄剤組成物について説明する。
本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」とも記す。)の洗浄剤組成物は、
第1化合物と、溶媒と、水とを含む洗浄剤組成物であって、
該第1化合物は、窒素原子含有有機酸及び/又は該窒素原子含有有機酸の塩であり、
該窒素原子含有有機酸は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
該洗浄剤組成物のpHは6以上である。
【化7】

(式(1)中、Rは、炭素数2以上4以下のカルボキシアルキル基を示し、Rは、炭素数2以上4以下のカルボキシアルキル基又は水素原子を示し、Rは、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基又は水素原子を示す。)
【化8】

(式(2)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキレン基を示す。)
【化9】

(式(3)中、R及びRは、それぞれ独立にホスホン酸基又は炭素数1以上3以下のホスホノアルキル基を示し、Rは、ヒドロキシ基又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基を示し、R10は、アミノ基又は炭素数1以上3以下のアミノアルキル基を示す。)
【0022】
本開示によって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。その理由は、以下の通りと推察される。
【0023】
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、第1化合物を含む洗浄剤組成物であって、該第1化合物は、窒素原子含有有機酸及び/又は該窒素原子含有有機酸の塩であり、該窒素原子含有有機酸は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、該洗浄剤組成物のpHは6以上である。このような窒素原子含有有機酸においては、pH6以上の環境下において、N原子と、Inイオン及びBiイオンとの反応性が高いことに起因して、該窒素原子含有有機酸は、Inイオンのキレート効果及びBiイオンのキレート効果に優れる。よって、本実施形態に係る洗浄剤組成物は、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れる。
【0024】
以上により、本実施形態によって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能である。
【0025】
≪洗浄剤組成物の組成≫
<溶媒>
上記洗浄剤組成物は、溶媒を含む。該溶媒は、公知の出発物質から公知の方法によって合成してもよい。該溶媒は、市販品をそのまま用いてもよい。
【0026】
上記溶媒の含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。これによって、フラックス残渣中の樹脂成分等を膨潤、溶解することができ、In塩又はBi塩に対し第1化合物が近接し易くなる為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することができる。該溶媒の含有率の下限は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。該溶媒の含有率の上限は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。該溶媒の含有率は、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0027】
上記溶媒の含有率は、ガスクロマトグラフィーによる分析で求めることができる。ガスクロマトグラフィーによる分析の条件は以下の通りである。
(分析の条件)
装置:ガスクトマログラフ GC-14B(株式会社島津製作所製)
検出器:熱伝導度型検出器(TCD)
カラム:Thermon-3000(信和化工株式会社製)
気化室温度:160℃
検出器温度:160℃
【0028】
該溶媒は、グリコールエーテル、芳香族アルコール、エステル系化合物、炭化水素系化合物、及び脂肪族アルコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これによって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0029】
上記グリコールエーテルは、二価アルコールのエーテル化合物を意味する。該グリコールエーテルは、親水性グリコールエーテル及び/又は疎水性グリコールエーテルであることが好ましい。ここで「親水性グリコールエーテル」とは、20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超えるグリコールエーテルを意味する。また、ここで「疎水性グリコールエーテル」とは、20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%以下であるグリコールエーテルを意味する。該親水性グリコールエーテルは、式(4)で表される化合物、又は式(5)で表される化合物であることが好ましい。また、該疎水性グリコールエーテルは、式(6)で表される化合物であることが好ましい。なお、本開示において「水の溶解度」とは、対象の化合物に対する水の溶解度を意味する。
【化10】

(式(4)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R14は、炭素数1~11の鎖状及び/又は環状の炭化水素基、或いはベンジル基を示し、該炭化水素基に含まれる-CH-は、-O-に置き換わっていてもよい。)
【化11】

(式(5)中、R15及びR16は、それぞれ独立に水素原子又はメトキシ基を示し、該R15及び該R16のいずれかはメトキシ基であり、R17は水素原子又はメチル基を示す。)
【化12】

(式(6)中、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R21は、炭素数1~11の鎖状及び/又は環状の炭化水素基、フェニル基、或いはベンジル基を示し、該炭化水素基に含まれる-CH-は、-O-に置き換わっていてもよい。)
【0030】
上記グリコールエーテルは、親水性グリコールエーテル及び/又は疎水性グリコールエーテルであり、該親水性グリコールエーテルは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、2-メトキシブタノール、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、及びエチレングリコールモノプロピルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、該疎水性グリコールエーテルは、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ベンジルグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、フェニルプロピレングリコール、ヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これによって、フラックス残渣中の樹脂成分等を膨潤、溶解することができ、In塩又はBi塩に対し第1化合物が近接しやすくなる為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することができる。
【0031】
上記グリコールエーテルの含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。これによって、フラックス残渣中の樹脂成分等を膨潤、溶解し、In塩又はBi塩に対し第1化合物が近接し易くすることができる。該グリコールエーテルの含有率の下限は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。該グリコールエーテルの含有率の上限は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。該グリコールエーテルの含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0032】
上記グリコールエーテルの含有率は、上記溶媒の含有率と同様の方法により求めることができる。
【0033】
本開示において「芳香族アルコール」は、式(7)で表される化合物であることが好ましい。
【化13】

(式(7)中、R22は炭素数1~6の2価の炭化水素基を示し、R23は水素原子、又は炭素数1~3の炭化水素基を示し、前記2価の炭化水素基に含まれる-CH-は、-O-に置き換わっていてもよい。)
【0034】
上記芳香族アルコールは、ベンジルアルコール、4-イソプロピルベンジルアルコール、1-フェニルエタノール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、α,α-ジメチルフェネチルアルコール、1-フェニル-1-プロパノール、及びシンナミルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これによって、フラックス残渣中の樹脂成分等を膨潤、溶解することができ、In塩又はBi塩に対し第1化合物が近接し易くなる為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することができる。
【0035】
上記芳香族アルコールの含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。これによって、フラックス残渣中の樹脂成分等を膨潤、溶解し、In塩又はBi塩に対し第1化合物が近接し易くすることができる。該芳香族アルコールの含有率の下限は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。該芳香族アルコールの含有率の上限は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。該芳香族アルコールの含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
上記芳香族アルコールの含有率は、上記溶媒の含有率と同様の方法により求めることができる。
【0037】
本開示において「エステル系化合物」とは、エステル結合を有する化合物を意味し、「エステル」と同義である。本開示において「エステル系化合物」としては、例えば、式(8)で表される化合物、及び式(9)で表される化合物等が挙げられる。
【化14】

(式(8)中、R24は炭素数1~5の鎖状の炭化水素基を示し、R25及びR26は、それぞれ独立に、メチル基、又はエチル基を示す。)
【化15】

(式(9)中、R27は炭素数4~6の鎖状の炭化水素基を示し、R28は、メチル基、又はエチル基を示す。)
【0038】
上記エステル系化合物は、グルタル酸ジメチル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジエチル、吉草酸メチル、ヘキサン酸メチル、ヘプタン酸メチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、及びヘプタン酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これによって、フラックス残渣中の樹脂成分等を膨潤、溶解することができ、In塩又はBi塩に対し第1化合物が近接し易くなる為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することができる。
【0039】
上記エステル系化合物の含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。これによって、フラックス残渣中の樹脂成分等を膨潤、溶解し、In塩又はBi塩に対し第1化合物が近接し易くすることができる。該エステル系化合物の含有率の下限は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。該エステル系化合物の含有率の上限は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。該エステル系化合物の含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
上記エステル系化合物の含有率は、上記溶媒の含有率と同様の方法により求めることができる。
【0041】
本開示において「炭化水素系化合物」とは、炭素と水素とからなる化合物を意味し、「炭化水素」と同義である。本開示において「炭化水素系化合物」の炭素数は、9以上13以下であることが好ましい。これによって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。また、動粘度の関係で隙間洗浄性に優れ、揮発性の関係で揮発消費量の少ない洗浄剤組成物を提供することが可能になる。例えば、炭素数が10である炭化水素系化合物として、デカン、1-デセン、1-デシン、デカヒドロナフタレン、1,4―ジエチルベンゼン等が挙げられる。該炭化水素系化合物の炭素数の下限は、9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。該炭化水素系化合物の炭素数の上限は、13以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、11以下であることが更に好ましい。該炭化水素系化合物の炭素数は、9以上12以下であることがより好ましく、9以上11以下であることが更に好ましい。
【0042】
上記炭化水素系化合物の含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。これによって、隙間に存在するフラックス残渣中の樹脂成分等を膨潤、溶解することができ、In塩又はBi塩に対し第1化合物が近接し易くなる為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することができる。該炭化水素系化合物の含有率の下限は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。該炭化水素系化合物の含有率の上限は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。該炭化水素系化合物の含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0043】
上記炭化水素系化合物の含有率は、上記溶媒の含有率と同様の方法により求めることができる。
【0044】
本開示において「脂肪族アルコール」の炭素数は、5以上10以下であることが好ましい。これによって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に更に優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。また、動粘度の関係で隙間洗浄性に優れ、揮発性の関係で揮発消費量の少ない洗浄剤組成物を提供することが可能になる。例えば、炭素数が6である脂肪族アルコールとして、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール等が挙げられる。該脂肪族アルコールの炭素数の下限は、5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。該脂肪族アルコールの炭素数の上限は、10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることが更に好ましい。該脂肪族アルコールの炭素数は、5以上9以下であることがより好ましく、5以上8以下であることが更に好ましい。
【0045】
上記脂肪族アルコールの含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。これによって、隙間に存在するフラックス残渣中の樹脂成分等を膨潤、溶解することができ、In塩又はBi塩に対し第1化合物が近接し易くなる為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。該脂肪族アルコールの含有率の下限は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。該脂肪族アルコールの含有率の上限は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。該脂肪族アルコールの含有率は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0046】
上記脂肪族アルコールの含有率は、上記溶媒の含有率と同様の方法により求めることができる。
【0047】
<第1化合物>
上記洗浄剤組成物は、第1化合物を含む。該第1化合物は、窒素原子含有有機酸及び/又は該窒素原子含有有機酸の塩である。本開示において「窒素原子含有有機酸」とは、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種である。
【化16】

(式(1)中、Rは、炭素数2以上4以下のカルボキシアルキル基を示し、Rは、炭素数2以上4以下のカルボキシアルキル基又は水素原子を示し、Rは、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基又は水素原子を示す。)
【化17】

(式(2)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキレン基を示す。)
【化18】

(式(3)中、R及びRは、それぞれ独立にホスホン酸基又は炭素数1以上3以下のホスホノアルキル基を示し、Rは、ヒドロキシ基又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基を示し、R10は、アミノ基又は炭素数1以上3以下のアミノアルキル基を示す。)
【0048】
該窒素原子含有有機酸は、公知の出発物質から公知の方法によって合成してもよい。該窒素原子含有有機酸は、市販品をそのまま用いてもよい。
【0049】
上記窒素原子含有有機酸は、イミノ二酢酸、(2-ヒドロキシエチルイミノ)二酢酸、グリシン、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、及びアレンドロン酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これによって、Inイオン及びBiイオンに対するキレート効果が向上する為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0050】
該窒素原子含有有機酸の塩は、特に制限されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
【0051】
上記第1化合物の含有率は、有機酸換算で0.1質量%以上4質量%以下であることが好ましい。これによって、Inイオン及びBiイオンに対するキレート効果が向上する為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。なお、本開示において、有機酸換算での第1化合物の含有率とは、洗浄剤組成物中の第1化合物が窒素原子含有有機酸の塩として存在している場合において、該塩の質量を該窒素原子含有有機酸の質量に置き換えた上で求められる、第1化合物の含有率を意味する。第1化合物の含有率は、有機酸換算で0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましい。第1化合物の含有率は、有機酸換算で4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましい。第1化合物の含有率は、有機酸換算で0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上2質量%以下であることが更に好ましい。
【0052】
有機酸換算での第1化合物の含有率は、電位差滴定法により求めることができる。該電位差滴定法による分析の条件は以下の通りである。
(条件)
装置:電位差自動滴定装置 Model AT-710M(京都電子工業株式会社製)
測定温度:20℃
【0053】
<水>
上記洗浄剤組成物は、水を含む。該水は、各種工業製品の原料として用いられる水、水道水等であれば特に制限はない。該水は、蒸留水であってもよいし、イオン交換水であってもよい。本実施形態の一側面において、該水は、その電気伝導率が1~300μS/cmであってもよいし、1~100μS/cmであってもよい。
【0054】
上記水の含有率は、10質量%以上95質量%以下であることが好ましい。これによって、第1化合物のIn塩及びBi塩へのキレート効果が向上する為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。該水の含有率の下限値は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。該水の含有率の上限値は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。該水の含有率は、20質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0055】
該水の含有率は、カールフィッシャー水分計による分析で求めることができる。カールフィッシャー水分計による分析の条件は以下の通りである。
(カールフィッシャー水分計の分析条件)
装置:カールフィッシャー水分計 MKS-500(京都電子工業株式会社製)
測定方法:容量滴定法
測定温度:20℃
【0056】
<アルカリ>
上記洗浄剤組成物は、更に、アルカリを含み得る。これによって、該洗浄剤組成物のpHを所望の範囲内に調整し易くなる。なお、本開示において「アルカリ」とは、例えば、後述する親水性アミン、疎水性アミン、及び親水性第4級アンモニウム塩等である。なお、該アルカリは、公知の出発物質から公知の方法によって合成してもよい。該アルカリは、市販品をそのまま用いてもよい。
【0057】
上記アルカリの含有率は、「洗浄剤組成物のpHは6以上である」ことを充足する限りにおいて特に制限されないが、例えば1.0質量%以上20質量%以下、2.0質量%以上10質量%以下、3.0質量%以上5.0質量%以下とすることができる。
【0058】
上記アルカリの含有率は、電位差滴定法により求めることができる。該電位差滴定法による分析の条件は、上述の「有機酸換算での第1化合物の含有率」の分析条件と同一である。
【0059】
上記アルカリは、親水性アミン、疎水性アミン、及び親水性第4級アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これによって、第1化合物のIn塩及びBi塩へのキレート効果が向上する為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。
【0060】
本開示において「親水性アミン」とは、20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超えるアミンを意味する。「親水性アミン」として、例えばN-ブチルジエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
【0061】
本開示において「疎水性アミン」とは、20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%以下であるアミンを意味する。「疎水性アミン」として、例えばN,N-ジメチルステアリルアミン等が挙げられる。
【0062】
本開示において「親水性第4級アンモニウム塩」とは、20℃の環境下において、水の溶解度が50質量%を超える第4級アンモニウム塩を意味する。「親水性第4級アンモニウム塩」として、例えばテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0063】
<その他の成分>
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、本発明の効果が奏される限り、その他の成分を更に含んでいてもよい。該その他の成分としては、例えば、界面活性剤、防錆剤、キレート剤、増粘剤、湿潤剤、蒸発遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、香料及び防腐剤等が挙げられる。
【0064】
≪洗浄剤組成物の特性≫
<pH>
上記洗浄剤組成物のpHは6以上である。これによって、上記第1化合物とInイオン及びBiイオンとの反応性が向上する為、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性により優れた洗浄剤組成物を提供することが可能になる。該pHの下限値は、6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。該pHの上限値は、12以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。該pHは、6以上12以下であることが好ましく、7以上11以下であることがより好ましく、8以上10以下であることが更に好ましい。
【0065】
該pHは、以下の方法により求めることができる。すなわち、洗浄剤組成物を水(蒸留水)で100倍に希釈することにより、水(蒸留水)で100倍希釈された洗浄剤組成物を得た後、該「水で100倍希釈された洗浄剤組成物」に対し、pH計(Docu-PH ザルトリウス株式会社製)を用いて、測定温度25℃の条件で測定することにより求めることができる。
【0066】
≪洗浄剤組成物の製造方法≫
本実施形態に係る洗浄剤組成物の製造方法は、上記溶媒と、上記第1化合物と、上記水とを準備する工程と、該溶媒と、該第1化合物とを、該水に添加する工程を含む。当該添加する工程は、どのような手法を用いてもよい。添加する工程としては、例えば、フラスコに該溶媒、該第1化合物、及び該水を加えること、及び化学プラント等において、工業的規模で該溶媒、該第1化合物、及び該水を加えること等が挙げられる。
【0067】
≪洗浄対象物の洗浄方法≫
本実施形態に係る洗浄対象物の洗浄方法は、洗浄対象物の洗浄方法であって、上記洗浄剤組成物を該洗浄対象物の表面又は隙間に接触させることを含む。
【0068】
上記洗浄剤組成物を上記洗浄対象物の表面又は隙間に接触させる方法は特に制限されない。当該方法は、例えば、浸漬、塗布、及びスプレー又はシャワーによる噴霧などの方法によって、大気中、減圧下、又は加圧下で常温下又は加熱下で接触させることが挙げられる。浸漬によって該洗浄剤組成物を該洗浄対象物の表面又は隙間に接触させる場合、必要に応じて、撹拌処理、超音波処理、バブリング処理、揺動等の操作を行ってもよい。当該方法は、加温した該洗浄剤組成物が投入された洗浄剤槽に、該洗浄対象物を浸漬して、洗浄することが好ましい。浸漬する時間は、1分間~60分間であることが好ましい。
【0069】
本実施形態の一側面において、上記洗浄対象物の隙間を洗浄する場合、撹拌されている上記洗浄剤組成物に該洗浄対象物を浸漬することが好ましい。この場合、シャワー洗浄及び超音波洗浄のときと比較して、洗浄対象物への負荷が低減される傾向がある。
【0070】
本実施形態の洗浄対象物の洗浄方法は、上記洗浄剤組成物の温度を20~70℃とすることが好ましく、30~60℃とすることがより好ましく、40~50℃とすることが更に好ましい。
【0071】
その後、水、含水アルコール、又は含水グリコールエーテルによるリンスを行って、乾燥で洗浄剤組成物を、上記洗浄対象物から除去すればよい。
【0072】
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、フラックス残渣を除去するために好適に用いることができる。すなわち、上記洗浄剤組成物は、フラックス残渣洗浄用であることが好ましい。上記洗浄剤組成物は、In塩のフラックス残渣洗浄用、及び/又はBi塩のフラックス残渣洗浄用であることがより好ましい。
【0073】
[実施形態2:洗浄剤組成物用の原液]
本開示の一実施形態に係る洗浄剤組成物用の原液について説明する。
本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」とも記す。)の洗浄剤組成物用の原液は、
本実施形態1に係る洗浄剤組成物用の原液であって、
該第1化合物の含有率は、有機酸換算で0.1質量%以上20質量%以下であり、
該溶媒の含有率は、11質量%以上99.8質量%以下であり、
水によって体積基準で1.1倍以上20倍以下に希釈して用いられる。
【0074】
本開示によって、In塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れ、且つBi塩のフラックス残渣に対し、洗浄性及び再付着防止性に優れた洗浄剤組成物用の原液を提供することが可能になる。なお、上記洗浄剤組成物用原液を上述の倍率(体積比率)で希釈することで、実施形態1に係る洗浄剤組成物を得ることができる。
【実施例0075】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
≪洗浄剤組成物の作製≫
以下のようにして、試料1-1~試料15、及び試料101~試料115に係る洗浄剤組成物を作製した。
【0077】
<準備する工程>
試料1-1~試料15、及び試料101~試料115に係る洗浄剤組成物を作製する為の原料として、以下の溶媒と、以下の有機酸と、以下のアルカリと、以下の水とを準備した。
(有機酸)
イミノ二酢酸:東京化成工業株式会社製
(2-ヒドロキシエチルイミノ)二酢酸ジナトリウム:キレスト株式会社製
グリシン:東京化成工業株式会社製
ニトリロトリス(メチレンホスホン酸):東京化成工業株式会社製
アレンドロン酸:東京化成工業株式会社製
クエン酸:富士フィルム和光純薬株式会社製
ヒドロキシ酢酸:東京化成工業株式会社製
無水マレイン酸:東京化成工業株式会社製
フマル酸:東京化成工業株式会社製
エチドロン酸:東京化成工業株式会社製
(溶媒)
エチレングリコールモノプロピルエーテル:東京化成工業株式会社製
3-メトキシ-3-メチルブタノール:株式会社クラレ製
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:東京化成工業株式会社製
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル:東京化成工業株式会社製
ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル:富士フィルム和光純薬株式会社製
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル:関東化学株式会社製
ベンジルアルコール:東京応化工業株式会社製
グルタル酸ジメチル:東京化成工業株式会社製
デカン:東京化成工業株式会社製
1-ヘキサノール:東京化成工業株式会社製
(アルカリ)
N-ブチルジエタノールアミン:東京化成工業株式会社製
N-エチルエタノールアミン:東京化成工業株式会社製
トリエタノールアミン:東京化成工業株式会社製
テトラエチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業株式会社製
N,N-ジメチルステアリルアミン:富士フィルム和光純薬株式会社製
(水)
蒸留水
【0078】
<添加する工程>
次に、上記原料のうち該蒸留水(水)以外の原料を、表1~表7に記載された組成で、該蒸留水(水)に添加した。なお、表1~表7の「配合組成[質量%]」の欄において、「-」で示されている成分は、試料に含まれていないことを意味する。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
以上の工程を実行することにより、表1~表7に示した構成を有する試料1-1~試料15、及び試料101~試料115に係る洗浄剤組成物を作製した。
【0087】
≪洗浄剤組成物の特性評価≫
各試料に係る洗浄剤組成物について、「pH」を測定し、In塩のフラックス残渣に対する「洗浄性」、In塩のフラックス残渣に対する「再付着防止性」、Bi塩のフラックス残渣に対する「洗浄性」、及びBi塩のフラックス残渣に対する「再付着防止性」を評価した。
【0088】
<pH>
各試料に係る洗浄剤組成物について、pHを上記実施形態1に記載の方法により求めた。得られた結果をそれぞれ表1~表7の「pH(水で100倍に希釈された場合)」の欄に記す。
【0089】
<In塩のフラックス残渣に対する洗浄性>
各試料に係る洗浄剤組成物について、以下の手順でIn塩のフラックス残渣に対する洗浄性を評価した。
【0090】
(評価サンプルの調整)
以下の手順でIn塩のフラックス残渣に対する洗浄性を評価するための評価サンプルを準備した。先ず、JIS2型くし形電極基板(株式会社サトーセン製)を用意した。次に、該JIS2型くし形電極基板にメタルマスクをかぶせ、該メタルマスクの上から評価ソルダペースト(株式会社弘輝製の「SB6N58-M500SI」)を印刷した。その後、該JIS2型くし形電極基板を250℃のホットプレート上で3分間静置することでリフローを行った。
【0091】
(評価サンプルの洗浄)
先ず、リンス剤として、水を準備した。なお、該水として、上記原料として記載された水を用いた。次に、上記評価サンプルを各試料に係る洗浄剤組成物に50℃、10分、500rpmの条件で撹拌浸漬した。次に、該撹拌浸漬された評価サンプルに対し、該リンス剤でリンスし(常温、10分×2回)、循風オーブンにて乾燥させた(100℃、10分)。次に、乾燥後の評価サンプルに対し実体顕微鏡を用いて60倍の倍率で該評価サンプルの表面を観察し、以下の基準に照らして、各試料に係る洗浄剤組成物の洗浄性を評価した。なお、該評価基準において、「有機酸非含有の組成」の試料は、表1~表7に記載された試料101~115である。試料1-1~試料1-5に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料101である。試料2-1~試料2-2に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料102である。試料3に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料103である。試料4に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料104である。試料5に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料105である。試料6に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料106である。試料7に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料107である。試料8に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料108である。試料9に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料109である。試料10に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料110である。試料11-1~11-3に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料111である。試料12に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料112である。試料13に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料113である。試料14に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料114である。試料15に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料115である。得られた結果を表1~表7の「洗浄性(In塩)」の欄に記す。
(評価基準)
A:有機酸非含有の組成に対して洗浄性が2倍以上向上した
B:有機酸非含有の組成に対して洗浄性が1.5倍以上向上した
C:有機酸非含有の組成に対して洗浄性が変わらなかった
【0092】
試料1-1~試料15に係る洗浄剤組成物は実施例に相当する。試料101~試料115に係る洗浄剤組成物は比較例に相当する。試料1-1~試料15に係る洗浄剤組成物は、試料1-1~試料15に係る洗浄剤組成物それぞれに対応する「有機酸非含有の組成」の試料に係る洗浄剤組成物(試料101~試料115に係る洗浄剤組成物)に比して、格別に優れたIn塩のフラックス残渣に対する洗浄性を有することが分かった。
【0093】
<In塩のフラックス残渣に対する再付着防止性>
各試料に係る洗浄剤組成物について、以下の手順でIn塩のフラックス残渣に対する再付着防止性を評価した。
【0094】
先ず、評価ソルダペースト(株式会社弘輝製の「SB6N58-M500SI」)を280℃で加熱し、フラックス残渣を取り出した。次に、該フラックス残渣を各試料に係る洗浄剤組成物に1質量%の濃度で溶解させた。該フラックス残渣を1質量%の濃度で溶解させた洗浄剤組成物を、イオン交換水に1質量%の濃度で溶解させた後、そこにガラエポ基板を10秒浸漬させ、該ガラエポ基板を取り出した。次に、100℃で循風オーブンにて、該ガラエポ基板を5分乾燥させた後、乾燥後のガラエポ基板の表面を、60倍の倍率で実体顕微鏡を用いて観察することにより、各試料に係る洗浄剤組成物について、以下の基準に照らして、In塩のフラックス残渣の再付着性防止を評価した。なお、該評価基準において、「有機酸非含有の組成」の試料は、表1~表7に記載された試料101~115である。試料1-1~試料1-5に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料101である。試料2-1~試料2-2に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料102である。試料3に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料103である。試料4に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料104である。試料5に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料105である。試料6に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料106である。試料7に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料107である。試料8に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料108である。試料9に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料109である。試料10に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料110である。試料11-1~11-3に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料111である。試料12に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料112である。試料13に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料113である。試料14に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料114である。試料15に対応する「有機酸非含有の組成」の試料は、試料115である。得られた結果を表1~表7の「再付着防止性(In塩)」の欄に記す。
(評価基準)
A:有機酸非含有の組成に対して再付着性が少なかった
B:有機酸非含有の組成に対して再付着性が変わらなかった
【0095】
試料1-1~試料15に係る洗浄剤組成物は、試料1-1~試料15に係る洗浄剤組成物それぞれに対応する「有機酸非含有の組成」の試料に係る洗浄剤組成物(試料101~試料115に係る洗浄剤組成物)に比して、格別に優れたIn塩のフラックス残渣に対する再付着防止性を有することが分かった。
【0096】
<Bi塩のフラックス残渣に対する洗浄性>
各試料に係る洗浄剤組成物について、Bi塩のフラックス残渣に対する洗浄性を評価するための評価サンプルを準備した点と、評価ソルダペースト(千住金属工業株式会社製の「M40-LS720V」)を用いた点とを除いては、実施例1で示された「In塩のフラックス残渣に対する洗浄性」の評価方法と同様の方法で、Bi塩のフラックス残渣に対する洗浄性を評価した。得られた結果を表1~表7の「洗浄性(Bi塩)」の欄に記す。
【0097】
試料1-1~試料15に係る洗浄剤組成物は、試料1-1~試料15に係る洗浄剤組成物それぞれに対応する「有機酸非含有の組成」の試料に係る洗浄剤組成物(試料101~試料115に係る洗浄剤組成物)に比して、格別に優れたBi塩のフラックス残渣に対する洗浄性を有することが分かった。
【0098】
<Bi塩のフラックス残渣に対する再付着防止性>
評価ソルダペーストとして、千住金属工業株式会社製の「M40-LS720V」を用いた点を除いては、実施例1で示された「In塩のフラックス残渣に対する再付着防止性」の評価方法と同様の方法で、Bi塩のフラックス残渣に対する再付着防止性を評価した。得られた結果を表1~表7の「再付着防止性(Bi塩)」の欄に記す。
【0099】
試料1-1~試料15に係る洗浄剤組成物は、試料1-1~試料15に係る洗浄剤組成物それぞれに対応する「有機酸非含有の組成」の試料に係る洗浄剤組成物(試料101~試料115に係る洗浄剤組成物)に比して、格別に優れたBi塩のフラックス残渣に対する再付着防止性を有することが分かった。
【0100】
以上により、試料1-1~試料15に係る洗浄剤組成物は、格別に優れたIn塩のフラックス残渣に対する洗浄性、格別に優れたIn塩のフラックス残渣に対する再付着防止性、格別に優れたBi塩のフラックス残渣に対する洗浄性、及び格別に優れたBi塩のフラックス残渣に対する再付着防止性を兼備することが確認された。
【0101】
[実施例2]
≪洗浄剤組成物の作製≫
実施例1で示された原料のうち蒸留水(水)以外の原料を、「表8」に記載された組成で、該蒸留水(水)に添加した」点を除いては、実施例1で示された方法と同様の方法により、試料1-1、及び試料201~試料207に係る洗浄剤組成物を作製した。なお、表8の「配合組成[質量%]」の欄において、「-」で示されている成分は、試料に含まれていないことを意味する。
【0102】
【表8】
【0103】
≪洗浄剤組成物の特性評価≫
各試料に係る洗浄剤組成物について、「pH」を測定し、In塩のフラックス残渣に対する「洗浄性」、In塩のフラックス残渣に対する「再付着防止性」、Bi塩のフラックス残渣に対する「洗浄性」、及びBi塩のフラックス残渣に対する「再付着防止性」を評価した。
【0104】
<pH>
各試料に係る洗浄剤組成物について、pHを上記実施形態1に記載の方法により求めた。得られた結果をそれぞれ表8の「pH(水で100倍に希釈された場合)」の欄に記す。
【0105】
<In塩のフラックス残渣に対する洗浄性>
各試料に係る洗浄剤組成物について、以下の手順でIn塩のフラックス残渣に対する洗浄性を評価した。
【0106】
(評価サンプルの調整)
実施例1で示された方法と同様の方法により、評価サンプルの調整を実行した。
【0107】
(評価サンプルの洗浄)
評価基準が以下の通りである点を除いては、実施例1に示された「In塩のフラックス残渣に対する洗浄性」の評価方法と同様の方法で、各試料に係る洗浄剤組成物の洗浄性を評価した。
(評価基準)
C:試料1-1に対して洗浄性が変わらなかった
D:試料1-1に対して洗浄性が低下した
【0108】
試料1-1に係る洗浄剤組成物は実施例に相当する。試料201~試料207に係る洗浄剤組成物は比較例に相当する。試料1-1に係る洗浄剤組成物は、試料201~試料207に係る洗浄剤組成物に比して、格別に優れたIn塩のフラックス残渣に対する洗浄性を有することが分かった。
【0109】
<In塩のフラックス残渣に対する再付着防止性>
評価基準が以下の通りである点を除いては、実施例1で示された「In塩のフラックス残渣に対する洗浄性」の評価方法と同様の方法で、各試料に係る洗浄剤組成物について、In塩のフラックス残渣に対する再付着防止性を評価した。
(評価基準)
B:試料1-1に対して再付着性が変わらなかった
C:試料1-1に対して再付着性が多かった
【0110】
試料1-1に係る洗浄剤組成物は、試料204及び試料206に係る洗浄剤組成物に比して、格別に優れたIn塩のフラックス残渣に対する再付着防止性を有することが分かった。
【0111】
<Bi塩のフラックス残渣に対する洗浄性>
各試料に係る洗浄剤組成物について、Bi塩のフラックス残渣に対する洗浄性を評価するための評価サンプルを準備した点と、評価ソルダペースト(千住金属工業株式会社製の「M40-LS720V」)を用いた点とを除いては、実施例1で示された「In塩のフラックス残渣に対する洗浄性」の評価方法と同様の方法で、Bi塩のフラックス残渣に対する洗浄性を評価した。得られた結果を表8の「洗浄性(Bi塩)」の欄に記す。
【0112】
試料1-1に係る洗浄剤組成物は、試料202~試料204、及び試料206に係る洗浄剤組成物に比して、格別に優れたBi塩のフラックス残渣に対する洗浄性を有することが分かった。
【0113】
<Bi塩のフラックス残渣に対する再付着防止性>
評価ソルダペーストとして、千住金属工業株式会社製の「M40-LS720V」を用いた点を除いては、「In塩のフラックス残渣に対する再付着防止性」の評価方法と同様の方法で、Bi塩のフラックス残渣に対する再付着防止性を評価した。得られた結果を表8の「再付着防止性(Bi塩)」の欄に記す。
【0114】
試料1-1に係る洗浄剤組成物は、試料202~試料204、及び試料206に係る洗浄剤組成物に比して、格別に優れたBi塩のフラックス残渣に対する再付着防止性を有することが分かった。
【0115】
以上により、試料1-1に係る洗浄剤組成物は、格別に優れたIn塩のフラックス残渣に対する洗浄性、格別に優れたIn塩のフラックス残渣に対する再付着防止性、格別に優れたBi塩のフラックス残渣に対する洗浄性、及び格別に優れたBi塩のフラックス残渣に対する再付着防止性を兼備することが確認された。
【0116】
なお、実施例において、溶媒として「エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、2-メトキシブタノール、3-メトキシブタノール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ベンジルグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、フェニルプロピレングリコール、ヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、4-イソプロピルベンジルアルコール、1-フェニルエタノール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、α,α-ジメチルフェネチルアルコール、1-フェニル-1-プロパノール、シンナミルアルコール、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジエチル、吉草酸メチル、ヘキサン酸メチル、ヘプタン酸メチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、炭素数が9又は11以上13以下である炭化水素系化合物、炭素数が5又は7以上10以下である脂肪族アルコール」は記載されていないが、これらの溶媒に関し、実施例で実際に効果が確認された溶媒と同様の挙動を示すことが確認されている。
【0117】
以上のように本発明の実施形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態及び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0118】
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。