(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115063
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】画像読取用レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 13/24 20060101AFI20240819BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
G02B13/24
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020526
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山村 勉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅也
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA08
2H087KA18
2H087LA01
2H087PA03
2H087PA17
2H087PB03
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA32
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型化および低Fナンバー化の要求を満足しながらも、高い解像力を備える画像読取用レンズを提供する。
【解決手段】物体側から像側に向かって順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズL2と、正の屈折力を有する第3レンズL3とから構成され、第1レンズL1は近軸において物体側が凸面であり、第2レンズL2は近軸において物体側が凸面であり、第3レンズL3は近軸において像側が凸面である。また、当該光学系は、第1レンズL1の光軸上の厚みをD1、第1レンズL1の像側の面から第2レンズL2の物体側の面までの光軸上の距離をT1、第2レンズL2の光軸上の厚みをD2、第2レンズL2の像側の面から第3レンズL3の物体側の面までの光軸上の距離をT2、第3レンズL3の光軸上の厚みをD3としたとき、次の条件式を満足する。
(1)0.3<(D1+T1)/(D2+T2)/D3<3.0
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側に向かって順に配置された、
正の屈折力を有する第1レンズと、
負の屈折力を有する第2レンズと、
正の屈折力を有する第3レンズとから構成され、
前記第1レンズは、近軸において物体側が凸面であり、
前記第2レンズは、近軸において物体側が凸面であり、
前記第3レンズは、近軸において像側が凸面であるとともに、
以下の条件式(1)を満足することを特徴とする画像読取用レンズ。
(1)0.3<(D1+T1)/(D2+T2)/D3<3.0
ただし、
D1:第1レンズの光軸上の厚み
T1:第1レンズの像側の面から第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離
D2:第2レンズの光軸上の厚み
T2:第2レンズの像側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離
D3:第3レンズの光軸上の厚み
【請求項2】
以下の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の画像読取用レンズ。
(2)0.4<r5/r6<1.8
ただし、
r5:第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径
r6:第3レンズの像側の面の近軸曲率半径
【請求項3】
以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載の画像読取用レンズ。
(3)-0.85<r3/f2<-0.31
ただし、
r3:第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径
f2:第2レンズの焦点距離
【請求項4】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1に記載の画像読取用レンズ。
(4)-0.4<r4/f2<-0.2
ただし、
r4:第2レンズの像側の面の近軸曲率半径
f2:第2レンズの焦点距離
【請求項5】
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1に記載の画像読取用レンズ。
(5)-0.30<r5/f3<-0.03
ただし、
r5:第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径
f3:第3レンズの焦点距離
【請求項6】
以下の条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1に記載の画像読取用レンズ。
(6)-0.20<r6/f3<-0.03
ただし、
r6:第3レンズの像側の面の近軸曲率半径
f3:第3レンズの焦点距離
【請求項7】
以下の条件式(7)を満足することを特徴とする請求項1に記載の画像読取用レンズ。
(7)0.35<n1/r1<1.10
ただし、
n1:第1レンズのd線に対する屈折率
r1:第1レンズの物体側の面の近軸曲率半径
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ、イメージスキャナおよびハンディターミナル等に搭載される画像読取モジュールの光学系として用いられる画像読取用レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやイメージスキャナあるいはハンディターミナル等に搭載される画像読取モジュールは、原稿等の画像を画像読取用レンズによって、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)等の撮像素子に結像させることで当該画像を電子的画像データとして読み取る。
【0003】
近年、CCD等の撮像素子の小型化や高画素化の進展に伴い、画像読取モジュールに要求される読取精度も高くなってきている。原稿等の画像の読取精度は画像読取用レンズの解像力によるところが大きいため、画像読取用レンズには、小型、低Fナンバーでありながらも高い解像性能が求められる。
【0004】
高い解像性能を目指した従来の画像読取用レンズとしては、例えば、以下の特許文献1に記載された画像読取用レンズが知られている。
【0005】
特許文献1の画像読取用レンズはFナンバーが6.0であり、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズの第1レンズと、物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズの第2レンズと、像側に凸面を向けた正のレンズの第3レンズとから構成される。このうち第2レンズL2の物体側の面は、回折レンズ面で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のレンズ構成により小型化および低Fナンバー化を図ろうとしても、周辺部における収差補正が非常に困難であるため、良好な光学性能を得ることはできない。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、小型化および低Fナンバー化の要求をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された高い解像力を備える画像読取用レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による画像読取用レンズは、物体側から像側に向かって順に配置された、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズとから構成され、前記第1レンズは、近軸において物体側が凸面であり、前記第2レンズは、近軸において物体側が凸面であり、前記第3レンズは、近軸において像側が凸面である。なお、本明細書においては、レンズの面の凸面、凹面、平面とは近軸における形状を指すものとし、屈折力は、特に言及しない限り近軸における屈折力を指すものとする。
【0010】
第1レンズは、正の屈折力を有するとともに、近軸において物体側を凸面とすることで、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を抑制する。
【0011】
第2レンズは、負の屈折力を有するとともに、近軸において物体側を凸面とすることで、色収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正する。
【0012】
第3レンズは、正の屈折力を有するとともに、近軸において像側を凸面とすることで、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を抑制する。
【0013】
本発明の画像読取用レンズは、上述した構成を採ることにより、小型化を図りつつ、Fナンバーが5.0程度の光学系の収差補正を容易にすることができる。
【0014】
上記構成の画像読取用レンズにおいては、第3レンズは、近軸において物体側が凹面であることが望ましい。
【0015】
第3レンズの物体側の面を、近軸において凹面とすることで、非点収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0016】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
(1)0.3<(D1+T1)/(D2+T2)/D3<3.0
ただし、D1は第1レンズの光軸上の厚み、T1は第1レンズの像側の面から第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離、D2は第2レンズの光軸上の厚み
T2は第2レンズの像側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離、
D3は第3レンズの光軸上の厚みである。
【0017】
条件式(1)の範囲を満足することにより、画像読取用レンズの低背化を図るとともに、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0018】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2)0.4<r5/r6<1.8
ただし、r5は第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r6は第3レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【0019】
条件式(2)の範囲を満足することにより、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0020】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3)-0.85<r3/f2<-0.31
ただし、r3は第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0021】
条件式(3)の範囲を満足することにより、色収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0022】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)-0.4<r4/f2<-0.2
ただし、r4は第2レンズの像側の面の近軸曲率半径、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0023】
条件式(4)の範囲を満足することにより、色収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0024】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)-0.30<r5/f3<-0.03
ただし、r5は第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径、f3は第3レンズの焦点距離である。
【0025】
条件式(5)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0026】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6)-0.20<r6/f3<-0.03
ただし、r6は第3レンズの像側の面の近軸曲率半径、f3は第3レンズの焦点距離である。
【0027】
条件式(6)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0028】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
(7)0.35<n1/r1<1.10
ただし、n1は第1レンズのd線に対する屈折率、r1は第1レンズの物体側の面の近軸曲率半径である。
【0029】
条件式(7)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0030】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)14.0<νd2<26.5
ただし、νd2は第2レンズのd線に対するアッべ数である。
【0031】
条件式(8)の範囲を満足することで、色収差の良好な補正が可能になる。
【0032】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9)26<νd3<49
ただし、νd3は第3レンズのd線に対するアッべ数である。
【0033】
条件式(9)の範囲を満足することで、色収差の良好な補正が可能になる。
【0034】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)0.25<r2/f<0.85
ただし、r2は第1レンズの像側の面の近軸曲率半径、fは画像読取用レンズ全系の焦点距離である。
【0035】
条件式(10)の範囲を満足することにより、コマ収差、非点収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0036】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(11)を満足することが望ましい。
(11)0.3<r2/bf<1.2
ただし、r2は第1レンズの像側の面の近軸曲率半径、bfはバックフォーカスである。
【0037】
条件式(11)の範囲を満足することにより、コマ収差、非点収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0038】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(12)を満足することが望ましい。
(12)0.15<r3/f<0.70
ただし、r3は第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径、fは画像読取用レンズ全系の焦点距離である。
【0039】
条件式(12)の範囲を満足することにより、コマ収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0040】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(13)を満足することが望ましい。
(13)-0.65<r5/f<-0.15
ただし、r5は第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径、fは画像読取用レンズ全系の焦点距離である。
【0041】
条件式(13)の範囲を満足することにより、非点収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0042】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(14)を満足することが望ましい。
(14)0.40<r2/r3<1.75
ただし、r2は第1レンズの像側の面の近軸曲率半径、r3は第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径である。
【0043】
条件式(14)の範囲を満足することにより、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0044】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(15)を満足することが望ましい。
(15)-7.00<(D2/f2)×100<-2.25
ただし、D2は第2レンズの光軸上の厚み、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0045】
条件式(15)の範囲を満足することにより、画像読取用レンズの低背化を図るとともに、色収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0046】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(16)を満足することが望ましい。
(16)1.75<(D3/f3)×100<8.00
ただし、D3は第3レンズの光軸上の厚み、f3は第3レンズの焦点距離である。
【0047】
条件式(16)の範囲を満足することにより、画像読取用レンズの低背化を図るとともに、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0048】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(17)を満足することが望ましい。
(17)-1.5<f2/f<-0.5
ただし、f2は第2レンズの焦点距離、fは画像読取用レンズ全系の焦点距離である。
【0049】
条件式(17)の範囲を満足することにより、色収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0050】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(18)を満足することが望ましい。
(18)1.7<f3/f<11.0
ただし、f3は第3レンズの焦点距離、fは画像読取用レンズ全系の焦点距離である。
【0051】
条件式(18)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0052】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(19)を満足することが望ましい。
(19)0.25<r2/f1<1.50
ただし、r2は第1レンズの像側の面の近軸曲率半径、f1は第1レンズの焦点距離である。
【0053】
条件式(19)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0054】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(20)を満足することが望ましい。
(20)0.4<r1/r4<1.2
ただし、r1は第1レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r4は第2レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【0055】
条件式(20)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0056】
上記構成の画像読取用レンズは以下の条件式(21)を満足することが望ましい。
(21)0.15<n1/r2<0.65
ただし、n1は第1レンズのd線に対する屈折率、r2は第1レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【0057】
条件式(21)の範囲を満足することにより、コマ収差、非点収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0058】
本発明により、小型化および低Fナンバー化の要求をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された解像力の高い画像読取用レンズを得ることができる。また、本発明に係る画像読取用レンズでは諸収差が良好に補正されることからレンズの枚数を抑制でき、レンズ材料の使用量の抑制を通じて、環境に優しい画像読取用レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本発明の実施例1の画像読取用レンズの概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1の画像読取用レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【
図3】本発明の実施例2の画像読取用レンズの概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施例2の画像読取用レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【
図5】本発明の実施例3の画像読取用レンズの概略構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施例3の画像読取用レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【
図7】本発明の実施例4の画像読取用レンズの概略構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施例4の画像読取用レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0061】
図1、
図3、
図5および
図7はそれぞれ、本実施の形態の実施例1から4に係る画像読取用レンズの概略構成を示す図である。以下、
図1を参照して、本実施の形態に係る画像読取用レンズの詳細を説明する。
【0062】
図1に示すように、本発明による画像読取用レンズは、物体側から像側に向かって順に、正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズL2と、正の屈折力を有する第3レンズL3とから構成され、前記第1レンズL1は、近軸において物体側が凸面であり、前記第2レンズL2は、近軸において物体側が凸面であり、前記第3レンズL3は、近軸において像側が凸面である。
【0063】
また第3レンズL3と撮像面IMG(すなわち、撮像素子の撮像面)の間には赤外線カットフィルタやカバーガラス等のフィルタIRが配置される。なお、このフィルタIRは省略することが可能である。
【0064】
開口絞りSTは、第2レンズL2と第3レンズL3の間に配置されており、歪曲収差の補正を容易にしている。なお、開口絞りSTの位置は、第2レンズL2と第3レンズL3の間に限定されない。撮像素子の仕様に応じて適宜配置すればよい。
【0065】
第1レンズL1は、正の屈折力を有し、近軸において物体側が凸面のメニスカス形状である。そのため、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差が抑制される。
【0066】
第2レンズL2は、負の屈折力を有し、近軸において物体側が凸面のメニスカス形状である。そのため、色収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差が良好に補正される。
【0067】
第3レンズL3は、正の屈折力を有し、近軸において像側が凸面のメニスカス形状である。そのため、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差が良好に補正される。
【0068】
本実施の形態に係る画像読取用レンズは、第1レンズL1から第3レンズL3のすべてが、それぞれ単レンズで構成されていることが好ましい。単レンズのみの構成は、非球面を多用することができる。本実施形態においては、すべてのレンズ面に適切な非球面を形成することで、良好な諸収差の補正が行われている。また、接合レンズを採用する場合に比較して工数を削減できるため、低コストで製作することが可能となる。
【0069】
また、すべてのレンズ面を非球面で形成することが望ましいが、要求される性能によっては、製造が容易な球面を採用してもよい。
【0070】
本実施形態における画像読取用レンズは、以下の条件式(1)から(21)を満足することにより、好ましい効果を奏するものである。
(1)0.3 <(D1+T1)/(D2+T2)/D3<3.0
(2)0.4<r5/r6<1.8
(3)-0.85<r3/f2<-0.31
(4)-0.4<r4/f2<-0.2
(5)-0.30<r5/f3<-0.03
(6)-0.20<r6/f3<-0.03
(7)0.35<n1/r1<1.10
(8)14.0<νd2<26.5
(9)26<νd3<49
(10)0.25<r2/f<0.85
(11)0.3<r2/bf<1.2
(12)0.15<r3/f<0.70
(13)-0.65<r5/f<-0.15
(14)0.40<r2/r3<1.75
(15)-7.00<(D2/f2)×100<-2.25
(16)1.75<(D3/f3)×100<8.00
(17)-1.5<f2/f<-0.5
(18)1.7<f3/f<11.0
(19)0.25<r2/f1<1.50
(20)0.4<r1/r4<1.2
(21)0.15<n1/r2<0.65
ただし、
n1:第1レンズL1のd線に対する屈折率
νd2:第2レンズL2のd線に対するアッべ数
νd3:第3レンズL3のd線に対するアッべ数
D1:第1レンズL1の光軸X上の厚み
D2:第2レンズL2の光軸X上の厚み
D3:第3レンズL3の光軸X上の厚み
T1:第1レンズL1の像側の面から第2レンズL2の物体側の面までの光軸X上の距離
T2:第2レンズL2の像側の面から第3レンズL3の物体側の面までの光軸X上の距離
bf:バックフォーカス
f:画像読取用レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズL1の焦点距離
f2:第2レンズL2の焦点距離
f3:第3レンズL3の焦点距離
r1:第1レンズL1の物体側の面の近軸曲率半径
r2:第1レンズL1の像側の面の近軸曲率半径
r3:第2レンズL2の物体側の面の近軸曲率半径
r4:第2レンズL2の像側の面の近軸曲率半径
r5:第3レンズL3の物体側の面の近軸曲率半径
r6:第3レンズL3の像側の面の近軸曲率半径
なお、上記の各条件式をすべて満足する必要はなく、それぞれの条件式を単独に満たすことで、各条件式に対応した作用効果を得ることができる。
【0071】
また、本実施形態における画像読取用レンズは、以下の条件式(1a)から(21a)を満足することにより、より好ましい効果を奏するものである。
(1a)0.65 <(D1+T1)/(D2+T2)/D3<2.25
(2a)0.70<r5/r6<1.5
(3a)-0.7<r3/f2<-0.35
(4a)-0.35<r4/f2<-0.22
(5a)-0.25<r5/f3<-0.04
(6a)-0.17<r6/f3<-0.04
(7a)0.5<n1/r1<0.9
(8a)17.5<νd2<23.5
(9a)32<νd3<43
(10a)0.3<r2/f<0.7
(11a)0.45<r2/bf<1.05
(12a)0.25<r3/f<0.55
(13a)-0.55<r5/f<-0.25
(14a)0.7<r2/r3<1.5
(15a)-5.75<(D2/f2)×100<-2.75
(16a)2.05<(D3/f3)×100<7.00
(17a)-1.25<f2/f<-0.65
(18a)1.95<f3/f<9.00
(19a)0.4<r2/f1<1.2
(20a)0.65<r1/r4<1.10
(21a)0.25<n1/r2<0.55
ただし、各条件式の符号は前の段落での説明と同様である。なお、条件式(1a)から(21a)それぞれの下限値のみ、または上限値のみを、それぞれが対応する条件式(1)から(21)へ適用させてもよい。
【0072】
本実施形態において、レンズ面の非球面に採用する非球面形状は、光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、近軸曲率半径をR、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、A18、A20としたとき数式1により表わされる。
【0073】
【0074】
次に、本実施形態に係る画像読取用レンズの実施例を示す。各実施例において、fは画像読取用レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、ihは最大像高を、TTLは光学全長をそれぞれ示す。ここで光学全長は、最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から撮像面IMGまでの光軸上の距離とする。なお、光学全長やバックフォーカスの値は、画像読取用レンズと撮像面IMGの間に配置されるフィルタIRの厚みを空気換算して得られる距離とする。
【0075】
また、iは物体側から数えた面番号、rは近軸曲率半径、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)の屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【0076】
(実施例1)
【0077】
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。
【0078】
【0079】
実施例1の画像読取用レンズは、表5に示すように条件式(1)から(21)を満たしている。
【0080】
図2は実施例1の画像読取用レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図には、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示す。また、非点収差図にはサジタル像面Sにおけるd線の収差量(実線)、タンジェンシャル像面Tにおけるd線の収差量(破線)をそれぞれ示す(
図4、
図6および
図8においても同じ)。
図2に示すように、各収差は良好に補正される。
【0081】
(実施例2)
【0082】
基本的なレンズデータを以下の表2に示す。
【0083】
【0084】
実施例2の画像読取用レンズは、表5に示すように条件式(1)から(21)を満たしている。
【0085】
図4は実施例2の画像読取用レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
図4に示すように、各収差は良好に補正される。
【0086】
(実施例3)
【0087】
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。
【0088】
【0089】
実施例3の画像読取用レンズは、表5に示すように条件式(1)から(21)を満たしている。
【0090】
図6は実施例3の画像読取用レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
図6に示すように、各収差は良好に補正される。
【0091】
(実施例4)
【0092】
基本的なレンズデータを以下の表4に示す。
【0093】
【0094】
実施例4の画像読取用レンズは、表5に示すように条件式(1)から(21)を満たしている。
【0095】
図8は実施例4の画像読取用レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
図8に示すように、各収差は良好に補正される。
【0096】
表5に実施例1から実施例4に係る条件式(1)から(21)の値を示す。
【0097】
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係る画像読取用レンズを、ファクシミリやイメージスキャナ等の画像読取モジュールの光学系へ適用した場合、当該光学系の小型化および低Fナンバー化への寄与とともに、画像読取モジュールの高性能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0099】
ST 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
IR フィルタ
IMG 撮像面