(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115065
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】温度管理装置
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20240819BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20240819BHJP
F01P 5/10 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
F01P7/16 A
F01P3/02 T
F01P5/10 A
F01P7/16 502A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020528
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中井 祥平
(72)【発明者】
【氏名】福田 昂生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 益生
(72)【発明者】
【氏名】黒木 雅太
(72)【発明者】
【氏名】松井 涼平
(72)【発明者】
【氏名】小室 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅澄
(72)【発明者】
【氏名】秋山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】竿田 武則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功治
(57)【要約】
【課題】温度管理対象の温度をより緻密に管理することができる温度管理装置を提供する。
【解決手段】温度管理装置100は、流体Wを流通させることにより、第1管理対象EB及び第2管理対象EHを有する温度管理対象Eの温度を管理する温度管理装置100であって、温度管理対象Eによって温められた第1温度の流体Wを移送する第1ポンプ31と、第1温度よりも低い第2温度の流体Wを移送する第2ポンプ32と、第1ポンプ31によって移送される第1温度の流体Wを第1管理対象EBへ導く第1流路11と、第2ポンプ32によって移送される第2温度の流体Wが流れる第2流路12と、第1流路11及び第2流路12に接続され第2管理対象EHへ導く流体Wの温度が切り替わる切替流路13と、を備え、切替流路13には、第1温度の流体W又は第1温度の流体Wと第2温度の流体Wとが混合された第3温度の流体Wが流れる点にある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流通させることにより、第1管理対象及び第2管理対象を有する温度管理対象の温度を管理する温度管理装置であって、
前記温度管理対象によって温められた第1温度の流体を移送する第1ポンプと、
前記第1温度よりも低い第2温度の流体を移送する第2ポンプと、
前記第1ポンプによって移送される前記第1温度の流体を前記第1管理対象へ導く第1流路と、
前記第2ポンプによって移送される前記第2温度の流体が流れる第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路に接続され前記第2管理対象へ導く流体の温度が切り替わる切替流路と、を備え、
前記切替流路には、前記第1温度の流体又は前記第1温度の流体と前記第2温度の流体とが混合された第3温度の流体が流れる温度管理装置。
【請求項2】
前記切替流路は、水平方向に延在し、
前記第2流路は、前記水平方向と直交する鉛直方向の下側から前記切替流路に接続される請求項1に記載の温度管理装置。
【請求項3】
前記第2温度の流体の前記第1流路への流入を遮断可能な遮断機構を更に備える請求項1又は2に記載の温度管理装置。
【請求項4】
前記第1流路は、前記流体の流通方向における前記切替流路との接続部分よりも上流側に設けられ、流路断面積が上流側よりも縮小される縮小部を有し、
前記縮小部は、前記切替流路に流入する前記第1温度の流体の流速を増大させることにより、前記第2温度の流体の前記第1流路への流入を遮断可能な前記遮断機構を構成する請求項3に記載の温度管理装置。
【請求項5】
前記第1流路は、前記縮小部よりも下流側かつ前記切替流路よりも上流側において、前記縮小部よりも前記流路断面積が拡大される拡大部を有し、
前記拡大部は、前記切替流路に流入する流体が前記切替流路を構成する壁面に衝突して旋回するように構成されている請求項4に記載の温度管理装置。
【請求項6】
前記流体の温度を取得するセンサと、
前記センサに前記流体を導くリード流路と、を更に備え、
前記リード流路は、前記切替流路に接続された第1リード流路と、
前記第2流路に接続された第2リード流路と、
前記第1リード流路と前記第2リード流路とが合流し、前記センサが配置される合流リード流路と、を有し、
前記第1リード流路の長さは、前記第2リード流路の長さと同一となるように構成されている請求項1又は2に記載の温度管理装置。
【請求項7】
前記第1リード流路の流体の流入口である第1リード流入口及び前記第2リード流路の流体の流入口である第2リード流入口は、前記第1リード流入口及び前記第2リード流入口の上流側よりも流路断面積が縮小されている請求項6に記載の温度管理装置。
【請求項8】
前記合流リード流路は、前記合流リード流路に配置された前記センサへ向けて突出する突起を含む請求項6に記載の温度管理装置。
【請求項9】
前記リード流路は、前記第1流路と前記第2流路と前記切替流路とを構成する第1壁及び前記第1壁から突出する第2壁に形成された溝と、前記溝を覆うカバーと、で構成されており、
前記センサは、前記溝と前記カバーとの間に配置される請求項6に記載の温度管理装置。
【請求項10】
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの動作を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記第1温度の流体と前記第2温度の流体との界面の形成される位置が前記第1リード流入口と前記第2リード流入口との間になるように前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの動作を制御する請求項7に記載の温度管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関等の温度を管理する様々な技術が開示されている。例えば、特許文献1には、第1循環通路を介してエンジンに接続され、第1循環通路を流れる冷却水(冷却液)を放熱するラジエータと、第2循環通路を介してエンジンに接続され、第2循環通路内を流れる冷却水を放熱するヒータコアと、を備える冷却制御システムが開示されている。第1循環通路は、エンジンの上部(シリンダヘッド)に設けられる冷却水流出部とラジエータの流入部とを接続する流出通路、及び、ラジエータの流出部とエンジンの下部(シリンダブロック)の冷却水流入部とを接続する流入通路を備える。第2循環通路は、エンジンの上部(シリンダヘッド)に設けられる冷却水流出部とヒータコアの流入部とを接続する流出通路、及び、ヒータコアの流出部と第1循環通路の流入通路とを接続する流入通路とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの駆動時において、シリンダヘッドはシリンダブロックよりも高温になる。すなわち、シリンダヘッドとシリンダブロックとでは温度変化の形態が異なる。このため、シリンダヘッドとシリンダブロックと独立して温度管理できることが望ましい。しかしながら、特許文献1に開示の冷却制御システムでは、エンジンに冷却水が流入する冷却水流入部には、第1循環通路のみが接続され、第1循環通路を循環する冷却水(1種類の温度の冷却水)のみがエンジンに流れ込む。つまり、シリンダブロックとシリンダヘッドとは、冷却水流入部に流入した冷却水のみによって温度が管理され、シリンダヘッドとシリンダブロックとをそれぞれ独立して温度の管理を行うことができず、エンジン等の温度管理対象の温度管理には改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度管理対象の温度をより緻密に管理することができる温度管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る温度管理装置の特徴は、流体を流通させることにより、第1管理対象及び第2管理対象を有する温度管理対象の温度を管理する温度管理装置であって、前記温度管理対象によって温められた第1温度の流体を移送する第1ポンプと、前記第1温度よりも低い第2温度の流体を移送する第2ポンプと、前記第1ポンプによって移送される前記第1温度の流体を前記第1管理対象へ導く第1流路と、前記第2ポンプによって移送される前記第2温度の流体が流れる第2流路と、前記第1流路及び前記第2流路に接続され前記第2管理対象へ導く流体の温度が切り替わる切替流路と、を備え、前記切替流路には、前記第1温度の流体又は前記第1温度の流体と前記第2温度の流体とが混合された第3温度の流体が流れる点にある。
【0007】
本構成によれば、第1温度の流体を第1管理対象へ導く第1流路と、第2管理対象へ導く切替流路とが別個に設けられる。これにより、流路第1管理対象と第2管理対象とをそれぞれ独立して温度管理できる。また、切替流路には、第1温度の流体、又は、第1温度の流体と第2温度の流体とが混合された第3温度の流体が流れる、つまり、切替流路を流れる流体の温度も切り替えることができる。したがって、温度管理対象の温度をより緻密に管理することができる。
【0008】
他の特徴として、前記切替流路は、水平方向に延在し、前記第2流路は、前記水平方向と直交する鉛直方向の下側から前記切替流路に接続されてもよい。
【0009】
本構成によれば、第2流路が水平方向と直交する鉛直方向の下側から切替流路に接続されるため、第2流路を流れる流体の切替流路への流入の制御(抑制)が容易になる。これにより、切替流路を介して第2管理対象へ導かれる流体の温度管理が容易になり、第2管理対象の温度をより緻密に管理することができる。
【0010】
他の特徴として、前記第2温度の流体の前記第1流路への流入を遮断可能な遮断機構を更に備えてもよい。
【0011】
本構成によれば、第2流路を流れる流体の第1流路への流入が遮断機構によって遮断することができる。これにより、第1管理対象に導かれる流体の温度管理(流体の温度を高温に維持すること)が容易になり、第1管理対象の温度をより緻密に管理することができる。
【0012】
他の特徴として、前記第1流路は、前記流体の流通方向における前記切替流路との接続部分よりも上流側に設けられ、流路断面積が上流側よりも縮小される縮小部を有し、前記縮小部は、前記切替流路に流入する前記第1温度の流体の流速を増大させることにより、前記第2温度の流体の前記第1流路への流入を遮断可能な前記遮断機構を構成してもよい。
【0013】
本構成によれば、切替流路に流入する流体の流速が増大するように縮小部が構成され、流速が増大した流体によって、第2流路を流れる流体の第1流路への流入が抑制される。この結果、縮小部を形成するといった簡便な構成により、第1管理対象に導かれる流体の温度管理が容易になり、第1管理対象の温度をより緻密に管理することができる。
【0014】
他の特徴として、前記第1流路は、前記縮小部よりも下流側かつ前記切替流路よりも上流側において、前記縮小部よりも前記流路断面積が拡大される拡大部を有し、前記拡大部は、前記切替流路に流入する流体が前記切替流路を構成する壁面に衝突して旋回するように構成されてもよい。
【0015】
本構成によれば、拡大部が切替流路に流入する流体が切替流路を構成する壁面に衝突して旋回するように構成されているため、第1温度の流体と第2温度の流体とが良好に混合され、切替流路を流れる流体の温度分布を均一にすることができる。
【0016】
他の特徴として、前記流体の温度を取得するセンサと、前記センサに前記流体を導くリード流路と、を更に備え、前記リード流路は、前記切替流路に接続された第1リード流路と、前記第2流路に接続された第2リード流路と、前記第1リード流路と前記第2リード流路とが合流し、前記センサが配置される合流リード流路と、を有し、前記第1リード流路の長さは、前記第2リード流路の長さと同一となるように構成されてもよい。
【0017】
本構成によれば、第1リード流路を流れる流体の流量と第2リード流路を流れる流体の流量とを等しくすることができる。これにより、合流リード流路に配置されたセンサが第1リード流路を流れる流体の温度と第2リード流路を流れる流体の温度との平均値を取得することができる。この結果、第1リード流路を流れる流体の温度と第2リード流路を流れる流体の温度とをより正確に取得することができる。よって、温度管理対象に対する温度をより緻密に管理することができる。
【0018】
他の特徴として、前記第1リード流路の流体の流入口である第1リード流入口及び前記第2リード流路の流体の流入口である第2リード流入口は、前記第1リード流入口及び前記第2リード流入口の上流側よりも流路断面積が縮小されてもよい。
【0019】
本構成によれば、第1リード流入口及び第2リード流入口の流路断面積が縮小される、すなわち、流体の圧力損失が増大するように第1リード流入口及び第2リード流入口が構成されている。このため、第1リード流路を流れる流体の圧力と第2リード流路を流れる流体の圧力との差が無視できるほど小さくなり、合流リード流路に流れ込む第1リード流路の流量と第2リード流路の流量とを等しくすることができる。
【0020】
他の特徴として、前記合流リード流路は、前記合流リード流路に配置された前記センサへ向けて突出する突起を含んでもよい。
【0021】
本構成によれば、センサとの熱交換が行われていない流体(新鮮な流体)が突起に導かれてセンサに接触する。また、これとともに、センサと熱交換して昇温済みの流体がセンサから離れるように押し出される。これにより、センサと流体との間の熱移動量を増加させることができる。この結果、合流リード流路を流れる流体の流量がセンサの計測可能な流量の下限値であっても、正確な流体の温度を計測することができる。
【0022】
他の特徴として、前記リード流路は、前記第1流路と前記第2流路と前記切替流路とを構成する第1壁及び前記第1壁から突出する第2壁に形成された溝と、前記溝を覆うカバーと、で構成されており、前記センサは、前記溝と前記カバーとの間に配置されてもよい。
【0023】
本構成によれば、リード流路が壁に形成された溝と溝を覆うカバーとで構成されるため、リード流路及びセンサを簡便に構成することができる。また、溝とカバーとの間にセンサを配置するだけでよいため、センサの組付けを容易にすることができる。
【0024】
他の特徴として、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの動作を制御する制御部を更に備え、前記制御部は、前記第1温度の流体と前記第2温度の流体との界面の形成される位置が前記第1リード流入口と前記第2リード流入口との間になるように前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの動作を制御してもよい。
【0025】
本構成によれば、第1リード流入口と第2リード流入口との間に第1温度の流体と第2温度の流体との界面が形成されるため、流体の温度をより正確に取得することができる。この結果、温度管理対象の温度をより緻密に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る温度管理装置の概略を示す図である。
【
図2】実施形態に係る温度管理部の構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係る温度管理部の構成を示す図である。
【
図4】実施形態に係る切替流路及びその近傍の構成を示す図である。
【
図5】実施形態に係る切替流路及びその近傍の構成を示す図である。
【
図6】実施形態に係る切替流路及びその近傍の断面を模式的に示す図である。
【
図7】実施形態に係るリード流路の構成を示す図である。
【
図8】実施形態に係る温度センサユニットを示す図である。
【
図9】実施形態に係る合流リード流路及び温度センサの構成を示す図である。
【
図10】別実施形態に係る切替流路近傍の構成を示す図である。
【
図11】別実施形態に係る切替流路近傍の構成を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る温度管理装置について説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0028】
〔温度管理装置〕
まず、
図1を参照して、温度管理装置100の概要について説明する。
図1に示すように、温度管理装置100は、自動車等の車両Vに搭載される。温度管理装置100は、車両Vに搭載される内燃機関としてのエンジンE(温度管理対象の一例)の温度を管理する。
【0029】
本実施形態において、温度管理装置100は、動作モードとして、2つの動作モードで動作する。詳しくは、温度管理装置100は、エンジンEを昇温(暖機)させるように動作する第1モード、又は、エンジンEの温度を目標温度となるように動作する第2モードで動作する。以下、第1モードを「暖機モード」と称し、第2モードを「温調モード」と称する。
【0030】
温度管理装置100は、エンジンEの温度を管理する温度管理部10と、温度管理部10の動作を制御する制御部20とを有する。
【0031】
〔温度管理部〕
図2及び
図3は、温度管理部10の構成を示す図である。詳しくは、
図2は、暖機モードにおける温度管理部10を示し、
図3は、温調モードにおける温度管理部10を示す。
【0032】
図2及び
図3に示すように、温度管理部10は、冷却水W(流体の一例)を流通させることにより、エンジンEの温度を管理する。冷却水Wは、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却流体である。
【0033】
温度管理部10は、エンジンEの温度を管理するための冷却水Wが流れる流体流路1と、冷却水Wを冷却する(降温させる)ラジエータ2と、流体流路1において冷却水Wを循環させるポンプ3と、冷却水Wの温度を取得(計測)する温度センサ4(センサの一例)とを有する。ラジエータ2、ポンプ3、温度センサ4及びエンジンEは、冷却水Wが流れる流体流路1を介して接続される。以下、流体流路1を流れる冷却水Wの流通方向の下流側を単に「下流側」と称し、上流側を単に「上流側」と称する。
【0034】
エンジンEは、シリンダブロックEB(第1管理対象の一例)と、シリンダヘッドEH(第2管理対象の一例)とを含む。シリンダブロックEBには、燃料の燃焼で発生した熱エネルギーによって動力を生み出すピストンが設けられる。シリンダヘッドEHには、吸気を行う吸気ポート及び排気を行う排気ポートが設けられる。シリンダヘッドEHとシリンダブロックEBとは、燃焼室を構成する。エンジンEは、駆動すると、燃焼室において燃料が燃焼されることにより発熱する。エンジンEの駆動時において、シリンダヘッドEHは、シリンダブロックEBよりも高温になる。
【0035】
また、エンジンEには、流体流路1から冷却水WがエンジンEに流入するエンジン流入口E1と、冷却水WがエンジンEから流体流路1へ流出するエンジン流出口E2とが設けられる。エンジン流入口E1は、シリンダブロックEBに接続する第1エンジン流入口E11と、シリンダヘッドEHに接続する第2エンジン流入口E12とを含む。
【0036】
第1エンジン流入口E11を介してシリンダブロックEBに流入した冷却水Wは、エンジンEの内部に形成されたエンジン内流路ELを介してシリンダブロックEBからシリンダヘッドEHへと流れる。シリンダヘッドEHに流れた冷却水Wは、エンジン流出口E2を介して流体流路1へと流出する。また、第2エンジン流入口E12を介してシリンダヘッドEHに流入した冷却水Wは、エンジン流出口E2を介して流体流路1へと流出する。
【0037】
ラジエータ2は、熱交換器であって、空気等と冷却水Wとを熱交換させることによって冷却水Wを冷却する。
【0038】
ポンプ3は、冷却水Wを移送することにより、流体流路1において冷却水Wを循環させる。本実施形態において、ポンプ3は、電動式のウォータポンプであって、電動モータ(不図示)と、電動モータからの動力によって駆動するインペラ(不図示)とを含む。ポンプ3の圧力(吐出量)は、
図1を参照して説明した制御部20が電動モータの動作(インペラの回転速度)を制御することにより変化する。
【0039】
ポンプ3は、エンジンEによって温められた第1温度の冷却水Wを移送する第1ポンプ31と、ラジエータ2によって冷却された第2温度の冷却水Wを移送する第2ポンプ32とを含む。第1温度は、例えば90度~95度であり、第2温度は、例えば0度~40度(外気と同等)である。第2温度は、第1温度よりも低いため、以下では、第1温度を「高温」と称し、第2温度を「低温」を称する場合がある。
【0040】
温度センサ4は、冷却水Wの温度を計測し、計測した温度を示す情報を出力する。制御部20は、温度センサ4から出力される冷却水Wの温度を示す情報と、エンジンEの発熱量を示す情報とに基づいてポンプ3の動作(圧力)を制御する。なお、制御部20は、エンジンEの回転数、エンジンEの負荷率等を示す情報に基づいてエンジンEの発熱量を取得する。
【0041】
流体流路1は、第1温度(高温)の冷却水Wが流れる高温流路11(第1流路の一例)と、ラジエータ2によって冷却された第2温度(低温)の冷却水Wが流れる低温流路12(第2流路の一例)と、流れる冷却水Wの温度が切り替わる切替流路13と、冷却水Wを温度センサ4へ導くリード流路14とを含む。なお、
図2及び
図3では、冷却水Wの温度を区別するために、第1温度の冷却水Wを破線で示し、第2温度の冷却水Wを1点鎖線で示している。更に、第1温度の冷却水Wと第2温度の冷却水Wとが混合された第3温度(混合温度)の冷却水Wを2点鎖線で示している(
図3参照)。
【0042】
高温流路11には、第1ポンプ31が接続される。高温流路11は、第1ポンプ31によって移送される第1温度の冷却水WをシリンダブロックEBへ導く。高温流路11は、上流側がエンジンE(エンジン流出口E2)に接続され、下流側が第1ポンプ31に接続される第1高温流路111と、上流側が第1ポンプ31に接続され、下流側が切替流路13に接続される第2高温流路112と、上流側が切替流路13に接続され、下流側がエンジンEのシリンダブロックEB(第1エンジン流入口E11)に接続される第3高温流路113と、上流側が第1高温流路111に接続され、下流側がラジエータ2に接続される第4高温流路114とを含む。
【0043】
つまり、第1高温流路111は、エンジンEからの冷却水Wを第1ポンプ31に導き、第2高温流路112は、第1ポンプ31からの冷却水Wを切替流路13へ導く。第3高温流路113は、切替流路13からの冷却水WをシリンダブロックEBへ導き、第4高温流路114は、第1高温流路111から分岐した冷却水Wをラジエータ2へ導く。
【0044】
低温流路12には、第2ポンプ32が接続される。低温流路12は、第2ポンプ32によって移送される第2温度の冷却水Wが流れる。低温流路12は、上流側がラジエータ2に接続され、下流側が第2ポンプ32に接続される第1低温流路121と、上流側が第2ポンプ32に接続され、下流側が切替流路13に接続される第2低温流路122とを含む。つまり、第1低温流路121は、ラジエータ2からの冷却水Wを第2ポンプ32に導き、第2低温流路122は、第2ポンプ32からの冷却水Wを切替流路13へ導く。
【0045】
切替流路13は、第2高温流路112と第3高温流路113と低温流路12(第2低温流路122)とシリンダヘッドEH(第2エンジン流入口E12)とに接続される。切替流路13は、温度管理装置100の動作モードに応じて、流れるシリンダヘッドEHに導く冷却水Wの温度が切り替わる。
【0046】
詳しくは、
図2に示す暖機モードにおいて、切替流路13には第1温度の冷却水Wが流れ、
図3に示す温調モードにおいて、切替流路13には第1温度の冷却水Wと第2温度の冷却水Wとが混合された第3温度の冷却水Wが流れる。すなわち、切替流路13には、第1温度の冷却水W又は第3温度の冷却水Wが流れる。
【0047】
〔切替流路近傍の構成〕
続いて、
図4~
図6を参照して切替流路13及びその近傍の構成について説明する。
図4及び
図5は、切替流路13及びその近傍の構成を示す図である。
図6は、水平方向に沿って切替流路13及びその近傍を切断した断面を模式的に示す図である。なお、
図4及び
図5における上から下に向かう方向は、鉛直方向に沿う方向に相当する。
【0048】
図4及び
図5に示すように、切替流路13は、鉛直方向と直交する水平方向に延在する。切替流路13に接続される第3高温流路113は、切替流路13を基端として上斜めに延在する(
図5も参照)。
【0049】
第2低温流路122は、切替流路13のうち、第2高温流路112との接続部分P1よりも下流側の部分に接続される。第2低温流路122は、鉛直方向に沿って延在し、切替流路13の延在方向と直交するように切替流路13に接続される。これにより、第2高温流路112から切替流路13に流入する第1温度の冷却水Wの主流(切替流路13に流入する高温の冷却水Wのうち動圧の比較的高い冷却水W)以外の冷却水W(切替流路13に流入する高温の冷却水Wのうち動圧の比較的低い冷却水W)が第2低温流路122を流れる第2温度の冷却水Wと対向し、第1温度の冷却水Wが第2低温流路122へ流れ込むことが抑制される。
【0050】
また、
図4に示すように、第2低温流路122は、鉛直方向の下側から切替流路13に接続される。つまり、温度管理装置100は、第2高温流路112が鉛直方向の下側から切替流路13に接続されるように車両Vに配置(縦置き配置)される。これにより、第2低温流路122を流れる第2温度の冷却水Wに重力が作用し、第2低温流路122よりも上側に位置する切替流路13、第2高温流路112及び第3高温流路113に第2温度の冷却水Wが流れ込むことが抑制される。また、第1温度の冷却水Wと第2温度の冷却水Wと比重の差によっても第1温度の冷却水Wが第2低温流路122へ流れ込むことが抑制される。
【0051】
第2高温流路112は、接続部分P1の上流側に流速調整部112aを有する。流速調整部112aは、上方に位置する部分ほど切替流路13に近付くように傾斜している。
【0052】
流速調整部112aは、
図6に示すように、鉛直方向に沿って見て第3高温流路113が延在する側に位置する第1壁面H1と、第1壁面H1に対向する第2壁面H2とを含む。
【0053】
第1壁面H1は、鉛直方向に沿って見たときに、切替流路13が延在する方向、すなわち、冷却水Wの流通方向と平行に延びる。第2壁面H2は、鉛直方向に沿って見たときに、上流側(接続部分P1から遠い側)が第1壁面H1に接近し、下流側(接続部分P1に近い側)が第1壁面H1から離間するように構成されている。以下、第2壁面H2が第1壁面H1に接近するように構成された部分(第1壁面H1と第2壁面H2とを含む部分で構成される部分)を「縮小部112b」と称し、第2壁面H2が第1壁面H1から離間するように構成された部分(第1壁面H1と第2壁面H2とを含む部分で構成される部分)を「拡大部112c」と称する。
【0054】
縮小部112bは、接続部分P1(拡大部112c)よりも上流側に設けられる。縮小部112bは、冷却水Wが流通する流路の断面積(以下、「流路断面積」と称する)が第2高温流路112の縮小部112bの上流側(縮小部112bの直近の上流)よりも縮小され、切替流路13に流入する冷却水Wの一部の冷却水Wの流速が増大するように構成されている。詳しくは、縮小部112bは、切替流路13に流入する冷却水Wの一部であって、第2高温流路112を流れる冷却水Wのうち、第1壁面H1(第3高温流路113)側を流れる冷却水Wの流速が増大するように構成されている。冷却水Wの流速が増大することにより、切替流路13において、第2温度の冷却水Wが第3高温流路113とは反対側に押し出され、第2温度の冷却水Wが第3高温流路113に流入することが抑制される。つまり、縮小部112bは、第2温度の冷却水Wの高温流路11への流入を遮断可能な遮断機構を構成する。
【0055】
拡大部112cは、縮小部112bよりも下流側かつ接続部分P1よりも上流側に設けられる。拡大部112cは、冷却水Wが流通する流路断面積が縮小部112bより拡大されるように構成される。拡大部112cは、拡大部112cを通過した冷却水Wが切替流路13に流入する際に放射状に広がり、切替流路13を構成する第3壁面H3に衝突して旋回するように構成される。詳しくは、拡大部112cは、切替流路13に流入する冷却水Wのうち、流速が増大する冷却水W以外の冷却水Wの少なくとも一部であって、第2壁面H2(第3高温流路113とは反対側)側を流れる冷却水Wが切替流路13を構成する第3壁面H3に衝突して旋回するように構成されている。つまり、拡大部112cと、切替流路13を構成する第3壁面H3とは、冷却水Wを旋回させる旋回発生部を構成する。なお、冷却水Wは、切替流路13の延在方向を軸として旋回する。
【0056】
〔リード流路〕
続いて、
図2~
図3、及び、
図7~
図8を参照してリード流路14の構成について説明する。
図7は、リード流路14の構成を示す図である。詳しくは、水平方向のうち切替流路13が延在する方向と直交する方向において、
図4に示される切替流路13及びその近傍を反対側から見た図である。
図8は、リード流路14と温度センサ4とが一体化された温度センサユニットUを示す図である。
【0057】
図2及び
図3に示すように、リード流路14は、第2ポンプ32よりも下流側に設けられる。リード流路14は、切替流路13に接続される第1リード流路141と、第2低温流路122に接続される第2リード流路142と、第1リード流路141と第2リード流路142とが合流する合流リード流路143と、第2ポンプ32とラジエータ2との間(第1低温流路121)に接続される還流リード流路144とを含む。なお、
図2及び
図3では、図の複雑化を避けるため、切替流路13の第2高温流路112と接続する部分よりも上流の位置Q1で、第1リード流路141が切替流路13に接続されるように図示しているが、実際には、
図7に示すように、第1リード流路141は、切替流路13の第2高温流路112と接続する部分よりも下流の位置Q2で切替流路13に接続される。
【0058】
合流リード流路143には、温度センサ4が配置される。温度センサ4は、合流リード流路143を流れる冷却水Wの温度を取得し、当該温度を示す情報を出力する。
【0059】
図7及び
図8に示すように、リード流路14は、第1壁G1及び第2壁G2に形成された溝Sと、溝Sを覆うカバーC(
図8参照)とで構成される。カバーCが溝Sを覆うことにより、第1リード流路141、第2リード流路142、合流リード流路143及び還流リード流路144が形成される。第1壁G1は、高温流路11、低温流路12及び切替流路13を構成する壁であり、第2壁G2は、第1壁G1から突出する壁である。詳しくは、第2壁G2は、切替流路13が延在方向に沿って延在する第1延在部G3と、第1延在部G3と直交する方向に延在する第2延在部G4とを含む。
【0060】
図7及び
図8に示すように、温度センサ4が有する感温部41は、合流リード流路143を構成する溝S(第2壁G2の第1延在部G3に形成される溝S)とカバーCとの間に配置される(溝Sに挿入される)。なお、感温部41は、温度センサ4のうちの冷却水Wの温度を計測する部分である。
【0061】
また、
図7に示すように、第1リード流路141の長さは、第2リード流路142の長さと同一となるように構成される。なお、第1リード流路141の長さは、第1リード流路141の冷却水Wの流入口である第1リード流入口14H1と、接続位置P2との間の長さである。第2リード流路142の長さは、第2リード流路142の冷却水Wの流入口である第2リード流入口14H2と接続位置P2との間の長さである。なお、接続位置P2は、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2と合流リード流路143とが接続する位置、すなわち、第1リード流入口14H1と第2リード流入口14H2とが合流する位置を示す。
【0062】
また、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2は、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2の上流側(第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2の直近の上流)よりも流路断面積が縮小されている。つまり、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2は、冷却水Wの圧力損失を増大させるように構成されている。第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2は、第1圧力差と第2圧力差との差が無視できるように、その大きさが設定されている。詳しくは、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2は、第1圧力差と第2圧力差との差が無視できるように、大きさが十分に小さく設定される(流路断面積がそれらの直近の上流よりも絞られている形状(オリフィス形状)である)。第1圧力差は、第1リード流入口14H1とリード流出口14H3との冷却水Wの圧力の差であり、第2圧力差は、第2リード流入口14H2とリード流出口14H3との冷却水Wの圧力の差である。なお、リード流出口14H3は、リード流路14からの冷却水Wの流出口である。本実施形態において、第1リード流路141、第2リード流路142、合流リード流路143及び還流リード流路144の流路断面積は一定であって、互いに等しい。また、第1リード流路141は第1リード流入口14H1と、第2リード流路142は第2リード流入口14H2と、還流リード流路144はリード流出口14H3と流路断面積が等しい。
【0063】
第1リード流入口14H1は、リード流路14に第1温度の冷却水Wが流入することにより、第1温度の冷却水WのエンジンEへの供給量が減少してエンジンEの暖機(昇温)性能が低下してしまうことを抑制できる大きさにも設定されている。
【0064】
また、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2は、冷却水Wに異物が含まれていても閉塞しない程度の大きさも確保されている。
【0065】
更に、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2は、温度センサ4が計測可能な冷却水Wの流量の下限値(温度センサ4の性能に依存する流量であって、冷却水Wの温度を計測可能な冷却水Wの流量の最低値)以上を確保できる大きさにも設定されている。温度センサ4が計測可能な冷却水Wの流量の下限値は、例えば0.2L/minである。
【0066】
図9は、合流リード流路143及び温度センサ4の構成を示す図である。詳しくは、合流リード流路143を冷却水Wの流通方向に沿って切断した断面を示す図である。
図9に示すように、温度センサ4の感温部41は、冷却水Wの温度を感知する矩形状の感温面41Sを含む。本実施形態では、感温面41Sは、冷却水Wの流通方向に沿って延在するように配置される。
【0067】
合流リード流路143は、温度センサ4に向けて突出する突起143tを含む。突起143tは、合流リード流路143を構成する内壁143sのうちの温度センサ4の周囲の内壁143sに設けられる。突起143tは、感温面41Sを直交する方向から見たときに、上流側が円弧の扇状(中心角が90度又は略90度の扇形)である。
【0068】
突起143tは、合流リード流路143を構成する内壁143sに沿って流れる冷却水Wを温度センサ4に衝突、つまり、接触させる。
【0069】
本実施形態において、突起143tは、32個設けられ、32個の突起143tは、合流リード流路143を構成する内壁143sの周方向に沿って8つ設けられ、冷却水Wの流通方向に沿って4列、流通方向から見て突起143tが互い違いになるよう配置される。最も上流側に位置する8つの突起143t(1列目)の各々は、その下流側の端が温度センサ4(感温部41)の上流側の端と一致するように設けられる。残り下流側の3列の突起143tは、所定の間隔をあけて設けられる。詳しくは、突起143tの4列目(最も下流側に位置する8つ)の突起143tの各々は、その下流側の端が流通方向における感温部41の下流側の端と一致するように配置され、残り2列は1列目と4列目と等間隔になるように設けられる。
【0070】
〔制御部〕
図1に示す制御部20は、Engine Control Unit(ECU)であって、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、半導体メモリ等の記憶領域とを有する。プロセッサが記憶領域に記憶される制御プログラムを実行することにより、制御部20が温度管理装置100の各部(ポンプ3)の動作を制御する。制御部20は、
図2を参照して説明した暖気モードと温調モードとでポンプ3に対する制御を切り替える。
【0071】
詳しくは、暖機モードにおいて、制御部20は、第1温度の冷却水W(切替流路13を流れる冷却水W)と第2温度の冷却水W(第2低温流路122を流れる冷却水W)との界面Fの形成される位置が第1リード流入口14H1と第2リード流入口14H2との間(中間点)となるように第1ポンプ31の圧力(吐出量)及び第2ポンプ32の圧力(吐出量)を制御する(
図7参照)。以下、界面Fの形成される位置として、目標とされる位置(本実施形態では、第1リード流入口14H1と第2リード流入口14H2との中間点)を「目標位置」と称する。
【0072】
制御部20は、温度センサ4から出力される情報によって示される温度(以下、「取得温度」と称する)が、第1温度と第2温度との平均値である平均温度よりも高いか否かを判定し、その判定結果に応じてポンプ3の圧力を制御する。
【0073】
例えば、制御部20は、取得温度が平均温度よりも高い、すなわち、界面Fの形成される位置が目標位置よりも上流側(低温流路12(第2低温流路122)側)であると判定すると、第2ポンプ32の圧力を増大させる。一方、取得温度が平均温度よりも低い、すなわち、界面Fの形成される位置が目標位置よりも下流側(切替流路13側)であると判定すると、第2ポンプ32の圧力を減少させる。なお、制御部20は、取得温度が平均温度と等しいと判定した場合、すなわち、界面Fの形成される位置が目標位置であると判定すると、第2ポンプ32の圧力を変更しない。なお、制御部20は、車両V(
図1参照)が前後左右に傾いた場合であっても、第2高温流路112及び第3高温流路113の内部に界面Fが形成されないようにポンプ3の動作を制御し、第2リード流入口14H2は、当該界面Fが形成される位置よりも下側に設けられる(
図7参照)。
【0074】
界面Fが第1リード流入口14H1と第2リード流入口14H2との間に形成されることにより、第2温度の冷却水Wが第2高温流路112及び第3高温流路113に流入することが防止される。つまり、制御部20と、第1ポンプ31と、第2ポンプ32とは、第2温度の冷却水Wの高温流路11への流入を遮断することが可能な遮断機構を構成する。
【0075】
また、界面Fが第1リード流入口14H1と第2リード流入口14H2との間に形成されることにより、第1温度の冷却水Wのみが、第1エンジン流入口E11及び第2エンジン流入口E12を介してエンジンEへ流入する。この結果、エンジンEの暖機を効率よく行うことができる。
【0076】
一方、温調モードにおいて、制御部20は、第1温度の冷却水Wと第2温度の冷却水Wとが切替流路13で混合されるように、第1ポンプ31の圧力と第2ポンプ32の圧力とを制御する。すなわち、制御部20は、切替流路13に第1温度の冷却水Wと第2温度の冷却水Wとが混合された第3温度の冷却水Wが流れるように第1ポンプ31の圧力及び第2ポンプ32の圧力を制御する。制御部20が上記のようにポンプ3の圧力を制御することにより、第1リード流路141には、第3温度の冷却水Wが流入し、第2リード流路142には第2温度の冷却水Wが流入する。
【0077】
制御部20は、例えば、ポンプ3に対する制御に関する情報を示すポンプ制御情報(ポンプマップ)を参照することにより、ポンプ3の動作を制御する。なお、ポンプ制御情報は、温度管理装置100の設計者等によって予め作成され、制御部20の記憶領域に予め記憶されている。ポンプ制御情報は、例えば、エンジンEの発熱量と、シリンダヘッドEHに流入させる冷却水Wの第1目標温度と、エンジンEのエンジン流出口E2から流出する冷却水Wの目標の温度(以下、「第2目標温度」と称する)との相関関係を示す情報である。なお、第2目標温度は、例えば95度である。制御部20は、ポンプ制御情報を参照し、第2目標温度とエンジンEの発熱量とに基づいて第1目標温度を取得する。
【0078】
制御部20は、第3温度がシリンダヘッドEHに流入させる冷却水Wの目標の温度である第1目標温度よりも高いか否かを判定し、その判定結果に応じてポンプ3の圧力(駆動力)を制御してもよい。第3温度は、温度センサ4から出力される温度を示す情報と、第2温度(ラジエータ2から流出する冷却水Wの温度)を示す情報とに基づいて取得される。
【0079】
制御部20は、第3温度が第1目標温度よりも高いと判定すると、第2ポンプ32の圧力を増大させる。一方、制御部20は第3温度が第1目標温度よりも低いと判定すると、第2ポンプ32の圧力を減少させる。これにより、第1目標温度となるように温度が調整された冷却水Wが、切替流路13を介して第2エンジン流入口E12からシリンダヘッドEHに流入する。なお、制御部20は、第3温度が第1目標温度と等しいと判定した場合、第2ポンプ32の圧力を変更しない。
【0080】
〔実施形態の作用効果〕
以上説明したように、本実施形態によれば、高温(第1温度)の冷却水WをシリンダブロックEBへ導く高温流路11(第3高温流路113)と、シリンダヘッドEHへ導く切替流路13とが別個に設けられるため、シリンダブロックEBとシリンダヘッドEHとをそれぞれ独立して温度管理できる。また、暖機モードと温調モードとで、切替流路13には、第1温度の冷却水W、又は、第1温度の冷却水Wと第2温度の冷却水Wとが混合された第3温度の冷却水Wが流れる、つまり、切替流路13を流れる冷却水Wの温度を切り替えることもできる。したがって、エンジンEの温度をより緻密に管理することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、低温流路12(第2低温流路122)が水平方向と直交する鉛直方向の下側から切替流路13に接続されるため、低温流路12を流れる冷却水Wの切替流路13への流入の制御(抑制)が容易になる。これにより、暖機モード(
図2参照)において、切替流路13を介してシリンダヘッドEHへ導かれる冷却水Wの温度管理(冷却水Wの温度を第1温度に維持すること)が容易になり、シリンダヘッドEHの温度をより緻密に管理することができる。また、暖機モードにおいて、シリンダヘッドEHに流れる第1温度の冷却水Wが低温流路12(第2低温流路122)に流れ込むことも抑制することができ、暖機性能の低下を抑制することもできる。
【0082】
また、本実施形態によれば、遮断機構としての縮小部112b、制御部20、第1ポンプ31、及び第2ポンプ32によって、低温流路12を流れる冷却水Wの高温流路11への流入を遮断することができる。これにより、シリンダブロックEBに導かれる冷却水Wの温度管理(冷却水Wの温度を第1温度に維持すること)が容易になり、シリンダブロックEBの温度をより緻密に管理することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、切替流路13に流入する冷却水Wの一部であって、第2高温流路112を流れる冷却水Wのうち、第1壁面H1(第3高温流路113)側を流れる冷却水Wの流速が増大するように縮小部112bが構成され、流速が増大した冷却水Wによって、切替流路13において第2温度の冷却水Wが第3高温流路113に流入することが抑制される。この結果、シリンダブロックEBに導かれる冷却水Wの温度管理(冷却水Wの温度を第1温度に維持すること)が容易になり、シリンダブロックEBの温度をより緻密に管理することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、切替流路13に流入する冷却水Wが切替流路13を構成する第3壁面H3に衝突して旋回するように拡大部112cが構成されているため、第1温度の冷却水Wと第2温度の冷却水Wとが良好に混合され、切替流路13を流れる冷却水Wの温度分布を均一にすることができる。これにより、温調モードにおいて、切替流路13から第1リード流路141を介して合流リード流路143に流入する第3温度の冷却水Wの温度が一定となる。この結果、温度センサ4によって取得される冷却水Wの温度(第3温度)がより正確になる。
【0085】
また、本実施形態によれば、第1リード流路141の長さが第2リード流路142の長さと同一となるように構成されているため、第1リード流路141を流れる冷却水Wの流量と第2リード流路142を流れる冷却水Wの流量とを等しくすることができる。これにより、合流リード流路143に配置された温度センサ4が第1リード流路141を流れる冷却水Wの温度と第2リード流路142を流れる冷却水Wの温度との平均値を取得することができる。この結果、第1リード流路141を流れる冷却水Wの温度と第2リード流路142を流れる冷却水Wの温度とをより正確に取得することができる。よって、エンジンEの温度をより緻密に管理することができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2の流路断面積が縮小される、すなわち、冷却水Wの圧力損失が増大するように第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2が構成されている。このため、合流リード流路143に流れ込む第1リード流路141の冷却水Wの流量と第2リード流路142の冷却水Wの流量とを等しくすることができる。特に、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2の大きさが、第1圧力差と第2圧力差との差が無視できるような大きさに(小さく)設定されることにより、第1リード流路141を流れる冷却水Wの流量と第2リード流路142を流れる冷却水Wの流量とを等しくすることができる。
【0087】
冷却水Wは、温度センサ4に接触することにより、温度センサ4と熱交換して昇温する。このため、合流リード流路143に突起143tが設けられていない場合、温度センサ4と熱交換して昇温した後の冷却水Wは温度センサ4(感温部41)に沿って流れ、温度センサ4により計測される冷却水Wの温度が不正確になる虞がある。しかしながら、本実施形態によれば、温度センサ4との熱交換が行われていない冷却水W(新鮮な冷却水W)が突起143tに導かれて温度センサ4に接触する。また、これとともに、温度センサ4と熱交換して昇温済みの冷却水Wが温度センサ4(感温部41)から離れるように押し出される。これにより、温度センサ4と冷却水Wとの間の熱移動量を増加させることができる。この結果、合流リード流路143を流れる冷却水Wの流量が温度センサ4の計測可能(温度センサ4の性能に依存する計測可能)な流量の下限値であっても、正確な冷却水Wの温度を計測することができる。
【0088】
また、本実施形態によれば、リード流路14は、溝Sと、溝Sを覆うカバーCとで構成されるため、リード流路14及び温度センサ4を簡便に構成することができる。また、溝SとカバーCとの間に温度センサ4を配置するだけでよいため、温度センサ4の組付けを容易にすることができる。
【0089】
また、本実施形態によれば、制御部20は、暖機モードにおいて、第1温度の冷却水Wと第2温度の冷却水Wとの界面Fの形成される位置が第1リード流入口14H1と第2リード流入口14H2との間になるように第1ポンプ31及び第2ポンプ32の動作を制御する。これにより、冷却水Wの温度をより正確に取得することができる。この結果、エンジンEの温度をより緻密に管理することができる。
【0090】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成してもよい(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0091】
(1)例えば、
図10に示すように、第2高温流路112は、分岐部112Bを含み、分岐部112Bが切替流路13と接続してもよい。分岐部112Bは、切替流路13に近づくにつれて上側となるように傾斜する。これにより、第1温度の冷却水Wが第2低温流路122に流れ込むことが抑制され、エンジンEの暖機性能の低下を抑制することができる。なお、
図10における上から下に向かう方向は、鉛直方向に沿う方向に相当する。
【0092】
また、
図11に示すように、切替流路13に流入する冷却水Wをより効率よく撹拌できるように、第2高温流路112(分岐部112B)の内部に邪魔板112J、撹拌タンク112T等の冷却水Wの撹拌性能を向上させる撹拌部112Kが設けられてもよい。撹拌部112Kは、
図6を参照して説明した流速調整部112aに設けられてもよい。
【0093】
(2)本実施形態では、温度センサ4を経由した冷却水Wがラジエータ2と第2ポンプ32との間に還流される場合を説明したが、温度センサ4を経由した冷却水Wは、第1高温流路111のうちの第1ポンプ31よりも上流であって、第4高温流路114と分岐点よりも下流の位置に還流されてもよい。
【0094】
(3)本実施形態では、温度管理対象の一例としてエンジンEを例に説明したが、温度管理対象は、エンジンEに限定されない。温度管理対象は、例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の充放電可能なバッテリ、化学反応により電気を発生する燃料電池であってもよい。
【0095】
(4)本実施形態では、流体の一例として冷却水Wを例に説明したが、流体は冷却水W以外の流体、例えば、パラフィン系等の絶縁油、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒であってもよい。
【0096】
(5)本実施形態では、切替流路13が水平方向に延在する場合を説明したが、切替流路13は、水平方向に延在しなくてもよく、例えば水平方向に対して傾斜してもよい。また、第2低温流路122は、鉛直方向の下側から切替流路13に接続される場合に限定されず、例えば斜め下方から切替流路13に接続されてもよい。
【0097】
(6)第2高温流路112は、縮小部112bを省略し、ポンプ3の制御によってのみ、遮断機構を構成してもよい。また、第2高温流路112は、拡大部112cを省略することも可能である。
【0098】
(7)第1リード流路141及び第2リード流路142は、流入する冷却水Wの流量が等しくなるように構成されればよく、同一の長さに構成されなくてもよい。また、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2の大きさも、第1リード流路141及び第2リード流路142に流入する冷却水Wの流量が等しくなるように構成されればよく、流路断面積が、第1リード流入口14H1及び第2リード流入口14H2のそれぞれの上流よりも縮小されていなくてもよい。
【0099】
(8)本実施形態では、突起143tが32個設けられる場合を説明したが、突起143tの数量は適宜変更可能である。具体的には、周方向に沿って設けられる突起143tの数量は、8つに限定されず、4つ、6つ等であってもよいし、流通方向に沿って設けられる突起143tも4列に限定されず、6列、8列等であってもよい。また、最も上流側に位置する8つの突起143tは、その下流側の端が温度センサ4(感温部41)の上流側の端と一致するように設けられなくてもよい。また、最も下流側に位置する突起143t(4列目)の下流端も感温部41の下流端と一致しなくてもよい。更に、8つの突起143tは、流通方向に沿って等間隔で設けられなくてもよい。あるいは、合流リード流路143は、突起143tを省略することも可能である。また、感温面41Sの形状は、矩形状に限定されない。感温面41Sの形状は、例えば、楕円形、円形、扇形等であってもよい。
【0100】
(9)本実施形態では、リード流路14は、溝SとカバーCとで構成されたが、リード流路14は、筒状の管等によって構成されてもよく、温度センサ4は、当該管の内部に配置(挿入)されてもよい。
【0101】
(10)本実施形態では、暖機モードにおいて、制御部20は、第2ポンプ32の圧力を調整することにより、界面Fが形成される位置が目標位置となるように制御したが、制御部20は、第1ポンプ31の圧力を変更することにより、界面Fが形成される位置が目標位置となるように制御してもよい。あるいは、第1ポンプ31の圧力と第2ポンプ32の圧力との双方を変更することにより、界面Fが形成される位置が目標位置となるように制御してもよい。温調モードにおいても同様に、第1温度の冷却水Wと第2温度の冷却水Wとが切替流路13で混合されるよう第1ポンプ31の圧力のみを変更、又は、第1ポンプ31の圧力と第2ポンプ32の圧力との双方を変更してもよい。
【0102】
(11)本実施形態では、第1リード流路141、第2リード流路142、合流リード流路143及び還流リード流路144の流路断面積は一定であって、互いに等しい構成を説明したが、第1リード流路141、第2リード流路142、合流リード流路143及び還流リード流路144の流路断面積は一定でなくてもよいし、互いに等しくなくてもよい。ただし、第1リード流路141の流路断面積と第2リード流路142の流路断面積とは一定であって、等しいことが望ましい。また、第1リード流路141は第1リード流入口14H1と、第2リード流路142は第2リード流入口14H2と、還流リード流路144はリード流出口14H3と流路面積が異なってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、温度管理装置に利用できる。
【符号の説明】
【0104】
3 :ポンプ
4 :温度センサ(センサ)
11 :高温流路(第1流路)
12 :低温流路(第2流路)
13 :切替流路
14 :リード流路
14H1 :第1リード流入口
14H2 :第2リード流入口
20 :制御部
31 :第1ポンプ
32 :第2ポンプ
100 :温度管理装置
112b :縮小部
112c :拡大部
141 :第1リード流路
142 :第2リード流路
143 :合流リード流路
143t :突起
C :カバー
E :エンジン(温度管理対象)
EB :シリンダブロック(第1管理対象)
EH :シリンダヘッド(第2管理対象)
F :界面
H3 :第3壁面(壁面)
P1 :接続部分
S :溝
W :冷却水(流体)