(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115067
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】荷台用治具
(51)【国際特許分類】
B60P 1/04 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
B60P1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020530
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】光村 芳文
(72)【発明者】
【氏名】武石 祐幸
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴之
(72)【発明者】
【氏名】植田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】椙島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】高村 正和
(72)【発明者】
【氏名】瀬谷 藤夫
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来技術に比して容易に荷台の積荷を目的箇所に直接投入することができる荷台用治具を提供することである。
【解決手段】本願発明の荷台用治具は、ダンプトラックの荷台に設置されダンプアップする際に積荷の排出経路を案内する治具であって、左ガイド体と右ガイド体、支持体を備えたものである。左開閉板の後方端と右開閉板の後方端との間には、積荷が排出される排出口が形成される。そして、荷台をダンプアップすると、積荷は左ガイド体と右ガイド体によって中央側に案内されつつ後方に移動するとともに、積荷の移動に応じて左開閉板と右開閉板が外側に回転する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンプトラックの荷台に設置され、ダンプアップする際に積荷の排出経路を案内する治具であって、
左固定板と、該左固定板に回転可能に連結される左開閉板と、を含んで構成される左ガイド体と、
右固定板と、該右固定板に回転可能に連結される右開閉板と、を含んで構成される右ガイド体と、
車幅方向に沿って配置される棒状又は管状の支持体と、を備え、
前記左ガイド体は、前記左固定板の前方端が前記荷台の左側板に当接するとともに、平面視で後方に向かって中央に傾斜するように配置され、
前記右ガイド体は、前記右固定板の前方端が前記荷台の右側板に当接するとともに、平面視で後方に向かって中央に傾斜するように配置され、
前記支持体は、前記左固定板に設けられた左開口部に挿通されるとともに、前記右固定板に設けられた右開口部に挿通されたうえで、前記荷台の前記右側板と前記右側板に取り付けられ、
前記左開閉板の後方端と前記右開閉板の後方端との間に、前記積荷が排出される排出口が形成され、
前記荷台をダンプアップすると、前記積荷は前記左ガイド体と前記右ガイド体によって中央側に案内されつつ後方に移動するとともに、該積荷の移動に応じて前記左開閉板と前記右開閉板が外側に回転する、
ことを特徴とする荷台用治具。
【請求項2】
前記左開閉板に取り付け可能であって、前記右開閉板に取り付け可能である連結索を、さらに備え、
前記左開閉板と前記右開閉板に取り付けられた前記連結索によって、該左開閉板と該右開閉板の回転量が制限される、
ことを特徴とする請求項1記載の荷台用治具。
【請求項3】
前記左固定板、前記左開閉板、前記右固定板、及び前記右開閉板のうち、前記荷台の中央側の表面に潤滑シートが取り付けられ、
前記潤滑シートは、前記左固定板、前記左開閉板、前記右固定板、及び前記右開閉板を形成する材料よりも低摩擦の材料によって形成された、
ことを特徴とする請求項1記載の荷台用治具。
【請求項4】
前記左ガイド体は、前記左固定板の下端に連結される左底板を、さらに含んで構成され、
前記右ガイド体は、前記右固定板の下端に連結される右底板を、さらに含んで構成され、
前記左底板と前記右底板は、前記荷台の中央に向かって下方に傾斜するように配置される、
ことを特徴とする請求項1記載の荷台用治具。
【請求項5】
前記支持体の軸方向に沿ってスライド可能な左ストッパ、及び右ストッパを、さらに備え、
中央側から前記左ストッパを前記左固定板に当接するとともに、中央側から前記右ストッパを前記右固定板に当接することによって、該左固定板と該右固定板の中央側への移動を規制する、
ことを特徴とする請求項1記載の荷台用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ダンプトラックの荷台に取り付けられる治具に関するものであり、より具体的には、幅が制限された排出口に積荷を誘導することができる荷台用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所では数千~数万ボルトの電気が生成されるが、電気抵抗によるロスを避けるため数十万ボルト程度の超高圧にしたうえで送電している。そして、超高圧変電所や一次変電所、二次変電所、配電用変電所などの各変電所で徐々に電圧を下げたうえで工場などに供給し、さらに柱上変圧器などで電圧を下げて家庭に供給している。いずれにしろ、発電所で生成された電気は、電線やケーブルなどを利用した送電線や配電線(以下、これらを総じて「送電線等」という。)を介して利用者に供給される。
【0003】
送電線等には、電力柱に架空される架空送電線等(架空送電線や架空配電線)や、地下に埋設される地中送電線等(地中送電線や地中配電線)があるが、現状では架空送電線等の方が圧倒的に多い。電力柱と架空送電線等による送電方式にはいくつか問題が指摘されることもあり、近年では架空送電線等の地中化が推し進められている。
【0004】
架空送電線等が地中に埋設されると、都市景観が向上するだけでなく、電力柱が撤去される結果、歩道を広く使えることができベビーカーや車いすをより安全に利用することができるようになる。また、台風や地震といった災害時に、電力柱が倒れたり、架空送電線等が垂れ下がったりすることで道を塞ぐことを回避できるため、緊急車両等もスムーズに通行することができる。さらに、災害時などに架空送電線等が切断される危険性も軽減されることから、停電の発生も抑制され安定的に電気を利用することができる。
【0005】
通常、架空送電線等を埋設するには、歩道や車道が利用される。つまり、道路を掘削して配管を設置し、その配管内に送電線等を収容するわけである。この場合、一時的にも道路を占用する必要があることから全部あるいは一部が通行止めとされ、そのため短い期間で実施することが求められる。
【0006】
したがって架空送電線等の地中化を行う場合、即日埋設工法による工事が主流となっている。この即日埋設工法は、舗装の撤去、掘削、軽量鋼矢板などの土留め材の設置、配管、埋め戻し、舗装復旧といった一連の作業を1日で完成させる方法である。
【0007】
ところで従来では、埋戻しを行う際にバックホウが利用されていた。すなわち、ダンプトラックで運搬されてきた土砂等の埋戻し材を、バックホウが掬い取って掘削箇所に投入していたわけである。そのため埋戻しを行う間は、バックホウによる掘削作業は中断を余儀なくされていた。もちろん、掘削用のバックホウと埋戻し用のバックホウを用意すれば掘削作業は中断しないものの、機械損料やオペレータの人件費が嵩むうえ、2台のバックホウを据えることから歩道に加え車道の一部も占領するような事態が生じるおそれもある。
【0008】
また、バックホウを利用することなく、荷台をダンプアップすることによって埋戻し材を掘削箇所に直接投入することも考えられる。しかしながら通常のダンプトラックの場合、あおり板が開扉することによって埋戻し材が排出されることから、概ねダンプトラックの幅寸法が排出口とされる。一方、掘削作業は配管設置を目的とするためいわゆる溝掘りとされ、掘削溝の幅はダンプトラックの幅よりも極端に狭い。したがって、荷台をダンプアップしたときに排出される埋戻し材は、その大部分が掘削箇所に投入されることなくこぼれてしまうことになる。
【0009】
そこで特許文献1では、荷台のダンプアップによって埋戻し材を、小幅の掘削溝に直接投入することができる排出治具と、これを用いた排出方法について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示される排出治具は、荷台の後方に排出口を形成するものであって、荷台をダンプアップしたときに埋設材料がこの排出口に向かうように誘導する治具である。この排出口の幅は概ね掘削溝の幅とされ、したがって埋設材料はこぼれることなく目的の掘削溝内に直接投入されるわけである。
【0012】
図9は、特許文献1に開示される埋設材料排出方法を説明するステップ図である。この図に示すように埋設材料排出方法では、バックホウBHに頼ることなく、ダンプトラックDTが掘削溝内に埋設材料を直接投入することができる。その結果、作業範囲をブロック分けしたうえで、埋戻し作業と配管作業、そしてバックホウBHによる掘削作業を、並行して同時に実施することができるわけである。
【0013】
このように特許文献1の発明によれば、極めて効率的に即日埋設工法を行うことができ、つまり1日の作業量(埋設長さ)が従来技術に比べて飛躍的に向上する。しかしながら、当該発明には、いくつか改善の余地があった。すなわち、治具の重量が重いため荷台への取り付け作業に相当の労力を要するという問題や、荷台のうち治具が広い範囲を占めるため積載量が80%程度まで減少するという問題、あるいは埋戻材料が水分を含んでいるなど粘性の高いものである場合に荷台から排出しにくいという問題などが指摘され、これらの問題を解消することが望まれていた。
【0014】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来技術に比して容易に荷台の積荷を目的箇所に直接投入することができる荷台用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、固定板と開閉板を具備するガイド体を用いることとし、この開閉板が固定板に対して回転する機構とすることで積荷が排出口からより円滑に排出される、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われたものである。
【0016】
本願発明の荷台用治具は、ダンプトラックの荷台に設置されダンプアップする際に積荷の排出経路を案内する治具であって、左ガイド体と右ガイド体、支持体を備えたものである。このうち左ガイド体は、左固定板とこの左固定板に回転可能に連結される左開閉板を含んで構成され、一方の右ガイド体は、右固定板とこの右固定板に回転可能に連結される右開閉板を含んで構成される。棒状(あるいは管状)の支持体は、車幅方向に沿って配置されるものである。左ガイド体は、左固定板の前方端が荷台の左側板に当接するとともに、平面視で後方に向かって中央に傾斜するように配置され、同様に右ガイド体は、右固定板の前方端が荷台の右側板に当接するとともに平面視で後方に向かって中央に傾斜するように配置される。また支持体は、左固定板に設けられた左開口部に挿通されるとともに、右固定板に設けられた右開口部に挿通されたうえで、荷台の左側板と右側板に取り付けられる。なお、左開閉板の後方端と右開閉板の後方端との間には、積荷が排出される排出口が形成される。そして、荷台をダンプアップすると、積荷は左ガイド体と右ガイド体によって中央側に案内されつつ後方に移動するとともに、積荷の移動に応じて左開閉板と右開閉板が外側に回転する。
【0017】
本願発明の荷台用治具は、連結索をさらに備えたものとすることもできる。この連結索は、左開閉板に取り付け可能であって、右開閉板に取り付け可能である。左開閉板と右開閉板に取り付けられた連結索によって、左開閉板と右開閉板の回転量が制限される。また連結索の長さを調整することによって、排出口の幅を調整することができる。
【0018】
本願発明の荷台用治具は、左固定板と左開閉板、右固定板、右開閉板に潤滑シートが取り付けられたものとすることもできる。ただし潤滑シートは、左固定板と左開閉板、右固定板、右開閉板にのうち荷台の中央側の表面に取り付けられる。また潤滑シートは、左固定板や左開閉板、右固定板、右開閉板を形成する材料よりも低摩擦の(滑りやすい)材料によって形成される。
【0019】
本願発明の荷台用治具は、ガイド体が左底板を含むものとすることもできる。より詳しくは、左ガイド体が左固定板の下端に連結される左底板を含んで構成され、右ガイド体が右固定板の下端に連結される右底板を含んで構成される。なお左底板と右底板は、荷台の中央に向かって下方に傾斜するように配置される。
【0020】
本願発明の荷台用治具は、支持体の軸方向に沿ってスライド可能な左ストッパと右ストッパをさらに備えたものとすることもできる。中央側から左ストッパを左固定板に当接するとともに、中央側から右ストッパを右固定板に当接することによって、左固定板と右固定板の中央側への移動を規制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本願発明の荷台用治具には、次のような効果がある。
(1)従来技術では脚材と板材によってガイドが形成されていたが、本願発明のガイド体は脚材に相当する部材が省略されているため、従来技術に比して軽量である。その結果、荷台への取り付け作業や、取り外し作業、持ち運びなどに係る労力を、従来技術に比して低減することができる。
(2)脚材に相当する部材がないことから、その分だけ荷台に占める領域が減少し、すなわち従来技術に比して多くの積荷を運搬することができる。
(3)ガイド体の表面に潤滑シートを取り付けることによって、粘性の高い積荷でも円滑に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ダンプトラックの荷台に設置された本願発明の荷台用治具を模式的に示す平面図。
【
図2】(a)は荷台の外側から見た左ガイド体の正面図であり、(b)は荷台の内側から見た左ガイド体の正面図。
【
図3】(a)は開閉板が開扉する前のガイド体を模式的に示す平面図、(b)は開閉板が開扉した後のガイド体を模式的に示す平面図。
【
図4】(a)は荷台に設置された荷台用治具を示す平面図、(b)は荷台に設置された荷台用治具を示す正面図。
【
図5】左底板を備えた左板ガイド体と右底板を備えた右ガイド体を示す斜視図。
【
図6】固定バーが左開口部と右開口部に挿通され、係止具によって荷台に取り付けられた支持体を示す斜視図。
【
図7】(a)は左側板に取り付けられた係止具を示す斜視図、(b)は左側板に取り付けられた係止具を荷台の内側から見た正面図。
【
図8】左ストッパと右ストッパによって荷台の内から支持されたガイド体を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明の荷台用治具の実施形態の一例を図に基づいて説明する。本願発明の荷台用治具は、ダンプトラックの荷台に設置され、ダンプアップする際に積荷の排出経路を案内する治具である。この「積荷」としては、砂や土、砕石、割栗石、フレッシュコンクリート、小サイズのスクラップ材など種々の物を対象とすることができるが、便宜上ここでは掘削溝に埋戻す材料(以下、「埋戻し材」という。)を積荷とした例で説明する。なお掘削溝は、例えば配管等を埋設するためのものであって、ダンプトラックの車幅寸法よりも狭い幅寸法とされ、配管等が設置された後に土砂や砕石といった埋戻し材で埋戻される。
【0024】
図1は、ダンプトラックの荷台200に設置された本願発明の荷台用治具100を模式的に示す図であって、上方から見た平面図である。一般的なダンプトラックの荷台200は、積荷を搭載する床面(以下、「荷台床210」という。)や、左側板220、右側板230、キャビン(運転席)付近に配置される鳥居240、水平軸周りに回転するあおり板250などを含んで構成される。そしてダンプアップすると、鳥居240が上昇するように荷台200は徐々に傾斜するとともにあおり板250が回転し、荷台床210とあおり板250との間に生じた隙間から埋戻し材が排出される。つまり、概ねあおり板250の全幅にわたって埋戻し材が排出されることとなる。
【0025】
なお便宜上ここでは、
図1にも示すように荷台200のうちキャビン側(図では上方)のことを「前方」、あおり板250側のことを(図では下方)を「後方」ということとし、前方に向かって「左側」、「右側」ということとする。また、前方や後方の向きのことを「車軸方向」、左側や右側の向きのことを「車幅方向」ということとする。また、車幅方向における荷台200の中心のことを、単に「中央」ということとする。
【0026】
本願発明の荷台用治具100は、
図1に示すように左右に配置されるガイド体110と、棒状(あるいは管状)の支持体120を含んで構成され、さらに後述する連結索やストッパなどを含んで構成することもできる。なおガイド体110は、左右に配置されることから、これらを区別するために左側のガイド体110を特に「左ガイド体110L」、右側のガイド体110を特に「右ガイド体110R」ということとする。
【0027】
左ガイド体110Lは前方側の端部が左側板220に当接するとともに、平面視したときに後方に向かって中央に傾斜するように(寄っていくように)配置され、同様に、右ガイド体110Rは前方側の端部が右側板230に当接するとともに、平面視したときに後方に向かって中央に傾斜するように配置される。また、左ガイド体110Lと右ガイド体110Rはそれぞれの後方側の端部の間に隙間が生じるように配置され、この隙間が積荷の出口(以下、「排出口」という。)となる。このように、左ガイド体110Lと右ガイド体110Rがそれぞれ後方に向かって中央に傾斜するように配置されることで、荷台200をダンプアップしたときに埋戻し材は排出口に向かって誘導される。そして、排出口の幅寸法を掘削溝の幅寸法と同程度(あるいは、やや小さい寸法)としておくことで、排出口から排出された埋戻し材は掘削溝内に投入されるわけである。
【0028】
一方、支持体120は、荷台200のうちの後方であって、概ね車幅方向に沿って配置される。このとき支持体120は、左ガイド体110Lと右ガイド体110Rに設けられた開口部に挿通されたうえで配置される。そして、その左側の端部が左側板220に固定されるとともに、右側の端部が右側板230に固定されることで、支持体120は荷台200に取り付けられる。
【0029】
以下、荷台用治具100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0030】
(ガイド体)
図2は、ガイド体110のうちの左ガイド体110Lを示す図であり、(a)は荷台200の外側から車幅方向に見た左ガイド体110L(つまり、左ガイド体110Lの外側面)の正面図であり、(b)は荷台200の中央から車幅方向に見た左ガイド体110L(つまり、左ガイド体110Lの内側面)の正面図である。この図に示すように左ガイド体110Lと右ガイド体110Rは、2つの部材が連結された構造である。すなわち、左ガイド体110Lは、前方に配置される板状の部材(以下、「左固定板111L」という。)と、後方に配置される板状の部材(以下、「左開閉板112L」という。)を含んで構成され、同様に、右ガイド体110Rは、前方に配置される板状の部材(以下、「右固定板111R」という。)と、後方に配置される板状の部材(以下、「右開閉板112R」という。)を含んで構成される。
【0031】
また、左開閉板112Lと右開閉板112R(以下、これらを総称して単に「開閉板112」という。)は、それぞれ左固定板111Lと右固定板111R(以下、これらを総称して単に「固定板111」という。)に対して回転可能となるように連結される。例えば
図2(a)に示すように、蝶番114を用いて固定板111と開閉板112を連結することができる。もちろん、固定板111と開閉板112がヒンジ構造となるように連結することができれば、蝶番114に限らず従来用いられている種々の部材を利用することができる。ただし
図2(a)に示すように、蝶番114などのヒンジ用部材はガイド体110の外側面に設けるとよい。内側面に設けた場合、埋戻し材が蝶番114などに繰り返し接触するため、目詰まりなどが生じてヒンジ構造が機能しなくなることも考えられるからである。
【0032】
図3は、開閉板112が固定板111に対して回転する状況を模式的に示す図であって、(a)は開閉板112が開扉する前のガイド体110を上から見た平面図であり、(b)は開閉板112が開扉した後のガイド体110を上から見た平面図である。ダンプアップされていない状態では、
図3(a)に示すように開閉板112はやや中央側に向かって配置され、開閉板112の後方端には比較的小幅の排出口が形成されている。一方、ダンプアップされた状態では、
図3(b)に示すように開閉板112が外側に向かって開くように回転し、
図3(a)よりも広幅の排出口が形成されている。ダンプアップされていない状態、つまり平積みの状態では埋戻し材の自重が開閉板112に作用しないため開閉板112が回転することはないが、ダンプアップされた状態では埋戻し材の自重が開閉板112に作用するため開閉板112が回転するわけである。
【0033】
ところで、開閉板112が自由に回転する構造とした場合、ダンプアップされたときに開閉板112は鉛直下向きとなるまで回転することもある。もちろん、鉛直下向きとされた開閉板112によって形成される排出口の幅寸法が計画されたものであれば問題ないが、その排出口の幅寸法ではやや大きすぎるケースもある。例えば、開閉板112が鉛直下向きになると、その排出口が掘削溝の幅寸法より大きくなってしまい、すべての埋戻し材が掘削溝内に投入されないことも考えられる。
【0034】
この場合、
図4に示すような連結索130を利用して開閉板112の回転を制限するとよい。
図4は、荷台200に設置された荷台用治具100を示す図であって、(a)は上方から見た平面図であり、(b)は後方から見た正面図である。この連結索130は、チェーンやロープといった策状の部材であり、左開閉板112Lと右開閉板112Rに取り付け可能なものである。
【0035】
例えば
図4(a)に示すように、連結索130の左端を左開閉板112Lの後端に取り付け、連結索130の右端を右開閉板112Rの後端に取り付けることによって、開閉板112の回転が制限される。より詳しくは、左開閉板112Lの後端と右開閉板112Rの後端との開きが連結索130の全長になるまでは開閉板112は自由に回転できるが、その開きが連結索130の全長になると開閉板112は拘束されそれ以上の回転が規制される。つまり、連結索130の長さ(実際には、左開閉板112Lの取り付け位置と右開閉板112Rの取り付け位置との間隔)がダンプアップしたときの排出口の幅寸法となり、換言すれば連結索130の長さを調整することによって排出口の幅寸法を調整することができる。連結索130の長さを調整するにあたっては、連結索130のうち任意の位置で開閉板112に取り付け可能な構成としたり、長さが異なる複数種類の連結索130を用意したうえで所望の連結索130を選択したりすることができる。
【0036】
左固定板111Lには棒状(あるいは管状)の支持体120を挿通するための開口部(以下、「左開口部113L」という。)が設けられ、同様に、右固定板111Rには支持体120を挿通するための開口部(以下、「右開口部113R」という。)が設けられる。これら左開口部113Lと右開口部113R(以下、これらを総称して単に「開口部113」という。)は、
図2に示すように上部が開放されたいわば切り欠き形状とすることもできるし、円形や角形でくり貫かれた貫通孔とすることもできる。
【0037】
左ガイド体110Lと右ガイド体110Rは、底部を構成する板状の部材(以下、「底板116」という。)を備えたものとすることもできる。より詳しくは
図5に示すように、左ガイド体110Lのうち左固定板111Lの下端に左底板116Lが連結され、右ガイド体110Rのうち右固定板111Rの下端に右底板116Rが連結される。なお、底板116は、荷台200の中央に向かって下方に傾斜するように(スロープ状に)配置される。つまりこの場合、固定板111は荷台床210から浮くように配置され、そして底板116は、その一端が固定板111の下端で連結されるとともに、その他端が荷台床210に接地するように配置される。スロープ状の底板116を設けることによって、ダンプアップの際に埋戻し材が荷台床210とガイド体110との隙間に入り込む状況を抑制することができ、すなわちより多くの埋戻し材を排出することができる。
【0038】
固定板111や開閉板112は、ダンプアップされたときに作用する埋戻し材の自重に耐えることができるように、鋼材や樹脂材など相当の強度を有する材料で形成するとよい。しかしながら鋼材や樹脂材を材料とする固定板111等では、埋戻し材が水分を含むなどその粘性が高い場合、固定板111等の表面に埋戻し材が付着して全ての埋戻し材が十分に排出されないこともある。そこで埋戻し材が付着するおそれがあるときは、
図2(b)に示すように固定板111や開閉板112の表面にシート材など薄肉の部材(以下、「潤滑シート140」という。)を取り付けるとよい。この潤滑シート140は、固定板111や開閉板112を形成する材料よりも低摩擦の(摩擦係数が小さい)材料によって形成されるもので、当然ながら固定板111や開閉板112のうち荷台200の中央側の表面(いわば内面)に取り付けられる。さらに、底板116の上面に潤滑シート140を取り付けることもできる。
【0039】
(支持体)
支持体120は、
図4(a)に示すように棒状(あるいは管状)の固定バー121と係止具122を含んで構成され、ガイド体110(左ガイド体110Lと右ガイド体110R)を支持する部材である。ガイド体110は、荷台床210に載置されるだけであって、荷台200に固定されるわけではない。そのため、ダンプアップされたときにガイド体110は下方に移動し、ついには荷台200から落下してしまう。そこで、支持体120が支持することで、ガイド体110の落下を防止するわけである。具体的には
図6に示すように、固定バー121を左開口部113Lと右開口部113Rに挿通したうえで、その固定バー121を係止具122によって荷台200に取り付ける。
【0040】
係止具122は、左側板220に取り付けられるとともに、右側板230に取り付けられる。
図7は左側板220に取り付けられた係止具122を示す図であり、(a)は前方から見た斜視図、(b)は荷台200の中央から見た正面図である。この図に示す係止具122は、カギ状に形成された係止フック122Fと、板状の係止プレート122Pを含んで構成されるものである。以下、この係止具122を用いて荷台200に支持体120を取り付ける手順について説明する。
【0041】
まず、係止フック122Fを左側板220に嵌め込んだ状態でボルトやピンを締め付けることによって係止具122を左側板220に固定し、同様に、右側板230にも係止フック122Fを固定する。その結果、
図7(b)に示すように、係止プレート122Pに設けられた嵌合用孔122Hが荷台200の中央に向くように配置される。そして、この嵌合用孔122Hを利用して固定バー121を左右の係止具122に取り付ける。具体的には、固定バー121の左端に設けられた突起を左側板220の嵌合用孔122Hに嵌合するとともに、固定バー121の右端に設けられた突起を右側板230の嵌合用孔122Hに嵌合することによって、固定バー121を係止具122に取り付ける。このとき、あらかじめ左開口部113Lと右開口部113Rに挿通したうえで、固定バー121を係止具122に取り付けるとよい。なお
図7に示す係止具122はあくまで一例であって、左開口部113Lと右開口部113Rに挿通された固定バー121を荷台200に取り付けることができれば、種々の係止具122を利用することができる。
【0042】
固定バー121は、その長さが変更できるように、伸縮可能な構成にするとよい。例えば、径が異なる複数の菅材を用い、小径菅材を大径菅材内に収容した構成とすることができる。すなわち、大径菅材から小径菅材を引き出す長さを調整することによって、固定バー121の長さを調整するわけである。なお、長さを調整した状態を維持するため、ボルトやピンで締め付けるなど小径菅材を大径菅材に固定するための機構も備えるとよい。また
図2(a)に示すようにガイド体110が支持柱115を備えることとし、左開口部113Lと右開口部113Rに挿通された固定バー121をこの支持柱115で支持する構成とすることもできる。
【0043】
上記したとおり、左開口部113Lと右開口部113Rに挿通された固定バー121が荷台200に固定されるため、左ガイド体110L(特に、左固定板111L)と右ガイド体110R(特に、右固定板111R)はその車軸方向の移動が規制される。一方、左ガイド体110Lと右ガイド体110Rの車幅方向の移動は規制されていないため、特に固定バー121の外径に対して開口部113が十分大きい(つまり、固定バー121と開口部113に相当の隙間が生じている)ときは自由に車幅方向に移動することができる。この場合、ダンプアップされて埋戻し材が後方に移動するときにガイド体110が適切に機能せず、埋戻し材が荷台200の中央側に誘導されないことも考えられる。
【0044】
そこでガイド体110が車幅方向に移動しやすいケースでは、
図8に示すストッパ150を利用するとよい。
図8は、左側のストッパ150(以下、特に「左ストッパ150L」という。)と、右側のストッパ150(以下、特に「右ストッパ150R」という。)によって荷台200の中央側から支持されたガイド体110を模式的に示す平面図である。
【0045】
まず、その当接材が左固定板111L(内側面)に当接するまで左ストッパ150Lを左側にスライドさせる。次いで、その当接材が右固定板111R(内側面)に当接するまで右ストッパ150Rを右側にスライドさせる。なお、当接材が左固定板111Lや右固定板111Rに当接した状況は、
図8の破線で囲った範囲で示している。そして、左ストッパ150Lが右側に移動しないようにボルトやピンで締め付けて固定バー121に左ストッパ150L固定し、同様に、右ストッパ150Rが左側に移動しないようにボルトやピンで締め付けて固定バー121に右ストッパ150Rを固定する。これにより、ガイド体110による車幅方向への移動(少なくとも、荷台200の中央側への移動)を規制することができ、すなわちダンプアップされたときに埋戻し材は荷台200の中央側に適切に誘導される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明の荷台用治具は、送電線や配電線を始め、情報通信回線など様々な線状物を地下に埋設する際に利用することができる。本願発明によれば、効率的かつ低コストで電線の地中化を実現することができ、ひいては電線の地中化の促進に寄与することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0047】
100 本願発明の荷台用治具
110 (荷台用治具の)ガイド体
111 (ガイド体の)固定板
112 (ガイド体の)開閉板
113 (ガイド体の)開口部
114 (ガイド体の)蝶番
115 (ガイド体の)支持柱
116 (ガイド体の)底板
110L (ガイド体のうちの)左ガイド体
111L (左ガイド体の)左固定板
112L (左ガイド体の)左開閉板
113L (左ガイド体の)左開口部
116L (左ガイド体の)左底板
110R (ガイド体のうちの)右ガイド体
111R (右ガイド体の)右固定板
112R (右ガイド体の)右開閉板
113R (右ガイド体の)右開口部
116R (右ガイド体の)右底板
120 (荷台用治具の)支持体
121 (支持体の)固定バー
122 (支持体の)係止具
122F (係止具の)係止フック
122H (係止具の)嵌合用孔
122P (係止具の)係止プレート
130 (荷台用治具の)連結索
140 (荷台用治具の)潤滑シート
150 (荷台用治具の)ストッパ
150L (ストッパのうちの)左ストッパ
150R (ストッパのうちの)右ストッパ
200 (ダンプトラックの)荷台
210 (荷台の)荷台床
220 (荷台の)左側板
230 (荷台の)右側板
240 (荷台の)鳥居
250 (荷台の)あおり板
BH バックホウ
DT ダンプトラック