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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115069
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】バンパ構造体、及び宇宙機
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/56 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
B64G1/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020532
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】仲鉢 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩庸
(57)【要約】
【課題】さらに軽量化され、かつより安定的に衝撃を低減することが可能なバンパ構造体、及び宇宙機を提供する。
【解決手段】バンパ構造体は、内側に与圧空間を形成する主壁、及び主壁に対して間隔をあけて対向する外側バンパを有する宇宙機に取り付けられるバンパ構造体であって、主壁と外側バンパとを接続する複数のフレーム部材と、フレーム部材同士の間に取り付けられている中間バンパと、を備え、中間バンパは、繊維材料を含む繊維構造体と、繊維構造体に積層された弾性体と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に与圧空間を形成する主壁、及び該主壁に対して間隔をあけて対向する外側バンパを有する宇宙機に取り付けられるバンパ構造体であって、
前記主壁と前記外側バンパとを接続する複数のフレーム部材と、
該フレーム部材同士の間に取り付けられている中間バンパと、
を備え、
前記中間バンパは、繊維材料を含む繊維構造体と、該繊維構造体に積層された弾性体と、を有するバンパ構造体。
【請求項2】
前記中間バンパでは、前記弾性体が前記外側バンパに対向し、前記繊維構造体が前記主壁に対向している請求項1に記載のバンパ構造体。
【請求項3】
前記繊維構造体は、前記繊維材料と、該繊維材料に含侵された樹脂材料と、を有し、
該繊維構造体の厚さ方向における少なくとも一方の面には、該面に沿って延びる格子状の複数の溝が形成されている請求項1又は2に記載のバンパ構造体。
【請求項4】
内側に与圧空間を形成する主壁、及び該主壁に対して間隔をあけて対向する外側バンパを有する宇宙機に取り付けられるバンパ構造体であって、
前記主壁と前記外側バンパとを接続する複数のフレーム部材と、
該フレーム部材同士の間に取り付けられている中間バンパと、
を備え、
前記中間バンパは、繊維材料、及び該繊維材料に含侵された樹脂材料を含む繊維構造体であり、
該繊維構造体の厚さ方向における少なくとも一方の面には、該面に沿って延びる格子状の複数の溝が形成されているバンパ構造体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のバンパ構造体と、
前記主壁、及び前記外側バンパを有するとともに前記バンパ構造体が取り付けられる宇宙機本体と、
を備える宇宙機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バンパ構造体、及び宇宙機に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙空間を航行する宇宙機は、スペースデブリやメテオロイド等の飛翔体に衝突してしまうリスクに曝されている。このような飛翔体と衝突した際のリスクを下げるため、従来の宇宙機は、人員や貨物が搭載される与圧空間を形成する主壁と、主壁の外側に設けられたバンパを有することが一般的である。例えば下記特許文献1に係る技術では、主壁の外側にバンパとしての複数の層構造が設けられ、その1つには液体が充填されている。飛翔体が衝突した際には、層構造が衝撃の大部分を受け止めることで、主壁に及ぶ影響を小さく抑えることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-121476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のように複数の層構造を設け、かつその1つに液体を充填する場合、構造物全体の重量増加が問題となる。特に、重量当たりの打ち上げコストや燃料コストが高いことを考慮すると、宇宙機の軽量化は喫緊の課題と言える。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、さらに軽量化され、かつより安定的に衝撃を低減することが可能なバンパ構造体、及び宇宙機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るバンパ構造体は、内側に与圧空間を形成する主壁、及び該主壁に対して間隔をあけて対向する外側バンパを有する宇宙機に取り付けられるバンパ構造体であって、前記主壁と前記外側バンパとを接続する複数のフレーム部材と、該フレーム部材同士の間に取り付けられている中間バンパと、を備え、前記中間バンパは、繊維材料を含む繊維構造体と、該繊維構造体に積層された弾性体と、を有する。
【0007】
本開示に係るバンパ構造体は、内側に与圧空間を形成する主壁、及び該主壁に対して間隔をあけて対向する外側バンパを有する宇宙機に取り付けられるバンパ構造体であって、前記主壁と前記外側バンパとを接続する複数のフレーム部材と、該フレーム部材同士の間に取り付けられている中間バンパと、を備え、前記中間バンパは、繊維材料、及び該繊維材料に含侵された樹脂材料を含む繊維構造体であり、該繊維構造体の厚さ方向における少なくとも一方の面には、該面に沿って延びる格子状の複数の溝が形成されている。
【0008】
本開示に係る宇宙機は、上記のバンパ構造体と、前記主壁、及び前記外側バンパを有するとともに前記バンパ構造体が取り付けられる宇宙機本体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、さらに軽量化され、かつより安定的に衝撃を低減することが可能なバンパ構造体、及び宇宙機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態に係る宇宙機の構成を示す模式図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るバンパ構造体の構成を示す断面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る中間バンパの構成を示す平面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る中間バンパの構成を示す断面図である。
図5】本開示の第二実施形態に係る中間バンパの構成を示す平面図である。
図6】本開示の第二実施形態に係る中間バンパの変形例を示す断面図である。
図7】本開示の各実施形態に共通する中間バンパの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
(宇宙機1の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る宇宙機1、及びバンパ構造体2について、図1から図3を参照して説明する。宇宙機1は、地上から打ち上げられた後、宇宙空間を航行する輸送機械である。図1に示すように、宇宙機1は、宇宙機本体10と、推進装置11と、バンパ構造体2と、を備える。
【0012】
宇宙機本体10は、人員や貨物を搭載するための与圧空間を内部に有する容器状をなしている。与圧空間は、主壁12によって密封された空間である。宇宙機本体10の内部には、操縦装置や航法装置、生命維持装置等の各種機器も搭載されている。宇宙機本体10には、推進装置11が取り付けられている。推進装置11としては、固体燃料又は液体燃料をエネルギー源とするロケットエンジンが一例として挙げられる。その他、推進装置11としてイオンエンジンを用いることも可能である。推進装置11を駆動することによって、宇宙機本体10の推進方向、速度が適宜調節される。
【0013】
(バンパ構造体2の構成)
宇宙機本体10の主壁12の外側には、当該主壁12の少なくとも一部を覆うようにしてバンパ構造体2が設けられている。バンパ構造体2は、スペースデブリやメテオロイド等の飛翔体から宇宙機本体10を保護するために設けられている。図2に示すように、バンパ構造体2は、主壁12と、この主壁12の外側を覆う外側バンパ13との間に設けられている。より具体的には、バンパ構造体2は、フレーム部材21と、中間バンパ22と、を有する。
【0014】
フレーム部材21は、外側バンパ13と主壁12との間を接続する梁状の部材である。つまり、外側バンパ13と主壁12との間には、複数のフレーム部材21が間隔をあけて配列されている。フレーム部材21は、フレーム部材本体31と、取付部32と、固定部33と、を有する。フレーム部材本体31は、主壁12から外側バンパ13に向かって延びている。また、図3に示すように、フレーム部材本体31は、外側から見てI字型をなしている。具体的には、フレーム部材本体31は、主壁12の面方向に延びる柱状部34と、この柱状部34の両端に一体に設けられたフランジ部35と、を有する。フランジ部35には、取付部32が設けられている。取付部32は、互いに隣接する一対の柱状部34同士の間で、一方側のフランジ部35から他方側のフランジ部35に向かう方向に斜めに突出している。
【0015】
取付部32の先端(つまり、フランジ部35と接続されている側とは反対側の端部)には、固定部33を介して中間バンパ22が固定されている。固定部33は、ボルト40と、不図示のナットと、を有する。ボルト40は、取付部32に形成された孔36に挿通されている。ナットは、ボルト40の先端部に螺合することで、中間バンパ22と取付部32とを一体に締結固定している。
【0016】
中間バンパ22は、例えば矩形の膜状をなしている。中間バンパ22は、繊維材料を含む繊維構造体51と、弾性体52とを積層することによって形成されている。繊維材料としては炭素繊維や超高分子量ポリエチレン繊維、アルミナ繊維等が好適に用いられる。繊維材料の引張強度は、1GPa以上8GPa以下であることが望ましく、さらに望ましくは1Gpa以上4GPa以下である。最も望ましくは、引張弾性率は50GPa以上200GPa以下である。これらの繊維材料を編み込むことによって膜状の繊維構造体51が形成されている。引張強度の許容する限りにおいて、繊維構造体51は衝撃を受けた際に三次元的に伸長することが可能である。つまり、外側バンパ13側から飛翔体が衝突した際には、繊維構造体51は、主壁12側に向かって凸となるように伸長変形(面外変形)することが可能とされている。
【0017】
弾性体52としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の弾性変形可能な樹脂材料が好適に用いられる。弾性体52は外側バンパ13に対向する側の面に設けられ、繊維構造体51はその反対側(つまり主壁12に対向する側の面に設けられている。繊維構造体51と弾性体52との間には例えば接着剤等で形成された結合部が介在していてもよい。弾性率の許容する限りにおいて、弾性体52は衝撃を受けた際に三次元的に伸長することが可能である。つまり、外側バンパ13側から飛翔体が衝突した際には、弾性体52は、繊維構造体51と一体となって、主壁12側に向かって凸となるように伸長変形(面外変形)することが可能とされている。特に、中間バンパ22の面内方向への伸縮変形に加えて、面外変形も同じように生じやすくなっている。さらに言い換えれば、中間バンパ22は、繊維構造体51のみで形成された状態に比べて剛性が比較的に高く、かつ柔軟性が増加した状態となっている。
【0018】
(作用効果)
宇宙空間を航行する宇宙機1は、スペースデブリやメテオロイド等の飛翔体に衝突してしまうリスクに曝されている。このような飛翔体と衝突した際に、衝撃によって与圧空間が破壊されてしまうリスクを下げるため、従来の宇宙機1は、人員や貨物が搭載される与圧空間を形成する主壁12と、主壁12の外側に設けられたバンパを有することが一般的であった。特に、多数の層構造をバンパに持たせることによって耐衝撃性能を向上させることが主流であった。しかしながら、層の数を増やすほど宇宙機1全体の重量増加を招いてしまうという課題があった。特に、重量当たりの打ち上げコストや燃料コストが高いことを考慮すると、宇宙機1の軽量化は喫緊の課題と言える。そこで、本実施形態に係るバンパ構造体2は上述の各構成を採用している。
【0019】
以下では、飛翔体が外側バンパ13を貫通して中間バンパ22に到達した際の挙動について説明する。上記構成によれば、外側バンパ13を貫通して飛翔体が中間バンパ22に衝突した際、繊維構造体51が引張強度によって衝撃力に抗しつつ、弾性体52が三次元的に弾性変形することで、飛翔体の運動エネルギーを吸収することができる。これにより、飛翔体の速度が低下し、中間バンパ22を貫通して主壁12に到達してしまう可能性を大きく下げることができる。さらに、仮に飛翔体が中間バンパ22を貫通した場合であっても、繊維構造体51の引張強度と弾性体52の弾性力によって飛翔体の速度が十分に低下しているため、主壁12に到達した当該飛翔体による損壊を最低限に抑えることが可能となる。さらに、中間バンパ22が膜状の繊維構造体51と弾性体52とによって形成されていることから、当該中間バンパ22を設けたことによる重量増加を抑え、宇宙機1のさらなる軽量化を図ることが可能となる。
【0020】
さらに、上記構成によれば、飛翔体が飛んでくる側である外側バンパ13に弾性体52が対向し、反対側に繊維構造体51が積層されている。飛翔体の衝突に伴って弾性体52が優先的に弾性変形することで初期の運動エネルギーを吸収し、その後、繊維構造体51が自身の引張強度に基づいて終末の運動エネルギーを吸収する。これにより、飛翔体が中間バンパ22を貫通してしまう可能性をさらに低減することができる。また、仮に弾性体52が破壊された場合であっても、当該弾性体52に積層された繊維構造体51が自身の引張強度に基づいて弾性体52を裏打ちしていることから、飛翔体が当該繊維構造体51までも貫通して主壁12に到達してしまうリスクを大きく下げることも可能となる。
【0021】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0022】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、図4図5を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態では、中間バンパ22が、弾性体52を有さず、膜状のB繊維構造体151のみによって構成されている。さらに、このB繊維構造体151は、上述した各種の繊維材料に加えて、これら繊維材料に含侵された樹脂材料を含んでいる。つまり、このB繊維構造体151は、複合材料である。なお、樹脂材料の体積比率は、5%以上20%以下であり、より望ましくは5%以上18%以下である。最も望ましくは、樹脂材料の体積比率は、5%以上15%以下である。
【0023】
さらに、図5に示すように、このB繊維構造体151の厚さ方向における少なくとも一方側の面には、当該面に沿って延びるとともに、互いに交差する格子状の複数の溝60が形成されている。これら溝60は、矩形をなすB繊維構造体151の各辺に対して45°の角度をなして延びている。溝60同士の間の間隔は場所によらず一定である。
【0024】
(作用効果)
上記構成によれば、B繊維構造体151が繊維材料と樹脂材料で形成されているため、ある程度の柔軟性を有している。さらに、このB繊維構造体151の少なくとも一方の面に格子状の溝60が形成されている。これにより、B繊維構造体151が飛翔体の衝突に伴って変形する際に、溝60の延びる方向に沿って立体的かつ均一に変形することが可能となる。具体的には、溝60の延びる方向に沿って、当該溝60が閉じる方向、又は開く方向にB繊維構造体151が変形する。これにより、飛翔体の運動エネルギーをB繊維構造体151によって効率的に吸収することができる。また、溝60に沿って均一に変形することから、B繊維構造体151上の位置によらず、当該B繊維構造体151が安定的かつ均等に衝突のエネルギーを吸収することが可能となる。したがって、外側バンパ13を貫通する際に飛翔体が複数の小片に分裂した際にも、散逸したこれら小片の運動エネルギーを余すことなくB繊維構造体151が受け止め、その速度を低下させることが可能となる。これにより、主壁12に影響が及んでしまう可能性を大きく低減することができる。
【0025】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0026】
例えば、図6に変形例として示すように、上記第二実施形態に係る溝60が形成されたB繊維構造体151に、第一実施形態で説明した弾性体52を積層して中間バンパ22を構成することも可能である。この場合、B繊維構造体151自体によるエネルギー吸収に加えて、弾性体52の弾性変形によるエネルギー吸収も期待できることから、飛翔体の衝突に対するバンパ構造体2のロバスト性をさらに高めることが可能となる。
【0027】
<その他の実施形態>
以上、本開示の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0028】
例えば、上述の各実施形態で説明した宇宙機1の形状は一例であり、設計や仕様に応じて適宜決定されてよい。また、宇宙機本体10として、輸送機械に代えて人工衛星にバンパ構造体2を適用することも可能である。この場合であっても、スペースデブリ等の飛翔体の衝突リスクは同等であることから、バンパ構造体2による保護性能の向上を図る意義がある。
【0029】
また、飛翔体の例としてスペースデブリやメテオロイドを例に説明したが、他の例として、人工衛星等から人為的に発射された物体から宇宙機1を保護することを目的としても、上記のバンパ構造体2は有効に機能する。
【0030】
さらに、中間バンパ22が設けられる範囲や面積、位置は図1の例によっては限定されず、宇宙機本体10の全体をバンパ構造体2によって覆う構成を採ることも可能である。
【0031】
さらに、中間バンパ22の形状は、上記の各実施形態で説明した矩形に限定されない。バンパ構造体2が設けられる位置や形状に応じて、多角形状や円形状をなしていてもよい。また、重量増加が許容される限りにおいて、中間バンパ22を複数層設けることも可能である。
【0032】
また、上記の第一実施形態で説明した、弾性体52と繊維構造体51を有する中間バンパ22において、弾性体52を主壁12側に配置し、繊維構造体51を外側バンパ13側に積層する構成を採ることも可能である。この場合であっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
さらに、第二実施形態で説明したB繊維構造体151において、当該B繊維構造体151の厚さ方向の両面に溝60が形成されていてもよい。この場合、両面で溝60の延びる方向と位置が一致していることが望ましい。これにより、溝60に沿った面外変形をさらに促進することができるため、中間バンパ22による保護性能をより一層向上させることが可能となる。
【0034】
加えて、第二実施形態では、溝60の延びる方向が、矩形のB繊維構造体151の各辺に対して45°をなしている例について説明した。しかしながら、溝60の延びる方向はこれに限定されず、B繊維構造体151の各辺に直交するように延びていてもよい。この構成によっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
また、図7に変形例として示すように、第二実施形態で説明したB繊維構造体151を単層で用いるとともに、溝60を表面に設けない構成を採ることも可能である。この場合、上述したものと同様の作用効果を得られることに加えて、溝60を形成するための加工コストが不要となることから、バンパ構造体2の製造コストやメンテナンスコストを削減することが可能となる。
【0036】
<付記>
各実施形態に記載のバンパ構造体2、及び宇宙機1は、例えば以下のように把握される。
【0037】
(1)第1の態様に係るバンパ構造体2は、内側に与圧空間を形成する主壁12、及び該主壁12に対して間隔をあけて対向する外側バンパ13を有する宇宙機1に取り付けられるバンパ構造体2であって、前記主壁12と前記外側バンパ13とを接続する複数のフレーム部材21と、該フレーム部材21同士の間に取り付けられている中間バンパ22と、を備え、前記中間バンパ22は、繊維材料を含む繊維構造体51と、該繊維構造体51に積層された弾性体52と、を有する。
【0038】
上記構成によれば、外側バンパ13を貫通して飛翔体が中間バンパ22に衝突した際、繊維構造体51が引張強度によって衝撃力に抗しつつ、弾性体52が三次元的に弾性変形することで、飛翔体の運動エネルギーを吸収することができる。これにより、飛翔体の速度が低下し、中間バンパ22を貫通して主壁12に到達してしまう可能性を大きく下げることができる。さらに、中間バンパ22が膜状の繊維構造体51と弾性体52とによって形成されていることから、当該中間バンパ22を設けたことによる重量増加を抑え、宇宙機1のさらなる軽量化を図ることが可能となる。
【0039】
(2)第2の態様に係るバンパ構造体2は、(1)のバンパ構造体2であって、前記中間バンパ22では、前記弾性体52が前記外側バンパ13に対向し、前記繊維構造体51が前記主壁12に対向している。
【0040】
上記構成によれば、飛翔体が飛んでくる側である外側バンパ13に弾性体52が対向し、反対側に繊維構造体51が積層されている。飛翔体の衝突に伴って弾性体52が優先的に弾性変形することで初期の運動エネルギーを吸収し、その後、繊維構造体51が自身の引張強度に基づいて終末の運動エネルギーを吸収する。これにより、飛翔体が中間バンパ22を貫通してしまう可能性をさらに低減することができる。
【0041】
(3)第3の態様に係るバンパ構造体2は、(1)又は(2)のバンパ構造体2であって、前記B繊維構造体151は、前記繊維材料と、該繊維材料に含侵された樹脂材料と、を有し、該B繊維構造体151の厚さ方向における少なくとも一方の面には、該面に沿って延びる格子状の複数の溝60が形成されている。
【0042】
上記構成によれば、B繊維構造体151が繊維材料と樹脂材料で形成されているため、ある程度の柔軟性を有している。さらに、このB繊維構造体151の少なくとも一方の面に格子状の溝60が形成されている。これにより、B繊維構造体151が飛翔体の衝突に伴って変形する際に、溝60の延びる方向に沿って立体的かつ均一に変形することが可能となる。
【0043】
(4)第4の態様に係るバンパ構造体2は、内側に与圧空間を形成する主壁12、及び該主壁12に対して間隔をあけて対向する外側バンパ13を有する宇宙機1に取り付けられるバンパ構造体2であって、前記主壁12と前記外側バンパ13とを接続する複数のフレーム部材21と、該フレーム部材21同士の間に取り付けられている中間バンパ22と、を備え、前記中間バンパ22は、繊維材料、及び該繊維材料に含侵された樹脂材料を含むB繊維構造体151であり、該B繊維構造体151の厚さ方向における少なくとも一方の面には、該面に沿って延びる格子状の複数の溝60が形成されている。
【0044】
上記構成によれば、B繊維構造体151が繊維材料と樹脂材料で形成されているため、ある程度の柔軟性を有している。さらに、このB繊維構造体151の少なくとも一方の面に格子状の溝60が形成されている。これにより、B繊維構造体151が飛翔体の衝突に伴って変形する際に、溝60の延びる方向に沿って立体的かつ均一に変形することが可能となる。
【0045】
(5)第5の態様に係る宇宙機1は、(1)から(4)のいずれか一態様に係るバンパ構造体2と、前記主壁12、及び前記外側バンパ13を有するとともに前記バンパ構造体2が取り付けられる宇宙機本体10と、を備える。
【0046】
上記構成によれば、飛翔体の衝突に対して高いロバスト性を有する堅牢な宇宙機1を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…宇宙機 2…バンパ構造体 10…宇宙機本体 11…推進装置 12…主壁 13…外側バンパ 21…フレーム部材 22…中間バンパ 31…フレーム部材本体 32…取付部 33…固定部 34…柱状部 35…フランジ部 36…孔 40…ボルト 51…繊維構造体 52…弾性体 60…溝 151…B繊維構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7