(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115081
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ラジアルタービンインペラ
(51)【国際特許分類】
F01D 1/08 20060101AFI20240819BHJP
F01D 5/14 20060101ALI20240819BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
F01D1/08
F01D5/14
F02B39/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020553
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 隆
(72)【発明者】
【氏名】久野 直樹
【テーマコード(参考)】
3G005
3G202
【Fターム(参考)】
3G005EA16
3G005FA05
3G005GB24
3G005GB79
3G005GB81
3G202BA01
3G202BB01
(57)【要約】
【課題】スプリッタブレードの翼形状を工夫することによって翼負荷を低減すると共にタービンの断熱効率の向上を図る。
【解決手段】ラジアルタービンインペラ58の回転方向に交互に配置されたフルブレードと前記フルブレードよりも前記ラジアルタービンインペラにおける流体の流れ方向の翼長が短いスプリッタブレードとを含み、前記回転方向に隣り合う前記フルブレード間にスロートが設けられ、前記スプリッタブレードの下流縁は、前記ハブの外周面に接合する基端縁側が前記スロートよりも上流側に位置し、前記ハブの外周面から離反した先端縁側が前記基端縁側よりも下流側に位置している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円錐形状のハブと、前記ハブの外周面に回転方向に間隔をおいて設けられた複数のタービン翼とを有するラジアルタービンインペラにおいて、
前記タービン翼は、前記ラジアルタービンインペラの回転方向に交互に配置されたフルブレードと前記フルブレードよりも前記ラジアルタービンインペラにおける流体の流れ方向の翼長が短いスプリッタブレードとを含み、
前記回転方向に隣り合う前記フルブレード間にスロートが設けられ、
前記スプリッタブレードの下流縁は、前記ハブの外周面に接合する基端縁側が前記スロートよりも上流側に位置し、前記ハブの外周面から離反した先端縁側が前記基端縁側よりも下流側に位置しているラジアルタービンインペラ。
【請求項2】
前記スプリッタブレードの前記下流縁の前記先端縁側は、前記スロートよりも下流側に位置している請求項1に記載のラジアルタービンインペラ。
【請求項3】
前記スロートは、前記ハブの外周面に接合する前記フルブレードの前記基端縁側において前記回転方向に隣り合う前記フルブレード間に画定される第1スロート部と、前記ハブの外周面から離反した前記フルブレードの先端縁側において前記回転方向に隣り合う前記フルブレードと前記スプリッタブレードとの間に画定される第2スロート部とを含む請求項2に記載のラジアルタービンインペラ。
【請求項4】
前記スプリッタブレードの前記下流縁における前記基端縁から前記先端縁までのブレード全高に対する前記基端縁からのブレード高さの比率を0~1.0としたとき、前記第2スロート部は、前記比率の0.5~1.0の範囲内に画定される請求項3に記載のラジアルタービンインペラ。
【請求項5】
前記スプリッタブレードの前記先端縁の前記スロートから下流側への飛び出し寸法Lsと前記フルブレードの前記先端縁の前記スロートから下流側への延出寸法Lfとの割合Rp=Ls/Lfが、0<Rp≦0.3である請求項3又は4に記載のラジアルタービンインペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアルタービンインペラに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンに代表されるタービン機械に用いられるラジアルタービンにおいては、高温ガス等の圧縮された流体(以下、圧縮流体と言う)が、静翼(ベーン)により画定されたタービンノズルからタービンインペラに供給される。圧縮流体は、タービンノズルを通過するときに体積膨張することにより流速を増加し、タービンインペラを高速に回転させる。
【0003】
タービンインペラでより多く仕事をさせるためには、タービンインペラのタービンブレード(タービン翼)間に、より多くの圧縮流体を流す必要がある。タービンブレード間を流れる圧縮流体の流量が増えると、タービンブレードにかかる負荷が大きくなり、しかも高温の圧縮流体が流れるため、十分な強度のタービンブレードであることが要求される。
【0004】
このことに対し、タービンインペラに配置するブレード(翼)数を増やしたり、翼高を高くしたりすることによりタービンの断熱効率を高め、翼厚を厚くすることにより、必要な強度を確保することが行われている。しかしながら、厚みのあるタービンブレードの配置数が増えると、タービンの回転方向に隣接するタービンブレード間の出口面積が小さくなり、タービンの断熱効率が低下する傾向がある。また、ハブがタービンブレードを十分な強度をもって支持するためには、翼付け根(基端縁)付近のタービンブレードの厚みやフィレットの曲率(R径)が大きくする必要がある。このことにより、隣接するタービンブレードのフィレットが互いに干渉し、ブレード数を増やすことに限界が生じる。
【0005】
上記問題を解消し、上記要望を満たすタービンインペラとして、翼長が長いフルブレード(長翼)と翼長が短いスプリッタブレード(短翼)とを組み合わせたラジアルタービンインペラが提案されている(例えば、特許文献1~3)。
【0006】
このようなラジアルタービンインペラでは、圧縮流体の入口(高負荷)側においては、フルブレードとスプリッタブレードとが交互に配置され、ブレード数が増加することにより、各ブレードにかかる負荷が低減しつつ断熱効率が向上すると共に、出口(低負荷)側においては、詳細には、隣り合うフルブレードによって画定されるスロートにおいては、フルブレードのみであることにより、インペラの回転方向のブレード間の間隔が確保され、隣接するブレードのフィレットが干渉することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-117344号公報
【特許文献2】特開2017-193984号公報
【特許文献3】特開2017-193985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記ラジアルタービンでは、フルブレード間に画定されるスロートにスプリッタブレードが存在しないようにスプリッタブレードの翼長が設定されるため、スプリッタブレードを十分に長くすることができず、断熱効率を効果的に高めることが難しい。
【0009】
スプリッタブレードの翼長が長いと、スプリッタブレードがスロートに干渉し、スロート面積が十分に確保されなくなり、断熱効率を高めることが難しくなる。また、スプリッタブレードの翼長が長いと、スプリッタブレードがスロートに干渉し、スロート面積が十分に確保されなくなる。
【0010】
本発明は、以上の背景に鑑み、スプリッタブレードの翼形状を工夫することによって翼負荷を低減すると共にタービンの断熱効率の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、略円錐形状のハブ(70)と、前記ハブの外周面(70A)に回転方向に間隔をおいて設けられた複数のタービン翼とを有するラジアルタービンインペラ(58)において、前記タービン翼は、前記ラジアルタービンインペラの回転方向に交互に配置されたフルブレード(80)と前記フルブレードよりも前記ラジアルタービンインペラにおける流体の流れ方向(F)の翼長が短いスプリッタブレード(90)とを含み、前記回転方向に隣り合う前記フルブレード間にスロート(S)が設けられ、前記スプリッタブレードの下流縁(90B)は、前記ハブの外周面に接合する基端縁(90C)側が前記スロートよりも上流側に位置し、前記ハブの外周面から離反した先端縁(90D)側が前記基端縁側よりも下流側に位置している。
【0012】
この態様によれば、負荷の高い先端縁側ではスプリッタブレードの翼長が長いことにより、翼負荷が低減すると共に、基端縁側ではスプリッタブレードがスロートと干渉しないことにより、スロート面積への影響が抑えられ、ラジアルタービンの断熱効率が向上する。
【0013】
上記の態様において、好ましくは、前記スプリッタブレードの前記下流縁の前記先端縁側は、前記スロートよりも下流側に位置している。
【0014】
この態様によれば、先端縁側のスプリッタブレードの翼長が十分長くなり、翼負荷が効果的に低減すると共にラジアルタービンの断熱効率が効果的に向上する。
【0015】
上記の態様において、好ましくは、前記スロートは、前記ハブの外周面に接合する前記フルブレードの前記基端縁(80C)側において前記回転方向に隣り合う前記フルブレード間に画定される第1スロート部(S1)と、前記ハブの外周面から離反した前記フルブレードの先端縁(80D)側において前記回転方向に隣り合う前記フルブレードと前記スプリッタブレードとの間に画定される第2スロート部(S2)とを含む。
【0016】
この態様によれば、第1スロート部と第2スロート部とにより十分なスロート面積が確保され、ラジアルタービンの断熱効率が向上する。
【0017】
上記の態様において、前記スプリッタブレードの前記下流縁における前記基端縁から前記先端縁までのブレード全高に対する前記基端縁からのブレード高さの比率を0~1.0としたとき、前記第2スロート部は前記比率の0.5~1.0の範囲内に画定される。
【0018】
この態様によれば、翼厚が厚い基端縁側においてはスプリッタブレードが第1スロート部に干渉することがなく、第1スロート部のスロート面積が十分確保され、ラジアルタービンの断熱効率が向上する。
【0019】
上記の態様において、前記スプリッタブレードの前記先端縁の前記スロートから下流側への飛び出し寸法Lsと前記フルブレードの先端縁の前記スロートから下流側への延出寸法Lfとの割合Rp=Ls/Lfが、0<Rp≦0.3であってよい。
【0020】
この態様によれば、スプリッタブレードの下流縁の翼が特異的に長くなることなく翼面積が増大してラジアルタービンの断熱効率が向上する。
【発明の効果】
【0021】
以上の態様によれば、翼負荷が低減すると共にラジアルタービンの断熱効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ラジアルタービンインペラを備えた発電用ガスタービンシステムの断面図
【
図2】実施形態に係るラジアルタービンインペラを側方から見た斜視図
【
図3】実施形態に係るラジアルタービンインペラを下流側から見た斜視図
【
図4】実施形態に係るラジアルタービンインペラのスプリッタブレードの子午面断面図
【
図5】実施形態に係るラジアルタービンインペラの基端縁側の翼配列を示す説明図
【
図6】実施形態に係るラジアルタービンインペラの先端縁側の翼配列を示す説明図
【
図7】実施形態に係るラジアルタービンインペラの要部を径方向外方から見た斜視図
【
図8】実施形態に係るラジアルタービンインペラの要部を側方から見た斜視図
【
図9】ラジアルタービンの断熱効率―膨張率特性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係るラジアルタービンインペラを含む実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るラジアルタービンインペラ58を備えた発電用ガスタービンシステム10の断面図である。
図1に示されているように、発電用ガスタービンシステム10は、回転軸12によって互いに同軸上に連結されたラジアルコンプレッサ14及びラジアルタービン16と、回転軸12に連結された発電機20とを有する。
【0025】
発電用ガスタービンシステム10は、軸線方向に順に互いに連結された前部端板22と前部ハウジング24と中間ハウジング26と後部ハウジング28とを有する。
【0026】
ラジアルコンプレッサ14は、前部ハウジング24に取り付けられてコンプレッサ室30を画定するコンプレッサハウジング32及びディフューザ34を固定するディフューザ固定部材36と、前部端板22に取り付けられた空気取入案内部材38とを有する。空気取入案内部材38はコンプレッサハウジング32と協働して空気取入口40を画定している。コンプレッサ室30には回転軸12に取り付けられたコンプレッサロータ42が回転可能に配置されている。コンプレッサロータ42はラジアルタービン16の出力軸である回転軸12により回転駆動される。ディフューザ固定部材36にはディフューザ34が取り付けられている。
【0027】
ラジアルコンプレッサ14は、空気取入口40から空気(外気)を取り入れ、コンプレッサロータ42の回転により空気を圧縮加圧し、圧縮加圧された空気(圧縮空気)をディフューザ34に噴出する。
【0028】
後部ハウジング28内には回転軸12の中心軸線周りに燃焼器18が設けられている。後部ハウジング28はディフューザ34から各燃焼器18に圧縮空気を導く圧縮空気通路44を画定する部分を含んでいる。各燃焼器18は燃焼室46を画定している。各燃焼器18には燃料噴射ノズル48が取り付けられている。燃料噴射ノズル48は燃焼室46に燃料を噴射する。
【0029】
各燃焼室46では、燃料噴射ノズル48により燃焼室46に噴射された燃料とラジアルコンプレッサ14からの圧縮空気との混合気が燃焼し、高圧の燃焼ガス(圧縮流体)が発生する。燃焼器18のガス出口部にはタービンノズル50が設けられている。
【0030】
ラジアルタービン16は、後部ハウジング28の内側部分によって画定され、燃焼器18のガス出口部に連通するタービン室52を有する。タービン室52は隔壁部材54によってコンプレッサ室30と隔てられている。タービン室52の隔壁部材54と離反する側はシュラウド56によって画定されている。タービン室52には回転軸12を一体的に有するラジアルタービンインペラ58が回転可能に配置されている。
【0031】
タービンノズル50は、ラジアルタービンインペラ58を外囲するように円環状をなし、燃焼ガスをラジアルタービンインペラ58に向けて径方向内側且つ周方向に噴射する。ラジアルタービンインペラ58は、タービンノズル50から噴射された燃焼ガスによって回転駆動される。ラジアルタービンインペラ58を回転駆動した燃焼ガスは排気ガスとして排気ガス通路60から大気中に排出される。
【0032】
回転軸12には発電機20のロータ軸62が連結されている。これにより、発電機20は、ラジアルタービン16の回転軸12によって回転駆動され、発電を行う。
【0033】
次に、ラジアルタービンインペラ58の詳細を、
図2~
図8を参照して説明する。
【0034】
ラジアルタービンインペラ58(以下の説明では、インペラ58と略称することがある)は、
図2~
図4に示されているように、略円錐形状のハブ70と、ハブ70の外周面70Aにインペラ58の回転方向に間隔をおいて設けられた複数のフルブレード80及びスプリッタブレード90とを有する。以下の説明では、フルブレード80及びスプリッタブレード90を総称してタービン翼と呼ぶことがある。
【0035】
各フルブレード80と各スプリッタブレード90とはインペラ58の回転方向に交互に配置されている。
【0036】
インペラ58の回転方向は
図2で見て反時計廻り方向の一方向である。以下の説明は、このインペラ58の回転方向を単に回転方向と言うことがある。
【0037】
各フルブレード80は、ハブ70の外周面70Aの母線方向の略全長に亘って延在、つまり、インペラ58の流体入口端58Aから流体出口端58Bに至るように延在している。
【0038】
インペラ58の流体入口端58Aはタービンノズル50に対応する位置にある(
図1参照)。インペラ58の流体出口端58Bは排気ガス通路60に対応する位置にある(
図1参照)。
【0039】
各フルブレード80は、流体入口端58Aに位置する上流縁(前縁)80Aと、流体出口端58Bに位置する下流縁(後縁)80Bと、ハブ70の外周面70Aに接合し、外周面70Aに沿って上流縁80Aと下流縁80Bとの間に延在する基端縁(ルート縁)80Cと、ハブ70の外周面70Aから離反し、シュラウド56(
図1参照)の内周面に沿って上流縁80Aと下流縁80Bとの間に延在する先端縁(チップ縁)80Dとを有する。
【0040】
各スプリッタブレード90は、ブレード翼の流体入口端58Aに位置する上流縁(前縁)90Aと、ブレード翼の流体出口端58Bに位置する下流縁(後縁)90Bと、ハブ70の外周面70Aに接合し、外周面70Aに沿って上流縁90Aと下流縁90Bとの間に延在する基端縁(ルート縁)90Cと、ハブ70の外周面70Aから離反し、シュラウド56(
図1参照)の内周面に沿って上流縁90Aと下流縁90Bとの間に延在する先端縁(チップ縁)90Dとを有する。
【0041】
各フルブレード80の基端縁80C及び各スプリッタブレード90の基端縁90Cは
図5に示されているように、
図6に示されている先端縁80D及び90Dよりも翼厚が厚い。
【0042】
インペラ58の回転方向に隣り合うフルブレード80の下流側には、
図3に示されているように、フルブレード80間の最狭部であるスロートSが形成されている。スロートSは、隣り合うタービン翼間を流れる圧縮流体の流れ方向F(
図4参照)に交差する面状をなす。
【0043】
スプリッタブレード90の下流縁(後縁)90Bは、
図3及び
図4に示されているように、スロートSに対して傾斜しており、基端縁90C側がスロートSよりも上流側に位置し、先端縁90D側が基端縁90C側よりも下流側へ、好ましくはスロートSよりも下流側に位置している。これにより、スプリッタブレード90の先端縁90DはスロートSを横切って延在している。スプリッタブレード90の下流縁90Bと基端縁90Cとの交点90EはスロートSよりも上流側に位置し、スプリッタブレード90の下流縁90Bと先端縁90Dとの交点90FはスロートSより下流側に位置している。
【0044】
スロートSは、フルブレード80の基端縁80C側において回転方向に隣り合うフルブレード80間に画定される1つの第1スロート部S1と、フルブレード80の先端縁80D側において回転方向に隣り合うフルブレード80とスプリッタブレード90との間、換言すると、スプリッタブレード90の両側方に画定される2つの第2スロート部S2とを含む。
【0045】
これにより、負荷の高い先端縁90D側ではスプリッタブレード90の翼長が長く、翼負荷が低減すると共に、基端縁90C側ではスプリッタブレード90がスロートSと干渉せず、スロート面積への影響が抑えられ、第1スロート部S1と第2スロート部S2とにより十分なスロート面積が確保され、ラジアルタービン16の断熱効率が向上する。
【0046】
スプリッタブレード90の下流縁90Bにおける基端縁90Cから先端縁90Dまでのブレード全高H(
図4参照)に対する基端縁90Cからのブレード高さの比率Rsを0~1.0としたとき、第2スロート部S2は、上述の効果を得るうえで、比率Rs=0.5~1.0の範囲内に画定されていることが好ましい。換言すると、スプリッタブレード90の下流縁90BがスロートSに交差する点90G(
図4参照)は、上述の効果を得るうえで、基端縁90Cを基点としてブレード高さの0.5以上且つ1.0未満の範囲に設定されることが好ましい。
【0047】
図7に示されているように、スプリッタブレード90の先端縁90Dの翼間最小寸法(スロートSにおけるスプリッタブレード90の先端縁90Dの翼間寸法)をWs、スプリッタブレード90の先端縁90DのスロートSから下流側への飛び出し寸法をLs、
図8に示されているように、スプリッタブレード90とラジアルタービン16の回転軸線Xとが1つの投影面でなす角度βの流体出口部における角度をβoとしたとき、スプリッタブレード90がスロートSから飛び出す割合は下式(1)により示される。
【0048】
Rp=Ls/(Ws・tanβo) ...(1)
Rpは、0<Rp≦0.3であることが好ましい。
【0049】
割合Rp=0ではスプリッタブレード90の先端縁90DのスロートSから飛び出し飛び出さないので、上述の効果を奏することができない。割合Rpが0.3(30%)を超えると、翼面積が増大して断熱効率はよくなると考えられるが、スプリッタブレード90の下流縁90Bの翼が特異的に長くなり、翼の製造が難しくと共に高い耐久性を得ることが難しくなる。スプリッタブレード90の基端縁90C側も流体出口端58B側に延ばされると、フルブレード80とスプリッタブレード90との配列が密なり、隣接するフルブレード80及びスプリッタブレード90のフィレットが干渉すると共に、スロート面積が狭小化して必要な流量を確保できない問題が生じる。
【0050】
図9は、本実施形態のラジアルタービン16及び従来例のラジアルタービンの断熱効率―膨張率特性を示している。
図9の特性線Eは本実施形態の断熱効率特性を、特性線Pは従来例断熱効率特性を各々示している。
【0051】
特性線Eと特性線Pとの比較により、本実施形態のラジアルタービン16では、従来例に比して広い膨張率域に亘って断熱効率が向上していることが分かる。
【0052】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、ハブ70の形状、フルブレード80及びスプリッタブレード90の個数は、適宜変更可能である。本実施形態のラジアルタービンインペラ58は、発電用ガスタービンシステム10のラジアルタービン16のインペラに限られることはなく、各種のラジアルタービンのインペラに適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 発電用ガスタービンシステム
16 :ラジアルタービン
58 :ラジアルタービンインペラ(インペラ)
70 :ハブ
70A :外周面
80 :フルブレード
80A :上流縁
80B :下流縁
80C :基端縁
80D :先端縁
90 :スプリッタブレード
90A :上流縁
90B :下流縁
90C :基端縁
F :流れ方向
S :スロート
S1 :第1スロート部
S2 :第2スロート部