(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115084
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】台車の牽引車
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
B61B13/00 S
B61B13/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020559
(22)【出願日】2023-02-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】514154813
【氏名又は名称】フィブイントラロジスティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽介
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BB43
(57)【要約】
【課題】台車が様々な形態でも容易に安全に牽引でき、台車の拘束及び台車の解放を容易に行える牽引車を提供する。
【解決手段】牽引車の後部に配置した牽引装置は台車の各側部に沿える二つの側部バー及びそれらに連続する台車の後部の各角部に沿える二つの後部バーを含む台車包囲バーを備え、牽引装置には幅方向に二本の回転可能な案内棒が設けられ、二つの側部バーの牽引車側の端部の各々が二本の異なる案内棒にそれぞれ取り付けられ、二つの側部バーの各々が、案内棒に沿って幅方向に互いに離れたり近づいたりでき、台車を牽引しないとき、二つの側部バーの各々が台車の両側部から離れるように移動して台車を解放でき、台車を牽引するとき、二つの側部バーの各々が台車の両側部に近づくように移動して台車を包囲でき、台車の包囲状態の牽引車の進行により台車を後部から押して台車を牽引する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車であって、牽引装置は、台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを含む台車包囲バーを備え、牽引装置にはその幅方向を長手方向として二本の回転可能な案内棒が設けられ、二つの側部バーの牽引車側の端部の各々が二本の案内棒の異なる案内棒にそれぞれ取り付けられ、二つの側部バーの各々が、取り付けられた案内棒に沿って幅方向に互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能であり、台車を牽引しないときには、二つの側部バーの各々が、牽引車の後方に配置した台車の両側部からそれぞれ離れるように移動することにより台車を解放することができ、台車を牽引するときには、二つの側部バーの各々が、牽引車の後方に配置した台車の両側部にそれぞれ近づくように又は接触するように移動することにより台車の側部と後部角部に沿って台車を包囲することができ、台車の包囲状態での牽引車の進行により台車包囲バーの後部バーが台車を後部から進行方向に押すことで台車を進行方向に牽引することができることを特徴とする牽引車。
【請求項2】
二つの案内棒のそれぞれの周囲に送りネジが切られ、送りネジの周囲に螺合したナットが設けられ、ナットに側部バーの牽引車側の端部が取り付けられており、二つの案内棒の回転により二つの側部バーの各々が幅方向に互いに離れたり近づいたりすることができるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の牽引車。
【請求項3】
二つの案内棒が互いに幅方向に平行に配置され、二つの案内棒の同じ側の端部には同一径の歯車がそれぞれ設けられ、それらの同一径の歯車が互いに係合されており、それらの歯車の回転により二つの側部バーの各々が同じ距離割合で互いに離れたり近づいたりすることができるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の牽引車。
【請求項4】
案内棒の端部に設けられた歯車をモータ駆動により動かすことができるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の牽引車。
【請求項5】
牽引装置に牽引する可能性のある台車の幅を予め記憶させることができ、牽引する台車が記憶させた台車に該当する場合には、記憶させた台車の幅に合わせて台車包囲時のモータの回転数を制御するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の牽引車。
【請求項6】
台車包囲バーが、牽引装置から着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の牽引車。
【請求項7】
牽引装置が、牽引車から着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の牽引車。
【請求項8】
台車が、平台車、六輪台車、又はカゴ台車であることを特徴とする請求項1に記載の牽引車。
【請求項9】
牽引車が、無人搬送車であることを特徴とする請求項1~8のいずれかにに記載の牽引車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業施設や物流施設などで用いられる台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設や物流施設などでは、商品や荷物の搬送のために様々な台車が用いられている。これらの台車は、人手によって押されて搬送されることが多いが、近年、人手不足の解消のため、無人の自動搬送車(AGV)などの牽引車を利用して、これらの台車を牽引し、目的の場所に搬送することが試みられている。
【0003】
このような牽引手段や牽引方法については、近年、多数提案されている(特許文献1~9参照)。しかしながら、これらの従来提案されている牽引対象の台車と自動搬送車などの牽引車との連結手段は、ピン連結やクランプ連結等の特別な連結方法を使用しており、牽引対象の台車の形態によっては連結部の形状を変更しなければならず、様々な形態の台車を牽引対象とすることが困難であり、汎用性が低かった。特に、牽引対象の台車が平台車のような形態の場合、引っ掛ける部分やクランプする部分が実質的に存在しないため、簡単で安全な連結を作ることが困難であった。
【0004】
また、従来提案されている台車の牽引手段は、台車と牽引車の連結を前提としたものであるため、台車を牽引車から解放するときには、特別な連結状態を解除する必要があり、その作業は極めて煩雑で時間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-70420号公報
【特許文献2】特開2019-131046号公報
【特許文献3】特開2017-100575号公報
【特許文献4】特開2016-150692号公報
【特許文献5】特開2016-150691号公報
【特許文献6】特開2015-131591号公報
【特許文献7】特開2014-210528号公報
【特許文献8】特開2011-102076号公報
【特許文献9】特開2009-113650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、牽引対象の台車が様々な形態をとっても容易に牽引車の後部で台車を安全に牽引することができ、かつ台車の牽引時の拘束及び台車の牽引からの解放を容易に行うことができる牽引車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車において、この牽引装置から後方に延びる台車包囲バーで台車の少なくとも側部と後部の各角部とを特定の手段で解除可能に包囲することによって、牽引車と台車を直接連結せずに、しかも台車が様々な形態をとっても容易にかつ安全に台車を牽引でき、かつ台車の牽引時の拘束及び台車の牽引からの解放も容易に行なうことができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、以下の(1)~(9)の構成を有するものである。
(1)台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車であって、牽引装置は、台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを含む台車包囲バーを備え、牽引装置にはその幅方向を長手方向として二本の回転可能な案内棒が設けられ、二つの側部バーの牽引車側の端部の各々が二本の案内棒の異なる案内棒にそれぞれ取り付けられ、二つの側部バーの各々が、取り付けられた案内棒に沿って幅方向に互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能であり、台車を牽引しないときには、二つの側部バーの各々が、牽引車の後方に配置した台車の両側部からそれぞれ離れるように移動することにより台車を解放することができ、台車を牽引するときには、二つの側部バーの各々が、牽引車の後方に配置した台車の両側部にそれぞれ近づくように又は接触するように移動することにより台車の側部と後部角部に沿って台車を包囲することができ、台車の包囲状態での牽引車の進行により台車包囲バーの後部バーが台車を後部から進行方向に押すことで台車を進行方向に牽引することができることを特徴とする牽引車。
(2)二つの案内棒のそれぞれの周囲に送りネジが切られ、送りネジの周囲に螺合したナットが設けられ、ナットに側部バーの牽引車側の端部が取り付けられており、二つの案内棒の回転により二つの側部バーの各々が幅方向に互いに離れたり近づいたりすることができるように構成されていることを特徴とする(1)に記載の牽引車。
(3)二つの案内棒が互いに幅方向に平行に配置され、二つの案内棒の同じ側の端部には同一径の歯車がそれぞれ設けられ、それらの同一径の歯車が互いに係合されており、それらの歯車の回転により二つの側部バーの各々が同じ距離割合で互いに離れたり近づいたりすることができるように構成されていることを特徴とする(2)に記載の牽引車。
(4)案内棒の端部に設けられた歯車をモータ駆動により動かすことができるように構成されていることを特徴とする(3)に記載の牽引車。
(5)牽引装置に牽引する可能性のある台車の幅を予め記憶させることができ、牽引する台車が記憶させた台車に該当する場合には、記憶させた台車の幅に合わせて台車包囲時のモータの回転数を制御するように構成されていることを特徴とする(4)に記載の牽引車。
(6)台車包囲バーが、牽引装置から着脱自在に構成されていることを特徴とする(1)に記載の牽引車。
(7)牽引装置が、牽引車から着脱自在に構成されていることを特徴とする(1)に記載の牽引車。
(8)台車が、平台車、六輪台車、又はカゴ台車であることを特徴とする(1)に記載の牽引車。
(9)牽引車が、無人搬送車であることを特徴とする(1)~(8)のいずれかにに記載の牽引車。
【発明の効果】
【0009】
本発明の牽引車は、その後部に台車を牽引するための牽引装置を配置し、牽引装置が、その後方に配置した台車を台車包囲バーによって解放可能に包囲して牽引するようになっているため、牽引車と台車を直接連結するための連結部を設ける必要がなく、従って、従来のように連結部の形状を台車の形態に合わせて変更する必要がなく、様々な形態の台車であっても簡単にかつ安全に牽引することができる。また、台車包囲バーの二つの側部バーを互いに離したり、近づけたりすることにより台車の解放・拘束を行なうようにしているので、台車の牽引時の拘束及び台車の牽引からの解放が極めて簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の牽引車の一例の(a)概略平面図、(b)概略側面図、及び(c)概略斜視図を示す。
【
図2】台車を台車包囲バーで包囲した状態の
図1の牽引車の(a)概略平面図、(b)概略側面図、及び(c)概略斜視図を示す。
【
図3】台車を台車包囲バーから解放した状態の
図1の牽引車の(a)概略平面図、(b)概略側面図、及び(c)概略斜視図を示す。
【
図4】(a)台車を台車包囲バーから解放した状態、及び(b)台車を台車包囲バーで包囲した状態の
図1の牽引車の一部を後方から概略的に示す。
【
図5】本発明の牽引車の牽引装置の機構部分を明瞭にした説明図を示す。
【
図6】本発明の牽引装置の機構部分の(a)概略平面図、(b)概略側面図、及び(c)概略背面図、(d)(b)のA-A概略断面図を示す。
【
図7】本発明の牽引装置の機構部分の概略斜視図を示す。
【
図8】本発明の牽引装置の台車包囲バーの脱着機構の一例の説明図であり、(a)台車包囲バーの装着状態の概略図、(b)台車包囲バーの脱着状態の一部拡大図、(c)台車包囲バーの脱着機構の一部拡大図である。
【
図9】本発明の牽引車が牽引する平台車の例の概略図を三つ示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の牽引車及びその後部に配置される牽引装置の典型的な実施形態を図面に基づいて以下説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0012】
本発明の牽引車は、一般に物品の仕分けや配送を取り扱う業界において、牽引車の後部に牽引装置を配置し、牽引装置によって台車を牽引して使用されるものである。牽引車の本体は、台車を自力で牽引できれば特に限定されないが、例えば無人搬送車(AGV)が好ましく使用される。台車は、物品を積むことができ、底部に走行車輪を有すれば特に限定されないが、物品を載せる底部が全体として矩形の平面形状を有するものが好ましく、例えば平台車、六輪台車、又はカゴ台車が好ましく使用される。平台車としては、例えば
図9に記載のものが使用される。
【0013】
図1は、本発明の牽引車の一例の(a)概略平面図、(b)概略側面図、(c)概略斜視図であり、
図2,3は、それぞれ台車を台車包囲バーで包囲した状態、台車を台車包囲バーから解放した状態の
図1の牽引車の(a)概略平面図、(b)概略側面図、(c)概略斜視図である。
図4は、(a)台車を台車包囲バーから解放した状態、及び(b)台車を台車包囲バーで包囲した状態の
図1の牽引車の一部を後方から見た概略図である。
【0014】
図中、1は、本発明の牽引車であり、例えば無人搬送車(AGV)のような牽引車であることができる。2は、台車であり、台車を載せる底部が全体として矩形を有することが好ましい。3は、台車2を牽引するための牽引装置であり、牽引車1の後部に配置される。牽引装置3は、その後部から後方に向いて延びる台車包囲バー4を有する。台車包囲バー4は、基本的に台車2をその各側部と後部の角部で包囲するためのものであり、その機能を発揮するため、台車包囲バー4は、台車2の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー5と、それらの側部バー5に連続して形成されかつ台車2の後部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの後部バー6を備える。
【0015】
本発明の牽引装置3では、台車2を牽引するときには、まず
図3,
図4(a)に示すように牽引装置3の後方から台車2を入れて台車2を台車包囲バー4が緩く包囲するように配置し、次いで、
図4(b)に示すように台車2の両側部に台車包囲バー4の二つの側部バー5をそれぞれ近づけるか又は接触するように移動させて台車2を包囲することによって台車2を牽引車1に拘束することができる。そして、この台車2の包囲状態で牽引車1を進行させることにより、台車包囲バー4の後部バー6が台車2を後部から進行方向に押すことで台車2を進行方向に牽引することができる。台車2を牽引しないときには、
図4(b)から
図4(a)の状態になるように、二つの側部バー5の各々を牽引車1の後方に配置した台車2の両側部からそれぞれ離れるように移動させることによって台車2を牽引車1から解放することができる。本発明の牽引車は、牽引車と台車を直接連結しないため、台車が様々の形態をとっても台車を容易に牽引することができ、台車自体に牽引車に合わせた連結手段を設ける必要がない。また、本発明の牽引車は、台車の包囲及び台車の拘束を二つの側部バーの幅方向の移動によって完了することができるので、その作業が極めて簡単で確実である。
【0016】
台車包囲バー4の二つの側部バー5は、台車2の各側部の全体にそれぞれ沿うことができるのに十分な長さを進行方向に延ばしたものであることが好ましい。また、二つの側部バー5の進行方向側には、台車2の前部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの前部バーをさらに設けることが好ましい。これらにより台車2のしっかりとした拘束が可能になり、牽引時の安定が確保される。二つの側部バー5は、各々の後方の床面側にそれぞれ車輪が存在することが好ましい。また、二つの後部バー6の各々は、各図に示すように互いに離れているが、台車2を後方から押して支持することができるのに十分な長さで内側に延びていることが好ましい。
【0017】
次に、本発明の牽引車の牽引装置の台車包囲バーの作動機構について
図5~8を参照して説明する。
図5は、本発明の牽引装置の機構部分を一部透明にして明瞭化した概略図である。
図6は、本発明の牽引装置の機構部分の(a)概略平面図、(b)概略側面図、及び(c)概略背面図、(d)(b)のA-A概略断面図である。
図7は、本発明の牽引装置の機構部分の概略斜視図である。
【0018】
図中、1~6は、前述の説明と同じものであり、7は、牽引装置3の幅方向(牽引装置3の進行方向と直角方向)を長手方向とした回転可能な案内棒であり、互いに離れて二本設けられる。これらの二本の案内棒7には、二つの側部バー5の牽引車1側の端部がそれぞれ二本の案内棒7の異なる案内棒7に取り付けられ、二つの側部バー5が各案内棒7に沿って
図4の(a),(b)に示すように幅方向に互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能である。案内棒7の周囲には台形ネジ、ボールネジ、又は三角ネジなどの送りネジ8が切られている。9は、案内棒7の表面に形成された送りネジ8の周囲に螺合したナットであり、このナット9に側部バー5の牽引車1側の端部が取り付けられている。従って、案内棒7が回転すると、案内棒7の送りネジ8に螺合したナット9が案内棒7に沿って直線的に移動し、結果としてナット9に端部を取り付けた側部バー5が幅方向に移動することができる。
【0019】
10は、二つの案内棒7の一方の案内棒7の端部に設けられた歯車であり、11は、二つの案内棒7の他方の案内棒7の端部に設けられた歯車であり、歯車10と歯車11は、同一径を有し、二つの案内棒7の同じ端部側で互いに係合されている。従って、歯車10がある方向にある回転割合で回転すると、歯車10に係合された歯車11は、その逆方向に同じ回転割合で回転するようになっている。歯車10と歯車11の回転は、そのままそれらの歯車を端部に持つ各案内棒7の回転に反映される。各案内棒7は、歯車10と歯車11の回転と同様に互いに反対方向に同じ回転割合で回転するため、それらの案内棒7の回転方向の選択により、各案内棒7の送りネジ8の周囲に螺合された各ナット9は、案内棒7に沿って幅方向に同じ距離割合で互いに離れたり近づいたりすることができる。各ナット9に端部を取り付けられた二つの側部バー5も同様に幅方向に同じ距離割合で互いに離れたり近づいたりすることができる。本発明の各側部バー5の移動は、案内棒7の送りネジ8の回転運動がナット9を介して側部バー5の直線運動に変換される機構と、二つの案内棒7の同じ端部に形成された同一径の歯車の係合機構を利用しており、これらの機構により二つの側部バー5の完全に同期された幅方向の拡縮運動を達成することができる。
【0020】
歯車10及び歯車11の回転は、両歯車のいずれかにモータ13を連結してモータ13を駆動させることによって達成することができるが、
図6,
図7に示すように、両歯車のいずれかに係合する別の歯車12を設け、この歯車12の回転をモータ13で駆動させることによっても達成することができる。別の歯車12を設ける場合は、歯車10及び歯車11より径を大きくすることが好ましい。これにより、モータ13の回転運動を強い力で減速して案内棒7に伝えることができる。モータ13の種類は、特に限定されないが、正確な回転位置/回転速度/回転力で必要な出力を制御できるサーボモータを採用することが好ましい。モータの回転制御では、例えば牽引が想定される台車の幅などの情報を予め記憶させておき、牽引する台車が記憶させた台車に該当する場合には、その記憶情報を台車の幅に合わせて台車包囲バー中に置かれた原点位置(例えば
図4(a)の位置)の台車を各側部バーで十分に(例えば
図4(b)の位置で)包囲するために必要な出力(モータの回転数など)をモータに送ることができる。また、台車の情報が記憶されていない場合は、原点位置の台車から各側部バーで十分に包囲することができる出力(モータの回転数など)を確認し、それらの出力を台車ごとに新たに記憶することができる。これらにより、牽引装置による台車の包囲・拘束を安全かつ簡単なものとすることができる。
【0021】
本発明の牽引車1は、台車包囲バー4を牽引装置3から着脱自在に構成することができる。本発明の牽引車1は、牽引装置3に台車包囲バー4が装着された状態では、
図8(a)の形態をとっているが、台車包囲バー4を着脱したい場合には、
図8(b)に示すように、台車包囲バー4の牽引車1側の端部で各側部バー5を分割できるような構造を採用して行なうことができる。具体的には、分離した台車包囲バー4の部材の合体装着は、一方の分割した部材(
図8(b)の右側の部材)の位置決めピン14を他方の分割した部材(
図8(b)の左側の部材)の
図8(c)に示すような位置決めスライド溝15に入れて滑らせ、雄側のクランプ16と雌側のクランプ17の係合が可能な位置で締付けることによって行なうことができる。逆に台車包囲バー4の分割は、雄側のクランプ16と雌側のクランプ17の締め付けを緩め、位置決めスライド溝15に従って両部材を分離することによって行なうことができる。この方法によれば、牽引車の後方に延びる台車包囲バーの長さを短縮して牽引車全体の占める床面積を減らすことができるだけでなく、台車包囲バーの他方の部材の長さを変更して異なる側部長さの台車の包囲に対応することができる。さらに、本発明の牽引車は、牽引装置の部分を従来公知の方法で着脱自在に構成することができる。
【0022】
以上、本発明の牽引車及び牽引装置について典型的な実施形態を説明したが、本発明の特許請求の範囲の要件を逸脱しない限り、細部の技術の変更や修正、従来技術の追加を適宜行なうことができる。従って、本発明の台車包囲バーの二つの側部バーと二つの後部バーの基本構造、及び二つの側部バーが二つの案内棒に沿って移動する基本機構以外については、台車を容易に包囲又は解放し、台車を安全かつ簡単に牽引するという本発明の目的を満たす限り、当業者が従来採用している機能や手段を適宜採用することができる。例えば、上記の実施形態では、二本の案内棒に沿って各側部バーが移動する例として説明したが、案内棒以外にそれと平行な支持棒を設け、各側部バーがこの支持棒にも連結されて支持棒に沿って移動できるようにし、各側部バーの取付剛性を高めるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の牽引車によれば、牽引車と台車を直接連結しないため、連結部の形状を台車の形態に合わせて変更する必要がなく、あらゆる形態の台車を簡単に安全に牽引することができる。また、台車の解放・拘束が台車包囲バーの二つの側部バー間の距離の増減で行なわれるため、台車の牽引及び解放の作業が極めて簡単である。従って、本発明の牽引車は、多量の物品の仕分けや配送を扱う業界において極めて有用である。
【符号の説明】
【0024】
1 牽引車
2 台車
3 牽引装置
4 台車包囲バー
5 側部バー
6 後部バー
7 案内棒
8 送りネジ
9 ナット
10 歯車
11 歯車
12 歯車
13 モータ
14 位置決めピン
15 スライド溝
16 雄側クランプ
17 雌側クランプ