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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115093
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】クローラ式高所作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/06 20060101AFI20240819BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B66F9/06 K
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020571
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】武藤 修
(72)【発明者】
【氏名】桑原 嘉男
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 貴
(72)【発明者】
【氏名】山口 直人
(72)【発明者】
【氏名】加賀田 美里
(72)【発明者】
【氏名】山田 和也
(72)【発明者】
【氏名】丸山 優樹
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333AB02
3F333CA02
3F333CA08
3F333CA13
3F333DA02
(57)【要約】
【課題】車両重量の増加を抑制しつつ車両の安定度を向上させることのできるクローラ式高所作業車を提供する。
【解決手段】高所作業車1は、カウンタウェイト34が走行体10の前端側を向いた所定の旋回姿勢において、ブーム50が走行体10の後端側に倒伏された状態で格納されるように構成されており、上記所定の旋回姿勢でブーム50が格納状態にあるとき、クローラ走行装置20の前端部が旋回体30よりも前後方向内側に配置され、クローラ走行装置20の後端部が旋回体30よりも前後方向外側に配置されており、側面視において旋回中心軸Oからクローラ走行装置20の後端部までの距離が旋回中心軸Oからクローラ走行装置20の前端部までの距離よりも長距離に設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びるクローラ走行装置が左右に設けられた走行体と、
前記走行体に上下軸回りに旋回自在に設けられた旋回体フレームおよび当該旋回体フレームの端部に設けられたカウンタウェイトを有する旋回体と、
前記旋回体フレームに揺動自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に設けられた作業台とを備え、
前記カウンタウェイトが前記走行体の前端側を向いた所定の旋回姿勢において、前記ブームが前記走行体の後端側に倒伏された状態で格納されるように構成されたクローラ式高所作業車において、
前記所定の旋回姿勢で前記ブームが格納状態にあるとき、前記クローラ走行装置の前端部が前記旋回体よりも前後方向内側に配置されるとともに、前記クローラ走行装置の後端部が前記旋回体よりも前後方向外側に配置されており、
前記走行体は、側面視において、前記旋回体の旋回中心軸から前記クローラ走行装置の後端部までの距離が、前記旋回体の旋回中心軸から前記クローラ走行装置の前端部までの距離よりも長距離に設定されていることを特徴とするクローラ式高所作業車。
【請求項2】
前記クローラ走行装置は、クローラフレームと、前記クローラフレームの後端側に設けられた駆動輪と、前記クローラフレームの前端側に設けられた従動輪と、前記クローラフレームの後端側に設けられて前記駆動輪を回転駆動する駆動装置と、前記駆動輪および前記従動輪の間に掛け渡される履帯とを有し、
前記クローラ走行装置は、側面視において、前記旋回体の旋回中心軸から前記駆動輪の回転中心軸までの距離が、前記旋回体の旋回中心軸から前記従動輪の回転中心軸までの距離よりも長距離に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のクローラ式高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の左右に一対のクローラ走行装置を有したクローラ式高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラ式高所作業車の一例として、左右一対のクローラ走行装置を有して走行可能な走行体と、走行体上に水平旋回自在に設けられた旋回体と、旋回体に起伏および伸縮自在に設けられたブームと、ブームの先端部に設けられた作業者搭乗用の作業台とを備えた自走式高所作業車が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このようなクローラ式高所作業車においては、ブームを起伏、伸縮させたときに、ブームの先端部(作業台)にかかる荷重とのバランスをとるために、旋回体の外周端部に錘としてのカウンタウェイトが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-201099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、安全性確保に万全を期すために、車両の安定度(特にブームの全伸長状態での安定度)を向上させることが求められているが、旋回体に搭載されるカウンタウェイトを増量すると、車両重量が大きく増加するとともに、この重量化に伴い車両の走行性能が低下するという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、車両重量の増加を抑制しつつ車両の安定度を向上させることのできるクローラ式高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るクローラ式高所作業車は、前後方向に延びるクローラ走行装置が左右に設けられた走行体と、前記走行体に上下軸回りに旋回自在に設けられた旋回体フレームおよび当該旋回体フレームの端部に設けられたカウンタウェイトを有する旋回体と、前記旋回体フレームに揺動自在に設けられたブームと、前記ブームの先端部に設けられた作業台とを備え、前記カウンタウェイトが前記走行体の前端側を向いた所定の旋回姿勢において、前記ブームが前記走行体の後端側に倒伏された状態で格納されるように構成されたクローラ式高所作業車において、前記所定の旋回姿勢で前記ブームが格納状態にあるとき、前記クローラ走行装置の前端部が前記旋回体よりも前後方向内側に配置されるとともに、前記クローラ走行装置の後端部が前記旋回体よりも前後方向外側に配置されており、前記走行体は、側面視において、前記旋回体の旋回中心軸から前記クローラ走行装置の後端部までの距離が、前記旋回体の旋回中心軸から前記クローラ走行装置の前端部までの距離よりも長距離に設定されていることを特徴とする。
【0007】
また、上記構成のクローラ式高所作業車において、前記クローラ走行装置は、クローラフレームと、前記クローラフレームの後端側に設けられた駆動輪と、前記クローラフレームの前端側に設けられた従動輪と、前記クローラフレームの後端側に設けられて前記駆動輪を回転駆動する駆動装置と、前記駆動輪および前記従動輪の間に掛け渡される履帯とを有し、前記クローラ走行装置は、側面視において、前記旋回体の旋回中心軸から前記駆動
輪の回転中心軸までの距離が、前記旋回体の旋回中心軸から前記従動輪の回転中心軸までの距離よりも長距離に設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るクローラ式高所作業車によれば、旋回中心軸からクローラ走行装置の後端部までの距離を、旋回中心軸からクローラ走行装置の前端部までの距離よりも長距離に設定して、クローラ走行装置の後端部側の長さを従来技術よりも延長することで、クローラ走行装置の前後方向の接地面の長さが増加するうえに、所定の旋回姿勢(旋回角度が0度の姿勢)において転倒支点を車両重心から離れる方向且つブームの先端部(作業台)に近付く方向にシフトさせることができるため、車両重量および車両全長を抑制しながらも、車両の安定度を向上させることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るクローラ式高所作業車では、クローラフレームの後端側に駆動輪が設けられ、クローラフレームの前端側に従動輪が設けられることで、旋回体を所定の旋回姿勢(旋回角度が0度の姿勢)から180度旋回させた旋回姿勢(旋回角度が180度の姿勢)において、旋回体のカウンタウェイト側に駆動輪および走行駆動装置が配置され、然も駆動輪および走行駆動装置が従来技術よりもカウンタウェイト側に近付くことになるため、この重量物の走行駆動装置がカウンタウェイトと同様に錘の役割を担い、安定モーメントの向上に寄与することになることで、車両の安定度を一層向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の高所作業車(クローラ式高所作業車)を示す側面図である。
図2】上記高所作業車の平面図である。
図3】上記高所作業車の背面図である。
図4】旋回角度が0度でブームが全伸長状態であるときの上記高所作業車の側面図である。
図5】旋回角度が180度でブームが全伸長状態であるときの上記高所作業車の側面図である。
図6】上記高所作業車の作動機構を示すブロック図である。
図7】(A)は従来技術のクローラ走行装置の側面図であり、(B)は本実施形態のクロー走行装置の側面図である。
図8】(A)は従来技術の高所作業車の側面図であり、(B)は本実施形態の高所作業車の側面図である。
図9】(A)は本実施形態の高所作業車の側面図であり、(B)は別形態の高所作業車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る高所作業車(クローラ式高所作業車)1を図1図5に示しており、まず、この図1図5を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0012】
高所作業車1は、走行可能な走行体10と、走行体10上に水平旋回自在に設けられた旋回体30と、旋回体30の上部に揺動自在に設けられた平行リンク40と、平行リンク40の先端部に揺動自在に設けられたブーム50と、ブーム50の先端部に設けられた作業者搭乗用の作業台60とを備えて構成される。
【0013】
走行体10は、センタフレーム11(図3を参照)と、センタフレーム11の左右に設けられた一対のクローラ走行装置20(20L,20R)とを備えて構成される。センタフレーム11は、走行体10の中央に位置しており、旋回体30を水平旋回可能に支持す
る。左右のクローラ走行装置20(20L,20R)は、当該クローラ走行装置20(20L,20R)を走行作動させるための左右の走行モータ28(28L,28R)を備えている。
【0014】
旋回体30は、旋回体フレーム31と、カウンタウェイト34とを備えている。この旋回体30と走行体10との間には、旋回機構32が設けられている。旋回機構32は、センタフレーム11の上部に設けられた外輪(図示せず)と、旋回体フレーム31の下部に設けられて外輪に係合される内輪(図示せず)とを備えて構成される。旋回体30は、旋回機構32を介して走行体10に水平旋回自在に取り付けられており、走行体10内に設けられた旋回モータ33(図6を参照)を回転駆動することにより、上下方向に延びる旋回中心軸Oを中心として水平旋回作動可能に構成されている。旋回中心軸Oは、外輪および内輪の中心とほぼ一致している。なお、旋回機構32の内側には、走行体10側と旋回体30側との間での作動油の供給(油圧配管の接続)を可能とするスイベルジョイント(図示せず)と、走行体10側と旋回体30側との間での信号や電力の入出力(電気配線の接続)を可能とするスリップリング(図示せず)とが取り付けられている。
【0015】
旋回体フレーム31の前後方向の一端部には、作業装置(平行リンク40、ブーム50、作業台60)との重量バランスをとるための錘であるカウンタウェイト34が取り付けられている。旋回体フレーム31の前後方向の他端部には、下部ブラケット35が取り付けられている。この下部ブラケット35の上部には、平行リンク40が上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。
【0016】
平行リンク40は、互いに平行に配置された2本のリンク部材41,42を備えて構成される。第1リンク部材41は、軸方向の一端部が連結ピン41aを介して下部ブラケット35に枢結されるとともに、軸方向の他端部が連結ピン41bを介して中間ブラケット43に枢結されている。第2リンク部材42は、軸方向の一端部が連結ピン42aを介して下部ブラケット35に枢結されるとともに、軸方向の他端部が連結ピン42bを介して中間ブラケット43に枢結されている。これら第1リンク部材41および第2リンク部材42は、下部ブラケット35と中間ブラケット43との間において所定間隔をあけて互いに平行状態で取り付けられている。それにより、第1リンク部材41、第2リンク部材42、下部ブラケット35および中間ブラケット43により平行リンク機構が構成されている。第1リンク部材41と下部ブラケット35との間には、リンクシリンダ44が設けられている。このリンクシリンダ44を伸縮駆動することで、第1リンク部材41および第2リンク部材42が互いに平行状態を維持しながら上下に起伏自在(揺動自在)に構成されている。
【0017】
ブーム50は、中間ブラケット43の上端部に取り付けられている。ブーム50は、中間ブラケット43側から順に、基端ブーム51、先端ブーム52が入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ54(図6を参照)の伸縮駆動により、ブーム50を軸方向(長手方向)に伸縮作動させることができる。また、中間ブラケット43とブーム50との間には起伏シリンダ53が跨設されており、この起伏シリンダ53を伸縮駆動させることにより、中間ブラケット43に設けられたフートピン55を中心としてブーム50全体を上下面内において起伏作動させることができる。
【0018】
ブーム50の先端部には、垂直ポスト56が上下方向に揺動自在に枢支されている。垂直ポスト56は、先端ブーム52の先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム51と中間ブラケット43との間に跨設された下部レベリングシリンダ57とにより揺動制御され、ブーム50の起伏角度の如何に関らず常時垂直姿勢に保持されるようにレベリング制御される。垂直ポスト56には、作業台ブラケット59を介して作業者搭乗用の作業台60が取り付けられている。作業台ブラケット59の内部
には、首振りモータ58(図6を参照)が取り付けられており、この首振りモータ58を回転駆動させることにより、作業台60全体を垂直ポスト56まわりに首振り作動(水平旋回作動)させることができる。ここで、垂直ポスト56は、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台60の床面はブーム50の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0019】
作業台60には、これに搭乗した作業者が操作する操作装置61が設けられている。この操作装置61には、図6に示すように、左側のクローラ走行装置20(20L)の走行操作を行うための左走行操作レバー62、右側のクローラ走行装置20(20R)の走行操作を行うための右走行操作レバー63、旋回体30の旋回操作を行うための旋回操作レバー64、平行リンク40の起伏操作を行うためのリンク起伏操作レバー65、ブーム50の起伏操作を行うためのブーム起伏操作レバー66、ブーム50の伸縮操作を行うためのブーム伸縮操作レバー67、作業台60の首振り操作を行うための作業台首振り操作レバー68などが設けられている。そのため、作業台60に搭乗した作業者は、各操作レバー62~68を操作することにより、左右のクローラ走行装置20の走行作動(走行モータ28の回転駆動)、旋回体30の旋回作動(旋回モータ33の回転駆動)、平行リンク40の起伏作動(リンクシリンダ44の伸縮駆動)、ブーム50の起伏作動(起伏シリンダ53の伸縮駆動)、ブーム50の伸縮作動(伸縮シリンダ54の伸縮駆動)、作業台60の首振り作動(首振りモータ58の回転駆動)などの各作動操作を行うことができる。
【0020】
高所作業車1の作動機構は、図6に示すように、操作装置61からの操作信号を受けて、左右の走行モータ28(28L,28R)、旋回モータ33、リンクシリンダ44、起伏シリンダ53、伸縮シリンダ54、首振りモータ58等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも称する)を制御するコントローラ70と、これらの油圧アクチュエータを作動させるために作動油を供給する油圧ユニット75とを備えて構成される。
【0021】
操作装置61の操作により出力された操作信号は、コントローラ70に入力される。コントローラ70は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット75(各制御バルブV1~V7)に出力する。
【0022】
油圧ユニット75は、油圧タンク76に貯留された作動油を吐出するエンジン駆動式もしくは電気モータ駆動式の油圧ポンプ77と、この油圧ポンプ77から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ部78とを有して構成される。制御バルブ部78は、左側の走行モータ28(28L)に対応する走行制御バルブV1、右側の走行モータ28(28R)に対応する走行制御バルブV2、旋回モータ33に対応する旋回制御バルブV3、リンクシリンダ44に対応するリンク起伏制御バルブV4、起伏シリンダ53に対応するブーム起伏制御バルブV5、伸縮シリンダ54に対応するブーム伸縮制御バルブV6、首振りモータ58に対応する作業台首振り制御バルブV7を有している。各制御バルブV1~V7は、コントローラ70から入力される指令信号に応じた方向および流量が設定される電磁比例制御バルブから構成されている。そのため、制御バルブ部78は、コントローラ70からの指令信号に基づき、各制御バルブV1~V7のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ77から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの駆動方向及び駆動速度を制御する。
【0023】
次に、本実施形態のクローラ走行装置20について説明する。本実施形態では、詳細後述するが、旋回体30の旋回中心軸Oからクローラ走行装置20の前端部までの距離Df(図7を参照)よりも、旋回体30の旋回中心軸Oからクローラ走行装置20の後端部までの距離Dr(図7を参照)の方が長距離に設定されている。なお、左右のクローラ走行装置20(20L,20R)は、左右対称の構成を有しているため、以下では、一方のク
ローラ走行装置20(20L)を例にとって説明する。
【0024】
クローラ走行装置20は、図1等に示すように、前後方向(走行方向)に延びるクローラフレーム21と、クローラフレーム21の前後方向の一端側に回転可能に設けられた駆動輪22と、クローラフレーム21の前後方向の他端側に回転可能に設けられた従動輪23と、クローラフレーム21の下端側に回転可能に設けられた複数の下ローラ24と、クローラフレーム21の上端側に回転可能に設けられた上ローラ25と、クローラフレーム21の外周に沿って駆動輪22、従動輪23、複数の下ローラ24および上ローラ25に巻き掛けられた履帯26と、駆動輪22を回転作動させる走行駆動装置27(図2を参照)とを備えて構成される。なお、以下の説明では、走行体10(クローラ走行装置20)の前後方向において、従動輪23が配置されている側を走行体10(クローラ走行装置20)の前側と呼称し、駆動輪22が配置されている側を走行体10(クローラ走行装置20)の後側と呼称する。また、旋回体30の前後方向は、ブーム50の軸線方向(長手方向)と略一致しており、作業台60に搭乗して操作装置61を操作する作業者(図1を参照)の向きを基準に、カウンタウェイト34が配置されている側を旋回体30の前側と呼称し、下部ブラケット35が配置されている側を旋回体30の後側と呼称する。また、旋回体30の旋回角度は、図2に示すように、平面視において、走行体10の前後方向と旋回体30の前後方向(ブーム50の軸線方向)とが一致し、且つ、旋回体30の後部側(作業台60側)が走行体10の後部側(駆動輪22側)に位置する状態を「0度」として、旋回体30が時計回り方向又は反時計回り方向に旋回した角度をいう。以下においては、特に説明がない場合には、旋回体30の旋回角度が0度である状態に基づいて説明する。
【0025】
クローラフレーム21は、前後方向に延びており、センタフレーム11の左右の側部に一体的に取り付けられている。クローラフレーム21は、駆動輪22、従動輪23、複数の下ローラ24、上ローラ25を回転自在に支持する。このクローラフレーム21は、側面視において、旋回中心軸Oから前端部(従動輪23側の端部)までの距離よりも、旋回中心軸Oから後端部(駆動輪22側の端部)までの距離の方が所定の距離(後述の延長距離D)だけ長く形成されている。
【0026】
駆動輪22は、クローラフレーム21の後端部に設けられた走行駆動装置27に連結されている。走行駆動装置27は、走行モータ28と減速機(図示せず)とを含む。駆動輪22は、走行モータ28の駆動力(回転力)が減速機を介して伝達されることで回転作動して、履帯26を周回移動させる。従動輪23は、履帯26の周回移動に従動して回転する。下ローラ24は、履帯26を地面に押し付けるとともに、履帯26の周回移動を案内する。上ローラ25は、履帯26を支持しながら、履帯26の周回移動を案内する。なお、本実施形態では、駆動輪22がドライブタンブラにより構成され、従動輪23がアイドラにより構成されている。
【0027】
履帯26は、駆動輪22、従動輪23、複数の下ローラ24、上ローラ25に環状に巻き掛けられて周回移動可能なベルト(クローラベルト)である。この履帯26は、複数のクローラシューをピン等で連結することで構成されており、長さ方向に無端状に形成されている。
【0028】
ここで、図7を追加参照して、本実施形態のクローラ走行装置20を従来技術のクローラ走行装置120と対比して説明する。図7(A)は従来技術のクローラ走行装置120を示す側面図であり、図7(B)は本実施形態のクローラ走行装置20を示す側面図である。なお、従来技術のクローラ走行装置120については、便宜上、本実施形態のクローラ走行装置20と同一又は対応する構成には同一の符号を付している。従来技術のクローラ走行装置120は、側面視において、旋回中心軸Oから従動輪23の回転中心軸23a
までの距離Dj0と、旋回中心軸Oから駆動輪22の回転中心軸22aまでの距離Dk0とが等距離に設定されており、駆動輪22の回転中心軸22aと従動輪23の回転中心軸23aとが旋回中心軸Oに対して対称の位置に配置されている。これに対して、本実施形態のクローラ走行装置20は、側面視において、旋回中心軸Oから従動輪23の回転中心軸23aまでの距離Dj1よりも、旋回中心軸Oから駆動輪22の回転中心軸22aまでの距離Dk1の方が所定の距離(「延長距離D」と呼称する)だけ長距離に設定されており、クローラ走行装置20の前端部よりも後端部の方が旋回中心軸Oから離れた位置に配置されている。そのため、駆動輪22の回転中心軸22aは、側面視において、旋回中心軸Oを基準として従動輪23の回転中心軸23aと対称となる位置よりも延長距離Dだけ後方側にオフセットした位置に配置されている。つまり、従来技術では、駆動輪22の回転中心軸22aと従動輪23の回転中心軸23aとを旋回中心軸Oに対して前後方向に等距離となる位置(前後方向に対称となる位置)に配置していたが、本実施形態では、駆動輪22の回転中心軸22aを旋回中心軸Oを基準として従動輪23の回転中心軸23aに対して対称となる位置よりも後方側(作業台60側)にオフセットしたことにより、車両の転倒支点Y(旋回角度が0度のときの転倒支点Y)を後方側(作業台60側)にシフトさせている。それにより、本実施形態では、クローラ走行装置20の前後方向の接地長さが増すとともに走行体10に対する旋回体30の旋回角度が0度の状態では、車両の転倒支点Yをブーム50の先端部(作業台60)に接近させ且つ車両の重心位置から離反させることができ、車両の安定度を向上させることができる。
【0029】
次に、本実施形態の特徴的な作用として高所作業車1の安定度について説明する。図8(A)は従来技術のクローラ走行装置120を備えた高所作業車101を示し、図8(B)は本実施形態のクローラ走行装置20を備えた高所作業車1を示す。図9(A)は本実施形態のクローラ走行装置20を備えた高所作業車1を示し、図9(B)は別形態のクローラ走行装置220を備えた高所作業車201を示す。ここで、図8(B)と図9(A)はそれぞれ同じ図(本実施形態の高所作業車1を示す図)であるが、従来技術の高所作業車101および別形態の高所作業車201との対比のため、便宜上それぞれの図を示している。また、図9(B)には、従来技術との差異を明確にするため、従来技術のクローラ走行装置120に対応する図も重ねて併記している。また、図8図9では、それぞれの位置関係を対比し易くするため、各高所作業車1,101,201の旋回中心軸Oの位置を揃えている。また、説明の便宜上、従来技術の高所作業車101および別形態の高所作業車201については、本実施形態の高所作業車1と同一又は対応する構成には、便宜上、同じ符号を付している。なお、図8図9に示す高所作業車1,101,201は、旋回体30の旋回角度が0度で、ブーム50が全伸長した状態である。
【0030】
先に、以下で用いる各用語について説明する。なお、図8図9で使用する符号のうち「SV」、「MA」、「MB」、「MC」、「WC」、「LA」、「LB」、「LC」には、末尾に「0」、「1」、「2」の数字を付すことで、従来技術の説明で用いる符号(例えばMAに「0」を付す)と、本実施形態の説明で用いる符号(例えばMAに「1」を付す)と、別実施形態の説明で用いる符号(例えばMAに「2」を付す)とを区別している。但し、以下において、上記符号を特に区別する必要がない場合には、末尾の数字を省略して説明する。
【0031】
まず、安定度SVは、車両の安定性(車両の転倒に対する安定性)の度合いを示す指標である。この安定度SVは、車両の転倒支点Yに対して作用する転倒モーメントMTを分母とし、車両の転倒支点Yに対して作用する安定モーメントMMを分子としたときの比で表される(SV=MM/MT)。基本的には、安定度SVの値が大きいほど車両の安定性が高く、安定度SVの値が小さいほど車両の安定性が低いことを意味する。なお、図8図9において、車両の転倒支点Yは、クローラ走行装置20,120,220の接地部分の後端位置(駆動輪22の回転中心軸22aを通る垂直線と地面との交差位置)となる。
【0032】
転倒モーメントMTは、第1転倒モーメントMAと、第2転倒モーメントMBとの和である(MT=MA+MB)。第1転倒モーメントMAは、作業台60の積載荷重(積載物の重量)WAと、転倒支点Yから積載物の重心位置GAまでの距離LAとの積である(MA=WA×LA)。積載荷重WAとしては、作業台60に積載可能な最大積載荷重(例えば200kgf)を例示する。なお、図8図9においては、積載荷重WAは一定であるため、「WA」の符号の末尾に識別用の数字(0,1,2)は付していない。第2安定モーメントMBは、ブーム50および作業台60の重量(合計重量)WBと、転倒支点Yからブーム50および作業台60の重心位置(合成重心位置)GBまでの距離LBとの積である(MB=WB×LB)。なお、図8図9においては、ブーム50および作業台60の重量WBは一定であるため、「WB」の符号の末尾に識別用の数字(0,1,2)は付していない。
【0033】
安定モーメントMMは、第1安定モーメントMCと、第2安定モーメントMDとの和である(MM=MC+MD)。第1安定モーメントMCは、旋回体30および平行リンク40の重量(合計重量)WCと、転倒支点Yから旋回体30および平行リンク40の重心位置(合成重心位置)GCまでの距離LCとの積である(MC=WC×LC)。なお、図8図9においては、旋回体30および平行リンク40の重量WCは一定であるため、「WC」の符号の末尾に識別用の数字(0,1,2)は付していない。第2安定モーメントMDは、クローラ走行装置20,120,220の重量WDと、転倒支点Yからクローラ走行装置20,120,220の重心位置GDまでの距離LDとの積である(MD=WD×LD)。なお、図8図9においては、クローラ走行装置20,120,220の重量WDは、当該クローラ走行装置20,120,220の前後方向の長さに応じて変わるため、上記重量WA,WB,WCとは異なり、「WD」の符号の末尾に識別用の数字(0,1,2)を付している。これら第1安定モーメントMCと第2安定モーメントMDとの和(合成モーメント)が、転倒モーメントMTに抗するための安定モーメントMMとなる。
【0034】
安定モーメントMMが転倒モーメントMTよりも大きい場合(MM>MT)には、安定度SVは1よりも大きくなり、安定モーメントMMが転倒モーメントMTよりも小さい場合(MM<MT)には、安定度SVは1よりも小さくなる。前述したように、安定度SVが大きいほど、車両の転倒に対する安定性が高くなり、安定度SVが小さいほど、車両の転倒に対する安定性が低くなる。
【0035】
それでは、図8を参照しながら、従来技術の高所作業車101の安定度SV0と、本実施形態の高所作業車1の安定度SV1とを比較する。図8には、旋回体30の旋回角度が0度で、ブーム50が全伸長した状態の高所作業車1,101を示す。
【0036】
まず、従来技術の高所作業車101は、上記図7(A)に示したように、側面視において、旋回中心軸Oから駆動輪22の回転中心軸22aまでの距離Dk0(例えば800mm)と、旋回中心軸Oから従動輪23の回転中心軸23aまでの距離Dj0(例えば800mm)とが同じ距離に設定されていた(つまり、駆動輪22および従動輪23の回転中心軸同士が旋回中心軸Oに対して前後方向に対称の位置に配置されていた)。
【0037】
これに対して、本実施形態の高所作業車1は、上記図7(B)に示したように、側面視において、クローラフレーム21の前後方向の長さを後方側に延長距離D(例えば55mm)だけ延長し、それに応じて駆動輪22の回転中心軸22aを延長距離Dだけ後方側にオフセットしたことで、旋回中心軸Oから従動輪23の回転中心軸23aまでの距離Dj1(例えば800mm)よりも、旋回中心軸Oから駆動輪22の回転中心軸22aまでの距離Dk1(例えば855mm)の方が、延長距離Dだけ長距離に設定されている。そのため、駆動輪22の回転中心軸22aを後方側にオフセットした延長距離Dの分だけ転倒
支点Yが同方向にシフトして、転倒支点Yから積載物の重心位置GA1までの距離LA1(LA1=LA0-D)と、転倒支点Yからブーム50および作業台60の重心位置GBまでの距離LB1(LB1=LB0-D)とが短くなるとともに、転倒支点Yから旋回体30および平行リンク40の重心位置GCまでの距離LC1(LC1=LC0+D)と、転倒支点Yからクローラ走行装置20の重心位置GD1までの距離LD1(LD1=LD0+D′)とが長くなる。なお、距離D′(図示せず)とは、本実施形態のクローラ走行装置20を延長距離Dだけ後方側に延長したことにより生じた重心位置GD1の変位量(後方側への変位量)を延長距離Dから減算した距離である(D′<D)。それにより、本実施形態の転倒モーメントMT1が従来技術の転倒モーメントMT0よりも「積載重量WA×延長距離D」と「ブーム50および作業台60の重量WB×延長距離D」の分だけ小さくなる。また同様に、本実施形態の第1安定モーメントMC1が従来技術の第1安定モーメントMC0よりも「旋回体30および平行リンク40の重量WC×延長距離D」の分だけ大きくなる。さらに、本実施形態の第2安定モーメントMD1が従来技術の第2安定モーメントMD0よりも「クローラ走行装置20の重量差(WD1-WD0)×距離D′」の分だけ大きくなる。なお、クローラ走行装置20の重量差(WD1-WD0)とは、本実施形態のクローラ走行装置20を延長距離Dだけ後方側に延長したことにより生じた重量の増加分(主にクローラフレーム21の重量増加分)である。この重量の増加分は、カウンタウェイト34を増加する場合と比べて小重量(例えば1/4程度の重量)で済む。よって、本実施形態では、分母の転倒モーメントMT1が従来技術よりも小さくなり、分子の安定モーメントMM1が従来技術よりも大きくなることで、高所作業車1の安定度SV1が従来技術の高所作業車101の安定度SV0よりも大きくなり(SV0<SV1)、車両の安定性(転倒に対する安定性)が向上することになる。
【0038】
なお、上記図5に示すように、本実施形態の高所作業車1において、旋回体30の旋回角度が180度で、且つブーム50が全伸長した状態では、転倒支点Yの位置(旋回中心軸Oに対する従動輪23の回転中心軸23aの位置)は従来技術とは変わらないが、この旋回位置ではカウンタウェイト34側に駆動輪22が配置され、この駆動輪22には重量物の走行駆動装置27(走行モータ28、減速機)が備えられており、然も走行駆動装置27が従来技術よりも延長距離Dの分だけカウンタウェイト34側に近付くため(車両の重心位置が転倒支点Yから離れる方向にシフトするため)、この走行駆動装置27がカウンタウェイト34と同様に錘として機能し、安定モーメントMMの向上に寄与するため、この旋回角度が180度の姿勢であるときの車両の安定性も向上することになる。
【0039】
続いて、図9を参照しながら、本実施形態の高所作業車1の安定度SV1と、別形態の高所作業車201の安定度SV2とを比較する。この別形態の高所作業車201は、本実施形態の高所作業車101と同等の安定度SV1(SV2=SV1)を得るために、クローラ走行装置220を本実施形態とは逆方向(前方側)に延長したときの構成(従動輪23を前方側にオフセットしたときの構成)を有するものである。この高所作業車201では、側面視において、旋回中心軸Oに対する駆動輪22の回転中心軸22aの位置が従来技術と変わらないため、転倒支点Yの位置も従来技術と同じ位置となる。それにより、この転倒支点Yから積載物の重心位置GA2までの距離LA2は、従来技術の距離LA0(転倒支点Yから積載物の重心位置GA0までの距離LA0)と同じ距離となるため(LA2=LA0)、別形態の第1転倒モーメントMA2は、従来技術の第1転倒モーメントMA0と同一となる(MA2=MA0)。また同様に、この転倒支点Yからブーム50および作業台60の重心位置GB2までの距離LB2は、従来技術の距離LB0(転倒支点Yからブーム50および作業台60の重心位置GB0までの距離LB0)と同じ距離となるため(LB2=LB0)、別形態の第2転倒モーメントMB2は、従来技術の第2転倒モーメントMB0と同一となる(MB2=MB0)。よって、別形態の転倒モーメントMT2(MT2=MA2+MB2)は、従来技術の転倒モーメントMT0(MT0=MA0+MB0)と同一となる(MT2=MT0)。一方、転倒支点Yから旋回体30および平行
リンク40の重心位置GC2までの距離LC2は、従来技術の距離LC0(転倒支点Yから旋回体30および平行リンク40の重心位置GC0までの距離LC0)と同じ距離となるため(LC2=LC0)、別形態の第1安定モーメントMC2は、従来技術の第1安定モーメントMC0と同一となる(MC2=MC0)。従って、別形態の高所作業車201の安定度SV2を本実施形態の高所作業車1の安定度SV1と同等にするためには、別形態の第2安定モーメントMD2を本実施形態の第2安定モーメントMD1よりも大幅に増加させる必要がある。つまり、この別形態の高所作業車201が本実施形態の高所作業車101の安定度SV1と同等の安定度SV2を得るためには、本実施形態で得られた第1転倒モーメントMA1の減少分(MA1-MA0)と、第2転倒モーメントMB1の減少分(MB1-MB0)と、第1安定モーメントMC1の増加分(MC1-MC0)と、第2安定モーメントMD1の増加分(MD1-MD0)とを、第2安定モーメントMD2の増加分(MD2-MD0)のみで賄う必要がある。そのため、別形態の高所作業車201の場合(クローラ走行装置220を前方側に延長する場合)には、本実施形態の高所作業車1の場合(クローラ走行装置20を後方側に延長する場合)と比べて、クローラ走行装置220の延長距離Kを倍以上の長さに設定して、その延長距離Kの分だけ転倒支点Yからクローラ走行装置220の重心位置GD2までの距離LD2とクローラ走行装置220の重量とを増加させる必要がある。その設計値の一例を挙げると、例えば、従来技術のクローラ走行装置120の全長(前後方向の長さ)を「2050mm」とした場合、本実施形態のクローラ走行装置20の延長距離Dは「55mm」であるのに対して、別形態のクローラ走行装置220の延長距離Kは「230mm」となる(4倍以上の距離を要する)。よって、このようにクローラ走行装置220を延長距離Kだけ前方側(カウンタウェイト34側)に延長した場合には、図9(B)に示すように、クローラ走行装置220の前端部が旋回体30の前端部(カウンタウェイト34の前端部)よりも外側にはみ出す(飛び出す)可能性がある。従って、この別形態の高所作業車201では、本実施形態の高所作業車1の安定度SV1と同等の安定度SV2(従来技術の高所作業車101の安定度SV0よりも高い安定度SV2)を得る場合には、高所作業車201の車両全長(格納姿勢時)がクローラ走行装置220のはみ出し分だけ長くなるという問題が生じる。これに対して、本実施形態の高所作業車1では、走行体30の旋回角度に関わらず、クローラ走行装置20がカウンタウェイト34よりも外側にはみ出すことがないため、車両全長(格納姿勢時)を変更することなく、従来技術の高所作業車101と比べて高い安定度SV1を得ることができる。
【0040】
以上、本実施形態の高所作業車1によれば、旋回中心軸Oからクローラ走行装置20の後端部までの距離Drを、旋回中心軸Oからクローラ走行装置20の前端部までの距離Dfよりも長距離に設定して、クローラ走行装置20の後端部側の長さを従来技術よりも延長することで、クローラ走行装置20の前後方向の接地面の長さが増加するうえに、所定の旋回姿勢(旋回角度が0度の姿勢)において転倒支点Yを車両重心から離れる方向且つ作業台60の積載物に近付く方向にシフトさせることができるため、車両重量および車両全長を抑制しながらも、車両の安定度を向上させることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態の高所作業車1では、クローラフレーム21の後端側に駆動輪22が設けられ、クローラフレーム21の前端側に従動輪23が設けられることで、旋回体30を所定の旋回姿勢(旋回角度が0度の姿勢)から180度旋回させた旋回姿勢(旋回角度が180度の姿勢)において、旋回体30のカウンタウェイト側に駆動輪22および走行駆動装置27が配置され、然も駆動輪22および走行駆動装置27が従来技術よりもカウンタウェイト34側に近付くことになるため、この重量物の走行駆動装置27がカウンタウェイト34と同様に錘の役割を担い、安定モーメントMMの向上に寄与することになることで、車両の安定度を一層向上させることが可能となる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない
範囲であれば適宜改良可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、作業台60の昇降装置として、平行リンク40とブーム50とを備えていたが、この構成に限定されるものではなく、作業台60の昇降装置をブーム50のみで構成したり、ブーム50の先端部(ブーム50と作業台60との間)にジブを設けて構成したりしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 高所作業車(クローラ式高所作業車)
10 走行体
20 クローラ走行装置
21 クローラフレーム
22 駆動輪
22a 回転中心軸
23 従動輪
23a 回転中心軸
26 履帯
27 走行駆動装置
28 走行モータ
30 旋回体
31 旋回体フレーム
34 カウンタウェイト
40 平行リンク
50 ブーム
60 作業台
61 操作装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9