(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115097
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ワーク加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 15/00 20060101AFI20240819BHJP
G05B 19/4093 20060101ALI20240819BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B23Q15/00 301H
G05B19/4093 A
G05B19/4155 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020575
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】飯田 修
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB02
3C269AB33
3C269BB07
3C269CC01
3C269CC13
3C269EF02
3C269GG01
3C269MN44
3C269QC01
3C269QD02
(57)【要約】
【課題】 ワーク加工装置において、加工工具交換作業における無駄を省くことができる。
【解決手段】 ワーク加工装置は、複数の加工工具を有し、前記加工工具によってワークを加工するワーク加工装置において、前記ワークの生産個数に基づいて前記ワークの加工条件を変更可能である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工工具を有し、前記加工工具によってワークを加工するワーク加工装置において、
前記ワークの生産個数に基づいて前記ワークの加工条件を変更可能であるワーク加工装置。
【請求項2】
前記加工条件は、前記ワークの生産時間、加工工具交換回数、及び、加工工具寿命の何れかを優先項目として優先して変更可能である請求項1に記載のワーク加工装置。
【請求項3】
作業者の選択操作によって前記優先項目を選択できる選択部を有する請求項2に記載のワーク加工装置。
【請求項4】
前記加工条件、前記加工工具寿命、及び、生産時間の関係から、前記加工条件を変更する請求項2に記載のワーク加工装置。
【請求項5】
前記関係を事前に学習する請求項4に記載のワーク加工装置。
【請求項6】
前記加工条件の変更は、前記加工工具の交換可能なタイミングにて実施される請求項1に記載のワーク加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ワーク加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク加工装置の一形式として、特許文献1には、行動情報生成部及び数値制御装置を備えた数値制御システムが開示されている。この数値制御システムにおいては、行動情報生成部は、加工時間優先モード又は工具寿命優先モードにおける機械学習により、加工時間優先モード及び工具寿命優先モードの新たな行動情報を生成し、生成した加工時間優先モード及び工具寿命優先モードの新たな行動情報を、行動情報出力部を介して数値制御装置に対して出力する。数値制御装置は、受信した加工時間優先モード及び工具寿命優先モードの行動情報のうち、設定装置により選択された行動情報に基づいて、固定サイクルで設定された1回分の切り込み量及び切削速度が更新された加工プログラムを実行する。数値制御装置は、更新された加工プログラムに基づいて動作指令を生成し、生成した動作指令に基づいて工作機械に切削加工を行わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されている数値制御システムにおいて、オペレータの手間を増やすことなく、加工プログラムを最適化することができる。しかし、加工工具交換作業はオペレータが行っており、加工工具交換作業における無駄を省くことが要請されている。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、加工工具交換作業における無駄を省くことができるワーク加工装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、複数の加工工具を有し、前記加工工具によってワークを加工するワーク加工装置において、前記ワークの生産個数に基づいて前記ワークの加工条件を変更可能であるワーク加工装置を開示する。
【0007】
本開示によれば、ワーク加工装置において、ワークの生産個数に基づいてワークの加工条件を変更することが可能となる。例えば、加工条件としては、ワークの生産時間、加工工具交換回数、及び加工工具寿命が挙げられる。ワークの生産個数に基づいてワークの加工条件を変更することにより、少なくとも2つ以上の加工工具の交換タイミングを互いに一致させたり、加工工具の交換タイミングを段取り替えタイミングに一致させたりすることが可能となる。よって、加工工具交換作業における無駄を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ワーク加工装置が適用された工作機械10を示す概略正面図である。
【
図2】ワーク加工装置が適用された工作機械10を示す正面図である。
【
図3】
図2に示す工作機械10を示す側面図である。
【
図6A】交換回数パターン選択画面52を示す図である。
【
図6B】交換回数パターン選択画面53を示す図である。
【
図7A】生産時間パターン選択画面54を示す図である。
【
図7B】生産時間パターン選択画面55を示す図である。
【
図8】
図4に示す制御装置50にて実施されるプログラムを表すフローチャートである。
【
図9A】切削速度とサイクルタイム、工具寿命及び加工可能回数との関係Rを示す図である。
【
図9B】切削抵抗とサイクルタイム、工具寿命及び加工可能回数との関係Rを示す図である。
【
図9C】刃先温度とサイクルタイム、工具寿命及び加工可能回数との関係Rを示す図である。
【
図11】加工可能回数と加工時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(工作機械)
以下、ワーク加工装置が適用された工作機械の一例である実施形態について説明する。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXZ平面とする。このXZ平面において、後述する工作機械10の主軸20a,20bの軸線方向をZ軸方向と表記し、Z軸方向に直交する方向をX軸方向と表記する。また、XZ平面に垂直な方向はY軸方向と表記する。
【0010】
工作機械10は、ワークWの加工を実施するワーク加工装置である。工作機械10は、
図1に示すように、複数(本実施形態では、2つ)の加工部10aと、1つの搬送装置10bと、を備えている。加工部10aは、ワークWを刃具(加工工具)31により加工する。搬送装置10bは、各加工部10aにワークWを搬入したり搬出したりする装置である。
【0011】
工作機械10は、
図2に示すように、本体11、一対の主軸20a,20b、一対の工具台30a,30b、搬送装置10bであるワーク搬送ロボット40a、並びに、主軸20a,20b、工具台30a,30b、及びワーク搬送ロボット40aを制御する制御装置50を備えている。
【0012】
主軸20aは、ワークWを回転可能に保持するものである。主軸20aは、
図3にて左右方向(Z軸方向)に沿って水平に配置されるように、本体11に設けられた主軸台(不図示)に回転可能に支持されている。主軸20aの先端部にはワークWを着脱可能に把持する主軸チャック21が設けられる。主軸チャック21は、複数の把持爪21aを有しており、これら把持爪21aを閉じることでワークWを掴み、開くことでワークWを放すことが可能である。主軸チャック21の開閉は、制御装置50からの指示によって実施されている。主軸20aは、サーボモータ22(
図4参照)によって回転駆動される。サーボモータ22の電流(駆動電流)は、電流センサ23(
図4参照)によって検出され、その検出結果(検出電流値)は後述する制御装置50に出力されている。主軸20bは、主軸20aと同様に構成されている。
【0013】
工具台30aは、加工工具である切削工具(以下、単に刃具と称する場合がある。)31に送り運動を与える装置である。工具台30aは、いわゆるタレット型の工具台であり、ワークWの切削をする複数の切削工具31が装着される工具保持部32を有している。工具保持部32は、回転駆動部(不図示)によって回転可能に支持されるとともに所定の切削位置に位置決め可能である。工具台30aは、工具台移動装置33によって工具台30aひいては切削工具31を
図2にて左右方向(X軸方向)及び前後方向(Z軸方向)に沿って移動される。
【0014】
工具台移動装置33は、工具台30aをX軸方向に沿って移動させるX軸駆動装置33a(
図4参照;X軸駆動軸であり、単にX軸と称する場合がある。)と、工具台30aをZ軸方向に沿って移動させるZ軸駆動装置33b(
図4参照;Z軸駆動軸であり、単にZ軸と称する場合がある。)とを有している。X軸駆動装置33aは、サーボモータ33a1(
図4参照)によって回転駆動される。サーボモータ33a1の電流(駆動電流)は、電流センサ33a2(
図4参照)によって検出され、その検出結果(検出電流値)は後述する制御装置50に出力されている。Z軸駆動装置33bは、サーボモータ33b1(
図4参照)によって回転駆動される。サーボモータ33b1の電流(駆動電流)は、電流センサ33b2(
図4参照)によって検出され、その検出結果(検出電流値)は後述する制御装置50に出力されている。工具台30bは、工具台30aと同様に構成されている。
【0015】
上述した主軸20a及び工具台30aは、ワークWを加工する加工部10a1を構成する。上述した主軸20b及び工具台30bは、ワークWを加工する加工部10a2を構成する。
【0016】
(搬送装置)
搬送装置10bは、ワーク搬送ロボット40aであり、同一走行台の走行がそれぞれ可能であるとともに、ワークWを主軸20a,20bやワーク載置装置60に搬入出可能である。ワーク載置装置60は、ワークWを載置可能な装置であり、例えば、工作機械10に搬入されるワークWを載置面に載置するワーク搬入装置、工作機械10から搬出されるワークWを載置面に載置するワーク搬出装置、工作機械10から搬出されたワークWの姿勢を反転させたりシフトさせたりする反転・シフト装置などがある。
【0017】
搬送装置10bは、自身の走行(X軸に沿った移動)をさせるための走行部41、ワークWを脱着可能に把持する把持部42、及び、把持部42を走行部41に対して相対移動させる把持部移動部43を備えている。本実施形態において、搬送装置10bは、例えば3軸直交ロボット(3軸ガントリーロボット)である。搬送装置10bは、直交ロボットに限定されず、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット(スカラー型ロボット)、パラレルリンクロボットでもよい。
【0018】
(走行部)
図2に示すように、走行部41は、走行部スライダ41a(X軸スライダと称してもよい。)と、走行部スライダ41aをガイドして走行させる走行台であるガイド部41bと、走行部スライダ41aを走行駆動させるための走行駆動装置41c(
図4参照)とを備えている。
【0019】
走行部スライダ41aは、把持部42及び把持部移動部43を搭載可能であり、
図2にて左右方向(X軸方向)に沿って延設されているガイド部41bに案内されて左右方向に沿って往復動(直動)される。
【0020】
ガイド部41bは、本体11に設けられており、主軸20a,20b及び工具台30a,30bの上方に配設されている。ガイド部41bの一端部(
図2にて左側端部)は、本体11の左側に設置されたワーク載置装置60の直上まで延設されている。ガイド部41bの他端部(
図2にて右側端部)は、本体11の右側に設置されたワーク載置装置60の直上まで延設されている。尚、走行部スライダ41aとガイド部41bとから走行駆動軸(X軸駆動軸)が構成されている。走行駆動装置41cは、走行部スライダ41aまたはガイド部41b側に設けられている。
【0021】
(把持部)
主として
図3に示すように、把持部42は、Y軸スライダ45aに回転駆動部42bを介して回転可能に連結されている。把持部42は、直交する2つの側面と残りの側面を有する三角柱形状の本体42aを有している。直交する2つの側面のうち一方の側面は、X-Z平面に平行可能な平面であり、ワークWを脱着可能に把持するロボットチャック42cが設けられている。他方の側面は、X-Y平面に平行な平面であり、ワークWを脱着可能に把持するロボットチャック42dが設けられている。
【0022】
本体42aは、回転駆動部42bによって回転可能であり、各ロボットチャック42c,42dは2つの位置(Y軸方向下向き位置とZ軸方向奥側向き位置)に回転切換が可能となる。その結果、把持部42は、各ロボットチャック42c,42dをY軸方向下向き位置にすることでY軸方向上向きの載置面(例えばワーク載置装置60の載置面)に対してワークWを受け渡しすることができる。また、把持部42は、各ロボットチャック42c,42dをZ軸方向奥側向き位置にすることでZ軸方向手前側向きの載置面(例えば主軸20a,20bの主軸チャック21の載置面)に対してワークWを受け渡しすることができる。ロボットチャック42c,42dは、図示しない複数の把持爪を有しており、これら把持爪を閉じることでワークWを掴み、開くことでワークWを放すことが可能である。ロボットチャック42c,42dの開閉は、制御装置50からの指示により駆動されるチャック駆動装置42g(
図4参照)によって実施されている。
【0023】
本体42aの残りの側面には、Y軸スライダ45aの先端部(下端部)の傾斜面に設けられた回転駆動部42bが取り付けられている(接続されている)。本体42aの残りの側面は、Y軸スライダ45aの先端部の傾斜面に平行に配設されている。回転駆動部42bは、
図3に示すように、回転駆動部42bに設けられた回転駆動軸42eと、回転駆動軸42eを回転駆動する回転駆動装置42f(
図4参照)とを有している。
【0024】
(把持部移動部)
把持部移動部43は、把持部42を走行部スライダ41aに対して
図3にて左右方向(Z軸方向)及び上下方向(Y軸方向)に沿って相対移動させるものである。把持部移動部43は、把持部42をZ軸方向に沿って移動させるZ軸駆動部44と、把持部42をY軸方向に沿って移動させるY軸駆動部45とを有している。
【0025】
(Z軸駆動部)
Z軸駆動部44は、走行部スライダ41aに対して摺動可能に取り付けられたZ軸スライダ44aをZ軸方向に沿って移動させる。主として
図3に示すように、Z軸駆動部44は、Z軸スライダ44aと、Z軸スライダ44aをガイドして移動させるZ軸ガイド部44bと、Z軸スライダ44aを移動駆動させるためのZ軸駆動装置44c(
図4参照)とを備えている。
【0026】
Z軸スライダ44aは、Y軸駆動部45ひいては把持部42を搭載可能であり、
図3にて左右方向(Z軸方向)に沿って延設されており、Z軸ガイド部44bに案内されてZ軸方向に沿って往復動(直動)される。Z軸ガイド部44bは、走行部スライダ41aに設けられている。Z軸駆動装置44cは、Z軸ガイド部44bまたはZ軸スライダ44aに設けられている。
【0027】
(Y軸駆動部)
Y軸駆動部45は、Z軸スライダ44aに対して摺動可能に取り付けられたY軸スライダ45a(把持部42が支持されている)をY軸方向に沿って移動させる。主として
図3に示すように、Y軸駆動部45は、Y軸スライダ45aと、Y軸スライダ45aをガイドして移動させるY軸ガイド部45bと、Y軸スライダ45aを移動駆動させるためのY軸駆動装置45c(
図4参照)とを備えている。
【0028】
Y軸スライダ45aは、把持部42を搭載可能であり、
図3にて上下方向(Y軸方向)に沿って延設されており、Y軸ガイド部45bに案内されてY軸方向に沿って往復動(直動)される。Y軸ガイド部45bは、Z軸スライダ44aに設けられている。Y軸駆動装置45cは、Y軸ガイド部45bまたはY軸スライダ45aに設けられている。
【0029】
(制御装置)
制御装置50は、主軸20a,20b、工具台30a,30b、及び搬送装置10bを駆動制御する制御装置である。特に、制御装置50は、ワークWの生産個数に基づいてワークWの加工条件を変更する(変更部)。制御装置50は、
図4に示すように、入力装置50a、表示装置50b、記憶装置50c、電流センサ23,33a2,33b2、サーボモータ22,33a1,33b1、走行駆動装置41c、Y軸駆動装置45c、Z軸駆動装置44c、回転駆動装置42f、及び、チャック駆動装置42gに接続されている。入力装置50aは、工作機械10の前面に設けられており、作業者(ユーザ)が各種設定、各種指示などを制御装置50に入力するためのものである。表示装置50bは、工作機械10の前面に設けられており、作業者に対して運転状況やメンテナンス状況などの情報を表示するためのものである。記憶装置50cは、工作機械10の制御に係るデータ、例えば、制御プログラム(加工プログラム)、制御プログラムで使用するパラメータ、各種設定や各種指示に関するデータ、実検出データ、関連付けデータなどを記憶している(記憶部)。制御装置50は、マイクロコンピュータ(不図示)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも不図示)を備えている。CPUは、各種プログラムを実施して、入力装置50a、記憶装置50c及び電流センサ23,33a2,33b2からデータ、検出信号、制御情報などを取得したり、表示装置50b、サーボモータ22,33a1,33b1及び搬送装置10bを制御したりする。RAMは同プログラムの実施に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
【0030】
(表示画面)
表示装置50bは、2つの選択画面を表示することが可能である表示部50b1を備えている。表示部50b1は、タッチパネルにより形成することが可能である。また、表示部50b1は、単に表示するだけでもよい。この場合、表示されている項目が操作装置により選択されるものが好ましい。
【0031】
選択画面は、
図5に示す優先項目選択画面51、及び
図6A,B及び
図7A,Bに示すパターン選択画面52~55である。優先項目選択画面51は、優先項目を選択することができる画面である。優先項目は、ワークWを加工する際に作業者が優先したいパラメータ(項目)であり、換言すると、ワークWの生産個数に基づいてワークWの加工条件を変更する際に優先可能な項目である。優先項目としては、例えば、ワークWの生産時間、加工工具交換回数、加工工具寿命が挙げられる。
【0032】
尚、加工条件は、ワークWを加工する際に加工に係る事柄であり、加工条件としては、例えば、刃具31の切削速度、刃具31の切削抵抗、刃具31の切削に係るモータのトルク(サーボトルク)、刃具31の刃先の温度などが挙げられる。
【0033】
優先項目選択画面51は、優先項目として加工工具交換回数である切削工具交換回数(単に交換回数と称する場合もある。)を選択できる交換回数選択部51aと、優先項目として生産時間を選択できる生産時間選択部51bと、を有する。尚、
図5に示す優先項目選択画面51は、交換回数選択部51aと生産時間選択部51bのみを有しているが、優先項目として加工工具寿命を選択できる加工工具寿命選択部を有するようにしてもよい。このように、優先項目選択画面51は、作業者の選択操作によって優先項目を選択できる選択部である。尚、選択部は選択画面に限定されないで、選択スイッチなどで形成してもよい。
【0034】
優先項目選択画面51にて交換回数選択部51aが作業者によって選択された場合、制御装置50は、後述する処理によって交換回数を優先して加工条件を変更して加工パターンを算出し、交換回数をキーにして(基準にして)交換回数の有利な加工パターンを順番に交換回数パターン選択画面52に表示する。この場合、表示される加工パターンは、上位から所定番目(本実施形態では5番目)まで表示すればよい。
【0035】
図6Aに示すように、交換回数パターン選択画面52には、1番目から5番目までのパターン選択部52a~52eが表示されている。1番目のパターン選択部52aは、交換回数が最も少ない加工パターンが交換回数と合わせて表示されている。本実施形態では、例えば、1番目のパターン選択部52aは、交換回数が2回であり、加工パターンが加工パターンDである。2番目のパターン選択部52bは、交換回数が3回であり、加工パターンが加工パターンFである。3番目のパターン選択部52cは、交換回数が3回であり、加工パターンが加工パターンBである。4番目のパターン選択部52dは、交換回数が3回であり、加工パターンが加工パターンCである。5番目のパターン選択部52eは、交換回数が4回であり、加工パターンが加工パターンEである。尚、加工パターンA~Fについては、後述する。
【0036】
尚、パターン選択部に生産時間を追加してもよい。この場合、生産時間は総生産時間ではなく、増大される増大生産時間であり、工具交換時間と追加生産時間(加工条件の変更に伴う増大または減少する加工時間)と加算時間を示す。具体的には、
図6Bに示すように、交換回数パターン選択画面53には、1番目から5番目までのパターン選択部53a~53eが表示されている。1番目のパターン選択部53aは、交換回数が最も少ない加工パターンが交換回数及び生産時間と合わせて表示されている。
【0037】
本実施形態では、例えば、1番目のパターン選択部53aは、交換回数が2回であり、生産時間が140秒であり、加工パターンが加工パターンDである。2番目のパターン選択部53bは、交換回数が3回であり、生産時間が90秒であり、加工パターンが加工パターンFである。3番目のパターン選択部53cは、交換回数が3回であり、生産時間が100秒であり、加工パターンが加工パターンBである。4番目のパターン選択部53dは、交換回数が3回であり、生産時間が105.5秒であり、加工パターンが加工パターンCである。5番目のパターン選択部53eは、交換回数が4回であり、生産時間が100秒であり、加工パターンが加工パターンEである。
【0038】
優先項目選択画面51にて生産時間選択部51bが作業者によって選択された場合、制御装置50は、後述する処理によって生産時間を優先して加工条件を変更して加工パターンを算出し、生産時間をキーにして(基準にして)生産時間の有利な加工パターンを順番に生産時間パターン選択画面54に表示する。この場合、表示される加工パターンは、上位から所定番目(本実施形態では5番目)まで表示すればよい。
【0039】
図7Aに示すように、生産時間パターン選択画面54には、1番目から5番目までのパターン選択部54a~54eが表示されている。1番目のパターン選択部54aは、生産時間が最も少ない加工パターンが生産時間と合わせて表示されている。本実施形態では、例えば、1番目のパターン選択部54aは、生産時間が90秒であり、加工パターンが加工パターンFである。2番目のパターン選択部54bは、生産時間が100秒であり、加工パターンが加工パターンBである。3番目のパターン選択部54cは、生産時間が100秒であり、加工パターンが加工パターンEである。4番目のパターン選択部54dは、生産時間が105.5秒であり、加工パターンが加工パターンCである。5番目のパターン選択部54eは、生産時間が140秒であり、加工パターンが加工パターンDである。
【0040】
尚、パターン選択部に交換回数を追加してもよい。具体的には、
図7Bに示すように、生産時間パターン選択画面55には、1番目から5番目までのパターン選択部55a~55eが表示されている。1番目のパターン選択部55aは、生産時間が最も少ない加工パターンが生産時間及び交換回数と合わせて表示されている。
【0041】
本実施形態では、例えば、1番目のパターン選択部55aは、生産時間が90秒であり、交換回数が3回であり、加工パターンが加工パターンFである。2番目のパターン選択部55bは、生産時間が100秒であり、交換回数が3回であり、加工パターンが加工パターンBである。3番目のパターン選択部55cは、生産時間が100秒であり、交換回数が4回であり、加工パターンが加工パターンEである。4番目のパターン選択部55dは、生産時間が105.5秒であり、交換回数が3回であり、加工パターンが加工パターンCである。5番目のパターン選択部55eは、生産時間が140秒であり、交換回数が2回であり、加工パターンが加工パターンDである。
【0042】
(加工パターンの選択)
さらに、上述したワーク加工装置(工作機械10)における加工パターンの選択について
図8に示すフローチャートに沿って説明する。制御装置50は、本フローチャートに沿った処理を実施する。
【0043】
制御装置50は、工作機械10が生産開始時点である場合に、生産対象であるワークWの生産個数が作業者により入力された場合には、表示装置50bの表示部50b1に優先項目を表示する。制御装置50は、作業者が選択した優先項目にて加工パターンを表示装置50bに表示する。このとき、制御装置50は、ワークWの生産個数に基づいてワークWの加工条件を変更して加工パターンを算出する。制御装置50は、作業者が選択した加工パターンにてワークWの加工を実施する。
【0044】
制御装置50は、ステップS102において、工作機械10がワークWの生産開始時点であるか否かを判定する。例えば、制御装置50は、工作機械10が段取り替えなどの生産開始準備中であり、その後新しいワークWの加工が加工プログラムに従って開始される際には、ワークWの生産開始時点であると判定する。
【0045】
制御装置50は、ワークWの生産開始時点であると判定した場合には、ステップS102にて「YES」と判定し、プログラムをステップS104に進める。一方、制御装置50は、ワークWの生産開始時点であると判定しない場合には、ステップS102にて「NO」と判定し、ワークWの生産開始時点であると判定するまでステップS102の処理を繰り返し実施する。
【0046】
制御装置50は、ステップS104において、生産すべきワークWの個数(生産個数)が作業者により入力されているか否かを判定する。例えば、生産個数は、入力装置50aへの作業者の入力操作により入力可能であり、入力された生産個数は。記憶装置50cに記憶可能である。制御装置50は、入力装置50aにて生産個数の入力があれば、生産個数が入力されていると判定する。制御装置50は、ワークWの生産個数が入力されている場合には、ステップS104にて「YES」と判定し、プログラムをステップS106に進める。一方、制御装置50は、ワークWの生産個数が入力されていない場合には、ステップS104にて「NO」と判定し、ワークWの生産個数が入力されるまでステップS104の処理を繰り返し実施する。
【0047】
尚、生産個数は、作業者による直接入力に限定されず、他の制御装置(ホストコンピュータ)からの送信されたデータや加工プログラムに記載されている場合もある。生産個数は送信されたデータや加工プログラムから取得可能である。この場合、制御装置50は、ステップS104において、送信されたデータや加工プログラムに生産個数の指示があるか否かを判定する。
【0048】
制御装置50は、ステップS106において、生産個数、各刃具31(加工工具)の加工可能回数、各刃具31の交換時間、及び、関係Rを記憶装置50cから取得する(取得部)。
【0049】
刃具31の加工可能回数は、刃具31がワークW(所定の加工工程(加工箇所))を加工できる回数であり、刃具31が加工できるワークWの個数に置き換えてもよい。加工可能回数は、刃具31の切削速度に応じて変更可能であり、加工可能回数は刃具31が有する加工可能回数範囲内に設定されている。切削速度が速いほど加工可能回数は大きくなるが、刃具寿命数は小さくなる。
【0050】
刃具31の交換時間は、1つの刃具31を単独で交換する時間であり、刃具31を単に交換する交換時間(刃具のみ交換時間)だけでなく、刃具のみ交換時間に交換前の準備作業(工作機械10の停止作業、カバー開け作業など)及び交換後の準備作業(工作機械10の再開作業、カバー閉め作業など)を加えた時間である。尚、一度に複数の刃具31を交換する場合には、刃具31の交換時間は、1つの場合の交換時間を単純に複数倍するのではなく、交換前及び交換後の準備作業時間に、刃具のみ交換時間を複数倍した時間を加算して、複数本の交換時間を得ることができる。例えば、刃具T1の交換時間は30秒であるが、刃具T2も同時に交換する場合には、刃具T1,T2の交換時間は40秒である。
【0051】
関係Rは、加工条件、加工工具寿命、及び、生産時間(サイクルタイム)の関係である。加工条件としては、例えば、刃具31の切削速度、刃具31の切削抵抗、刃具31の切削に係るモータのトルク(サーボトルク)、刃具31の刃先の温度などが挙げられる。
【0052】
刃具31の切削速度は、主軸20a(20b)のサーボモータ22の回転速度から算出(検出)することが可能であり、主軸20aの回転速度を制御することにより刃具31の切削速度を制御可能である。また、刃具31の切削に係るモータのトルク(サーボトルク)は、主軸20a(20b)のサーボモータ22の検出電流値(電流センサ23の検出値)から算出(検出)することが可能であり、主軸20aの駆動電流を制御することにより刃具31の切削に係るモータのトルク(サーボトルク)を制御可能である。
【0053】
刃具31の切削抵抗は、刃具31の切削に係るモータのトルク(サーボトルク)から算出することが可能であり、主軸20aの駆動電流を制御することにより刃具31の切削抵抗を制御可能である。尚、刃具31の切削抵抗は、工具台移動装置33を移動制御することによっても制御可能である。また、刃具31の刃先温度は、刃先温度を検知可能である温度検知装置により検知できる。温度検知装置としては、刃先温度を非接触で測定できる赤外線熱温度測定装置などが挙げられる。主軸20aの駆動電流、回転速度を制御することにより、刃具31の刃先温度は制御可能である。
【0054】
加工条件は、ワークWの生産個数に基づいて変更可能である。例えば、刃具1本あたりの加工可能回数の基準加工回数(変更前回数)すなわち刃具1本あたりの加工可能個数の基準加工回数(変更前回数)の整数倍がワークWの生産個数でない場合(ワークWの生産完了時点と刃具交換タイミングとが異なる場合)には、変更後回数にそれぞれ変更した各変更後加工可能個数の和がワークWの生産個数となるように、刃具1本あたりの加工可能個数を基準加工回数から変更後回数に変更する。
【0055】
また、後述するステップS108にて説明するように、加工条件は、ワークWの生産時間、加工工具交換回数、及び、加工工具寿命の何れかを優先項目として優先して変更可能である。さらに、加工条件は、関係Rから(に基づいて)変更可能である。
【0056】
関係Rは、一般的には、加工条件が厳しくなると、サイクルタイムは短くなり、刃具寿命は短くなり、一方、加工条件が緩くなると、サイクルタイムは長くなり、刃具寿命は長くなる関係である。例えば、
図9Aに示すように、切削速度とサイクルタイム(工具寿命、加工可能回数)との関係Rは、加工条件の切削速度(加工速度)が速くなるほど、サイクルタイムは短くなるが、刃具寿命は短くなり加工可能回数は短くなる関係にある。このとき、切削速度とサイクルタイム(工具寿命、加工可能回数)との関係Rは、一次関数的な関係でなく、二次関数的または指数関数的な関係である。尚、
図9においては、加工条件とサイクルタイム、工具寿命、加工可能回数との各関係Rを示している。
【0057】
また、
図9Bに示すように、切削抵抗とサイクルタイム(工具寿命、加工可能回数)との関係Rは、加工条件の切削抵抗が高くなるほど、サイクルタイムは短くなるが、刃具寿命は短くなり加工可能回数は短くなる関係にある。このとき、切削抵抗とサイクルタイム(工具寿命、加工可能回数)との関係Rは、一次関数的な関係でなく、二次関数的または指数関数的な関係である。
【0058】
また、
図9Cに示すように、刃先温度とサイクルタイム(工具寿命、加工可能回数)との関係Rは、加工条件の刃先温度が高くなるほど、サイクルタイムは短くなるが、刃具寿命は短くなり加工可能回数は短くなる関係にある。このとき、刃先温度とサイクルタイム(工具寿命、加工可能回数)との関係Rは、一次関数的な関係でなく、二次関数的または指数関数的な関係である。
【0059】
尚、上述した加工条件、加工工具寿命、及び、生産時間(サイクルタイム)の関係Rは、事前に学習することが可能である。学習した関係Rは、記憶装置50cに記憶される。制御装置50は、ワークW(ロット単位でも、刃具単位でも)を加工する毎にサイクルタイム、工具寿命及び加工可能回数と切削速度とを関連付けたデータを刃具31毎に記憶することが可能であり、これらデータに基づいて学習し関係Rを最適化することが可能である。
【0060】
(加工パターン算出)
制御装置50は、ステップS108において、生産個数、各加工工具の加工可能回数(基準加工回数)、各加工工具の交換時間、及び、関係Rを使用して、少なくとも1つ以上の加工工具の加工可能回数が変更された加工パターンを算出する(加工パターン算出部)。加工パターンは、生産時間、及び加工工具の交換回数を含んでいる。本実施形態においては、加工パターンA~加工パターンFを例に挙げて説明する。
【0061】
加工パターンA~加工パターンFにおいては、2つの刃具T1,T2を使用した場合について説明している。加工パターンB~加工パターンEにおいては、刃具T2の加工可能回数を固定するとともに刃具T1の加工可能回数を変更することにより、刃具T1の効果タイミングを変更している。加工パターンFにおいては、刃具T1,T2の両方の加工可能回数を変更することにより、刃具T1,T2の効果タイミングを変更している。
【0062】
尚、ワークWの生産個数は100個であり、刃具T1の1本あたりの基準加工回数(変更前回数)は30回であり、刃具T2の1本あたりの基準加工回数(変更前回数)は50回である。また、刃具T1の交換時間は30秒であり、刃具T2の交換時間は30秒であり、刃具T1,T2の同時交換に係る同時交換時間は40秒である。また、ワークWの生産を開始する際には、新品の刃具T1,T2が装着されている。また、刃具T1の交換タイミングを実線で示し、刃具T2の交換タイミングを破線で示し、同時交換のタイミングを一点鎖線で示している。
【0063】
(加工パターンA:基準加工)
加工パターンAにおいては、刃具T1,T2の加工可能回数を基準加工回数(変更前回数)に設定したままで(変更なしで)ワークWの生産を実施しており、
図10Aに示すように、ワークWの生産個数は100個であり、刃具T1の1本あたりの加工可能回数は基準加工回数の30回であり(基準加工個数の30個であり)、刃具T2の1本あたりの加工可能回数は基準加工回数の50回である(基準加工個数の50個である)。尚、刃具の1本あたりの加工可能回数が基準加工回数でワークWを加工する場合を基準加工と称する。また、刃具T1,T2の加工可能回数は、加工パターンを算出する直前の加工可能回数に設定されたままである。
【0064】
加工パターンAでは、
図10Aに示すように、ワークWを100個生産するためには、刃具T1は3回交換が必要であり、刃具T2は1回交換が必要である。よって、刃具T1,T2の交換本数は合わせて4本である。また、刃具T1,T2の同時交換はない。よって、交換時間は、刃具T1の交換回数が3回であり刃具T1の交換時間は90秒となり、刃具T2の交換回数が1回であり刃具T2の交換時間は30秒となり、これらを合計して120秒となる。ワークWの生産時間は刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)と刃具T1,T2の交換時間とを加算した値として算出することができる。
図10A~
図10Fにおいて、図面右端部に、加工パターンAに係る刃具T1,T2の交換本数及びワークWの生産時間を記載している。
【0065】
また、加工パターンAでは、
図10Aに示すように、ワークWの生産完了時点にて刃具T1の残り刃具寿命が20回であり、刃具T2の交換タイミングとワーク生産完了時点とが一致するため、刃具T2の残り刃具寿命は0回である。
【0066】
(加工パターンB:刃具T1の所定本数目の加工可能回数のみを増大)
加工パターンBにおいては、
図10Bに示すように、刃具T2の加工可能回数を基準加工回数(変更前回数)に設定したままにするとともに、刃具T1の所定本数目(3本目)のみの加工可能回数を基準加工回数から変更後増大回数(変更後回数)に増大させるとともに刃具T1の所定本数目(3本目)以外の加工可能回数を基準加工回数に設定したままで、ワークWの生産を実施する。
【0067】
このとき、刃具T1の所定本数目は、刃具T1の加工可能回数の増大量(刃具T1増大加工回数)を最も小さく抑えて刃具T1の交換タイミングを刃具T2の交換タイミングに合わせることができる順番の刃具T1に設定することができる。例えば、1番目の刃具T1の交換タイミングを1番目の刃具T2の交換タイミングに合わせようとする場合には、刃具T1の加工可能回数(個数)を30回から50回に増大させる必要があり、その刃具T1増大加工回数は20回である。
【0068】
また、2番目の刃具T1の交換タイミングを1番目の刃具T2の交換タイミングに合わせようとする場合には、刃具T1の加工可能回数(個数)を30回から20回に減少させる必要があり、その刃具T1減少加工回数は20回である。また、2番目の刃具T1の交換タイミングを2番目の刃具T2の交換タイミングに合わせようとする場合には、3番目の刃具T1の交換タイミングを越えるため(すなわち刃具T1の加工可能回数が基準加工回数の2倍となるため)現実的でない。さらに、3番目の刃具T1の交換タイミングを2番目の刃具T2の交換タイミングに合わせようとする場合には、刃具T1の加工可能回数(個数)を30回から40回に増大させる必要があり、その刃具T1増大加工回数は10回である。
【0069】
以上のことから、増大加工回数を最も小さく抑えることができるのは、3番目の刃具T1の交換タイミングを2番目の刃具T2の交換タイミングに合わせようとする場合であり、刃具T1の所定本数目は3本目であることが理解できる。この場合、1番目及び2番目の刃具T1の加工可能回数は基準加工回数の30回であり、3番目の刃具T1の加工可能回数は増大加工回数の40回である。尚、刃具T2の1番目及び2番目の加工可能回数は、基準加工回数の50回のままである。
【0070】
加工パターンBでは、
図10Bに示すように、ワークWを100個生産するためには、刃具T1は2回交換が必要であり、刃具T2は1回交換が必要である。よって、刃具T1,T2の交換本数は合わせて3本である。また、刃具T1,T2の同時交換はない。よって、交換時間は、刃具T1の交換回数が2回であり刃具T1の交換時間は60秒となり、刃具T2の交換回数が1回であり刃具T2の交換時間は30秒となり、これらを合計して90秒となる。ワークWの生産時間は刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)と刃具T1,T2の交換時間と増大加工時の増大加工時間である10秒とを加算した値として算出することができる。すなわち、ワークWの生産時間は、刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)に100秒(=刃具T1,T2の交換時間(90秒)+増大加工時間(10秒))を加算することで算出することができる。
【0071】
尚、増大加工においては、加工可能回数を増大させるため切削速度を基準加工時に比較して遅くするので、サイクルタイムが長くなる。よって、増大加工時間は、基準加工時に比較して長くなった(増大した)時間である。例えば、加工パターンBでは、刃具T1の3本目の加工可能時間を増大させたときに、増大加工時間は10秒となる。
【0072】
尚、増大加工時間は、
図11に示す加工時間と加工可能回数との関係から算出することができる。この関係は、刃具31毎に記憶装置50cに記憶されている。加工時間と加工可能回数との関係は、加工可能回数が増えるほど加工時間も増える関係である。このとき、加工時間と加工可能回数との関係は、一次関数的な関係でなく、二次関数的または指数関数的な関係である。例えば、加工パターンBでは、加工可能回数を30回から40回に増大させているので、
図11から増大加工時間は10秒となる。後述する各加工パターンの増大加工時間または減少加工時間も同様に算出することができる。
【0073】
また、加工パターンBにおいては、同時交換はないが、刃具T1,T2の両方とも100個の生産個数を生産完了した時点において、工具寿命となり、刃具T1,T2ともに交換タイミングを迎えることが可能となる。よって、刃具T1,T2ともに半端が生じないので(寿命が残っていない(加工可能回数が0である)刃具が生じないので)、刃具を使い切ることで刃具の費用を低コストに抑制することができる。また、寿命が残っていない刃具を廃棄する回数を低減することができ、環境負荷を軽減することができる。
【0074】
また、前述した加工パターンBにおいては、1番目及び2番目の刃具T1の加工可能回数を基準加工回数とし、3番目の刃具T1の加工可能回数を増大加工回数とすることにより、3番目の刃具T1の交換タイミングを2番目の刃具T2の交換タイミングに合わせるようにしたが、1番目及び3番目の刃具T1の加工可能回数を基準加工回数とし、2番目の刃具T1の加工可能回数を増大加工回数とすることにより、3番目の刃具T1の交換タイミングを2番目の刃具T2の交換タイミングに合わせるようにしてもよい。
【0075】
また、加工パターンBでは、
図10Bに示すように、刃具T1,T2両方の交換タイミングとワーク生産完了時点とが一致するため、刃具T1,T2の残り刃具寿命はそれぞれ0回である。
【0076】
(加工パターンC:刃具T1の交換回数を減少するとともに複数の刃具T1の加工可能回数を増大)
加工パターンCにおいては、
図10Cに示すように、刃具T2の加工可能回数を基準加工回数(変更前回数)に設定したままにするとともに、刃具T1の交換回数を基準加工より減少させ、かつ、複数の刃具T1の加工可能回数を基準加工回数から変更後増大回数(変更後回数)に増大させて、ワークWの生産を実施する。
【0077】
このとき、刃具T1の交換回数は、基準加工より1つ減少されて2回に減少されるとともに、1番目の刃具T1から3番目の刃具T1の加工可能回数は、3番目の刃具T1の交換タイミングを2番目の刃具T2の交換タイミングに合わせるように設定されている。換言すると、1番目の刃具T1から3番目の刃具T1の加工可能回数の総加工可能回数が生産個数となるように1番目の刃具T1から3番目の刃具T1の加工可能回数を変更すればよい。例えば、1番目の刃具T1から3番目の刃具T1の加工可能回数は、同じ値(または略同じ値)となるように変更されている。1番目の刃具T1から3番目の刃具T1まで全ての刃具T1の負担を均一化することができる。尚、1番目の刃具T1から3番目の刃具T1の加工可能回数は、全てが異なる値となるように変更してもよい。
【0078】
例えば、1番目及び2番目の刃具T1の加工可能回数は、基準加工回数の30回から増大加工回数の33回に変更され、3番目の刃具T1の加工可能回数は、基準加工回数の30回から増大加工回数の34回に変更されている。
【0079】
加工パターンCでは、
図10Cに示すように、ワークWを100個生産するためには、刃具T1は2回交換が必要であり、刃具T2は1回交換が必要である。よって、刃具T1,T2の交換本数は合わせて3本である。また、刃具T1,T2の同時交換はない。よって、交換時間は、刃具T1の交換回数が2回であり刃具T1の交換時間は60秒となり、刃具T2の交換回数が1回であり刃具T2の交換時間は30秒となり、これらを合計して90秒となる。ワークWの生産時間は刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)と刃具T1,T2の交換時間と増大加工時の総増大加工時間である15.5秒とを加算した値として算出することができる。すなわち、ワークWの生産時間は、刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)に105.5秒(=刃具T1,T2の交換時間(90秒)+総増大加工時間(15.5秒))を加算することで算出することができる。
【0080】
尚、加工パターンCでは、刃具T1の1本目の加工可能時間を増大加工回数である33回に増大させたときに、増大加工時間は5秒となり、刃具T1の2本目の加工可能時間を増大加工回数である33回に増大させたときに、増大加工時間は5秒となり、刃具T1の3本目の加工可能時間を増大加工回数である34回に増大させたときに、増大加工時間は5.5秒となり、総増大加工時間は15.5秒となる。
【0081】
また、加工パターンCにおいては、同時交換はないが、刃具T1,T2の両方とも100個の生産個数を生産完了した時点において、工具寿命となり、刃具T1,T2ともに交換タイミングを迎えることが可能となる。よって、刃具費用の低コスト化、環境負荷の軽減を図ることができる。
【0082】
また、加工パターンCでは、
図10Cに示すように、刃具T1,T2両方の交換タイミングとワーク生産完了時点とが一致するため、刃具T1,T2の残り刃具寿命はそれぞれ0回である。
【0083】
(加工パターンD:刃具T1の交換回数を減少するとともに複数の刃具T1の加工可能回数を増大)
加工パターンDにおいては、
図10Dに示すように、刃具T2の加工可能回数を基準加工回数(変更前回数)に設定したままにするとともに、刃具T1の交換回数を基準加工より減少させ、かつ、複数の刃具T1の加工可能回数を基準加工回数から変更後増大回数(変更後回数)に増大させて、ワークWの生産を実施する。
【0084】
このとき、刃具T1の交換回数は、基準加工より2つ減少されて1回に減少されるとともに、1番目の刃具T1から2番目の刃具T1の加工可能回数は、2番目の刃具T1の交換タイミングを2番目の刃具T2の交換タイミングに合わせるように設定されている。換言すると、1番目の刃具T1から2番目の刃具T1の加工可能回数の総加工可能回数が生産個数となるように1番目の刃具T1から2番目の刃具T1の加工可能回数を変更すればよい。例えば、1番目の刃具T1から2番目の刃具T1の加工可能回数は、同じ値となるように変更されている。1番目の刃具T1から2番目の刃具T1まで全ての刃具T1の負担を均一化することができる。尚、1番目の刃具T1から2番目の刃具T1の加工可能回数は、全てが異なる値となるように変更してもよい。
【0085】
例えば、1番目及び2番目の刃具T1の加工可能回数は、基準加工回数の30回から増大加工回数の50回に変更されている。
【0086】
このように、刃具交換の少ない刃具T2の加工可能回数に刃具交換の多い刃具T1の加工可能回数を変更することにより、刃具T1,T2の交換タイミングが同時となるようにしてもよい。
【0087】
加工パターンDでは、
図10Dに示すように、ワークWを100個生産するためには、刃具T1は1回交換が必要であり、刃具T2は1回交換が必要である。よって、刃具T1,T2の交換本数は合わせて2本である。また、刃具T1,T2の同時交換は1回ある。よって、交換時間は、刃具T1,T2の同時交換が1回であり、刃具T1,T2の同時交換に係る交換時間は40秒となる。ワークWの生産時間は刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)と刃具T1,T2の交換時間と増大加工時の総増大加工時間である100秒とを加算した値として算出することができる。すなわち、ワークWの生産時間は、刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)に140秒(=刃具T1,T2の交換時間(40秒)+総増大加工時間(100秒))を加算することで算出することができる。
【0088】
尚、加工パターンDでは、刃具T1の1本目及び2本目の加工可能時間を増大加工回数である50回に増大させたときに、増大加工時間は50秒となり、総増大加工時間は100(=50秒×2)秒となる。
【0089】
また、加工パターンDにおいては、刃具T1,T2の両方とも100個の生産個数を生産完了した時点において、工具寿命となり、刃具T1,T2ともに交換タイミングを迎えることが可能となる。よって、刃具費用の低コスト化、環境負荷の軽減を図ることができる。
【0090】
また、加工パターンDでは、
図10Dに示すように、刃具T1,T2両方の交換タイミングとワーク生産完了時点とが一致するため、刃具T1,T2の残り刃具寿命はそれぞれ0回である。
【0091】
(加工パターンE:刃具T1の加工可能回数を減少)
加工パターンEにおいては、
図10Eに示すように、刃具T2の加工可能回数を基準加工回数(変更前回数)に設定したままにするとともに、刃具T1の交換回数を基準加工時に維持し、かつ、複数の刃具T1の加工可能回数を基準加工回数から変更後減少回数(変更後回数)に減少させて、ワークWの生産を実施する。尚、加工速度を基準加工時と同じにしたまま、変更後減少回数(変更後回数)にて刃具T1を交換する。
【0092】
このとき、刃具T1の交換回数は、基準加工と同じ3回であるとともに、1番目の刃具T1から4番目の刃具T1の加工可能回数は、2番目の刃具T1の交換タイミングを1番目の刃具T2の交換タイミングに合わせ、4番目の刃具T1の交換タイミングを2番目の刃具T2の交換タイミングに合わせるように設定されている。換言すると、1番目の刃具T1から4番目の刃具T1の加工可能回数の総加工可能回数が生産個数となるとともに、前半の刃具T1グループの総加工可能回数が1番目の刃具T2の加工可能回数と同数となり、後半の刃具T1グループの総加工可能回数が2番目の刃具T2の加工可能回数と同数となるように、1番目の刃具T1から4番目の刃具T1の加工可能回数を変更すればよい。
【0093】
尚、刃具T1の加工個数の切れ目(交換タイミング)と刃具T2の加工個数の切れ目が同じになるように、ワークWの加工に使用する一連の刃具T1の加工可能回数をそれぞれ変更してもよい。
【0094】
加工パターンEにおいては、例えば、1番目から4番目の刃具T1の加工可能回数は、基準加工回数の30回から減少加工回数の25回に変更されている。
【0095】
加工パターンEでは、
図10Eに示すように、ワークWを100個生産するためには、刃具T1は3回交換が必要であり、刃具T2は1回交換が必要である。よって、刃具T1,T2の交換本数は合わせて4本である。また、刃具T1,T2の同時交換は1回ある。よって、交換時間は、刃具T1,T2の同時交換が1回であり、同時交換に係る交換時間は40秒となり、刃具T1の単独交換回数が2回であり刃具T1の交換時間は60秒となり、これらを合計して100秒となる。ワークWの生産時間は刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)と刃具T1,T2の交換時間とを加算した値として算出することができる(加工速度が基準加工時と同じであるため、加工時間の増減がないから)。すなわち、ワークWの生産時間は、刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)に100秒(=刃具T1,T2の交換時間(100秒))を加算することで算出することができる。
【0096】
また、加工パターンEにおいては、刃具T1,T2の両方とも100個の生産個数を生産完了した時点において、工具寿命となり、刃具T1,T2ともに交換タイミングを迎えることが可能となる。よって、刃具費用の低コスト化、環境負荷の軽減を図ることができる。
【0097】
尚、加工パターンEでは、加工速度を基準加工時と同じにしたまま、変更後減少回数にて刃具T1を交換したが、加工速度を基準加工時より増大させてもよい。この場合、刃具T1の加工可能回数は、基準加工回数の30回から減少加工回数の25回に変更すればよい。減少加工回数にて加工する場合には、例えば減少加工時間は3秒となり、総減少加工時間は12秒(=3秒×4)となる。ワークWの生産時間は、刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)と刃具T1,T2の交換時間(100秒)との和から総減少加工時間である12秒を減算することで算出することができる。
【0098】
また、加工パターンEでは、
図10Eに示すように、刃具T1,T2両方の交換タイミングとワーク生産完了時点とが一致するため、刃具T1,T2の残り刃具寿命はそれぞれ0回である。
【0099】
(加工パターンF:刃具T1,T2両方の加工可能回数を変更)
加工パターンFにおいては、
図10Fに示すように、刃具T2の所定本数目(1本目)の加工可能回数を基準加工回数(変更前回数)から変更後増大回数(変更後回数)に増大させるとともに、刃具T1の所定本数目(3本目)のみの加工可能回数を基準加工回数から変更後増大回数(変更後回数)に増大させるとともに刃具T1の所定本数目(3本目)以外の加工可能回数を基準加工回数に設定したままで、ワークWの生産を実施する。
【0100】
このとき、刃具T1の所定本数目は、刃具T1の加工可能回数の増大量(刃具T1増大加工回数)を最も小さく抑えて最後の刃具T1の交換タイミングをワークWの生産個数の生産完了に合わせることができる順番の刃具T1に設定することができる。尚、加工パターンFにおいて、加工パターンBと同様に、刃具T1の所定本数目を算出することができ、3番目の刃具T1の交換タイミングをワークWの生産個数の生産完了に合わせようとする場合には、刃具T1の加工可能回数(個数)を30回から40回に増大させる必要があり、その刃具T1増大加工回数は10回である。
【0101】
また、刃具T2の所定本数目は、刃具T2の加工可能回数の増大量(刃具T2増大加工回数)を最も小さく抑えて刃具T2の交換タイミングを刃具T1の交換タイミングに合わせることができる順番の刃具T2に設定することができる。この場合、加工パターンBと同様に、刃具T2の所定本数目を算出することができ、1番目の刃具T2の交換タイミングを2番目の刃具T1の交換タイミングに合わせようとする場合には、刃具T2の加工可能回数(個数)を50回から60回に増大させる必要があり、その刃具T2増大加工回数は10回である。
【0102】
以上のことから、刃具T1と刃具T2の増大加工回数の和である刃具T1,T2増大加工回数を最も小さく抑えることができるのは、3番目の刃具T1の交換タイミングをワークWの生産個数の生産完了に合わせるとともに1番目の刃具T2の交換タイミングを2番目の刃具T1の交換タイミングに合わせようとする場合であり、刃具T1の所定本数目は3本目であり、刃具T2の所定本数目は1本目であることが理解できる。この場合、1番目及び2番目の刃具T1の加工可能回数は基準加工回数の30回であり、3番目の刃具T1の加工可能回数は増大加工回数の40回である。また、1番目の刃具T2の加工可能回数は増大加工回数の60回であり、2番目の刃具T2の加工可能回数は基準加工回数の50回である。
【0103】
加工パターンFでは、
図10Fに示すように、ワークWを100個生産するためには、刃具T1は2回交換が必要であり、刃具T2は1回交換が必要である。よって、刃具T1,T2の交換本数は合わせて3本である。また、刃具T1,T2の同時交換は1回ある。よって、交換時間は、刃具T1,T2の同時交換が1回であり、同時交換に係る交換時間は40秒となり、刃具T1の単独交換回数が1回であり刃具T1の交換時間は30秒となり、これらを合計して70秒となる。
【0104】
また、ワークWの生産時間は刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)と刃具T1,T2の交換時間と増大加工時の総増大加工時間である20秒とを加算した値として算出することができる。すなわち、ワークWの生産時間は、刃具T1,T2による総切削時間(サイクルタイム)に90秒(=刃具T1,T2の交換時間(70秒)+総増大加工時間(20秒))を加算することで算出することができる。
【0105】
尚、加工パターンFでは、刃具T1の3本目の加工可能時間を増大加工回数である40回に増大させたときに、増大加工時間は10秒となり、刃具T2の1本目の加工可能時間を増大加工回数である60回に増大させたときに、増大加工時間は10秒となり、総増大加工時間は20(=10秒×2)秒となる。
【0106】
また、加工パターンFにおいては、同時交換はあるが、刃具T1は100個の生産個数を生産完了した時点において、工具寿命となり、刃具T1は交換タイミングを迎えることが可能となる。よって、刃具費用の低コスト化、環境負荷の軽減を図ることができる。
【0107】
また、前述した加工パターンFにおいては、1番目及び2番目の刃具T1の加工可能回数を基準加工回数とし、3番目の刃具T1の加工可能回数を増大加工回数とすることにより、3番目の刃具T1の交換タイミングをワークWの生産個数の生産完了に合わせるようにしたが、1番目及び3番目の刃具T1の加工可能回数を基準加工回数とし、2番目の刃具T1の加工可能回数を増大加工回数とすることにより、3番目の刃具T1の交換タイミングをワークWの生産個数の生産完了に合わせるようにしてもよい。この場合には、1番目の刃具T2の加工可能回数は70回(30回(1番目の刃具T1の加工可能回数)+40回(2番目の刃具T1の加工可能回数))となり、増大加工時間は加工可能回数が60回である場合の10秒より長くなる。
【0108】
また、加工パターンFでは、
図10Fに示すように、刃具T1の交換タイミングとワーク生産完了時点とが一致するため、刃具T1の残り刃具寿命は0回であり、ワークWの生産完了時点にて刃具T2の残り刃具寿命が10回である。
【0109】
上述したように、制御装置50は、各加工パターンを算出する際には、刃具の交換タイミングをワークWの生産完了に合わせるように刃具の加工可能回数を変更したり、一の刃具の交換タイミングを他の刃具の交換タイミングに合わせるように刃具の加工可能回数を変更したりしている。換言すると、制御装置50は、ワークWの生産個数に基づいてワークWの加工条件を変更する(変更部)。
【0110】
また、上述したように、制御装置50は、各加工パターンを算出する際に、ワークWの加工条件を変更し、その後ワークWの加工を開始しており、加工パターンの算出すなわち加工条件の変更は、段取り替えなどワークWの加工開始直前またはワークWの加工前のタイミングで実施されている。また、ワークWの加工開始直前またはワークWの加工前のタイミングは、刃具31を交換可能なタイミングであるので、加工パターンの算出すなわち加工条件の変更は、刃具31を交換可能なタイミングに実施されている。
【0111】
尚、制御装置50は、上述したように算出された各加工パターンA~Fを、交換回数、生産時間、各刃具の所定本数目の加工可能回数などを含めて記憶装置50cに記憶する。また、加工パターンは、上述した加工パターンA~Fに限定されない。
【0112】
(優先項目の表示・選択)
制御装置50は、上述したように加工パターンを算出した後に、ステップS110において、表示装置50bに優先項目を表示する(優先項目表示部)。優先項目は、ワークWを加工する際に作業者が優先したい項目であり、ワークWの生産時間、加工工具交換回数、加工工具寿命が挙げられる。これら優先項目は、表示装置50bの表示部50b1に表示される優先項目選択画面51に表示される。
図5に示すように、優先項目選択画面51には、交換回数選択部51aと、生産時間選択部51bと、が表示され、交換回数選択部51a、及び生産時間選択部51bは、作業者の操作により選択可能である。
【0113】
作業者が、優先項目選択画面51に表示された優先項目から所望の優先項目を選択すると(ステップS112にて「YES」)、制御装置50は、ステップS114において、選択された優先項目にて昇順に加工パターンを交換回数パターン選択画面52に表示する。一方、制御装置50は、作業者が所望の優先項目を選択するまで(ステップS112にて「NO」)、優先項目選択画面51に優先項目を表示させ続ける。ステップS112において、制御装置50は、作業者が優先項目選択画面51に表示された優先項目から所望の優先項目を選択操作した場合には、所望の優先項目が選択されたと判定する(優先項目選択部)。
【0114】
(加工パターンの表示・選択)
制御装置50は、作業者が選択した優先項目にて昇順に並べた加工パターン一覧を表示装置50bに表示する(加工パターン表示部)。例えば、作業者が、交換回数選択部51aを選択した場合には、制御装置50は、ステップS114において、選択された優先項目である交換回数にて昇順に加工パターンを交換回数パターン選択画面52に表示する。具体的には、
図6Aに示すように、交換回数パターン選択画面52には、1番目から5番目までのパターン選択部52a~52eが表示されている。各パターン選択部は、刃具の交換回数及び加工パターンを有している。本実施形態では、例えば、1番目のパターン選択部52aは、交換回数が2回であり、加工パターンが加工パターンDである。2番目のパターン選択部52bは、交換回数が3回であり、加工パターンが加工パターンFである。3番目のパターン選択部52cは、交換回数が3回であり、加工パターンが加工パターンBである。4番目のパターン選択部52dは、交換回数が3回であり、加工パターンが加工パターンCである。5番目のパターン選択部52eは、交換回数が4回であり、加工パターンが加工パターンEである。
【0115】
尚、制御装置50は、ステップS114において、交換回数パターン選択画面52の代わりに、生産時間が追加された交換回数パターン選択画面53(
図6B参照)を表示するようにしてもよい。このとき、交換回数が同数である場合には、生産時間にて昇順に加工パターンを表示している。これによれば、交換回数が同数である場合に、生産時間の少ないほうを確実かつ容易に作業者が選択することができる。
【0116】
また、例えば、作業者が、生産時間選択部51bを選択した場合には、制御装置50は、ステップS114において、選択された優先項目である生産時間にて昇順に加工パターンを生産時間パターン選択画面54に表示する。具体的には、
図7Aに示すように、生産時間パターン選択画面54には、1番目から5番目までのパターン選択部54a~54eが表示されている。1番目のパターン選択部54aは、生産時間が最も少ない加工パターンが生産時間と合わせて表示されている。本実施形態では、例えば、1番目のパターン選択部54aは、生産時間が90秒であり、加工パターンが加工パターンFである。2番目のパターン選択部54bは、生産時間が100秒であり、加工パターンが加工パターンBである。3番目のパターン選択部54cは、生産時間が100秒であり、加工パターンが加工パターンEである。4番目のパターン選択部54dは、生産時間が105.5秒であり、加工パターンが加工パターンCである。5番目のパターン選択部54eは、生産時間が140秒であり、加工パターンが加工パターンDである
【0117】
尚、制御装置50は、ステップS114において、生産時間パターン選択画面54の代わりに、交換回数が追加された生産時間パターン選択画面55(
図7B参照)を表示するようにしてもよい。このとき、生産時間が同数である場合には、交換回数にて昇順に加工パターンを表示している。これによれば、生産時間が同数である場合に、交換回数の少ないほうを確実かつ容易に作業者が選択することができる。
【0118】
また、上述したフローチャートにおいては、加工パターンを算出した(ステップS108)後に、優先項目を表示(ステップS110)するようにしたが、優先項目を表示した後に、加工パターンを算出するようにしてもよい。
【0119】
(ワーク加工)
作業者が、交換回数パターン選択画面52に表示された加工パターンから所望の加工パターンを選択すると(ステップS116にて「YES」)、制御装置50は、ステップS118において、選択された加工パターンにてワークWの加工を実施する。一方、制御装置50は、作業者が所望の加工パターンを選択するまで(ステップS116にて「NO」)、交換回数パターン選択画面52に加工パターンを表示させ続ける。ステップS116において、制御装置50は、作業者が交換回数パターン選択画面52に表示された加工パターンから所望の加工パターンを選択操作した場合には、所望の加工パターンが選択されたと判定する(加工パターン選択部)。
【0120】
制御装置50は、ステップS118において、選択された加工パターンにてワークWの加工を実施する。制御装置50は、選択された加工パターンの情報(交換回数、生産時間、各刃具の所定本数目の加工可能回数など)を記憶装置50cから読み込み、その加工パターン情報に基づいてワークWの加工を実施する。
【0121】
例えば、交換回数パターン選択画面52にて加工パターンDが選択された場合には、制御装置50は、1番目及び2番目の刃具T1の加工可能回数を基準加工回数の30回から増大加工回数の50回に変更するとともに、刃具T2の加工可能回数を基準加工回数(変更前回数)の50回に設定したまま、生産個数が100個のワークWの加工を実施する。これにより、刃具T1,T2の各交換回数を1回にするとともに最後の刃具T1,T2の交換タイミングをワークWの生産完了に合わせることができ、刃具の交換本数を2本にし、ワークWの生産時間のうち総増大加工時間を140秒にすることができる。
【0122】
(本実施形態の作用効果)
上述した実施形態によるワーク加工装置(工作機械10)は、複数の加工工具(刃具31)を有し、刃具31によってワークWを加工する工作機械10において、ワークWの生産個数に基づいてワークWの加工条件を変更可能である。
【0123】
本実施形態によれば、工作機械10において、ワークWの生産個数に基づいてワークWの加工条件を変更することが可能となる。例えば、加工条件としては、ワークWの生産時間、加工工具交換回数、及び加工工具寿命が挙げられる。ワークWの生産個数に基づいてワークWの加工条件を変更することにより、少なくとも2つ以上の刃具31の交換タイミングを互いに一致させたり、刃具31の交換タイミングを段取り替えタイミングに一致させたりすることが可能となる。よって、加工工具交換作業における無駄を省くことができる。
【0124】
また、刃具31の交換回数をできるだけ低減することができ、ひいては、刃具31にかかる費用を低減することができる。さらに、ワークWの生産完了と刃具31の交換タイミングを合わせることにより、ワークWの生産完了時点にて使いかけの(寿命の残った)刃具31が発生するのを抑制することができる。よって、使いかけの刃具31の管理の負担を低減することができ、また、使いかけの刃具31の廃棄を低減することができひいては環境負荷を低減することができる。さらに、ワークWの加工精度とサイクルタイムとのバランスを所望のバランスに設定することが可能となる。
【0125】
また、本実施形態において、加工条件は、ワークWの生産時間、加工工具交換回数、及び、加工工具寿命の何れかを優先項目として優先して変更可能である。これによれば、作業者が優先したい優先項目を優先して加工条件を変更することが可能となり、優先項目に重点をおいた加工パターンを算出することが可能となり、ひいては、作業者が所望する加工パターンにてワークWの加工を実施することが可能となる。
【0126】
また、本実施形態において、工作機械10は、作業者の選択操作によって優先項目を選択できる選択部(優先項目選択画面51)を有する。これによれば、作業者が優先したい優先項目を確実に選択操作することができ、ひいては、作業者が所望する加工パターンにてワークWの加工を確実に実施することが可能となる。
【0127】
また、本実施形態において、工作機械10は、加工条件、加工工具寿命、及び、生産時間の関係Rから、加工条件を変更する。これによれば、作業者が優先したい優先項目を優先して加工条件を正確かつ確実に変更することが可能となり、優先項目に重点をおいた加工パターンを正確かつ確実に算出することが可能となり、ひいては、作業者が所望する加工パターンにてワークWの加工を正確かつ確実に実施することが可能となる。
【0128】
また、本実施形態において、工作機械10は、関係Rを事前に学習する。これによれば、事前に学習した関係Rを使用して、加工条件を変更することが可能となり、作業者が優先したい優先項目を優先して加工条件をより正確かつ確実に変更することが可能となる。
【0129】
(変形例)
尚、上述した実施形態においては、加工条件の変更すなわち加工パターンの算出は、ワークWの加工開始直前またはワークWの加工前のタイミングで実施されているが、刃具31を交換可能なタイミングに実施されればよく、例えば、生産開始後の生産中(加工中)において、複数の刃具31のうち一の刃具31の交換タイミングで実施するようにしてもよく、複数の刃具31のうち2以上の刃具31の同時交換のタイミングで実施するようにしてもよい。このように、加工条件の変更は、刃具31の交換可能なタイミングにて実施される。これによれば、ワークWの加工途中でなく、ワークWの加工停止中に加工条件を変更することができるので、加工条件の変更を適切なタイミングにて実施することが可能となる。
【0130】
また、上述したように、加工条件の変更は、ワークWの生産開始直前のタイミングを含めて加工工具の交換可能なタイミングにて実施される。しかし、これに限定されず、加工条件の変更は、刃具交換カウンタのリセットのタイミングで実施されるようにしてもよい。
【0131】
また、上述した実施形態においては、加工パターンを算出する際に、刃具が2つの場合について説明したが、刃具が3つ以上である場合についても、2つの場合と同様に、刃具の交換タイミングをワークWの生産完了タイミングに合わせたり、一の刃具の交換タイミングを他の刃具の交換タイミングに合わせたりするように、各刃具の加工条件を変更することにより複数の加工パターンを算出すればよい。
【0132】
また、上述した実施形態において、刃具毎に1回の刃具交換作業に係る時間、及び、複数の刃具を同時に交換する際にN本を同時交換するN本同時交換作業時間を記憶装置50cに記憶するようにしてもよい。これによれば、刃具の交換に要する時間を精度よく算出することができ、ひいてはより精度の高い加工パターンを算出することが可能となる。
【0133】
また、上述した実施形態においては、加工工具として切削工具を使用するようにしたが、ワークWを加工する他の加工工具を使用するようにしてもよい。また、上述した実施形態においては、主軸、工具台及び搬送装置が2つ設けられたデュアルガントリータイプの工作機械10であったが、主軸、工具台及び搬送装置が1つまたは3つ以上設けられた工作機械を採用することも可能である。また、上述した実施形態においては、搬送装置10bを1つ設けたが、2以上設けるようにしてもよい。
【0134】
また、上述した実施形態においては、関係Rを事前に学習するようにしたが、このとき、刃具31の切削に係るモータである主軸20aのサーボモータ22や工具台移動装置33を駆動させるサーボモータ33a1,33b1のトルク(サーボトルク)も合わせて学習するようにしてもよい。これによれば、より精度よく関係Rを学習することが可能となり、ひいてはより精度の高い加工パターンを算出することが可能となる。
【0135】
また、上述した実施形態において、加工工具寿命を選択できる加工工具寿命選択部が選択された場合には、パターン選択画面には、残り刃具寿命が昇順に並べられた加工パターンが表示される。例えば、残り刃具寿命が0回である、加工パターンD、加工パターンB、加工パターンC、及び加工パターンEの順番に表示され、引き続き、残り刃具寿命が10回である加工パターンF、及び、残り刃具寿命が20回である加工パターンAの順番に表示される。
【0136】
また、上述した実施形態において、優先項目にエコモードを追加してエコモードを選択可能としてもよい。エコモードは、残り刃具寿命が0であり、交換回数が少なく生産時間が早い加工パターンを自動的に選出することが可能である。
【符号の説明】
【0137】
10…工作機械(ワーク加工装置)、31,T1,T2…刃具(加工工具)、50…制御装置、51…優先項目選択画面(選択部)、R…関係、W…ワーク。