(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115103
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】テーブル
(51)【国際特許分類】
B60N 3/00 20060101AFI20240819BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20240819BHJP
B60N 3/10 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B60N3/00 A
A47C7/62 B
B60N3/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020585
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】591283501
【氏名又は名称】備前発条株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】山根 教代
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳三
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慶倫
(72)【発明者】
【氏名】田村 健吾
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 穂高
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 毅
【テーマコード(参考)】
3B084
3B088
【Fターム(参考)】
3B084JA04
3B088AA02
3B088CA03
(57)【要約】
【課題】
前方シートの背もたれの傾斜角度が変わっても、天板部を水平にして使用することができる後方シート用のテーブルを提供する。
【解決手段】
リクライニングシートの背もたれの背面に取り付けられる後方シート用のテーブル1を、物を載せるための天板部10と、背もたれ背面に取り付けられる取付基部20と、取付基部20に対する天板部10の角度を調節するための角度調節機構30とを備えたものとし、背もたれのリクライニング角度に応じて、天板部10の角度を調節できるようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニングシートの背もたれの背面に取り付けられる後方シート用のテーブルであって、
物を載せるための天板部と、
背もたれ背面に取り付けられる取付基部と、
取付基部に対する天板部の角度を調節するための角度調節機構と
を備え、
背もたれのリクライニング角度に応じて、天板部の角度を調節できるようにした
ことを特徴とするテーブル。
【請求項2】
天板部の前端側が取付基部に対して軸支されることによって、天板部を、その後端が上向きとなる格納位置と、その後端が後ろ向きとなる最下方位置との間で上下回動できるようにするとともに、
角度調節機構が、
天板部が格納位置となったときに、天板部の上方回動及び下方回動の双方が許容されたロック解除状態を発現させ、
天板部が最下方位置となったときに、天板部の上方回動を許容しながらも下方回動が規制されたロック状態を発現させる
ものとされた
請求項1記載のテーブル。
【請求項3】
角度調節機構が、
取付基部又は天板部のうち一方に固定される第一部材と、
取付基部又は天板部のうち他方に固定される第二部材と、
第一部材に軸支されて、第二部材に固定されたロックドラムと、
ロックドラムに外嵌されたコイルばねからなり、その一端が第一部材に固定された固定端とされて、その他端が第一部材に固定されない自由端とされたロックばねと、
天板部が格納位置となったときに、ロックばねの自由端を緩み方向に変位させることによってロック解除状態を発現させるロック解除カムと、
天板部が最下方位置となったときに、ロックばねの自由端を締付方向に変位させることによってロック状態を発現させるロックカムと、
ロックばねの自由端を緩み方向に変位したロック解除位置で保持する自由端保持部と
を有するばねロック機構とされた
請求項2記載のテーブル。
【請求項4】
第一部材が取付基部に固定され、
第二部材が天板部に固定された
請求項2記載のテーブル。
【請求項5】
第二部材が、天板部を横幅方向に渡るシャフト部材によって構成され、
前記シャフト部材の一端側に、ばねロック機構が設けられ、
前記シャフト部材の他端側に、フリーヒンジが設けられた
請求項4記載のテーブル。
【請求項6】
取付基部がカバー部材によって覆われ、
天板部を格納位置としたときに、カバー部材及び天板部の上縁又は側縁をアシストグリップとして利用できるようにした
請求項1~5いずれか記載のテーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニングシートの背もたれの背面に取り付けられる後方シート用のテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や列車や航空機等、シートが前後に並べられる乗り物では、前方シートの背もたれの背面に、後方シート用のテーブルが取り付けられることがある。背もたれの背面に取り付けて使用される後方シート用のテーブルとしては、特許文献1,2等に示されるように、これまでに各種のものが提案されている。特許文献1のテーブルは、必要に応じて面積を広げて使用できるものとなっている。また、特許文献2のテーブルは、天板部の位置を高さ方向で変えることができるものとなっている。これら特許文献1,2のテーブルを採用することによって、後方シートに着席する人の体格等に応じた適切な状態でテーブルを使用することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-144928号公報
【特許文献2】特開2019-048506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、乗り物のシートは、背もたれの傾斜角度を調節可能なリクライニングシートとなっていることも多い。この場合において、前方シートの背もたれが起立しているときに、後方シート用のテーブルが水平になるように設定していると、前方シートの背もたれが後側に倒されたとき(前方シートがリクライニングされたとき)に、後方シート用のテーブルが傾いた状態となってしまう。また逆に、前方シートが後側に倒されたときに、後方シート用のテーブルが水平になるように設定していると、前方シートの背もたれが起立しているときに、後方シート用のテーブルが逆側に傾いた状態となってしまう。このように、リクライニングシートでは、後方シート用のテーブルを水平な状態で使用できない場合が生じる。このため、飲み物が入ったコップ等をテーブルに置きにくくなる等、テーブルを使いにくくなる。同様の問題は、映画館やホールのシート等、乗り物以外のシートでも生じ得る。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、前方シートの背もたれの傾斜角度が変わっても、天板部を水平にして使用することができる後方シート用のテーブルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
リクライニングシートの背もたれの背面に取り付けられる後方シート用のテーブルであって、
物を載せるための天板部と、
背もたれ背面に取り付けられる取付基部と、
取付基部に対する天板部の角度を調節するための角度調節機構と
を備え、
背もたれのリクライニング角度に応じて、天板部の角度を調節できるようにした
ことを特徴とするテーブル
を提供することによって解決される。
【0007】
本発明のテーブルでは、天板部の角度を調節できるため、前方シートの背もたれの傾斜角度が変わっても、天板部を水平にすることができる。このため、コップやノートパソコン等、倒れたり落ちたりするとまずい物を天板部に載せやすくなる。また、テーブルを使用した作業も行いやすくなる。したがって、テーブルを使用しやすくして利便性を高めることが可能になる。
【0008】
本発明のテーブルにおいて、角度調節機構の具体的な態様は、特に限定されないが、
天板部の前端側を取付基部に対して軸支することによって、天板部を、その後端が上向きとなる格納位置と、その後端が後ろ向きとなる最下方位置との間で上下回動できるようにするとともに、
角度調節機構を、
天板部が格納位置となったときに、天板部の上方回動及び下方回動の双方が許容されたロック解除状態を発現させ、
天板部が最下方位置となったときに、天板部の上方回動を許容しながらも下方回動が規制されたロック状態を発現させる
ものとすることが好ましい。
【0009】
これにより、格納位置にある天板部を、最下方位置まで一旦降ろした後、徐々に上昇させていくことで、その天板部を所望の角度に容易に設定することが可能になる。このような動作を行う角度調節機構は、以下のように、ばねロック機構を採用することで実現することができる。
【0010】
すなわち、
角度調節機構を、
取付基部又は天板部のうち一方に固定される第一部材と、
取付基部又は天板部のうち他方に固定される第二部材と、
第一部材に軸支されて、第二部材に固定されたロックドラムと、
ロックドラムに外嵌されたコイルばねからなり、その一端が第一部材に固定された固定端とされて、その他端が第一部材に固定されない自由端とされたロックばねと、
天板部が格納位置となったときに、ロックばねの自由端を緩み方向に変位させることによってロック解除状態を発現させるロック解除カムと、
天板部が最下方位置となったときに、ロックばねの自由端を締付方向に変位させることによってロック状態を発現させるロックカムと、
ロックばねの自由端を緩み方向に変位したロック解除位置で保持する自由端保持部と
を有するばねロック機構とする
ことによって実現することができる。
【0011】
このばねロック機構においては、第一部材を天板部に固定し、第二部材を取付基部に固定してもよい。しかし、この場合には、ロックばねや自由端保持部を、角度が調節される天板部側に組み込み、それらの部品を、取付基部に対して動かない状態で固定されたロックドラムに対して組み付ける必要が生じる。このため、部品の組み付けが難しくなるだけでなく、角度調節機構をコンパクトに設計しにくくなる。したがって、第一部材を取付基部に固定し、第二部材を天板部に固定することが好ましい。これにより、部品の組み付けが容易になるだけでなく、角度調節機構をコンパクトに設計することも可能になる。
【0012】
本発明のテーブルにおいて、上記のばねロック機構を採用する場合には、
第二部材を、天板部を横幅方向に渡るシャフト部材によって構成し、
前記シャフト部材の一端側に、ばねロック機構を設け、
前記シャフト部材の他端側に、フリーヒンジを設ける
ことも好ましい。
これにより、天板部を角度調節可能(回動可能)としながらも、バランスよくしっかりと支持することが可能になる。
【0013】
本発明のテーブルにおいては、
取付基部をカバー部材によって覆い、
天板部を格納位置としたときに、カバー部材及び天板部の上縁又は側縁をアシストグリップ(シートに立ち座りする際等に手で掴むことができるグリップ)として利用できるようにする
ことも好ましい。
これにより、背もたれにアシストグリップを別途設ける必要がなくなる。このため、背もたれに付ける部品点数を減らし、シートを軽量化することができる。この構成は、乗り物のシートで特に好適に採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、前方シートの背もたれの傾斜角度が変わっても、天板部を水平にして使用することができる後方シート用のテーブルを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】背もたれの背面に取り付けた状態のテーブルを示した斜視図である。
【
図2】天板部を格納位置とした状態のテーブルを示した斜視図である。
【
図3】天板部を使用位置とした状態のテーブルを示した斜視図である。
【
図5】テーブルの天板部を最下方位置と格納位置との間で変化させている様子を示した側面図である。
【
図6】角度調節機構の分解斜視図と組付斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のテーブルの実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで好適な実施形態であり、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態に限定されない。本発明のテーブルには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0017】
1.テーブルの概要
図1は、背もたれ101の背面に取り付けた状態のテーブル1を示した斜視図である。本発明のテーブル1は、
図1に示すように、シート100の背もたれ101の背面に取り付けるものとなっており、シート100の後方シート(図示省略)に着席した人が使用するものとなっている。シート100は、背もたれ101の傾斜角度を調節可能なリクライニングシーとなっている。
【0018】
図2は、天板部10を格納位置とした状態のテーブル1を示した斜視図であり、
図3は、天板部10を最下方位置とした状態のテーブル1を示した斜視図である。本実施形態のテーブル1では、テーブル1を使用しないときには、
図2に示すように、天板部10をその後端(天板部10を水平にしたときに後側を向く端部。以下同じ。)が上向きとなる格納位置とし、テーブル1を使用するときには、
図3に示すように、天板部10をその後端が後ろ向きとなる使用位置とすることができるようになっている。
【0019】
このテーブル1は、
図4に示すように、天板部10と、取付基部20と、角度調節機構30とを備えている。
図4は、テーブル1の分解斜視図である。
図4においては、ボルトやビス等、各部材を連結固定するための細かい部品等の符号を省略している。
【0020】
天板部10は、物を載せるための板状の部分となっている。取付基部20は、テーブル1を背もたれ101(
図1)の背面に取り付けるための部分となっている。この取付基部20は、前後一対のカバー部材40で覆うようにしている。さらに、角度調節機構30は、取付基部20に対する天板部10の角度を調節するための機構となっている。
【0021】
この角度調節機構30によって、天板部10の位置(角度)を、
図5(a)~(c)に示す使用位置と、
図5(d)に示す格納位置との間で、変化させることができるようになっている。
図5は、テーブル1の天板部10を最下方位置(天板部10の使用位置のうち、天板部10が最も下側となる位置。
図5(a)を参照。以下同じ。)と格納位置との間で変化させている様子を示した側面図である。天板部10の使用位置を、
図5(a)~(c)に示すように複数箇所で調節できるようにすることによって、前方のシート100の背もたれ101(
図1)の傾斜角度が変わっても、天板部10を水平にして使用することができるようになっている。
【0022】
以下においては、格納位置(
図5(d))に近づける向きでの天板部10の回動を「上方回動」と呼び、最下方位置(
図5(a))に近づける向きでの天板部10の回動を「下方回動」と呼ぶことがある。
【0023】
2.角度調節機構
角度調節機構30について、
図6を参照しながら、より詳しく説明する。
図6(a)は、角度調節機構30の分解斜視図であり、
図6(b)は、角度調節機構30の組付斜視図である。本実施形態のテーブル1においては、
図6(a)に示すように、角度調節機構30を、第一部材31と、第二部材32(
図4)と、ロックドラム33と、ロックばね34と、内設部材35と、蓋部材36とからなる「ばねロック機構」で実現している。
【0024】
2.1 第一部材
本実施形態のテーブル1において、第一部材31は、取付基部20(
図4)に固定され、背もたれ101(
図1)に対して動かない状態とされる。第一部材31は、取付基部20(
図4)の一方の側縁に沿って固定できるように、上下方向に所定の長さを有する形態を有している。この第一部材31は、水平断面溝型を為しており、その下端部付近には、ロックドラム33を軸支するための貫通孔31aが形成されている。貫通孔31aの周囲には、バーリング加工によって形成した環状壁部31bを設けている。この環状壁部31bによって、貫通孔31aにロックドラム33を安定して軸支できるようになっている。
【0025】
2.2 第二部材
本実施形態のテーブル1において、第二部材32(
図4)は、天板部10に対して動かない状態で固定される。第二部材32は、天板部10(
図4)を横幅方向(左右方向)に渡るシャフト部材としているところ、この第二部材32(シャフト部材)の長さ方向における2箇所で、天板部10に固定するようにしている。天板部10の前端(天板部10を水平にしたときに前側を向く端部。以下同じ。)には、第二部材32(シャフト部材)に固定するための固定ブラケット11を左右一対に設けている。このように、第二部材32(シャフト部材)を天板部10に固定しているため、天板部10を上方回動又は下方回動させると、それに応じて第二部材32(シャフト部材)もその中心線回りに回動するようになっている。
【0026】
第二部材32の一端側は、角度調節機構30(ばねロック機構)の主要部品(ロックドラム33やロックばね34等)が設けられ、第二部材32の他端側には、フリーヒンジ50(
図4)が設けられている。フリーヒンジ50は、取付基部20における、第一部材31が固定される側とは反対側の側縁に固定される。このため、第二部材32は、角度調節機構30とフリーヒンジ50とによって、その両端を軸支された状態となっている。
【0027】
2.3 ロックドラム
ロックドラム33は、第一部材31に軸支される。ロックドラム33の一端側には、第二部材32(
図4)が同軸上に一体的に固定される。このため、天板部10(
図4)を上方回動又は下方回動させると、その回動の力が第二部材32(シャフト部材)を介してロックドラム33にも伝わり、ロックドラム33も、その中心線回りに回動するようになっている。このロックドラム33には、大径部と小径部とを設けているところ、その小径部を、第一部材31の貫通孔31aに軸支させる。ロックドラム33の大径部の外周部には、後述するロックばね34が外嵌される。ロックドラム33の大径部の周壁部分は、一部の区間を切り欠いて形成しており、その切り欠いた部分には、ロック解除カムαと、ロックカムβとを設けている。
【0028】
2.4 ロックばね
ロックばね34は、弾性線材(金属線材等)をコイル状(螺旋状)に巻回したコイルばねとなっている。このロックばね34の内径(ロックばね34に応力等を掛けておらず、ロックばね34が自然長状態にあるときのコイル部分の内径)は、ロックドラム33の大径部の外径よりも数%小さくなっている。このロックばね34を弾性的に拡径させ、そのロックばね34の内側にロックドラム33を挿入して、ロックばね34を弾性的に縮径させることで、ロックばね34をロックドラム33の大径部に外嵌させている。このため、ロックばね34は、ロックドラム33を締め付けた状態となっている。ロックばね34の一端側は、第一部材31に固定された固定端34aとされ、ロックばね34の他端側は、第一部材31に固定されない自由端34bとされる。ロックばね34の自由端34bは、「U」字状に折り曲げており(ロックばね34の径方向外側に折り曲げた後、径方向内側に折り返しており)、その先端部分(径方向内側に折り返された部分)が、ロックドラム33の周壁部分における上記の切り欠いた部分に入れられている。
【0029】
ロックばね34がロックドラム33を締め付けている状態においては、ロックドラム33は、ロックばね34に対して一方(ロックばね34の巻回方向のうち、ロックばね34の自由端34b側から固定端34a側に向かう向き。本実施形態のテーブル1においては、天板部10が上方回動するときにロックドラム33が回動する向きに設定。)にしか回動できず、他方(ロックばね34の巻回方向のうち、ロックばね34の固定端34a側から自由端34b側に向かう向き。本実施形態のテーブル1においては、天板部10が下方回動するときにロックドラム33が回動する向きに設定。)には回動できない状態となっている。すなわち、ロックばね34がロックドラム33を締め付けている状態においては、天板部10の上方回動が許容されながらも、天板部10の下方回動が規制された「ロック状態」が発現する。
【0030】
ロックばね34がロックドラム33を締め付けている状態であっても、天板部10の上方回動が許容されるのは、以下の理由による。すなわち、天板部10を上方回動しようとしたときには、ロックばね34の内周面とロックドラム33の外周面との間に生ずる摩擦力によって、ロックばね34のコイル部分が巻き戻される向き(上記のコイル部分の巻回方向のうち、ロックばね34の自由端34b側から固定端34a側に向かう向き)に押されるようになる。このため、ロックばね34が、ロックドラム33に対して僅かに緩んだ状態となるからである。以下においては、ロックばね34の巻回方向のうち、ロックばね34の自由端34b側から固定端34a側に向かう向きを、「緩み方向」と呼ぶことがある。
【0031】
これに対し、天板部10を下方回動しようとしたときには、上記の摩擦力(ロックばね34の内周面とロックドラム33の外周面との間に生ずる摩擦力)が先ほどとは逆向きに生ずるため、その摩擦力によって、ロックばね34のコイル部分が巻き締められる向き(上記の弾性線材の巻回方向のうち、ロックばね34の固定端34a側から自由端34b側に向かう向き)に押されるようになる。このため、ロックばね34がロックドラム33をよりきつく締め付けた状態となり、その向きでのロックドラム33の回動(天板部10の下方回動)が規制される。以下においては、ロックばね34の巻回方向のうち、ロックばね34の固定端34a側から自由端34b側に向かう向きを「締付方向」と呼ぶことがある。
【0032】
以上のように、ロックばね34がロックドラム33を締め付けている状態においては、天板部10の上方回動が許容されながらも、天板部10の下方回動が規制された「ロック状態」が発現するところ、本実施形態のテーブル1においては、天板部10を下方回動させ、天板部10が
図5(a)に示す最下方位置となったときに、この「ロック状態」が発現するようにしている。具体的には、天板部10が最下方位置となったときに、上記のロックカムβがロックばね34の自由端34bに当接し、その自由端34bを締付方向に変位させるようにしている。このため、天板部10を、最下方位置まで一旦降ろした後、徐々に上昇させていくことで、その天板部10を所望の角度に容易に設定することができるようになっている。また、「ばねロック機構」を採用したことによって、天板部10の角度を無段階で調節することも可能となっている。
【0033】
上記の「ロック状態」は、天板部10を上方回動させていき、天板部10が
図5(d)に示す格納位置に達するまで継続されるようになっている。逆に言うと、天板部10が格納位置に達すると、「ロック状態」が解除されるようにしている。具体的には、天板部10が格納位置となったときに、上記のロック解除カムαがロックばね34の自由端34bに当接し、その自由端34bを緩み方向に変位させるようにしている。このとき緩み方向に変位した自由端34bは、後述する内設部材35に設けた自由端保持部γに保持される。これにより、ロックばね34がロックドラム33に対して緩んだ状態となり、ロックドラム33を、ロックばね34に対していずれの方向にも回動することができるようになる。すなわち、天板部10の上方回動及び下方回動の双方が許容された「ロック解除状態」が発現する。
【0034】
ただし、「ロック解除状態」においても、ロックドラム33は、ロックばね34から摩擦力を受けるため、天板部10を下方回動させる際には、抵抗力が生ずるようになっている。このため、「ロック解除状態」にあっても、天板部10は、自重程度では下方回動せず、それを手で押し下げる等、ある程度の外力が加えられない限りは、下方回動しないようになっている。同様に、天板部10を上方回動させる際にも、ある程度の抵抗力が生ずるようになっている。このため、背もたれ101(
図1)に振動が加わる等しても、その振動程度では、天板部10がバタつかないようになっている。
【0035】
上記の「ロック解除状態」は、天板部10を下方回動させていき、天板部10が
図5(a)に示す最下方位置に達し、上記の「ロック状態」が発現するまで(ロックカムβがロックばね34の自由端34bに当接し、その自由端34bを締付方向に変位させるまで)継続される。既に述べたように、「ロック状態」になると、天板部10の下方回動が規制される。
【0036】
ところで、「ロック状態」において天板部10を下方回動しようとしても、ロックばね34がロックドラム33をよりきつく締め付けた状態となるため、その向きでのロックドラム33の回動(天板部10の下方回動)が規制されることについては、既に説明した。とは言え、天板部10に加わる下向きの力がさらに強くなり、その力がロックばね34とロックドラム33との間の最大静止摩擦力を超えると、ロックドラム33がロックばね34に対して滑る(スリップする)。このため、下向きの異常な負荷が天板部10に掛かった際には、天板部10の後端が下向きとなるまで、天板部10が下方回動するようになっている。このことは、フェイルセーフの観点からも重要である。
【0037】
例えば、テーブル1が自動車のシート100に取り付けられたものである場合には、その自動車が追突すると、その自動車の乗員には、前向きの慣性力が働く。このとき、テーブル1の天板部10が
図5(a)に示す最下方位置にあると、天板部10の後端が、そのテーブル1を使用している人の身体に突き当たるおそれがある。このとき、天板部10が背もたれ101(
図1)から後ろ向きに突き出た状態のままであると、その人が負傷するおそれがあるところ、その人の身体から受けた力によって天板部10が下方回動するようにしておけば、負傷のリスクを大幅に軽減することができる。
【0038】
2.5 内設部材
内設部材35は、第一部材31の溝の内側に固定される。この内設部材35には、ロック解除カムαによって緩み方向に変位されたロックばね34の自由端34bをその位置で保持するための自由端保持部γが設けられている。既に述べたように、ロックばね34の自由端34bは、「U」字状に折り曲げられている(ロックばね34の径方向外側に折り曲げられた後、径方向内側に折り返されている)ところ、ロックばね34の自由端34bにおける、ロックばね34の外周部よりも外側に突き出た部分を、この自由端保持部γで保持するようにしている。これにより、自由端保持部γをロックドラム33の外側に配置することができ、角度調節機構30(ばねロック機構)をよりシンプルに設計することが可能となっている。
【0039】
自由端保持部γは、第一部材31そのものに設けることもできる。しかし、この場合には、第一部材31をより複雑な形態に加工する必要が生じる。この点、本実施形態のテーブル1のように、第一部材31とは別体の内設部材35に自由端保持部γを設け、その内設部材35を第一部材31に対して固定することで、第一部材31を複雑な形態に加工することなく、自由端保持部γを設けることが可能になる。
【0040】
2.6 蓋部材
蓋部材36は、第一部材31の下端側を覆うように、第一部材31に対して固定される。この蓋部材36によって、ロックばね34等の部品を保護することや、ロックドラム33をより安定して軸支することが可能となっている。
【0041】
2.7 角度調節機構による角度の調節範囲
角度調節機構30による天板部10の角度の調節範囲(本実施形態のテーブル1においては、天板部10が最下方位置(
図5(a))から格納位置(
図5(d))となるまでの天板部10の回動角度)は、特に限定されないが、通常、45°以上とされる。角度調節機構30による天板部10の角度の調節範囲は、60°以上とすることが好ましく、70°以上とすることがより好ましい。ただし、角度調節機構30による天板部10の角度の調節範囲を広くしすぎても、あまり意味はない。このため、角度調節機構30による天板部10の角度の調節範囲は、通常、135°以下とされる。角度調節機構30による天板部10の角度の調節範囲は、120°以下とすることが好ましく、110°以下とすることがより好ましい。本実施形態のテーブル1においては、角度調節機構30による天板部10の角度の調節範囲を、約90°に設定している。
【0042】
3.その他
本実施形態のテーブル1においては、
図4に示すように、取付基部20をカバー部材40によって覆う構造を採用するとともに、天板部10が上向きとなる位置を格納位置としたところ、天板部10を格納位置とし、天板部10がカバー部材40に重なり合ったときに、カバー部材40及び天板部10の上縁及び側縁を手で掴むことができるようにしている。このため、天板部10が格納位置にあるときのテーブル1を、アシストグリップ(シートに立ち座りする際等に手で掴むことができるグリップ)として利用することができるようになっている。
【符号の説明】
【0043】
1 テーブル
10 天板部
11 固定ブラケット
20 取付基部
30 角度調節機構(ばねロック機構)
31 第一部材
31a 貫通孔
31b 環状壁部
32 第二部材
33 ロックドラム
34 ロックばね
34a 固定端
35 内設部材
36 蓋部材
40 カバー部材
50 フリーヒンジ
100 シート
101 背もたれ
α ロック解除カム
β ロックカム
γ 自由端保持部
【手続補正書】
【提出日】2024-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニングシートの背もたれの背面に取り付けられる後方シート用のテーブルであって、
物を載せるための天板部と、
背もたれ背面に取り付けられる取付基部と、
取付基部に対する天板部の角度を調節するための角度調節機構と
を備え、
天板部の前端側が取付基部に対して軸支されることによって、天板部を、その後端が上向きとなる格納位置と、その後端が後ろ向きとなる最下方位置との間で上下回動できるようにするとともに、
角度調節機構が、
取付基部又は天板部のうち一方に固定される第一部材と、
取付基部又は天板部のうち他方に固定される第二部材と、
第一部材に軸支されて、第二部材に固定されたロックドラムと、
ロックドラムに外嵌されたコイルばねからなり、その一端が第一部材に固定された固定端とされて、その他端が第一部材に固定されない自由端とされたロックばねと、
天板部が格納位置となったときに、ロックばねの自由端を緩み方向に変位させることによってロック解除状態を発現させるロック解除カムと、
天板部が最下方位置となったときに、ロックばねの自由端を締付方向に変位させることによってロック状態を発現させるロックカムと、
ロックばねの自由端を緩み方向に変位したロック解除位置で保持する自由端保持部と
を有するばねロック機構とされて、
天板部が格納位置となったときに、天板部の上方回動及び下方回動の双方が許容されたロック解除状態が発現し、
天板部が最下方位置となったときに、天板部の上方回動を許容しながらも下方回動が規制されたロック状態が発現することにより、
背もたれのリクライニング角度に応じて、天板部の角度を調節できるようにしたことを特徴とするテーブル。
【請求項2】
第一部材が取付基部に固定され、
第二部材が天板部に固定された
請求項1記載のテーブル。
【請求項3】
第二部材が、天板部を横幅方向に渡るシャフト部材によって構成され、
前記シャフト部材の一端側に、ばねロック機構が設けられ、
前記シャフト部材の他端側に、フリーヒンジが設けられた
請求項2記載のテーブル。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニングシートの背もたれの背面に取り付けられる後方シート用のテーブルであって、
物を載せるための天板部と、
背もたれ背面に取り付けられる取付基部と、
取付基部に対する天板部の角度を調節するための角度調節機構と
を備え、
天板部の前端側が取付基部に対して軸支されることによって、天板部を、その後端が上向きとなる格納位置と、その後端が後ろ向きとなる最下方位置との間で上下回動できるようにするとともに、
角度調節機構が、
取付基部又は天板部のうち一方に固定される第一部材と、
取付基部又は天板部のうち他方に固定される第二部材と、
第一部材に軸支されて、第二部材に固定されたロックドラムと、
ロックドラムに外嵌されたコイルばねからなり、その一端が第一部材に固定された固定端とされて、その他端が第一部材に固定されない自由端とされたロックばねと、
天板部が格納位置となったときに、ロックばねの自由端を緩み方向に変位させることによってロック解除状態を発現させるロック解除カムと、
天板部が最下方位置となったときに、ロックばねの自由端を締付方向に変位させることによってロック状態を発現させるロックカムと、
ロックばねの自由端を緩み方向に変位したロック解除位置で保持する自由端保持部と
を有するばねロック機構とされて、
天板部が格納位置となったときに、天板部の上方回動及び下方回動の双方が許容されたロック解除状態が発現し、
天板部が最下方位置となったときに、天板部の上方回動を許容しながらも下方回動が規制されたロック状態が発現することにより、
背もたれのリクライニング角度に応じて、天板部の角度を調節できるようにするとともに、
ロック状態にあるときでも、天板部に下向きの異常負荷が加わった際には、ロックばねに対してロックドラムがスリップして、天板部が、その後端が下向きとなるまで下方回動できるようにした
ことを特徴とするテーブル。
【請求項2】
第一部材が取付基部に固定され、
第二部材が天板部に固定された
請求項1記載のテーブル。
【請求項3】
第二部材が、天板部を横幅方向に渡るシャフト部材によって構成され、
前記シャフト部材の一端側に、ばねロック機構が設けられ、
前記シャフト部材の他端側に、フリーヒンジが設けられた
請求項2記載のテーブル。