(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115105
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】車両前後連動ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B62L 3/08 20060101AFI20240819BHJP
B62L 3/02 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B62L3/08
B62L3/02 F
B62L3/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020587
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】石川 竜也
(72)【発明者】
【氏名】安原 茉文
(57)【要約】
【課題】ブレーキに連動して複数のスイッチの出力を切り替えられる車両前後連動ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】車両前後連動ブレーキ装置は、前輪用ブレーキ伝達部材(51a、51b)と、後輪用ブレーキ伝達部材(53)と、前輪用ブレーキ伝達部材(51a)および後輪用ブレーキ伝達部材(53)に一方側から接続され、ブレーキレバー(13a)の操作によって一方側から他方側に移動するイコライザ(35)と、一方側に向けてイコライザ(35)を付勢する付勢部材(36)と、を備えた車両前後連動ブレーキ装置(5)において、イコライザ(35)の一方側に配置された複数のスイッチ(41、43、241)を備え、イコライザ(35)は、複数のスイッチ(41、43、241)と接触する接触部(35b)を備え、複数のスイッチ(41、43、241)は、イコライザ(35)の移動によって出力が切り替わる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキレバー(13a)と、前記ブレーキレバー(13a)の操作力を前輪用ブレーキ(17a)に伝達する前輪用ブレーキ伝達部材(51a、51b)と、前記操作力を後輪用ブレーキ(17b)に伝達する後輪用ブレーキ伝達部材(53)と、ケーシング(31)に収容されたイコライザ(35)であって、前記前輪用ブレーキ伝達部材(51a)および前記後輪用ブレーキ伝達部材(53)に一方側から接続され、前記ブレーキレバー(13a)の操作によって前記一方側から他方側に移動するイコライザ(35)と、前記一方側に向けて前記イコライザ(35)を付勢する付勢部材(36)と、を備えた車両前後連動ブレーキ装置(5)において、
前記イコライザ(35)の前記一方側に配置された複数のスイッチ(41、43、241)を備え、
前記イコライザ(35)は、前記複数のスイッチ(41、43、241)と接触する接触部(35b)を備え、
前記複数のスイッチ(41、43、241)は、前記イコライザ(35)の移動によって出力が切り替わる、
車両前後連動ブレーキ装置。
【請求項2】
前記ケーシング(31)は、外面を形成する複数の面(31a1、31a2)を有し、
前記複数のスイッチ(41、43、241)は、前記複数の面(31a1、31a2)のうち、面積が最も大きい面(31a1)に対して交わる方向に並ぶ、
請求項1に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
【請求項3】
前記複数のスイッチ(41、43、241)は、前記前輪用ブレーキ伝達部材(51a)と前記後輪用ブレーキ伝達部材(53)とが前記ケーシング(31)において並ぶ方向と異なる方向に並んでいる、請求項1または2に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
【請求項4】
前記接触部(35b)は平面形状である、
請求項1または2に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
【請求項5】
前記複数のスイッチ(41、43)のうち少なくとも1つは、他の前記スイッチ(43)よりも前記一方側に配置される、
請求項1または2に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
【請求項6】
前記複数のスイッチ(43、241)のうち少なくとも1つは、他の前記スイッチ(43)と長さが異なる、
請求項1または2に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
【請求項7】
前記接触部(335b、435b)は、前記一方側に向けた段差(435b1)を有する段差形状、もしくは、前記一方側に向けて傾斜した傾斜形状である、
請求項1または2に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
【請求項8】
前記複数のスイッチ(41、43、241)は、ストップスイッチ(41、241)とインヒビタースイッチ(43)とを含み、
前記インヒビタースイッチ(43)は、前記ストップスイッチ(41、241)よりも前記他方側に配置される、
請求項4に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
【請求項9】
前記ケーシング(31)は、前記イコライザ(35)を上方から覆う上ケース(31a)と、前記イコライザ(35)を下方から覆う下ケース(31b)と、を有し、
前記下ケース(31b)は、下方に凹む凹部(31b1)を有し、前記凹部(31b1)の底面(31b2)には水抜き用の排水孔(31b3)を有する、
請求項1または2に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
【請求項10】
前記ケーシング(31)は、前記下ケース(31b)の前記凹部(31b1)の前記底面(31b2)が傾斜する姿勢で配置され、
前記排水孔(31b3)は、前記底面(31b2)のうち下方側に設けられる、
請求項9に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
【請求項11】
前記ケーシング(31)は、前記複数のスイッチ(41、43、241)に形成された突起(41b、43b)と嵌合して前記複数のスイッチ(41、43、241)をそれぞれ位置決めする複数の嵌合穴(39b1、39b3)を有し、
前記複数の嵌合穴(39b1、39b3)は、一直線上に形成される、
請求項1または2に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前後連動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキレバーの動作に連動するイコライザを有する車両用前後連動ブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、イコライザの移動を利用してストップスイッチを押している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両前後連動ブレーキ装置において、ブレーキに連動して実現されることが望ましい機能は複数ある。このため、簡素な構造で、ブレーキに対して複数のスイッチが連動することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両前後連動ブレーキ装置は、ブレーキレバーと、前記ブレーキレバーの操作力を前輪用ブレーキに伝達する前輪用ブレーキ伝達部材と、前記操作力を後輪用ブレーキに伝達する後輪用ブレーキ伝達部材と、ケーシングに収容されたイコライザであって、前記前輪用ブレーキ伝達部材および前記後輪用ブレーキ伝達部材に一方側から接続され、前記ブレーキレバーの操作によって前記一方側から他方側に移動するイコライザと、前記一方側に向けて前記イコライザを付勢する付勢部材と、を備えた車両前後連動ブレーキ装置において、前記イコライザの前記一方側に配置された複数のスイッチを備え、前記イコライザは、前記複数のスイッチと接触する接触部を備え、前記複数のスイッチは、前記イコライザの移動によって出力が切り替わる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ブレーキに連動して複数のスイッチの出力を切り替えられる車両前後連動ブレーキ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1に係る車両前後連動ブレーキ装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】実施の形態1に係る鞍乗り型車両の斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る鞍乗り型車両の内部構造を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係るCBSモジュールの斜視図である。
【
図5】実施の形態1に係るCBSモジュールの側面図である。
【
図6】
図5のVI-VI切断面において切断したCBSモジュールを後方側から見た斜視図である。
【
図7】
図5のVII-VII切断面において切断したCBSモジュールを右前方側から見た斜視図である。
【
図8】実施の形態1に係るイコライザの斜視図である。
【
図9】
図5のVII-VII切断面において切断したCBSモジュールを左前方側から見た斜視図である。
【
図10】実施の形態1に係る上ケースを左下方から見た斜視図である。
【
図11】実施の形態1に係る第1スイッチおよび第2スイッチの斜視図である。
【
図12】実施の形態2に係る第1スイッチおよび第2スイッチを模式的に示した断面図である。
【
図13】実施の形態3に係る第1スイッチおよび第2スイッチを模式的に示した断面図である。
【
図14】実施の形態4に係る接触部を模式的に示した断面図である。
【
図15】実施の形態5に係る接触部を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態1]
[車両前後連動ブレーキ装置の全体構成]
図1は、実施の形態1に係る車両前後連動ブレーキ装置5の全体構成を示す模式図である。
図1においては、車体上面視における各部位の大まかな位置関係、および接続関係が示されている。なお、
図1における仮想線で記載された矢印は、制御信号の流れを模式的に示したものであり、実際の信号線の接続関係はこれに限られない。
【0010】
車両前後連動ブレーキ装置5は、左右一対の左ブレーキレバー(ブレーキレバー)13a、右ブレーキレバー13bと、前輪2aに制動力を付与する前輪用ブレーキ17aと、後輪2bに制動力を付与する後輪用ブレーキ17bと、を備えている。左ブレーキレバー13a、右ブレーキレバー13bはそれぞれ、乗員の操作によって、揺動軸31c、13b1を中心として後方に回動するレバーである。前輪用ブレーキ17aは、油圧式のディスクブレーキである。後輪用ブレーキ17bは、機械式のドラムブレーキである。
【0011】
右ブレーキレバー13bは、ブレーキマスターシリンダー15のピストンを動かすレバーである。ブレーキマスターシリンダー15は、油圧ホースである前輪用ブレーキホース(前輪用ブレーキ伝達部材)51bの一端と接続されており、右ブレーキレバー13bの操作力を前輪用ブレーキホース51bに伝達する。また、前輪用ブレーキホース51bの他端は、前輪用ブレーキ17aと接続されている。このため、右ブレーキレバー13bが操作されることにより、前輪用ブレーキ17aに対して右ブレーキレバー13bの操作力が伝達され、前輪用ブレーキ17aが作動する。
【0012】
左ブレーキレバー13aは、CBS(Combined Brake System)モジュール30に接続されている。CBSモジュール30は、左ブレーキレバー13aの操作力を、前輪用ブレーキワイヤ(前輪用ブレーキ伝達部材)51aおよび後輪用ブレーキワイヤ(後輪用ブレーキ伝達部材)53に伝達する。前輪用ブレーキワイヤ51aは、一端をCBSモジュール30に接続され、他端をブレーキマスターシリンダー15に接続される。同様に、後輪用ブレーキワイヤ53は一端をCBSモジュール30に接続され、他端を後輪用ブレーキ17bに接続される。このため、左ブレーキレバー13aが操作されることにより、前輪用ブレーキ17aおよび後輪用ブレーキ17bに対して左ブレーキレバー13aの操作力が伝達され、前輪用ブレーキ17aおよび後輪用ブレーキ17bが連動して作動する。
【0013】
このとき、CBSモジュール30は、前輪用ブレーキ17aおよび後輪用ブレーキ17bにそれぞれ伝達される左ブレーキレバー13aの操作力の分配を調節する。また、CBSモジュール30は、パワーユニット4およびブレーキランプ6を左ブレーキレバー13aの操作によって制御する。
CBSモジュール30についての詳細は、後述する。
【0014】
[鞍乗り型車両における車両前後連動ブレーキ装置の配置]
図2は、本発明の実施の形態1に係る車両前後連動ブレーキ装置5を備えた鞍乗り型車両1の斜視図であり、斜め上方側から見た鞍乗り型車両1を示す。
図3は、本発明の実施の形態1に係る鞍乗り型車両1の内部構造を示す斜視図であり、斜め上方側から見た鞍乗り型車両1の内部構造を示す。
【0015】
図2および
図3に示すように、鞍乗り型車両1は、乗員が着座するシート3と、乗員が握るグリップ11a、11bとを有する。グリップ11a、11bは円柱形状であり、車幅方向に延びるハンドル11の両端に設けられている。また、グリップ11a、11bは、それぞれ車幅方向外側が下方に位置する方向に傾斜している。
【0016】
グリップ11a、11bの前方には、上述した左ブレーキレバー13a、右ブレーキレバー13bが配置されている。グリップ11a、11b、および左ブレーキレバー13a、右ブレーキレバー13bは、それぞれ車体上部のアッパーカバー10に設けられている。アッパーカバー10は、グリップ11a、11bを前方から覆う前側カバー10aと、グリップ11a、11bを後方から覆う後側カバー10bと、を有する。前側カバー10aには、ヘッドライトを覆う透光性のヘッドライトカバー10cが設けられている。
【0017】
左ブレーキレバー13aおよび右ブレーキレバー13bは、それぞれアッパーカバー10から車幅方向外側に突出して配置されている。
図2および
図3に示すように、CBSモジュール30は、アッパーカバー10の内側に覆い隠される位置に配置されている。このように、CBSモジュール30はアッパーカバー10の外側に露出していないため、鞍乗り型車両1の外観をシンプルなデザインとし易い。CBSモジュール30は車体の中央よりも左側に設けられるため、CBSモジュール30における右側は車幅方向内側であり、左側は車幅方向外側である。
【0018】
[CBSモジュールの構成]
図4は、CBSモジュール30の斜視図であり、前方側から見たCBSモジュール30を示す。
図5は、CBSモジュール30の側面図であり、右側から見たCBSモジュール30を示す。
【0019】
図4に示すように、左ブレーキレバー13aは、CBSモジュール30の左側に延びており、グリップ11aから前方に離間した位置に付勢される。
【0020】
図4および
図5に示すように、CBSモジュール30は、CBSモジュール30の各部を格納する樹脂製のケーシング31を有する。ケーシング31は、上部に位置する上ケース31aと、上ケース31aの下方に位置する下ケース31bと、を有する。また、CBSモジュール30は、ケーシング31の後端に形成されてグリップ11aに取り付けられるクランプ33を有する。クランプ33は、上ケース31aの後端に形成されて半円形状の凹部を有するケーシング側固定部33aと、半円形状の凹部を有する部材である固定部材33bと、を備える。クランプ33は、ケーシング側固定部33aおよび固定部材33bの間にグリップ11aを挟んだ状態で、固定部材33bがケーシング側固定部33aに対して締結される。これにより、CBSモジュール30はグリップ11aに固定される。
【0021】
図4および
図5に示すように、クランプ33を除くケーシング31の外形、すなわち、上ケース31aおよび下ケース31bの外形は、概ね直方体に近い形状であり、外面を形成する複数の面を有する。ケーシング31の外面を形成する複数の面には、主面31a1および前面31a2が含まれる。ケーシング31において、主面31a1は上方に面する略水平な面であり、前面31a2は前方に面する面である。また、ケーシング31は、上下方向の寸法が小さく水平方向の寸法が大きい、扁平な直方体に近い形状である。このため、ケーシング31のうち最大の面は、主面31a1である。
図5に示すように、CBSモジュール30は、グリップ11aに対し、主面31a1が僅かに前下がりに傾斜する姿勢で取り付けられる。
【0022】
図6は、
図5のVI-VI切断面において切断したCBSモジュール30を後方側から見た斜視図であり、下ケース31bの内側を示す。
図5および
図6に示すように、下ケース31bは、下方に向けて凹んだ凹部31b1を有しており、凹部31b1の底面31b2は平坦である。
図5に示すように、CBSモジュール30は、底面31b2が水平線Hと比べて僅かに前下がりに傾斜する姿勢で配置される。
【0023】
また、
図6に示すように、底面31b2のうち車両前方側かつ左側には、底面31b2を上下に貫通する排水孔31b3が形成されている。排水孔31b3は、凹部31b1の内側に侵入した水を排水するための孔である。底面31b2は僅かに前下がりに傾斜しているため、凹部31b1内の水は底面31b2の前方側に向けて流れやすい。このため、凹部31b1内の水は、底面31b2のうち前方側、すなわち、底面31b2のうち下方側に設けられた排水孔31b3から排水され易くなる。
【0024】
また、CBSモジュール30が取り付けられるグリップ11aは、車幅方向外側、すなわち左側が下方に位置する方向に傾斜している。このため、凹部31b1の底面31b2は左側が下方に位置する方向に傾斜しており、凹部31b1内の水は、底面31b2の左側に流れ易く、底面31b2のうち左側、すなわち、底面31b2のうち下方側に設けられた排水孔31b3から排水され易い。
【0025】
図7は、
図5のVII-VII切断面において切断したCBSモジュール30を右前方側から見た斜視図であり、CBSモジュール30の内部構造を示す。
図8は、イコライザ35の斜視図であり、右後方から見たイコライザ35を示す。なお、
図7においては、左ブレーキレバー13aが乗員に最大まで操作された状態のCBSモジュール30を示している。
【0026】
図7に示すように、前輪用ブレーキワイヤ51aは、インナーワイヤ51a1と、インナーワイヤ51a1を覆うアウターワイヤ51a2とを有している。前輪用ブレーキワイヤ51aは、上ケース31aの後部に形成されて左右方向に貫通するケーブル用孔31a4(
図5参照)を介してケーシング31の内部に挿入される。後輪用ブレーキワイヤ53は、インナーワイヤ53aと、インナーワイヤ53aを覆うアウターワイヤ53bとを有している。後輪用ブレーキワイヤ53は、上ケース31aの前部に形成されて左右方向に貫通するケーブル用孔31a5(
図5参照)を介してケーシング31の内部に挿入される。
【0027】
また、ケーシング31の内部には、イコライザ35が配置されている。イコライザ35は、左ブレーキレバー13aの操作力を2つのブレーキワイヤ51a、53に対して適切に分配するための金属製部材である。イコライザ35は、上方および水平方向から上ケース31aに覆われ、下方から下ケース31bに覆われている。
【0028】
図7および
図8に示すように、イコライザ35は、車両前後方向に長い形状であり、長手方向に間隔を開けて並んだ第1係止孔35a1、第2係止孔35a2、および第3係止孔35a3が形成されている。3つの係止孔35a1、35a2、35a3は、それぞれイコライザ35を上下に貫通する孔である。3つの係止孔35a1、35a2、35a3には、それぞれ係止体37a、37b、37cが嵌っている。
【0029】
第2係止孔35a2は、イコライザ35の長手方向の中途部に形成されている。イコライザ35は、第2係止孔35a2に嵌った係止体37bを介して、連結部材13a1に対して接続される。また、イコライザ35は、連結部材13a1に対して係止体37bを軸に回動可能である。連結部材13a1は、一端をイコライザ35に接続され、他端を左ブレーキレバー13aに対して回動可能に接続される。このため、左ブレーキレバー13aが操作された場合、連結部材13a1は左ブレーキレバー13aに牽引されて左側に移動し、イコライザ35は左側に牽引される。
【0030】
第1係止孔35a1は、イコライザ35の後部35cに形成されている。イコライザ35は、第1係止孔35a1に嵌った係止体37aを介して、前輪用ブレーキワイヤ51aのインナーワイヤ51a1に対して接続される。また、イコライザ35は、インナーワイヤ51a1に対して係止体37aを軸に回動可能である。インナーワイヤ51a1は、一端をイコライザ35に対し右側(一方側)から接続され、他端をブレーキマスターシリンダー15のシリンダーに接続される。インナーワイヤ51a1は、イコライザ35の左側への移動により牽引されてブレーキマスターシリンダー15のシリンダーを引き、前輪用ブレーキホース51bに操作力を伝達する。
【0031】
第3係止孔35a3は、イコライザ35の前部35dに形成されている。イコライザ35は、第3係止孔35a3に嵌った係止体37cを介して、後輪用ブレーキワイヤ53のインナーワイヤ53aに対して接続される。また、イコライザ35は、インナーワイヤ53aに対して係止体37cを軸に回動可能である。インナーワイヤ53aは、一端をイコライザ35に対し右側から接続され、他端を後輪用ブレーキ17bに接続される。
【0032】
イコライザ35のうち、インナーワイヤ51a1が接続される前部35dは、付勢部材36によってケーシング31内の右側に向けて付勢されている。本実施の形態において、付勢部材36はコイルばねであり、圧縮ばねとして用いられる。左ブレーキレバー13aが操作されていない状態において、イコライザ35は、付勢部材36の付勢力により、ケーシング31の内部において右側の非操作位置P1に保持される。このとき、インナーワイヤ51a1およびインナーワイヤ53aは弛んだ状態となり、前輪用ブレーキ17aおよび後輪用ブレーキ17bは作動しない。また、イコライザ35が非操作位置P1に付勢されることにより、左ブレーキレバー13aは連結部材13a1を介して右側に牽引され、左ブレーキレバー13aは前方側に付勢された状態となる。
【0033】
非操作位置P1に位置した状態のイコライザ35は、左ブレーキレバー13aの操作によって連結部材13a1に牽引され、左側(他方側)に移動する。左ブレーキレバー13aの操作量が最大になると、イコライザ35は、イコライザ35の移動範囲における左端の最大操作位置P2まで移動する。すなわち、イコライザ35の移動位置は、非操作位置P1と最大操作位置P2との間にあり、左ブレーキレバー13aの操作量が大きいほど左側の最大操作位置P2に近付く。イコライザ35が左側に移動することにより、インナーワイヤ51a1、53aが左側に向けて牽引される。換言すれば、イコライザ35の左側への移動により、左ブレーキレバー13aの操作力は、インナーワイヤ51a1、53aに伝達される。
【0034】
インナーワイヤ51a1に伝達された操作力は、ブレーキマスターシリンダー15および前輪用ブレーキホース51bを介して前輪用ブレーキ17aに伝達され、前輪用ブレーキ17aを作動させる。同様に、インナーワイヤ53aに伝達された操作力は、後輪用ブレーキ17bに伝達され、後輪用ブレーキ17bを作動させる。このように、左ブレーキレバー13aの操作力が前輪用ブレーキ17aおよび後輪用ブレーキ17bに伝達され、前輪用ブレーキ17aおよび後輪用ブレーキ17bが連動する。
【0035】
このとき、左ブレーキレバー13aの操作量が小さい場合、イコライザ35の前部35dは左側に移動するが、後部35cは、付勢部材36の付勢力によって左側に向けた移動を妨げられる。このため、イコライザ35は係止体37bを中心に上面視で反時計方向に回動する。この場合、イコライザ35の前部35dに接続される後輪用ブレーキワイヤ53のインナーワイヤ53aは左側に牽引される。また、イコライザ35の後部35cに接続される前輪用ブレーキワイヤ51aのインナーワイヤ51a1は、インナーワイヤ53aが牽引される距離よりも短い距離を左側に牽引される。このように、左ブレーキレバー13aの操作量が小さい場合、左ブレーキレバー13aの操作力の多くはインナーワイヤ53aに分配されるため、後輪用ブレーキ17bは前輪用ブレーキ17aよりも大きな制動力を発生させ易い。
【0036】
左ブレーキレバー13aの操作量が大きくなると、イコライザ35の前部35dが上ケース31aの当接部31a3に対して右側から接触する。当接部31a3は、上ケース31aにおいて、左前方側の隅が内側に突出して形成された部分である。イコライザ35は、当接部31a3との接触により上面視で時計方向のモーメントを受ける。このため、イコライザ35は付勢部材36の付勢力に抗して時計方向に回動し、後部35cは左側に移動してインナーワイヤ51a1を左側に牽引する。このように、左ブレーキレバー13aの操作量が大きくなった場合には、インナーワイヤ51a1が牽引される距離が、インナーワイヤ53aが牽引される距離と同程度となる。すなわち、左ブレーキレバー13aに対する操作量が大きくなると、左ブレーキレバー13aの操作力は前輪用ブレーキ17aおよび後輪用ブレーキ17bに均等に分配され易くなり、それぞれのブレーキ17a、17bが発生させる制動力が均等になり易い。
【0037】
このように、CBSモジュール30は、左ブレーキレバー13aの操作量に応じてインナーワイヤ51a1とインナーワイヤ53aとの間で分配される操作力を調整し、前輪用ブレーキ17aおよび後輪用ブレーキ17bの制動力を調整する。
【0038】
ここで、
図7および
図8に示すように、本実施の形態のイコライザ35は、平板状の接触部35bを有する。接触部35bは右側に面する平面形状であり、イコライザ35の右端において上方から下方に向けて上下に延びている。接触部35bのうち下方側の一部は、下ケース31bの凹部31b1の内側に位置している。
【0039】
図9は、
図5のVII-VII切断面において切断したCBSモジュール30を左前方側から見た斜視図であり、CBSモジュール30の内部構造を示す。
【0040】
図9に示すように、ケーシング31の内部において、イコライザ35の右側には、第1スイッチ(スイッチ)41と、第2スイッチ(スイッチ)43と、が設けられている。2つのスイッチ41、43は、いわゆるモーメンタリ式のスイッチであり、スイッチケーシング41d、43dと、スイッチケーシング41d、43dに支持されるスイッチロッド41c、43cと、を有する。スイッチロッド41c、43cは、スイッチケーシング41d、43dに内蔵された圧縮ばねによって左側に向けて付勢されており、右側に向けて押されることで右側に押し込まれる。スイッチ41、43は、スイッチロッド41c、43cが押し込まれているときと、押し込まれていないときと、の間で切り替わる2段階の出力をおこなう。
【0041】
第1スイッチ41は、出力の切り替えによって鞍乗り型車両1のブレーキランプ6の点灯または消灯を切り替える、いわゆるストップスイッチであり、信号線41a(
図5参照)を介してブレーキランプ6に信号を出力する。スイッチロッド41cが押し込まれていない状態においては、第1スイッチ41の出力は、ブレーキランプ6を点灯させる出力となる。また、スイッチロッド41cが押し込まれている状態においては、第1スイッチ41の出力は、ブレーキランプ6を消灯させる出力となる。
【0042】
第2スイッチ43は、出力の切り替えによって、パワーユニット4の始動の規制、および規制の解除を切り替える、いわゆるインヒビタースイッチであり、信号線43a(
図5参照)を介してパワーユニット4に信号を出力する。スイッチロッド43cが押し込まれた状態においては、第2スイッチ43の出力は、パワーユニット4の始動を規制する出力となる。また、スイッチロッド43cが押し込まれていない状態においては、第2スイッチ43の出力は、パワーユニット4の始動を可能とする出力となる。
【0043】
なお、2つのスイッチ41、43は、ブレーキランプ6およびパワーユニット4に対して、直接的に信号を出力してもよく、ECU(Electronic Control Unit)および通信装置等の任意の装置を介して、間接的に信号を出力する構成としてもよい。また、2つのスイッチ41、43は、出力の切り替わりにより、信号の種類が切り替わる構成としても、信号を出力するか否かが切り替わる構成としてもよい。
【0044】
2つのスイッチ41、43は、ケーシング31内において略鉛直方向に並べて配置されている。すなわち、2つのスイッチ41、43は、ケーシング31の最大の面である主面31a1に対して略直交する方向に並ぶ。換言すれば、ケーシング31は、前後に並んだ2つのブレーキワイヤ51a、53と接続するために主面31a1を略水平としており、2つのスイッチ41、43は、2つのブレーキワイヤ51a、53がケーシング31において並ぶ方向に略直交して並べられる。このため、本実施の形態のケーシング31は、2つのスイッチ41、43が主面31a1に平行な方向に並んだ場合に比べて、主面31a1の寸法を大きくする必要がない。第1スイッチ41は、前後に並んだインナーワイヤ51a1、53aの間に配置されている。また、第2スイッチ43は、第1スイッチ41の下方に配置され、下ケース31bの凹部31b1の内側に位置している。
【0045】
スイッチロッド41c、43cは、イコライザ35が非操作位置P1にあるとき、ともに接触部35bと接触し、接触部35bによって右側に向けて押し込まれる。また、スイッチロッド41c、43cは、イコライザ35が最大操作位置P2にあるとき、共に接触部35bから離間して非接触となり、押し込まれていない状態となる。このように、2つのスイッチ41、43は、イコライザ35が非操作位置P1にある時と、最大操作位置P2にある時と、の間で、出力が切り替わる位置に配置されている。換言すれば、2つのスイッチ41、43の出力は、イコライザ35の移動位置によって切り替わる。
【0046】
このため、第1スイッチ41は、左ブレーキレバー13aが操作され、鞍乗り型車両1にブレーキがかかる際にブレーキランプ6を点灯させる。また、第2スイッチ43は、左ブレーキレバー13aが操作され、鞍乗り型車両1にブレーキがかかっている時にだけパワーユニット4の始動を可能とする。
【0047】
また、
図9に示すように、2つのスイッチ41、43の左右方向における位置は揃っており、それぞれ同じ距離だけ押し込まれたときに出力が切り替わる。さらに、上述のように、接触部35bは上下方向に沿った平面形状である。このため、本実施の形態においては、2つのスイッチ41、43の出力は、イコライザ35が特定の移動位置に到達したときに同時に切り替わる。
【0048】
図10は、上ケース31aを左下方から見た斜視図である。
図10に示すように、上ケース31aは、連結部材13a1を通す切り欠き31a6と、ケーブル用孔31a4、31a5の間において、2つのスイッチ41、43を配置するスイッチ配置部39と、を有する。スイッチ配置部39は、上ケース31aの右側において、右方および下方に突出するように形成されている。スイッチ配置部39は、第1スイッチ41が嵌る第1固定孔39a1、および、第2スイッチ43が嵌る第2固定孔39a2を有する。また、スイッチ配置部39の下端には、第2固定孔39a2から延びて下方に貫通する水抜き用の孔39cが設けられている。
【0049】
第1固定孔39a1および第2固定孔39a2は、上下に並んで形成される孔であり、ケーシング31の右内側面31dを左右方向に貫通している。第1固定孔39a1は、ケーブル用孔31a4、31a5と同等の高さに形成されている。第2固定孔39a2は、第1固定孔39a1から下方に離間して形成されており、下ケース31bの凹部31b1の内側に向けて開口している。2つのスイッチ41、43は、2つの固定孔39a1、39a2に対し、左方向から右方向に挿入されて嵌め込まれる。また、2つの固定孔39a1、39a2は、2つのスイッチ41、43が右側に抜けないように、中途部において内径が小さくなる段部をそれぞれ有している。
【0050】
第1固定孔39a1および第2固定孔39a2の左端の縁には、第1溝39b1、第2溝39b2、および第3溝39b3が形成されている。第1溝39b1は、第1固定孔39a1の縁のうち、下端に形成されており、上下に延びる溝である。第1溝39b1は、上方にある第1固定孔39a1および下方にある第2固定孔39a2に向けて上下に貫通している。第1溝39b1は、スイッチ配置部39の左端が下方から上方に向けて削られることによって形成される。
【0051】
第2溝39b2は、第2固定孔39a2の縁うち、後方側の端部に形成されており、前後に延びる溝である。第2溝39b2は、前方にある第2固定孔39a2、および後方に向けて前後に貫通している。第2溝39b2は、スイッチ配置部39が後方から削られることによって形成される。
【0052】
第3溝39b3は、第2固定孔39a2の縁うち、下端に形成されており、上下に延びる溝である。第3溝39b3は、第1溝39b1の延長線上に形成されており、上方にある第2固定孔39a2、および下方に向けて上下に貫通する。第3溝39b3は、例えば、下方からスイッチ配置部39を削って第1溝39b1を形成する工程において、第2固定孔39a2の縁のうち、第1溝39b1の一直線上にある部分が削られて形成される。
【0053】
図11は、2つのスイッチ41、43の斜視図である。
図11に示すように、2つのスイッチケーシング41d、43dは、それぞれ、スイッチロッド41c、43cが押し込まれる方向と直交する方向に突出する突起41b、43bを有する。突起41b、43bは、3つの溝39b1、溝39b2、39b3に嵌合できる形状である。本実施の形態において、突起41bは第1溝39b1に嵌合し、突起43bは第2溝39b2に嵌合する。これにより、2つのスイッチ41、43は、左右方向を軸とした回転方向の動きを規制され、位置決めされる。すなわち、本実施の形態において、第1溝39b1および第2溝39b2は、スイッチケーシング41d、43dに形成された突起41b、43bに嵌合して2つのスイッチ41、43を位置決めする嵌合穴である。
【0054】
以上説明してきたように、本実施の形態において、車両前後連動ブレーキ装置5は、乗員から操作を受ける左ブレーキレバー13aと、左ブレーキレバー13aの操作力を前輪用ブレーキ17aに伝達する前輪用ブレーキワイヤ51a、前輪用ブレーキホース51bと、操作力を後輪用ブレーキ17bに伝達する後輪用ブレーキワイヤ53と、ケーシング31に収容されたイコライザ35であって、2つのブレーキワイヤ51a、53に一方側から接続され、左ブレーキレバー13aの操作によって右側から左側に移動するイコライザ35と、右側に向けて前記イコライザ35を付勢する付勢部材36と、を備えた車両前後連動ブレーキ装置5において、イコライザ35の右側に配置された2つのスイッチ41、43を備え、イコライザ35は、複数のスイッチ41、43と接触する接触部35bを備え、2つのスイッチ41、43は、イコライザ35の移動によって出力が切り替わる。
この構成によれば、簡素な構造で、左ブレーキレバー13aの操作に連動して2つのスイッチ41、43の出力を切り替えられる車両前後連動ブレーキ装置5を実現できる。
【0055】
本実施の形態では、ケーシング31は、外面を形成する主面31a1および前面31a2を有し、2つのスイッチ41、43は、主面31a1および前面31a2のうち、面積が最も大きい主面31a1に対して交わる方向に並ぶ。
この構成によれば、2つのスイッチ41、43が主面31a1に平行に並ばないため、主面31a1の面積が大きくなることを抑制できる。また、本実施の形態において、最も面積が大きい主面31a1は略水平な面となるため、ケーシング31の上下方向の寸法が小さくなり易く、ケーシング31の周囲において上下のスペースを確保し易い。
【0056】
本実施の形態では、複数のスイッチ41、43は、前輪用ブレーキワイヤ51aと後輪用ブレーキワイヤ53とがケーシング31において並ぶ方向と異なる方向に並んでいる。
この構成によれば、複数のスイッチ41、43が二つのブレーキワイヤ51a、53とは異なる方向に並ぶ為、ケーシング31が複数のスイッチ41、43が並ぶ方向に大きくなることを抑制できる。
【0057】
本実施の形態では、接触部35bは平面形状である。
この構成によれば、接触部35bを簡素な構造とすることができ、イコライザ35の製造が容易になる。また、本実施の形態では、スイッチロッド41c、43cの先端が左右方向において揃う位置にあり、互いに同じ距離だけ右側に押し込まれることで2つのスイッチ41、43の出力が切り替わる。このため、2つのスイッチ41、43の出力を同時に切り替えることができる。
【0058】
本実施の形態では、ケーシング31は、イコライザ35を上方から覆う上ケース31aと、イコライザ35を下方から覆う下ケース31bと、を有し、下ケース31bは、下方に凹む凹部31b1を有し、凹部31b1の底面31b2には水抜き用の排水孔31b3を有する。
この構成によれば、凹部31b1を有する下ケース31bに水が入った場合でも、排水孔31b3から水が抜け、水が下ケース31bに溜まることを抑制できる。また、本実施の形態では、第2スイッチ43を凹部31b1の内側に配置することにより、ケーシング31が上方に突出することを抑制している。
【0059】
本実施の形態では、ケーシング31は、下ケース31bの凹部31b1の底面31b2が傾斜する姿勢で配置され、排水孔31b3は、底面31b2のうち下方側に設けられる。
この構成によれば、凹部31b1に水が入った場合、水が底面31b2の上を下方側の排水孔31b3に向けて流れ易くなるため、排水孔31b3から水が抜けやすくなる。本実施の形態では、底面31b2は、ケーシング31が取り付けられるグリップ11aの傾斜によって車両前方側および左側が下方となる方向に傾斜しており、排水孔31b3は底面31b2の車両前方側かつ左側の端部に設けられるため、水がさらに抜けやすくなる。
【0060】
次に、実施の形態2から5について、以下に説明する。なお、以下では、実施の形態1と異なる点についてのみ説明し、実施の形態1と同じ点については、説明を省略する。
【0061】
[実施の形態2]
図12は、実施の形態2に係る2つのスイッチ41、43を模式的に示した断面図であり、前後方向に垂直な断面における2つのスイッチ41、43を示す。
図12に示すように、2つのスイッチ41、43の左右方向における位置は互いに異なり、スイッチロッド41cの先端がスイッチロッド43cの先端よりも距離D1だけ右側にずれている構成としてもよい。
【0062】
具体的には、実施の形態2におけるスイッチ配置部139は、実施の形態1と異なり、第2スイッチ43よりも距離D1だけ右側において第1スイッチ41を保持する第1固定孔139a1を有している。このため、実施の形態2では、第1スイッチ41の出力が切り替わるときのイコライザ35の移動位置は、第2スイッチ43の出力が切り替わるときのイコライザ35の移動位置よりも右側となる。
【0063】
すなわち、実施の形態2のように、2つのスイッチ41、43のうち第1スイッチ41は、第2スイッチ43よりも右側に配置される構成としてもよい。
この構成によれば、左ブレーキレバー13aの操作に連動して、2つのスイッチ41、43ごとに異なるタイミングで出力を切り替えることができる。
【0064】
また、実施の形態2においては、2つのスイッチ41、43は、ストップスイッチとインヒビタースイッチとを含み、インヒビタースイッチである第2スイッチ43は、ストップスイッチである第1スイッチ41よりも左側に配置される。
この構成によれば、左ブレーキレバー13aの操作に対して、ストップスイッチである第1スイッチ41の出力を素早く切り替えることができる。また、左ブレーキレバー13aの操作量が大きくならない限り、インヒビタースイッチである第2スイッチ43の出力を切り替えないことができる。これにより、ブレーキをすぐに後続車に知らせ易くなり、誤発進も防止し易くなるため、安全性を向上し易くなる。
【0065】
図13は、実施の形態3に係る2つのスイッチ241、43を模式的に示した断面図であり、前後方向に垂直な断面における2つのスイッチ241、43を示す。
図13に示すように、実施の形態3における第1スイッチ241は、実施の形態1におけるスイッチロッド41cよりも左右方向の長さ寸法が短いスイッチロッド241cを有する。
【0066】
図13に示すように、実施の形態3においては、スイッチケーシング41d、43dの左右方向の寸法、および左右方向における位置は同じである。スイッチロッド241cのうち、スイッチケーシング41dから露出した部分の左右方向における長さは、長さL1である。また、スイッチロッド43cのうち、スイッチケーシング43dから露出した部分の左右方向における長さは、長さL1よりも距離D21だけ長い、長さL2である。このため、2つのスイッチ241、43の左側の端から右側の端までの長さは、互いに距離D21だけ異なる。
【0067】
このような2つのスイッチ241、43を使用することにより、実施の形態3においては、第2スイッチ43の先端が第1スイッチ241の先端よりも距離D21だけ左側に位置している。このため、実施の形態3では、左ブレーキレバー13aが操作された際に、第1スイッチ241の出力が切り替わるときのイコライザ35の移動位置と、第2スイッチ43の出力が切り替わるときのイコライザ35の移動位置と、がそれぞれ異なる。
【0068】
すなわち、実施の形態3のように、2つのスイッチ241、43のうち第1スイッチ241は、第2スイッチ43と長さが異なる構成としてもよい。
この構成によれば、左ブレーキレバー13aの操作に連動して、2つのスイッチ241、43の出力を異なるタイミングで切り替えることができる。
なお、スイッチケーシング41d、43dの左右方向における長さを互いに異なる長さとすることにより、2つのスイッチ241、43の左側の端から右側の端までの長さを互いに異なる長さとした場合も、実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0069】
また、接触部35bを変形させ、2つのスイッチ41、43の出力が切り替わるときのイコライザの移動位置を互いに異なる移動位置とすることも可能である。具体的な例を、以下の実施の形態4および5に示す。
【0070】
図14は、実施の形態4に係る接触部335bを模式的に示した断面図であり、前後方向に垂直な断面における接触部335bを示す。
図14に示すように、実施の形態4においては、接触部335bは右側に向けて傾斜した傾斜形状である。具体的には、イコライザ35が非操作位置P1または最大操作位置P2にあるとき、接触部335bは下方に向けて右側に傾斜している。これにより、接触部335bのうち、イコライザ35が非操作位置P1にあるときにおいて第2スイッチ43に接触する接触部分A2は、第1スイッチ41に接触する接触部分A1よりも距離D31だけ右側に位置する。このため、左ブレーキレバー13aが操作されたときに、第2スイッチ43の出力が切り替わるときの左ブレーキレバー13aの操作量は、第1スイッチ41の出力が切り替わるときの左ブレーキレバー13aの操作量よりも大きくなる。
【0071】
図15は、実施の形態5に係る接触部435bを模式的に示した断面図であり、前後方向に垂直な断面における接触部435bを示す。
図15に示すように、実施の形態4において、接触部435bは右側に向けた段差435b1が形成された段差形状であり、接触部435bは上段435b2と下段435b3とを有する。段差435b1は、イコライザ35が非操作位置P1または最大操作位置P2にあるときにおいて、下段435b3が上段435b2よりも距離D41だけ右側に位置する形状に形成されている。また、段差435b1は、上下方向において第1スイッチ41と第2スイッチ43との間に設けられており、イコライザ35が非操作位置P1にあるとき、上段435b2は第1スイッチ41に接触し、下段435b3は第2スイッチ43に接触する。このため、左ブレーキレバー13aが操作されたときに、第2スイッチ43の出力が切り替わるときの左ブレーキレバー13aの操作量は、第1スイッチ41の出力が切り替わるときの左ブレーキレバー13aの操作量よりも大きくなる。
【0072】
すなわち、実施の形態4および5のように、イコライザ35は、2つのスイッチ41、43と接触する接触部335b、435bを有し、接触部335b、435bは、右側に向けた段差435b1を有する段差形状、もしくは、右側に向けて傾斜した傾斜形状である、構成としてもよい。
この構成によれば、左ブレーキレバー13aの操作に連動して、2つのスイッチ41、43ごとに異なるタイミングで出力を切り替えることができる。
【0073】
実施の形態3から5においては、実施の形態2と同様、ストップスイッチである第1スイッチ41、241は、インヒビタースイッチである第2スイッチ43よりも、左ブレーキレバー13aの操作量が小さい時に出力が切り替わる。すなわち、乗員がブレーキをかけた場合にはすぐにブレーキランプ6を点灯でき、且つ、乗員がブレーキを強くかけなければパワーユニット4の始動が可能とならない構成とすることができ、安全性を向上できる。
【0074】
また、実施の形態1において、スイッチケーシング41d、43dに形成された突起41b、43bに嵌合して2つのスイッチ41、43を位置決めする嵌合穴は第1溝39b1および第2溝39b2であると説明したが、これは一例である。例えば、突起41b、43bに嵌合する2つの嵌合穴は、第1溝39b1および第3溝39b3である構成としてもよい。この場合、第1溝39b1および第3溝39b3は、互いに一直線上に配置されており、第1溝39b1の形成時に第3溝39b3を同時に形成することが容易である。このため、突起41b、43bに嵌合して2つのスイッチ41、43を位置決めする嵌合穴として第1溝39b1、第3溝39b3を用いることにより、ケーシング31の製造が容易になる。
【0075】
すなわち、ケーシング31は、2つのスイッチ41、43に形成された突起41b、43bと嵌合して2つのスイッチ41、43をそれぞれ位置決めする嵌合穴である第1溝39b1および第3溝39b3を有し、第1溝39b1および第3溝39b3は、一直線上に形成される構成としてもよい。
この構成によれば、2つのスイッチ41、43を位置決めするための複数の嵌合穴の形成が容易になり、ケーシング31の生産性を向上できる。
【0076】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0077】
上記実施の形態において、パワーユニット4はエンジンであり、インヒビタースイッチとしての第2スイッチ43はエンジンの始動を規制すると説明したが、これは一例である。パワーユニットは、例えばバッテリーから供給される電力で作動するモーターであり、第2スイッチ43は、モーターの始動を規制する構成としてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態において、CBSモジュール30には2つのスイッチ41、43が設けられると説明したが、これは一例である。例えば、CBSモジュール30は3つ以上のスイッチを有していてもよく、パワーユニット4およびブレーキランプ6以外の機器をこれらのスイッチによって制御する構成としてもよい。また、上記実施の形態において、2つのスイッチ41、43はそれぞれ2段階の出力を有するモーメンタリ式のスイッチであると説明したが、これは一例である。例えば、2つのスイッチ41、43は、3段階以上、または無段階の出力を有するスイッチであってもよく、オルタネイト式のスイッチであってもよい。
【0079】
また、上記実施の形態において、2つのスイッチ41、43は、イコライザ35が非操作位置P1にあるときには接触部35bと接触し、イコライザ35が最大操作位置P2にあるときには接触部35bと接触しないと説明したが、これは一例である。例えば、スイッチ41、43は、イコライザ35が非操作位置P1から最大操作位置P2までのどの移動位置にあっても接触部35bに接触する構成としてもよい。この場合、スイッチ41、43の出力は、例えばスイッチロッド41c、43cが押し込まれる距離に応じて切り替わることとなる。
【0080】
また、上記実施の形態において、ケーシング31の面のうち、最大の面である主面31a1は上方に向いた略水平な面であると説明したが、これは一例である。例えば、ケーシング31は、主面31a1が前方を向く姿勢でグリップ11aに取り付けられる構成としてもよい。この場合、主面31a1は上下方向に沿い、2つのスイッチ41、43は前後方向に並ぶ。このため、主面31a1が上下方向に沿い、且つ、2つのスイッチ41、43が上下方向に並ぶ場合に比べて、主面31a1の上下方向の寸法を小さくし易い。
【0081】
また、上記実施の形態において、前輪用ブレーキ17aは油圧式のディスクブレーキであり、後輪用ブレーキ17bは機械式のドラムブレーキであると説明したが、これは一例であり、それぞれ他の方式のブレーキを採用してもよい。
【0082】
また、上記実施の形態において、CBSモジュール30は、左側のグリップ11aに設けられ、左ブレーキレバー13aの操作力を前輪用ブレーキ17aおよび後輪用ブレーキ17bにそれぞれ分配すると説明したが、これは一例である。また、CBSモジュール30は、グリップ11aではなく、乗員の足を載せるステップ等の付近に設けられていてもよく、ブレーキペダルの操作力を前輪用ブレーキ17aおよび後輪用ブレーキ17bにそれぞれ分配する構成としてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態において、CBSモジュール30は、底面31b2が前下がりに傾斜する姿勢で配置され、排水孔31b3は、底面31b2のうち、車両前方側に位置すると説明したが、これは一例である。CBSモジュール30は、底面31b2が、水平方向に対して、前下がり以外のいずれかの方向に傾斜する姿勢で配置されていてもよい。例えば、CBSモジュール30は、底面31b2が後ろ下がり、すなわち、前上がりに傾斜する姿勢で配置されていてもよい。この場合、底面31b2のうち後方側に排水孔31b3が形成されていれば、排水孔31b3は底面31b2のうち下方側に位置するので、下ケース31b内の水を排水し易くなる。このように、底面31b2が水平方向に対してどの方向に傾斜した場合であっても、底面31b2のうち下方側に排水孔31b3を設けることにより、下ケース31b内の水が排水され易くなる。
【0084】
また、実施の形態1から5および他の実施の形態の各要素を任意に組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0085】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0086】
(構成1)ブレーキレバーと、前記ブレーキレバーの操作力を前輪用ブレーキに伝達する前輪用ブレーキ伝達部材と、前記操作力を後輪用ブレーキに伝達する後輪用ブレーキ伝達部材と、ケーシングに収容されたイコライザであって、前記前輪用ブレーキ伝達部材および前記後輪用ブレーキ伝達部材に一方側から接続され、前記ブレーキレバーの操作によって前記一方側から他方側に移動するイコライザと、前記一方側に向けて前記イコライザを付勢する付勢部材と、を備えた車両前後連動ブレーキ装置において、前記イコライザの前記一方側に配置された複数のスイッチを備え、前記イコライザは前記複数のスイッチと接触する接触部を備え、前記複数のスイッチは、前記イコライザの移動によって出力が切り替わる、車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、簡素な構造で、ブレーキに連動して複数のスイッチの出力を切り替えられる車両前後連動ブレーキ装置を実現できる。
【0087】
(構成2)前記ケーシングは、外面を形成する複数の面を有し、前記複数のスイッチは、前記複数の面のうち、面積が最も大きい面に対して交わる方向に並ぶ、構成1に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、複数のスイッチがケーシングのうち面積が最も大きい面に平行に並ばないため、面積が最も大きい面の面積が大きくなることを抑制できる。
【0088】
(構成3)
前記複数のスイッチは、前記前輪用ブレーキ伝達部材と前記後輪用ブレーキ伝達部材とが前記ケーシングにおいて並ぶ方向と異なる方向に並んでいる、構成1又は2に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、複数のスイッチが二つのブレーキ伝達部材とは異なる方向に並ぶ為、ケーシングが複数のスイッチが並ぶ方向に大きくなることを抑制できる。
【0089】
(構成4)前記接触部は平面形状である、構成1から3のいずれかに記載の車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、接触部を簡素な構造とすることができ、イコライザの製造が容易になる。
【0090】
(構成5)前記複数のスイッチのうち少なくとも1つは、他の前記スイッチよりも前記一方側に配置される、構成1から4のいずれかに記載の車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、ブレーキに連動して、スイッチの出力を異なるタイミングで切り替えることができる。
【0091】
(構成6)前記複数のスイッチのうち少なくとも1つは、他の前記スイッチと長さが異なる、構成1から5のいずれかに記載の車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、ブレーキに連動して、スイッチの出力を異なるタイミングで切り替えることができる。
【0092】
(構成7)前記接触部は、前記一方側に向けた段差を有する段差形状、もしくは、前記一方側に向けて傾斜した傾斜形状である、構成1または2に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、ブレーキに連動して、スイッチの出力を異なるタイミングで切り替えることができる。
【0093】
(構成8)前記複数のスイッチは、ストップスイッチとインヒビタースイッチとを含み、前記インヒビタースイッチは、前記ストップスイッチよりも前記他方側に配置される、構成4から7のいずれかに記載の車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、この構成によれば、ブレーキに対してストップスイッチの出力を素早く切り替え、ブレーキが強くかからない限りインヒビタースイッチの出力を切り替えないことができる。これにより、ブレーキをすぐに後続車に知らせ易くなり、誤発進も防止し易くなるため、安全性を向上し易くなる。
【0094】
(構成9)前記ケーシングは、前記イコライザを上方から覆う上ケースと、前記イコライザを下方から覆う下ケースと、を有し、前記下ケースは、下方に凹む凹部を有し、前記凹部の底面には水抜き用の排水孔を有する、構成1から8のいずれかに記載の車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、凹部を有する下ケースに水が入った場合でも、排水孔から水が抜け、水が下ケースに溜まることを抑制できる。
【0095】
(構成10)前記ケーシングは、前記下ケースの前記凹部の前記底面が傾斜する姿勢で配置され、前記排水孔は、前記底面のうち下方側に設けられる、構成9に記載の車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、凹部に水が入った場合、水が底面の上を下方側の排水孔に向けて流れ易くなるため、排水孔から水が抜けやすくなる。
【0096】
(構成11)前記ケーシングは、前記複数のスイッチに形成された突起と嵌合して前記複数のスイッチをそれぞれ位置決めする複数の嵌合穴を有し、前記複数の嵌合穴は、一直線上に形成される、構成1から10のいずれかに記載の車両前後連動ブレーキ装置。
この構成によれば、複数のスイッチを位置決めするための複数の嵌合穴の形成が容易になり、ケーシングの生産性を向上できる。
【符号の説明】
【0097】
5 車両前後連動ブレーキ装置
6 ブレーキランプ
13a 左ブレーキレバー(ブレーキレバー)
30 CBSモジュール
31 ケーシング
31a 上ケース
31a1 主面(面積が最も大きい面)
31b 下ケース
31b1 凹部
31b2 底面
31b3 排水孔
35 イコライザ
35b 接触部
36 付勢部材
39b1 第1溝(嵌合穴)
39b3 第3溝(嵌合穴)
41 第1スイッチ(スイッチ、ストップスイッチ)
41b 突起
43 第2スイッチ(スイッチ、インヒビタースイッチ)
43b 突起
51a 前輪用ブレーキワイヤ(前輪用ブレーキ伝達部材)
51b 前輪用ブレーキホース(前輪用ブレーキ伝達部材)
53 後輪用ブレーキワイヤ(後輪用ブレーキ伝達部材)
241 第1スイッチ(スイッチ、ストップスイッチ)
335b 接触部
435b 接触部
435b1 段差