IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-印刷装置 図1
  • 特開-印刷装置 図2
  • 特開-印刷装置 図3
  • 特開-印刷装置 図4
  • 特開-印刷装置 図5
  • 特開-印刷装置 図6
  • 特開-印刷装置 図7
  • 特開-印刷装置 図8
  • 特開-印刷装置 図9
  • 特開-印刷装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115107
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/13 20060101AFI20240819BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240819BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B41J29/13
B41J2/17 103
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020589
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】上山 直浩
(72)【発明者】
【氏名】湯本 裕矢
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA10
2C056HA38
2C056JC23
2C056KC02
2C061AQ05
2C061BB02
2C061BB33
2C061CD07
(57)【要約】
【課題】筐体内のミスト又は塵埃を排出するために排気装置を設ける必要がなく装置を小型化できる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、媒体に印刷を行う印刷ヘッド25が配置され、主走査方向Xに移動可能なキャリッジ24と、キャリッジ24を収容する筐体14とを備える。筐体14の側面部14Aには、主走査方向Xから見てキャリッジ24と重なる位置に開口31が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に印刷を行う印刷ヘッドが配置され、主走査方向に移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジを収容する筐体と、
を備え、
前記筐体において前記主走査方向に対向する2つの側面部のうちの一方には、前記主走査方向から見て前記キャリッジと重なる位置に開口が設けられていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記側面部には、前記開口を開閉可能な通気弁が設けられ、
前記通気弁は、前記キャリッジが前記開口に近づく方向に移動するときに前記キャリッジの進行方向前方に発生する第1気流により開き、前記キャリッジが前記開口から離れる方向に移動するときに前記キャリッジの進行方向後方に発生する第2気流により閉じることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記側面部には、前記開口に連通する屈曲流路が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記側面部は、
第1面部と、
前記主走査方向において、前記第1面部に対して前記筐体の内方側に所定の距離を隔てて配置され、且つ前記主走査方向と交差する高さ方向において前記第1面部と一部重なる第2面部と、
を有し、
前記開口は、前記第1面部と前記第2面部との間に設けられ、
前記第1面部と前記第2面部との間に前記屈曲流路が形成されることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1面部は、前記側面部に対して前記筐体の外側に広がるように斜めに設けられ、
前記第2面部は、上側が前記筐体の外側に倒れるように設けられていることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1面部は着脱可能に設けられることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記キャリッジは、前記媒体に印刷を行う印刷位置と、前記印刷ヘッドが印刷を行わないときに待機する待機位置とに移動可能に設けられ、
前記開口は、前記筐体において前記待機位置側の前記側面部に設けられることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記キャリッジが前記待機位置に移動したときに前記印刷ヘッドと対向する位置に配置され、キャップを有するメンテナンス部を備え、
前記キャリッジは、印刷中に定期又は不定期に前記待機位置に移動して前記印刷ヘッドから前記キャップに向けて液体を吐出する空吐出を行うことを特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記キャリッジは、前記主走査方向から見て、前記開口の縁の内側に設けられることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記開口には、フィルターが設けられることを特徴とする請求項9に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に印刷する印刷ヘッドが配置されるキャリッジを備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、インク等の液体を媒体に向けて吐出することで、媒体に印刷を行う印刷装置(インクジェットプリンター)が開示されている。筐体を構成する装置外装の背面には吸気用の開口部が有り、機内吸気ファンが搭載されている。装置外装背面にはキャリッジの背面が近接しており、キャリッジの背面の吸気用の開口部には、キャリッジ吸気ファンが搭載されている。キャリッジの正面である記録メディア(媒体の一例)の排出側には開口部が有り、キャリッジ排気ファンによりキャリッジ内部の空気を排気している。このような構成によって、インクミストの増加を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-179802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の印刷装置において、インクミストの排出のために、キャリッジ吸気ファン等のファン及びダクトを含む除去機構を設ける構成であるため、それらの設置スペースを確保するために、装置が大型化し易い、という課題がある。なお、装置外装内は、媒体の一例としての用紙や布帛から飛散する紙粉や糸繊維等の塵埃が浮遊する場合がある。塵埃が印刷ヘッドに付着すると印刷不良が発生し易くなる。よって、印刷装置として、インクジェットプリンター以外のレーザープリンターやドットインパクトプリンター等においても、塵埃を除去する目的で、除去機構を設けた場合、同様の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する印刷装置は、媒体に印刷を行う印刷ヘッドが配置され、主走査方向に移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを収容する筐体と、を備え、前記筐体において前記主走査方向に対向する2つの側面部のうちの一方には、前記主走査方向から見て前記キャリッジと重なる位置に開口が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態における印刷装置を示す斜視図である。
図2】印刷装置の筐体内の概略構成を示す模式正断面図である。
図3】筐体内の一部の構成を示す模式正断面図である。
図4】排気機構を示す模式側面図である。
図5】キャリッジが排気機構へ近づく方向に移動する際の排気動作を示す模式正断面図である。
図6】キャリッジが排気機構から離れる方向に移動する際の流入抑制動作を示す模式正断面図である。
図7】第2実施形態の排気機構を示し、キャリッジが排気機構へ近づく方向に移動する際の排気動作を示す模式正断面図である。
図8】キャリッジが排気機構から離れる方向に移動する際の流入抑制動作を示す模式正断面図である。
図9】排気機構を拡大した模式正断面図である。
図10】第3実施形態の排気機構を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、印刷装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の印刷装置11は、シリアルスキャン型(シリアル印刷型)のプリンターである。印刷装置11は、例えば、大判プリンター(ラージフォーマットプリンター)である。印刷装置11は、外部のホストコンピューターから供給された印刷データに含まれる画像データに応じて液滴(例えばインク)を吐出させることによって、用紙又は布帛等の媒体M(メディア)にドット群を形成し、これにより画像(文字や図形等を含む)を印刷するインクジェットプリンターである。
【0008】
なお、本実施形態では、印刷装置11において、後述するキャリッジ24の移動方向を主走査方向X、媒体Mの搬送方向を副走査方向Y、鉛直方向Zとして説明する。主走査方向Xは、媒体Mの幅方向でもあるので、幅方向Xともいう。また、主走査方向Xと、副走査方向Yと、鉛直方向Zとは互いに直交する3軸として図面に記載するが、各構成の配置関係が必ずしも直交するものに限定されるものではない。なお、図1の例では、鉛直上向きが高さ方向-Zである。
【0009】
本実施形態において、大判プリンターとは、A3短辺幅(297mm)以上の媒体Mにシリアル印刷を行うことが可能なプリンターである。そのため、印刷装置11では、図1に示される印刷ユニット23が、A3短辺幅以上の印刷幅でシリアル印刷が可能な移動範囲に亘り主走査方向Xに往復移動可能である。なお、印刷装置11は、A3短辺幅未満の媒体Mにシリアル印刷を行うことが可能な小型のプリンターであってもよい。
【0010】
<印刷装置11の構成>
まず図1を参照して、印刷装置11の概略構成を説明する。図1に示すように、印刷装置11は、キャスター12が下端に取り付けられた支持スタンド13と、支持スタンド13に支持された略直方体形状の筐体14とを有する。筐体14の後部において上方へ突出する給送部15内には、長尺の用紙又は布帛等の媒体Mが円筒状に巻き重ねられたロール体16が装填されている。給送部15によりロール体16から筐体14内へ供給された媒体Mは、筐体14内に設けられた不図示の搬送装置(搬送部)により図1に矢印で示す搬送方向Y1に搬送される。媒体Mの搬送方向Y1と直交する方向が幅方向Xである。なお、媒体Mの搬送方向Y1は、筐体14内において副走査方向Yと平行であるが、媒体Mの搬送経路上の位置に応じて変化する。
【0011】
印刷ユニット23は、搬送装置によって搬送される媒体Mに文字又は画像を印刷する。印刷後の媒体Mは、搬送方向Yに所定の長さに切断された後、筐体14の前面部に開口する排出口18から排出される。排出された媒体Mは、排出口18よりも下方の位置に取り付けられた媒体受けユニット19により受け取られる。なお、印刷後の媒体Mは、切断されることなくロール体として巻き取られてもよい。
【0012】
また、筐体14の上面端部には、ユーザーが印刷装置11の設定操作及び入力操作を行うための操作パネル20が設けられている。操作パネル20は、表示部及び操作ボタンを有する。表示部には、メニューやユーザーに印刷装置11の動作状態等を知らせる各種のメッセージ等が表示される。
【0013】
印刷装置11は、搬送装置及び印刷ユニット23を制御する制御部100を備える。制御部100は、ホスト装置(図示略)から受信した印刷データ又は操作パネル20の操作で指示された印刷指示に基づいて搬送装置及び印刷ユニット23を制御する。
【0014】
筐体14の一端下部には、液体収容ユニット21が設けられる。液体収容ユニット21には、液体の一例としてのインクを収容する複数(図1の例では4つ)の液体収容部22(例えばインクカートリッジ又はインクタンク)を着脱可能又は液体を補充可能な状態で取り付けられる。複数の液体収容部22は、それぞれ異なる種類(例えば色)の液体(例えばインク)を収容する。液体がインクの例では、複数の液体収容部22は、例えば、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)を含む複数色のインクをそれぞれ1色ずつ収容する。
【0015】
また、筐体14内には、媒体Mに印刷を行う印刷ユニット23が設けられている。印刷ユニット23は、主走査方向Xに移動可能に構成されるキャリッジ24と、キャリッジ24に配置された印刷ヘッド25とを有する。印刷ヘッド25は、媒体Mに印刷を行う。キャリッジ24において印刷ヘッド25は媒体Mの搬送経路と対向する位置に配置されている。図1に示すように、印刷ヘッド25は、キャリッジ24の下部に配置されてもよい。印刷ヘッド25は、例えば、インクジェット式の印刷ヘッドであってもよい。この場合、印刷ヘッド25は、媒体Mに対して液滴(インク滴)を吐出することで、媒体Mに印刷を行う。
【0016】
各液体収容部22から印刷ユニット23へは不図示のチューブを通じて各色の液体(インク)が供給される。なお、印刷装置11は、液体収容ユニット21が筐体14に取り付けられたオフキャリッジタイプの構成に限らず、キャリッジ24に複数の液体収容部22が取り付けられたオンキャリッジタイプの構成でもよい。
【0017】
<筐体14内の概略構成>
次に、図2を参照して、印刷装置11における筐体14内の概略構成について説明する。図2に示すように、筐体14は、キャリッジ24及び印刷ヘッド25が印刷時に主走査方向Xに移動する領域である走査領域SAを覆っている。印刷装置11は、筐体14内に、媒体Mを支持する支持部17を備える。支持部17は、例えば、上面にリブ(図示略)が形成された板状の支持部材であるプラテンである。支持部17は、プラテンに限定されず、媒体Mを載置する状態で回転することで媒体Mを搬送する無端状の搬送ベルトであってもよい。搬送ベルトは、複数のローラーに巻き掛けられており、そのうち1つの駆動ローラーが不図示のモーターの動力で回転することで、媒体Mを搬送する構成でもよい。
【0018】
筐体14は、主走査方向Xに対向する2つの側面部14Aを有する。側面部14Aには、排気機構30が設けられている。本実施形態では、2つの側面部14Aの両方に、排気機構30が設けられている。排気機構30の詳細な構成については後述する。
【0019】
図2に示すように、印刷装置11は、キャリッジ24を走査経路に沿って案内するガイドレール41と、キャリッジ24の駆動源であるキャリッジモーター42と、キャリッジモーター42の動力をキャリッジ24に伝達する動力伝達機構43とを備える。動力伝達機構43は、例えば、ベルト式動力伝達機構である。詳しくは、動力伝達機構43は、一対のプーリー44と、一対のプーリー44に巻き掛けられたタイミングベルト45とを備える。一方のプーリー44は、キャリッジモーター42の出力軸と連結されている。キャリッジ24は、タイミングベルト45の一部に固定されている。
【0020】
キャリッジ24は、キャリッジモーター42の駆動により、ガイドレール41に沿って主走査方向Xに往復移動可能に構成される。印刷ヘッド25は、キャリッジ24が主走査方向Xに移動する過程で、支持部17に支持された媒体Mに印刷する。シリアル印刷方式では、印刷ヘッド25が移動過程でインクを吐出することで行う1ライン(1走査)分の印刷を行う印刷動作と、搬送装置が次の印刷位置まで媒体Mを搬送する搬送動作とを交互に行うことで、媒体Mに画像等が印刷される。
【0021】
印刷装置11は、印刷ヘッド25をメンテナンスするメンテナンス部46を備える。キャリッジ24は非印刷時に図2に二点鎖線で示す待機位置であるホーム位置HPで待機する。メンテナンス部46は、キャリッジ24がホーム位置HPにあるときの印刷ヘッド25と対向する位置に配置されている。メンテナンス部46は、本体47と、本体47に対し昇降可能に設けられたキャップ48とを備える。キャップ48は、キャリッジ24がホーム位置HPに移動したときに印刷ヘッド25と対向する。
【0022】
キャップ48は、本体47に対して昇降することで、印刷ヘッド25のノズル面25Aと接触するキャッピング位置と、ノズル面25Aから離間する図2に示す退避位置との間を移動可能に構成される。本体47には、ポンプ(図示略)が設けられる。キャップ48がノズル面25Aに接触するキャッピング状態の下でポンプが駆動されることで、印刷ヘッド25のノズル26(図3参照)からインクを強制的に排出するクリーニングが行われる。また、キャリッジ24は印刷中に定期又は不定期にホーム位置HPに移動して印刷ヘッド25からキャップ48に向けて液体を吐出する空吐出を行う。なお、空吐出の詳細は後述する。
【0023】
印刷中に印刷ヘッド25のノズル26から吐出されたインクのうち媒体Mの印刷に使用されず、浮遊や飛散などしたインク滴が筐体14内に存在する。そのため、図1に示すように、印刷装置11は、筐体14の側面部14Aに排気機構30を備える。
【0024】
図2に示すように、キャリッジ24は、媒体Mに印刷を行う印刷位置と、印刷ヘッド25が印刷を行わないときに待機する待機位置とに移動可能に設けられる。本実施形態において、待機位置は、ホーム位置HPである。ホーム位置HPには、メンテナンス部46が設けられている。
【0025】
主走査方向Xにおいて走査領域SAのうち中央部は、幅サイズの異なる複数種の媒体Mが共通に通る領域である。そのため、走査領域SAの中央部は、両端部に比べ、印刷ヘッド25からのインクの吐出頻度の高い領域である。
【0026】
印刷中において、キャリッジ24は、走査領域SAの中央部を移動する頻度が高い。
<排気機構30の詳細な構成>
次に、図3図4を参照して、第1実施形態における排気機構30の詳細な構成を説明する。図3図4に示すように、排気機構30は、側面部14Aに設けられた開口31と、開口31を開閉する通気弁32とを備える。通気弁32は、側面部14Aの外側に配置されている。通気弁32は、キャリッジ24の移動に応じて生じる気流の筐体14外への流出時に開き、気流の筐体14内への流入時に閉じるように構成される。
【0027】
図3に示すように、筐体14内(走査領域SA)でキャリッジ24が主走査方向Xに移動するとき、キャリッジ24の進行方向前方にはキャリッジ24が空気を押す作用によってその進行方向と同じ向きの第1気流F1が発生するとともに、その進行方向後方にはキャリッジ24に引き込まれる空気によって進行方向と同じ向きの第2気流F2が発生する。
【0028】
より詳しくは、図3に示すように、キャリッジ24がホーム位置HPに向かう-X方向に移動するときに、キャリッジ24の進行方向前方に-X方向の向きの第1気流F1が発生する。また、キャリッジ24の進行方向後方に-X方向の向きの第2気流F2が発生する。一方、キャリッジ24がホーム位置HPから離れる+X方向に移動するときに、キャリッジ24の進行方向前方に+X方向の向きの第1気流F1が発生するとともに、キャリッジ24の進行方向後方に+X方向の向きの第2気流F2が発生する。
【0029】
通気弁32は、キャリッジ24が開口31に近づく第1方向に移動するときにキャリッジ24の進行方向前方に発生する第1気流F1により開き、キャリッジ24が開口31から離れる第2方向に移動するときにキャリッジ24の進行方向後方に発生する第2気流F2により閉じる。
【0030】
図4に示すように、通気弁32は、側面部14Aに対して回動可能に取着された回動軸33と、回動軸33に一端部が固定された板状の弁体34とを有する。回動軸33は、側面部14Aの外面に設けられた軸受部35(図5参照)に回動可能に支持される。
【0031】
また、図4に示すように、開口31は、主走査方向Xから見て図4に二点鎖線で示すキャリッジ24と重なる位置に設けられている。本実施形態では、主走査方向Xから見て、複数の開口31が、キャリッジ24の一部と重なる位置に設けられている。具体的には、搬送方向Yを長手方向とする細長い矩形の開口31が、鉛直方向Zに複数(図4では例えば4つ)配置されている。通気弁32は、閉弁状態において複数の開口31を覆う大きさを有する。詳しくは、通気弁32の閉弁状態において、側面部14Aの外側には、2つずつの開口31を覆う2つの通気弁32が設けられている。
【0032】
図5に示すように、キャリッジ24(図3参照)の進行方向前方に発生する第1気流F1は、通気弁32を開いて開口31から第3気流F3として排出される。筐体14内のミスト又は塵埃は、第3気流F3と一緒に筐体14外へ排出される。
【0033】
また、図6に示すように、キャリッジ24(図3参照)の進行方向後方に発生する第2気流F2は、通気弁32に閉じる方向に作用するので、開口31が通気弁32によって閉じられる。このため、開口31から外部の空気が筐体14内へ流入することが阻止される。
【0034】
図2に示すように、開口31は、筐体14においてキャリッジ24の待機位置であるホーム位置HP側の側面部14Aに設けられている。本実施形態では、開口31は、筐体14においてホーム位置HP側の側面部14Aと、ホーム位置HPとは反対側の反ホーム位置(反待機位置)側の側面部14A(図2参照)との両方に設けられている。
【0035】
ここで、印刷装置11の主走査方向Xにおいて媒体Mを搬送する基準位置には、一般に、片側の端部を基準にする片寄せ方式と、中央を基準にする中央寄せ方式とがある。つまり、媒体Mの搬送方式には、主走査方向X(幅方向X)において、媒体Mを走査領域SAの片側に寄せて搬送する片寄せ方式と、走査領域SAの中央に寄せて搬送する中央寄せ方式とがある。
【0036】
片寄せ方式の場合、幅サイズの異なる複数種の媒体Mは走査領域SAの片側に寄せた状態で搬送される。このため、媒体Mに印刷するときのキャリッジ24は、筐体14内において片側に寄せた領域を往復移動する。このため、媒体Mが寄せられる側の排気機構30の近くで比較的大きな第1気流F1が発生する。このため、媒体Mの幅サイズに依らず、一方の排気機構30の近くに発生する比較的大きな第1気流F1によって、筐体14内のミスト又は塵埃が開口31から効率よく排出される。
【0037】
一方、中央寄せ方式の場合、幅サイズの異なる複数種の媒体Mが共通に通る領域が中央領域である。そのため、中央寄せ方式の場合、幅サイズの小さい媒体Mに印刷する際は、キャリッジ24は走査領域SAの中央領域のみで往復移動する頻度が高くなる。この場合、キャリッジ24が移動過程で発生する第1気流F1の発生エリアが側面部14Aから離れた中央エリアになるので、キャリッジ24が発生させる気流を利用して筐体14内のミストや塵埃を排気機構30から排出する排出効率が低下する。
【0038】
そこで、本実施形態の印刷装置11は、中央寄せ方式であるが、キャリッジ24が走査領域SAの中央領域のみで往復移動する印刷を行う場合であっても、所定以上の頻度でキャリッジ24が排気機構30の近くまで移動することで、排気機構30の近くに比較的大きな第1気流F1を発生させる。これにより、印刷中において高い排出効率で筐体14内のミスト及び塵埃を排出できる頻度を所定以上確保される。
【0039】
一方、印刷ヘッド25による印刷は、全ノズル26のうち印刷データに含まれる画像データの画素に対応するノズル26からインクを吐出することで行われる。このため、全ノズル26には、印刷内容に応じて、吐出頻度の高いノズル26と、吐出頻度の低いノズル26と、吐出頻度が零の不使用のノズル26とがある。不使用ノズルでは、インクの吐出によるノズル26内のインクの交換(リフレッシュ)がなされないので、ノズル26内のインクの増粘に起因するノズル26の目詰まりが発生し易い。キャリッジ24は、印刷中において定期的にホーム位置HPに移動して印刷ヘッド25の全てのノズル26からインクを吐出する空吐出(「フラッシング」とも呼ばれる)を行う。印刷ヘッド25の全てのノズル26から印刷とは関係のない空吐出を行うことで、不使用ノズル内のインクの増粘に起因する目詰まりを抑制する。
【0040】
このように、キャリッジ24は、印刷中において所定時間ごとにホーム位置HPに移動することで、ホーム位置HPにおいて印刷ヘッド25の全てのノズル26からキャップ48に向けてインクを吐出する空吐出を行う。このようにキャリッジ24は、媒体Mの幅サイズに関係なく、定期的に空吐出を行うために待機位置であるホーム位置HPまで移動する。そのため、筐体14には2つの側面部14Aのうち少なくともホーム位置HP側の一方の側面部14Aに、排気機構30が設けられている。このため、空吐出を行うためにキャリッジ24がホーム位置HPに移動する頻度で、ホーム位置HP側の排気機構30の近くに比較的大きな第1気流F1を発生させることが可能になる。
【0041】
<実施形態の作用>
次に、本実施形態の印刷装置11の作用について説明する。
キャリッジ24が側面部14Aに近づく方向を第1方向、キャリッジ24が側面部14Aから離れる方向を第2方向とする。2つの側面部14Aに設けられた2つの排気機構30の作用は同様なので、以下では、図3等を用いて、一方の側面部14Aに設けられた1つの排気機構30による作用を説明する。なお、図3は、ホーム位置HP側の排気機構30を示す。
【0042】
印刷時は、制御部100が、キャリッジモーター42を制御することによりキャリッジ24は主走査方向Xに往復移動する。キャリッジ24が主走査方向Xに移動する途中で印刷ヘッド25のノズル26からインク等の液体が吐出されることで媒体Mに印刷される。シリアル記録方式の印刷装置11では、制御部100の制御により、搬送装置が媒体Mを次の印刷位置まで搬送する搬送動作と、印刷位置にある媒体Mに対して主走査方向Xに移動する印刷ヘッド25が1走査分の印刷を行う印刷動作とを交互に行うことで、媒体Mに画像等が印刷される。
【0043】
印刷中においては、印刷ヘッド25のノズル26からインク等の液体が吐出する際にインクミスト等のミストが発生する。また、媒体Mが搬送されるときの擦れ等に起因し、媒体Mが用紙である場合に紙粉の塵埃が発生したり、媒体Mが布帛である場合に糸繊維等の塵埃が発生したりする。
【0044】
図3に示すように、キャリッジ24が排気機構30に近づく第1方向(-X)に移動するときは、キャリッジ24が筐体14内の空気を押すことによって、キャリッジ24の進行方向前方にキャリッジ24の進行方向と同じ向きの第1気流F1が発生する。排気機構30では、第1気流F1によって通気弁32が開くことで、筐体14内のミスト及び塵埃が開口31を通じて空気とともに筐体14外へ排出される。
【0045】
キャリッジ24が排気機構30から離れる第2方向(+X)に移動するときは、キャリッジ24の進行方向後方ではキャリッジ24が空気を引き込むことによって、キャリッジ24の進行方向と同じ向きの第2気流F2が発生する。排気機構30では、第2気流F2によって通気弁32が閉じることで、筐体14の外部へ一旦排出されたミスト及び塵埃が開口31を通じて筐体14内に再流入することが抑制される。また、筐体14外の新たな塵埃等が空気と共に筐体14内に流入することが抑制される。
【0046】
こうしてキャリッジ24が印刷中に主走査方向Xに往復移動することにより、キャリッジ24の進行方向前方の開口31からミストや塵埃が筐体14外へ排出されるとともに、進行方向後方の開口31からのミストや塵埃の筐体14内への流入が抑制される。
【0047】
このように、第1実施形態では、キャリッジ24が主走査方向Xに移動するときに発生する第1気流F1を利用して印刷中に筐体14内に発生するミストや塵埃を筐体14外へ排出することができる。さらに、キャリッジ24が主走査方向Xに移動するときに発生する引き込み気流である第2気流F2が発生しても、その第2気流F2によって通気弁32が閉じるので、ミストや塵埃の筐体14内への再流入や新たな塵埃の筐体14内への流入を抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、2つの側面部14Aのうちキャリッジ24の待機位置である少なくともホーム位置HP側の側面部14Aに、排気機構30が設けられている。例えば、幅サイズの小さな媒体Mの印刷時、又は媒体Mの幅方向中央部に集中して印刷される時は、印刷中のキャリッジ24は走査領域SAの中央領域の範囲で往復移動する。この場合、第1気流F1が排気機構30から離れた位置で発生するだけなので、第1気流F1によって筐体14内のミストや塵埃を筐体14外に排出する排出効率が低下する。つまり、第1気流F1による筐体14内のミストや塵埃の筐体14外への効果的な排出が困難である。
【0049】
また、媒体Mの搬送方式が中央寄せ方式である印刷装置11においては、走査領域SAの中央領域で主に印刷が行われる。このため、中央寄せ方式の印刷装置11では、片寄せ方式の印刷装置11に比べ、開口31の近くに比較的大きな第1気流F1が発生しにくい。このように中央寄せ方式の場合は、片寄せ方式に比べ、第1気流F1による筐体14内のミストや塵埃の筐体14外への効果的な排出がさらに困難である。
【0050】
しかし、印刷中のキャリッジ24は定期的に待機位置であるホーム位置HPに移動してキャップ48に向かって全ノズル26からインク等の液体を吐出する空吐出を行う。この空吐出を行うときは、キャリッジ24がホーム位置HPまで移動するので、排気機構30に向かって比較的大きな第1気流F1が発生する。よって、印刷が主走査方向Xの中央領域に限定して行われる場合でも、その印刷中に空吐出と同じ頻度で定期的にキャリッジ24がホーム位置HPまで移動する際に比較的大きな第1気流F1によって筐体14内のミストや塵埃を、排気機構30の開口31から排出することができる。
【0051】
さらには、印刷が終了すると、キャリッジ24はホーム位置HPまで移動し、ホーム位置HPにおいて印刷ヘッド25のノズル面25Aにキャップ48が接触することで印刷ヘッド25がキャッピングされる。この印刷終了時にも、キャリッジ24はホーム位置HPまで移動するので、排気機構30に向かって比較的大きな第1気流F1が発生する。よって、印刷が主走査方向Xの中央領域に限定して行われる場合でも、1回の印刷が終了する度にキャリッジ24がホーム位置HPまで移動する際に比較的大きな第1気流F1によって、筐体14内のミストや塵埃を、排気機構30の開口31から排出することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、筐体14の2つの側面部14Aにそれぞれ排気機構30が設けられている。そのため、幅広の媒体Mに印刷するときは、キャリッジ24が主走査方向Xに1回移動する度に、開口31近くに発生する比較的大きな第1気流F1によって、印刷中に発生したミストや塵埃を、開口31から筐体14外に排出できる。
【0053】
よって、第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)印刷装置11は、媒体Mに印刷を行う印刷ヘッド25が配置され、主走査方向Xに移動可能なキャリッジ24と、キャリッジ24を収容する筐体14とを備える。筐体14の側面部14Aには、主走査方向Xから見てキャリッジ24と重なる位置に開口31が設けられている。この構成によれば、キャリッジ24の移動により発生する風の流れ(第1気流F1)を利用して、筐体14内に滞留するミスト又は塵埃を側面部14Aの開口31から排出できる。よって、筐体14内のミスト又は塵埃を排出するためにファン等の排気装置を設ける必要がないため、排気装置を備える構成に比べ、印刷装置11を小型化できる。また、排気装置を備える構成に比べ、ファンを駆動させる電力が不要なので、印刷装置11の消費電力の低減にも寄与する。
【0054】
(2)側面部14Aには、開口31を開閉可能な通気弁32が設けられている。通気弁32は、キャリッジ24が開口31に近づく第1方向に移動するときにキャリッジ24の進行方向前方に発生する第1気流F1により開き、キャリッジ24が開口31から離れる第2方向に移動するときにキャリッジ24の進行方向後方に発生する第2気流F2により閉じる。この構成によれば、キャリッジ24が開口31に近づく第1方向に移動するときにキャリッジ24の進行方向前方に発生する第1気流F1により通気弁32が開口31を開く。また、キャリッジ24が開口31から離れる第2方向に移動するときにキャリッジ24の進行方向後方に発生する第2気流F2により通気弁32が開口31を閉じる。この結果、筐体14内のミスト又は塵埃を開口31から排出できるうえ、筐体14外へ一旦排出したミスト又は塵埃の開口31からの再流入、あるいは筐体14外から新たな塵埃等の流入を抑制できる。
【0055】
(3)キャリッジ24は、媒体Mに印刷を行う印刷位置と、印刷ヘッド25が印刷を行わないときに待機する待機位置とに移動可能に設けられる。開口31は、筐体14において待機位置(例えば、ホーム位置HP)側の側面部14Aに設けられる。この構成によれば、媒体Mの幅種に関係なく、所定の頻度で筐体14内のミスト又は塵埃を開口31から排出できる。印刷が終了してキャリッジ24が待機位置であるホーム位置HPへ移動する頻度以上の頻度で、筐体14内のミストや塵埃を開口31から筐体14外へ排出できる。
【0056】
(4)キャリッジ24が待機位置に移動したときに印刷ヘッド25と対向する位置には、キャップ48を有するメンテナンス部46が設けられ、キャリッジ24は印刷中に定期又は不定期に待機位置に移動して印刷ヘッド25からキャップ48に向けて液体を吐出する空吐出を行う。この構成によれば、キャリッジ24が印刷中に定期又は不定期に待機位置へ移動して行われる空吐出の頻度以上の頻度で、開口31の近くまで移動するので、排出効率の低下を回避できる。例えば、待機位置と反対側の側面部14Aのみに開口31が設けられる構成の場合、印刷中にキャリッジ24が開口31の近くまで移動する頻度が少なくなる場合が起こりうる。この場合、筐体14内のミスト又は塵埃の排出効率が低下する可能性がある。これに対して、キャリッジ24が印刷中に空吐出の頻度以上の頻度で開口31の近くまで移動するので、排出効率の低下を回避し易い。
【0057】
<第2実施形態>
次に、図7図9を参照して、第2実施形態の排気機構30について説明する。なお、第2実施形態では、排気機構30の構成が、前記第1実施形態と異なるのみで、印刷装置11のその他の構成は基本的に前記第1実施形態と同様である。そのため、排気機構30の構成を中心に説明する。
【0058】
図7に示すように、本実施形態の排気機構30は、通気弁32を備えない構成である。側面部14Aには、開口31に連通する流路を屈曲させた屈曲流路54が設けられている。第2実施形態の排気機構30は、屈曲流路54を形成する排気構造50により構成される。排気構造50は、屈曲流路54によって、第1気流F1による筐体14内からのミスト及び塵埃(以下、「ミスト等」ともいう。)の排出と、第2気流F2による筐体14外からのミスト等の再流入の抑制とを実現する。
【0059】
図7に示すように、排気構造50は、第1面部51と、主走査方向Xにおいて第1面部51に対して筐体14の内方側に所定の距離を隔てて配置され、且つ主走査方向Xと交差する高さ方向-Zにおいて第1面部51と一部重なる第2面部52とを有する。開口31は、第1面部51と第2面部52との間に設けられる。
【0060】
第1面部51は、側面部14Aから筐体14の外側に広がるように斜めに設けられる。第1面部51は、上端部よりも下端部の方が筐体14の外側に位置する。
第2面部52は、上側が外側に倒れるように設けられる。本実施形態の第2面部52は、図7に示す正面視における断面形状が略L字状を呈している。略L字状を呈する第2面部52の外側の角部には凹部53が形成されている。
【0061】
図9に示すように、第2面部52は、鉛直方向Zに沿うように延びる第1板部55と、第1板部55の下端部から略水平に延びる第2板部56とを有する。そして、第1板部55と第2板部56とにより前述の正面視で略L字状を呈する第2面部52が形成される。
【0062】
第1面部51は、第2面部52を構成する第2板部56に対して上端部が接続されている。そして、第1面部51は、その上端部に対してその下端部が筐体14の外側(図9では-X方向側)に位置するように、鉛直方向Zに対して外側に広がっている。開口31は、第1板部55の上端面と、第2板部56の下面との間に形成される。なお、開口31の形成位置は、第1面部51と第2面部52との間でもある。
【0063】
第2板部56の下面と第1面部51の内面とのなす角度である第1角度θ1は、鈍角である。第1面部51は、第1角度θ1が鈍角になるように外側に広がっている。このため、図7に示すように、第1気流F1は、開口31から第1面部51に沿って案内されることで、斜め下向きの第3気流F3として排出される。
【0064】
図9に示すように、正面視が略L字状の第2面部52は、第1板部55が第2板部56に近づく方向に第1板部55を少し傾けた形状を呈する。このため、凹部53を形成する第1板部55の外面と第2板部56の上面とのなす角度である第2角度θ2は鋭角である。図8に示すように、筐体14内に第2気流F2が発生したとき、筐体14の外部からは第1面部51に沿って案内されて開口31に至る斜め上向きの第4気流F4が開口31から流入する。第1板部55が外側へ少し倒れているので、第4気流F4が開口31に至る途中で第1板部55が一種の障壁となるので、第4気流F4に含まれる塵埃DS等は、第1板部55の手前に位置する凹部53に溜まり易い。
【0065】
また、図9に示すように、第1面部51は着脱可能に設けられる。第1面部51は先端部に係止突起57を有する。また、第2面部52は、第1面部51の先端部が接続される部分に係止凹部58を有する。第1面部51は、係止突起57と係止凹部58との係止により、第2面部52に対して鈍角の第1角度θ1をなす斜め下向きに延びた状態で接続される。
【0066】
一方、凹部53に溜まった塵埃DS等を除去するときは、図9に示すように、第1面部51を第2面部52から取り外す。これにより、凹部53に溜まった塵埃DS等を除去する清掃作業がし易くなる。
【0067】
よって、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に効果(1),(3),(4)が同様に得られる他、以下の効果が得られる。
(5)側面部14Aには、開口31に連通する屈曲流路54が設けられている。この構成によれば、筐体14外から流入する空気の流れに、筐体14から一旦排出したミスト又は塵埃が含まれていても、屈曲流路54の屈曲した部分(凹部53)にミスト又は塵埃が溜まりやすい。この結果、筐体14から一旦排出したミスト又は塵埃の筐体14内への再流入を抑制できる。例えば、第1実施形態における通気弁32のような弁構造が不要になるので、第1実施形態に比べ簡単な構成で済む。
【0068】
(6)側面部14Aは、第1面部51と、主走査方向Xにおいて、第1面部51と所定の距離を置いて配置され、且つ主走査方向Xと交差する高さ方向-Zにおいて前記第1面部51と一部重なる第2面部52と、を有する。開口31は、第1面部51と第2面部52との間に設けられる。この構成によれば、第1面部51と第2面部52との配置により、側面部14Aに屈曲流路54を形成できる。よって、簡単な構成で、筐体14から一旦排出したミスト又は塵埃の筐体14内への再流入、あるいは筐体14外から新たな塵埃等の流入を抑制できる。
【0069】
(7)第1面部51は、側面部14Aに対して筐体14の外側に広がるように斜めに設けられる。第2面部52は、上側が筐体14の外側に倒れるように設けられる。この構成によれば、第1面部51は、筐体14の外側に広がるように斜めに設けられているので、気流が筐体14外に出やすい。第2面部52は、上側が筐体14の外側に倒れるように設けられているので、開口31から流入する気流中のミスト又は塵埃が第2面部52の外側に溜まりやすい。よって、筐体14内のミスト又は塵埃を効果的に排出できるうえ、筐体14から一旦排出したミスト又は塵埃の筐体14内への再流入、あるいは筐体14外から新たな塵埃等の流入を効果的に抑制できる。
【0070】
(8)第1面部51は着脱可能に設けられる。この構成によれば、第1面部51を取り外すことで、第2面部52の外側に溜まったミスト又は塵埃の回収が容易になる。
<第3実施形態>
次に、図10を参照して、第3実施形態の排気機構30について説明する。なお、第3実施形態では、排気機構30の構成が、前記第1及び第2実施形態と異なり、その他の印刷装置11の基本的な構成は、前記第1実施形態と同様である。
【0071】
図10に示すように、開口31は、側面部14Aに形成される1つの大きな開口であってもよい。キャリッジ24は、主走査方向Xから見て、開口31の周縁の内側に設けられてもよい。このため、キャリッジ24が開口31に近づく第1方向に移動するときにキャリッジ24の進行方向前方に発生する第1気流F1を、効率良く開口31から排出できる。この結果、キャリッジ24の移動時に発生する気流を利用して、筐体14内のミスト又は塵埃を効率良く排出できる。さらに、開口31には、フィルター60が設けられてもよい。
【0072】
よって、この第3実施例によれば、以下の効果が得られる。
(9)キャリッジ24は、主走査方向Xから見て、開口31の周縁の内側に設けられる。この構成によれば、キャリッジ24が移動する過程で空気を押すことでその進行方向前方に発生する気流が開口31を通る通気量を効果的に高めることができる。よって、筐体14内のミスト又は塵埃を排出する際の排出効率を高めることができる。
【0073】
(10)開口31には、フィルター60が設けられる。この構成によれば、キャリッジ24が筐体14内を開口31から離れる第2方向に移動するときにキャリッジ24が空気を引き込むことでその進行方向後方に発生する第2気流F2によって開口31を通じて流入する気流は、フィルター60を通過する。よって、筐体14内から一旦排出したミスト又は塵埃の筐体14内への再流入、あるいは筐体14外から新たな塵埃等の流入を抑制できる。
【0074】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
【0075】
・各実施形態において、排気機構30は、2つの側面部14Aのうちの一方のみに設けられてもよい。例えば、2つの側面部14Aのうちキャリッジ24の待機位置側の側面部14Aのみに排気機構30を設けてもよいし、キャリッジ24の待機位置とは反対側の側面部14Aのみに排気機構30を設けてもよい。この構成でも、キャリッジ24が排気機構30に近づく方向に移動するときに筐体14内のミスト又は塵埃を開口31から筐体14外へ排出できる。
【0076】
・第1実施形態において、通気弁32が閉弁状態にあるときに開口31を覆う構成は、1つの通気弁32が複数の開口31の全てを覆ってもよいし、複数の通気弁32が1つずつの開口31を覆う構成でもよい。また、側面部14Aの開口31が1つであり、1つの通気弁32が1つの開口31を覆う構成でもよい。さらに、1つの開口31を複数の通気弁32により覆う構成でもよい。
【0077】
・第1実施形態において、通気弁32は、第1気流F1で開弁し、第2気流F2で閉弁する構成であれば、弁の種類は適宜選択してよい。
・第1実施形態において、通気弁32は、第1気流F1で開弁し、第2気流F2で閉弁するように構成できれば、側面部14Aの内側に配置されてもよい。
【0078】
・第1実施形態において、通気弁32は、閉じ方向にばね等の弾性部材により付勢されてもよい。
・第1実施形態において、筐体14の側面部14Aの外側に側面部14A及び通気弁32を覆うカバーを設けてもよい。カバーには開口31及び通気弁32と対応する部分にスリット孔等の通気孔を設けてもよい。この構成であれば、通気弁32が外部に露出する構成に比べ、通気弁32を保護することができる。
【0079】
・第2実施形態において、キャリッジ24は、主走査方向Xから見て、開口31の縁の内側に設けられてもよい。すなわち、第2実施形態の屈曲流路54と、第3実施形態の開口31とを組み合わせてもよい。このように大きなサイズの開口31が1つでも、筐体14内のミスト又は塵埃を効率よく排出できるうえ、屈曲流路54によりミストや塵埃の再流入を抑制できる。
【0080】
・第2実施形態において、屈曲流路54に案内されて排出される第3気流F3の向きは、斜め下向きに限らず、斜め上向き、斜め後向き、斜め前向きなどであってもよい。
・第1実施形態の通気弁32と、第2実施形態の屈曲流路54とを組み合わせてもよい。
【0081】
・印刷装置11は、インクジェット式印刷装置などの液体吐出装置に限定されない。液体吐出装置以外の印刷装置では、印刷時にミストは発生しないが、紙粉や糸繊維など媒体Mから発生する塵埃を筐体14外に排出したい場合がある。このような排出が必要な印刷装置において、排気機構30を設けてもよい。よって、印刷装置11は、レーザー式の印刷装置(レーザープリンター)、ドットインパクト方式の印刷装置(ドットインパクトプリンター)、感熱式の印刷装置などであってもよい。これらの印刷装置は、媒体Mから発生する紙粉又は糸繊維等の塵埃を、キャリッジ24の移動に応じて発生する風の流れを利用して排気機構30の開口31から筐体14外に排出することができる。
【0082】
・媒体Mは、用紙等の媒体Mに限らず、布や不織布などの布帛でもよいし、合成樹脂製のフィルムやシート、ラミネート媒体などでもよい。
・印刷装置11は、捺染装置でもよい。捺染装置は、インクジェット印刷方式であってもよい。
【0083】
以下、前記実施形態及び変更例から把握される技術思想を効果と共に記載する。
(A)印刷装置は、媒体に印刷を行う印刷ヘッドが配置され、主走査方向に移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを収容する筐体と、を備え、前記筐体において前記主走査方向に対向する2つの側面部のうちの一方には、前記主走査方向から見て前記キャリッジと重なる位置に開口が設けられている。
【0084】
この構成によれば、キャリッジの移動により発生する風の流れ(気流)を利用して、筐体内のミスト又は塵埃を側面部の開口から排出できる。よって、筐体内のミスト又は塵埃を排出するためにファン等の排気装置を設ける必要がない。そのため、排気装置を備える構成に比べ、印刷装置を小型化できる。なお、排気装置を備える構成に比べ、ファンを駆動させる電力が不要なので、印刷装置の消費電力の低減にも寄与する。
【0085】
(B)上記(A)に記載の印刷装置において、前記側面部には、前記開口を開閉可能な通気弁が設けられ、前記通気弁は、前記キャリッジが前記開口に近づく方向に移動するときに前記キャリッジの進行方向前方に発生する第1気流により開き、前記キャリッジが前記開口から離れる方向に移動するときに前記キャリッジの進行方向後方に発生する第2気流により閉じてもよい。
【0086】
この構成によれば、キャリッジが開口に近づく第1方向に移動するときにキャリッジの進行方向前方に発生する進行方向と同じ向きの第1気流により通気弁が開口を開く。また、キャリッジが開口から離れる第2方向に移動するときにキャリッジの進行方向後方に進行方向と同じ向きに発生する第2気流により通気弁が開口を閉じる。この結果、筐体内のミスト又は塵埃を開口から排出できるうえ、筐体外へ一旦排出したミスト又は塵埃等の開口からの再流入を抑制できる。
【0087】
(C)上記(A)に記載の印刷装置において、前記側面部には、前記開口に連通する屈曲流路が設けられてもよい。
この構成によれば、筐体外から流入する空気の流れに、筐体から一旦排出したミスト又は塵埃が含まれていても、屈曲流路の屈曲した部分にミスト又は塵埃が溜まりやすい。この結果、筐体内へのミスト又は塵埃の流入を抑制できる。例えば、通気弁のような弁構造が不要になるので、弁構造を有する構成に比べ、簡単な構成で済む。
【0088】
(D)上記(C)に記載の印刷装置において、前記側面部は、第1面部と、前記主走査方向において、前記第1面部に対して前記筐体の内方側に所定の距離を隔てて配置され、且つ前記主走査方向と交差する高さ方向において前記第1面部と一部重なる第2面部と、を有し、前記開口は、前記第1面部と前記第2面部との間に設けられ、前記第1面部と前記第2面部との間に前記屈曲流路が形成されてもよい。
【0089】
この構成によれば、側面部には、第1面部と第2面部との間に、開口と連通する屈曲流路が形成される。よって、簡単な構成で、筐体内からミスト又は塵埃を排出できるうえ、筐体内から一旦排出したミスト又は塵埃の筐体内へ再流入を抑制できる。
【0090】
(E)上記(D)に記載の印刷装置において、前記第1面部は、前記側面部に対して前記筐体の外側に広がるように斜めに設けられ、前記第2面部は、上側が前記筐体の外側に倒れるように設けられてもよい。
【0091】
この構成によれば、第1面部は、筐体の外側に広がるように斜めに設けられているので、気流が筐体外に出やすい。第2面部は、上側が筐体の外側に倒れるように設けられているので、開口から流入する気流中のミスト又は塵埃が第2面部の外側に溜まりやすい。よって、筐体内のミスト又は塵埃を効果的に排出できるうえ、筐体から一旦排出したミスト又は塵埃の筐体内への再流入を効果的に抑制できる。
【0092】
(F)上記(D)又は上記(E)に記載の印刷装置において、前記第1面部は着脱可能に設けられてもよい。
この構成によれば、第1面部を取り外すことで、第2面部の外側に溜まったミスト又は塵埃の回収が容易になる。
【0093】
(G)上記(A)~(F)のいずれか一つに記載の印刷装置において、前記キャリッジは、前記媒体に印刷を行う印刷位置と、前記印刷ヘッドが印刷を行わないときに待機する待機位置とに移動可能に設けられ、前記開口は、前記筐体において前記待機位置側の前記側面部に設けられてもよい。
【0094】
この構成によれば、媒体の幅種に関係なく所定の頻度で筐体内のミスト又は塵埃を開口から排出できる。例えば、キャリッジは印刷が終了すると、待機位置に向かって開口の近くまで移動するので、筐体内のミスト又は塵埃を高い排出効率で排出できる頻度が高まる。
【0095】
(H)上記(G)に記載の印刷装置は、前記キャリッジが前記待機位置に移動したときに前記印刷ヘッドと対向する位置に配置され、キャップを有するメンテナンス部を備え、前記キャリッジは、印刷中に定期又は不定期に前記待機位置に移動して前記印刷ヘッドから前記キャップに向けて液体を吐出する空吐出を行ってもよい。
【0096】
この構成によれば、キャリッジが印刷中に定期又は不定期に待機位置へ移動して行われる空吐出の頻度以上の頻度で、開口の近くまで移動するので、排出効率の低下を回避できる。例えば、待機位置と反対側の側面部のみに開口が設けられる構成の場合、印刷中にキャリッジが開口の近くまで移動する頻度が少なくなる場合が起こりうる。この場合、筐体14内のミスト又は塵埃の排出効率が低下する可能性がある。これに対して、本構成では、キャリッジが印刷中に空吐出の頻度以上の頻度で開口の近くまで移動するので、排出効率の低下を回避し易い。
【0097】
(I)上記(A)~(F)のいずれか一つに記載の上記印刷装置において、前記キャリッジは、前記主走査方向から見て、前記開口の縁の内側に設けられてもよい。
この構成によれば、キャリッジが移動する過程で空気を押すことでその進行方向前方に発生する気流が開口を通る通気量を効果的に高めることができる。よって、筐体内のミスト又は塵埃を排出する際の排出効率を高めることができる。
【0098】
(J)上記(I)に記載の上記印刷装置において、前記開口には、フィルターが設けられてもよい。
この構成によれば、キャリッジが筐体内を開口から離れる第2方向に移動するときにキャリッジが空気を引き込むことでその進行方向後方に第2気流(引き込み気流)が発生しても、開口を通じて流入する第2気流はフィルターを通過する。よって、筐体内から一旦排出したミスト又は塵埃の筐体内への再流入を抑制できる。
【符号の説明】
【0099】
11…印刷装置、12…キャスター、13…支持スタンド、14…筐体、14A…側面部、15…給送部、16…ロール体、17…支持部、18…排出口、19…媒体受けユニット、20…操作パネル、21…液体収容ユニット、22…液体収容部、23…印刷ユニット、24…キャリッジ、25…印刷ヘッド、25A…ノズル面、26…ノズル、30…排気機構、31…開口、32…通気弁、33…回動軸、34…弁体、35…軸受部、41…ガイドレール、42…キャリッジモーター、43…動力伝達機構、44…プーリー、45…タイミングベルト、46…メンテナンス部、47…本体、48…キャップ、50…排気構造、51…第1面部、52…第2面部、53…凹部、54…屈曲流路、55…第1板部、56…第2板部、57…係止突起、58…係止凹部、60…フィルター、100…制御部、M…媒体、HP…待機位置の一例であるホーム位置、F1…第1気流、F2…第2気流、F3…第3気流、F4…第4気流、θ1…第1角度、θ2…第2角度、DS…塵埃、X…主走査方向(幅方向)、Y…副走査方向(搬送方向)、Y1…搬送方向、Z…鉛直方向、-Z…高さ方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10