(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115113
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】プレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01R 12/58 20110101AFI20240819BHJP
H01R 13/6473 20110101ALN20240819BHJP
【FI】
H01R12/58
H01R13/6473
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020603
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 有輝
(72)【発明者】
【氏名】塚本 真史
(72)【発明者】
【氏名】羽原 啓仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 政祥
(72)【発明者】
【氏名】岸端 裕矢
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA14
5E021FB09
5E021FB20
5E021FC23
5E021FC31
5E223AA21
5E223AB60
5E223AC21
5E223BA01
5E223BA07
5E223CD01
5E223CD15
5E223DB08
5E223EB31
(57)【要約】
【課題】圧入部を基板のスルーホールにより適正に取り付けることができるプレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】プレスフィット端子1は、弾性を有し、基板50のスルーホール51に圧入される圧入部10と、コネクタハウジング5の端子挿通口5eに挿入される端子部20と、圧入部10と端子部20との間に設けられ、軸線方向Xと交差する幅方向Yにおいて端子挿通口5eよりも幅広に形成され当該端子挿通口5eの周縁部と軸線方向Xに係止される幅広部30と、を備え、圧入部10は、幅広部30の軸線方向Xの一端面33と接続されると共に、幅広部30の中心線Cに対して幅方向Yの一方側にずれて位置され、端子部20は、幅広部30の軸線方向Xの他端面34に設けられた肩部32と接続されると共に、中心線Cに対して幅方向Yの他方側にずれて位置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有し、基板のスルーホールに圧入される圧入部と、
前記スルーホールの軸線方向において前記圧入部とは反対側に設けられ、コネクタハウジングの端子挿通口に挿入される端子部と、
前記圧入部と前記端子部との間に設けられ、前記軸線方向と交差する幅方向において前記端子挿通口よりも幅広に形成され当該端子挿通口の周縁部と前記軸線方向に係止される幅広部と、
を備え、
前記圧入部は、前記幅広部の前記軸線方向の一端面と接続されると共に、前記幅広部の前記幅方向の中央部を通りかつ前記軸線方向に沿って延びる中心線に対して前記幅方向の一方側にずれて位置され、
前記端子部は、前記幅広部の前記軸線方向の他端面に設けられた肩部と接続されると共に、前記中心線に対して前記幅方向の他方側にずれて位置される、
プレスフィット端子。
【請求項2】
前記肩部には、前記軸線方向の一方側に向けて凹み、前記端子挿通口の周縁部に設けられた凸部と係合する凹部が設けられる、
請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記凹部は、前記肩部において前記圧入部と前記軸線方向に重なるように設けられる、
請求項2に記載のプレスフィット端子。
【請求項4】
プレスフィット端子と、
前記プレスフィット端子を保持するコネクタハウジングと、を備え、
前記プレスフィット端子は、
弾性を有し、基板のスルーホールに圧入される圧入部と、
前記スルーホールの軸線方向において前記圧入部とは反対側に設けられ、前記コネクタハウジングの端子挿通口に挿入される端子部と、
前記圧入部と前記端子部との間に設けられ、前記軸線方向と交差する幅方向において前記端子挿通口よりも幅広に形成され当該端子挿通口の周縁部と前記軸線方向に係止される幅広部と、
を備え、
前記圧入部は、前記幅広部の前記軸線方向の一端面と接続されると共に、前記幅広部の前記幅方向の中央部を通りかつ前記軸線方向に沿って延びる中心線に対して前記幅方向の一方側にずれて位置され、
前記端子部は、前記幅広部の前記軸線方向の他端面に設けられた肩部と接続されると共に、前記中心線に対して前記幅方向の他方側にずれて位置される、
コネクタ。
【請求項5】
前記幅方向に互いに間隔をあけて並んだ一対の前記プレスフィット端子を備え、
前記一対のプレスフィット端子は、それぞれの前記圧入部が前記幅方向の中央部側に位置されると共に、それぞれの前記端子部が前記幅方向の外側に位置された状態で前記コネクタハウジングに保持される、
請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記幅方向に互いに間隔をあけて並んだ一対の前記プレスフィット端子を備え、
前記一対のプレスフィット端子は、それぞれの前記圧入部が前記幅方向の一方側に位置されると共に、それぞれの前記端子部が前記幅方向の他方側に位置された状態で前記コネクタハウジングに保持される、
請求項4に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記幅方向に互いに間隔をあけて並んだ一対の前記プレスフィット端子を備え、
前記一対のプレスフィット端子は、それぞれの前記圧入部が前記幅方向の外側に位置されると共に、それぞれの前記端子部が前記幅方向の中央部側に位置された状態で前記コネクタハウジングに保持される、
請求項4に記載のコネクタ。
【請求項8】
導電性を有する配索材と、
前記配索材の端末に設けられる相手側コネクタと、
前記相手側コネクタと電気的かつ機械的に接続され、プレスフィット端子と、前記プレスフィット端子を保持するコネクタハウジングと、を有したコネクタと、
前記プレスフィット端子と電気的に接続される基板と、を備え、
前記プレスフィット端子は、
弾性を有し、前記基板のスルーホールに圧入される圧入部と、
前記スルーホールの軸線方向において前記圧入部とは反対側に設けられ、前記コネクタハウジングの端子挿通口に挿入される端子部と、
前記圧入部と前記端子部との間に設けられ、前記軸線方向と交差する幅方向において前記端子挿通口よりも幅広に形成され当該端子挿通口の周縁部と前記軸線方向に係止される幅広部と、
を備え、
前記圧入部は、前記幅広部の前記軸線方向の一端面と接続されると共に、前記幅広部の前記幅方向の中央部を通りかつ前記軸線方向に沿って延びる中心線に対して前記幅方向の一方側にずれて位置され、
前記端子部は、前記幅広部の前記軸線方向の他端面に設けられた肩部と接続されると共に、前記中心線に対して前記幅方向の他方側にずれて位置される、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプレスフィット端子に関する技術として、例えば、特許文献1には、基板のスルーホールに圧入される圧入部と、スルーホールの軸線方向において圧入部とは反対側に設けられコネクタハウジングの端子挿通口に挿入される端子部と、圧入部と端子部との間に設けられ端子挿通口よりも幅広に形成され当該端子挿通口の周縁部と軸線方向に係止される幅広部と、を備えたプレスフィット端子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載のプレスフィット端子では、例えば、圧入部と端子部とが幅広部の中心線上に設けられているため、端子部の両サイドにおける肩部での加圧力のバランスが取れないと、圧入部が基板のスルーホールへの圧入時に軸線方向に対して傾いて取り付けられてしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、圧入部を基板のスルーホールにより適正に取り付けることができるプレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るプレスフィット端子は、弾性を有し、基板のスルーホールに圧入される圧入部と、前記スルーホールの軸線方向において前記圧入部とは反対側に設けられ、コネクタハウジングの端子挿通口に挿入される端子部と、前記圧入部と前記端子部との間に設けられ、前記軸線方向と交差する幅方向において前記端子挿通口よりも幅広に形成され当該端子挿通口の周縁部と前記軸線方向に係止される幅広部と、を備え、前記圧入部は、前記幅広部の前記軸線方向の一端面と接続されると共に、前記幅広部の前記幅方向の中央部を通りかつ前記軸線方向に沿って延びる中心線に対して前記幅方向の一方側にずれて位置され、前記端子部は、前記幅広部の前記軸線方向の他端面に設けられた肩部と接続されると共に、前記中心線に対して前記幅方向の他方側にずれて位置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るプレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスは、圧入部は、幅広部の軸線方向の一端面と接続されると共に、幅広部の中心線に対して幅方向の一方側にずれて位置され、端子部は、幅広部の軸線方向の他端面に設けられた肩部と接続されると共に、幅広部の中心線に対して幅方向の他方側にずれて位置される。この構成により、プレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスは、例えば、圧入部の基板のスルーホールへの圧入時に、端子挿通口の周縁部のうち圧入部と軸線方向に重なる部分によって幅広部の他端面に設けられた肩部を軸線方向の一方側にバランス良く加圧することができ、ひいては圧入部が基板のスルーホールに対して傾いて取り付けられることを抑制できる。この結果、プレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスは、圧入部を基板のスルーホールにより適正に取り付けることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るプレスフィット端子およびコネクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るプレスフィット端子が適用されるコネクタの例示的な斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るプレスフィット端子およびコネクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るプレスフィット端子の例示的な断面図である。
【
図5】
図5は、第1変形例に係るプレスフィット端子が適用されるコネクタの例示的な断面図である。
【
図6】
図6は、第2変形例に係るプレスフィット端子が適用されるコネクタの例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態および変形例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態および変形例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態および変形例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
また、以下に開示される実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0011】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るプレスフィット端子1およびコネクタ2が適用されるワイヤハーネスWHの斜視図である。
図1に示される本実施形態のコネクタ2は、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の配索材Wを束にして集合部品とし、コネクタ2等で当該複数の配索材Wを各装置に接続するようにしたものである。本実施形態のワイヤハーネスWHは、導電性を有する複数の配索材Wと、複数の配索材Wの端末に設けられる相手側コネクタ3およびコネクタ2と、コネクタ2と電気的に接続される基板50と、を備えている。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、コルゲートチューブや、グロメット、電気接続箱、固定具、コネクタなど種々の構成部品を含んで構成されてもよい。
【0012】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「軸線方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。軸線方向Xは、典型的には、基板50のスルーホール51(
図3参照)に対するプレスフィット端子1の挿入方向や、コネクタハウジング5の端子挿通口5eに対するプレスフィット端子1の挿入方向、コネクタ2と相手側コネクタ3との挿抜方向、配索材Wの延在方向等に相当する。幅方向Yは、典型的には、プレスフィット端子1の幅方向や、コネクタ2および相手側コネクタ3の幅方向等に相当する。高さ方向Zは、典型的には、プレスフィット端子1の厚さ方向や、コネクタ2および相手側コネクタ3の厚さ方向等に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、プレスフィット端子1およびコネクタ2が基板50に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0013】
配索材Wは、例えば、金属棒や、電線、電線束等によって構成される。金属棒は、導電性を有する棒状部材の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線は、複数の導電性を有する金属素線からなる導体部(芯線)の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線束は、当該電線を束ねたものである。本実施形態の配索材Wは、例えば、二つの配索材Wを含む。ここでは、二つの配索材Wは、略円形の断面形状に形成され、略同等の外径、形状であるものとして説明するがこれに限らない。
【0014】
相手側コネクタ3は、例えば、コネクタ端子6(
図3参照)と、コネクタ端子6を収容するハウジング4と、を有している。コネクタ端子6は、配索材Wの端末に接続される。ここでは、コネクタ端子6は、後述するコネクタ2のプレスフィット端子1と電気的に接続される端子接続部と、配索材Wの端末に露出した導体部と電気的に接続される電線接続部と、を含んだメス型の端子金具として構成される。コネクタ端子6は、全体が導電性の金属によって構成され、各部に対応した形状に打ち抜かれた一枚の板金をプレス成形することにより各部が一体で形成される。本実施形態では、相手側コネクタ3には、幅方向Yに並んで二つのコネクタ端子6が設けられている。
【0015】
相手側コネクタ3のハウジング4は、コネクタ端子6を内部に保持するものである。ハウジング4は、例えば、高さ方向Zの一方側の上壁4aと、高さ方向Zの他方側の下壁4bと、幅方向Yの両側の一対の側壁4cと、軸線方向Xの両側の一対の端壁4dと、を有している。また、ハウジング4には、一対の端壁4dを軸線方向Xに沿って貫通する貫通孔4eが設けられている。ここでは、ハウジング4には、幅方向Yに互いに間隔をあけて二つの貫通孔4eが設けられている。各貫通孔4eの内面には、上述したコネクタ端子6(
図3参照)が保持される。そして、貫通孔4eには、上述した配索材Wやプレスフィット端子1等が挿入され、コネクタ端子6を介して配索材Wとプレスフィット端子1とが電気的に接続され、導通される。
【0016】
図2は、プレスフィット端子1が適用されるコネクタ2の斜視図である。
図2に示されるように、コネクタ2は、例えば、一対のプレスフィット端子1と、一対のプレスフィット端子1を収容するコネクタハウジング5と、を有している。プレスフィット端子1は、上述した基板50のスルーホール51(
図3参照)に接続される。ここでは、プレスフィット端子1は、基板50と電気的に接続される圧入部10と、上述した相手側コネクタ3のコネクタ端子6と電気的に接続される端子部20と、を含んだオス型の端子金具として構成される。プレスフィット端子1は、全体が導電性の金属によって構成され、各部に対応した形状に打ち抜かれた一枚の板金をプレス成形することにより各部が一体で形成される。本実施形態では、一対のプレスフィット端子1は、幅方向Yに互いに間隔をあけて並んだ状態でコネクタハウジング5に保持される。
【0017】
コネクタハウジング5は、一対のプレスフィット端子1を内部に保持するものである。コネクタハウジング5は、例えば、高さ方向Zの一方側の上壁5aと、高さ方向Zの他方側の下壁5bと、幅方向Yの両側の一対の側壁5cと、軸線方向Xの一方側の前壁5dと、を有している。そして、コネクタハウジング5には、上壁5a、下壁5b、一対の側壁5c、および前壁5dによって囲まれ、軸線方向Xの他方側(相手側コネクタ3側)に開放された挿入空間部5h(
図3参照)が設けられている。挿入空間部5hは、相手側コネクタ3のハウジング4の外形形状に応じて当該ハウジング4が嵌合可能な大きさ、形状の空間部として形成される。上壁5aは、相手側コネクタ3におけるハウジング4の上壁4aと対向し、下壁5bは、ハウジング4の下壁4bと対向し、一対の側壁5cは、ハウジング4の一対の側壁4cと対向し、前壁5dは、ハウジング4の軸線方向Xの一方側の端壁4dと対向する。
【0018】
また、前壁5dには、プレスフィット端子1が挿入される凹部5gが設けられている。凹部5gは、前壁5dの前面から軸線方向Xの他方側に凹み、軸線方向Xの一方側(基板50側)に向けて開放されている。ここでは、二つのプレスフィット端子1が幅方向Yに互いに間隔をあけて並んだ状態で、凹部5gに挿入されている。また、凹部5gの底部5fには、各プレスフィット端子1の端子部20が挿入される複数の端子挿通口5e(
図3参照)が設けられている。端子挿通口5eは、プレスフィット端子1の端子部20が軸線方向Xに沿って貫通する貫通孔であり、上述した相手側コネクタ3の貫通孔4eと軸線方向Xに並んでいる。プレスフィット端子1は、例えば、インサート成形等によって端子挿通口5eに挿入された状態でコネクタハウジング5と一体成形される。なお、プレスフィット端子1は、この例には限定されず、例えば、端子挿通口5eに対して圧入によって取り付けられてもよい。端子挿通口5eは、コネクタハウジング5からプレスフィット端子1が取り外されると共に、相手側コネクタ3のハウジング4からコネクタ端子6が取り外された状態において、貫通孔4eおよび凹部5gと軸線方向Xに連通する。
【0019】
図3は、実施形態に係るプレスフィット端子1およびコネクタ2が適用されるワイヤハーネスWHの断面図である。
図3に示されるように、プレスフィット端子1は、例えば、配線パターン等の回路部が設けられた基板本体52と、基板本体52の回路部と電気的に接続されるスルーホール51と、を含んで構成される基板50に取り付けられる。基板50は、例えば、プリント基板等であり、平板状の基板本体52の表面に回路パターン等の回路部が形成されている。なお、基板50は、この例には限定されず、例えば、基板本体52の表面や基板本体52を構成する複数の絶縁層の間に回路部を複数層に分けて設けた多層基板等であってもよい。
【0020】
スルーホール51は、例えば、基板本体52を軸線方向Xに沿って貫通する開口部51aと、開口部51aの内周面に設けられる筒状の電気接続部51bと、を含んで構成される。電気接続部51bは、開口部51aの内周面に形成される銅メッキ等のメッキ層として形成される。電気接続部51bは、基板本体52の回路部に対して物理的かつ電気的に接続されるように、その筒状部分から回路部に向けて延在している。ここでは、電気接続部51bの内周面がスルーホール51の内周面として機能する。したがって、幅方向Yに並んだ二つのスルーホール51においては、その内周面の全域をプレスフィット端子1との接点として利用することができる。
【0021】
プレスフィット端子1は、例えば、軸線方向Xの一端部に設けられた圧入部10と、軸線方向Xの他端部に設けられた端子部20と、圧入部10と端子部20との間に設けられた幅広部30と、を含んで構成される。プレスフィット端子1は、圧入部10と端子部20と幅広部30とがスルーホール51への挿入方向となる軸線方向Xに沿って連なった直線形状に形成される。プレスフィット端子1は、例えば、導電性を有した銅や銅合金等の金属材料によって形成される。なお、プレスフィット端子1は、この例には限定されず、例えば、圧入部10や、端子部20、幅広部30等の表面にメッキ層が形成されたものであってもよい。そのメッキ層としては、例えば、錫メッキや、銀メッキ、金メッキ等が適用可能である。
【0022】
圧入部10は、基板50のスルーホール51に対して軸線方向Xに沿って圧入される部分である。圧入部10には、例えば、高さ方向Zに沿って当該圧入部10を貫通する中心孔12が設けられている。中心孔12は、高さ方向Zから見た場合に、軸線方向Xに横長となる長方形状に形成される。また、圧入部10には、中心孔12を間に挟んだ幅方向Yの両側に一対の圧入変形部11が設けられている。一対の圧入変形部11は、圧入部10のスルーホール51への圧入時に、当該スルーホール51の電気接続部51b(内周面)から力を受けることによって幅方向Yに沿って変形可能である。
【0023】
本実施形態では、圧入部10における軸線方向Xの略中央部、すなわち一対の圧入変形部11が設けられた部分の幅方向Yに沿った端子幅は、スルーホール51の幅方向Yに沿った開口幅よりも僅かに大きく設定されている。また、圧入部10における軸線方向Xの両端部、すなわち一対の圧入変形部11とずれた部分の幅方向Yに沿った端子幅は、スルーホール51の幅方向Yに沿った開口幅よりも僅かに小さく設定されている。したがって、幅方向Yに並んだ一対のプレスフィット端子1の各圧入部10においては、それぞれの軸線方向Xの略中央部、すなわち一対の圧入変形部11が設けられた部分が、スルーホール51の電気接続部51b(内周面)に対して圧接される圧接部となる。
【0024】
端子部20は、コネクタハウジング5の端子挿通口5eに対して軸線方向Xに沿って挿通される部分である。端子部20は、例えば、圧入部10に対して軸線方向Xの反対側に設けられている。本実施形態では、端子部20の幅方向Yおよび高さ方向Zに沿った幅は、端子挿通口5eの幅方向Yおよび高さ方向Zに沿った開口幅と略同じに設定されている。そして、端子部20は、インサート成形や圧入等によって端子挿通口5eを軸線方向Xに貫通した状態で取り付けられる。端子部20の軸線方向Xの他端部は、挿入空間部5h内に露出し、コネクタ2と相手側コネクタ3とがコネクタ嵌合した状態で、相手側コネクタ3の貫通孔4eを介してメス型のコネクタ端子6内に挿入される。
【0025】
図4は、実施形態に係るプレスフィット端子1の断面図である。
図3、4に示されるように、幅広部30は、圧入部10と端子部20との間に設けられ、幅方向Yにおいて端子部20および端子挿通口5eよりも幅広に形成される部分である。幅広部30の軸線方向Xの他端面34には、端子部20が端子挿通口5eに取り付けられた状態で、端子挿通口5eの周縁部と軸線方向Xに係止される肩部32が設けられる。肩部32は、プレスフィット端子1の底部5f(コネクタハウジング5)に対する軸線方向Xの他方側への移動を制限するストッパ部として機能する。また、肩部32は、例えば、プレスフィット端子1のスルーホール51への圧入時に、端子挿通口5eの周縁部によって軸線方向Xの一方側に加圧される加圧部としても機能する。したがって、幅方向Yに並んだ一対のプレスフィット端子1の各幅広部30においては、それぞれの肩部32が、端子挿通口5eの周縁部に対して軸線方向Xに当接されるストッパ部または加圧部となり、端子挿通口5eの周縁部がその反力受け部となる。
【0026】
ここで、本実施形態では、圧入部10は、幅広部30の軸線方向Xの一端面33と接続されると共に、幅広部30の中心線Cに対して幅方向Yの一方側にずれて位置されている。中心線Cは、幅広部30の幅方向Yの中央部を通りかつ軸線方向Xに沿って延びている。また、端子部20は、幅広部30の軸線方向Xの他端面34に設けられた肩部32と接続されると共に、中心線Cに対して幅方向Yの他方側にずれて位置されている。すなわち、本実施形態では、圧入部10と端子部20とが幅広部30の中心線Cを中心として軸線方向Xに一直線状に設けられずに幅方向Yに互いにオフセットして配置されている。なお、本実施形態では、幅広部30の幅方向Yに沿った端子幅は、端子挿通口5eの周縁部で肩部32を加圧する際に、基板50のスルーホール51へプレスフィット端子1を挿入するために必要な挿入力が確保できる程度の最小限の幅寸法に設定されている。
【0027】
また、本実施形態では、幅広部30の軸線方向Xの他端面34、すなわち肩部32には、凹部35が設けられている。凹部35は、肩部32から軸線方向Xの一方側に向けて凹み、軸線方向Xの他方側に開放されている。凹部35は、端子挿通口5eの周縁部に設けられた凸部5iと係合または嵌合する部分である。凸部5iは、コネクタハウジング5の底部5fから軸線方向Xの一方側に突出している。凸部5iは、例えば、高さ方向Zから見た場合に、凹部35の底面に沿って円弧状(半円状)に湾曲して形成される。また、本実施形態では、凹部35(凸部5i)は、肩部32において圧入部10と軸線方向Xに重なるように設けられている。
【0028】
このような構成において、本実施形態では、凹部35と凸部5iとの係合によってプレスフィット端子1のコネクタハウジング5に対する軸線方向Xと交差した幅方向Yおよび高さ方向Zへの移動(ブレ)が制限される。これにより、プレスフィット端子1のスルーホール51への圧入時に、圧入部10が軸線方向Xに対して傾いて取り付けられてしまうことを抑制している。なお、本実施形態では、端子挿通口5eの周縁部のうちプレスフィット端子1と幅方向Yにずれた位置にも凸部5iが設けられている。凸部5iは、幅広部30の幅方向Yの一端面と対向するように突出しており、当該幅広部30との当接によってプレスフィット端子1のコネクタハウジング5に対する幅方向Yへの移動を制限する。
【0029】
また、本実施形態では、一対のプレスフィット端子1(
図3参照)は、それぞれの圧入部10が幅方向Yの中央部側に位置されると共に、それぞれの端子部20が幅方向Yの外側に位置された状態でコネクタハウジング5に保持される。すなわち、一対のプレスフィット端子1は、互いの間隔が至近距離となるように、それぞれの肩部32において端子部20に対する幅方向Yに沿った肩幅の広い部分、言い換えるとそれぞれの幅広部30の一端面33において圧入部10に対する幅方向Yに沿った肩幅の狭い部分が、幅方向Yの中央部側に位置されている。本実施形態では、例えば、一対のプレスフィット端子1のうち幅方向Yの一方側(
図3の上側)は、通信回路におけるHi回路の端子を構成し、幅方向Yの他方側(
図3の下側)は、通信回路におけるLow回路の端子を構成している。
【0030】
ここで、プレスフィット端子1等の通信経路を構成する部材においては、上述した圧入部10や、端子部20、幅広部30等によって幅方向Yに沿った端子幅が変化する部分が存在すると通信経路における特性インピーダンスが変化し、信号の反射や透過損失が発生して通信エラーが生じる虞がある。また、特性インピーダンスが変化する要素としては、上述した端子幅に加えて、一対のプレスフィット端子1の端子間ピッチや、プレスフィット端子1の周辺物質の誘電率等がある。そして、特性インピーダンスと端子幅は、負の相関となり、特性インピーダンスと端子間ピッチは、正の相関となり、特性インピーダンスと誘電率は、負の相関となる。
【0031】
特性インピーダンスは、以下の式(1)によって求めることができる。式(1)は、CIDM理論式等とも称される。なお、式(1)において、Z0は、特性インピーダンス(CIDM)であり、dは、内導体外径であり、pは、導体間ピッチであり、εrは、比誘電率(伝送路)である。
【0032】
【0033】
特性インピーダンスの整合がとれている場合は、通信信号の波形がほとんど乱れない傾向となり、特性インピーダンスの整合がとれていない場合は、通信信号の波形が乱れる傾向となる。その点、本実施形態によれば、圧入部10と端子部20とを幅方向Yに互いにオフセットして配置することで、軸線方向Xにおいて一対のプレスフィット端子1の端子間ピッチが変化する部分を少なくしている。これにより、一対のプレスフィット端子1における特性インピーダンスの変化を抑制でき、ひいては通信信号の波形乱れによる通信エラーを抑制できる。
【0034】
また、本実施形態では、コネクタハウジング5は合成樹脂等の高誘電率の素材で形成される一方で、プレスフィット端子1における幅広部30の周辺は低誘電率の空気層となっている。そこで、本実施形態では、低誘電率による特性インピーダンスの上昇を抑えるために、一対のプレスフィット端子1のそれぞれの圧入部10を幅方向Yの中央部側に配置することで、一対の圧入部10および一対の幅広部30の間の端子間ピッチを狭めている。これにより、静電容量および特性インピーダンスを低下させることができ、ひいては高誘電率の端子部20における特性インピーダンスに対して、低誘電率の幅広部30における特性インピーダンスが同等となるように調整することができる。
【0035】
以上のように、本実施形態のプレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHでは、圧入部10は、幅広部30の軸線方向Xの一端面33と接続されると共に、幅広部30の中心線Cに対して幅方向Yの一方側にずれて位置され、端子部20は、幅広部30の軸線方向Xの他端面34に設けられた肩部32と接続されると共に、幅広部30の中心線Cに対して幅方向Yの他方側にずれて位置される。この構成により、プレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、例えば、圧入部10の基板50のスルーホール51への圧入時に、端子挿通口5eの周縁部のうち圧入部10と軸線方向Xに重なる部分によって幅広部30の軸線方向Xの他端面34に設けられた肩部32を軸線方向Xの一方側にバランス良く加圧することができ、ひいては圧入部10が基板50のスルーホール51に対して傾いて取り付けられることを抑制できる。この結果、プレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、圧入部10を基板50のスルーホール51により適正に、言い換えるとより容易に精度よく取り付けることができる。
【0036】
また、本実施形態のプレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHでは、肩部32には、軸線方向Xの一方側に向けて凹み、端子挿通口5eの周縁部に設けられた凸部5iと係合する凹部35が設けられる。この構成により、プレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、例えば、凹部35と凸部5iとの係合によってプレスフィット端子1のコネクタハウジング5に対する軸線方向Xと交差した幅方向Yおよび高さ方向Zへの移動(ブレ)が制限され、ひいてはプレスフィット端子1のスルーホール51への圧入時に、圧入部10が軸線方向Xに対して傾いて取り付けられてしまうことを抑制できる。
【0037】
また、本実施形態のプレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHでは、凹部35は、肩部32において圧入部10と軸線方向Xに重なるように設けられる。この構成により、プレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、例えば、軸線方向Xに一直線上に並んだ凹部34および圧入部10によって、圧入部10が軸線方向Xに対して傾いた状態でスルーホール51に取り付けられてしまうことをより効率的に、あるいはより効果的に抑制できる。
【0038】
また、本実施形態のコネクタ2、およびワイヤハーネスWHでは、一対のプレスフィット端子1は、それぞれの圧入部10が幅方向Yの中央部側に位置されると共に、それぞれの端子部20が幅方向Yの外側に位置された状態でコネクタハウジング5に保持される。この構成により、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、例えば、一対のプレスフィット端子1における幅広部30の端子間ピッチを狭めて静電容量および特性インピーダンスを低下させることができ、ひいては高誘電率の端子部20における特性インピーダンスに対して、低誘電率の幅広部30における特性インピーダンスが同等となるように調整することができる。
【0039】
[第1変形例]
図5は、第1変形例に係るプレスフィット端子1Aが適用されるコネクタ2Aの断面図である。
図5に示されるコネクタ2Aは、上記実施形態のコネクタ2と同様の構成を備えている。よって、コネクタ2Aは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0040】
ただし、本変形例では、
図5に示されるように、一対のプレスフィット端子1Aは、それぞれの圧入部10が幅方向Yの一方側に位置されると共に、それぞれの端子部20が幅方向Yの他方側に位置された状態でコネクタハウジング5に保持される点が上記実施形態と相違している。すなわち、本変形例では、一対のプレスフィット端子1Aは、それぞれの肩部32において端子部20に対する幅方向Yに沿った肩幅の広い部分、言い換えるとそれぞれの幅広部30の一端面33において圧入部10に対する幅方向Yに沿った肩幅の狭い部分が、幅方向Yの一方側に位置されている。
【0041】
このような構成において、本変形例では、一対のプレスフィット端子1Aが上記実施形態と同様のコネクタハウジング5の端子挿通口5eに取り付けられることにより、一対のプレスフィット端子1Aにおける幅広部30の端子間ピッチd1が上記実施形態と比べて大きくなる。これにより、一対の幅広部30の間の端子間ピッチd1を広げて静電容量および特性インピーダンスを増大させることができ、ひいては一対のプレスフィット端子1Aや、コネクタ2A、ワイヤハーネスWH等の通信回路の仕様に合わせて特性インピーダンスを調整することができる。
【0042】
[第2変形例]
図6は、第2変形例に係るプレスフィット端子1Bが適用されるコネクタ2Bの断面図である。
図6に示されるコネクタ2Bは、上記実施形態のコネクタ2と同様の構成を備えている。よって、コネクタ2Bは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0043】
ただし、本変形例では、
図6に示されるように、一対のプレスフィット端子1Bは、それぞれの圧入部10が幅方向Yの外側に位置されると共に、それぞれの端子部20が幅方向Yの中央側に位置された状態でコネクタハウジング5に保持される点が上記実施形態と相違している。すなわち、本変形例では、一対のプレスフィット端子1Aは、それぞれの肩部32において端子部20に対する幅方向Yに沿った肩幅の狭い部分、言い換えるとそれぞれの幅広部30の一端面33において圧入部10に対する幅方向Yに沿った肩幅の広い部分が、幅方向Yの中央側に位置されている。
【0044】
このような構成において、本変形例では、一対のプレスフィット端子1Aが上記実施形態と同様のコネクタハウジング5の端子挿通口5eに取り付けられることにより、一対のプレスフィット端子1Aにおける幅広部30の端子間ピッチd2が上記実施形態および上記第1変形例と比べて大きくなる。これにより、一対の幅広部30の間の端子間ピッチd2を広げて静電容量および特性インピーダンスを増大させることができ、ひいては一対のプレスフィット端子1Bや、コネクタ2B、ワイヤハーネスWH等の通信回路の仕様に合わせて特性インピーダンスを調整することができる。
【0045】
なお、上記実施形態、上記第1変形例、および上記第2変形例では、プレスフィット端子1、1A、1Bがコネクタ2、2A、2Bに適用された場合が例示されたが、この例には限定されず、プレスフィット端子1、1A、1Bは、コネクタ2、2A、2Bに適用されなくてもよい。また、例えば、プレスフィット端子1、1A、1Bの幅広部30や、コネクタハウジング5には、凹部35や、凸部5i等が設けられなくてもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 プレスフィット端子
2 コネクタ
3 相手側コネクタ
5 コネクタハウジング
5i 凸部
5e 端子挿通口
10 圧入部
20 端子部
30 幅広部
32 肩部
33 一端面
34 他端面
35 凹部
50 基板
51 スルーホール
C 中心線
W 配索材
WH ワイヤハーネス
X 軸線方向
Y 幅方向