(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115114
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】プレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01R 12/58 20110101AFI20240819BHJP
H01R 13/6474 20110101ALN20240819BHJP
【FI】
H01R12/58
H01R13/6474
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020604
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 有輝
(72)【発明者】
【氏名】塚本 真史
(72)【発明者】
【氏名】山田 修
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 政祥
(72)【発明者】
【氏名】岸端 裕矢
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA14
5E021FB09
5E021FB20
5E021FC23
5E223AA21
5E223AB60
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB12
5E223CD01
5E223CD15
5E223DB08
5E223DB13
5E223EB31
(57)【要約】
【課題】特性インピーダンスをより適正に整合させることができるプレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】プレスフィット端子1は、弾性を有し、基板50のスルーホール51に圧入される圧入部10と、スルーホール51の軸線方向Xにおいて圧入部10とは反対側に設けられ、コネクタハウジング5の端子挿通口5eに挿入される端子部20と、圧入部10と端子部20との間に設けられ、軸線方向Xと交差する幅方向Yにおいて端子挿通口5eよりも幅広に形成される幅広部30と、を備え、幅広部30は、軸線方向Xの中央部に位置される第1部分31と、第1部分31と端子部20との間に設けられ幅方向Yにおいて第1部分31よりも幅狭でありかつ端子挿通口5eよりも幅広に形成され軸線方向Xの他端面に端子挿通口5eの周縁部と係止される肩部34が設けられた第2部分32と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有し、基板のスルーホールに圧入される圧入部と、
前記スルーホールの軸線方向において前記圧入部とは反対側に設けられ、コネクタハウジングの端子挿通口に挿入される端子部と、
前記圧入部と前記端子部との間に設けられ、前記軸線方向と交差する幅方向において前記端子挿通口よりも幅広に形成され当該端子挿通口の周縁部と前記軸線方向に係止される幅広部と、
を備え、
前記幅広部は、前記軸線方向の中央部に位置される第1部分と、前記第1部分と前記端子部との間に設けられ前記幅方向において前記第1部分よりも幅狭でありかつ前記端子挿通口よりも幅広に形成され前記軸線方向の他端面に前記端子挿通口の周縁部と係止される肩部が設けられた第2部分と、を有する、
プレスフィット端子。
【請求項2】
前記幅広部は、前記第1部分と前記圧入部との間に設けられ前記幅方向において前記第1部分よりも幅狭に形成される第3部分を有する、
請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記第2部分には、前記肩部から前記第1部分に向かうにつれて前記幅方向の両側に広がるように傾斜した第1テーパ面が設けられる、
請求項1または2に記載のプレスフィット端子。
【請求項4】
前記第3部分には、前記圧入部から前記第1部分に向かうにつれて前記幅方向の両側に広がるように傾斜した第2テーパ面が設けられる、
請求項2に記載のプレスフィット端子。
【請求項5】
プレスフィット端子と、
前記プレスフィット端子を保持するコネクタハウジングと、を備え、
前記プレスフィット端子は、
弾性を有し、基板のスルーホールに圧入される圧入部と、
前記スルーホールの軸線方向において前記圧入部とは反対側に設けられ、前記コネクタハウジングの端子挿通口に挿入される端子部と、
前記圧入部と前記端子部との間に設けられ、前記軸線方向と交差する幅方向において前記端子挿通口よりも幅広に形成され当該端子挿通口の周縁部と前記軸線方向に係止される幅広部と、
を備え、
前記幅広部は、前記軸線方向の中央部に位置される第1部分と、前記第1部分と前記端子部との間に設けられ前記幅方向において前記第1部分よりも幅狭でありかつ前記端子挿通口よりも幅広に形成され前記軸線方向の他端面に前記端子挿通口の周縁部と係止される肩部が設けられた第2部分と、を有する、
コネクタ。
【請求項6】
導電性を有する配索材と、
前記配索材の端末に設けられる相手側コネクタと、
前記相手側コネクタと電気的かつ機械的に接続され、プレスフィット端子と、前記プレスフィット端子を保持するコネクタハウジングと、を有したコネクタと、
前記プレスフィット端子と電気的に接続される基板と、を備え、
前記プレスフィット端子は、
弾性を有し、前記基板のスルーホールに圧入される圧入部と、
前記スルーホールの軸線方向において前記圧入部とは反対側に設けられ、前記コネクタハウジングの端子挿通口に挿入される端子部と、
前記圧入部と前記端子部との間に設けられ、前記軸線方向と交差する幅方向において前記端子挿通口よりも幅広に形成され当該端子挿通口の周縁部と前記軸線方向に係止される幅広部と、
を備え、
前記幅広部は、前記軸線方向の中央部に位置される第1部分と、前記第1部分と前記端子部との間に設けられ前記幅方向において前記第1部分よりも幅狭でありかつ前記端子挿通口よりも幅広に形成され前記軸線方向の他端面に前記端子挿通口の周縁部と係止される肩部が設けられた第2部分と、を有する、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプレスフィット端子に関する技術として、例えば、特許文献1には、基板のスルーホールに圧入される圧入部と、スルーホールの軸線方向において圧入部とは反対側に設けられコネクタハウジングの端子挿通口に挿入される端子部と、圧入部と端子部との間に設けられ端子挿通口よりも幅広に形成され当該端子挿通口の周縁部と軸線方向に係止される幅広部と、を備えたプレスフィット端子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載のプレスフィット端子では、例えば、幅広部の端子幅が端子部の端子幅に比べて急激に広くなるため、特性インピーダンスを整合させるには非常に厳しい寸法精度が必要となってしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、特性インピーダンスをより適正に整合させることができるプレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るプレスフィット端子は、弾性を有し、基板のスルーホールに圧入される圧入部と、前記スルーホールの軸線方向において前記圧入部とは反対側に設けられ、コネクタハウジングの端子挿通口に挿入される端子部と、前記圧入部と前記端子部との間に設けられ、前記軸線方向と交差する幅方向において前記端子挿通口よりも幅広に形成され当該端子挿通口の周縁部と前記軸線方向に係止される幅広部と、を備え、前記幅広部は、前記軸線方向の中央部に位置される第1部分と、前記第1部分と前記端子部との間に設けられ前記幅方向において前記第1部分よりも幅狭でありかつ前記端子挿通口よりも幅広に形成され前記軸線方向の他端面に前記端子挿通口の周縁部と係止される肩部が設けられた第2部分と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るプレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスは、幅広部は、軸線方向の中央部に位置される第1部分と、第1部分と端子部との間に設けられ幅方向において第1部分よりも幅狭でありかつ端子挿通口よりも幅広に形成され軸線方向の他端面に端子挿通口の周縁部と係止される肩部が設けられた第2部分と、を有する。この構成により、プレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスは、例えば、第2部分によって幅広部の端子幅が端子部の端子幅に対して急激に広くなることを抑制しつつ、当該第2部分および第1部分によって幅広部の特性インピーダンスが端子部の特性インピーダンスに対して同等となるように調整することができる。この結果、プレスフィット端子、コネクタ、およびワイヤハーネスは、特性インピーダンスをより適正に整合させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るプレスフィット端子およびコネクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るプレスフィット端子が適用されるコネクタの例示的な斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るプレスフィット端子およびコネクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るプレスフィット端子の例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るプレスフィット端子1およびコネクタ2が適用されるワイヤハーネスWHの斜視図である。
図1に示される本実施形態のコネクタ2は、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の配索材Wを束にして集合部品とし、コネクタ2等で当該複数の配索材Wを各装置に接続するようにしたものである。本実施形態のワイヤハーネスWHは、導電性を有する複数の配索材Wと、複数の配索材Wの端末に設けられる相手側コネクタ3およびコネクタ2と、コネクタ2と電気的に接続される基板50と、を備えている。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、コルゲートチューブや、グロメット、電気接続箱、固定具、コネクタなど種々の構成部品を含んで構成されてもよい。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「軸線方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。軸線方向Xは、典型的には、基板50のスルーホール51(
図3参照)に対するプレスフィット端子1の挿入方向や、コネクタハウジング5の端子挿通口5eに対するプレスフィット端子1の挿入方向、コネクタ2と相手側コネクタ3との挿抜方向、配索材Wの延在方向等に相当する。幅方向Yは、典型的には、プレスフィット端子1の幅方向や、コネクタ2および相手側コネクタ3の幅方向等に相当する。高さ方向Zは、典型的には、プレスフィット端子1の厚さ方向や、コネクタ2および相手側コネクタ3の厚さ方向等に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、プレスフィット端子1およびコネクタ2が基板50に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0012】
配索材Wは、例えば、金属棒や、電線、電線束等によって構成される。金属棒は、導電性を有する棒状部材の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線は、複数の導電性を有する金属素線からなる導体部(芯線)の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線束は、当該電線を束ねたものである。本実施形態の配索材Wは、例えば、二つの配索材Wを含む。ここでは、二つの配索材Wは、略円形の断面形状に形成され、略同等の外径、形状であるものとして説明するがこれに限らない。
【0013】
相手側コネクタ3は、例えば、コネクタ端子6(
図3参照)と、コネクタ端子6を収容するハウジング4と、を有している。コネクタ端子6は、配索材Wの端末に接続される。ここでは、コネクタ端子6は、後述するコネクタ2のプレスフィット端子1と電気的に接続される端子接続部と、配索材Wの端末に露出した導体部と電気的に接続される電線接続部と、を含んだメス型の端子金具として構成される。コネクタ端子6は、全体が導電性の金属によって構成され、各部に対応した形状に打ち抜かれた一枚の板金をプレス成形することにより各部が一体で形成される。本実施形態では、相手側コネクタ3には、幅方向Yに並んで二つのコネクタ端子6が設けられている。
【0014】
相手側コネクタ3のハウジング4は、コネクタ端子6を内部に保持するものである。ハウジング4は、例えば、高さ方向Zの一方側の上壁4aと、高さ方向Zの他方側の下壁4bと、幅方向Yの両側の一対の側壁4cと、軸線方向Xの両側の一対の端壁4dと、を有している。また、ハウジング4には、一対の端壁4dを軸線方向Xに沿って貫通する貫通孔4eが設けられている。ここでは、ハウジング4には、幅方向Yに互いに間隔をあけて二つの貫通孔4eが設けられている。各貫通孔4eの内面には、上述したコネクタ端子6(
図3参照)が保持される。そして、貫通孔4eには、上述した配索材Wやプレスフィット端子1等が挿入され、コネクタ端子6を介して配索材Wとプレスフィット端子1とが電気的に接続され、導通される。
【0015】
図2は、プレスフィット端子1が適用されるコネクタ2の斜視図である。
図2に示されるように、コネクタ2は、例えば、プレスフィット端子1と、プレスフィット端子1を収容するコネクタハウジング5と、を有している。プレスフィット端子1は、上述した基板50のスルーホール51(
図3参照)に接続される。ここでは、プレスフィット端子1は、基板50と電気的に接続される圧入部10と、上述した相手側コネクタ3のコネクタ端子6と電気的に接続される端子部20と、を含んだオス型の端子金具として構成される。プレスフィット端子1は、全体が導電性の金属によって構成され、各部に対応した形状に打ち抜かれた一枚の板金をプレス成形することにより各部が一体で形成される。本実施形態では、コネクタ2には、幅方向Yに並んで複数(ここでは、二つ)のプレスフィット端子1が設けられている。
【0016】
コネクタハウジング5は、プレスフィット端子1を内部に保持するものである。コネクタハウジング5は、例えば、高さ方向Zの一方側の上壁5aと、高さ方向Zの他方側の下壁5bと、幅方向Yの両側の一対の側壁5cと、軸線方向Xの一方側の前壁5dと、を有している。そして、コネクタハウジング5には、上壁5a、下壁5b、一対の側壁5c、および前壁5dによって囲まれ、軸線方向Xの他方側(相手側コネクタ3側)に開放された挿入空間部5h(
図3、4参照)が設けられている。挿入空間部5hは、相手側コネクタ3のハウジング4の外形形状に応じて当該ハウジング4が嵌合可能な大きさ、形状の空間部として形成される。上壁5aは、相手側コネクタ3のハウジング4の上壁4aと対向し、下壁5bは、ハウジング4の下壁4bと対向し、一対の側壁5cは、ハウジング4の一対の側壁4cと対向し、前壁5dは、ハウジング4の軸線方向Xの一方側の端壁4dと対向する。
【0017】
また、前壁5dには、プレスフィット端子1が挿入される凹部5gが設けられている。凹部5gは、前壁5dの前面から軸線方向Xの他方側に凹み、軸線方向Xの一方側(基板50側)に向けて開放されている。ここでは、二つのプレスフィット端子1が幅方向Yに互いに間隔をあけて並んだ状態で、凹部5gに挿入されている。また、凹部5gの底部5fには、各プレスフィット端子1の端子部20が挿入される複数の端子挿通口5e(
図3参照)が設けられている。端子挿通口5eは、プレスフィット端子1の端子部20が軸線方向Xに沿って貫通する貫通孔であり、上述した相手側コネクタ3の貫通孔4eと軸線方向Xに並んでいる。プレスフィット端子1は、例えば、インサート成形等によって端子挿通口5eに挿入された状態でコネクタハウジング5と一体成形される。なお、プレスフィット端子1は、この例には限定されず、例えば、端子挿通口5eに対して圧入によって取り付けられてもよい。端子挿通口5eは、コネクタハウジング5からプレスフィット端子1が取り外されると共に、相手側コネクタ3のハウジング4からコネクタ端子6が取り外された状態において、貫通孔4eおよび凹部5gと軸線方向Xに連通する。
【0018】
図3は、実施形態に係るプレスフィット端子1およびコネクタ2が適用されるワイヤハーネスWHの断面図である。
図3に示されるように、プレスフィット端子1は、例えば、配線パターン等の回路部が設けられた基板本体52と、基板本体52の回路部と電気的に接続されるスルーホール51と、を含んで構成される基板50に取り付けられる。基板50は、例えば、プリント基板等であり、平板状の基板本体52の表面に回路パターン等の回路部が形成されている。なお、基板50は、この例には限定されず、例えば、基板本体52の表面や基板本体52を構成する複数の絶縁層の間に回路部を複数層に分けて設けた多層基板等であってもよい。
【0019】
スルーホール51は、例えば、基板本体52を軸線方向Xに沿って貫通する開口部51aと、開口部51aの内周面に設けられる筒状の電気接続部51bと、を含んで構成される。電気接続部51bは、開口部51aの内周面に形成される銅メッキ等のメッキ層として形成される。電気接続部51bは、基板本体52の回路部に対して物理的かつ電気的に接続されるように、その筒状部分から回路部に向けて延在している。ここでは、電気接続部51bの内周面がスルーホール51の内周面として機能する。したがって、幅方向Yに並んだ二つのスルーホール51においては、その内周面の全域をプレスフィット端子1との接点として利用することができる。
【0020】
プレスフィット端子1は、例えば、軸線方向Xの一端部に設けられた圧入部10と、軸線方向Xの他端部に設けられた端子部20と、圧入部10と端子部20との間に設けられた幅広部30と、を含んで構成される。プレスフィット端子1は、圧入部10と端子部20と幅広部30とがスルーホール51への挿入方向となる軸線方向Xに沿って連なった直線形状に形成される。プレスフィット端子1は、例えば、導電性を有した銅や銅合金等の金属材料によって形成される。なお、プレスフィット端子1は、この例には限定されず、例えば、圧入部10や、端子部20、幅広部30等の表面にメッキ層が形成されたものであってもよい。そのメッキ層としては、例えば、錫メッキや、銀メッキ、金メッキ等が適用可能である。
【0021】
圧入部10は、基板50のスルーホール51に対して軸線方向Xに沿って圧入される部分である。圧入部10には、例えば、高さ方向Zに沿って当該圧入部10を貫通する中心孔12が設けられている。中心孔12は、高さ方向Zから見た場合に、軸線方向Xに横長となる長方形状に形成される。また、圧入部10には、中心孔12を間に挟んだ幅方向Yの両側に一対の圧入変形部11が設けられている。一対の圧入変形部11は、圧入部10のスルーホール51への圧入時に、当該スルーホール51の電気接続部51b(内周面)から力を受けることによって幅方向Yに沿って変形可能である。
【0022】
本実施形態では、圧入部10における軸線方向Xの略中央部、すなわち一対の圧入変形部11が設けられた部分の幅方向Yに沿った横幅は、スルーホール51の幅方向Yに沿った開口幅よりも僅かに大きく設定されている。また、圧入部10における軸線方向Xの両端部、すなわち一対の圧入変形部11とずれた部分の幅方向Yに沿った横幅は、スルーホール51の幅方向Yに沿った開口幅よりも僅かに小さく設定されている。したがって、幅方向Yに並んだ二つのプレスフィット端子1の各圧入部10においては、それぞれの軸線方向Xの略中央部、すなわち一対の圧入変形部11が設けられた部分が、スルーホール51の電気接続部51b(内周面)に対して圧接される圧接部となる。
【0023】
端子部20は、コネクタハウジング5の端子挿通口5eに対して軸線方向Xに沿って挿通される部分である。端子部20は、例えば、圧入部10に対して軸線方向Xの反対側で当該軸線方向Xに沿って一直線上に並ぶように設けられている。本実施形態では、端子部20の幅方向Yおよび高さ方向Zに沿った幅は、端子挿通口5eの幅方向Yおよび高さ方向Zに沿った開口幅と略同じに設定されている。そして、端子部20は、インサート成形や圧入等によって端子挿通口5eを軸線方向Xに貫通した状態で取り付けられる。端子部20の軸線方向Xの他端部は、挿入空間部5h内に露出し、コネクタ2と相手側コネクタ3とがコネクタ嵌合した状態で、相手側コネクタ3の貫通孔4eを介してメス型のコネクタ端子6内に挿入される。
【0024】
図4は、実施形態に係るプレスフィット端子1の断面図である。
図3、4に示されるように、幅広部30は、圧入部10と端子部20との間に設けられ、幅方向Yにおいて端子部20および端子挿通口5eよりも幅広に形成される部分である。幅広部30の軸線方向Xの他端面には、端子部20が端子挿通口5eに取り付けられた状態で、端子挿通口5eの周縁部と軸線方向Xに係止される肩部34が設けられる。肩部34は、プレスフィット端子1の底部5f(コネクタハウジング5)に対する軸線方向Xの他方側への移動を制限するストッパ部として機能する。また、肩部34は、例えば、プレスフィット端子1のスルーホール51への圧入時に、端子挿通口5eの周縁部によって軸線方向Xの一方側に加圧される加圧部としても機能する。したがって、幅方向Yに並んだ二つのプレスフィット端子1の各幅広部30においては、それぞれの肩部34が、端子挿通口5eの周縁部に対して軸線方向Xに当接されるストッパ部または加圧部となり、端子挿通口5eの周縁部がその反力受け部となる。
【0025】
ここで、本実施形態では、幅広部30は、例えば、軸線方向Xの略中央部に位置される第1部分31と、軸線方向Xの他端部に位置される第2部分32と、軸線方向Xの一端部に位置される第3部分33と、を含んで構成される。第1部分31と第2部分32と第3部分33とは、互いの幅方向Yに沿った端子幅が異なるように形成される。第1部分31は、幅広部30のうち幅方向Yに沿った端子幅が最も幅広に形成された部分である。第1部分31は、幅方向Yの両側の一対の側面31aを有している。一対の側面31aは、軸線方向Xに沿って平坦状に延在している。一対の側面31aの間の幅方向Yに沿った距離、すなわち第1部分31の端子幅は、端子挿通口5eよりも幅広に形成される。第1部分31は、ベース部や、基部、肩部本体等とも称される。
【0026】
第2部分32は、幅広部30のうち幅方向Yに沿った端子幅が第1部分31よりも幅狭でありかつ端子挿通口5eよりも幅広に形成された部分である。第2部分32は、軸線方向Xにおいて、端子部20と第1部分31との間に設けられ、当該端子部20および第1部分31のそれぞれと接続される。また、第2部分32における幅方向Yの両側には、一対の第1テーパ面32aが設けられている。第1テーパ面32aは、肩部34から第1部分31に向かうにつれて徐々に幅方向Yの両側に広がるように傾斜している。第2部分32は、第1幅狭部や、第1延長肩部等とも称される。なお、第2部分32の軸線方向Xの他端面、すなわち肩部34における幅方向Yに沿った端子幅は、端子挿通口5eの周縁部で肩部34を加圧する際に、基板50のスルーホール51へプレスフィット端子1を挿入するために必要な挿入力が確保できる程度の最小限の幅寸法に設定される。
【0027】
第3部分33は、幅広部30のうち幅方向Yに沿った端子幅が第1部分31よりも幅狭でありかつ第2部分32と略同じに形成された部分である。第3部分33は、軸線方向Xにおいて、圧入部10と第1部分31との間に設けられ、当該圧入部10および第1部分31のそれぞれと接続される。また、第3部分33における幅方向Yの両側には、一対の第2テーパ面33aが設けられている。第2テーパ面33aは、圧入部10から第1部分31に向かうにつれて徐々に幅方向Yの両側に広がるように傾斜している。第3部分33は、第2幅狭部や、第2延長肩部等とも称される。なお、本実施形態では、第3部分33における第2テーパ面33aの傾斜角度は、第2部分32における第1テーパ面32aの傾斜角度よりも大きくなるように形成されているが、この例には限定されない。
【0028】
ここで、プレスフィット端子1等の通信経路を構成する部材においては、上述した圧入部10や、端子部20、幅広部30等によって幅方向Yに沿った端子幅が変化する部分が存在すると通信経路における特性インピーダンスが変化し、信号の反射や透過損失が発生して通信エラーが生じる虞がある。また、特性インピーダンスが変化する要素としては、上述した端子幅に加えて、二つのプレスフィット端子1の端子間ピッチや、プレスフィット端子1の周辺物質の誘電率等がある。そして、特性インピーダンスと導体幅は、負の相関となり、特性インピーダンスと端子間ピッチは、正の相関となり、特性インピーダンスと誘電率は、負の相関となる。
【0029】
特性インピーダンスは、以下の式(1)によって求めることができる。式(1)は、CIDM理論式等とも称される。なお、式(1)において、Z0は、特性インピーダンス(CIDM)であり、dは、内導体外径であり、pは、導体間ピッチであり、εrは、比誘電率(伝送路)である。
【0030】
【0031】
特性インピーダンスの整合がとれている場合は、通信信号の波形がほとんど乱れない傾向となり、特性インピーダンスの整合がとれていない場合は、通信信号の波形が乱れる傾向となる。その点、本実施形態によれば、幅広部30に第1テーパ面32aおよび第2テーパ面33aを設け、幅広部30の幅方向Yに沿った端子幅が端子部20および圧入部10の端子幅に対して徐々に大きくなるように構成している。これにより、幅広部30の端子幅が軸線方向Xのある位置を境に急激に大きくなって特性インピーダンスが大幅に変化することを抑制でき、ひいては通信信号の波形乱れによる通信エラーを抑制できる。
【0032】
また、本実施形態では、コネクタハウジング5は合成樹脂等の高誘電率の素材で形成される一方で、プレスフィット端子1における幅広部30の周辺は低誘電率の空気層となっている。そこで、本実施形態では、低誘電率による特性インピーダンスの上昇を抑えるために、プレスフィット端子1の幅広部30に第2部分32および第3部分33よりも幅広な第1部分31を設けている。これにより、高誘電率の端子部20における特性インピーダンスに対して、低誘電率の幅広部30における特性インピーダンスが同等となるように調整することができる。
【0033】
以上のように、本実施形態のプレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHでは、幅広部30は、軸線方向Xの中央部に位置される第1部分31と、第1部分31と端子部20との間に設けられ幅方向Yにおいて第1部分31よりも幅狭でありかつ端子挿通口5eよりも幅広に形成され軸線方向Xの他端面に端子挿通口5eの周縁部と係止される肩部34が設けられた第2部分32と、を有する。この構成により、プレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、例えば、第2部分32によって幅広部30の端子幅が端子部20の端子幅に対して急激に広くなることを抑制しつつ、当該第2部分32および第1部分31によって幅広部30の特性インピーダンスが端子部20の特性インピーダンスに対して同等となるように調整することができる。この結果、プレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、特性インピーダンスをより適正に、言い換えるとより容易に精度よく整合させることができ、ひいてはより安定した通信性能を得ることができる。
【0034】
また、本実施形態のプレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、幅広部30は、第1部分31と圧入部10との間に設けられ幅方向Yにおいて第1部分31よりも幅狭に形成される第3部分33を有する。この構成により、プレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、例えば、第3部分33によって幅広部30の端子幅が圧入部10の端子幅に対して急激に広くなることを抑制しつつ、当該第3部分33および第1部分31によって幅広部30の特性インピーダンスが圧入部10の特性インピーダンスに対して同等となるように調整することができる。この結果、プレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、特性インピーダンスをより一層適正に整合させることができる。
【0035】
また、本実施形態のプレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、第2部分32には、肩部34から第1部分31に向かうにつれて幅方向Yの両側に広がるように傾斜した第1テーパ面32aが設けられる。この構成により、プレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、例えば、第1テーパ面32aによって第1部分31の端子幅が軸線方向Xのある位置を境に急激に広くはならずに連続的に広がる形状とすることができ、ひいては幅広部30の端子幅に多少の寸法誤差が有っても特性インピーダンスの不整合が生じ難くなる。
【0036】
また、本実施形態のプレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、第3部分33には、圧入部10から第1部分31に向かうにつれて幅方向Yの両側に広がるように傾斜した第2テーパ面33aが設けられる。この構成により、プレスフィット端子1、コネクタ2、およびワイヤハーネスWHは、例えば、第2テーパ面33aによって第3部分33の端子幅が軸線方向Xのある位置を境に急激に広くはならずに連続的に広がる形状とすることができ、ひいては幅広部30の端子幅に多少の寸法誤差が有っても特性インピーダンスの不整合が生じ難くなる。
【0037】
なお、本実施形態では、プレスフィット端子1がコネクタ2に適用された場合が例示されたが、この例には限定されず、プレスフィット端子1は、コネクタ2に適用されなくてもよい。また、プレスフィット端子1の幅広部30は、例えば、第3部分33や、第1テーパ面32a、第2テーパ面33a等を有さなくてもよい。
【0038】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 プレスフィット端子
2 コネクタ
3 相手側コネクタ
5 コネクタハウジング
5e 端子挿通口
10 圧入部
20 端子部
30 幅広部
31 第1部分
32 第2部分
32a 第1テーパ面
33 第3部分
33a 第2テーパ面
34 肩部
50 基板
51 スルーホール
W 配索材
WH ワイヤハーネス
X 軸線方向
Y 幅方向