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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115119
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】車両のボンネット
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20240819BHJP
   B60R 21/34 20110101ALI20240819BHJP
【FI】
B62D25/10 E
B62D25/10 D
B60R21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020609
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 明俊
(72)【発明者】
【氏名】福井 清香
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 康仁
【テーマコード(参考)】
3D004
【Fターム(参考)】
3D004AA01
3D004AA04
3D004BA02
3D004CA01
3D004CA41
(57)【要約】
【課題】ボンネットの剛性を確保するとともに、衝突荷重を受けたときにはボンネットを変形し易くする。
【解決手段】車両の意匠面を構成する板状のボンネットアウタ22と、ボンネットアウタ22を下方内側から覆い、周縁部がそのボンネットアウタ22の周縁部に接合されている板状のボンネットインナ24と、ボンネットアウタ22とボンネットインナ24間の空間に収納されてボンネットアウタ22を下方内側から補強する補強ブラケット30とを備える車両のボンネット20であって、ボンネットインナ24には、開口部24hが形成されており、ボンネットインナ24の開口部24hは、ボンネットアウタ22と補強ブラケット30とが外部上方から衝突荷重を受けて下方に凸となるように変形する際に、補強ブラケット30の凸変形部が通過できる位置に形成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の意匠面を構成する板状のボンネットアウタと、前記ボンネットアウタを下方内側から覆い、周縁部がそのボンネットアウタの周縁部に接合されている板状のボンネットインナと、前記ボンネットアウタと前記ボンネットインナ間の空間内に収納されて前記ボンネットアウタを下方内側から補強する補強ブラケットとを備える車両のボンネットであって、
前記ボンネットインナには、開口部が形成されており、
前記ボンネットインナの開口部は、前記ボンネットアウタと補強ブラケットとが外部上方から衝突荷重を受けて下方に凸となるように変形する際に、前記補強ブラケットの凸変形部が通過できる位置に形成されている車両のボンネット。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のボンネットであって、
前記補強ブラケットには、折り曲げ変形する際の起点となる稜線が複数本形成されており、
前記ボンネットインナの開口部は前記補強ブラケットにおいて下方に凸となるように折り曲げ変形する際の起点となる稜線に対応する位置に形成されている車両のボンネット。
【請求項3】
請求項2に記載された車両のボンネットであって、
前記補強ブラケットは、車幅方向両端部において車両前後方向に延びるように設けられており、
前記稜線は、前記補強ブラケットを車幅方向に横断するように形成されている車両のボンネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンルームを覆うボンネットに関する。
【背景技術】
【0002】
上記した車両のボンネットに関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車両のボンネット100は、図8に示すように、板状のボンネットアウタ102と、そのボンネットアウタ102を下方内側から覆い、周縁部がボンネットアウタ102の周縁部に接合されている板状のボンネットインナ104とを備えている。ボンネットアウタ102の前部とボンネットインナ104の前部との間には空間Sが形成されており、その空間S内にボンネットアウタ102を下方から支える補強ブラケット106が設けられている。
【0003】
補強ブラケット106は、図8に示すように、断面略台形状に形成されており、前側から順番に固定板部106s、縦板部106w、傾斜前板部106f、上面板部106u、傾斜後板部106b、及び自由端部106cを備えている。そして、補強ブラケット106の固定板部106sがボンネットインナ104の前端上面に固定されている。また、補強ブラケット106の上面板部106uがボンネットアウタ102の裏面に固定されている。このため、補強ブラケット106によりボンネットの剛性を確保できる。さらに、補強ブラケット106の自由端部106cは、ボンネットインナ104から離隔した状態に保持されている。このため、ボンネットアウタ102に対して上方から衝突荷重Fが加わると、補強ブラケット106の自由端部106cがボンネットインナ104に当接するまでの間、ボンネットアウタ102、及び補強ブラケット106が下方に変形し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-68729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両のボンネット100では、衝突荷重Fが加わると、補強ブラケット106の自由端部106cがボンネットインナ104に当接するまでの間、ボンネットアウタ102、及び補強ブラケット106が変形し易くなる。しかし、補強ブラケット106の自由端部106cがボンネットインナ104に当接した後は、ボンネットアウタ102とボンネットインナ104間で、補強ブラケット106の縦板部106w、傾斜前板部106f、及び傾斜後板部106bが突っ張るようになる。このため、補強ブラケット106が変形し難くなって、衝突荷重Fを効率的に吸収できなくなる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ボンネットの剛性を確保するとともに、衝突荷重を受けたときにはボンネットを変形し易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車両の意匠面を構成する板状のボンネットアウタと、前記ボンネットアウタを下方内側から覆い、周縁部がそのボンネットアウタの周縁部に接合されている板状のボンネットインナと、前記ボンネットアウタと前記ボンネットインナ間の空間内に収納されて前記ボンネットアウタを下方内側から補強する補強ブラケットとを備える車両のボンネットであって、前記ボンネットインナには、開口部が形成されており、前記ボンネットインナの開口部は、前記ボンネットアウタと補強ブラケットとが外部上方から衝突荷重を受けて下方に凸となるように変形する際に、前記補強ブラケットの凸変形部が通過できる位置に形成されている。
【0008】
本発明によると、補強ブラケットによりボンネットの剛性を確保できる。また、ボンネットインナには開口部が形成されており、その開口部はボンネットアウタと補強ブラケットとが外部上方から衝突荷重を受けて下方に凸となるように変形する際に、前記補強ブラケットの凸変形部が通過できる位置に形成されている。このため、ボンネットが外部上方から衝突荷重を受けたときに、補強ブラケットがボンネットアウタとボンネットインナ間で突っ張ることがなく、ボンネットが変形し易くなる。これにより、ボンネットにおいて衝突荷重を良好に吸収できるようになる。
【0009】
第2の発明によると、補強ブラケットには、折り曲げ変形する際の起点となる稜線が複数本形成されており、前記ボンネットインナの開口部は前記補強ブラケットにおいて下方に凸となるように折り曲げ変形する際の起点となる稜線に対応する位置に形成されている。即ち、ボンネットインナの開口部は補強ブラケットの凸変形部が通る位置に形成されている。
【0010】
第3の発明によると、補強ブラケットは、車幅方向両端部において車両前後方向に延びるように設けられており、稜線は、前記補強ブラケットを車幅方向に横断するように形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ボンネットの剛性を確保できる。さらに、衝突荷重を受けた場合にボンネットが変形し易くなり、衝突荷重を良好に吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係るボンネットを備える車両を右上前方から見た模式斜視図である。
図2】前記ボンネットの一部破断平面図である。
図3】前記ボンネットを構成するボンネットインナの右側における開口部の平面図である。
図4】前記ボンネットを構成する右側の補強ブラケットとボンネットインナの開口部との位置関係を表す平面図である。
図5】前記ボンネットにおける補強ブラケットとボンネットインナの開口部との関係を表す縦断面図(図4のV-V矢視断面図)である。
図6図5のVI矢視拡大図である。
図7】外部上方から衝突荷重を受けたときのボンネットの変形の様子を表す縦断面図である。
図8】従来の車両のボンネットを表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図7に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のボンネットについて説明する。本実施形態に係るボンネット20は、図1に示すように、車両10のエンジンルームERの上部開口を蓋状に覆う部材である。ここで、図中に示す前後左右及び上下は、本実施形態に係るボンネット20を備える車両10の前後左右及び上下に対応している。
【0014】
<ボンネット20の概要について>
ボンネット20は、図1図2に示すように、車両10の意匠面を構成する板状のボンネットアウタ22と、前記ボンネットアウタ22を下方内側から覆い、周縁部がそのボンネットアウタの周縁部に接合される板状のボンネットインナ24とを備えている。前記ボンネットアウタ22とボンネットインナ24間には、中央部より後側の左側部分と右側部分とに空間S(図5等参照)が形成されている。そして、ボンネット20の左右の空間Sには、図2に示すように、左右の補強ブラケット30がそれぞれ収納されている。
【0015】
<補強ブラケット30について>
左右の補強ブラケット30は、ボンネット20の剛性を確保することで、走行時の振動を抑え、さらにボンネット20の取扱性等を向上させるための部材である。左右の補強ブラケット30は、図2に示すように、等しい構造で左右対称に形成されている。補強ブラケット30は、図4に示すように、ブラケット前部32と、ブラケット中間部33と、ブラケット後部34とから構成されている。
【0016】
ブラケット前部32は、図4図5に示すように、帯状上板部32uと、左右の前脚板部32h,32mと後脚板部32xとにより縦断面形状が略台形状に形成されている。ブラケット前部32の帯状上板部32uは、車両前後方向に延びてボンネットアウタ22の裏面に固定されている。ブラケット前部32の左右の前脚板部32h,32mは、図4に示すように、帯状上板部32uの前部に略T状に接続されている。そして、左前脚板部32hと右前脚板部32mとの先端部がボンネットインナ24の上面に固定されている。また、ブラケット前部32の後脚板部32xは、図4図5に示すように、帯状上板部32uの後部に接続されて、その帯状上板部32uの延長線上に延びている。そして、後脚板部32xの先端部がブラケット中間部33に接続されている。
【0017】
ブラケット前部32の後脚板部32xには、図4図5に示すように、下方に凸となるように折り曲げ変形する際の起点となる稜線R1と、上方に凸となるようにおり曲げ変形する際の起点となる稜線R2とが後脚板部32xを横断するように形成されている。即ち、稜線R1と稜線R2とは車幅方向に延びるように形成されている。ここで、補強ブラケット30(ブラケット前部32)の後脚板部32xの稜線R1は、図6に示すように、上方からの衝突荷重Fを受け易い位置に形成されている。また、ボンネットインナ24には、図3図5等に示すように、補強ブラケット30の後脚板部32xの稜線R1に対応する位置に略角形の開口部24hが形成されている。
【0018】
補強ブラケット30のブラケット中間部33は、図4図5等に示すように、ブラケット前部32とブラケット後部34とを連結する部分であり、ボンネットインナ24の上面に固定されている。
【0019】
補強ブラケット30のブラケット後部34は、図5に示すように、帯状上板部34uと、前脚板部34kと後脚板部34mとにより縦断面形状が略台形状に形成されている。ブラケット後部34の帯状上板部34uは、車両前後方向に延びてボンネットアウタ22の裏面に固定されている。ブラケット後部34の前脚板部34kは、帯状上板部34uの前部に接続されており、その前脚板部34kの先端部がブラケット中間部33に接続されている。また、ブラケット後部34の後脚板部34mは、図4図5に示すように、帯状上板部34uの後部に接続されて、その帯状上板部34uに対して斜め右後方に突出している。そして、後脚板部34mの先端部がボンネットインナ24の上面に固定されている。
【0020】
このように、補強ブラケット30のブラケット後部34の後脚板部34m、ブラケット中間部33、及びブラケット前部32の左前脚板部32h、右前脚板部32mがボンネットインナ24に固定され、ブラケット後部34とブラケット前部32との帯状上板部32u,34uがボンネットアウタ22に固定されている。このように、補強ブラケット30によりボンネットアウタ22が下方内側から補強されることで、ボンネット20の剛性が向上する。これにより、車両走行時等におけるボンネット20の振動を抑えることができる。また、ボンネット20の取扱性等を向上させることができる。
【0021】
<本実施形態のボンネット20の働きについて>
次に、図6図7に基づいて、本実施形態のボンネット20の働きについて説明する。車両10の前方衝突時に、例えば、ボンネット20の右後部に対して前上方から衝突荷重Fが加わると、図6図7に示すように、ボンネットアウタ22と、そのボンネットアウタ22を下方から支える補強ブラケット30(ブラケット前部32)が下方に変形する。このとき、ブラケット前部32の後脚板部32xには、下方に凸となるように折り曲げ変形する際の起点となる稜線R1が形成されている。また、ボンネットインナ24には、図3図5等に示すように、補強ブラケット30の後脚板部32xの稜線R1に対応する位置に開口部24hが形成されている。
【0022】
このため、衝突荷重Fを受けて補強ブラケット30(ブラケット前部32)の後脚板部32xが稜線R1の位置で下方に凸となるように折り曲げ変形すると、図7に示すように、補強ブラケット30の下方に凸となる凸変形部はボンネットインナ24の開口部24hを通過するようになる。この結果、衝突荷重Fを受けたときに、補強ブラケット30(ブラケット前部32)の後脚板部32xがボンネットアウタ22とボンネットインナ24間で突っ張ることがなくなる。これにより、衝突荷重Fでボンネットアウタ22と補強ブラケット30とが変形し易くなり、衝突荷重Fをボンネット20で良好に吸収できるようになる。
【0023】
<本実施形態に係るボンネット20の長所について>
本実施形態に係るボンネット20によると、補強ブラケット30によりボンネット20の剛性を確保できる。また、ボンネットインナ24には開口部24hが形成されており、その開口部24hはボンネットアウタ22と補強ブラケット30とが外部上方から衝突荷重Fを受けて下方に凸となるように変形する際に、補強ブラケット30の凸変形部が通過できる位置に形成されている。このため、ボンネット20が外部上方から衝突荷重Fを受けたときに、補強ブラケット30がボンネットアウタ22とボンネットインナ24間で突っ張ることがなく、ボンネット20が変形し易くなる。これにより、ボンネット20において衝突荷重Fを良好に吸収できるようになる。
【0024】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、左右の補強ブラケット30をブラケット前部32と、ブラケット中間部33と、ブラケット後部34とから構成する例を示した。しかし、ボンネット20の形状やサイズに応じて、左右の補強ブラケット30を、例えば、ブラケット前部32のみから構成し、あるいはブラケット後部34のみから構成することも可能である。また、本実施形態では、左右の補強ブラケット30を備えるボンネット20について例示した。しかし、車幅方向に延びる1本の補強ブラケット、あるいは複数本の補強ブラケットを備えるボンネットについて本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
20・・・・ボンネット
22・・・・ボンネットアウタ
24・・・・ボンネットインナ
24h・・・開口部
30・・・・補強ブラケット
32・・・・ブラケット前部
33・・・・ブラケット中間部
34・・・・ブラケット後部
F・・・・・衝突荷重
R1・・・・稜線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8