(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115124
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】最適化計算装置、最適化計算方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20240819BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020614
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠
(72)【発明者】
【氏名】榎本 智之
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】適切なモデルを用いて最適化計算を行うことができる最適化計算装置、最適化計算方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】最適化計算装置は、所定のシステムの最適化計算を実行する装置であって、システムを表す評価層モデルが、1または複数種類の実装コンポーネントを備え、各実装コンポーネントが、1または複数種類の基礎コンポーネントを備え、各基礎コンポーネントは、実装コンポーネント毎に設定された変更可能な設定情報に基づき当該基礎コンポーネントにおける処理内容を変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のシステムの最適化計算を実行する装置であって、
前記システムを表す評価層モデルが、1または複数種類の実装コンポーネントを備え、
各前記実装コンポーネントが、1または複数種類の基礎コンポーネントを備え、
各前記基礎コンポーネントは、前記実装コンポーネント毎に設定された変更可能な設定情報に基づき当該基礎コンポーネントにおける処理内容を変更する
最適化計算装置。
【請求項2】
前記基礎コンポーネントは、蒸気量の発生と消費に関する基礎コンポーネント、電力量の発生と消費に関する基礎コンポーネント、コストの発生に関する基礎コンポーネント、および、炭素の排出量に関する基礎コンポーネントを含む
請求項1に記載の最適化計算装置。
【請求項3】
各前記基礎コンポーネントは、前記設定情報に基づき当該基礎コンポーネントを構成するプログラムコードを変更せずに前記処理内容を変更する
請求項2に記載の最適化計算装置。
【請求項4】
各前記基礎コンポーネントは、入力部と、前記入力部から入力された入力情報に基づき所定の演算処理を実行する演算部と、前記演算部の処理結果を出力する出力部とを備え、前記処理内容を変更する際に、当該基礎コンポーネントを備える前記実装コンポーネントの種類に基づき前記入力部と前記演算部と前記出力部が実行する各処理を選択するとともに、前記設定情報に基づき前記演算処理の内容を変更する
請求項3に記載の最適化計算装置。
【請求項5】
前記設定情報は各前記基礎コンポーネントに対して前記入力情報として前記入力部から入力される
請求項4に記載の最適化計算装置。
【請求項6】
前記最適化計算が、複数の評価関数を用いた最適化計算であり、かつ、前記各評価関数に対して重み付けがなれている
請求項1から5のいずれか1項に記載の最適化計算装置。
【請求項7】
所定のシステムの最適化計算を実行する方法であって、
前記システムを表す評価層モデルが、1または複数種類の実装コンポーネントを備え、
各前記実装コンポーネントが、1または複数種類の基礎コンポーネントを備え、
各前記基礎コンポーネントは、前記実装コンポーネント毎に設定された変更可能な設定情報に基づき当該基礎コンポーネントにおける処理内容を変更する
最適化計算方法。
【請求項8】
所定のシステムの最適化計算をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記システムを表す評価層モデルが、1または複数種類の実装コンポーネントを備え、
各前記実装コンポーネントが、1または複数種類の基礎コンポーネントを備え、
各前記基礎コンポーネントは、前記実装コンポーネント毎に設定された変更可能な設定情報に基づき当該基礎コンポーネントにおける処理内容を変更する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、最適化計算装置、最適化計算方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、次のような生産エネルギー管理システムが記載されている。すなわち、特許文献1に記載されている生産エネルギー管理システムは、プラント内に配置された装置間における生産関連物の入出力に関する流れと、エネルギーの入出力に関する流れとを有向線で表現した生産・エネルギーフローモデルを定義し、プラント内から収集された計測データと生産・エネルギーフローモデルとに従って装置ごとのエネルギー演算を行う。
【0003】
また、特許文献2には、再利用性が高く効率的なモデル開発を可能とすることを目的としたプラントモデル開発システムが記載されている。特許文献2に記載されている開発システムでは、初期機能オブジェクトを配置接続することで上位の機器モデルオブジェクトが生成される。その際、初期機能オブジェクトが持つ多数の入出力をグループ化することでGUI(Graphical User Interfac)による配置接続を容易化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/174928号
【特許文献2】特開2008-225820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最適化計算によってシステムの構成や動作の最適化を図る場合、システムを表すモデルについては、構成や動作に係るパラメータを適切に変更することができることが求められる場合がある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、適切なモデルを用いて最適化計算を行うことができる最適化計算装置、最適化計算方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示に係る最適化計算装置は、所定のシステムの最適化計算を実行する装置であって、前記システムを表す評価層モデルが、1または複数種類の実装コンポーネントを備え、各前記実装コンポーネントが、1または複数種類の基礎コンポーネントを備え、各前記基礎コンポーネントは、前記実装コンポーネント毎に設定された変更可能な設定情報に基づき当該基礎コンポーネントにおける処理内容を変更する。
【0008】
本開示に係る最適化計算方法は、所定のシステムの最適化計算を実行する方法であって、前記システムを表す評価層モデルが、1または複数種類の実装コンポーネントを備え、各前記実装コンポーネントが、1または複数種類の基礎コンポーネントを備え、各前記基礎コンポーネントは、前記実装コンポーネント毎に設定された変更可能な設定情報に基づき当該基礎コンポーネントにおける処理内容を変更する。
【0009】
本開示に係るプログラムは、所定のシステムの最適化計算をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記システムを表す評価層モデルが、1または複数種類の実装コンポーネントを備え、各前記実装コンポーネントが、1または複数種類の基礎コンポーネントを備え、各前記基礎コンポーネントは、前記実装コンポーネント毎に設定された変更可能な設定情報に基づき当該基礎コンポーネントにおける処理内容を変更する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の最適化計算装置、最適化計算方法、およびプログラムによれば、適切なモデルを用いて最適化計算を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る最適化計算装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る評価層モデルおよびフィールド層モデルの構成例を示す模式図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る実装コンポーネントと基礎コンポーネントの関係の例を示す模式図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る実装コンポーネントの構成例を示す模式図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る実装コンポーネント(実装コンポーネントが蒸気ボイラの場合)の入力画面の例を示す模式図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る実装コンポーネント(実装コンポーネントがガスタービンの場合)の入力画面の例を示す模式図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る実装コンポーネント(太陽光発電設備および蓄電池の場合)の入力画面の例を示す模式図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る評価層モデル(工場に設置されるエネルギー設備・生産設備の場合)の構成例を示す模式図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る最適化計算の処理フローの例を示す図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る最適化計算装置の動作例を示す図である。
【
図11】本開示の実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態に係る最適化計算装置、最適化計算方法、およびプログラムについて、
図1~
図11を参照して説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る最適化計算装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、本開示の実施形態に係る評価層モデルおよびフィールド層モデルの構成例を示す模式図である。
図3は、本開示の実施形態に係る実装コンポーネントと基礎コンポーネントの関係の例を示す模式図である。
図4は、本開示の実施形態に係る実装コンポーネントの構成例を示す模式図である。
図5は、本開示の実施形態に係る実装コンポーネント(実装コンポーネントが蒸気ボイラの場合)の入力画面の例を示す模式図である。
図6は、本開示の実施形態に係る実装コンポーネント(実装コンポーネントがガスタービンの場合)の入力画面の例を示す模式図である。
図7は、本開示の実施形態に係る実装コンポーネント(太陽光発電設備および蓄電池の場合)の入力画面の例を示す模式図である。
図8は、本開示の実施形態に係る評価層モデル(工場に設置されるエネルギー設備・生産設備の場合)の構成例を示す模式図である。
図9は、本開示の実施形態に係る最適化計算の処理フローの例を示す図である。
図10は、本開示の実施形態に係る最適化計算装置の動作例を示す図である。
図11は、本開示の実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0013】
(最適化計算装置の構成)
図1に示すように本開示の実施形態に係る最適化計算装置1は、例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを用いて構成することができ、コンピュータ、周辺装置等のハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせ等から構成される機能的構成として次の各部を備える。すなわち、
図1に示す最適化計算装置1は、機能的構成として、モデル設定部2、評価層モデル3、ベース計算実行部4、最適化計算設定部5および最適化計算実行部6を備える。なお、最適化計算装置1が備える機能的構成の一部または全部は、例えば、ネットワーク上に構成された仮想的なコンピュータを用いて構成されていてもよい。
【0014】
なお、本実施形態において最適化計算(あるいは最適化問題)とは、評価層モデル3を最適化計算の対象モデル(最適化モデルに相当する)として、所定の制約条件の下で評価関数(あるいは目的関数)を最大または最小にする解を求める計算である。また、以下では、本実施形態が工場設備の運用に関する最適条件を得る場合を例として説明する。この場合、最適化問題として例えば次のような例を挙げることができる。
【0015】
最適化問題例1:ある事業のある制約条件(設備能力、蒸気消費量、電力消費量等の制約条件)の下で、二酸化炭素(CO2)排出量が最低となる場合の、ボイラ・タービン・電力融通・買電・コストの条件がなにかを求める。
【0016】
最適化問題例2:ある事業のある制約条件(設備能力、蒸気消費量、電力消費量等の制約条件)の下で、コストが最低となる場合の、ボイラ・タービン・電力融通・買電・CO2排出量の条件がなにかを求める。
【0017】
最適化問題例3:売上(生産量)を10%増かつCO2排出量10%減となる場合の、設備能力増強の条件がなにかを求める。
【0018】
本実施形態において、評価層モデル3は、最適化計算の対象であるシステムを表すモデルである。評価層モデル3は、例えば、複数の工場を含むシステムを表すモデルである。評価層モデル3は、1または複数のフィールド層モデル31を備える。フィールド層モデル31は、評価層モデル3の1階層下の階層のモデルであって、0個以上の実装コンポーネント(実装コンポーネントモデルともいう)32を備える。各フィールド層モデル31は、例えばシステムが含む各工場を表すモデルである。なお、評価層モデル3は、フィールド層モデル31を備えていなくてもよい。フィールド層モデル31を備えていない場合、評価層モデル3は、1または複数種類の実装コンポーネント32を直接備える。
【0019】
実装コンポーネント32は、評価層モデル3またはフィールド層モデル31の1階層下の階層のモデルであって、1または複数種類の基礎コンポーネント33を備える。実装コンポーネント32は、例えば工場に設置された設備や装置を表すモデルである。基礎コンポーネント33は、実装コンポーネント32を構成するソフトウェア(プログラム等)の基礎的な構成要素としてのモデルであり、1または複数の設定情報(単にパラメータともいう)を設定することで処理内容を設定(変更)することができる雛形モデルである。
【0020】
モデル設定部2は、例えば最適化計算装置1のユーザの指示に従って、評価層モデル3(およびその下位階層のモデル)の構成と動作を設定する。モデル設定部2は、まず、例えば、評価層モデル3が備えるフィールド層モデル31の種類(あるいは名称)と個数を設定する。次に、モデル設定部2は、各フィールド層モデル31が備える実装コンポーネント32の種類と個数と各実装コンポーネント32間の接続関係を設定する。また、モデル設定部2は、フィールド層モデル31が異なる各実装コンポーネント32間の接続関係を設定する。モデル設定部2は、各実装コンポーネント32の種類に基づき、各実装コンポーネント32が備える基礎コンポーネント33の種類と個数と各基礎コンポーネント33間の接続関係と各基礎コンポーネント33の基本的な処理内容とを決定するとともに、実装コンポーネント32毎に入力された設定情報に基づいて各基礎コンポーネント33内の詳細な処理内容を設定あるいは変更する。なお、基礎コンポーネント33の種類と個数と各基礎コンポーネント33間の接続関係と各基礎コンポーネント33の基本的な処理内容は、実装コンポーネント32の種類毎に予め決められている。また、基礎コンポーネント33の基本的な処理内容とは例えば雛形的な処理内容であり、詳細な処理内容とは例えば基本的な処理内容に対して実装コンポーネント32が表す構成(例えば設備や装置)に対応した属性(個性)を設定情報に基づいて付与した処理内容である。
【0021】
なお、モデル設定部2は、実装コンポーネント32とは別のモデルを設定する機能を備えることができる。例えば、モデル設定部2は、実装コンポーネント32の出力情報に対して四則演算等の演算処理を行い、新たな情報を生成して実装コンポーネント32へ出力するモデル、外部から時系列情報を入力し、入力した時系列情報をそのまま、あるいは、任意の演算処理を行って生成した新たな時系列情報を、実装コンポーネント32へ出力するモデル等を定義し、実装コンポーネント32に接続させる機能を備えることができる。
【0022】
ベース計算実行部4は、最適化計算の基準設定を目的とし、評価層モデル3を用いて所定の変数を計算する。ベース計算実行部4は、例えば、固定された入力情報に基づいて、最適化計算において目的パラメータとしたい項目を算出する。ベース計算は、例えば、過去の生産情報(固定)、設備情報(固定)、ユーティリティ調達情報(固定)等から、コストや二酸化炭素(CO2)排出量を算出することを意味する。後述する最適化計算実行部6による最適化計算では、ベース計算の入力条件を可変(操作パラメータ(説明変数))と固定(制約パラメータ)に分けて、目標を満足する(または目標に最も近づく)条件となるまで、操作パラメータを動かして評価関数を変化させる最適化処理を行う。
【0023】
最適化計算設定部5は、例えばユーザの指示に従って、最適化計算実行部6による最適化計算における制約条件、評価関数(あるいは目的関数)、評価層モデル3を構成あるいは評価層モデル3に入力するどの変数を可変(操作パラメータ)または固定(制約パラメータ)にするのか等の各種設定を行う。また、最適化計算設定部5は、最適化計算において評価関数を複数設定する場合、各評価関数に重み付けを与えられるようにすることができる。重み付けは評価したい項目の優先度に相当し、重み付けを与えることで、最適化計算実行部6では複数の評価項目のバランス評価を行うことができる。
【0024】
最適化計算実行部6は、評価層モデル3を用いて、評価層モデル3が表すシステムの最適化計算を実行する。最適化計算の手法に限定はなく、既存の最適化計算手法を用いることができる。なお、最適化計算実行部6は、例えば、実装コンポーネント32あるいは基礎コンポーネント33の入力情報(時系列情報、非時系列情報(設定情報等))、出力情報等を、操作パラメータまたは制約パラメータとして最適化計算を実行する。
【0025】
最適化計算実行部6は、例えば、所定の時間単位(時間区間ともいう)で、所定の時間(期間)、評価層モデル3において時系列情報を入出力する全モデル(実装コンポーネント32または実装コンポーネント32とは別のモデル)において逐次、所定の演算処理等を実行することで評価層モデル3の時系列解析を行う。最適化計算実行部6は、時間単位毎に、前のモデルの出力を後のモデルへ入力する逐次処理を全モデルについて実行する。また、最適化計算実行部6は、所定の時間単位分の演算処理等が終了すると、次の時間単位分の演算処理等を実行し、これを所定の時間(期間)分繰り返して、評価関数を算出する。なお、所定の時間単位に限定はなく、例えば、秒単位、分単位、時間単位、日単位等とすることができる。また、所定の時間(期間)に限定はなく、例えば、分、時間、日、週、月、複数月、年、複数年、複数年の同一季節等とすることができる。
【0026】
(評価層モデル)
次に
図2~
図8を参照して評価層モデル3について詳細に説明する。
図2は、評価層モデル3の構成例を示す。
図2に示す評価層モデル3は、5個のフィールド層モデル31(フィールド層Aモデル31-A~フィールド層Eモデル31-E)を備える。
図2に示す評価層モデル3において、フィールド層Aモデル31-Aの出力がフィールド層Bモデル31-Bへ入力される。フィールド層Bモデル31-Bの出力がフィールド層Cモデル31-Cとフィールド層Dモデル31-Dとへ入力される。フィールド層Cモデル31-Cの出力がフィールド層Eモデル31-Eへ入力される。フィールド層Eモデル31-Eの出力がフィールド層Dモデル31-Dへ入力される。
【0027】
フィールド層Aモデル31-Aへは例えば時系列情報(例えば燃料流量、蒸気流量、電気量等の時系列情報)が入力され、フィールド層Aモデル31-Aからは入力された時系列情報に基づいて算出された時系列情報(例えば蒸気量、電気量、所定の生産物の生産量等の時系列情報)が出力される。また、フィールド層Bモデル31-Bは、フィールド層Aモデル31-Aが出力した時系列情報を入力し、入力された時系列情報に基づいて算出された時系列情報(例えば所定の生産物の生産量等の時系列情報)を出力する。なお、本実施形態では、フィールド層モデル31、実装コンポーネント32等の構成要素が出力する情報を中間変数という。また、本実施形態において評価層モデル3は、最適化対象に応じて要素モデルを結合することで構成される。また、評価層モデル3の全体モデルの構築は、構成要素の結合関係の組み換えのみで可能である(=構築が容易かつ汎用的である)。
【0028】
なお、時系列情報は、例えば、「蒸気ボイラ」の実装コンポーネント32であれば、燃料流量の30分毎のデータ、蒸気発生量の30分毎のデータ、蒸気消費量の30分毎のデータ等である。また、データは、実績や、統計手法や機械学習等による予測データとすることができる。
【0029】
また、
図2に示す例において、フィールド層Aモデル31-Aは、4個の実装コンポーネント32(実装コンポーネントαモデル32-α~実装コンポーネントδモデル32-δ)を備える。
図2に示すフィールド層Aモデル31-Aにおいて、実装コンポーネントαモデル32-αの出力が実装コンポーネントβモデル32-βへ入力される。実装コンポーネントβモデル32-βの出力が実装コンポーネントγモデル32-γと実装コンポーネントδモデル32-δとへ入力される。実装コンポーネントγモデル32-γの出力が実装コンポーネントδモデル32-δへ入力される。
【0030】
(実装コンポーネントと基礎コンポーネント)
また、実装コンポーネント32は、上述したように、1または複数種類の基礎コンポーネント33を備える。基礎コンポーネント33は、実装コンポーネント32のエレメント(構成要素)である。
図3は、各種類の実装コンポーネント32が備える基礎コンポーネント33の例を示す。
図3に示す例では、4種類の基礎コンポーネント33が設定されている。
図3に示す例では、蒸気量の発生と消費に関するエレメントである蒸気コンポーネントと、電力量の発生と消費に関するエレメントである電力コンポーネントと、コスト(費用)の発生に関するエレメントであるコストコンポーネントと、炭素(二酸化炭素)の排出量に関するエレメントである炭素コンポーネントの4種類の基礎コンポーネント33が設定されている。各実装コンポーネント32は、実装コンポーネント32の種類(名称)に応じて、各実装コンポーネント32に関連する基礎コンポーネント33を1または複数種類備える。
【0031】
図3は、11種類の実装コンポーネント32と、4種類の基礎コンポーネント33との関係の例を示す。「蒸気ボイラ」を表す実装コンポーネント32は、「蒸気」、「コスト」および「炭素」の3種類の基礎コンポーネント33を備える。すなわち、「蒸気ボイラ」の実装コンポーネント32を構成するプログラムは、「蒸気」の基礎コンポーネント33を構成するプログラムと「コスト」の基礎コンポーネント33を構成するプログラムと「炭素」の基礎コンポーネント33を構成するプログラムとを組み合わせて構成される。「蒸気タービン(発電機)」の実装コンポーネント32は、「蒸気」および「電力」の2種類の基礎コンポーネント33を備える。「ガスタービン(発電機)」の実装コンポーネント32は、「蒸気」、「電力」、「コスト」および「炭素」の4種類の基礎コンポーネント33を備える。「ディーゼル発電機」の実装コンポーネント32は、「電力」、「コスト」および「炭素」の3種類の基礎コンポーネント33を備える。「その他蒸気発生設備」の実装コンポーネント32は、「蒸気」の基礎コンポーネント33を備える。「その他電力発生設備」の実装コンポーネント32は、「電力」の基礎コンポーネント33を備える。「蒸気需要」の実装コンポーネント32は、「蒸気」の基礎コンポーネント33を備える。「蒸気需要」の実装コンポーネント32は、例えば、工場内で蒸気を消費する設備を表す。「電力需要」の実装コンポーネント32は、「電力」の基礎コンポーネント33を備える。「電力需要」の実装コンポーネント32は、例えば、工場内で電力を消費する設備を表す。「外部電力融通」の実装コンポーネント32は、「電力」の基礎コンポーネント33を備える。「外部電力融通」の実装コンポーネント32は、例えば当該実装コンポーネント32を含むフィールド層モデル31の外部にある他の構成要素との間で電力を融通するための仮想的な設備を表す。「外部電力融通」の実装コンポーネント32の詳細については後述する。「太陽光発電設備」の実装コンポーネント32は、「電力」の基礎コンポーネント33を備える。「蓄電池」の実装コンポーネント32は、「電力」の基礎コンポーネント33を備える。なお、実装コンポーネント32の種類は、
図3に示す例に限定されない。例えば、「太陽光発電設備」と「蓄電池」を組み合わせた実装コンポーネント32等を定義することができる。
【0032】
図4は、「蒸気ボイラ」の実装コンポーネント32(
図4では実装コンポーネント32-1)の構成例を示す。
図3を参照して説明したように、「蒸気ボイラ」の実装コンポーネント32は、「蒸気」、「コスト」および「炭素」の3種類の基礎コンポーネント33を備える(
図4では基礎コンポーネント33-1、33-2および33-3として示す。)。また、各基礎コンポーネント33-1~3は、入力部34-1~3と、演算部35-1~3と、保存・出力部36-1~3とをそれぞれ備える。なお、基礎コンポーネント33-1~3を総称する場合、基礎コンポーネント33という。入力部34-1~3を総称する場合、入力部34という。演算部35-1~3を総称する場合、演算部35という。保存・出力部36-1~3を総称する場合、保存・出力部36という。なお、保存・出力部36は、本開示に係る出力部の一構成例である。また、演算部35における演算処理は、例えば、入力情報を出力情報に変化させる処理関数等で定義される。
【0033】
各基礎コンポーネント33において、入力部34は、実装コンポーネント32-1の外部から入力された情報または他の基礎コンポーネント33から出力された情報を入力する。演算部35は、入力部34から入力された入力情報に基づき所定の演算処理を実行する。保存・出力部36は、演算部35の演算処理の結果(処理結果)を保存および出力する。保存・出力部36の出力先は、実装コンポーネント32-1内の他の基礎コンポーネント33または実装コンポーネント32-1の外部の他の実装コンポーネント32等である。なお、保存・出力部36は、演算部35の演算処理の結果の保存のみを行い、他の要素への出力を行わなくてもよい。演算部35は、例えば、入力情報を出力情報に変化させる処理関数を含む。また、演算処理は、入力情報として定義した時間区間ごとに実施される。また、入力部34の処理内容は、入力情報の数、名称、入力方法(入力欄への入力、他のコンポーネントからの入力、時間区間の定義等)で定義することができる。また、保存・出力部36の処理内容は、出力情報の数、名称等で定義することができる。
【0034】
図4に示す例では、「蒸気」の基礎コンポーネント33-1の保存・出力部36-1の出力が、「コスト」の基礎コンポーネント33-2の入力部34-2の入力と「炭素」の基礎コンポーネント33-3の入力部34-3の入力に接続されている。「蒸気」の基礎コンポーネント33-1の保存・出力部36-1から出力された情報は、後続の実装コンポーネント32への入力情報となる。「コスト」の基礎コンポーネント33-2の保存・出力部36-2から出力された情報は、後続の実装コンポーネント32への入力情報となる。「炭素」の基礎コンポーネント33-3の保存・出力部36-3から出力された情報は、後続の実装コンポーネント32への入力情報となる。
【0035】
また、「蒸気」の基礎コンポーネント33-1の入力部34-1へ入力される入力情報D1は、燃料流量(L/h)の時系列情報と、性能値、各原単位(単価、CO2)等の非時系列情報である。演算部35-1の処理内容は、燃料流量を発生蒸気流量に変換する関数処理である。また、保存・出力部36-1は、蒸気流量(L/h)の時系列情報を保存および出力する。なお、性能値、各原単位(単価、CO2)等の非時系列情報が、上述した実装コンポーネント32毎に入力される設定情報に対応する。
【0036】
また、「コスト」の基礎コンポーネント33-2の入力部34-2へは蒸気流量(L/h)の時系列情報が入力される。演算部35-2の処理内容は、燃料流量をコストに変換する関数処理である。また、保存・出力部36-2は、コスト(円/h)の時系列情報を保存および出力する。
【0037】
また、「炭素」の基礎コンポーネント33-3の入力部34-3へは蒸気流量(L/h)の時系列情報が入力される。演算部35-3の処理内容は、燃料流量を炭素排出量(CO2)に変換する関数処理である。また、保存・出力部36-3は、CO2(kg/h)の時系列情報を保存および出力する。関数処理は、例えば、蒸気発生量、発電量、燃料種、燃料別CO2排出係数等からCO2排出量に変換する関数で構成することができる。
【0038】
各実装コンポーネント32が備える基礎コンポーネント33の種類と個数と接続関係と基本的な処理内容については、各実装コンポーネント32の種類に基づいて上述したようにモデル設定部2によって設定される。例えば、
図3に示す例において、「蒸気」の実装コンポーネント32の場合、当該実装コンポーネント32が備える基礎コンポーネント33の種類は「蒸気」、「コスト」および「炭素」の3種類であり、個数は各種類1個の3個である。また、「蒸気」の実装コンポーネント32内の各基礎コンポーネント33の接続関係は、
図4を参照して上述したように設定される。また、基礎コンポーネント33の基本的な処理内容については、
図4を参照して説明したように、例えば、演算部35-1の演算処理が燃料流量を蒸気流量に変換する関数処理であること等が設定(選択)される。
【0039】
なお、処理内容の設定(選択あるいは変更)は、例えば次のように行うことができる。すなわち、例えば、「蒸気」の基礎コンポーネント33については、
図3に示すように、それを備える「蒸気ボイラ」、「蒸気タービン」、「ガスタービン」、「その他の蒸気発生設備」、「蒸気需要」の各実装コンポーネント32に対応した複数種類の接続関係と複数種類の基本的な処理内容に対応したプログラム等のソフトウェアを、予め「蒸気」の基礎コンポーネント33内に用意しておく。そして、当該「蒸気」の基礎コンポーネント33を備える実装コンポーネント32の種類に応じて、予め用意したソフトウェアのいずれかを選択することで、接続関係と処理内容を設定することができる。この場合、「蒸気ボイラ」、「蒸気タービン」、「ガスタービン」、「その他の蒸気発生設備」、および、「蒸気需要」の各実装コンポーネント32を構成する場合の接続関係と処理内容とが選択できるように「蒸気」の基礎コンポーネント33が構成されている。また、各接続関係や各処理内容で用いる係数、定数等のパラメータが、入力情報D1(設定情報)に基づいて変更できるように基礎コンポーネント33のソフトウェアが構成されている。また、基礎コンポーネント33は、設定情報に基づき当該基礎コンポーネント33を構成するプログラムコードを変更せずに処理内容を変更することができるように構成されている。例えば、
図4に示す演算部35-1は、入力情報D1が含む性能値や原単位の情報に基づいて、燃料流量を蒸気流量に変換する関数処理の内容を変更する。なお、基礎コンポーネント33-2および33-3についても同様に基礎コンポーネント33-1への入力情報D1に含まれた設定情報によって処理内容が変更される。
【0040】
なお、入力部34における入力処理では、例えば、複数の実装コンポーネント32から同一種類の入力情報がある場合の各入力値に対する演算処理の内容(例えば単純に合算してすべて入力するのか、所定の比率で合算してかつその一部のみを入力するのかといった処理内容)等が設定情報に基づいて設定される。また、演算部35における演算処理では、例えば、演算処理(関数処理)で用いる係数、定数等のパラメータ等が、設定情報に基づいて設定される。なお、演算部35における演算処理は、例えば、四則演算、物理モデルを用いた計算、統計モデルを用いた計算、物理モデルと統計モデルを組み合わせた計算等とすることができる。また、出力部36による出力処理では、例えば、1種類の出力を複数の実装コンポーネント32へ分割する場合の演算処理の内容(所定の比率での分割処理の内容)等が設定情報に基づいて設定される。
【0041】
なお、実装コンポーネント32へ入力する入力情報は、例えば、
図5~
図7に示す実装コンポーネント32の種類毎の入力画面(最適化計算装置1が備える表示装置あるいは最適化計算装置1の周辺装置である表示装置の表示画面)から入力することができる。
図5に示すように、「蒸気ボイラ」の実装コンポーネント32の入力画面では運転蒸気圧[Mpa]、運転蒸気温度[degC]、給水温度[degC]、および、ボイラ効率の各非時系列情報を入力することができる。また、履歴データモード(この例では燃料流量であることが入力されている)と履歴データファイル名を入力することで、時系列情報を指定することができる。
【0042】
また、
図5に示すように、「ガスタービン」の実装コンポーネント32の入力画面では、燃料流量から蒸気流量への変換式の傾き[(t/h)/計量単位]、燃料流量から蒸気流量への変換式の切片[(t/h)]、燃料流量から出力電力への変換式の傾き[MW/計量単位]、燃料流量から出力電力への変換式の切片[MW]および履歴データファイル名を入力することができる。
【0043】
また、「太陽光発電設備」と「蓄電池」の実装コンポーネント32の入力画面では、太陽光発電の標準出力[kW]、発電効率、蓄電池システムの最大充電容量[kWh]、定格出力[kW]、充電時間開始時刻、および、放電時間開始時刻を入力することができる。
【0044】
図8は、上述した最適化問題例1~3の対象となる評価層モデル3の構成例を示す。
図8に示す評価層モデル3-1は、4個のフィールド層モデル31-10~13を備える。フィールド層モデル31-10は、工場Aを表すモデルである。フィールド層モデル31-11は、電力市場Aを表すモデルである。フィールド層モデル31-12は、工場Bを表すモデルである。フィールド層モデル31-13は、工場Cを表すモデルである。工場A~Cは、それぞれ発電設備を備え、発電した電力を自工場内の設備へ供給するとともに、余剰な電力や不足した電力を他の工場と融通し合ったり、電力市場Aにおいて売電したり買電したりする。
図8において実線の矢印(引き出し線を除く)は蒸気の流れを示し、破線の矢印は電力の流れを示す。
【0045】
フィールド層モデル31-10は、8個の実装コンポーネント32-10~17を備える。実装コンポーネント32-10および32-11は、「蒸気ボイラ」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-12~14は、「蒸気タービン」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-15は、「蒸気需要」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-16は、「電力需要」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-17は、「外部電力融通」の実装コンポーネント32である。
【0046】
なお、「外部電力融通」の実装コンポーネント32-17は、この例では、他の工場または電力市場との間で電力を融通するためのモデルであり、各発電設備(実装コンポーネント32-12~14)の発電電力量の合計と電力消費設備(実装コンポーネント32-16)の消費電力量との差分を算出し、余剰分を後述する「リソースアグリゲータ」のモデル391へ出力し、不足分を「リソースアグリゲータ」のモデル391から入力する。その際、「外部電力融通」の実装コンポーネント32-17は、例えば、電力に余剰がある場合に余剰分の電力量を正の値で表し、電力が不足する場合に不足分の電力量を負の値で表し、正または負の電力量の時系列情報を「リソースアグリゲータ」のモデル391へ出力する。
【0047】
実装コンポーネント32-10が出力した蒸気は実装コンポーネント32-12へ入力される。実装コンポーネント32-11が出力した蒸気は実装コンポーネント32-13~14へ入力される。実装コンポーネント32-12~14が出力した蒸気は実装コンポーネント32-15へ入力される。実装コンポーネント32-12~14が出力した電力は実装コンポーネント32-16~17へ入力される。実装コンポーネント32-17は、「リソースアグリゲータ」のモデル391から入力した電力を、実装コンポーネント32-16へ出力する。
【0048】
フィールド層モデル31-12は、6個の実装コンポーネント32-18~23を備える。実装コンポーネント32-18は、「蒸気ボイラ」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-19は、「蒸気タービン」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-20は、「ガスタービン」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-21は、「蒸気需要」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-22は、「電力需要」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-23は、「外部電力融通」の実装コンポーネント32である。
【0049】
「外部電力融通」の実装コンポーネント32-23は、各発電設備(実装コンポーネント32-19~20)の発電電力量の合計と電力消費設備(実装コンポーネント32-22)の消費電力量との差分を算出し、余剰分を「リソースアグリゲータ」のモデル391へ出力し、不足分を「リソースアグリゲータ」のモデル391から入力する。
【0050】
実装コンポーネント32-18が出力した蒸気は実装コンポーネント32-19へ入力される。実装コンポーネント32-19~20が出力した蒸気は実装コンポーネント32-21へ入力される。実装コンポーネント32-19~20が出力した電力は実装コンポーネント32-22~23へ入力される。実装コンポーネント32-23は、「リソースアグリゲータ」のモデル391から入力した電力を、実装コンポーネント32-22へ出力する。
【0051】
フィールド層モデル31-13は、6個の実装コンポーネント32-24~29を備える。実装コンポーネント32-24は、「蒸気ボイラ」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-25は、「蒸気タービン」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-26は、「太陽光発電設備」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-27は、「蒸気需要」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-28は、「電力需要」の実装コンポーネント32である。実装コンポーネント32-29は、「外部電力融通」の実装コンポーネント32である。
【0052】
「外部電力融通」の実装コンポーネント32-29は、各発電設備(実装コンポーネント32-25~26)の発電電力量の合計と電力消費設備(実装コンポーネント32-28)の消費電力量との差分を算出し、余剰分を「リソースアグリゲータ」のモデル391へ出力し、不足分を「リソースアグリゲータ」のモデル391から入力する。
【0053】
実装コンポーネント32-18が出力した蒸気は実装コンポーネント32-19へ入力される。実装コンポーネント32-19~20が出力した蒸気は実装コンポーネント32-21へ入力される。実装コンポーネント32-19~20が出力した電力は実装コンポーネント32-22~23へ入力される。実装コンポーネント32-23は、「リソースアグリゲータ」のモデル391から入力した電力を、実装コンポーネント32-22へ出力する。
【0054】
フィールド層モデル31-11は、「リソースアグリゲータ」のモデル391と、「電力市場取引」のモデル392を備える。「リソースアグリゲータ」のモデル391と「電力市場取引」のモデル392は、例えば評価層モデル3-1を設定する際にモデル設定部2によって定義した実装コンポーネント32とは別のモデルである。「リソースアグリゲータ」のモデル391は、「外部電力融通」の実装コンポーネント32-17、23および29の出力を入力して合計し、負の電力量を出力した「外部電力融通」の実装コンポーネント32-17、23または29に対して不足分を補うための電力量を出力する。また、「リソースアグリゲータ」のモデル391は、合計した電力量では不足分を補いきれない場合、補えなかった不足分の値を「電力市場取引」のモデル392へ出力する。あるいは、「リソースアグリゲータ」のモデル391は、合計した電力量に余剰分が生じた場合、生じた余剰分の値を「電力市場取引」のモデル392へ出力する。「電力市場取引」のモデル392は、電力市場の取引価格の実績値または予測値等に基づいて、合計値が負の場合には買電価格を算出し、正の場合には売電価格を算出して、保存する。なお、「リソースアグリゲータ」のモデル391と「電力市場取引」のモデル392は、実装コンポーネント32として予め用意してもよい。
【0055】
(最適化計算装置の動作例)
次に、
図9を参照して、最適化計算装置1の動作例について説明する。ここでは、評価層モデル3が
図8を参照して説明した評価層モデル3-1である場合を例として説明する。
図9に示す処理では、まず、モデル設定部2が、ユーザの入力操作に基づき、リソース数を入力する(ステップS11)。ここで、リソース数は、モデルの個数であり、例えば、評価層モデル3が備える実装コンポーネント32の個数と別のモデル(モデル391~392)の個数の合計である。以下、実装コンポーネント32と別のモデルを総称してコンポーネントという。次に、モデル設定部2が、リソース毎に、各リソース(ナンバ1~ナンバN)のコンポーネントの構成を設定し(ステップS12-1~N)、さらに各コンポーネントのパラメータを設定する(ステップS13-1~N)。
【0056】
次に、ベース計算実行部4が、ベース計算を実行し(ステップS14)、最適化計算装置1の表示装置等に計算結果を表示するとともに、計算結果に基づき電力、コストおよびCO2の時系列情報等を含む履歴データテーブルD11を生成して保存する(ステップS15)。
【0057】
次に、最適化計算設定部5が、最適化計算のための設定を行う(ステップS16)。
【0058】
次に、最適化計算実行部6が、最適化計算を実行し(ステップS17)、最適化計算装置1の表示装置等に計算結果(条件に合う解の組み合わせ等)を表示するとともに、計算結果に基づき電力、コストおよびCO2の時系列情報等を含む履歴データテーブルD12と各コンポーネントにおける演算処理等の結果の時系列情報等を含む履歴データテーブルD13を生成して保存する(ステップS18)。
【0059】
(最適化計算装置の他の動作例)
次に、
図10を参照して、最適化計算装置1の他の動作例について説明する。本実施形態の最適化計算装置1は、評価層モデル3が備える実装コンポーネント32が含む演算部35の入力情報(例えば時系列情報)を変化させることで、演算部35への入力情報を変化させることができるとともに、入力情報が含む設定情報を変化させることで演算部35の処理内容を変化させることができる。この場合、設定情報を操作パラメータに含めて最適化計算を行うことで、評価層モデル3の動作(例えば運転条件等)の最適化を図るとともに、評価層モデル3の構成(例えば装置構成等)の最適化を図ることができる。また、本実施形態の最適化計算装置1は、時系列情報に基づき最適化計算を実行することができるので、例えば期間を指定して最適解を算出することが容易である。これらによれば、例えば、事業目標から、とるべき事業活動の条件の組み合わせを効率的に導出すること等ができる。
【0060】
図10に示すように、最適化計算装置1では、まず、設定情報を変化させながら、複数回、最適化計算を行うことで、所定の事業目標を達成する大まかな設定情報の範囲を確認する(S201)。次に、確認した範囲で設定情報を変化させて最適化計算を実行することで設定情報を最適化する(S202)。次に、設定情報を固定して目標を満足する実装コンポーネント32の条件を導出する(S203-1、S203-2)。この流れで、目標を満足する条件の組み合わせを導出することができる。なお、事業目標としては例えば、電力利用・コスト・CO2排出量などに係る目標があり、また、期間を指定して目標を満足する条件組み合わせの導出が可能(四半期ごと、月ごと、特定の時間帯など)である。
【0061】
(作用・効果)
本実施形態の最適化計算装置1では、評価層モデル3が、1または複数種類の実装コンポーネント32を備え、各実装コンポーネント32が、1または複数種類の基礎コンポーネント33を備え、各基礎コンポーネント33が、実装コンポーネント32毎に設定された変更可能な設定情報に基づき当該基礎コンポーネント33における処理内容を変更する。この構成によれば、実装コンポーネント32を基礎コンポーネント33の組み合わせから構成することができる。また、実装コンポーネント32毎に、実装コンポーネント32を構成する基礎コンポーネント33の処理内容を変更することができる。したがって、この構成では、実装コンポーネント32を、ユーザが把握しやすい実体(装置等)を表すモデルとすることで、ユーザが把握しやすい実体の単位で構成や動作に係るモデルのパラメータを変更することができる。したがって、本実施形態によれば、構成や動作に係るパラメータを適切に変更することができる。よって、本実施形態の最適化計算装置1によれば、適切なモデルを用いて最適化計算を行うことができる。
【0062】
また、本実施形態の最適化計算装置1では、各基礎コンポーネント33が、設定情報に基づき当該基礎コンポーネント33を構成するプログラムコードを変更せずに処理内容を変更する。この構成によれば、容易かつ柔軟にモデルを変更することができる。
【0063】
また、本実施形態の最適化計算装置1では、各基礎コンポーネント33は、入力部34と、入力部34から入力された入力情報に基づき所定の演算処理を実行する演算部35と、演算部35の処理結果を出力する保存・出力部36とを備え、処理内容を変更する際に、当該基礎コンポーネント33を備える実装コンポーネント32の種類に基づき入力部34と演算部35と出力部36が実行する各処理を選択するとともに、設定情報に基づき演算部35の演算処理の内容を変更する。この構成によれば、容易にモデルを変更することができる。
【0064】
また、の最適化計算装置1では、設定情報が、各基礎コンポーネント33に対して入力情報として入力部34から入力される。この構成によれば、設定情報を容易に変更することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、最適化演算の操作量、最適化対象の変数を、全体モデル構成に応じて動的に変化させることができ、また、ユーザが任意にパラメータの固変設定(固定または可変設定)が可能である。また、計算モデルを順計算モデルに簡略化することにより、最適化演算時に並列的な探索が可能であり、大規模システムへも対応可能である。また、変数に時刻の概念を取り入れることにより、局所時間の最適化が可能である。例えば夜間の電力自給率の最適化などに用いることができる。
【0066】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0067】
例えば、実装コンポーネント32等の要素モデルの属性として、製造能力や運搬能力などの属性を設定できるようにすれば、物流に係る投入コスト(資材費、人件費)に対するコストやデリバラブルの評価、各種属性値の最適化シミュレーションが可能である。
【0068】
なお、最適化を実行するために必要な入力情報は、例えばCSV(comma separated values)ファイル等の外部ファイルのインポートとすることができる。なお、入力情報は、実績値や計画値、機械学習等を用いる予測値、各種制約情報(閾値やその可変範囲等)とすることができる。また、入力情報として、時系列情報(30分データ、月次データ、など)を扱うことが可能である。また、任意の時間区間に対する処理が可能である。
【0069】
また、各変量(例えば実装コンポーネント32の入出力)の最適化を評価する場合に、評価項目に重み付けを与える事で複数評価項目のバランス評価するようにしてもよい。この場合、重み付けは、評価したい項目の優先度に相当する。優先度は評価層全体で設定することができる。優先度の設定により、複数の項目の目標を達成する条件を求めることができる。例えば、優先度の設定によるバランス評価は、例えば、「生産量を満足しながら」、「CO2排出量削減とコスト削減の同列に優先」、する場合の、「設備条件」、「ユーティリティ調達条件」、などを求めるシーンに適用することができる。
【0070】
また、評価層モデル3内の処理で用いられる各変数を任意に保存および出力できるようにしてもよい。
【0071】
また、最適化計算式は、順解析、逆解析など問題に応じて任意に選択可能としてもよい。
【0072】
(コンピュータ構成)
図11は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の最適化計算装置1は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0073】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0074】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0075】
<付記>
上記実施形態に記載の最適化計算装置1は、例えば以下のように把握される。
【0076】
(1)第1の態様に係る最適化計算装置1は、所定のシステムの最適化計算を実行する装置であって、前記システムを表す評価層モデル3が、1または複数種類の実装コンポーネント32を備え、各前記実装コンポーネント32が、1または複数種類の基礎コンポーネント33を備え、各前記基礎コンポーネント33は、前記実装コンポーネント32毎に設定された変更可能な設定情報に基づき当該基礎コンポーネント33における処理内容を変更する。本態様および以下の各態様によれば、モデルの構成や動作に係るパラメータを適切に変更することができる適切なモデルを用いて最適化計算を行うことができる。
【0077】
(2)第2の態様の最適化計算装置1は、(1)の最適化計算装置1であって、前記基礎コンポーネントは、蒸気量の発生と消費に関する基礎コンポーネント、電力量の発生と消費に関する基礎コンポーネント、コストの発生に関する基礎コンポーネント、および、炭素の排出量に関する基礎コンポーネントを含む。本態様によれば、蒸気、電力、コスト、および、炭素に関係する最適化計算を容易に行うことができる。
【0078】
(3)第3の態様の最適化計算装置1は、(1)または(2)の最適化計算装置1であって、各前記基礎コンポーネント33は、前記設定情報に基づき当該基礎コンポーネント33を構成するプログラムコードを変更せずに前記処理内容を変更する。本態様によれば、基礎コンポーネント33の処理内容を容易に変更することができる。
【0079】
(4)第4の態様の最適化計算装置1は、(1)~(3)の最適化計算装置1であって、各前記基礎コンポーネント33は、入力部34と、前記入力部34から入力された入力情報に基づき所定の演算処理を実行する演算部35と、前記演算部35の処理結果を出力する出力部36とを備え、前記処理内容を変更する際に、当該基礎コンポーネント33を備える前記実装コンポーネント32の種類に基づき前記入力部34と前記演算部35と前記出力部36が実行する各処理を選択するとともに、前記設定情報に基づき前記演算処理の内容を変更する。本態様によれば、基礎コンポーネント33の処理内容を容易に変更することができる。
【0080】
(5)第5の態様の最適化計算装置1は、(4)の最適化計算装置1であって、前記設定情報は各前記基礎コンポーネントに対して前記入力情報として前記入力部から入力される。本態様によれば、基礎コンポーネント33の処理内容を容易に変更することができる。
【0081】
(6)第6の態様の最適化計算装置1は、(1)~(5)の最適化計算装置1であって、 前記最適化計算が、複数の評価関数を用いた最適化計算であり、かつ、前記各評価関数に対して重み付けがなれている。本態様によれば、複数の評価項目の各項目に優先度を設定して最適化計算を行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
1…最適化計算装置
2…モデル設定部
3…評価層モデル
4…ベース計算実行部
5…最適化計算設定部
6…最適化計算実行部
31…フィールド層モデル
32…実装コンポーネント
33…基礎コンポーネント