(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011513
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】回転機における冷却液の流路構造
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
H02K5/20
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113545
(22)【出願日】2022-07-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴彦
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605CC01
5H605DD13
(57)【要約】
【課題】流路を流れる冷却液の圧力損失を低減することができ、それにより、冷却液の円滑な流れを確保できるとともに、冷却効率を向上させることができる回転機における冷却液の流路構造を提供する。
【解決手段】モータ1における円筒状のフレーム2に設けられ、モータ1を冷却するための冷却液の流路構造であって、フレーム2の壁厚部2a内に、フレーム2の周方向に沿って蛇行しながら延びるように設けられ、冷却時に冷却液が流れる流路本体11と、フレーム2の軸線方向の両端部の一方においてフレーム2の周方向に沿って延び、流路本体11におけるフレーム2の前側反転流路部15、15同士を連通するように設けられ、冷却時に冷却水が流れるバイパス流路12と、を備え、流路本体は、フレーム2の周方向に配置された複数の直行流路部14と、それらの端部同士に連なる複数の反転流路部15、16とを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機における円筒状の外周壁に設けられ、当該回転機を冷却するための冷却液の流路構造であって、
前記外周壁の壁厚部内に、当該外周壁の周方向に沿って蛇行しながら延びるように設けられ、冷却時に冷却液が流れる流路本体と、
前記外周壁の軸線方向の両端部の一方において当該外周壁の周方向に沿って延び、前記流路本体における前記外周壁の同じ端部側の部位同士を連通するように設けられ、冷却時に冷却水が流れるバイパス流路と、を備え、
前記流路本体は、
前記外周壁の軸線方向に沿って延び、当該外周壁の周方向に互いに所定間隔を隔てて配置され、冷却水を直線的に流すための複数の直行流路部と、
互いに隣り合う前記直行流路部の同じ側の端部同士に対し、前記外周壁の周方向において当該外周壁の両端部側で交互に連なり、冷却水の流れる方向を反転させる複数の反転流路部と、
を有していることを特徴とする回転機における冷却液の流路構造。
【請求項2】
前記バイパス流路は、前記外周壁の周方向において互いに隣り合う前記反転流路部同士をそれぞれ連通する複数のバイパス流路部を有していることを特徴とする請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【請求項3】
互いに隣り合う所定の前記直行流路部にはそれぞれ、冷却液を導入するための冷却液導入部、及び冷却液を排出するための冷却液排出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【請求項4】
前記冷却液導入部が設けられた前記直行流路部の端部に連なる前記反転流路部と、前記冷却液排出部が設けられた前記直行流路部の端部に連なる前記反転流路部とを連通する連通流路を、さらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【請求項5】
前記連通流路の横断面における流路面積は、前記複数のバイパス流路部の各々の横断面における流路面積よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項4に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【請求項6】
前記外周壁の両端部にそれぞれ配置された複数の反転流路部のうち、前記バイパス流路部が連なっていない前記反転流路部の横断面における流路面積は、前記バイパス流路部が連なっている前記反転流路部の横断面における流路面積よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の駆動用のモータや発電機など、各種の回転機に適用され、その回転機を冷却するための冷却液の流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータに適用され、その外周面に冷却水が流れる冷却水路を備えた流路構造として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。このモータは、その外周壁を構成する円筒状のフレームを有しており、このフレームの外周面を覆うように、冷却水路を有するウォータージャケットが設けられている。具体的には、ウォータージャケットは、モータのフレームの外径よりも大きい内径を有する円筒状の外周壁と、この外周壁とモータのフレームとの間に配置され、モータの軸線方向に沿って所定長さ延びかつモータの径方向に突出する複数のフィンとを有している。これらのフィンは、フレームの周方向に互いに所定間隔を隔てた状態で、長さ方向の一端部がモータの軸線方向の一方側及び他方側に交互に寄った状態に配置されている。これにより、モータのフレームの外周面側には、フレームの周方向に沿って蛇行しながら延びる冷却水路が構成されている。
【0003】
また、ウォータージャケットには、モータの軸線方向における一方側の端部に、ウォータージャケットの周方向に互いに隣接した状態で、冷却水入口及び冷却水出口が設けられている。さらに、ウォータージャケットには、上記の冷却水入口と冷却水出口の間に、上記フィンとほぼ同様に形成され、モータの軸線方向の全体にわたって延びかつ冷却水入口側と冷却水出口側とを仕切る仕切壁が設けられている。
【0004】
上記のように構成された冷却水路を有するモータでは、ポンプなどによって、冷却水が冷却水入口に送り出されると、その冷却水は、冷却水路に沿って、すなわち、モータのフレームの外周面上において、フレームの周方向に沿って蛇行しながら流れる。そして、冷却水は、フレームの外周面上をほぼ1周した後、冷却水出口から外部に排出される。このように、冷却水が、モータのフレームの外周面上を流れることにより、モータの回転に伴う発熱を、冷却水との熱交換によって抑制し、空冷式に比べて、モータを効率よく冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60-153653号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の冷却水路を備えたモータでは、そのフレームの周方向に沿って、冷却水路が蛇行しながら延びるように構成されており、その冷却水路において、横断面である流路面積が大きい箇所と、小さい箇所が混在している。つまり、上記の冷却水路は、その流路面積が均一ではなく、流路面積が大きくなったり、小さくなったりしており、そのため、冷却水が冷却水入口から冷却水出口に流れるまでに、冷却水路の流路面積が多数回、変化し、その際に、冷却水路を流れる冷却水において圧力損失が生じやすい。このような圧力損失が高くなると、冷却水の円滑な流れが阻害され、その結果、モータの冷却効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、流路を流れる冷却液の圧力損失を低減することができ、それにより、冷却液の円滑な流れを確保できるとともに、冷却効率を向上させることができる回転機における冷却液の流路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回転機における円筒状の外周壁に設けられ、回転機を冷却するための冷却液の流路構造であって、外周壁の壁厚部内に、外周壁の周方向に沿って蛇行しながら延びるように設けられ、冷却時に冷却液が流れる流路本体と、外周壁の軸線方向の両端部の一方において外周壁の周方向に沿って延び、流路本体における外周壁の同じ端部側の部位同士を連通するように設けられ、冷却時に冷却水が流れるバイパス流路と、を備え、流路本体は、外周壁の軸線方向に沿って延び、外周壁の周方向に互いに所定間隔を隔てて配置され、冷却水を直線的に流すための複数の直行流路部と、互いに隣り合う直行流路部の同じ側の端部同士に対し、外周壁の周方向において外周壁の両端部側で交互に連なり、冷却水の流れる方向を反転させる複数の反転流路部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、回転機における円筒状の外周壁の壁厚部内に、その外周壁の周方向に沿って蛇行しながら延びる流路本体が設けられている。具体的には、上記の複数の直行流路部及び複数の反転流路部によって、外周壁の周方向に沿って蛇行しながら延びる流路本体が構成されている。これにより、回転機の冷却時に流路本体を流れる冷却液は、流路本体に沿って、すなわち、複数の直行流路部及び複数の反転流路部を通り、外周壁の周方向に沿って蛇行しながら流れる。その結果、回転機の運転に伴う発熱を、冷却液との熱交換によって抑制し、空冷式に比べて、回転機を効率よく冷却することができる。
【0010】
また、モータの外周壁には、その軸線方向の両端部の一方に、外周壁の周方向に沿って延び、流路本体における外周壁の同じ端部側の部位同士、すなわち外周壁の周方向において互いに隣り合う反転流路部同士を連通するバイパス流路が設けられている。外周壁の周方向に沿って蛇行しながら延びる流路本体では、外周壁の端部側において、冷却液の流れる方向が大きくかつ急激に変化することで、冷却液の圧力損失が大きくなる傾向がある。そのため、本発明では、バイパス流路を、流路本体における外周壁の同じ端部側の部位同士である反転流路部同士を連通するように設けることにより、冷却液が流路本体における外周壁の端部側を流れる際に、バイパス流路にも冷却液が流れるようにすることにより、冷却液の圧力損失を低減することができる。これにより、上記のようなバイパス流路の無い流路本体に冷却液が流れる場合に比べて、冷却液の圧力損失を低減することができ、それにより、冷却液の円滑な流れを確保できるとともに、回転機の冷却効率を向上させることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造において、バイパス流路は、外周壁の周方向において互いに隣り合う反転流路部同士をそれぞれ連通する複数のバイパス流路部を有していることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、外周壁の周方向において互いに隣り合う反転流路部同士をそれぞれ連通する複数のバイパス流路部によって、バイパス流路が構成されている。前述したように構成された直行流路部及び反転流路部を有する流路本体と、複数のバイパス流路部を有するバイパス流路とを備えた流路構造により、上述した請求項1の作用、効果を、より一層効果的に実現することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造において、互いに隣り合う所定の直行流路部にはそれぞれ、冷却液を導入するための冷却液導入部、及び冷却液を排出するための冷却液排出部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、冷却液導入部に冷却液が送り出されると、その冷却液は、冷却液導入部が設けられている直行流路部に流入する。そして、この直行流路部を起点として、冷却液は、流路本体に沿って、すなわち、外周壁の周方向に沿って蛇行しながら、外周壁を1周し、冷却液排出部から排出される。このように、外周壁の周方向の全体に冷却液が流れることにより、回転機の周方向全体を効率よく冷却することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の回転機における冷却液の流路構造において、冷却液導入部が設けられた直行流路部の端部に連なる反転流路部と、冷却液排出部が設けられた直行流路部の端部に連なる反転流路部とを連通する連通流路を、さらに備えていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、冷却液導入部が設けられた直行流路部の端部に連なる反転流路部と、冷却液排出部が設けられた直行流路部の端部に連なる反転流路部とが、連通流路によって連通されている。これにより、流路本体における外周壁の同じ端部側の複数の反転流路部、バイパス流路の複数のバイパス流路部、及び連通流路によって、外周壁の全体にその周方向に沿って連続的に延びる流路、すなわち外周壁を1周する流路が構成される。このような流路を、流路本体とともに設けることにより、流路本体に沿って蛇行しながら流れる冷却液の圧力損失を効果的に低減することができる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の回転機における冷却液の流路構造において、連通流路の横断面における流路面積は、複数のバイパス流路部の各々の横断面における流路面積よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、連通流路の横断面における流路面積が、各バイパス流路部の横断面における流路面積よりも小さく設定されているので、冷却液が流れる際に、その連通流路を介して、冷却液導入部から冷却液排出部へ直ちに流れること(逆流)を抑制することができる。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項2に記載の回転機における冷却液の流路構造において、外周壁の両端部にそれぞれ配置された複数の反転流路部のうち、バイパス流路部が連なっていない反転流路部の横断面における流路面積は、バイパス流路部が連なっている反転流路部の横断面における流路面積よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、バイパス流路部に連なっていない反転流路部の横断面における流路面積が、バイパス流路部が連なっている反転流路部の横断面における流路面積よりも大きく設定されているので、全ての反転流路部の流路面積を同一にする場合に比べて、流路全体として、冷却液の圧力損失を低減しながら、冷却液の円滑な流れを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による冷却液の流路構造を適用したモータを示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)はフレームの壁厚部内に形成された冷却水の流路を示す斜視図である。
【
図2】
図1(b)に示す冷却水の流路を、フレームの周方向に展開した状態で示す図である。
【
図3】
図2に示す流路における冷却水の流れを説明するための図である。
【
図4】
図1のモータに対する比較例として、バイパス流路及び連通流路が省略された冷却水の流路構造を適用したモータを示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)はフレームの壁厚部内に形成された冷却水の流路を示す斜視図である。
【
図5】
図4(b)に示す冷却水の流路を、フレームの周方向に展開した状態を示す図である。
【
図6】
図5に示す流路における冷却水の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態による冷却液の流路構造を適用したモータの外観を示している。なお、このモータ1(回転機)は、例えば電気自動車の駆動用モータなどに使用されるものである。
【0023】
図1(a)に示すように、モータ1は、円筒状に形成されたフレーム2(外周壁)と、このフレーム2の軸線方向の両端部にそれぞれ接合された2つのブラケット3及び4と、両ブラケット3及び4に軸受(図示せず)を介して回転自在に支持されたロータ(図示せず)と、このロータと一体に回転するとともに、ブラケット3の前方に突出するシャフト5などを備えている。また、フレーム2の内周面には、ロータとの間に、ステータ(図示せず)が配置されている。
【0024】
なお、以下の説明では、
図1(a)の手前側であって、シャフト5が突出する側を前側とする一方、その反対側を後側とし、上記のブラケット3及び4をそれぞれ、「前ブラケット3」及び「後ブラケット4」というものとする。
【0025】
フレーム2は、例えばアルミダイカストによって製造され、大部分が所定の内径及び外径、並びに比較的厚い壁厚部2aを有する円筒状に形成されている。また、フレーム2の軸線方向の前端部及び後端部にはそれぞれ、径方向に所定長さ突出する前フランジ6及び後フランジ7が設けられている。前フランジ6には、前ブラケット3をボルト止めするための複数(
図1(a)では4つのみ図示)の取付孔6aが形成されている。同様に、後フランジ7にも、後ブラケット4をボルト止めするための複数(
図1(a)では3つのみ図示)の取付孔7aが形成されている。
【0026】
また、フレーム2の壁厚部2a内には、モータ1を冷却するための所定の冷却水(冷却液)が流れる流路10が形成されている。この流路10は、所定の深さ(フレーム2の径方向における所定の厚さ)を有するとともに、フレーム2の前方及び後方に開放した状態で、壁厚部2a内に形成されている。そして、前ブラケット3及び後ブラケット4が、図示しないリング状のシールを介して、フレーム2の前フランジ6及び後フランジ7にそれぞれ、水密状態に取り付けられることにより、流路10が構成されている。
【0027】
図1(b)は、流路10を立体的に示しており、
図2は、流路10を、フレーム2の周方向に展開した状態で示している。両図に示すように、流路10は、フレーム2の周方向に沿って蛇行しながら延びる流路本体11と、この流路本体11の互いに隣り合う後述する前側反転流路部15、15同士を連通するバイパス流路12と、後述する第1前側反転流路部15Aと第4前側反転流路部15Dとを連通する連通流路13とを備えている。
【0028】
図1(b)及び
図2に示すように、流路本体11は、フレーム2の軸線方向(
図2では左右方向)に沿って延び、フレーム2の周方向(
図2では上下方向)に互いに所定間隔を隔てて配置された複数の直行流路部14と、互いに隣り合う直行流路部14、14の前端部同士に連なり、冷却水の流れる方向を反転させるための複数の前側反転流路部15と、互いに隣り合う直行流路部14、14の後端部同士に連なり、冷却水の流れる方向を反転させるための複数の後側反転流路部16とを有している。
【0029】
具体的には、
図2に示すように、上記の直行流路部14は、第1~第8直行流路部14A~14Hによる8つの直行流路部を有している。これらの第1~第8直行流路部14A~14Hは、いずれも同じ所定寸法の通路幅を有している。
【0030】
また、上記の前側反転流路部15は、第1及び第2直行流路部14A及び14Bの前端部(
図2の左端部)同士、第3及び第4直行流路部14C及び14Dの前端部同士、第5及び第6直行流路部14E及び14Fの前端部同士、第7及び第8直行流路部14G及び14Hの前端部同士にそれぞれ連なる第1~第4前側反転流路部15A~15Dによる4つの前側反転流路部を有している。これらの第1~第4前側反転流路部15A~15Dは、いずれも同じ所定寸法の通路幅Waを有している。
【0031】
さらに、上記の後側反転流路部16は、第2及び第3直行流路部14B及び14Cの後端部(
図2の右端部)同士、第4及び第5直行流路部14D及び14Eの後端部同士、第6及び第7直行流路部14F及び14Gの後端部同士にそれぞれ連なる第1~第3後側反転流路部16A~16Cによる3つの後側反転流路部を有している。これらの第1~第3後側反転流路部16A~16Cは、いずれも同じ所定寸法の通路幅Wbを有しており、この通路幅Wbは、前述した第1~第4前側反転流路部15A~15Dの通路幅Waよりも大きく設定されている。したがって、後側反転流路部16の横断面における流路面積は、前側反転流路部15の流路面積よりも大きくなっている。
【0032】
バイパス流路12は、フレーム2の周方向に沿って延び、互いに隣り合う前側反転流路部15、15同士を連通するように設けられている。具体的には、
図2に示すように、バイパス流路12は、第1及び第2前側反転流路部15A及び15B同士、第2及び第3前側反転流路部15B及び15C同士、第3及び第4前側反転流路部15C及び15D同士をそれぞれ連通する第1~第3バイパス流路部12A~12Cによる3つのバイパス流路部を有している。これらの第1~第3バイパス流路部12A~12Cは、いずれも同じ所定寸法の通路幅Wcを有している。
【0033】
連通流路13は、前述したように、第1前側反転流路部15Aと第4前側反転流路部15Dとを連通している。この連通流路13は、所定寸法の通路幅Wdを有しており、この通路幅Wdは、上述した第1~第3バイパス流路部12A~12Cの通路幅Wcよりも小さく設定されている。したがって、連通流路13の横断面における流路面積は、第1~第3バイパス流路部12A~12Cの流路面積よりも小さくなっている。
【0034】
以上のように構成された流路10を有するフレーム2には、
図1(a)に示すように、流路10に冷却水を導入するための冷却水導入部17、及び流路10から冷却水を排出するための冷却水排出部18が設けられている。これらの冷却水導入部17及び冷却水排出部18はいずれも、ほぼ円筒状に形成されており、冷却水導入部17の内部の導入流路部17aが、流路本体11の第1直行流路部14Aの所定位置に連なる一方、冷却水排出部18の内部の排出流路部18aが、流路本体11の第8直行流路部14Hの所定位置に連なっている。
【0035】
図3は、流路10における冷却水の流れを示している。運転中のモータ1を冷却するために、図示しないポンプによって、冷却水が冷却水導入部17に送り出されると、その冷却水は、冷却水導入部17内の導入流路部17aを介して、流路本体11の第1直行流路部14Aに流入する。この冷却水は、
図3の太線の矢印で示すように、流路本体11に沿って流れる。すなわち、流路本体11に流入した冷却水は、フレーム2の周方向に沿って蛇行しながら流れる。そして、第8直行流路部14Hに到達した冷却水は、冷却水排出部18内の排出流路部18aを介して、外部に排出される。
【0036】
また、上記のように、冷却水が流路本体11を流れる際には、
図3の細線の矢印で示すように、第1~第3前側反転流路部15A~15Cをそれぞれ流れる冷却水の一部が、第1~第3バイパス流路部12A~12Cを通って、直ぐ下流側の前側反転流路部15に流れる。
【0037】
さらに、連通流路13では、上記の第1~第3バイパス流路部12A~12Cとほぼ同様に、第4前側反転流路部15Dを流れる冷却水の一部が、連通流路13を通って、第1前側反転流路部15Aに流れる。
【0038】
ここで、上述したモータ1に対する比較例として、上記の
図1~
図3にそれぞれ対応する
図4~
図6を参照して、本実施形態の流路10に対し、バイパス流路12及び連通流路13を省略した流路10Cを備えたモータ1Cにおける冷却水の流路構造について簡単に説明する。なお、以下の説明では、上述したモータ1及び流路10における各構成部分と同じ構成部分については同一の符号を付すものとする。
【0039】
図4(a)は、モータ1Cの外観を示し、同図(b)は、モータ1Cのフレーム2に形成された流路10Cを示している。また、
図5は、流路10Cを、フレーム2の周方向に展開した状態で示している。
図4及び
図5に示すように、モータ1Cのフレーム2に設けられた流路10Cは、本実施形態の流路10に対し、流路本体11のみを有しており、バイパス流路12及び連通流路13を有していない。したがって、冷却水が流路10Cに送り出されると、その冷却水は、
図6に示すように、フレーム2の周方向に沿って蛇行する流路本体11に沿ってのみ流れる。
【0040】
これに対し、本実施形態の流路10では、モータ1の冷却時に、前述した
図3に示すように、冷却水は、流路10の流路本体11に加えて、第1~第3バイパス流路部12A~12Cを有するバイパス流路12、及び連通流路13に流れる。
【0041】
これにより、本実施形態によれば、比較例の流路10Cに比べて、流路10を流れる冷却水の圧力損失を低減することができる。なお、詳細なデータは省略するが、本実施形態の流路10と比較例の流路10Cにおいて、冷却水を流すシミュレーションの解析の結果、第1~第3バイパス流路部12A~12Cを介して連結されている流路10の第1~第3前側反転流路部15A~15Cを流れる冷却水の流速が、流路10Cのそれと比べて上昇していること(つまり、流路10の圧力損失が流路10Cのそれに比べて低減すること)が確認された。したがって、本実施形態によれば、冷却水の圧力損失を低減できることで、冷却水の円滑な流れを確保できるとともに、モータ1の冷却効率を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態の流路10では、連通流路13の横断面における流路面積が、バイパス流路12(第1~第3バイパス流路部12A~12C)の流路面積よりも小さく設定されているので、冷却水が流れる際に、連通流路13を介して、冷却水導入部17から冷却水排出部18へ直ちに流れること(逆流)を抑制することができる。さらに、流路10では、後側反転流路部16の横断面における流路面積が、前側反転流路部15の流路面積よりも大きく設定されているので、全ての反転流路部15、16の流路面積を同一にする場合に比べて、流路10全体として、冷却水の圧力損失を低減しながら、冷却水の円滑な流れを確保することができる。
【0043】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、本実施形態では、バイパス流路12及び連通流路13を、モータ1におけるフレーム2の前端部側に設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、バイパス流路12及び連通流路13を、フレーム2の後端部側に設け、隣り合う後側反転流路部16、16同士を、バイパス流路12で連通することも可能である。
【0044】
また、実施形態では、回転機としてのモータ1における冷却水の流路構造について説明したが、本発明は、運転によって発熱する各種の回転機(例えば発電機など)に適用することが可能である。さらに、実施形態では、冷却水をモータ1の流路10に流すことによってモータ1を冷却したが、上記の冷却水に代えて、他の適切な冷却液(例えば冷却油など)を採用することも可能である。
【0045】
また、実施形態で示した流路10、流路本体11、バイパス流路12及び連通流路13の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。例えば、本実施形態の流路10では、
図1(b)及び
図2に示すように、すべての後側反転流路部16(第1~第3後側反転流路部16A~16C)に対し、軸線方向に対向する位置に、バイパス流路12(第1~第3バイパス流路部12A~12C)を3箇所設けている。しかし、製造上の理由などにより、バイパス流路12を、1箇所又は2箇所に低減する構成としてもよい。このような場合でも、バイパス流路12を全く備えていない前述した流路10Cに比べて、冷却水の圧力損失低減の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 モータ(回転機)
1C 比較例のモータ
2 フレーム(外周壁)
2a フレームの壁厚部
3 前ブラケット
4 後ブラケット
5 シャフト
6 前フランジ
6a 取付孔
7 後フランジ
7a 取付孔
10 流路
10C 比較例の流路
11 流路本体
12 バイパス流路
12A~12C 第1~第3バイパス流路部
13 連通流路
14 直行流路部
14A~14H 第1~第8直行流路部
15 前側反転流路部(反転流路部)
15A~15D 第1~第4前側反転流路部
16 後側反転流路部(反転流路部)
16A~16C 第1~第3後側反転流路部
17 冷却水導入部
17a 導入流路部
18 冷却水排出部
18a 排出流路部
Wa 前側反転流路部の通路幅
Wb 後側反転流路部の通路幅
Wc バイパス流路部の通路幅
Wd 連通流路の通路幅
【手続補正書】
【提出日】2023-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機における円筒状の外周壁に設けられ、当該回転機を冷却するための冷却液の流路構造であって、
前記外周壁の壁厚部内に、当該外周壁の周方向に沿って蛇行しながら延びるように設けられ、冷却時に冷却液が流れる流路本体と、
前記外周壁の軸線方向の両端部の一方において当該外周壁の周方向に沿って延び、前記流路本体における前記外周壁の同じ端部側の部位同士を連通するように設けられ、冷却時に冷却液が流れることによって、前記流路本体における前記外周壁の端部側を流れる冷却液の圧力損失を低減するためのバイパス流路と、を備え、
前記流路本体は、
前記外周壁の軸線方向に沿って延び、当該外周壁の周方向に互いに所定間隔を隔てて配置され、冷却液を直線的に流すための複数の直行流路部と、
互いに隣り合う前記直行流路部の同じ側の端部同士に対し、前記外周壁の周方向において当該外周壁の両端部側で交互に連なり、冷却液の流れる方向を反転させる複数の反転流路部と、
を有し、
前記バイパス流路は、前記外周壁の周方向において互いに隣り合う前記反転流路部同士をそれぞれ連通する複数のバイパス流路部を有しており、
互いに隣り合う所定の前記直行流路部にはそれぞれ、冷却液を導入するための冷却液導入部、及び冷却液を排出するための冷却液排出部が設けられており、
前記冷却液導入部が設けられた前記直行流路部の端部に連なる前記反転流路部と、前記冷却液排出部が設けられた前記直行流路部の端部に連なる前記反転流路部とを連通する連通流路を、さらに備えていることを特徴とする回転機における冷却液の流路構造。
【請求項2】
前記連通流路の横断面における流路面積は、前記複数のバイパス流路部の各々の横断面における流路面積よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【請求項3】
前記外周壁の両端部にそれぞれ配置された複数の反転流路部のうち、前記バイパス流路部が連なっていない前記反転流路部の横断面における流路面積は、前記バイパス流路部が連なっている前記反転流路部の横断面における流路面積よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回転機における円筒状の外周壁に設けられ、回転機を冷却するための冷却液の流路構造であって、外周壁の壁厚部内に、外周壁の周方向に沿って蛇行しながら延びるように設けられ、冷却時に冷却液が流れる流路本体と、外周壁の軸線方向の両端部の一方において外周壁の周方向に沿って延び、流路本体における外周壁の同じ端部側の部位同士を連通するように設けられ、冷却時に冷却液が流れることによって、流路本体における外周壁の端部側を流れる冷却液の圧力損失を低減するためのバイパス流路と、を備え、流路本体は、外周壁の軸線方向に沿って延び、外周壁の周方向に互いに所定間隔を隔てて配置され、冷却液を直線的に流すための複数の直行流路部と、互いに隣り合う直行流路部の同じ側の端部同士に対し、外周壁の周方向において外周壁の両端部側で交互に連なり、冷却液の流れる方向を反転させる複数の反転流路部と、を有し、バイパス流路は、外周壁の周方向において互いに隣り合う反転流路部同士をそれぞれ連通する複数のバイパス流路部を有しており、互いに隣り合う所定の直行流路部にはそれぞれ、冷却液を導入するための冷却液導入部、及び冷却液を排出するための冷却液排出部が設けられており、冷却液導入部が設けられた直行流路部の端部に連なる反転流路部と、冷却液排出部が設けられた直行流路部の端部に連なる反転流路部とを連通する連通流路を、さらに備えていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、回転機の外周壁には、その軸線方向の両端部の一方に、外周壁の周方向に沿って延び、流路本体における外周壁の同じ端部側の部位同士、すなわち外周壁の周方向において互いに隣り合う反転流路部同士を連通するバイパス流路が設けられている。外周壁の周方向に沿って蛇行しながら延びる流路本体では、外周壁の端部側において、冷却液の流れる方向が大きくかつ急激に変化することで、冷却液の圧力損失が大きくなる傾向がある。そのため、本発明では、バイパス流路を、流路本体における外周壁の同じ端部側の部位同士である反転流路部同士を連通するように設けることにより、冷却液が流路本体における外周壁の端部側を流れる際に、バイパス流路にも冷却液が流れるようにすることにより、冷却液の圧力損失を低減することができる。これにより、上記のようなバイパス流路の無い流路本体に冷却液が流れる場合に比べて、冷却液の圧力損失を低減することができ、それにより、冷却液の円滑な流れを確保できるとともに、回転機の冷却効率を向上させることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、上記構成によれば、外周壁の周方向において互いに隣り合う反転流路部同士をそれぞれ連通する複数のバイパス流路部によって、バイパス流路が構成されている。前述したように構成された直行流路部及び反転流路部を有する流路本体と、複数のバイパス流路部を有するバイパス流路とを備えた流路構造により、上述した作用、効果を、より一層効果的に実現することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
さらに、上記構成によれば、冷却液導入部に冷却液が送り出されると、その冷却液は、冷却液導入部が設けられている直行流路部に流入する。そして、この直行流路部を起点として、冷却液は、流路本体に沿って、すなわち、外周壁の周方向に沿って蛇行しながら、外周壁を1周し、冷却液排出部から排出される。このように、外周壁の周方向の全体に冷却液が流れることにより、回転機の周方向全体を効率よく冷却することができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
さらにまた、上記構成によれば、冷却液導入部が設けられた直行流路部の端部に連なる反転流路部と、冷却液排出部が設けられた直行流路部の端部に連なる反転流路部とが、連通流路によって連通されている。これにより、流路本体における外周壁の同じ端部側の複数の反転流路部、バイパス流路の複数のバイパス流路部、及び連通流路によって、外周壁の全体にその周方向に沿って連続的に延びる流路、すなわち外周壁を1周する流路が構成される。このような流路を、流路本体とともに設けることにより、流路本体に沿って蛇行しながら流れる冷却液の圧力損失を効果的に低減することができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造において、連通流路の横断面における流路面積は、複数のバイパス流路部の各々の横断面における流路面積よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造において、外周壁の両端部にそれぞれ配置された複数の反転流路部のうち、バイパス流路部が連なっていない反転流路部の横断面における流路面積は、バイパス流路部が連なっている反転流路部の横断面における流路面積よりも大きく設定されていることを特徴とする。