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  • 特開-タンクの施工方法及びタンク 図1
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  • 特開-タンクの施工方法及びタンク 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115141
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】タンクの施工方法及びタンク
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/22 20060101AFI20240819BHJP
   B65D 90/04 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B65D90/22 E
B65D90/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020650
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀弘
(72)【発明者】
【氏名】恒川 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】上地 拓摩
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA01
3E170AB29
3E170BA07
3E170CA08
3E170CA09
3E170DA01
3E170JA09
3E170KA05
3E170KB01
3E170KB02
3E170KB03
3E170KB04
3E170KB05
3E170KC01
3E170KC10
3E170VA11
(57)【要約】
【課題】
運用開始後における漏洩リスクが低いタンクの施工方法を提供する。
【解決手段】
本開示の一態様に係るタンクの施工方法は、貯蔵物に触れる金属層を備えたタンクの施工方法であって、複数の金属プレートを線状の溶接によって互いに接続して前記金属層を形成し、前記金属層を形成した後に前記金属層のリークテストを実施し、前記リークテストにより前記金属層の溶接が行われた部分である溶接線に漏れが発生するような欠陥が見つからなかった場合には前記リークテストを実施した後に、前記リークテストにより前記溶接線から漏れが発生するような欠陥が見つかった場合には当該欠陥を修繕した後に、前記溶接線を含む範囲にコーティング処理を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵物に触れる金属層を備えたタンクの施工方法であって、
複数の金属プレートを線状の溶接によって互いに接続して前記金属層を形成し、
前記金属層を形成した後に前記金属層のリークテストを実施し、
前記リークテストにより前記金属層の溶接が行われた部分である溶接線に漏れが発生するような欠陥が見つからなかった場合には前記リークテストを実施した後に、前記リークテストにより前記溶接線から漏れが発生するような欠陥が見つかった場合には当該欠陥を修繕した後に、前記溶接線を含む範囲にコーティング処理を行う、タンクの施工方法。
【請求項2】
前記コーティング処理は前記金属層の内側から行う、請求項1に記載のタンクの施工方法。
【請求項3】
前記コーティング処理は前記溶接線に沿って行う、請求項1又は2に記載のタンクの施工方法。
【請求項4】
貯蔵物に触れるとともに複数の金属プレートを線状の溶接によって互いに接続して形成される金属層と、
前記金属層の溶接が行われた部分である溶接線を含む範囲を覆うコーティング層と、を備えている、タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンクの施工方法及びタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガスなどを貯蔵するタンクには、タンク内面に貯蔵物に触れる金属層を備えるものがあり(下記の特許文献1参照)、その金属層には微小な漏れも許容しないことが求められる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-17920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の金属層を備えたタンクの施工では、金属層に対してリークテストを実施し、漏れが発生していないことを確認する。ところが、金属層の特に溶接部分にはリークテストでは見つけることができない微小な欠陥が存在する可能性がある。しかも、金属層がコンクリート躯体などで覆われている場合は、運用開始後に金属層の外側から漏れ箇所を修繕することは困難である。
【0005】
そこで、本開示では、運用開始後における漏洩リスクが低いタンクの施工方法及びタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るタンクの施工方法は、貯蔵物に触れる金属層を備えたタンクの施工方法であって、複数の金属プレートを線状の溶接によって互いに接続して前記金属層を形成し、前記金属層を形成した後に前記金属層のリークテストを実施し、前記リークテストにより前記金属層の溶接が行われた部分である溶接線に漏れが発生するような欠陥が見つからなかった場合には前記リークテストを実施した後に、前記リークテストにより前記溶接線から漏れが発生するような欠陥が見つかった場合には当該欠陥を修繕した後に、前記溶接線を含む範囲にコーティング処理を行う。
【0007】
また、本開示の一態様に係るタンクは、貯蔵物に触れるとともに複数の金属プレートを線状の溶接によって互いに接続して形成される金属層と、前記金属層の溶接が行われた部分である溶接線を含む範囲を覆うコーティング層と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
上記の方法及び構成によれば、運用開始後における漏洩リスクが低いタンクの施工方法及びタンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、タンクの断面図である。
図2図2は、金属層の内側から見た金属プレートの拡大図である。
図3図3は、タンクの施工方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<タンク>
はじめに、本実施形態に係るタンク100の全体構成について説明する。図1は、タンク100の断面図である。本実施形態に係るタンク100は、大部分が地面101よりも下方に位置する地下式タンクである。タンク100が貯蔵する貯蔵物は、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、液化水素などの液化ガスであるが、貯蔵物はこれらに限定されない。
【0011】
本実施形態に係るタンク100は、金属層10と、外周体20と、屋根30と、コーティング層40(図2参照)と、を備えている。以下、これらの構成要素について順に説明する。
【0012】
金属層10は、内面が貯蔵物に直接触れる層である。本実施形態の金属層10は、メンブレンである。図1に示すように、金属層10は、円状の底部11と、円筒状の側部12とを有している。金属層10の底部11及び側部12は、複数の金属プレート13を接続して形成されている。なお、金属プレート13の材料は、例えばステンレス鋼などである。図2は、金属層10の内側から見た金属プレート13の拡大図である。金属プレート13は、互いに線状の溶接によって接続されている。以下では、この線状の溶接を溶接線14と称す。
【0013】
外周体20は、金属層10を囲む構造体である。本実施形態の外周体20は、コンクリート躯体である。図1に示すように、外周体20は、金属層10の底部11よりも下方に位置する円状の底版21と、金属層10の側部12よりも半径方向外方に位置する円筒状の側壁22とを有している。外周体20の底版21及び側壁22は、いずれもコンクリートで形成されている。また、金属層10と外周体20の間には、保冷材23が位置している。保冷材23は、例えば硬質ウレタンフォームなどである。
【0014】
屋根30は、金属層10及び外周体20を上から覆う部分であって、金属層10及び外周体20よりも上方に位置している。屋根30は、ドーム状であり、外周部分が外周体20の側壁22の上部に固定されている。この屋根30と金属層10によって、貯蔵物を貯蔵する密閉空間が形成される。屋根30の材料は、例えば低温用ニッケル鋼などである。なお、屋根30は内部に保冷材を有していてもよい。
【0015】
コーティング層40は、金属層10の溶接線14を含む範囲に位置する層である。図2に示すように、本実施形態のコーティング層40は、溶接線14を含む範囲を金属層10の内側から覆っている。ただし、コーティング層40は、溶接線14を含む範囲を金属層10の外側から覆ってもよい。また、本実施形態のコーティング層40は、溶接線14に沿って位置している。ただし、コーティング層40は、溶接線14に沿って位置していなくてもよい。例えば、コーティング層40は、金属層10の全面に位置していてもよく、金属層10の貯蔵物が触れる範囲全体に位置していてもよい。コーティング層40は、例えば、塗料、コーティング剤、接着剤、シーリング材、コーキング材、テープなどで形成されている。
【0016】
以上、本実施形態に係るタンク100の全体構成について説明したが、タンク100は上述したものに限定されない。例えば、上述したタンク100は、地下式タンクであったが、タンク100は、地上式タンクであってもよく、船舶に搭載されるタンクであってもよい。なお、金属層10は、メンブレンでなくてもよい。
【0017】
また、上述したタンク100は、平底円筒型であったが、タンク100は、球型であってもよく、楕円体型であってもよく、箱型などであってもよい。さらに、上述した金属層10と屋根30に相当する部分が同じ材料で一体に形成されていてもよい。また、外周体20はコンクリートではなく、金属などで形成されていてもよい。
【0018】
さらに、上述したタンク100は、金属層10の外側に外周体20が位置する二重構造であったが、三重以上の多重構造であってもよい。タンク100が三重構造である場合は、タンク100は金属層10及び外周体20に加えて、金属層10と外周体20の間に位置する中間層を備えていてもよい。
【0019】
<施工方法>
次に、本実施形態に係るタンク100の施工方法について説明する。図3は、タンク100の施工方法のフロー図である。
【0020】
図3に示すように、本実施形態に係るタンク100の施工方法では、まず外周体20を形成する(ステップS1)。具体的には、地中を掘削した後、掘削によってできた穴の内面に沿ってコンクリートを投入し、外周体20の底版21及び側壁22を形成する。
【0021】
続いて、屋根30を形成する(ステップS2)。具体的には、予め製造した屋根30を外周体20の側壁22の上部に固定する。なお、屋根30は、複数の金属プレートを互いに溶接接続することで形成してもよい。
【0022】
続いて、金属層10を形成する(ステップS3)。具体的には、外周体20の底版21の上面に保冷材23を敷きつめ、敷きつめた保冷材23の上面に金属プレート13を並べる。そのうえで、金属プレート13を互いに溶接によって接続することで、金属層10の底部11を形成する。同様に、外周体20の側壁22の内面に保冷材23を取り付け、取り付けた保冷材23の内面に沿って金属プレート13を並べる。そのうえで、金属プレート13を互いに溶接によって接続することで、金属層10の側部12を形成する。これにより、金属層10が形成される。
【0023】
続いて、金属層10のリークテストを実施する(ステップS4)。例えば、金属層10と外周体20の間にアンモニアガスなどのサーチガスを供給し、サーチガスに触れると変色する検査剤を金属層10の内面に塗布する。この状態で、金属層10の内側から検査剤の変色の有無を確認すれば、金属層10に漏れが発生するような欠陥があるか否かを判定することができる。
【0024】
なお、金属層10と外周体20の間に人が入れるような場合は、リークテストとして金属層10の内部に空気などを供給して内部を加圧し、金属層10の外面に空気が漏れると発泡するような発泡液を塗布してもよい。この場合、金属層10の外側から発泡の有無を確認すれば、金属層10に漏れが発生するような欠陥があるか否かを判定することができる。
【0025】
続いて、リークテストにより溶接線14に漏れが発生するような欠陥が見つかったときは(ステップS5でNO)、その欠陥を修繕する(ステップS6)。例えば、欠陥箇所を再度溶接するなどして、欠陥の修繕を行う。
【0026】
続いて、リークテストにより溶接線14に漏れが発生するような欠陥が見つからなかったとき(ステップS5でYES)、又は、ステップS6で欠陥を修繕した後は、コーティング処理を行う(ステップS7)。具体的には、溶接線14を含む範囲にコーティング処理を行う。これにより、溶接線14を含む範囲にコーティング層40が形成される。なお、本実施形態では、金属層10の内側からコーティング処理を行う。これにより、コーティング処理を容易に行うことができる。ただし、タンク100の種類によっては、金属層10の外側からコーティング処理を行ってもよい。また、コーティング処理は、例えば金属層10の全面や貯蔵物が触れる範囲全体に対して行ってもよいが、本実施形態では溶接線14に沿ってコーティング処理を行う。そのため、作業量及び施工費用を抑制することができる。
【0027】
以上が、本実施形態に係るタンク100の施工方法である。上記のとおり、本実施形態では、コーティング処理を行った後にリークテストを行うのではなく、リークテストを行って欠陥が無いことを確認した後、又は、欠陥を修繕した後にコーティング処理を行う。そのため、リークテストでは発見できない欠陥があったとしても、その欠陥はコーティング層40で覆われることになるため、漏洩リスクを低減することができる。
【0028】
なお、本実施形態に係るタンク100の施工方法では、外周体20、屋根30、金属層10の順で各部分を形成したが、各部分を形成する順番はこれに限定されない。例えば、外周体20の一部を形成した後に金属層10を形成し、その後に外周体20の残りの一部を形成してもよい。また、本実施形態では、タンク100が平底円筒型である地下式のタンクである場合の施工方法を説明したが、タンク100の種類に応じて施工方法を変更してもよい。
【0029】
ただし、タンク100の種類にかかわらず、貯蔵物に触れる金属層を形成した後にリークテストを実施し、溶接線から漏れが発生するような欠陥が見つからなかった場合にはリークテストを実施した後に、溶接線から漏れが発生するような欠陥が見つかった場合は当該欠陥を修繕した後に、コーティング処理を行えば、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
<まとめ>
本明細書で開示する第1の項目は、貯蔵物に触れる金属層を備えたタンクの施工方法であって、複数の金属プレートを線状の溶接によって互いに接続して前記金属層を形成し、前記金属層を形成した後に前記金属層のリークテストを実施し、前記リークテストにより前記金属層の溶接が行われた部分である溶接線に漏れが発生するような欠陥が見つからなかった場合には前記リークテストを実施した後に、前記リークテストにより前記溶接線から漏れが発生するような欠陥が見つかった場合には当該欠陥を修繕した後に、前記溶接線を含む範囲にコーティング処理を行う、タンクの施工方法である。
【0031】
この方法によれば、リークテストを実施する前ではなく、リークテストを実施して必要により修繕を行った後にコーティング処理を行うため、運用開始後における漏洩リスクを低減することができる。
【0032】
本明細書で開示する第2の項目は、前記コーティング処理は前記金属層の内側から行う、第1の項目に記載のタンクの施工方法である。
【0033】
この方法によれば、コーティング処理を容易に行うことができる。
【0034】
本明細書で開示する第3の項目は、前記コーティング処理は前記溶接線に沿って行う、第1又は2の項目に記載のタンクの施工方法である。
【0035】
この方法によれば、コーティング処理を金属層の全面に対して行う場合に比べて、作業量及び施工費用を抑制することができる。
【0036】
本明細書で開示する第4の項目は、貯蔵物に触れるとともに複数の金属プレートを線状の溶接によって互いに接続して形成される金属層と、前記金属層の溶接が行われた部分である溶接線を含む範囲を覆うコーティング層と、を備えている、タンクである。
【0037】
この構成では、溶接線を含む範囲を覆うコーティング層を備えているため、運用開始後における漏洩リスクを低減することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 金属層
11 底部
12 側部
13 金属プレート
14 溶接線
20 外周体
21 底版
22 側壁
23 保冷材
30 屋根
40 コーティング層
100 タンク
101 地面
図1
図2
図3