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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115153
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】蓄電装置温度制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/24 20190101AFI20240819BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240819BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240819BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20240819BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240819BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240819BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240819BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B60L58/24
H01M10/633
H01M10/625
H01M10/651
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/6568
B60H1/22 671
B60H1/22 611
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020675
(22)【出願日】2023-02-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正臣
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 康智
(72)【発明者】
【氏名】石田 大地
(72)【発明者】
【氏名】宮本 哲
(72)【発明者】
【氏名】近藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】室井 建人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 仁崇
(72)【発明者】
【氏名】鎮田 千穂
【テーマコード(参考)】
3L211
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA01
3L211DA42
3L211DA50
3L211EA83
3L211GA42
3L211GA43
5H031CC09
5H031HH06
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC23
5H125BC19
5H125CD06
5H125CD08
5H125CD09
5H125EE25
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】装置構成が複雑になることを抑制しながら蓄電装置の温度制御を適正に行うことができる蓄電装置温度制御システムを提供する。
【解決手段】蓄電装置温度制御システム10は、熱交換器15と、ヒーター回路31と、温調回路51と、入口温度センサ59と、制御装置とを備える。熱交換器15は、ヒーター回路31と温調回路51との間で熱交換を行う。ヒーター回路31は、車室内を空調するヒーター34を備える。温調回路51は、外部電源により充電されるバッテリと、空調側熱媒体を循環させる温調側ポンプ52とを備える。入口温度センサ59は、バッテリの近傍の温調側熱媒体の温度を検出する。制御装置は、バッテリの充電が検出されるとともに車室内の空調が実行中である状態で、バッテリの近傍の温調側熱媒体の温度が所定閾値以下の場合、温調側ポンプ52による温調側熱媒体の流量を増大させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源により充電される蓄電装置と、
熱媒体を循環させるポンプとを備える第1回路と、
車室内を空調する加熱部を備える第2回路と、
前記第1回路と前記第2回路との間で熱交換を行う熱交換部と、
前記外部電源により前記蓄電装置が充電されていることを検出する充電検出部と、
前記蓄電装置の近傍の前記熱媒体の温度を検出する第1温度検出部と、
前記充電検出部により前記蓄電装置の充電が検出されるとともに前記第2回路により前記車室内の空調が実行中である状態で、前記第1温度検出部によって検出される前記温度が所定閾値以下の場合、前記ポンプによる前記熱媒体の流量を増大させる制御部と
を備える
蓄電装置温度制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1温度検出部によって検出される前記温度に応じて前記熱媒体の流量を制御する
請求項1に記載の蓄電装置温度制御システム。
【請求項3】
前記第1回路の前記熱媒体の前記熱交換部への流入有無を切り換える切換部と、
前記第2回路の前記加熱部の近傍での前記熱媒体の温度を検出する第2温度検出部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1温度検出部によって検出される前記温度が前記所定閾値である第1閾値以下であるとともに前記第2温度検出部によって検出される前記温度が第2閾値以上である場合、前記切換部によって前記熱媒体を前記熱交換部へ流入させるように切り換える
請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置温度制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記充電検出部により前記蓄電装置の充電停止が検出される場合、前記切換部によって前記熱媒体を前記熱交換部へ流入させないように切り換えることで前記蓄電装置の加温を停止する
請求項3に記載の蓄電装置温度制御システム。
【請求項5】
前記蓄電装置のセル温度を検出する複数のセル温度検出部を備え、
前記制御部は、
前記複数のセル温度検出部の各々によって検出される前記セル温度に基づいて、前記蓄電装置の冷却及び加温の要否を判定し、
少なくともいずれか1つの前記セル温度検出部によって検出される前記セル温度が冷却閾値以上の場合、他の前記セル温度検出部によって検出される前記セル温度によって前記蓄電装置の加温が必要と判定される場合であっても、前記第1回路の冷却制御を行う
請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置温度制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1温度検出部によって検出される前記温度に応じて算出する必要熱量と、前記第2温度検出部によって検出される前記温度に応じて算出する必要熱量とのうち、いずれか高い方の必要熱量に応じて前記加熱部を制御する
請求項3に記載の蓄電装置温度制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置温度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池を搭載するモビリティにおける充給電に関する研究開発が行われている。
従来、急速充電器により充電されるバッテリと、バッテリから給電される空気調和装置と、空気調和装置の運転及びバッテリの充放電を制御する制御部とを備える車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両の制御部は、バッテリに充電する際、バッテリの温度が所定の充電許可温度よりも低い場合、空気調和装置によりバッテリを加熱し、バッテリの温度を充電許可温度以上とした後、充電を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-146441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池を搭載するモビリティにおける充給電に関する技術においては、システム構成が複雑になることを抑制しながら二次電池の温度制御を適正に行うことが課題である。
例えば上記した車両は、車室内の空調での暖房用の冷媒回路を流れる冷媒とバッテリ温度調整装置の熱媒体との熱交換を行う熱交換器と、バッテリ温度調整装置の熱媒体を加熱する加熱装置とを備えることにより、部品点数が多くなり、圧縮機等を備える冷媒回路と加熱装置とによるバッテリの加熱制御が複雑になるという問題が生じる。
【0005】
本願は上記課題の解決のため、装置構成が複雑になることを抑制しながら蓄電装置の温度制御を適正に行うことの達成を目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1):本発明の一態様に係る蓄電装置温度制御システム(例えば、実施形態での蓄電装置温度制御システム10)は、外部電源により充電される蓄電装置(例えば、実施形態でのバッテリ61)と、熱媒体(例えば、実施形態での空調側熱媒体)を循環させるポンプ(例えば、実施形態での温調側ポンプ52)とを備える第1回路(例えば、実施形態での温調回路51)と、車室内を空調する加熱部(例えば、実施形態でのヒーター34)を備える第2回路(例えば、実施形態でのヒーター回路31)と、前記第1回路と前記第2回路との間で熱交換を行う熱交換部(例えば、実施形態での熱交換器15)と、前記外部電源により前記蓄電装置が充電されていることを検出する充電検出部(例えば、実施形態でのスイッチ65)と、前記蓄電装置の近傍の前記熱媒体の温度を検出する第1温度検出部(例えば、実施形態での入口温度センサ59)と、前記充電検出部により前記蓄電装置の充電が検出されるとともに前記第2回路により前記車室内の空調が実行中である状態で、前記第1温度検出部によって検出される前記温度が所定閾値(例えば、実施形態での第1温度T1、加温閾温度TH1)以下の場合、前記ポンプによる前記熱媒体の流量を増大させる制御部(例えば、実施形態での制御装置64)とを備える。
【0007】
(2):上記(1)に記載の蓄電装置温度制御システムでは、前記制御部は、前記第1温度検出部によって検出される前記温度に応じて前記熱媒体の流量を制御してもよい。
【0008】
(3):上記(1)又は(2)に記載の蓄電装置温度制御システムでは、前記第1回路の前記熱媒体の前記熱交換部への流入有無を切り換える切換部(例えば、実施形態での三方弁56)と、前記第2回路の前記加熱部の近傍での前記熱媒体の温度を検出する第2温度検出部(例えば、実施形態での出口温度センサ36)とを備え、前記制御部は、前記第1温度検出部によって検出される前記温度が前記所定閾値である第1閾値以下であるとともに前記第2温度検出部によって検出される前記温度が第2閾値(例えば、実施形態での所定閾温度TA)以上である場合、前記切換部によって前記熱媒体を前記熱交換部へ流入させるように切り換えてもよい。
【0009】
(4):上記(3)に記載の蓄電装置温度制御システムでは、前記制御部は、前記充電検出部により前記蓄電装置の充電停止が検出される場合、前記切換部によって前記熱媒体を前記熱交換部へ流入させないように切り換えることで前記蓄電装置の加温を停止してもよい。
【0010】
(5):上記(1)又は(2)に記載の蓄電装置温度制御システムでは、前記蓄電装置のセル温度を検出する複数のセル温度検出部(例えば、実施形態でのバッテリセンサ58)を備え、前記制御部は、前記複数のセル温度検出部の各々によって検出される前記セル温度に基づいて、前記蓄電装置の冷却及び加温の要否を判定し、少なくともいずれか1つの前記セル温度検出部によって検出される前記セル温度が冷却閾値(例えば、実施形態での冷却閾温度TC)以上の場合、他の前記セル温度検出部によって検出される前記セル温度によって前記蓄電装置の加温が必要と判定される場合であっても、前記第1回路の冷却制御を行ってもよい。
【0011】
(6):上記(3)に記載の蓄電装置温度制御システムでは、前記制御部は、前記第1温度検出部によって検出される前記温度に応じて算出する必要熱量と、前記第2温度検出部によって検出される前記温度に応じて算出する必要熱量とのうち、いずれか高い方の必要熱量に応じて前記加熱部を制御してもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)によれば、第2回路に設けられる加熱部のみにより、車室内の空調及び蓄電装置の加温を行うことができ、装置構成に要する費用が嵩むことを抑制しながら、蓄電装置の充電に要する時間を短縮することができる。
【0013】
上記(2)の場合、蓄電装置の温度状態に応じて熱媒体の流量を制御するため、蓄電装置の加温に要する時間の短縮と車内空調の暖房とのバランスを適正にとることができる。
【0014】
上記(3)の場合、第2回路側の熱媒体の温度が所望に上昇した後に蓄電装置を加温するため、第1回路側の熱媒体が冷却されてしまうことを抑制して、蓄電装置の加温に要する時間を短縮することができる。
【0015】
上記(4)の場合、ユーザ等により蓄電装置の充電が停止される場合には、蓄電装置の加温を停止させることで、過剰な電力消費が生じることを抑制し、加熱部で発生する熱を車室内空調へ適正に割り当てることができる。
【0016】
上記(5)の場合、蓄電装置を構成する複数のセルのうちで冷却を必要とするセルが存在する場合には、冷却動作を優先することでセルの劣化を抑制することができる。
【0017】
上記(6)の場合、第1回路の必要熱量(つまり熱媒体の必要温度)と第2回路の必要熱量(つまり熱媒体の必要温度)とのうち、より高い方の必要熱量に応じて、加熱部を制御することで、車室内空調の暖房と蓄電装置の加温とを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態での蓄電装置温度制御システムの構成図。
図2】本発明の実施形態での蓄電装置温度制御システムの構成を示すブロック図。
図3】本発明の実施形態での蓄電装置温度制御システムのヒーター回路及び温調回路の各々での熱媒体の温度の時間変化の一例を示すグラフ図。
図4】本発明の実施形態での蓄電装置温度制御システムの車両状態と、バッテリセル温度と、バッテリ加温要求及び冷却要求と、熱媒体入口温度と、熱媒体加温要求及び冷却要求との各時間変化の一例を示すグラフ図。
図5】本発明の実施形態での蓄電装置温度制御システムの熱媒体加温要求と、ヒーター出口温度と、リレーオン要求との各時間変化の一例を示すグラフ図。
図6】本発明の実施形態での蓄電装置温度制御システムのヒーター駆動許可と、バッテリ加温要求と、熱媒体入口温度と、空調側要求及び温調側要求の各目標温度と、熱媒体目標温度との時間変化の一例を示すグラフ図。
図7】本発明の実施形態での蓄電装置温度制御システムの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る蓄電装置温度制御システムについて、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態での蓄電装置温度制御システム10の構成図である。図2は、実施形態での蓄電装置温度制御システム10の構成を示すブロック図である。
実施形態の蓄電装置温度制御システム10は、例えば、電動車両等の車両に搭載されている。電動車両は、電気自動車、ハイブリッド車両及び燃料電池車両等である。電気自動車は、バッテリを動力源として駆動する。ハイブリッド車両は、バッテリ及び内燃機関を動力源として駆動する。燃料電池車両は、燃料電池を動力源として駆動する。
【0020】
図1に示すように、蓄電装置温度制御システム10は、例えば、空調システム11と、温調システム13と、熱交換器15とを備える。
空調システム11は、例えば、ダクト21と、ブロワ22と、ヒーターコア23と、エアミックスドア24と、吹出し切換ドア25と、ヒーター回路31と、空調側タンク32と、空調側ポンプ33と、ヒーター34と、空調側熱交換流路35と、出口温度センサ36とを備える。
【0021】
ダクト21は、車両の外部又は車室内から取り込まれる空気を流通させる。ダクト21には、例えば、空気取込口21aと、第1吹出口21b及び第2吹出口21cとが形成されている。空気取込口21aは、車室内に通じることで内気を取り込む又は車両の外部に通じることで外気を取り込む。第1吹出口21bは、例えば車両のダッシュボードの上部からフロントウィンドウに向かって空気を吹き出す。第2吹出口21cは、例えば車両のダッシュボードから乗員に向かって空気を吹き出す。
【0022】
ブロワ22は、ダクト21内の上流部に配置される。ブロワ22は、空気取込口21aから取り込まれる空気を下流側に向かって送出する。
ヒーターコア23は、ダクト21内のブロワ22よりも下流側に設けられた複数の通風路のうちの所定の通風路に配置される。ヒーターコア23は、内部に流入する高温の熱媒体(空調側熱媒体)とダクト21内の空気との熱交換によって、ヒーターコア23を通過する空気を加熱する。
【0023】
エアミックスドア24は、ダクト21内のヒーターコア23よりも上流側に配置される。エアミックスドア24は、例えば、ダクト21内でヒーターコア23に向かう通風路の開閉と、ダクト21内でヒーターコア23を迂回する通風路の開閉とを行う。エアミックスドア24は、ブロワ22から送出される空気のち、ヒーターコア23を通過する空気とヒーターコア23を迂回する空気との流量割合を調整する。
吹出し切換ドア25は、例えば、ヒーターコア23を通過する空気が流れる通風路に通じる第1吹出口21bの開閉と、ヒーターコア23を迂回する空気が流れる通風路に通じる第2吹出口21cの開閉とを行う。吹出し切換ドア25は、第1吹出口21b及び第2吹出口21cから車室内に吹き出される空気の流量割合を調整する。
【0024】
ヒーター回路31は、ダクト21内に配置されるヒーターコア23の内部を流通する熱媒体(空調側熱媒体)の流通路を形成する。空調側熱媒体は、例えばクーラント液等のいわゆる冷却水である。
空調側タンク(ETA)32は、ヒーター回路31を循環的に流通する空調側熱媒体を貯留する。
空調側ポンプ33は、ヒーター回路31での空調側タンク32の下流側に配置されている。空調側ポンプ33は、例えば電動のウォーターポンプ等である。
ヒーター(ECH)34は、ヒーター回路31での空調側ポンプ33の下流側及びヒーターコア23の上流側に配置されている。ヒーター34は、例えば水加熱電気ヒーター等であって、空調側熱媒体を加熱する。
【0025】
空調側熱交換流路35は、ヒーター回路31でのヒーターコア23の下流側及び空調側タンク32の上流側に配置されている。空調側熱交換流路35は、後述する温調システム13の温調側熱交換流路55と共に熱交換器15を形成する。空調側熱交換流路35を流れる空調側熱媒体は、温調側熱交換流路55を流れる熱媒体(温調側熱媒体)との熱交換を行う。
出口温度センサ36は、ヒーター回路31でのヒーター34の近傍での下流側に配置されている。出口温度センサ36は、ヒーター34から流出する空調側熱媒体の温度を検出して、温度の検出値の信号を出力する。
【0026】
温調システム13は、例えば、電力制御ユニット41と、温調回路51と、温調側ポンプ52と、温調側タンク53と、ラジエーター54と、温調側熱交換流路55と、三方弁56と、合流部57と、バッテリセンサ58と、入口温度センサ59とを備える。
図2に示すように、電力制御ユニット(PU)41は、例えば、バッテリ61と、電力変換装置62とを備える。
【0027】
バッテリ61は、例えば車両の動力源である高圧のバッテリである。バッテリ61は、直列又は並列に接続される複数のバッテリセルを備える。各バッテリセルは、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池及び全固体電池等の二次電池、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ又は二次電池とキャパシタとの組み合わせによる複合電池等である。各バッテリセルは、充電及び放電を繰り返して行う。
バッテリ61は、車両の外部の電源(外部電源)によって充電される。外部電源は、例えば電力系統に接続された商用電源等の交流電源又は急速充電器等を介した直流電源である。
【0028】
電力変換装置62は、直流電力と交流電力との変換並びに直流電力の昇圧及び降圧等を行う電力変換デバイスを備える。電力変換デバイスは、例えば、複数の半導体素子によって構成されるAC-DCコンバータ及びDC-DCコンバータ等を備える。複数の半導体素子は、例えば、通電切替用のスイッチング素子であるトランジスタ及び整流用のダイオード等である。電力変換装置62は、例えば、車両の走行駆動力を発生させるモータ63とバッテリ61との間の電力授受及び外部電源によるバッテリ61の充電を行う。
【0029】
モータ63は、例えば、3相交流のブラシレスDCモータ等である。モータ63は、車両の走行駆動用であって、バッテリ61から電力変換装置62を介して供給される電力により力行動作することによって回転駆動力を発生させる。モータ63は、車輪側から回転軸に入力される回転動力により回生動作することによって発電電力を発生させる。モータ63の回生動作によって発生する発電電力は電力変換装置62を介してバッテリ61に供給される。モータ63は回生動作によって車輪側に回生制動力を発生させる。
【0030】
図1に示す温調回路51は、電力制御ユニット41の少なくともバッテリ61の加温及び冷却を行う熱媒体(温調側熱媒体)の流通路を形成する。温調側熱媒体は、例えばクーラント液等のいわゆる冷却水である。温調回路51は、後述するラジエーター54に温調側熱媒体を流通させる第1温調回路51aと、ラジエーター54を迂回して温調側熱交換流路55に温調側熱媒体を流通させる第2温調回路51bとを備える。
温調側ポンプ52は、温調回路51での電力制御ユニット41の上流側に配置されている。温調側ポンプ52は、例えば電動のウォーターポンプ等である。
温調側タンク(RTA)53は、いわゆるリザーバタンクであって、ラジエーター54に接続されている。温調側タンク53は、温調回路51を循環的に流通する温調側熱媒体を貯留する。
ラジエーター(RAD)54は、第1温調回路51aに設けられる。ラジエーター54は、内部を流通する温調側熱媒体を、周囲の空気又は冷却材等との熱交換によって放熱させる。
【0031】
温調側熱交換流路55は、第2温調回路51bに設けられる。温調側熱交換流路55は、空調システム11の空調側熱交換流路35と共に熱交換器15を形成する。温調側熱交換流路55を流れる温調側熱媒体は、空調側熱交換流路35を流れる空調側熱媒体との熱交換を行う。
【0032】
三方弁56は、温調回路51での電力制御ユニット41とラジエーター54及び温調側熱交換流路55との間の分岐部に配置される。温調回路51での分岐部は、第1温調回路51a及び第2温調回路51bを介して、ラジエーター54及び温調側熱交換流路55と温調側ポンプ52との間に設けられる合流部57に通じる。
三方弁56は、例えばリレーを内蔵する電動弁又は電磁弁等の制御弁である。三方弁56は、リレーのオン及びオフに応じて、温調回路51での電力制御ユニット41の下流側を、第1温調回路51aを介したラジエーター54側又は第2温調回路51bを介した温調側熱交換流路55側に切り換えて通じさせる。
三方弁56は、バッテリ61の加温時には、温調側熱媒体を温調側熱交換流路55に向かって送り出すことによって、ラジエーター54を迂回して温調側熱交換流路55に流れる温調側熱媒体を、電力制御ユニット41に流入させる。三方弁56は、バッテリ61の冷却時には、温調側熱媒体をラジエーター54に向かって送り出すことによって、温調側熱交換流路55を迂回してラジエーター54に流れる温調側熱媒体を、電力制御ユニット41に流入させる。
【0033】
バッテリセンサ58は、例えば、バッテリ61を構成する複数のバッテリセルの温度、電流及び電圧等の状態の各々を検出する複数のセンサを備える。バッテリセンサ58の各センサは、各状態の検出値の信号を出力する。
入口温度センサ59は、温調回路51での電力制御ユニット41の近傍での上流側に配置されている。入口温度センサ59は、電力制御ユニット41のバッテリ61に流入する温調側熱媒体の温度を検出して、温度の検出値の信号を出力する。
【0034】
図2に示すように、蓄電装置温度制御システム10は、例えば、空調システム11、温調システム13及び電力変換装置62を制御する制御装置64と、スイッチ65とを備える。
制御装置64は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。制御装置64の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0035】
スイッチ65は、例えば、接続スイッチ及び操作スイッチ等の各種のスイッチを備える。例えば、接続スイッチは、コネクタ等の接続部材を介した外部電源と電力変換装置62との相互の電気的又は機械的な接続を示す信号を出力する。操作スイッチは、例えば、操作者の入力操作に応じて車両の始動及び停止並びに通電モードの切り替え等を指示する信号を出力する。
【0036】
以下に、実施形態での蓄電装置温度制御システム10の制御装置64が実行する制御動作について説明する。
先ず、制御装置64は、例えば、各種のセンサ及びスイッチ65から出力される信号に基づいて、車両及びバッテリ61の状態を判断する。例えば、制御装置64は、スイッチ65の接続スイッチから出力される信号に基づいて、外部電源と電力変換装置62との接続有無に応じた充電開始又は充電停止を判断する。例えば、制御装置64は、操作スイッチから出力される信号に基づいて、車両の始動及び停止並びに通電モードを判断する。
【0037】
次に、制御装置64は、例えば、外部電源によるバッテリ61の充電及び空調システム11の駆動が実行される状態(充電中空調)に対して、バッテリセンサ58から出力される信号に基づいて、バッテリ61の加温及び冷却の要求有無を判断する。例えば、制御装置64は、複数のバッテリセルの温度(バッテリセル温度)のうちの最小温度及び最大温度と、各バッテリセルの状態から得られる残容量(SOC:State Of Charge)のうちの最小SOCとなどに応じて、加温要求及び冷却要求を設定する。
【0038】
次に、制御装置64は、例えば、バッテリ61の加温要求を設定した状態に対して、複数のバッテリセルの温度のうちの最小温度及び最大温度などに基づいて、温調システム13での温調側ポンプ52から電力制御ユニット41に流れる温調側熱媒体の要求流量を設定する。例えば、制御装置64は、バッテリ61の温度が所定閾値以下の場合、温調側ポンプ52による温調側熱媒体の要求流量を増大させる。
また、制御装置64は、例えば、バッテリ61の加温要求又は冷却要求の指示と、入口温度センサ59から出力される信号とに基づいて、温調システム13での温調側熱媒体の加温及び冷却の要求有無を判断する。さらに、制御装置64は、例えば、温調側熱媒体の加温要求又は冷却要求の指示と、出口温度センサ36から出力される信号とに基づいて、三方弁56のリレーのオン又はオフを指示する。
【0039】
次に、制御装置64は、例えば、三方弁56のリレーのオン又はオフの指示と、入口温度センサ59から出力される信号とに基づき、温調側熱媒体の要求流量に対応して温調側ポンプ52に要求されるデューティ比を設定する。制御装置64は、設定したデューティ比で温調側ポンプ52を駆動制御する。
【0040】
図3は、実施形態での蓄電装置温度制御システム10のヒーター回路31及び温調回路51の各々での熱媒体(空調側熱媒体及び温調側熱媒体)の温度の時間変化の一例を示すグラフ図である。
図3に示すように、制御装置64は、例えば、バッテリ61の加温要求を設定した場合、先ず、ヒーター回路31での空調側熱媒体の加温及び温調回路51での温調側熱媒体の加温を同時に開始する。制御装置64は、例えば、時刻t0において、空調システム11のヒーター34によって空調側熱媒体の加温を開始するとともに、温調システム13の三方弁56のリレーにオンを指示することで温調側熱媒体を第2温調回路51bに送り出す。熱交換器15での空調側熱媒体との熱交換によって加温される温調側熱媒体は、電力制御ユニット41に送られることでバッテリ61の加温を開始する。
【0041】
制御装置64は、例えば、空調側熱媒体及び温調側熱媒体の加温を同時に開始することによって、車室内に吹き出される空気の温度変動を所定温度範囲内に規制する。所定温度範囲は、例えば上下に5℃以内等である。制御装置64は、空調側熱媒体及び温調側熱媒体を同期的に加温することによって、例えば空調側熱媒体及び温調側熱媒体の加温開始タイミングがずれている場合に比べて、空調システム11での空調側熱媒体及び車室内に吹き出される空気の各温度が一時的に変動することを抑制する。各温度の一時的な変動は、例えば、空調側熱媒体の加温開始後に温調側熱媒体の加温が開始される場合での空調側熱媒体及び車室内に吹き出される空気の各温度の一時的な低下である。
【0042】
次に、制御装置64は、例えば、入口温度センサ59から出力される信号に基づいて温調システム13での温調側熱媒体の温度が所定の第1温度T1に到達する時刻t1以降において温調側熱媒体の加温を停止する。制御装置64は、例えば、温調システム13の三方弁56のリレーにオフを指示することで温調側熱媒体を第1温調回路51aに送り出す。温調側熱媒体は、第1温調回路51aのラジエーター54内を流れることで冷却される。空調側熱媒体は、熱交換器15での温調側熱媒体との熱交換がなくなることで、時刻t1での適宜の第2温度T2(≧T1)から温度上昇率が増大する。
【0043】
次に、制御装置64は、例えば、出口温度センサ36から出力される信号に基づいて空調システム11での空調側熱媒体の温度が所定の第3温度T3に到達する時刻t2以降においてヒーター34による空調側熱媒体の加温を停止する。制御装置64は、例えば、時刻t2以降において、ヒーター34の駆動制御によって空調側熱媒体の温度を所定の第3温度T3に維持する。
【0044】
図4は、実施形態での蓄電装置温度制御システムの車両状態と、バッテリセル温度と、バッテリ加温要求及び冷却要求と、熱媒体入口温度と、熱媒体加温要求及び冷却要求との各時間変化の一例を示すグラフ図である。
先ず、図4に示す時刻t10から時刻t11までの間は、車両の停止状態で外部電源が電力変換装置62に接続されていないスリープ状態である。
そして、例えば時刻t11において、制御装置64は、スイッチ65の接続スイッチから出力される信号に基づいて外部電源と電力変換装置62との接続を検知すると、外部電源によるバッテリ61の充電開始(CHON)であると判定する。そして、制御装置64は、時刻t11以降を外部電源によるバッテリ61の充電中であると判定する。
【0045】
次に、例えば時刻t12において、制御装置64は、スイッチ65の操作スイッチから出力される信号に基づいて操作者による所定操作の実行を検知すると、車両の始動(PWON)であると判定する。制御装置64は、車両の始動に伴い、空調システム11及び温調システム13の駆動制御(例えば、各ポンプ33,52の駆動制御など)を開始する。そして、制御装置64は、時刻t12以降を外部電源によるバッテリ61の充電中に車室内の空調が実行される状態(充電中空調)であると判定する。
制御装置64は、例えば、バッテリセンサ58の出力に基づく複数のバッテリセル温度のうちの最小温度が所定の加温閾温度TH1未満である場合、バッテリ加温要求のフラグ値を「ゼロ」から「1」に変更する等によって、バッテリ61の加温要求を設定する。制御装置64は、例えば、バッテリ61の加温要求を設定している状態では、複数のバッテリセル温度のうちの最小温度が増大傾向に変化することに伴って、温調側ポンプ52に要求される温調側熱媒体の流量(要求流量)を低下傾向に変化させる。
【0046】
次に、例えば時刻t12から所定時間が経過した時刻t13において、制御装置64は、例えば、入口温度センサ59の出力に基づく温調側熱媒体の温度が所定の加温閾温度Th未満である場合、熱媒体加温要求のフラグ値を「ゼロ」から「1」に変更する等によって、温調側熱媒体の加温要求を設定する。時刻t12からの経過に対する所定時間は、例えば、空調システム11及び温調システム13の駆動開始後に、温調回路51での温調側熱媒体の温度分布が、熱だまり等に起因する局所的な温度変化の解消によって、安定するために要する時間等である。
次に、例えば時刻t14において、制御装置64は、入口温度センサ59の出力に基づく温調側熱媒体の温度が所定の加温閾温度Thに到達した場合、熱媒体加温要求のフラグ値を「1」から「ゼロ」に変更する等によって、温調側熱媒体の加温要求を取り消す。
【0047】
図5は、実施形態での蓄電装置温度制御システム10の熱媒体加温要求と、ヒーター出口温度と、リレーオン要求との各時間変化の一例を示すグラフ図である。
例えば、図5に示す時刻t31から時刻t32の間のように、制御装置64は、温調側熱媒体の加温要求を設定した状態において、出口温度センサ36の出力に基づく空調側熱媒体の温度が所定閾温度TA未満である場合、三方弁56のリレーのオフを指示する。
そして、例えば、時刻t32から時刻t33の間のように、制御装置64は、空調側熱媒体の温度が所定閾温度TA以上である場合、三方弁56のリレーのオンを指示する。
そして、例えば、時刻t33以降のように、制御装置64は、熱媒体加温要求のフラグ値を「1」から「ゼロ」に変更する等によって、温調側熱媒体の加温要求を取り消した場合、リレーオン要求のフラグ値を「1」から「ゼロ」に変更する等によって、三方弁56のリレーのオフを指示する。
【0048】
次に、例えば図4に示す時刻t15において、制御装置64は、バッテリセンサ58の出力に基づく複数のバッテリセル温度のうちの最大温度が所定の加温非許可閾温度TH2(>TH1)に到達した場合、バッテリ加温要求のフラグ値を「1」から「ゼロ」に変更する等によって、バッテリ61の加温要求を取り消す。
次に、例えば時刻t16において、制御装置64は、バッテリセンサ58の出力に基づく複数のバッテリセル温度のうちの最大温度が所定の冷却閾温度TC(>TH2)に到達した場合、バッテリ冷却要求のフラグ値を「ゼロ」から「1」に変更する等によって、バッテリ61の冷却要求を設定する。また、制御装置64は、例えば、入口温度センサ59の出力に基づく温調側熱媒体の温度が所定の冷却閾温度Tc(>Th)に到達した場合、熱媒体冷却要求のフラグ値を「ゼロ」から「1」に変更する等によって、温調側熱媒体の冷却要求を設定する。制御装置64は、例えば、バッテリ61の冷却要求を設定している状態では、複数のバッテリセル温度のうちの最大温度が増大傾向に変化することに伴って、温調側ポンプ52に要求される温調側熱媒体の流量(要求流量)を増加傾向に変化させる。制御装置64は、例えば、バッテリ61及び温調側熱媒体の各々の冷却要求の設定に伴い、ラジエーター54によって温調側熱媒体を冷却する。
【0049】
次に、例えば時刻t17以降において、制御装置64は、入口温度センサ59の出力に基づく温調側熱媒体の温度が所定の冷却閾温度Tc未満になった場合、熱媒体冷却要求のフラグ値を「1」から「ゼロ」に変更する等によって、温調側熱媒体の冷却要求を取り消す。
次に、例えば時刻t18において、制御装置64は、バッテリセンサ58の出力に基づく複数のバッテリセル温度のうちの最大温度が所定の冷却閾温度TC未満になった場合、バッテリ冷却要求のフラグ値を「1」から「ゼロ」に変更する等によって、バッテリ61の冷却要求を取り消す。
【0050】
次に、例えば時刻t19において、制御装置64は、バッテリセンサ58の出力に基づく複数のバッテリセル温度のうちの最小温度が所定の加温閾温度TH1に到達した場合、バッテリ加温要求のフラグ値を「ゼロ」から「1」に変更する等によって、バッテリ61の加温要求を設定する。また、制御装置64は、例えば、入口温度センサ59の出力に基づく温調側熱媒体の温度が所定の加温閾温度Thに到達した場合、熱媒体加温要求のフラグ値を「ゼロ」から「1」に変更する等によって、温調側熱媒体の加温要求を設定する。
【0051】
次に、例えば時刻t20において、制御装置64は、入口温度センサ59の出力に基づく温調側熱媒体の温度が所定の加温閾温度Thに到達した場合、熱媒体加温要求のフラグ値を「1」から「ゼロ」に変更する等によって、温調側熱媒体の加温要求を取り消す。
次に、例えば時刻t21において、制御装置64は、スイッチ65の接続スイッチから出力される信号に基づいて外部電源と電力変換装置62との切断を検知すると、外部電源によるバッテリ61の充電停止(CHOFF)であると判定する。そして、制御装置64は、時刻t21以降を外部電源によるバッテリ61の充電に対する非待機の状態であると判定する。制御装置64は、非待機の状態に伴い、温調システム13の駆動制御(例えば、温調側52の駆動制御など)を停止する。制御装置64は、バッテリ加温要求及びバッテリ冷却要求の各フラグ値を「ゼロ」に設定する等によって、バッテリ61の加温要求及び冷却要求を取り消す。
【0052】
次に、例えば時刻t22において、制御装置64は、スイッチ65の操作スイッチから出力される信号に基づいて操作者による所定操作の実行を検知すると、車両の停止(PWOFF)であると判定する。制御装置64は、車両の停止に伴い、空調システム11の駆動制御(例えば、空調側ポンプ33の駆動制御など)を停止する。そして、制御装置64は、時刻t22以降を車両の停止状態で外部電源が電力変換装置62に接続されていないスリープ状態であると判定する。
【0053】
図6は、実施形態での蓄電装置温度制御システム10のヒーター駆動許可と、バッテリ加温要求と、熱媒体入口温度と、空調側要求及び温調側要求の各目標温度と、熱媒体目標温度との時間変化の一例を示すグラフ図である。
図6に示すように、制御装置64は、例えば、車室内の空調(車室内空調)に応じて空調システム11側から要求される空調側熱媒体の目標温度と、バッテリ61の加温要求及び冷却要求に応じて温調システム13側から要求される空調側熱媒体の目標温度とに基づいて、ヒーター34から送り出される空調側熱媒体の目標温度を設定する。制御装置64は、例えば、出口温度センサ36の出力に基づく空調側熱媒体の温度(検出温度)と、予め記憶している所定の出力特性マップとに基づいて、ヒーター34の要求熱量を取得する。所定の出力特性マップは、空調側熱媒体の温度とヒーター34の出力(熱量)との対応関係を示すマップである。制御装置64は、例えば、ヒーター34の要求熱量と、所定の電力制限値とのうち、いずれか小さい方をヒーター34の出力電力として設定する。制御装置64は、例えば、ヒーター34に設けられる電流センサ及び電圧センサの各々から出力される電流検出値及び電圧検出値と、ヒーター34の出力電力とに基づいて、ヒーター34に要求されるデューティ比を設定する。制御装置64は、設定したデューティ比でヒーター34を駆動制御する。
【0054】
例えば図6に示す時刻t40から時刻t41の間のように、制御装置64は、ヒーター駆動許可及びバッテリ加温要求の各フラグ値を「ゼロ」に設定する等によって、ヒーター34の駆動許可及びバッテリ61の加温要求の各々を設定していない場合、空調側熱媒体の目標温度を所定の基準温度(第1目標温度Ta)とする。
次に、例えば時刻t41から時刻t42の間のように、制御装置64は、ヒーター34の駆動許可を設定すると、空調システム11側から要求される空調側熱媒体の目標温度(第2目標温度Tb)のみに応じて、ヒーター34から送り出される空調側熱媒体の目標温度を第2目標温度Tbとする。
【0055】
次に、例えば時刻t42から時刻t43の間のように、制御装置64は、バッテリ61の加温要求を設定していない状態では、ヒーター34から送り出される空調側熱媒体の目標温度を設定する際に、温調システム13側から要求される目標温度を無視する。制御装置64は、例えば、温調システム13側から要求される目標温度が空調システム11側から要求される目標温度よりも大きい場合であっても、空調システム11側から要求される目標温度(第3目標温度Tc)のみに応じて、ヒーター34から送り出される空調側熱媒体の目標温度を第3目標温度Tcとする。
【0056】
次に、例えば時刻t43から時刻t46の間のように、制御装置64は、入口温度センサ59の出力に基づく温調側熱媒体の温度の低下等に起因して、バッテリ加温要求のフラグ値を「ゼロ」から「1」に変更する等によって、バッテリ61の加温要求を設定する。制御装置64は、ヒーター34の駆動許可及びバッテリ61の加温要求の各々を設定している場合、温調システム13側から要求される目標温度と、空調システム11側から要求される目標温度とのうち、いずれか大きい方をヒーター34から送り出される空調側熱媒体の目標温度とする。
【0057】
例えば時刻t43から時刻t44の間では、制御装置64は、温調システム13側から要求される目標温度(つまり、第4目標温度Tdから第3目標温度Tcに向かって低下傾向に変化する目標温度)を、ヒーター34から送り出される空調側熱媒体の目標温度とする。
例えば時刻t44から時刻t45の間では、制御装置64は、空調システム11側から要求される目標温度(第3目標温度Tc)を、ヒーター34から送り出される空調側熱媒体の目標温度とする。
例えば時刻t45から時刻t46の間では、制御装置64は、温調システム13側から要求される目標温度(つまり、第5目標温度Teから第6目標温度Tfに向かって増大傾向に変化する目標温度)を、ヒーター34から送り出される空調側熱媒体の目標温度とする。
【0058】
図7は、実施形態での蓄電装置温度制御システム10の動作を示すフローチャートである。
図7に示すように、先ず、制御装置64は、例えば、バッテリセンサ58の出力に基づく複数のバッテリセル温度のうちの最小温度TBATが所定の加温閾温度TH1未満であるか否かを判定する(ステップS01)。
この判定結果が「NO」の場合、制御装置64は処理をエンドに進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合、制御装置64は処理をステップS02に進める。
次に、制御装置64は、温調システム13の温調側ポンプ52を駆動する(ステップS02)。
次に、制御装置64は、温調システム13の三方弁56のリレーにオンを指示することによって、温調側熱媒体を第2温調回路51bに送り出す(ステップS03)。
【0059】
次に、制御装置64は、例えば、入口温度センサ59の出力に基づく温調側熱媒体の温度twが所定の冷却閾温度Tc以上であるか否かを判定する(ステップS06)。
この判定結果が「NO」の場合、制御装置64はステップS06の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合、制御装置64は処理をステップS07に進める。
次に、制御装置64は、温調システム13の三方弁56のリレーにオフを指示することによって、温調側熱媒体を第1温調回路51aに送り出すとともに、温調側ポンプ52の駆動を停止する(ステップS07)。
【0060】
次に、制御装置64は、例えば、入口温度センサ59の出力に基づく温調側熱媒体の温度Twが所定の加温閾温度Th未満であるか否かを判定する(ステップS06)。
この判定結果が「NO」の場合、制御装置64はステップS08の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合、制御装置64は処理をエンドに進める。
【0061】
上述したように、実施形態の蓄電装置温度制御システム10によれば、温調システム13に設けられるヒーター34のみにより、車室内の空調及びバッテリ61の加温を行うことができ、装置構成に要する費用が嵩むことを抑制しながら、バッテリ61の充電に要する時間を短縮することができる。
制御装置64は、バッテリ61の温度状態に応じて温調側熱媒体の流量を制御するため、バッテリ61の加温に要する時間の短縮と車内空調の暖房とのバランスを適正にとることができる。
制御装置64は、空調システム11の空調側熱媒体の温度が所望に上昇した後に三方弁56のリレーのオンによってバッテリ61を加温するため、温調側熱媒体が冷却されてしまうことを抑制して、バッテリ61の加温に要する時間を短縮することができる。
【0062】
制御装置64は、ユーザ等の操作によりバッテリ61の充電が停止される場合には、バッテリ61の加温を停止させることで、過剰な電力消費が生じることを抑制し、ヒーター34で発生する熱を車室内空調へ適正に割り当てることができる。
制御装置64は、バッテリ61を構成する複数のバッテリセルのうちで冷却を必要とするバッテリセルが存在する場合には、冷却動作を優先することでバッテリセルの劣化を抑制することができる。
制御装置64は、温調システム13側及び空調システム11側の各々から要求される空調側熱媒体の目標温度(つまり必要熱量)のうち、より高い方の目標温度に応じてヒーター34を制御することで、車室内空調の暖房とバッテリ61の加温とを適切に行うことができる。
【0063】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0064】
上述した実施形態では、制御装置64は、例えば、バッテリセンサ58の出力に基づく複数のバッテリセルの残容量(SOC)のうちの最小SOCが所定閾値未満に低下する場合には、バッテリ61の加温要求及び冷却要求の設定を解消及び禁止してもよい。
制御装置64は、バッテリセルの残容量(SOC)の低下に応じて、バッテリ61の加温要求及び冷却要求の設定の解消及び禁止を実行することによって、各バッテリセルの残容量(SOC)の過剰な低下を抑制することができる。
【0065】
上述した実施形態では、制御装置64は、例えば、車両の走行状態では、バッテリ61の加温要求及び冷却要求を設定していない場合であっても、温調側ポンプ52に要求される温調側熱媒体の流量(要求流量)を、ゼロよりも大きい所定流量に設定してもよい。例えば、制御装置64は、バッテリ61の加温要求及び冷却要求を設定していない車両の走行状態では、温調側熱媒体の要求流量を所定の第1流量F1に設定する。さらに、制御装置64は、例えば、車両の走行状態が終了した後に操作者によるスイッチ65(操作スイッチ)の操作等によって車両の停止が指示された直後では、温調側熱媒体の要求流量を所定の第1流量F1よりも小さい所定の第2流量F2に設定してもよい。
制御装置64は、車両の走行状態で温調側熱媒体の要求流量をゼロよりも大きい所定の第1流量F1に設定することによって、例えば走行風等によるバッテリ61の温度低下を抑制することができる。
【0066】
上述した実施形態では、制御装置64は、スイッチ65の接続スイッチから出力される信号に基づいて、外部電源と電力変換装置62との接続有無に応じた充電開始又は充電停止を判断するとしたが、これに限定されない。例えば、制御装置64は、外部電源と電力変換装置62との間に設けられる電流センサ及び電圧センサ等から出力される信号に基づいて、充電開始及び充電停止を検知してもよい。
【0067】
上述した実施形態では、空調システム11はヒーター34によって加温される空調側熱媒体を熱交換器15の空調側熱交換流路35に流すとしたが、これに限定されない。
例えば、空調システム11は、気体の作動媒体(熱媒体)の圧縮及び膨張と熱交換とを組み合わせた、いわゆるヒートポンプシステムの一部によって構成されてもよい。この場合、例えば、ヒートポンプシステムのコンプレッサ(電動圧縮機等)によって圧縮された高温及び高圧の熱媒体が、空調側熱交換流路35に流されてもよい。
【0068】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
10…蓄電装置温度制御システム、11…空調システム、13…温調システム、15…熱交換器(熱交換部)、31…ヒーター回路(第2回路)、32…空調側タンク、33…空調側ポンプ、34…ヒーター、35…空調側熱交換流路、36…出口温度センサ(第2温度検出部)、41…電力制御ユニット、51…温調回路(第1回路)、52…温調側ポンプ(ポンプ)、53…温調側タンク、54…ラジエーター、55…温調側熱交換流路、56…三方弁(切換部)、58…バッテリセンサ(セル温度検出部)、59…入口温度センサ(第1温度検出部)、61…バッテリ(蓄電装置)、62…電力変換装置、64…制御装置(制御部)、65…スイッチ(充電検出部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源により充電される蓄電装置と、
熱媒体を循環させるポンプとを備える第1回路と、
車室内を空調する加熱部を備える第2回路と、
前記第1回路と前記第2回路との間で熱交換を行う熱交換部と、
前記外部電源により前記蓄電装置が充電されていることを検出する充電検出部と、
前記蓄電装置の近傍の前記熱媒体の温度を検出する第1温度検出部と、
前記充電検出部により前記蓄電装置の充電が検出されるとともに前記第2回路により前記車室内の空調が実行中である状態で、前記第1温度検出部によって検出される前記温度が所定閾値以下の場合、前記ポンプによる前記熱媒体の流量を増大させる制御部とを備え、
前記第1回路の前記熱媒体の前記熱交換部への流入有無を切り換える切換部と、
前記第2回路の前記加熱部の近傍での前記熱媒体の温度を検出する第2温度検出部とを備え、
前記制御部は、
前記第1温度検出部によって検出される前記温度が前記所定閾値である第1閾値以下であるとともに前記第2温度検出部によって検出される前記温度が第2閾値以上である場合、前記切換部によって前記熱媒体を前記熱交換部へ流入させるように切り換える
蓄電装置温度制御システム。
【請求項2】
外部電源により充電される蓄電装置と、
熱媒体を循環させるポンプとを備える第1回路と、
車室内を空調する加熱部を備える第2回路と、
前記第1回路と前記第2回路との間で熱交換を行う熱交換部と、
前記外部電源により前記蓄電装置が充電されていることを検出する充電検出部と、
前記蓄電装置の近傍の前記熱媒体の温度を検出する第1温度検出部と、
前記充電検出部により前記蓄電装置の充電が検出されるとともに前記第2回路により前記車室内の空調が実行中である状態で、前記第1温度検出部によって検出される前記温度が所定閾値以下の場合、前記ポンプによる前記熱媒体の流量を増大させる制御部とを備え、
前記蓄電装置のセル温度を検出する複数のセル温度検出部を備え、
前記制御部は、
前記複数のセル温度検出部の各々によって検出される前記セル温度に基づいて、前記蓄電装置の冷却及び加温の要否を判定し、
少なくともいずれか1つの前記セル温度検出部によって検出される前記セル温度が冷却閾値以上の場合、他の前記セル温度検出部によって検出される前記セル温度によって前記蓄電装置の加温が必要と判定される場合であっても、前記第1回路の冷却制御を行う蓄電装置温度制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1温度検出部によって検出される前記温度に応じて前記熱媒体の流量を制御する請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置温度制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記充電検出部により前記蓄電装置の充電停止が検出される場合、前記切換部によって前記熱媒体を前記熱交換部へ流入させないように切り換えることで前記蓄電装置の加温を停止する
請求項に記載の蓄電装置温度制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1温度検出部によって検出される前記温度に応じて算出する必要熱量と、前記第2温度検出部によって検出される前記温度に応じて算出する必要熱量とのうち、いずれか高い方の必要熱量に応じて前記加熱部を制御する
請求項に記載の蓄電装置温度制御システム。