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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115154
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20240819BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20240819BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20240819BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20240819BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/46 ZHV
B60W20/16
B60W20/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020677
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平位 卓也
(72)【発明者】
【氏名】木山 栄嗣
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅之
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB12
3D202CC42
3D202DD16
3D202DD22
(57)【要約】
【課題】エンジン始動時における排ガスに及ぼす影響及び歯打ち音の発生を抑制することができる。
【解決手段】エンジン始動時に燃料噴射量を算出する算出部を備えるハイブリッド車両に用いられる制御装置であって、前記算出部は、モータリング履歴がある場合、基準となる基準燃料噴射量に対して、前記基準燃料噴射量を補正する補正項を加算して、前記燃料噴射量を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン始動時に燃料噴射量を算出する算出部を備えるハイブリッド車両に用いられる制御装置であって、
前記算出部は、モータリング履歴がある場合、基準となる基準燃料噴射量に対して、前記基準燃料噴射量を補正する補正項を加算して、前記燃料噴射量を算出する、
ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記算出部は、吸気温及びモータリング時の積算吸気量から算出される補正基準値と、水温及びモータリング後のエンジン停止時間から算出される補正係数と、に基づいて、前記補正項を算出する、
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記補正係数は、前記エンジン停止時間が経過するにつれて小さくなる、
請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シリーズ方式のハイブリッドシステムには、エンジンと、エンジンの動力で発電する発電モータと、走行のための駆動力を発生する駆動モータと、駆動モータに供給される電力を蓄える電池とが含まれる。エンジンのクランクシャフトにエンジン出力ギヤが設けられ、発電モータの回転軸に発電モータギヤが設けられて、エンジン出力ギヤと発電モータギヤとが噛合することにより、エンジンと発電モータとの間で動力が伝達されるようになっている。
【0003】
そのハイブリッドシステムを搭載した車両では、エンジンの冷却水温と、回転数と、に基づいて、エンジン始動時に燃料噴射量を算出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-112256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、モータリング時のエンジン始動において、要求される燃料噴射量が変化する場合がある。例えば、モータリング直後のエンジン始動は、モータリング履歴がない場合と比較して、要求される燃料噴射量が大きい場合がある。また、例えば、モータリング履歴があると、エンジン停止時間が経過するにつれ、要求される燃料噴射量が減る場合がある。
【0006】
このように、エンジン始動時における要求される燃料噴射量が異なる場合、空燃比が変化し、排ガスに及ぼす影響を与えることがある。また、要求される燃料噴射量が多いにもかかわらず、少ない燃料を噴射すると、エンジン内の燃焼が不十分となり、例えば、エンジン出力ギヤの歯と発電モータギヤの歯とが強く衝突し、いわゆる歯打ち音が発生する場合がある。
【0007】
本発明の目的は、エンジン始動時における排ガスに及ぼす影響及び歯打ち音の発生を抑制することができる、ハイブリッド車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、エンジン始動時に燃料噴射量を算出する算出部を備えるハイブリッド車両に用いられる制御装置であって、前記算出部は、モータリング履歴がある場合、基準となる基準燃料噴射量に対して、前記基準燃料噴射量を補正する補正項を加算して、前記燃料噴射量を算出する。
【0009】
この構成によれば、ハイブリッド車両の制御装置は、モータリング履歴がある場合、基準となる基準燃料噴射量に対して、基準燃料噴射量を補正する補正項を加算して、燃料噴射量を算出する。そのため、モータリング履歴の有無に応じて、エンジン始動時における要求される燃料噴射量を算出することができる。これにより、ハイブリッド車両の制御装置は、空燃比が変化せず、エンジン始動時における排ガスに及ぼす影響を抑制することができる。
【0010】
また、モータリング履歴の有無に応じて、補正された燃料噴射量をエンジンに対して噴射するため、エンジン内の燃焼が十分となり、エンジンの回転数が上昇するため、歯打ちを抑制することができる。これにより、ハイブリッド車両の制御装置は、歯打ちによる歯打ち音の発生を抑制することができる。
【0011】
また、例えば、前記補正項は、吸気温及びモータリング時の積算吸気量から算出される補正基準値と、水温及びモータリング後のエンジン停止時間から算出される補正係数と、に基づいて、算出されても良い。さらに、例えば、前記補正係数は、前記エンジン停止時間が経過するにつれて小さくなっても良い。
【0012】
これにより、例えば、補正項は、モータリングの状態に応じて、要求される燃料噴射量を算出される。これにより、ハイブリッド車両の制御装置は、エンジン始動時における排ガスに及ぼす影響及び歯打ち音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エンジン始動時における排ガスに及ぼす影響及び歯打ち音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置が適用されるハイブリッド車両の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る、エンジンの吸気温度及びエンジンの積算吸気量よりエンジン始動時の燃料噴射量の補正基準値を算出するためのテーブルである。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る、エンジンの水温及びモータリング後のエンジン停止時間よりエンジン始動時の燃料噴射量の補正係数を算出するためのテーブルである。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る、エンジン始動時の燃料噴射量を決定するためのシステムの一例を示すシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
<ハイブリッド車両>
図1は、ハイブリッド車両1の構成を示すブロック図である。
【0017】
ハイブリッド車両1は、シリーズ方式のハイブリッドシステム2を搭載している。ハイブリッドシステム2には、エンジン11、発電モータ(MG1)12、駆動モータ(MG2)13、バッテリ14及びPCU(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)15が含まれる。
【0018】
エンジン11は、例えば、ガソリンエンジンである。エンジン11は、スロットルボディや燃料を吸入空気に噴射する燃料インジェクタ等を備えている。スロットルボディは、燃料や空気を取り込み、エンジン11の燃料室に送る部品であり、エンジン11の燃焼室への吸入空気量を調整するための電子スロットルバルブ(以下、単にスロットルバルブともいう)、電子スロットルバルブの開度を検知するスロットルポジションセンサ、停車などのアイドリング時の吸気量を調整するためのコントロールバルブ等を備えている。また、エンジン11には、その始動のためのスタータが付随して設けられている。
【0019】
発電モータ12は、例えば、永久磁石同期モータからなる。発電モータ12の回転軸は、エンジン11のクランクシャフトとギヤ(図示せず)を介して機械的に連結されている。例えば、エンジン11のクランクシャフトにエンジン出力ギヤが相対回転不能に支持され、発電モータ12の回転軸にモータギヤが相対回転不能に支持されて、エンジン出力ギヤとモータギヤとが噛合している。発電モータ12は、エンジン11の出力が伝達される。
【0020】
駆動モータ13は、例えば、発電モータ12よりも大型の永久磁石同期モータからなる。駆動モータ13の回転軸は、ハイブリッド車両1の駆動系16に連結されている。駆動系16には、デファレンシャルギヤが含まれており、駆動モータ13の動力は、デファレンシャルギヤに伝達され、デファレンシャルギヤから左右の前輪または後輪からなる駆動輪17に分配されて伝達される。これにより、左右の駆動輪17が回転し、ハイブリッド車両1が前進または後進する。
【0021】
バッテリ14は、複数の二次電池を組み合わせた組電池である。二次電池は、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ14は、例えば、約200~350V(ボルト)の直流電力を出力する。
【0022】
PCU15は、発電モータ12及び駆動モータ13の駆動を制御するためのユニットであり、第1インバータ21、第2インバータ22及びコンバータ23を備えている。
【0023】
エンジン11の始動時には、バッテリ14から出力される直流電力がコンバータ23により昇圧されて、昇圧された直流電力が第1インバータ21で交流電力に変換され、交流電力が発電モータ12に供給される。これにより、発電モータ12が力行運転されて、エンジン11が発電モータ12によりモータリング(クランキング)される(モータリング運転)。モータリングによりエンジン11のクランクシャフトの回転数が始動に必要な回転数まで上昇した状態で、エンジン11の点火プラグがスパークされると、エンジン11が始動する。
【0024】
ハイブリッド車両1の走行時には、駆動モータ13が力行運転されて、駆動モータ13が動力を発生する。
【0025】
駆動モータ13に要求される出力がバッテリ14の出力より小さいときには、ハイブリッド車両1がEV走行する。すなわち、エンジン11が停止されて、発電モータ12による発電が行われず、バッテリ14から駆動モータ13に電力が供給されて、その電力で駆動モータ13が駆動される。
【0026】
一方、駆動モータ13に要求される出力がバッテリ14の出力を上回るときには、ハイブリッド車両1がHEV走行する。すなわち、エンジン11が稼動状態にされて、発電モータ12が発電運転(回生運転)されることにより、エンジン11の動力が発電モータ12で交流電力に変換される。そして、発電モータ12からの交流電力が第1インバータ21で直流電力に変換され、第1インバータ21から出力される直流電力が第2インバータ22で交流電力に変換されて、その交流電力が駆動モータ13に供給されることにより、駆動モータ13が駆動される。
【0027】
また、バッテリ14の残容量が所定以下に低下すると、駆動モータ13の駆動/停止にかかわらず、エンジン11に燃料を噴射し、エンジン11が稼動している状態で、発電モータ12が発電運転される(ファイアリング運転)。このとき、発電モータ12からの交流電力が第1インバータ21で直流電力に変換され、第1インバータ21から出力される直流電力がコンバータ23で降圧されて、降圧後の直流電力がバッテリ14に供給されることにより、バッテリ14が充電される。
【0028】
ハイブリッド車両1の減速時には、駆動モータ13が回生運転されて、駆動輪17から駆動モータ13に伝達される動力が交流電力に変換される。このとき、駆動モータ13が走行駆動系の抵抗となり、その抵抗がハイブリッド車両1を制動する制動力(回生制動力)として作用する。このとき、PCU15では、駆動モータ13から第2インバータ22に供給される交流電力が第2インバータ22で直流電力に変換され、第2インバータ22から出力される直流電力がコンバータ23で降圧される。そして、その降圧後の直流電力がバッテリ14に供給されることにより、バッテリ14が充電される。
【0029】
ハイブリッド車両1には、複数のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が搭載されている。各ECUは、マイコン(マイクロコントローラユニット)を備えており、マイコンには、例えば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ及びDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0030】
複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。各ECUには、制御に必要な各種センサが接続されており、その接続されたセンサの検出信号が入力される。また、各ECUには、各種センサから入力される検出信号以外に制御に必要な情報が他のECUから入力される。
【0031】
図1には、複数のECUのうち、ハイブリッドシステム2を制御するECU311及びECU312が示されている。ECU311及びECU312を含むECU31は、ハイブリッド車両1の制御装置の一例である。
【0032】
ECU311には、アクセルセンサ32及び車速センサ33が接続されている。アクセルセンサ32は、ドライバ(運転者)により足踏み操作されるアクセルペダルの操作量に応じた検出信号を出力する。車速センサ33は、ハイブリッド車両1の走行に伴って回転する回転体の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。
【0033】
また、ECU312には、吸気温センサ34、吸気量センサ35及び水温センサ36が接続されている。吸気温センサ34は、エンジン11の吸気温を検出し、検出された吸気温に応じた検出信号を出力する。吸気量センサ35は、エンジン11の吸気量を検出し、検出された吸気量に応じた検出信号を出力する。水温センサ36は、エンジン11の冷却水温を検出し、検出された冷却水温(以下、水温ともいう)に応じた検出信号を出力する。
【0034】
ECU311では、アクセルセンサ32の検出信号から、アクセルペダルの最大操作量に対する現在の操作量の割合であるアクセル開度が求められる。また、ECU311では、車速センサ33の検出信号から、その検出信号(パルス信号)の周波数が求められて、その周波数が車速に換算される。
【0035】
なお、ECU31が車速を認識する手法は、車速センサ33から取得した検出信号を用いる手法に限定されず、他に、例えば、PCU15やVSC(Vehicle Stability Control:車両安定制御システム)からCAN経由で取得した車速関連情報を用いる手法などであってもよい。
【0036】
ECU312は、取得部、判定部、計時部、算出部及び制御部を備える。取得部は、吸気温センサ34からエンジン11の吸気温を取得する。また、取得部は、吸気量センサ35からエンジン11の積算吸気量(以下、吸気量ともいう)を取得する。さらに、取得部は、水温センサ36からエンジン11の水温を取得する。判定部は、モータリング履歴があるかを判定する。計時部は、モータリング終了からの時間を計時する。制御部は、燃料インジェクタ(エンジン)に対して、算出部が算出した燃料噴射量に対応する燃料を噴射するように制御を行う(噴射補正)。
【0037】
算出部は、エンジン始動時に燃料噴射量を算出する。また、算出部は、判定部によりモータリング履歴があると判定されると、基準となる燃料噴射量に対して、燃料噴射量を補正する補正項を加算して、燃料噴射量を算出する。
【0038】
ここで、図2図3及び図4を用いて、エンジン始動時における燃料噴射量を決定する内容について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る、エンジン11の吸気温度及びエンジン11の積算吸気量よりエンジン始動時の燃料噴射量の補正基準値を算出するためのテーブルである。図3は、本発明の一実施形態に係る、エンジンの水温及びモータリング後のエンジン停止時間よりエンジン始動時の燃料噴射量の補正係数を算出するためのテーブルである。図4は、本発明の一実施形態に係る、エンジン始動時の燃料噴射量を決定するためのシステムの一例を示すシステム図である。
【0039】
ここで、図2のテーブル41に示す、吸気温度のaの値、吸気量のbの値及び補正基準値のcの値は、正数とする。また、図3のテーブル42に示す、水温のdの値、補正係数のe、f、g、h、iの値及びモータリング終了から再始動までの時間(エンジン停止時間)のt1、t2、t3、t4及びt5の値は、正数とする。また、補正係数のe、f、g、h及びiの値は、1より小さい。さらに、補正係数のe、f、g、h及びiの値の関係は、1>e>f>g>h>iである。つまり、補正係数は、エンジン停止時間が経過するにつれて小さくなる。
【0040】
ECU312の算出部は、吸気温及びモータリング時の積算吸気量から算出される補正基準値と、水温及びモータリング後のエンジン停止時間から算出される補正係数と、に基づいて、補正項を算出する。具体的には、まず、ECU312の判定部により、モータリング履歴があると判定されると、ECU312の算出部は、ECU312の取得部が取得したエンジン11の吸気温と、エンジン11の積算吸気量と、を基に、図2に示すテーブル41を参照し、補正基準値を特定する(図4参照)。
【0041】
また、ECU312の算出部は、ECU312の取得部が取得したエンジン11の水温と、計時部が計時したモータリング終了からの時間と、を基に、図3に示すテーブル42を参照し、補正係数を特定する。そして、ECU312の算出部は、特定した補正基準値に、補正係数を乗じることで、補正項を算出する(図4参照)。
【0042】
例えば、まず、ECU312の判定部により、モータリング履歴があると判定される場合、ECU312の取得部がエンジン11の吸気温をa[℃]と、エンジン11の積算吸気量をb[g]と、エンジン11の水温をd[℃]と、を取得したとする。また、ECU312の計時部が計時したモータリング終了からの時間をt2[s]とする。
【0043】
この場合、ECU312の算出部は、図2に示すテーブル41を参照し、補正基準値=cと特定する。また、ECU312の算出部は、図3に示すテーブル42を参照し、補正係数=eと特定する。そして、ECU312の算出部は、特定した補正基準値cと、補正係数eと、に基づいて、特定した補正基準値cに、補正係数eを乗じることで、補正項(=c×e)を算出する(図4参照)。そして、ECU312の制御部は、算出部が算出した基準燃料噴射量に補正項を加算した燃料噴射量を噴射するように制御を行う噴射補正について、エンジン始動時噴射終了まで行う。
【0044】
これにより、ハイブリッド車両1の制御装置は、モータリング履歴がある場合、エンジン11の状態(吸気温度、積算吸気量、水温及びエンジン停止時間)に応じた、要求される燃料噴射量を算出することができる。なお、ECU312が備える機能はこれに限定されない。
【0045】
<本実施形態の作用効果>
以上説明したように、本実施形態に係るハイブリッド車両1の制御装置は、モータリング履歴がある場合、基準となる基準燃料噴射量に対して、基準燃料噴射量を補正する補正項を加算して、燃料噴射量を算出する。
【0046】
そのため、本発明によれば、ハイブリッド車両1の制御装置は、モータリング履歴の有無に応じて、エンジン始動時における要求される燃料噴射量を算出することができる。これにより、ハイブリッド車両1の制御装置は、空燃比が変化せず、エンジン始動時における排ガスに及ぼす影響を抑制することができる。
【0047】
また、モータリング履歴の有無に応じて、補正された燃料噴射量をエンジンに対して噴射するため、エンジン内の燃焼が十分となり、エンジンの回転数が上昇するため、歯打ちを抑制することができる。これにより、ハイブリッド車両1の制御装置は、歯打ちによる歯打ち音の発生を抑制することができる。
【0048】
また、例えば、補正項は、吸気温及びモータリング時の積算吸気量から算出される補正基準値と、水温及びモータリング後のエンジン停止時間から算出される補正係数と、に基づいて、算出されても良い。さらに、例えば、補正係数は、エンジン停止時間が経過するにつれて小さくなっても良い。
【0049】
これにより、例えば、補正項は、モータリングの状態に応じて、要求される燃料噴射量を算出される。これにより、ハイブリッド車両1の制御装置は、エンジン始動時における排ガスに及ぼす影響及び歯打ち音の発生を抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態はシリーズ方式のハイブリッドシステム2で適用する制御装置について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車両に動力分割機構を設け、エンジンとモータの両方を動力源とするシリーズ・パラレル方式のハイブリッドシステムや、エンジンの補助モータ(例えば、ISG(Integrated Starter Generator))として利用するマイルド方式のハイブリッドシステム及びパラレル方式のハイブリッドシステム等に適用することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 :ハイブリッド車両
11 :エンジン
12 :発電モータ
13 :駆動モータ
14 :バッテリ(電池)
15 :PCU
312 :ECU(制御装置、取得部、判定部、計時部、算出部、制御部)
図1
図2
図3
図4