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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115156
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】粒子含有シート
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/10 20150101AFI20240819BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240819BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20240819BHJP
   G02B 5/00 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
G02B1/10
C08J7/04 Z CER
C08J7/046 CEZ
G02B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020679
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】大川 晃次郎
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
4F006
【Fターム(参考)】
2H042AA07
2K009AA00
2K009BB24
2K009CC09
2K009CC42
4F006AA02
4F006AA12
4F006AA17
4F006AA35
4F006AA36
4F006AA38
4F006AB39
4F006AB72
4F006AB73
4F006AB74
4F006AB76
4F006BA02
4F006BA05
4F006BA17
4F006CA05
4F006DA04
4F006EA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機能性粒子の含有量を増加させることができる粒子含有シートを提供する。
【解決手段】基材層と、上記基材層の一方の面に配置され、機能性粒子およびバインダ成分を含有する粒子層とを有する粒子含有シートであって、上記粒子層が、上記バインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有し、上記粒子層の厚さ方向の断面において、上記機能性粒子が占める面積比率が40%以上99%以下であり、上記粒子層が連続した層である、粒子含有シートを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の一方の面に配置され、機能性粒子およびバインダ成分を含有する粒子層とを有する粒子含有シートであって、
前記粒子層が、前記バインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有し、
前記粒子層の厚さ方向の断面において、前記機能性粒子が占める面積比率が40%以上99%以下であり、
前記粒子層が連続した層である、粒子含有シート。
【請求項2】
前記機能性粒子が、金属粒子、無機酸化物粒子、無機窒化物粒子、および無機硫化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の粒子含有シート。
【請求項3】
前記基材層と前記粒子層との間に、プライマー層を有する、請求項1または請求項2に記載の粒子含有シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粒子含有シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒子含有シートは、光学機能、撥水機能、抗菌または抗ウイルス機能、磁性機能、導電機能、触媒機能等、種々の機能を有する機能性シートとして利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-73558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粒子含有シートは、可視光透過性や膜硬度の向上、高屈折率化、ガス透過率の低減、光触媒反応効率向上、金属酸化物超微粒子の比表面積増大、電子準位の変更等の効果によって、コーティング材料、屈折率調整材料、ガスバリア材料、光電子材料、電子材料、光学レンズ、反射防止膜、光触媒等に好適に利用し得る。粒子含有シートにおいては、機能向上のために、例えば、機能性粒子の量を増加させることが考えられる。しかし、機能性粒子の含有量を増やすと、機能性粒子が部分的に凝集してしまい、成膜が困難になることがある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、機能性粒子の含有量を増加させることができる粒子含有シートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、基材層と、上記基材層の一方の面に配置され、機能性粒子およびバインダ成分を含有する粒子層とを有する粒子含有シートであって、上記粒子層が、上記バインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有し、上記粒子層の厚さ方向の断面において、上記機能性粒子が占める面積比率が40%以上99%以下であり、上記粒子層が連続した層である、粒子含有シートを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の粒子含有シートにおいては、機能性粒子の含有量を増加させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示における粒子含有シートの一例を示す概略断面図である。
図2】本開示における粒子含有シートの他の例を示す概略断面図である。
図3】本開示における粒子層の形成方法の一例を示す工程図である。
図4】本開示における粒子層の形成方法の他の例を示す工程図である。
図5】粒子層の形成方法を例示する概略断面である。
図6】本開示における粒子含有シートの他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0011】
また、本明細書において、「シート」には、「フィルム」と呼ばれる部材も含まれる。また、「フィルム」には、「シート」と呼ばれる部材も含まれる。
【0012】
以下、本開示における粒子含有シートおよび粒子含有組成物について、詳細に説明する。
【0013】
A.粒子含有シート
本開示における粒子含有シートは、基材層と、上記基材層の一方の面に配置され、機能性粒子およびバインダ成分を含有する粒子層とを有する粒子含有シートであって、上記粒子層が、上記バインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有し、上記粒子層の厚さ方向の断面において、上記粒子層における上記機能性粒子が占める面積比率が40%以上99%以下であり、上記粒子層が連続した層である。
【0014】
図1は、本開示における粒子含有シートを例示する概略断面図である。図1に例示するように、粒子含有シート1は、基材層2と、基材層2の一方の面に配置され、機能性粒子およびバインダ成分を含有する粒子層3とを有する。粒子層3は、バインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有する。また、粒子層3は、連続した層である。粒子層3の厚さ方向の断面において、機能性粒子が占める面積比率は所定の範囲内である。
【0015】
本開示においては、粒子層の厚さ方向の断面において、機能性粒子が占める面積比率が所定の範囲内であり、粒子層中の機能性粒子の含有量が多い。本開示においては、粒子層がバインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有することにより、機能性粒子の分散安定性を向上させることができる。具体的には、機能性粒子の表面にシリコーンアルコキシオリゴマーが付着し、シリコーンアルコキシオリゴマーが付着した機能性粒子同士が結合することによって、粒子層が形成されると考えられる。そのため、機能性粒子が部分的に凝集するのを抑制でき、機能性粒子の含有量が多くとも、成膜可能である。よって、機能性粒子の機能を十分に発揮させることができる。したがって、粒子含有シートの機能向上を図ることができる。
【0016】
また、本開示においては、粒子層が連続した層である。本明細書において、「粒子層が連続した層である」とは、粒子層にクラックがないことを意味する。粒子層が機能性粒子およびバインダ成分を含有する場合において、バインダ成分に硬化性のバインダ樹脂を用いる場合、機能性粒子の含有量が多いと、粒子層の形成工程において、バインダ樹脂の硬化時に、クラックが生じることがある。そうすると、粒子層の機能が低下するおそれがある。これに対し、本開示においては、粒子層がバインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有することにより、機能性粒子の含有量が多くとも、クラックの発生を抑制できる。
【0017】
したがって、本開示における粒子含有シートは、種々の機能を有する機能性シートとして用いることができる。
【0018】
以下、本開示における粒子含有シートの各構成について説明する。
【0019】
1.粒子層
本開示における粒子層は、基材層の一方の面側に配置され、機能性粒子およびバインダ成分を含有し、バインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有する。また、粒子層の厚さ方向の断面において、機能性粒子が占める面積比率が所定の範囲内である。また、粒子層は、連続した層である。
【0020】
(1)粒子層の材料
(a)機能性粒子
機能性粒子が有する機能は、特に限定されないが、光学機能、撥水機能、抗菌または抗ウイルス機能、磁性機能、導電機能、および触媒機能からなる群から選択される少なくとも1つの機能であることが好ましい。光学機能としては、例えば、光散乱機能、防眩機能、隠蔽機能、波長カット機能、発色機能が挙げられる。撥水機能には、防汚機能も含まれる。具体的には、機能性粒子としては、高屈折率粒子、低屈折率粒子、光吸収粒子、発色粒子、撥水粒子、抗菌または抗ウイルス粒子、磁性粒子、導電性粒子、触媒粒子が挙げられる。撥水粒子には、防汚粒子も含まれる。
【0021】
機能性粒子としては、上記機能を有する粒子であれば特に限定されず、例えば、無機粒子、有機粒子、有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、金属粒子、無機酸化物粒子、無機窒化物粒子、無機硫化物粒子が挙げられる。金属粒子を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、銀、銅、またはそれらの合金が挙げられる。無機酸化物粒子を構成する無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化スズ、インジウム-スズ系酸化物が挙げられる。無機窒化物粒子を構成する無機窒化物としては、例えば、窒化アルミニウムが挙げられる。無機硫化物粒子を構成する無機硫化物としては、例えば、硫化亜鉛が挙げられる。
【0022】
機能性粒子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
中でも、無機粒子が好ましく、金属粒子、無機酸化物粒子、無機窒化物粒子、および無機硫化物粒子から選択される少なくとも1種がより好ましい。具体的には、酸化ケイ素粒子、石英粒子、中空シリカ粒子、フッ素担持粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ハフニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化セリウム粒子、酸化タンタル粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タングステン粒子、酸化アンチモン粒子、酸化スズ粒子、酸化鉄粒子、酸化亜鉛粒子、酸化アルミニウム粒子、窒化アルミニウム粒子、銀粒子、銅粒子、SUS粒子、硫化亜鉛粒子が好ましい。
【0024】
機能性粒子の平均粒径は、特に限定されないが、3nm以上であることが好ましく、5nm以上でもよく、8nm以上でもよい。また、機能性粒子の平均粒径は、500nm以下であることが好ましく、150nm以下でもよく、70nm以下でもよく、50nm以下でもよい。機能性粒子の平均粒径の数値範囲は、下限値の選択肢から選ばれる一つと、上限値の選択肢から選ばれる一つとを組み合わせてもよい。すなわち、機能性粒子の平均粒径は、3nm以上500nm以下であることが好ましく、5nm以上500nm以下でもよく、8nm以上500nm以下でもよく、3nm以上150nm以下でもよく、5nm以上150nm以下でもよく、8nm以上150nm以下でもよく、3nm以上70nm以下でもよく、5nm以上70nm以下でもよく、8nm以上70以下でもよく、3nm以上50nm以下でもよく、5nm以上50nm以下でもよく、8nm以上50nm以下でもよい。平均粒径が小さすぎる機能性粒子は、安定性に劣る可能性がある。また、機能性粒子の平均粒径が大きすぎると、光の散乱中心となってしまい、好ましい光学特性が得られない場合や、粒子同士のネッキングが十分に取れず、十分な導電性が得られない場合、あるいは表面積が確保されないことから、期待される触媒性能が得られない場合等がある。
【0025】
また、後述するように、粒子層が、基材層とは反対側の面に複数の凸部を有する場合、機能性粒子の平均粒径は、3nm以上であることが好ましく、5nm以上でもよく、8nm以上でもよい。また、上記の場合、機能性粒子の平均粒径は、70nm以下であることが好ましく、50nm以下でもよい。上記の場合、機能性粒子の平均粒径の数値範囲は、下限値の選択肢から選ばれる一つと、上限値の選択肢から選ばれる一つとを組み合わせてもよい。すなわち、機能性粒子の平均粒径は、3nm以上70nm以下であることが好ましく、5nm以上70nm以下でもよく、8nm以上70nm以下でもよく、3nm以上50nm以下でもよく、5nm以上50nm以下でもよく、8nm以上50nm以下でもよい。機能性粒子の平均粒径が上記のように小さいことにより、シリコーンアルコキシオリゴマーが付着した機能性粒子同士が結合しやすくなり、凸部の形状安定性を向上できる。一方、平均粒径が小さすぎる機能性粒子は、安定性に劣る可能性がある。また、機能性粒子の平均粒径が大きすぎると、機能性粒子が凸部に入り込みにくくなる可能性がある。
【0026】
ここで、機能性粒子の粒径は、粒子層の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定される。機能性粒子の平均粒径とは、SEM観察により測定される、機能性粒子20個の粒径の算術平均値をいう。なお、機能性粒子の形状が球状ではない場合、粒子径は長径とする。
【0027】
機能性粒子の形状としては、特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状、円盤状、棒状、針状等が挙げられる。
【0028】
また、粒子層の厚さ方向の断面において、機能性粒子が占める面積比率は、40%以上であり、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。また、粒子層の厚さ方向の断面において、機能性粒子が占める面積比率は、99%以下であり、98%以下であってもよく、97%以下であってもよい。機能性粒子が占める面積比率が小さいと、粒子層中の機能性粒子の含有量が少なくなる。そのため、機能性粒子が有する機能を十分に発揮できない可能性がある。一方、機能性粒子が占める面積比率が大きいと、粒子層中の機能性粒子の含有量が多くなる。そうすると、粒子層中のバインダ成分の含有量が相対的に少なくなる。そのため、粒子層の強度が不足し、やがては粒子層内部から凝集破壊が生じる可能性がある。
【0029】
ここで、粒子層の厚さ方向の断面において、機能性粒子が占める面積比率の測定方法は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いるとともに、画像処理ソフトウェアを用いて行う。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)による、粒子層の厚さ方向の断面の画像を画像処理ソフトウェアで読み込み、2値化処理を行い、白黒画像にする。そして、白黒画像における機能性粒子部分を選択し、機能性粒子が占める面積比率を算出する。画像処理ソフトウェアは、米国国立衛生研究所製「ImageJ」を使用する。粒子層の厚さ方向の断面において、粒子層は、例えば、機能性粒子とバインダ成分とを有していてもよく、機能性粒子とバインダ成分と空隙とを有してもよい。上記白黒画像において、機能性粒子が存在する領域とバインダ成分が存在する領域と空隙が存在する領域とは区別できる。SEM観察は10箇所で行い、機能性粒子が占める面積比率はその平均値とする。この際、1回のSEM観察での観察面積は、機能性粒子の平均粒径の15倍以上または20倍以上の面積とする。例えば、機能性粒子の平均粒径が10nmである場合、上記観察面積は150nm×200nmに設定される。
【0030】
また、後述するように、粒子層が、基材層とは反対側の面に複数の凸部を有する場合、凸部の高さ方向の断面において、凸部における機能性粒子が占める面積比率は、40%以上であり、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。また、凸部の高さ方向の断面において、凸部における機能性粒子が占める面積比率は、99%以下であり、98%以下であってもよく、97%以下であってもよい。機能性粒子が占める面積比率が小さいと、凸部中の機能性粒子の含有量が少なくなる。そのため、シリコーンアルコキシオリゴマーが付着した機能性粒子同士が結合しにくくなり、凸部の形状安定性が低下する可能性がある。また、機能性粒子が有する機能を十分に発揮できない可能性がある。一方、機能性粒子が占める面積比率が大きいと、凸部中の機能性粒子の含有量が多くなる。そうすると、凸部中のバインダ成分の含有量が相対的に少なくなる。そのため、凸部の強度が不足する可能性がある。
【0031】
ここで、凸部の高さ方向の断面において、凸部における機能性粒子が占める面積比率の測定は、上記の粒子層の厚さ方向の断面において、機能性粒子が占める面積比率の測定方法と同様である。SEM観察は30個の凸部について行い、凸部における機能性粒子が占める面積比率はその平均値とする。この際、SEMの観察条件は適宜設定されるが、1回のSEM観察は、5個の凸部が観察画面内に含まれる条件で行う。
【0032】
(b)バインダ成分
本開示における粒子層は、バインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有する。通常、粒子層は、シリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物以外のバインダ成分を含有しない。
【0033】
シリコーンアルコキシオリゴマーは、アルコキシシリル基を有する。シリコーンアルコキシオリゴマーとしては、例えば、アルコキシシリル基および非反応性官能基を有するシリコーンアルコキシオリゴマー、アルコキシシリル基および反応性官能基を有するシリコーンアルコキシオリゴマーが挙げられる。非反応性官能基としては、例えば、メチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。非反応性官能基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基が挙げられる。反応性官能基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0034】
シリコーンアルコキシオリゴマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
粒子層がシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有することは、13C-NMR測定によって確認される。
【0036】
シリコーンアルコキシオリゴマーの重量平均分子量は、例えば、200以上4000以下が好ましく、500以上1500以下がより好ましい。シリコーンアルコキシオリゴマーの重量平均分子量が上記範囲内であれば、機能性粒子の分散安定性を向上させることができる。具体的には、粒子層の形成に用いられる粒子含有組成物中で機能性粒子が部分的に凝集するのを抑制し、粒子含有組成物を均一に塗布することができる。
【0037】
ここで、シリコーンアルコキシオリゴマーの重量平均分子量は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として求めることができる。なお、粒子層において、シリコーンアルコキシオリゴマー同士がゆるやかに結合して、硬化物となっているものと思料される。そのため、粒子層のGPC分析から、シリコーンアルコキシオリゴマーの重量平均分子量を求めることができると推量される。
【0038】
また、粒子層の厚さの断面において、バインダ成分が占める面積比率は、例えば、1%以上60%以下であることが好ましく、2%以上40%以下であってもよく、3%以上20%以下であってもよい。バインダ成分が占める面積比率が大きいと、粒子層中のバインダ成分の含有量が多くなる。粒子層中のバインダ成分の含有量が多いと、相対的に粒子層中の機能性粒子の含有量が少なくなるため、機能性粒子が有する機能を十分に発揮できない可能性がある。一方、バインダ成分が占める面積比率が小さいと、粒子層中のバインダ成分の含有量が少なくなる。バインダ成分の含有量が少なすぎると、粒子層の強度が不足する可能性がある。
【0039】
ここで、粒子層の厚さ方向の断面において、バインダ成分が占める面積比率の測定方法は、上記の機能性粒子が占める面積比率の測定方法と同様である。
【0040】
また、後述するように、粒子層が、基材層とは反対側の面に複数の凸部を有する場合、凸部の高さ方向の断面において、凸部におけるバインダ成分が占める面積比率は、上記の粒子層の厚さ方向の断面において、バインダ成分が占める面積比率と同様である。
【0041】
ここで、凸部の高さ方向の断面において、凸部におけるバインダ成分が占める面積比率の測定方法は、上記の凸部における機能性粒子が占める面積比率の測定方法と同様である。
【0042】
(2)粒子層の形状
本開示における粒子層は、連続した層である。上述したように、本明細書において、「粒子層が連続した層である」とは、粒子層にクラックがないことを意味する。また、「粒子層にクラックがない」とは、粒子層に、クラックの深さが粒子層の厚さの1/10よりも大きいクラックがないことをいう。すなわち、「粒子層にクラックがない」とは、粒子層に、クラックの深さが粒子層の厚さの1/10以下であるクラックがある場合も含む概念である。
【0043】
粒子層にクラックがないことは、目視により確認する。
【0044】
粒子層は、平坦であってもよく、基材層とは反対側の面に複数の凸部を有していてもよい。
【0045】
以下、粒子層が、基材層とは反対側の面に複数の凸部を有する場合について説明する。
【0046】
図2(a)、(b)は、本開示における粒子含有シートを例示する概略断面図であり、図2(b)は図2(a)の拡大図である。図2(a)、(b)に例示する粒子含有シート1において、機能性粒子4およびバインダ成分(図示なし)を含有する粒子層3は、基材層2とは反対側の面に複数の凸部11を有する。
【0047】
ここで、表面に複数の凸部を有する粒子層の形成方法としては、型を用いて凹凸構造を賦型する賦型技術が知られている。例えば、機能性粒子およびバインダを含有する粒子含有組成物を用い、上記粒子含有組成物を含有する塗膜に凹凸構造を賦型する場合がある。
【0048】
図3(a)~(c)は、賦型技術による、表面に複数の凸部を有する粒子層の形成方法を例示する工程図である。図3(a)に示すように、表面に凹部12を有する型10を準備する。また、基材層2の一方の面に、機能性粒子およびバインダを含有する粒子含有組成物を塗布して、塗膜3aを形成する。次に、図3(b)に示すように、塗膜3aに型10を押し当て、塗膜3aを硬化させる。次いで、図3(b)~(c)に示すように、型10を取り外す。この際、塗膜3aを半硬化させて、型10を取り外した後、塗膜3aを本硬化させてもよい。
【0049】
図4(a)~(d)は、賦型技術による、表面に複数の凸部を有する粒子層の形成方法を例示する工程図である。図4(a)に示すように、表面に凹部12を有する型10を準備する。次に、図4(b)に示すように、型10に、機能性粒子およびバインダを含有する粒子含有組成物を塗布して、塗膜3aを形成する。続いて、塗膜3aを硬化させる。次いで、図4(c)に示すように、塗膜3aの型10とは反対側の面に基材層2を配置する。次いで、図4(c)~(d)に示すように、型10を取り外す。この際、塗膜3aを半硬化させて、型10を取り外した後、塗膜3aを本硬化させてもよい。
【0050】
このような賦型技術による、表面に複数の凸部を有する粒子層の形成方法において、例えば図5(a)に示すように、機能性粒子4の粒径に対して凹凸構造の寸法が大きい場合、型10の凹部12にバインダ(図示なし)および機能性粒子4が充填されやすい。一方、例えば図5(b)に示すように、機能性粒子4の粒径に対して凹凸構造の寸法が小さい場合、型10の凹部12に機能性粒子4が充填されにくいことがある。
【0051】
本開示においては、機能性粒子の粒径に対して粒子層の凹凸構造の寸法が小さい場合でも、粒子層がバインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーを含有することにより、機能性粒子の分散安定性を向上させることができ、凸部に機能性粒子を十分に充填することができる。よって、凸部の形状安定性を向上できる。そのため、温度や外力等による凸部の形状変化を抑制できる。さらに、凸部に機能性粒子が十分に充填されていることにより、機能性粒子の機能を十分に発揮させることができる。また、凸部の寸法安定性に優れるため、本開示における粒子含有シートは、凹凸構造を賦型するための型としても用いることができる。
【0052】
また、粒子層の凹凸構造の寸法が小さい場合には、微細な凹凸構造によって機能を発揮することもできる。
【0053】
粒子層が、基材層とは反対側の面に複数の凸部を有する場合、後述するように、粒子層3において、凸部11の高さHが所定の範囲内であり、凸部11のピッチPが所定の範囲内であり、上述したように、機能性粒子4の平均粒径が所定の範囲内であり、凸部11の高さ方向の断面において、凸部11における機能性粒子4が占める面積比率は所定の範囲内であることが好ましい。
【0054】
凸部は、ドット状に配置されていてもよく、ストライプ状に配置されていてもよい。
【0055】
凸部の高さ方向における断面形状は、特に限定されず、例えば、正方形、長方形、台形、逆台形、半円形、半楕円形、三角形、順テーパー形状、逆テーパー形状が挙げられる。
【0056】
凸部の平面視形状は、特に限定されず、例えば、正方形、長方形、多角形、円形、楕円形、リングが挙げられる。
【0057】
ドット状の凸部の形状の具体例としては、柱状、錐状、先細り形状が挙げられる。柱状としては、例えば、円柱状、楕円柱状、半円柱、三角柱、四角柱、六角柱が挙げられる。錐状としては、例えば、円錐、楕円錐、三角錐、四角錐が挙げられる。先細り形状としては、例えば、半球、回転放物面、釣鐘形、鉛筆形が挙げられる。凸部の形状は、これらに近似する形状であってもよい。
【0058】
また、凸部の形状は、光学機能、撥水機能、抗菌または抗ウイルス機能等の各種の機能を発現する形状であってもよい。各種の機能を発現する形状は、公知の形状を適用できる。
【0059】
複数の凸部において、形状は同じであってもよく異なっていてもよい。
【0060】
凸部の平面視配列は、特に限定されない。平面視において、複数の凸部は、規則的に配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。
【0061】
凸部の高さは、0.05μm以上20μm以下であることが好ましく、0.08μm以上9.9μm以下であってもよい。本開示は、上記のように凸部が微細である場合に、凸部に機能性粒子を充填できる点で有用である。複数の凸部において、高さは同じであってもよく異なっていてもよい。
【0062】
なお、凸部の高さは、凸部の付け根位置から、凸部の頂点までの垂直方向の距離とする。なお、凸部の付け根位置とは、凸部の付け根の極小点を連ねた面である突起の底面と、凸部の側面とが交差する位置を指す。凸部の頂点とは、凸部の付け根の極小点を連ねた面である突起の底面から、凸部の側面における最も離れた位置を指す。凸部の付け根の極小点は、凸部の高さ方向の断面から測定される。
【0063】
また、凸部のピッチは、0.05μm以上20μm以下であることが好ましく、0.08μm以上9.9μm以下であってもよい。本開示は、上記のように凸部が微細である場合に、凸部に機能性粒子を充填できる点で有用である。複数の凸部において、ピッチは同じであってもよく異なっていてもよい。
【0064】
なお、凸部のピッチとは、隣り合う凸部の中心間の距離をいう。
【0065】
また、凸部の幅は、例えば、0.05μm以上20μm以下であることが好ましく、0.08μm以上9.9μm以下であってもよい。本開示は、上記のように凸部が微細である場合に、凸部に機能性粒子を充填できる点で有用である。複数の凸部において、幅は同じであってもよく異なっていてもよい。
【0066】
なお、凸部の幅は、凸部を平面視したときの凸部の輪郭上の2点間の最大値とする。具体的には、凸部の高さ方向の断面において、各高さでの2点間の距離を測定し、最も大きい2点間の距離を凸部の幅とする。例えば、凸部の平面視形状が長方形である場合、凸部の幅は長方形の対角線の長さとなる。また、凸部の平面視形状が多角形である場合、凸部の幅は多角形の最大の対角線長となる。また、凸部の平面視形状が円形である場合、凸部の幅は円の直径となる。また、凸部の平面視形状が楕円形である場合、凸部の幅は楕円の長径となる。また、凸部の断面形状が順テーパー形状である場合、凸部の幅は、凸部の付け根位置における底面の凸部の幅となる。また、凸部の断面形状が逆テーパー形状である場合、凸部の幅は上端面またはその近傍の面の凸部の幅となる。
【0067】
ここで、凸部の寸法は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定される。
【0068】
(3)粒子層の形成方法
粒子層が平坦である場合、粒子層の形成方法としては、基材層の一方の面に、機能性粒子およびシリコーンアルコキシオリゴマーを含有する粒子含有組成物を塗布し、シリコーンアルコキシオリゴマーを硬化する方法が挙げられる。上記粒子含有組成物は、溶媒を含有していてもよい。機能性粒子およびシリコーンアルコキシオリゴマーを含有する粒子含有組成物については、後述する。
【0069】
また、上記粒子含有組成物を含む塗膜に、電磁波の照射または加熱を行ってもよい。シリコーンアルコキシオリゴマーが付着した機能性粒子同士を結合する、または機能性粒子を再結晶化することができる。これにより、機械強度や機能をより高めることができる。また、これにより、シリコーンアルコキシオリゴマーの一部が除去されてもよい。電磁波としては、例えば、赤外線、紫外線、電子線、マイクロ波が挙げられる。また、加熱温度は、例えば、30℃以上500℃以下である。加熱時間は、例えば、0.01時間以上1000時間以下である。
【0070】
一方、粒子層が、基材層とは反対側の面に複数の凸部を有する場合、粒子層の形成方法としては、上述したように、賦型法が挙げられる。賦型法としては、例えば、基材層の一方の面に、機能性粒子およびシリコーンアルコキシオリゴマーを含有する粒子含有組成物を塗布し、上記粒子含有組成物を含む塗膜に、型を押し当てる方法や、型に、機能性粒子およびシリコーンアルコキシオリゴマーを含有する粒子含有組成物を塗布する方法が挙げられる。
【0071】
また、賦型後に、電磁波の照射または加熱を行ってもよい。電磁波の照射または加熱については、上述した通りである。
【0072】
また、上記粒子含有組成物を含む塗膜を硬化させた後に、型を取り外してもよく、あるいは、上記粒子含有組成物を含む塗膜を半硬化させた後に、型を取り外し、上記塗膜を本硬化させてもよい。
【0073】
2.基材層
本開示における基材層は、粒子層を支持する層である。
【0074】
基材層としては、粒子層を支持できるものであれば特に限定されず、例えば、樹脂フィルム、樹脂層が挙げられる。樹脂フィルムとしては、特に限定されず、公知の樹脂フィルムを用いることができる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアセタール、セルロース誘導体、ポリカーボネートが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。また、樹脂層を構成する樹脂としては、コーティングにより粒子層の凸部とは反対側の面に樹脂層を形成できる樹脂であれば特に限定されない。樹脂フィルムおよび樹脂層は、粒子含有シートの用途に応じて適宜選択される。
【0075】
基材層は、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。
【0076】
基材層の厚さは、粒子層を支持できる厚さであれば特に限定されず、粒子含有シートの用途に応じて適宜調整される。基材層の厚さは、例えば、8μm以上5mm以下である。基材層の厚さが薄すぎると、基材層の平滑性を維持できない可能性がある。基材層の厚さが厚すぎると、粒子含有シートの取り扱いが困難になる可能性がある。
【0077】
粒子層が、基材層とは反対側の面に複数の凸部を有する場合であって、粒子層の形成方法が、型に、機能性粒子およびシリコーンアルコキシオリゴマーを含有する粒子含有組成物を塗布する方法である場合において、基材層が樹脂フィルムである場合、粒子層の凸部とは反対側の面に接着層を介して樹脂フィルムを配置することができる。この際、半硬化状態の粒子層に、接着層を介して基材層を配置してもよく、本硬化後の粒子層に、接着層を介して基材層を配置してもよい。また、上記の場合において、基材層が樹脂層である場合、粒子層の凸部とは反対側の面に樹脂組成物を塗布することにより、樹脂層を形成できる。
【0078】
基材層の粒子層側の面は、表面処理が施されていてもよい。表面処理により、基材層と粒子層との密着性を向上できる。表面処理としては、例えば、コロナ処理、オゾンガス処理が挙げられる。
【0079】
3.プライマー層
本開示における粒子含有シートは、例えば図6に示すように、基材層2と粒子層3との間にプライマー層5を有することが好ましい。基材層と粒子層との密着性を向上できる。プライマー層としては、基材層および粒子層の密着性を向上できるものであれば特に限定されない。
【0080】
プライマー層の形成方法は、基材層の製膜時にプライマー層用組成物を塗布するインラインコートでもよく、基材層の製膜後にプライマー層用組成物を塗布するオフラインコートでもよい。中でも、インラインコートが好ましい。基材層およびプライマー層の密着性を向上できる。
【0081】
ここで、プライマー層がインラインコートにより形成されたものであることは、走査型電子顕微鏡(SEM)等により、粒子含有シートの厚さ方向の断面を観察することにより確認される。SEM観察において、プライマー層の厚さが容易に観察できないほど薄く、あるいはプライマー層および基材層が一体であるかのごとく観察されるならば、プライマー層の形成方法はインラインコートであると判断される。通常、プライマー層は、厚さが数百nm程度のごく薄い層であることが多い。
【0082】
4.他の層
上述したように、粒子層の凸部とは反対側の面に接着層を介して樹脂フィルムを配置する場合、接着層の材料としては、例えば、粘着剤、クッション性を有する接着性樹脂が挙げられる。粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤が挙げられる。クッション性を有する接着性樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。
【0083】
B.粒子含有組成物
本開示における粒子含有組成物は、機能性粒子と、シリコーンアルコキシオリゴマーと、溶媒と、を含有する粒子含有組成物であって、上記粒子含有組成物の固形分中の上記機能性粒子の含有量が55質量%以上99.5質量%以下であり、上記粒子含有組成物の固形分中の上記シリコーンアルコキシオリゴマーの含有量が0.5質量%以上45質量%以下である。
【0084】
本開示における粒子含有組成物は、上記粒子含有シートの粒子層の形成に好適に用いられる。
【0085】
以下、本開示における粒子含有組成物の各成分について説明する。
【0086】
1.機能性粒子
機能性粒子については、上記「A.粒子含有シート」の項に記載した機能性粒子と同様である。
【0087】
なお、機能性粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定される。機能性粒子の平均粒径とは、SEM観察により測定される、機能性粒子20個の粒径の算術平均値をいう。なお、機能性粒子の形状が球状ではない場合、粒子径は長径とする。
【0088】
粒子含有組成物の固形分中の機能性粒子の含有量は、55質量%以上であり、75質量%以上が好ましく、89質量%以上がより好ましい。また、粒子含有組成物の固形分中の機能性粒子の含有量は、99.5質量%以下であり、99質量%以下であってもよく、98質量%以下であってもよい。粒子含有組成物を用いて粒子層を形成する場合、機能性粒子の含有量が少なすぎると、機能性粒子が有する機能を十分に発揮できない可能性がある。また、機能性粒子の含有量が少なすぎると、シリコーンアルコキシオリゴマーが付着した機能性粒子同士が結合しにくくなり、粒子層の形状安定性が低下する可能性がある。一方、機能性粒子の含有量が多すぎると、シリコーンアルコキシオリゴマーの含有量が相対的に少なくなる。そのため、粒子層の強度が不足し、やがては粒子層内部から凝集破壊が生じる可能性がある。
【0089】
機能性粒子の形態は、例えば、粉体、溶媒分散体が挙げられる。
【0090】
2.シリコーンアルコキシオリゴマー
シリコーンアルコキシオリゴマーについては、上記「A.粒子含有シート」の項に記載したシリコーンアルコキシオリゴマーと同様である。
【0091】
粒子含有組成物の固形分中のシリコーンアルコキシオリゴマーの含有量は、0.5質量%以上であり、1質量%以上であってもよく、2質量%以上であってもよい。粒子含有組成物の固形分中のシリコーンアルコキシオリゴマーの含有量は、45質量%以下であり、25質量%以下であってもよく、11質量%以下であってもよい。粒子含有組成物を用いて粒子層を形成する場合、シリコーンアルコキシオリゴマーの含有量が少なすぎると、シリコーンアルコキシオリゴマーが付着した機能性粒子同士が結合しにくくなる可能性がある。一方、粒子含有組成物を用いて粒子層を形成する場合、シリコーンアルコキシオリゴマーの含有量が多いと、相対的に機能性粒子の含有量が少なくなるため、機能性粒子が有する機能を十分に発揮できない可能性がある。また、シリコーンアルコキシオリゴマーの含有量が多すぎると、シリコーンアルコキシオリゴマーが付着した機能性粒子同士の結合を阻害する可能性もある。また、シリコーンアルコキシオリゴマーの含有量が多すぎると、粒子層の凸部に機能性粒子が入り込みにくくなる可能性がある。これは、シリコーンアルコキシオリゴマーの含有量が多いと、凸部にシリコーンアルコキシオリゴマーが入り込みやすくなり、その結果、凸部に機能性粒子が入り込みにくくなると考えられる。
【0092】
3.溶媒
溶媒は、例えば、機能性粒子の溶媒分散体に含まれる溶媒である。溶媒は、機能性粒子の種類に応じて適宜選択される。溶媒としては、例えば、水、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、炭化水素、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンが挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールが挙げられる。エーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。ケトンとしては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エステルとしては、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。炭化水素としては、例えば、トルエンが挙げられる。
【0093】
4.他の成分
本開示における粒子含有組成物は、触媒を含有していてもよい。触媒としては、特に限定されず、例えば、金属有機酸塩、アルキルチタネート化合物、アミン化合物が挙げられる。金属有機酸塩に含まれる金属としては、例えば、亜鉛、マンガン、ジルコニウム、ランタン、コバルト、錫が挙げられる。
【0094】
5.粒子含有組成物の調製方法
機能性粒子をシリコーンアルコキシオリゴマーと均一に分散するために、例えば、機能性粒子を溶媒に湿潤して粒子含有組成物を調製する、あるいは、分散剤を添加して粒子含有組成物を調製することができる。これにより、粒子含有組成物中で機能性粒子を凝集することなく分散することができる。分散剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性、両性あるいは非イオン性の界面活性剤が挙げられる。中でも、溶媒に湿潤または十分に分散した機能性粒子に溶媒を少量ずつ加えながら十分に分散して均一にし、シリコーンアルコキシオリゴマーを少量ずつ加えながら十分に撹拌し、さらに超音波を用いて分散状態のよい粒子含有組成物を調製することが好ましい。粒子含有組成物は、フィルタでろ過を行い、沈殿等によって二次凝集した機能性粒子を除去したのち、塗布に供することが好ましい。
【0095】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0096】
以下、実施例および比較例を示し、本開示をさらに説明する。
【0097】
[材料]
・シリカ粒子1:日産化学工業社製のコロイダルシリカ「IPA-ST」(分散媒:イソプロピルアルコール、平均粒子径12nm、固形分30%)
・シリカ粒子2:日産化学工業社製のコロイダルシリカ「IPA-ST-L」(分散媒:イソプロピルアルコール、平均粒子径45nm、固形分30%)
・シリカ粒子3:日産化学工業社製のコロイダルシリカ「IPA-ST-ZL」(分散媒:イソプロピルアルコール、平均粒子径80nm、固形分30%)
・シリカ粒子4:日産化学工業社製のコロイダルシリカ「メタノールシリカゾル」(分散媒:メタノール、平均粒子径12nm、固形分30%)
・シリカ粒子5:日産化学工業社製のコロイダルシリカ「MEK-ST-40」(分散媒:メチルエチルケトン、平均粒子径12nm、固形分40%)
・シリカ粒子6:日産化学工業社製のコロイダルシリカ「EG-ST」(分散媒:エチレングリコール、平均粒子径12nm、固形分20%)
【0098】
・シリコーンアルコキシオリゴマー1:信越化学工業社製のメチルフェニル系アルコキシオリゴマー「KR-510」(メトキシ基量17質量%、固形分100%)
・シリコーンアルコキシオリゴマー2:信越化学工業社製のメチルフェニル系アルコキシオリゴマー「KR-9218」(メトキシ基量15質量%、固形分100%)
・シリコーンアルコキシオリゴマー3:信越化学工業社製のメチルフェニル系アルコキシオリゴマー「X-40-9227」(メトキシ基量15質量%、固形分100%)
【0099】
・基材層1:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製「コスモシャインA4100」、厚さ100μm)
・基材層2:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム社製「メリネックス542」、厚さ75μm)
【0100】
[実施例1~12および比較例1~2]
下記表1に示す組成にて、シリカ粒子(コロイダルシリカ)とシリコーンアルコキシオリゴマーとを混合して超音波分散を行い、濾過精度3μmのフィルタリングを施して、粒子含有組成物を調製した。また、凹凸構造を有する樹脂製の型を準備した。上記型において、凹部の深さは2μm、凹部のピッチは4μm、凹部の幅は2μmであった。上記型に、上記粒子含有組成物をバーコート法にて直に塗布した。次いで、塗膜を70℃で5分加熱乾燥して半硬化させた後、45℃で48時間エージングして本硬化させて、粒子層を形成した。続いて、粒子層の型とは反対側の面に、粘着剤を含む接着層付き基材層を貼り合わせた。その後、型を取り外した。
【0101】
[評価1]
(1)外観
粒子含有シートの基材層側の面に黒シートを敷いて、目視にて粒子層のおおまかな面質を観察するとともに、透過および反射型光学顕微鏡を用いて、光学倍率25倍から100倍程度にて粒子層の面質を観察した。粒子含有シートの粒子層の観察は、粒子含有シートの製造直後および製造から1週間後に行った。
【0102】
(2)密着性
粒子含有シートの粒子層側の面に、粘着テープ(ニチバン社製のセロハンテープ)をゴムローラで貼り付け、斜め45°方向にセロハンテープを引き剥がした。密着性は下記基準にて評価した。
A:粒子層の剥がれがなく、粘着テープ剥離時の凝集破壊も起こらない。
B:粒子層の剥がれがなく、粘着テープ剥離時の凝集破壊も起こらないが、粘着テープ剥離時にジップアップが起こり、剥離ムラが生じる。
C:粘着テープ剥離時の凝集破壊が起こる。
なお、「凝集破壊」とは、粘着テープ剥離時の応力により、粒子層内部から崩れ、がさがさに荒れた剥離面となることをいう。また、「粒子層の剥がれ」とは、粒子層が塗布直後あるいは1週間後までに基材層から剥がれ落ちることをいう。また、「ジップアップ」とは、密着不足あるいは凝集力不足に伴い、急な剥離が断続的に起き、剥離面に剥離方向に対して直交する横段が多数観察される状態をいう。
【0103】
(3)形状再現性
型の凹凸構造と、粒子含有シートの粒子層とを、ダイtoダイ検査方式で評価した。具体的には、型の凹凸構造における凹部の深さ、凹部のピッチ、凹部の幅と、粒子含有シートの粒子層における凸部の高さ、凸部のピッチ、凸部の幅とを、SEM観察により測定し、比較した。形状再現性は下記基準にて評価した。
A:型の凹凸構造における凹部の深さ、凹部のピッチ、凹部の幅と、粒子含有シートの粒子層における凸部の高さ、凸部のピッチ、凸部の幅とが、いずれも±3%以内で一致している。
B:型の凹凸構造における凹部の深さ、凹部のピッチ、凹部の幅と、粒子含有シートの粒子層における凸部の高さ、凸部のピッチ、凸部の幅とが、いずれも±5%以内で一致している。
C:型の凹凸構造における凹部の深さ、凹部のピッチ、凹部の幅と、粒子含有シートの粒子層における凸部の高さ、凸部のピッチ、凸部の幅とが、いずれも±20%未満で一致している。
D:型の凹凸構造における凹部の深さ、凹部のピッチ、凹部の幅と、粒子含有シートの粒子層における凸部の高さ、凸部のピッチ、凸部の幅とが、いずれも±20%以上ずれている。
【0104】
(4)賦型時の割れ
粒子含有シートの粒子層の面質について、目視、光学顕微鏡およびSEMにて観察した。光学顕微鏡観察では、倍率は100倍、観察面積は任意の1mm角とした。また、SEM観察では、倍率3000倍、観察面積は任意の100μm角とした。賦型時の割れは下記基準にて評価した。
A:目視にて割れが認められず、光学顕微鏡観察にて割れが認められず、SEM観察にて割れが認められない。
B:目視にて割れが認められず、光学顕微鏡観察にて割れが認められないが、SEM観察にて割れが認められる。
C:目視にて割れが認められないが、光学顕微鏡観察にて割れが認められる。
D:目視でも割れが認められる。
【0105】
【表1】
【0106】
比較例1では、粒子含有組成物の固形分中の機能性粒子の含有量が少なく、また凸部における機能性粒子が占める面積比率が小さいため、外観、形状再現性、賦型時の割れがいずれも劣っていた。また、比較例2では、機能性粒子の平均粒径が大きいため、形状再現性が劣っていた。これに対し、実施例1~12では、機能性粒子の平均粒径が所定の範囲内であるとともに、粒子含有組成物の固形分中の機能性粒子の含有量が所定の範囲内であり、また凸部における機能性粒子が占める面積比率が所定の範囲内であるため、比較例1に対して外観、形状再現性、賦型時の割れが良くなった。
【0107】
[実施例13~24および比較例3~4]
下記表2に示す組成にて、シリカ粒子(コロイダルシリカ)とシリコーンアルコキシオリゴマーとを混合して超音波分散を行い、濾過精度3μmのフィルタリングを施して、粒子含有組成物を調製した。次に、基材に、上記粒子含有組成物をバーコート法にて直に塗布した。次いで、塗膜を70℃で5分加熱乾燥して半硬化させた後、45℃で48時間エージングして本硬化させて、粒子層を形成した。
【0108】
[評価2]
上記評価1と同様に、外観および密着性について評価した。
【0109】
【表2】
【0110】
本開示は、以下の[1]~[3]を提供する。
[1]
基材層と、上記基材層の一方の面に配置され、機能性粒子およびバインダ成分を含有する粒子層とを有する粒子含有シートであって、
上記粒子層が、上記バインダ成分としてシリコーンアルコキシオリゴマーの硬化物を含有し、
上記粒子層の厚さ方向の断面において、上記機能性粒子が占める面積比率が40%以上99%以下であり、
上記粒子層が連続した層である、粒子含有シート。
[2]
上記機能性粒子が、金属粒子、無機酸化物粒子、無機窒化物粒子、および無機硫化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の粒子含有シート。
[3]
上記基材層と上記粒子層との間に、プライマー層を有する、[1]または[2]に記載の粒子含有シート。
【符号の説明】
【0111】
1 … 粒子含有シート
2 … 基材層
3 … 粒子層
4 … 粒子
5 … プライマー層
11 … 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6