(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115160
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/08 20060101AFI20240819BHJP
H03K 17/082 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H03K17/08 Z
H03K17/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020685
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 優孝
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX32
5J055AX34
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5J055GX00
5J055GX01
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5J055GX06
(57)【要約】
【課題】製造プロセスの簡素化およびチップ面積の削減を図る。
【解決手段】制御回路1bは、出力素子1a1がオン状態の場合に、センス素子1a2の高電位端子C1を出力素子1a1の高電位端子C2に接続し、かつセンス素子1a2の低電位端子SEを非接地にして、センス素子1a2を出力素子1a1に流れる電流を検出するための電流センス素子として機能させる。また、出力素子1a1がオフ状態の場合に、センス素子1a2の高電位端子C1と出力素子1a1の高電位端子C2との接続を遮断して高電位端子C1に定電流Irefを流し、かつセンス素子1a2の低電位端子SEを接地して、センス素子1a2を出力素子1a1の温度を検出するための温度センス素子として機能させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングして負荷を作動する出力素子と、センス素子と、を含む半導体デバイス部と、
前記出力素子がオン状態の場合に、前記センス素子の第1の高電位端子を前記出力素子の第2の高電位端子に接続し、かつ前記センス素子の低電位端子を非接地にした状態にして前記センス素子をオンして、前記センス素子を前記出力素子に流れる電流を検出するための電流センス素子として機能させ、
前記出力素子がオフ状態の場合に、前記センス素子の前記第1の高電位端子と前記出力素子の前記第2の高電位端子との接続を遮断して、前記センス素子の前記低電位端子を接地した状態で前記第1の高電位端子から定電流を流し、前記センス素子をオンして、前記センス素子を前記出力素子の温度を検出するための温度センス素子として機能させる制御回路と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記制御回路は、論理回路と、定電流源と、前記定電流源の出力端を前記センス素子の前記第1の高電位端子に対して接続または非接続にする第1のスイッチと、前記センス素子の前記低電位端子を接地または非接地にする第2のスイッチと、を備え、
前記センス素子の前記第1の高電位端子を前記出力素子の前記第2の高電位端子に対して接続または非接続にする第3のスイッチが前記半導体デバイス部の内部または外部に配置され、
前記論理回路は、前記出力素子をスイッチングするための駆動制御信号のレベルと、温度検出制御信号とのレベルにもとづいて、前記第1のスイッチのスイッチ制御を行う第1のスイッチ制御信号、前記第2のスイッチのスイッチ制御を行う第2のスイッチ制御信号および前記第3のスイッチのスイッチ制御を行う第3のスイッチ制御信号を生成して出力する、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記論理回路は、
前記出力素子をターンオンさせるレベルの前記駆動制御信号および前記センス素子を前記電流センス素子として機能させるレベルの前記温度検出制御信号が入力した場合、
前記第1のスイッチ制御信号により前記第1のスイッチをオフして前記定電流源の出力端を前記センス素子の前記第1の高電位端子に対して非接続にし、前記第2のスイッチ制御信号により前記第2のスイッチをオフして前記センス素子の前記低電位端子を非接地にし、前記第3のスイッチ制御信号により前記第3のスイッチをオンして前記センス素子の前記第1の高電位端子を前記出力素子の前記第2の高電位端子に接続して、前記センス素子を前記電流センス素子として機能させる、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記論理回路は、
前記出力素子をターンオフさせるレベルの前記駆動制御信号および前記センス素子を前記温度センス素子として機能させるレベルの前記温度検出制御信号が入力した場合、
前記第1のスイッチ制御信号により前記第1のスイッチをオンして前記定電流源の出力端を前記センス素子の前記第1の高電位端子に接続し、前記第2のスイッチ制御信号により前記第2のスイッチをオンして前記センス素子の前記低電位端子を接地し、前記第3のスイッチ制御信号により前記第3のスイッチをオフして前記センス素子の前記第1の高電位端子を前記出力素子の前記第2の高電位端子に対して非接続にして、前記センス素子を前記温度センス素子として機能させる、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記論理回路は、
セット端子、リセット端子、出力端子および第1の反転出力端子を備えるRS型フリップフロップと、クロック端子、入力端子および第2の反転出力端子を備えるD型フリップフロップとを備え、
前記RS型フリップフロップに対し、前記セット端子には、前記駆動制御信号が入力され、前記リセット端子には、前記温度検出制御信号が入力され、前記出力端子から前記第3のスイッチ制御信号が出力され、前記第1の反転出力端子から前記第1のスイッチ制御信号および前記第2のスイッチ制御信号が出力され、
前記D型フリップフロップに対し、前記クロック端子には、前記駆動制御信号が入力され、前記入力端子には、前記温度検出制御信号が入力され、前記第2の反転出力端子から前記センス素子を駆動するセンス素子用駆動制御信号が出力される、
請求項2記載の半導体装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記電流センス素子から出力されるセンス電流を電圧のセンス電流検出信号として出力する電流検出用抵抗と、前記センス電流検出信号と電流検出用基準電圧との比較により、前記出力素子の電流状態を検出する電流検出回路をさらに有する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記定電流を流した際の前記センス素子の温度特性に依存して降下する前記温度センス素子から出力されるセンス電圧検出信号と、温度検出用基準電圧との比較により、前記出力素子の温度状態を検出する温度検出回路をさらに有する、請求項1記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IPM(Intelligent Power Module)等の半導体装置には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体素子を含む半導体チップが内蔵されている。また、半導体チップには、過電流や過熱などの異常状態に対する保護機能が備えられている。
【0003】
関連技術としては、例えば、パワートランジスタが設けられた半導体基板内に一体に設けられ、定電流源より出力される定電流にもとづいて、温度に応じた電圧を発生する温度検出素子を備えるパワートランジスタの駆動回路が提案されている(特許文献1)。また、パワー半導体デバイスのメインゲート抵抗値とセンスゲート抵抗値を補正するゲート駆動回路を備えてメイン領域とセンス領域間の電流スイッチタイミングおよび過渡特性のずれを補正するパワー半導体デバイスが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-219633号公報
【特許文献2】特開2012-85131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、1つのセンス素子で温度と電流の検出を可能とする構成により製造プロセスの簡素化およびチップ面積の削減を可能にした半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、半導体装置が提供される。半導体装置は、スイッチングして負荷を作動する出力素子と、センス素子と、を含む半導体デバイス部と、出力素子がオン状態の場合に、センス素子の第1の高電位端子を出力素子の第2の高電位端子に接続し、かつセンス素子の低電位端子を非接地にした状態にしてセンス素子をオンして、センス素子を出力素子に流れる電流を検出するための電流センス素子として機能させ、出力素子がオフ状態の場合に、センス素子の第1の高電位端子と出力素子の第2の高電位端子との接続を遮断して、センス素子の低電位端子を接地した状態で第1の高電位端子から定電流を流し、センス素子をオンして、センス素子を出力素子の温度を検出するための温度センス素子として機能させる制御回路と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
1側面によれば、製造プロセスの簡素化およびチップ面積の削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】半導体装置の一例を説明するための図である。
【
図2】改善前の半導体装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】温度検出用ダイオードの温度特性を示す図である。
【
図5】スイッチのスイッチング動作を説明するための図である。
【
図6】電流検出モード時のスイッチング状態における半導体装置の構成を示す図である。
【
図7】温度検出モード時のスイッチング状態における半導体装置の構成を示す図である。
【
図12】ハイサイド回路に適用された半導体装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において実質的に同一の構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は半導体装置の一例を説明するための図である。半導体装置1は、半導体デバイス部1aと制御回路1bを備える。半導体デバイス部1aは、出力素子1a1およびセンス素子1a2を含む。
【0011】
出力素子1a1は、例えば、IGBTまたはMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)のような電圧制御型のパワー半導体素子であり、制御回路1bから出力される駆動信号s1mにもとづきスイッチングして負荷を作動する。センス素子1a2は、例えば、センスIGBTであり、制御回路1bから出力される駆動信号s1sにもとづいてスイッチングして駆動する。
【0012】
ここで、制御回路1bは、出力素子1a1がターンオン状態の場合に電流検出モードになる。例えば、駆動信号s1mがHレベル出力のとき、出力素子1a1はターンオン状態になる。
【0013】
この場合、制御回路1bは、センス素子1a2の高電位端子C1(第1の高電位端子)を出力素子1a1の高電位端子C2(第2の高電位端子)に接続し、かつセンス素子1a2の低電位端子SEを非接地にする。そして、制御回路1bは、駆動信号s1sによりセンス素子1a2をターンオン状態にして駆動し(例えば、駆動信号s1sをHレベル出力にする)、センス素子1a2を出力素子1a1に流れる電流を検出するための電流センス素子として機能させる。
【0014】
また、制御回路1bは、出力素子1a1がターンオフ状態の場合に温度検出モードになる。例えば、駆動信号s1mがLレベル出力のとき、出力素子1a1はターンオフ状態になる。
【0015】
この場合、制御回路1bは、センス素子1a2の高電位端子C1と出力素子1a1の高電位端子C2との接続を遮断して高電位端子C1に対して定電流Irefを流し、かつセンス素子1a2の低電位端子SEを接地する。そして、制御回路1bは、駆動信号s1sによりセンス素子1a2をターンオン状態にして駆動し、センス素子1a2を出力素子1a1の温度を検出するための温度センス素子として機能させる。
【0016】
このように、半導体装置1では、制御回路1bが出力素子1a1のターンオン/ターンオフの状態にもとづいて、センス素子1a2を電流センス素子または温度センス素子として機能させる構成とした。
【0017】
これにより、同一のセンス素子1a2を用いて、出力素子1a1の電流検出および温度検出の両方に対して、出力素子1a1のスイッチング状態に応じて切り分けて実行することができるので、従来のような温度検出に特化していた温度検出用ダイオードが不要となり、製造プロセスの簡素化およびチップ面積の削減が可能になる。
【0018】
次に本発明の半導体装置1の詳細を説明する前に、温度検出用ダイオードを用いる場合の半導体装置について
図2、
図3を用いて説明する。
図2は温度検出用ダイオードを用いる場合の半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置100は、IGBTチップ110および制御回路120を備える。IGBTチップ110は、メインIGBT111、センスIGBT112および温度検出用ダイオードDIを含む。制御回路120は、駆動回路121、温度検出回路122、電流検出回路123、保護回路124、定電流源IRおよびセンス抵抗Rsを含む。
【0019】
IGBTチップ110において、メインIGBT111は、駆動信号s11にもとづいてスイッチングして負荷を作動する。なお、メインIGBT111のエミッタとGNDとの間に負荷(図示せず)が接続可能である。センスIGBT112は、メインIGBT111を流れるコレクタ電流Icに比例するセンス電流Isを流す電流センス用パワー半導体素子である。また、メインIGBT111の近傍には、メインIGBT111の温度を検出する素子として温度検出用ダイオードDIが設けられている。
【0020】
コレクタ電極Cは、メインIGBT111のコレクタおよびセンスIGBT112のコレクタに接続される。メインIGBT111のゲートは、センスIGBT112のゲートおよび駆動回路121の出力端に接続される。メインIGBT111のメインエミッタは、GNDに接続される。センスIGBT112のセンスエミッタは、電流検出回路123の入力端およびセンス抵抗Rsの一端に接続される。センス抵抗Rsの他端は、GNDに接続される。
【0021】
温度検出用ダイオードDIのアノードは、温度検出回路122の入力端および定電流源IRの出力端に接続される。温度検出用ダイオードDIのカソードは、GNDに接続される。
【0022】
制御回路120において、駆動回路121は、入力端子Inを介して送信される駆動制御信号s0にもとづいて、メインIGBT111を駆動するための駆動信号s11を生成する。定電流源IRは、電源電圧Vccが印加されて定電流Irefを出力する。
【0023】
温度検出回路122は、メインIGBT111の過熱状態の検出を行う。この場合、定電流源IRから出力される定電流Irefが温度検出用ダイオードDIを流れることで生じる電位が温度検出電圧Vdiとして温度検出回路122に入力される。温度検出回路122では、温度検出電圧Vdiにもとづいて、メインIGBT111の温度状態を検出し、メインIGBT111の温度状態が過熱状態であることを検出した場合に、過熱検出信号s12を出力する。
【0024】
電流検出回路123は、メインIGBT111の過電流状態の検出を行う。この場合、駆動信号s11にもとづいてメインIGBT111がターンオンすると、センスIGBT112もターンオンして、センスIGBT112のセンスエミッタからセンス電流Isが出力される。
【0025】
また、センスIGBT112から出力されるセンス電流Isは、制御回路120に入力される。そして、センス電流Isがセンス抵抗Rsを流れることで生じる電位がセンス電圧Vsとして電流検出回路123に入力される。電流検出回路123では、センス電圧VsにもとづいてメインIGBT111の電流状態を検出し、電流状態が過電流状態であることを検出した場合に、過電流検出信号s13を出力する。
【0026】
保護回路124は、過熱検出信号s12、過電流検出信号s13の少なくとも一方を受信した場合、駆動停止信号s14を駆動回路121に出力する。駆動回路121は、駆動停止信号s14を受信すると、メインIGBT111をターンオフしてメインIGBT111の駆動を停止する。
【0027】
図3は温度検出用ダイオードの温度特性を示す図である。縦軸は温度検出電圧Vdiであり、横軸は温度である。温度検出用ダイオードDIは、温度検出電圧Vdiが温度上昇に伴って減少する負の温度特性を有している。
【0028】
したがって、定電流源IRから温度検出用ダイオードDIに向けて流れる定電流Irefにもとづく、温度検出用ダイオードDIのアノードにおける温度検出電圧Vdi(順方向電圧)は、温度上昇に伴って減少することになる。このため、温度検出回路122では、温度検出電圧Vdiが基準電圧以下となった場合に、メインIGBT111の温度状態が過熱状態であると検出する。
【0029】
ここで、上記の半導体装置100では、メインIGBT111の電流検出には、IGBTチップ110に内蔵されているセンスIGBT112を用い、メインIGBT111の温度検出には、IGBTチップ110に内蔵されている温度検出用ダイオードDIを用いている。このように、IGBTチップ110では、電流検出と温度検出には別々の素子を用い、温度検出用に温度検出用ダイオードDIが内蔵されている。本発明は、1つのセンス素子で温度と電流の検出を可能とする構成により、製造プロセスの簡素化およびチップ面積の削減を可能にした半導体装置を提供するものである。
【0030】
次に本発明の半導体装置1の構成および動作について以降詳しく説明する。
図4は半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置10は、例えば、IPMに適用される装置であり、IGBTチップ11および制御回路12を備える。IGBTチップ11は、
図1の半導体デバイス部1aに対応し、制御回路12は、
図1の制御回路1bに対応する。
【0031】
IGBT11は、メインIGBT11m、センスIGBT11sおよびスイッチsw3(第3のスイッチ)を含む。制御回路12は、ゲート駆動回路(メインIGBT)12m、ゲート駆動回路(センスIGBT)12s、温度検出回路12b、電流検出回路12c、アラーム出力・保護回路12d、論理回路12e、スイッチsw1(第1のスイッチ)、スイッチsw2(第2のスイッチ)、定電流源IRおよびセンス抵抗Rsを含む。
【0032】
温度検出回路12bは、コンパレータcmp1および温度検出用の基準電圧Vohを出力する基準電圧源を含み、コンパレータcmp1の非反転入力端子(+)に基準電圧Vohが入力される。また、電流検出回路12cは、コンパレータcmp2および電流検出用の基準電圧Vocを出力する基準電圧源を含み、コンパレータcmp2の反転入力端子(-)に基準電圧Vocが入力される。
【0033】
スイッチsw1、sw2、sw3において、スイッチsw1の第1端子a1は、スイッチsw3の第1端子a3、センスIGBT11sのコレクタおよびコンパレータcmp1の反転入力端子(-)に接続される。スイッチsw1の第2端子b1は、定電流源IRの出力端に接続される。定電流源IRの入力端には電源電圧Vccが印加される。
【0034】
スイッチsw2の第1端子a2は、GNDに接続される。スイッチsw2の第2端子b2は、センスIGBT11sのセンスエミッタ、センス抵抗Rsの一端およびコンパレータcmp2の非反転入力端子(+)に接続される。スイッチsw3の第2端子b3は、コレクタ電極CおよびメインIGBT11mのコレクタに接続される。なお、メインIGBT11mのメインエミッタおよびセンス抵抗Rsの他端は、GNDに接続される。
【0035】
ここで、ゲート駆動回路12mは、入力端子In1を介して、例えば、マイコンから送信される駆動制御信号VMINにもとづいて、メインIGBT11mをターンオン/ターンオフするための駆動信号s1mを生成し、メインIGBT11mのゲートに駆動信号s1mを出力してメインIGBT11mをスイッチングさせる。例えば、駆動信号s1mがHレベルの場合にIGBT11mはターンオンし、駆動信号s1mがLレベルの場合にIGBT11mはターンオフする。
【0036】
論理回路12eは、駆動制御信号VMINと、入力端子In2を介して、例えば、マイコンから送信される温度検出制御信号s2とにもとづいて、センスIGBT11sを駆動させるための駆動制御信号VSINを出力する。
【0037】
さらに、論理回路12eは、駆動制御信号V
MINと温度検出制御信号s2とにもとづいて、スイッチsw1、sw2、sw3をそれぞれオン/オフしてスイッチングさせるスイッチ制御信号sc1(第1のスイッチ制御信号)、スイッチ制御信号sc2(第2のスイッチ制御信号)およびスイッチ制御信号sc3(第3のスイッチ制御信号)を生成して出力する。なお、論理回路12eの内部構成については、
図9、
図10で後述する。
【0038】
ゲート駆動回路12sは、論理回路12eから出力された駆動制御信号VSIN(センス素子用駆動制御信号)にもとづいて、センスIGBT11sをターンオン/ターンオフするための駆動信号s1sを生成し、センスIGBT11sのゲートに駆動信号s1sを出力してセンスIGBT11sをスイッチングさせる。例えば、駆動信号s1sがHレベルの場合にセンスIGBT11sはターンオンし、駆動信号s1sがLレベルの場合にセンスIGBT11sはターンオフする。
【0039】
(スイッチ制御)
図5はスイッチのスイッチング動作を説明するための図である。テーブルTaは、動作モード、メインIGBTとセンスIGBTのターンオン/ターンオフ状態、温度検出制御信号s2のレベル、駆動制御信号V
MINのレベル、駆動制御信号V
SINのレベルおよびスイッチsw1、sw2、sw3のスイッチング状態(オン/オフ状態)の対応関係を示している。
【0040】
〔電流検出モード〕駆動制御信号VMINがオンしてHレベルとなり、メインIGBT11mは、ターンオン状態になる。また、温度検出制御信号s2は、温度検出モードをオフとするLレベルとなる。論理回路12eは、Hレベルの駆動制御信号VMINと、Lレベルの温度検出制御信号s2とを受信することで、駆動制御信号VSINがオンしてHレベルとなり、センスIGBT11sはターンオン状態になる。
【0041】
そして、メインIGBT11mとセンスIGBT11sとが共にターンオン状態の場合、スイッチsw1、sw2の各スイッチ制御端子は、論理回路12eから出力されるスイッチ制御信号sc1、sc2をそれぞれ受けて共にオフし、さらに、スイッチsw3のスイッチ制御端子は、論理回路12eから出力されるスイッチ制御信号sc3を受けてオンする。このようなスイッチ状態になると、センスIGBT11sは電流センス素子として機能して、制御回路12は電流検出モードになる。
【0042】
〔温度検出モード〕駆動制御信号VMINがオフしてLレベルとなり、メインIGBT11mは、ターンオフ状態になる。また、温度検出制御信号s2は、温度検出モードをオンとするためのHレベルとなる。論理回路12eは、Lレベルの駆動制御信号VMINと、Hレベルの温度検出制御信号s2とを受信することで、駆動制御信号VSINがオンしてHレベルとなり、センスIGBT11sはターンオン状態になる。
【0043】
そして、メインIGBT11mがターンオフ状態であり、センスIGBT11sがターンオン状態の場合、スイッチsw1、sw2の各スイッチ制御端子は、論理回路12eから出力されるスイッチ制御信号sc1、sc2をそれぞれ受けて共にオンし、さらに、スイッチsw3のスイッチ制御端子は、論理回路12eから出力されるスイッチ制御信号sc3を受けてオフする。このようなスイッチ状態になると、センスIGBT11sは温度センス素子として機能して、制御回路12は温度検出モードになる。
【0044】
(電流検出モード)
図6は電流検出モード時のスイッチング状態における半導体装置の構成を示す図である。電流検出モードでは、上述のように、スイッチsw1がオフ、スイッチsw2がオフ、スイッチswがオンとなる。
【0045】
スイッチsw1がオフすると、定電流源IRの出力端と、センスIGBT11sのコレクタ(第1の高電位端子)とが非接続になる。スイッチsw2がオフすると、センスIGBT11sのセンスエミッタ(低電位端子)が非接地になる。スイッチsw3がオンすると、センスIGBT11sのコレクタと、メインIGBT11mのコレクタ(第2の高電位端子)とが接続される。
【0046】
このようなスイッチ状態において、センスIGBT11sのセンスエミッタから出力されるセンス電流Isが電流検出回路12cに向けて流れる。また、センス抵抗Rsの一端が電流検出回路12cのコンパレータcmp2の非反転入力端子(+)に接続され、センス抵抗Rsの他端がGNDに接続されているから、センス電流Isがセンス抵抗Rsを流れることで生じる電位がセンス電圧Vsとしてコンパレータcmp2に入力される。
【0047】
コンパレータcmp2では、センス電圧Vsと電流検出用の基準電圧Vocとを比較し、センス電圧Vsが基準電圧Voc以上の場合にメインIGBT11mの電流状態が過電流状態であることを検出し、過電流検出信号s4(Hレベル)を出力する。
【0048】
(温度検出モード)
図7は温度検出モード時のスイッチング状態における半導体装置の構成を示す図である。温度検出モードでは、上述のように、スイッチsw1がオン、スイッチsw2がオン、スイッチsw3がオフとなる。
【0049】
スイッチsw1がオンすると、定電流源IRの出力端と、センスIGBT11sのコレクタとが接続される。スイッチsw2がオンすると、センスIGBT11sのセンスエミッタが接地する。スイッチsw3がオフすると、センスIGBT11sのコレクタと、メインIGBT11mのコレクタとが非接続になる。
【0050】
このようなスイッチ状態において、定電流源IRから出力される定電流IrefがセンスIGBT11sに流れる。このときのセンスIGBT11sに生じる電位であるコレクタ-センスエミッタ間電圧がメインIGBT11mの温度状態を示す温度検出電圧Vsceとして温度検出回路12bのコンパレータcmp1に入力される。
【0051】
コンパレータcmp1は、温度検出電圧Vsceと、温度検出用の基準電圧Vohとを比較し、比較結果にもとづいてメインIGBT11mの温度状態が過熱状態であることを検出した場合に、過熱検出信号s3(Hレベル)を出力する。
【0052】
図8はセンスIGBTの温度特性を示す図である。縦軸は温度検出電圧Vsceであり、横軸は温度である。センスIGBT11sは、温度検出電圧Vsceが温度上昇に伴って減少する負の温度特性を有している。
【0053】
したがって、定電流源IRからセンスIGBT11sに向けて流れる定電流Irefにもとづく、センスIGBT11sのコレクタ-センスエミッタ間における温度検出電圧Vsceは、温度上昇に伴って減少することになる。このため、温度検出回路12bのコンパレータcmp1では、温度検出電圧Vsceが基準電圧Voh以下となった場合に、メインIGBT11mの温度状態が過熱状態であると検出する。
【0054】
(アラーム出力および保護)
アラーム出力・保護回路12dは、過熱検出信号s3、過電流検出信号s4の少なくとも一方を受信した場合に、出力端子ALMを介して、アラーム信号s6を出力してアラーム状態を外部に通知する。また、アラーム出力・保護回路12dは、過熱検出信号s3、過電流検出信号s4の少なくとも一方を受信した場合、駆動停止信号s5をゲート駆動回路12mに出力する。ゲート駆動回路12mは、駆動停止信号s5を受信すると、メインIGBT11mをターンオフしてメインIGBT11mの駆動を停止する。
【0055】
(論理回路の構成例)
図9、
図10は論理回路の構成の一例を示す図である。論理回路12eは、RS型フリップフロップ12e1およびD型フリップフロップ12e2を備える。
【0056】
図9に示すRS型フリップフロップ12e1において、セット端子(S)には、駆動制御信号V
MINが入力され、リセット端子(R)には、温度検出制御信号s2が入力される。また、出力端子Qからスイッチ制御信号sc3が出力され、反転出力端子QNからの出力は、スイッチ制御信号sc1、sc2になる。
【0057】
ここで、RS型フリップフロップ12e1の真理値表T1において、(VMIN、s2)=(S、R)=(0、0)のとき、(sc3、sc1/sc2)=(Q、QN)=(保持、保持)となり、出力レベルが保持される。
【0058】
また、(VMIN、s2)=(S、R)=(0、1)のとき、(sc3、sc1/sc2)=(Q、QN)=(0、1)となり、温度検出モードになる。すなわち、スイッチ制御信号sc3がLレベル、スイッチ制御信号sc1、sc2がHレベルになるので、スイッチsw3がオフ、スイッチsw1、sw2がオンして、センスIGBT11sは温度センス素子となり、温度検出モードになる。
【0059】
さらに、(VMIN、s2)=(S、R)=(1、0)のとき、(sc3、sc1/sc2)=(Q、QN)=(1、0)となり、電流検出モードになる。すなわち、スイッチ制御信号sc3がHレベル、スイッチ制御信号sc1、sc2がLレベルになるので、スイッチsw3がオン、スイッチsw1、sw2がオフして、センスIGBT11sは電流センス素子となり、電流検出モードになる。
【0060】
なお、(VMIN、s2)=(S、R)=(1、1)のとき、(sc3、sc1/sc2)=(Q、QN)=(禁止、禁止)となる(VMIN=s2=Hレベルとする設定は行わない)。
【0061】
一方、RS型フリップフロップ12e1は、2入力1出力の否定論理和素子(NOR素子)IC1、IC2を含む。NOR素子IC1の一方の端子は、リセット端子(R)になり、NOR素子IC2の一方の端子は、セット端子(S)になる。NOR素子IC1の出力端子は、出力端子Qになり、NOR素子IC2の出力端子は、反転出力端子QNになる。NOR素子IC1の他方の入力端子は、NOR素子IC2の反転出力端子QNに接続され、NOR素子IC2の他方の入力端子は、NOR素子IC1の出力端子Qに接続される。
【0062】
図10に示すD型フリップフロップ12e2において、クロック端子(CLK)には、駆動制御信号V
MINが入力され、入力端子(D)には、温度検出制御信号s2が入力される。また、反転出力端子QNから駆動制御信号V
SINが出力される(出力端子Qは未使用である)。
【0063】
ここで、D型フリップフロップ12e2の真理値表T2において、(VMIN、s2)=(CLK、D)=(0、0)のとき、VSIN=QN=保持となり、出力レベルが保持される。(VMIN、s2)=(CLK、D)=(0、1)のとき、VSIN=QN=保持となり、出力レベルが保持される。
【0064】
また、(VMIN、s2)=(CLK、D)=(1、0)のとき、VSIN=QN=1となり、センスIGBT11sがターンオン状態になる。なお、(VMIN、s2)=(CLK、D)=(1、1)のとき、VSIN=QN=0となるが、VMIN=s2=Hレベルとする設定は行わないので、この論理状態は使用しない。
【0065】
一方、D型フリップフロップ12e2は、2入力1出力の否定論理積素子(NAND素子)IC11、IC12、IC13、IC14を含む。NAND素子IC11の一方の端子は、入力端子(D)になり、NAND素子IC12の一方の端子は、クロック端子(CLK)になる。NAND素子IC13の出力端子は、出力端子Qになり、NAND素子IC14の出力端子は、反転出力端子QNになる。
【0066】
NAND素子IC11の他方の入力端子は、クロック端子(CLK)に接続される。NAND素子IC12の他方の入力端子は、NAND素子IC11の出力端子およびNAND素子IC13の一方の入力端子に接続される。
【0067】
NAND素子IC12の出力端子は、NAND素子IC14の一方の入力端子に接続される。NAND素子IC13の他方の入力端子は、NAND素子IC14の反転出力端子QNに接続され、NAND素子IC14の他方の入力端子は、NAND素子IC13の出力端子Qに接続される。
【0068】
(半導体装置の変形例)
図11は半導体装置の変形例を示す図である。半導体装置10aでは、スイッチsw3がIGBTチップ11-1の外部に配置されるものであり、その他の構成は
図4と同じである。スイッチsw3の第1端子a3は、端子Csenceを介して、コンパレータcmp1の反転入力端子(-)、スイッチsw1の第1端子a1およびセンスIGBT11sのコレクタに接続される。スイッチsw3の第2端子b3は、コレクタ電極Cと、端子Cmainを介してメインIGBT11mのコレクタに接続される。
【0069】
このように、IGBTチップ11-1にはメインIGBT11mおよびセンスIGBT11sを内蔵させ、スイッチsw3を外部に配置する外付けタイプにすることにより、IGBTチップ11-1の回路規模の削減が可能になる。
【0070】
(ハイサイド回路への適用)
図12はハイサイド回路に適用された半導体装置の一例を示す図である。上述の半導体装置10はローサイド回路に適用した場合の構成を示したが、
図12の半導体装置10bは、ハイサイド回路に適用した場合の構成である。
【0071】
半導体装置10bでは、メインIGBT11mのエミッタが、スイッチsw2の第1端子a2、センス抵抗Rsの他端、基準電圧Vocを出力する基準電圧源の負極側端子および基準電圧Vohを出力する基準電圧源の負極側端子に接続される。その他の構成は
図4と同じである。
【0072】
以上説明したように、本発明によれば、センス素子を出力素子の電流検出および温度検出の両方に使用可能な構成としたため、温度検出用ダイオードが不要となり、製造プロセスが簡素化され、さらにチップ面積の削減の効果を得ることができる。
【0073】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。例えば、出力素子としてSiC(シリコンカーバイド)などのワイドバンドギャップ半導体を用いてもよい。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 半導体装置
1a 半導体デバイス部
1a1 出力素子
1a2 センス素子
1b 制御回路
C1 第1の高電位端子
C2 第2の高電位端子
SE 低電位端子
s1m 駆動信号(出力素子用)
s1s 駆動信号(センス素子用)
Iref 定電流