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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115181
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】段差解消機
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20240819BHJP
   E01F 1/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B61B1/02
E01F1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020726
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】309024907
【氏名又は名称】マシン・テクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522374858
【氏名又は名称】株式会社フォーステック
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加瀬部 強
(72)【発明者】
【氏名】福藤 浩明
【テーマコード(参考)】
2D101
3D101
【Fターム(参考)】
2D101CA17
2D101CB07
2D101EA03
2D101FA33
2D101GA32
2D101HA03
2D101HA06
2D101HA13
2D101HA16
2D101HB02
2D101HB06
3D101AD03
3D101AD20
(57)【要約】
【課題】車両との接触の恐れがある場合など、緊急時に瞬時に原点(収納状態)に復帰できる段差解消機を提供することである。
【解決手段】段差解消機100はプラットホーム200に埋設され、列車乗降口との間の隙間及び段差を解消する段差解消機100であって、回動可能に軸支された回動面110と、回動面にスライド可能に取り付けられた伸縮面120と、逆V字型のリンク機構300により回動面を上下昇降する上下昇降機構と、伸縮面120をスライド移動させるスライド機構と、回動面110または伸縮面120に設けられた複数のセンサーからなる検知センサーと、上下昇降機構、スライド機構および検知センサーを制御する制御部500と、段差解消機100を収納状態に復帰させる緊急原点復帰機構560とを含む。
【選択図】図25

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームに埋設され、列車乗降口との間の隙間及び段差を解消する段差解消機であって、
回動可能に軸支された回動面と、
前記回動面にスライド可能に取り付けられた伸縮面と、
逆V字型のリンク機構により前記回動面を上下昇降する上下昇降機構と、
前記伸縮面をスライド移動させるスライド機構と、
前記回動面または前記伸縮面に設けられた複数のセンサーからなる検知センサーと、
前記上下昇降機構、前記スライド機構および前記検知センサーを制御する制御部と、を含み、
前記上下昇降機構および前記スライド機構はそれぞれ、モータの回転をねじにより直線運動に変換する駆動変換機構と、通常は前記直線運動を前記逆V字型のリンク機構または前記伸縮面に伝達し、緊急時には前記直線運動の前記逆V字型のリンク機構または前記伸縮面への伝達を解除し、段差解消機を収納状態に復帰させる緊急原点復帰機構とを備える、段差解消機。
【請求項2】
前記緊急原点復帰機構は、長手方向に直交する半円形状の凹部を備えた柱状のプッシャーと前記プッシャーの前記長手方向に直交する円柱形のプッシャー駆動部材とを備え、前記プッシャー駆動部材は一部の断面が半円形状であって、
前記プッシャー駆動部材の半円形状の部分を前記凹部に係合させることによって前記プッシャー駆動部材の直線運動を、前記プッシャーを介して前記逆V字型のリンク機構または前記伸縮面へ伝達し、緊急時には前記プッシャー駆動部材を回転することによって前記プッシャー駆動部材の前記凹部への係合を解除する、請求項1に記載の段差解消機。
【請求項3】
前記プッシャーおよび前記プッシャー駆動部材は、SUS440Cを焼き入れし焼き戻してロックウェルCスケール硬度(HRC)を58以上60以下とした、請求項2に記載の段差解消機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差解消機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特開2022-55909号公報)には、車両の下側から車両とプラットフォームの隙間を埋めるステップがせり出してくる装置は、ステップの部分の長さが固定で、駅毎に変化する隙間を好適に埋めることができない場合を改善した乗降補助装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の乗降補助装置は、車両の台枠下に載置され、車両とプラットフォームの隙間を埋める乗降補助装置であって、天板と、天板に固定された蛇腹式伸縮部と、蛇腹式伸縮部に空気を出し入れする空気制御部と、天板の移動を規制するガイド部を有し、天板は車両とプラットフォームとの隙間に応じて長さが変化するものである。
【0004】
例えば、特許文献2(特開2021-41827号公報)には、駅のホーム縁端と車両乗降口との間の隙間及び段差にばらつきがあっても、その隙間及び段差を低減する隙間段差低減システムが開示されている。
【0005】
特許文献2に記載の隙間段差低減システムは、駅のホーム縁端と車両乗降口との間の隙間及び段差を低減するための隙間段差低減システムであって、ホーム縁端と車両乗降口との間の隙間量及び段差量を検知するための検知部と、駅に停車する車両の扉位置に対応してホーム縁端部に設けられるスライド昇降部と、スライド昇降部の動きを制御する制御部とを備え、スライド昇降部は、車両側に張り出すとともに先端側が上昇した張出状態と、張り出していない収納状態とを有し、張出状態における張出量及び先端側の上昇量が調整可能であり、制御部は、検知された隙間量及び段差量に基づいて、張出状態における張出量及び上昇量を調整するものである。
【0006】
例えば、特許文献3(特開平5-42869号公報)には、移動中のステップ部材上に乗降客が位置したとき、ステップ部材上に乗降客が位置していて駆動部が故障したときなどに、客の安全を確保するプラットホームのステップ装置が開示されている。
【0007】
特許文献3に記載のプラットホームのステップ装置は、車両とプラットホームの縁との間に生じる隙間を塞ぐプラットホーム用ステップ装置において、プラットホームの下側に水平方向に進退自在な出入り動作部と、この出入り動作部の先端に取り付けられるスライド台と、このスライド台をプラットホームの下側から隙間の下方位置に進退させる出入り駆動部とを設け、スライド台に水平方向と直交する上下方向に昇降自在な昇降動作部を介してステップ部材を設け、昇降動作部にこのステップ部材をプラットホームの上面に一致する高さ位置と隙間の下方位置との間を昇降させる昇降駆動部を設けたものである。
【0008】
例えば、特許文献4(特開2002-104175号公報)には、装置構成が比較的簡単で、設置工事が容易であり、かつ、装置の仕様変更に容易に対応することができ、さらにホームドアと一体化することができる乗降補助装置が開示されている。
【0009】
特許文献4に記載の乗降補助装置は、プラットホーム上の停車車両の乗降口に対応する位置に設置され、車両停車時に開閉動作をするホームドアと、上記ホームドアを収納する戸袋とを備えたホームドア・システムに適用される乗降補助装置であって、停車車両の乗降口に対応するプラットホーム上の上記ホームドアの下方に配置され、上面がプラットホーム面に一致するように設置され、車両側端がホーム面から上昇するように傾動可能に支持されたホームステップ・ユニットと、上記ホームステップ・ユニット内にスライド可能に取付けられ、車両停車時は乗降口に向かって前進し、車両不在時にはホームステップ・ユニット内に後退するステップと、上記ホームステップ・ユニット内に設けられ、上記ステップを前進/後退させる第1の駆動機構と、上記ホームステップ・ユニットの車両側端を上昇/下降させる第2の駆動機構を備え、該第2の駆動機構は戸袋内に設けたものである。
【0010】
例えば、特許文献5(特開2002-37055号公報)には、装置構成が比較的簡単で、設置工事が容易であり、かつ、装置の仕様変更に容易に対応することができ、さらにホームドアと一体化することができる乗降補助装置が開示されている。
【0011】
特許文献5に記載の乗降補助装置は、プラットホーム上の停車車両の乗降口に対応する位置に設置され、車両停車時に開閉動作をするホームドアと、上記ホームドアを収納する戸袋とを備えたホームドア・システムに適用される乗降補助装置であって、停車車両の乗降口に対応するプラットホーム上の上記ホームドアの下方に配置され、上面がプラットホーム面に一致するように設置され、車両側端がホーム面から上昇するように傾動可能に支持されたホームステップ・ユニットと、上記ホームステップ・ユニット内にスライド可能に取付けられ、車両停車時は乗降口に向かって前進し、車両不在時にはホームステップ・ユニット内に後退するステップと、上記ホームステップ・ユニット内に設けられ、上記ステップを前進/後退させる第1の駆動機構と、上記ホームステップ・ユニットの下方に配置され、上記ホームステップ・ユニットの車両側端を上昇/下降させる第2の駆動機構と、上記第1の駆動機構と、第2の駆動機構を制御する制御部とを備え、該制御部が、戸袋内に設けられているものである。
【0012】
例えば、特許文献6(特開2005-225310号公報)には、プラットホームと車両の間の隙間を塞ぐと同時に、車両のステップ面とプラットホーム上面の段差を滑らかな傾斜でつなぐことができ、かつ、設置容易にして工事期間を短くし、コストの安価な車両とホームの隙間調整装置が開示されている。
【0013】
特許文献6に記載の隙間調整装置は、プラットホーム上に設置され、車両とプラットホーム間の隙間を調整するための隙間調整装置において、上記プラットホーム上に設置された機枠に一端が回転可能に支持され、かつ他端を車両のフロア位置に応じて上下方向に揺動して車両とプラットホーム間の隙間を調整するステップ板を設け、このステップ板を揺動する駆動機構を、上記機枠に設けたものである。
【0014】
例えば、特許文献7(特開平9-20235号公報)には、車椅子使用者が車椅子による移動で列車に容易に安全に乗降できる列車乗降補助装置が開示されている。
【0015】
特許文献7記載の列車乗降補助装置は、先端縁が停車車両の乗降口に対応するプラットホームの線路側端部に位置し上面がプラットホーム上面に一致するように設けたスロープ板と、このスロープ板を先端縁が乗降口の床面高さに上昇するように傾動させる傾動装置と、先端縁が乗降口の床のプラットホーム側端縁に達する位置にスロープ板を移動させる進退駆動装置と、この進退駆動装置に設けられ車両の揺動に追従してスロープ板を進退させる緩衝装置とを有するものである。
【0016】
また、特許文献8(特許第7170956号公報)には、異常と関連性の低い冗長なデータを含んだ膨大なデータを解析し、異常診断の精度が低下してしまうことの無い異常診断装置および異常診断方法が開示されている。
【0017】
特許文献8記載の異常診断装置は、モータまたはモータによって駆動される駆動機械の動作を規定する指令値を生成する指令生成部と、指令値にモータまたは駆動機械の動作が追従するように、制御ゲインに基づいてモータをフィードバック制御する駆動制御部と、制御ゲインから決まる制御帯域と、駆動機械から決まる閾値との比較結果に基づいて、モータまたは駆動機械の状態を示す時系列データの中から選択して選択時系列データを切り替えるデータ切替部と、選択時系列データに基づいて、モータまたは駆動機械の異常状態を判定する異常判定部と、を備える。
【0018】
また、特許文献9(特開2021-022074号公報)には、ロボットの故障を正確に予測することができる故障予測システムが開示されている。
【0019】
特許文献9の故障予測システムは、与えられる作業プログラムに従って動作しているロボットの駆動軸のトルク値を収集するトルク値収集部と、トルク値収集部が収集したトルク値の中から直近のトルク値の時間変化を近似する評価式を導出する評価式導出部と、評価式と過去に駆動軸が故障に至ったときのトルク値の時間変化とに基づいて、駆動軸の故障が発生すると判断されるトルク値である故障閾値を設定する閾値設定部と、評価式において予め設定される予測時間が経過したときのトルク値の推測値を算出し、推測値と故障閾値との比較により予測時間内に駆動軸の故障が予測されるか否かを判断する予測判断部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2022-55909号公報
【特許文献2】特開2021-41827号公報
【特許文献3】特開平5-42869号公報
【特許文献4】特開2002-104175号公報
【特許文献5】特開2002-37055号公報
【特許文献6】特開2005-225310号公報
【特許文献7】特開平9-20235号公報
【特許文献8】特許第7170956号公報
【特許文献9】特開2021-022074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
プラットホームに埋設され、列車乗降口との間の隙間及び段差を解消する段差解消機に関しては、近年においても、現実としては、段差解消を行うために、駅員がスロープ台を運んで、車椅子の乗客対応をしているのが現状であり、種々の技術が公開されているが、使用環境に耐え、実現できる技術が成り立っていないという大きな課題がある。
【0022】
特許文献1記載の技術では、蛇腹式を採用しているが、蛇腹式では原点復帰が困難で故障時のリスクが高いと考えられる。また、特許文献2または特許文献3記載の技術では、パンダグラフ方式の昇降システムを採用しているが、重量に対する動作が遅く、速度を高めると故障が増加するという課題が残ってしまう。また、特許文献2の場合は、スライド昇降部全体がスライドすることによって隙間を解消しており、その結果、スライド昇降部にかかる負荷が重くなるとの課題もある。
また、特許文献4または特許文献5の技術では、第2の駆動機構がプラットホーム上またはプラットホーム下の避難場所に現れるため、ユーザフレンドリーとは言えない。
特許文献6の技術では、第1連結棒および第2連結棒が必要となり、大きな動力の駆動装置が必要となる。また、特許文献6の場合は、ステップ板がプラットホームの端部に回動可能に固定されており、ステップ板の端部はプラットホームの端部から一定の距離の位置にしか移動できないとの課題もある。同様に、特許文献7の技術では、大きな動力の駆動装置が必要となる。
【0023】
また、段差解消機は多くの乗降客が列車に乗降するプラットホームに設置されるため、故障した場合には混乱が予想される。従来は、このような設備では、一定「期間」ごとに段差解消機の部品交換などのメンテナンスを行い、故障を未然に防ぐTBM(Time Based Maintenance:時間基準保全)が実行されていた。
しかし、TBMの場合、故障していなくても、営業時間外の夜間作業にて一定期間利用した部品交換等の保全作業を実施する為、見切り交換により無駄な費用が発生していた。
これに対して、段差解消機の「状態」の計測や監視を行い、故障の前兆を検知してメンテナンスを行い、故障を未然に防ぐCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)による保全方法があるが、CBMを採用するためには故障の前兆を確実に検知する必要がある。
【0024】
特許文献8の異常診断装置では、制御ゲインから決まる制御帯域によって、異常検知に用いる測定値をモータ電流と制御位置とで切り替えることを特徴としているが、異常検知の方法自体は、例えばクラスタリング、主成分分析などが挙げられるとのみ記載されている。
また、特許文献9の故障予測システムでは、直近のトルク値の時間変化を近似する評価式を導出し、評価式において予め設定される予測時間が経過したときのトルク値の推測値を算出し、推測値と故障閾値との比較により予測時間以内に駆動軸の故障が予測されるか否かを判断する。しかし、評価式に関しては、一次の関数、例えばY(t)=at+b(a,bは定数)を用いることができるとしか記載されていないが、実環境においては、雨や雪が多い場所、平均気温が高いもしくは低い場所など、使用環境によって指数関数、あるいは累乗関数に類似する場合もあることから、一次の関数に限定した場合には予測精度が低くなる。
【0025】
また、段差解消機では、車両との接触の恐れがある場合など、緊急時に瞬時に原点(収納状態)に復帰できることが重要である。特許文献6には車両が進入して、衝突部材に接触するとステップ板を収納部内に復帰させて車両との接触を防止する機構が記載されているが、特許文献6の構造ではステップ板の端部がプラットホームの端部から一定の距離の位置にしか移動できないとの課題がある。
【0026】
本発明の第1の目的は、それらの問題に鑑み、車両との接触の恐れがある場合など、緊急時に瞬時に原点(収納状態)に復帰できる段差解消機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(1)
一局面に従う段差解消機は、プラットホームに埋設され、列車乗降口との間の隙間及び段差を解消する段差解消機であって、回動可能に軸支された回動面と、回動面にスライド可能に取り付けられた伸縮面と、逆V字型のリンク機構により回動面を上下昇降する上下昇降機構と、伸縮面をスライド移動させるスライド機構と、回動面または伸縮面に設けられた複数のセンサーからなる検知センサーと、上下昇降機構、スライド機構および検知センサーを制御する制御部と、を含み、上下昇降機構およびスライド機構はそれぞれ、モータの回転をねじにより直線運動に変換する駆動変換機構と、通常は直線運動を逆V字型のリンク機構または伸縮面に伝達し、緊急時には直線運動の逆V字型のリンク機構または伸縮面への伝達を解除し、段差解消機を収納状態に復帰させる緊急原点復帰機構とを備える。
【0028】
段差解消機の設置にあたっては、車両との接触の恐れがある場合など、緊急時に瞬時に原点(収納状態)に復帰できることが重要である。原点に復帰させるには、逆V字型のリンク機構を平坦な状態に復帰させるとともに伸長した伸縮面をもとの状態に戻す必要がある。すなわち、逆V字型のリンク機構を押し出しているプッシャと伸縮面を押し出しているプッシャとを引き戻す必要がある。
この、プッシャを引き戻す方法として、上下昇降機構およびスライド機構を駆動するモータを取付けているベースごと移動させる方式も考えられるが、この場合には機構的に複雑で固定部品の強度を確保するために大掛かりな機構となる。
第5の局面に従う段差解消機では、駆動変換機構と逆V字型のリンク機構または伸縮面との間に緊急原点復帰機構を設け、緊急時には駆動変換機構の直線運動の逆V字型のリンク機構または伸縮面への伝達を解除することにより、比較的簡単な構造で逆V字型リンクおよび伸縮面の原点復帰を実現している。
【0029】
(2)
第2の発明に係る段差解消機は、一局面に従う段差解消機において、緊急原点復帰機構は、長手方向に直交する半円形状の凹部を備えた柱状のプッシャーとプッシャーの長手方向に直交する円柱形のプッシャー駆動部材とを備え、プッシャー駆動部材は一部の断面が半円形状であって、プッシャー駆動部材の半円形状の部分を凹部に係合させることによってプッシャー駆動部材の直線運動をプッシャーを介して逆V字型のリンク機構または伸縮面に伝達し、緊急時にはプッシャー駆動部材を回転することによってプッシャーの凹部への係合を解除してもよい。
【0030】
この場合、プッシャー駆動部材を駆動変換機構に固定し、通常はプッシャー駆動部材の半円形状の部分をプッシャーの凹部に係合させることによって、駆動変換機構の直線運動を逆V字型のリンク機構または伸縮面に伝達し、緊急時にはプッシャー駆動部材を約180度回転することによってプッシャー駆動部材の凹部への係合を解除し、段差解消機を収納状態に復帰させることができる。
【0031】
(3)
第3の発明に係る段差解消機は、第2の発明に従う段差解消機において、プッシャーおよびプッシャー駆動部材は、SUS440Cを焼き入れし焼き戻してロックウェルCスケール硬度(HRC)を58以上60以下としてもよい。
【0032】
緊急原点復帰機構には差台で1000kg程度の負荷荷重が印加される。このため、緊急原点復帰機構のプッシャーおよびプッシャー駆動部材には硬度の高いものを使用する必要がある。
SKD(合金工具鋼)またはSUJ(高炭素クロム軸受鋼)等の鋼材で焼き入れし硬度を同等にしたものでも使用できるが、雨水等による錆防止のためSUS材を使用した方が良い。
【0033】
(Z)
本発明の第2の目的は、それらの問題に鑑み、容易にわずかな駆動力で段差を解消することができる段差解消機およびプラットホームを提供することである。
本発明の第3の目的は、状態基準保全に用いることができる正確な故障予測機能を備えた段差解消機を提供することである。
本発明の他の目的は、それらの問題に鑑み、容易にわずかな駆動力で段差を解消することができ、状態基準保全に用いることができる正確な故障予測機能を備えた段差解消機およびプラットホームを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、それらの問題に鑑み、容易にわずかな駆動力で段差を解消することができ、車両との接触の恐れがある場合など、緊急時に瞬時に原点(収納状態)に復帰できる段差解消機およびプラットホームを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、状態基準保全に用いることができる正確な故障予測機能を備え、車両との接触の恐れがある場合など、緊急時に瞬時に原点(収納状態)に復帰できる段差解消機を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、本発明の他の目的は、それらの問題に鑑み、容易にわずかな駆動力で段差を解消することができ、状態基準保全に用いることができる正確な故障予測機能を備え、車両との接触の恐れがある場合など、緊急時に瞬時に原点(収納状態)に復帰できる段差解消機およびプラットホームを提供することである。
【0034】
(A)
Aの局面に従う段差解消機は、プラットホームに埋設され、列車乗降口との間の隙間及び段差を解消する段差解消機であって、回動可能に軸支された回動面と、回動面にスライド可能に取り付けられた伸縮面と、逆V字型のリンク機構により回動面を上下昇降する上下昇降機構と、伸縮面をスライド移動させるスライド機構と、回動面または伸縮面に設けられた複数のセンサーからなる検知センサーと、上下昇降機構、スライド機構および検知センサーを制御する制御部と、を含み、逆V字型のリンク機構は、列車乗降口側の端部に固定された固定軸と、固定軸と同じ高さに位置し、上下昇降機構により固定軸との距離を制御可能な可動軸と、逆V字の頂点に位置し回動面を支えるリンク軸とを備え、固定軸、可動軸、およびリンク軸は回動可能であって、制御部は、検知センサーの複数のセンサーのうち少なくとも1のセンサーからの情報に応じて上下昇降機構を駆動し始めた後、スライド機構を駆動し、可動軸とリンク軸との距離が固定軸とリンク軸との距離の1.5倍以上2.5倍以下である。
【0035】
この場合、回動面の端部を逆V字型のリンク機構により上下昇降させるので、わずかな駆動力で駆動させることができる。その結果、駆動装置のモータ回転数を削減することができ、コストダウンを実現することができる。
また、従来のパンダグラフ方式では、作用点となる部分が連結されているため、調整が複雑になったり、伸長動作を行う場合に、リフト機構自体を大きく移動させたりする必要があるという課題が多かった。さらに、作用点となる部分が連結されているため、負荷荷重が大きくなってしまうという課題もあった。
一方、本発明における段差解消機は、逆V字型のリンク機構により作用点の負荷荷重を低減することができ、回動動作の後に伸長動作を行うことができるため、段差解消機自体の機構を簡略化することができる。
なお、段差解消機はさらにプラットホームの高さに固定された上部面を備え、回動面を上部面の列車乗降口側に回動可能に軸支することが望ましいが、上部面をなくし、回動面を段差解消機の列車乗降口に対向する側の端部に回動可能に軸支するように構成してもよい。
【0036】
また、Aの局面に従う段差解消機の逆V字型のリンク機構は可動軸とリンク軸との距離と固定軸とリンク軸との距離との比(以降、リンク比ともいう)を1.5倍以上2.5倍以下としている。
これは、リンク比を1.5以上にすることによって、可動軸の水平ストロークを小さくすることができる、可動軸の垂直方向の負荷荷重を小さくすることができる、および、リンク軸の位置を回動面のより先端側に移動させ、モーメント荷重負荷の作用点を先端に近づけることができるとの効果が得られるためである。
一方、リンク比が2.5倍を超えると、可動軸の水平方向の自重負荷時必要推力が大きくなる、および、逆V字型リンク機構全体の初期長さが長くなる、との課題が発生する。
また、可動軸駆動における安全性確保のために可動軸の駆動速度を制限する場合、逆V字型リンクの高さ調整に要する時間(以降作動時間ともいう)は可動軸の水平ストロークと自重負荷時必要推力との積に依存するが、リンク比が大きくなると水平ストロークは小さくなり、自重負荷時必要推力は大きくなることから、作動時間はリンク比1.5倍付近で最も短くなる。
このため、リンク比を1.5倍以上2.5倍以下とすることが望ましい。
【0037】
(B)
第Bの発明にかかる段差解消機は、Aの局面に従う段差解消機において、上下昇降機構は、メンテナンス機構をさらに含み、メンテナンス機構は、メンテナンスの場合に、軸回転により回動面の端部を90度近くまで回転できるメンテナンス回転機構を含んでもよい。
【0038】
この場合、段差解消機の上下昇降機構、スライド機構および検知センサー等のメンテナンスを容易に実施することができる。
【0039】
(C)
第Cの発明にかかる段差解消機は、Aの局面に従う段差解消機において、上下昇降機構およびスライド機構はモータの回転をねじにより直線運動に変換する駆動変換機構を備え、
駆動変換機構は、台形ネジまたはボールネジを用いてもよい。
【0040】
この場合、異常摩耗を生じさせることなく、段差解消機を駆動させることができる。特にサイズTM20の台形ネジを用いることで、段差解消機の駆動を安全に実施することができる。
特に、上下昇降機構においては、負荷が大きくかかるため、台形ネジを使用することが望ましい。スライド機構においては、負荷が軽いので、ボールねじを使用してもよい。
【0041】
この場合、段差解消機の制御部は、AI学習により、最短時間で最適な駆動を実現することができる。また、例えば、停車時間中の最大5秒の時間内で列車の扉の開く時間内で余裕を持った設定動作を実現することができる。
【0042】
(D)
第Dの局面に従う段差解消機を備えたプラットホームは、Aの局面に従う段差解消機を複数並列したものである。
【0043】
この場合、プラットホームにおいて段差解消機を複数並列配置することで、多様な列車に対応することができる。また、必要な場所に最適な個数の段差解消機を設けることができる。
【0044】
(E)
第Eの局面に従う段差解消機は、プラットホームに埋設され、列車乗降口との間の隙間及び段差を解消する段差解消機であって、回動可能に軸支された回動面と、逆V字型のリンク機構により回動面を上下昇降する上下昇降機構と、回動面または伸縮面に設けられた複数のセンサーからなる検知センサーと、上下昇降機構および検知センサーを制御する制御部と、上下昇降機構の故障を予測する故障予測部と、を含み、上下昇降機構はモータの回転をねじにより直線運動に変換する駆動変換機構を備え、駆動変換機構の回転軸にはトルクセンサが貼着され、故障予測部はトルクセンサで測定したトルクに基づいてトルクの時間変化を予測し、実測値と予測値との差または予測値に対する実測値の比が所定の範囲を超える場合、または時系列のトルクの実測値と初期値との差または初期値に対する実測値の比が所定の範囲を超える場合に、上下昇降機構が故障する可能性が高いと判断する。
【0045】
一定「期間」ごとに段差解消機の部品交換などのメンテナンスを行い、故障を未然に防ぐTBMから、段差解消機の「状態」の計測や監視を行い、故障の前兆を検知してメンテナンスを行い、故障を未然に防ぐCBMに変更するためには、故障する可能性を事前に予測する故障予測が重要である。
段差解消機の場合、最も故障の可能性が高い箇所は重い負荷のかかる上下昇降機構である。第Eの局面に従う段差解消機では、この上下昇降機構の故障予測のために上下昇降機構の駆動変換機構の回転軸にトルクセンサを備えている。
上下昇降機構のメンテナンスをした直後はトルクセンサのトルクは小さい。そして、時間が経過するにつれてトルクが大きくなっていく傾向がある。そして、上下昇降機構が故障する直前にはトルクの実測値が急に大きくなることが多い。あるいは、トルクの実測値が急に小さくなった場合にも想定外の現象が起きている可能性がある。また、トルクの実測値と予測値の差が小さい場合にも、実測値が時系列のトルクの初期値よりも大幅に大きくなった場合には故障の前兆の可能性がある。
【0046】
第Eの局面に従う段差解消機の故障予測部は、トルクの実測値と予測値との差または予測値に対する実測値の比が所定の範囲を超える場合、または時系列のトルクの実測値と初期値との差または初期値に対する実測値の比が所定の範囲を超える場合に、上下昇降機構が故障する可能性が高いと判断する。
【0047】
(F)
第Fの発明に係る段差解消機は第Eの局面に従う段差解消機において、故障予測部は、過去所定の日数における予測値に対する実測値の比(実測値/予測値)の平均値が1.05倍以上の場合または0.95倍以下の場合警報を出し、平均値が1.1倍以上の場合点検を指示してもよい。
【0048】
トルクの実測値は、故障ではなくノイズの混入により値が変動している場合もある。一方で、本当に故障の前兆の場合には、当然翌日も実測値が変動したままになっているので、過去所定の日数における予測値に対する実測値の比の平均値に基づいて判断することで、ノイズの混入などによる誤った判断を避けることができる。所定の日数としては2日から10日とすることが望ましく、5日が最も望ましい。
【0049】
(G)
第Gの発明に係る段差解消機は第Eの局面に従う段差解消機において、トルク値の時間変化の予測は、LSTM(Long Short Term Memory)を用い、時系列のトルク値をLSTMに入力することによって行われてもよい。
【0050】
トルクセンサで測定した時系列のトルク値に基づいてトルク値の時間変化を予測する方法としては、例えばトルク値Yの時間変化を線形関数と仮定し、
Y(t)=a×t+bとして、時系列のトルク値(t1、Y1)・・・(tn、Yn)から
最適なaとbを求めてもよい。
しかし、トルク値の時間変化は必ずしも線形関数であるとは限らず、例えば、雨や雪が多い場所、平均気温が高いもしくは低い場所など、使用環境によっては、指数関数、累乗関数、対数関数に近い場合も考えられる。そして、トルク値の時間変化がどの関数に最も近いかを個別に検討し、最も近い関数を選択してその係数を求める場合、処理時間がかかり、かつ必ずしも最適な関数を選択することができない場合もある。特にトルク値の時間変化が2つ以上の関数の和(例えば線形関数と周期関数との和)の傾向を備えている場合には、最適な関数を選択することは困難である。
【0051】
近年、時系列のデータに基づき時間変化の予測をする方法として、RNN(リカレントニューラルネットワーク)の時系列を考慮する層を改良したLSTM(Long Short Term Memory)が用いられるようになってきた(LSTMについては、Sepp Hochreiter; Jurgen Schmidhuber 著(1997). “Long short-term memory”. Neural Computation 9 (8): 1735-1780.参照)。
第Gの発明に係る段差解消機では、トルク値の時間変化の予測を、LSTMを用いて行う。
【0052】
(H)
第Hの発明に係る段差解消機は、第Eの局面から第Gの発明に係る段差解消機において、回動面にスライド可能に取り付けられた伸縮面と、伸縮面をスライド移動させるスライド機構と、をさらに備え、制御部はスライド機構を制御し、スライド機構はモータの回転をねじにより直線運動に変換する駆動変換機構を備え、駆動変換機構の回転軸にはトルクセンサが貼着され、故障予測部は、トルクセンサで測定した時系列のトルク値に基づいてトルク値の時間変化を予測し、実測値と予測値との差または予測値に対する実測値の比が所定の範囲を超える場合、または時系列のトルクの実測値と初期値との差または初期値に対する実測値の比が所定の範囲を超える場合に、スライド機構が故障する可能性が高いと判断してもよい。
【0053】
第Hの発明に係る段差解消機は、第Eの局面に従う段差解消機に、さらに伸縮面とスライド機構とを追加し、スライド機構の回転軸にトルクセンサを貼着し、上下昇降機構と同様の方法でスライド機構の故障予測を行うものである。
スライド機構の故障予測においても、トルク値の時間変化の予測を、LSTMを用いて行ってもよい。
【0054】
(I)
第Iの局面に従う段差解消機は、プラットホームに埋設され、列車乗降口との間の隙間及び段差を解消する段差解消機であって、回動可能に軸支された回動面と、回動面にスライド可能に取り付けられた伸縮面と、逆V字型のリンク機構により回動面を上下昇降する上下昇降機構と、伸縮面をスライド移動させるスライド機構と、回動面または伸縮面に設けられた複数のセンサーからなる検知センサーと、上下昇降機構、スライド機構および検知センサーを制御する制御部と、上下昇降機構およびスライド機構の故障を予測する故障予測部と、を含み、故障予測部は検知センサーで検知した高さおよび伸長距離の指示値からのずれ量を記録し、それぞれのずれ量の過去所定の日数における平均値または標準偏差値が所定の値を超える場合に、上下昇降機構が故障する可能性が高いと判断する。
【0055】
故障の前兆は、制御ゲインが高い場合は、駆動機構の回転軸のトルクの上昇として観察されるが、制御ゲインが比較的低い場合は測定値の指示値からのずれとして観察される。第4の局面に従う段差解消機では、検知センサーで検知した高さおよび伸長距離の指示値からのずれ量に着目して故障を予測する。
具体的には、検知した高さおよび伸長距離のずれ量の過去所定の日数における平均値または標準偏差値が所定の値を超える場合に、上下昇降機構が故障する可能性が高いと判断する。所定の日数としては2日から10日とすることが望ましく、5日が最も望ましい。
また、平均値の所定の値としては初期の平均値の-5%から5%とすることが望ましく、標準偏差の所定の値としては初期の標準偏差1σの-10%から10%とすることが望ましい。
ずれ量の標準偏差に着目するのは、制御が不安定になってきた場合、指示値からのずれ量が段差解消機の起動のたびにばらつくことが多いためである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】第1の実施形態にかかる段差解消機を備えたプラットホームの一例を示す模式図である。
図2】第1の実施形態にかかる段差解消機の内部機構の一例を示す模式的平面図である。
図3】段差解消機の駆動前の状態の一例を示す模式図である。
図4】段差解消機の第1段階の駆動状態の一例を示す模式図である。
図5】段差解消機の第2段階の駆動状態の一例を示す模式図である。
図6】リンク機構の詳細の一例を示す模式図である。
図7】リンク機構の機構モデルの一例を示す模式図である。
図8】リンク高さと自重負荷時必要推力および許容すべり速度との関係の一例を示すグラフである。
図9】ねじの接触面圧とすべり速度との関係の一例を示す模式的説明図である。
図10】自重負荷時必要推力および垂直負荷のリンク比依存性を示すグラフである。
図11】初期長さおよび水平ストロークのリンク比依存性を示すグラフである。
図12】作動時間のリンク比依存性を示すグラフである。
図13図13(a)はリンク比1.5の場合の段差解消機の第2段階の駆動状態の一例を示す模式図であり、図13(b)はリンク比1.0の場合の段差解消機の第2段階の駆動状態の一例を示す模式図である。
図14】第1の実施形態にかかる段差解消機の制御部の制御の一例を示す模式的ブロック図である。
図15】制御部の制御の一例を示すフローチャートである。
図16】段差解消機のメンテナンス回転機構の一例を示す模式的説明図である。
図17】変形例の段差解消機の構造を示す模式的説明図である。
図18】第2の実施形態の段差解消機の制御部の制御の一例を示す模式的ブロック図である。
図19】第2の実施形態の段差解消機の上下昇降機構の駆動部分の構造を示す模式的上面図である。
図20】トルクの時間変化の実測値と予測値との関係の一例を示す模式図である。
図21】線形関数の場合の実測値と予測値との関係を示すグラフである。
図22】2次関数の場合の実測値と予測値との関係を示すグラフである。
図23】第3の実施形態の段差解消機の制御部の制御の一例を示す模式的ブロック図である。
図24】第3の実施形態の段差解消機の上下昇降機構の駆動部分の構造を示す模式的上面図である。
図25図24のA-A’部分に相当する緊急原点復帰機構の断面構造および動作を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明においては、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0058】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態にかかる段差解消機100を備えたプラットホーム200の一例を示す模式図である。図1(a)は、プラットホーム200の模式的平面図であり、図1(b)は、プラットホーム200の模式的側面図である。
【0059】
(プラットホーム200)
図1に示すように、プラットホーム200の一部に、凹部G200を形成し、段差解消機100を3個並列に配置させた状態である。本実施の形態においては、段差解消機100を凹部G200に対して、アンカーボルト(図示省略)で固定する。
なお、本発明は、プラットホーム200に到着する列車において、車椅子対応の場所の幅に応じて、段差解消機100を複数並べてもよい。
また、図1(b)に示すように、凹部G200の下面には、1または複数の溝G10が形成されている。溝G10は、雨等の水を線路側へ流すことができるように形成されている。
【0060】
また、段差解消機100の周囲には、プラットホーム200の端面PHと、段差解消機100の上部面130(図3参照)との段差が5mm以下となるように、数ミリ厚みの金属板材またはモルタル等によるスロープ部等の合わせ部290を設けてもよい。
【0061】
(段差解消機100)
図2は、本実施の形態にかかる段差解消機100の内部機構の一例を示す模式的平面図である。
【0062】
図2に示すように、段差解消機100は、回動面110、伸縮面120、上部面130(図3参照)、逆V字型のリンク機構300、接触センサー520、距離センサー530、2個の駆動部540、プッシャー565、回動ハウジング546、1個のスライド駆動部550、伸縮プッシャー555、ローラ600を有する。なお、駆動部540、プッシャー565を含む上下昇降機構の詳細については、第2の実施形態において、図19を用いて説明する。
【0063】
本実施の形態においては、回動面110は、厚み6mm程度のステンレス鋼部材からなる。伸縮面120は、厚み6mm程度のステンレス鋼部材からなる。上部面130は、厚み4mm程度のステンレス鋼部材からなる
【0064】
逆V字型のリンク機構300の詳細については、後述する。接触センサー520は、伸縮面120の端部全面に設けられている。なお、接触センサー520は、プラットホーム200の線路側に配置されていればよく、必ず全面に設ける必要はない。
接触センサー520は、防水構造であることが望ましく、差動トランス(LVDT)方式、スケール方式のいずれであってもよい。
また、接触センサー520と一体に、または別体で、列車と距離を検出する近接スイッチを内蔵してもよい。近接スイッチを設けることで、段差解消機100が列車に接触すること無しに安全に停止することができる。この近接スイッチは5mm±10%以上離れているとき作動するセンサーを選定することが好ましい。
【0065】
従来、インターロック機能として、安全のために、段差解消機100が列車と接触しないように、先端部が列車と接触することで検知するテープスイッチまたは接触式のセンサーが主に使われていた。しかしながら、この場合、確実に列車と接触しないと検知できないため、乗員の移動等により段差解消機100の方向に列車のボディが揺れ、段差解消機100と接触する事象等が生じ、段差解消機100または列車のボディに傷が入ったりする問題が生じており、段差解消機100の破損等に繋がっていた。
一方、近接スイッチを内蔵することで、列車に対して最低1mmから3mm程度の隙間を持たせた状態で伸縮面120を停止させることができる。すなわち、列車に伸縮面120が接触することを防止し、列車のボディ、および/または段差解消機100の破損を防止することができる。
【0066】
次に、本実施の形態における距離センサー530は、回動面110の端部に2個所定の間隔で設けられている。距離センサー530は、後述する回動面110の動作とともに、回動するように設けられている。
距離センサー530は、防水構造であることが望ましく、Lidar方式、ミリ波方式、超音波方式、ステレオカメラ方式のいずれであってもよい。
【0067】
次いで、2個の駆動部540は、モータからなる。同じく、スライド駆動部550は、モータからなる。
また、本発明に用いられている駆動変換機構547(図19参照)は、台形ネジ(TM)のサイズTM18以上のDネジから形成される。この理由については、後述する。ただし、スライド駆動部550の駆動変換機構547の場合は負荷が軽いため、ボールネジを用いてもよい。
【0068】
続いて、ローラ600は、複数設けられており、後述するように、回動面110から伸縮面120が突出される、または収納される場合に支持し、伸縮面120が円滑に移動できるよう設けられている。
【0069】
(段差解消機100の動作概略)
図3は、段差解消機100の駆動前の状態の一例を示す模式図であり、図4は、段差解消機100の第1段階の駆動状態の一例を示す模式図であり、図5は、段差解消機100の第2段階の駆動状態の一例を示す模式図である。
【0070】
図3に示すように、段差解消機100は、回動面110および上部面130が水平に配置されている。また、段差解消機100の下部には、フレーム190が枠体として形成されており、フレーム190に脚部195が設けられている。その結果、図1の溝G10と脚部195との合計高さにより、雨水等の影響を抑制することができる。また、図3においては、フレーム190を分離して記載しているが、これに限定されず、一体として形成してもよい。
【0071】
次に、図4に示すように、駆動部540が動作し、プッシャー565が押し出され、逆V字型のリンク機構300により回動面110の先端が、矢印R10の方向に回動する。すなわち、回動面110は、上部面130側において矢印R10の方向に回動可能なように軸支されている。本実施の形態において回動角度は、1度から15度までであることが好ましく、本実施の形態における最大回動角度は8度である。この場合、回動面110の先端に距離センサー530が設けられているので、回動面110と同じく移動する。
【0072】
次いで、図5に示すように、スライド駆動部550が動作し、伸縮面120が、列車乗降口側へ、すなわち矢印S10の方向へ伸長する。本実施の形態において伸長距離は、100mm以上500mm以下であることが好ましく、本実施の形態における伸長距離の最大は300mmである。この伸長距離は、後述する距離センサー530の測定結果に応じて決定される。
【0073】
以上の図3から図5までの動作により、段差解消機100により列車の床とプラットホーム200の上面または端面PHとの段差解消が行われ、所定時間の後、図5図4図3の順により段差解消機100に収納動作が行われる。
このように、本実施の形態における段差解消機100は、伸長動作および回動動作によりシンプルな構造で強度を確保しやすいというメリットがある。
なお、本実施の形態においては、図4および図5を別々の動作として開示しているが、これに限定されず、図4の回動動作を行いつつ、図5の伸長動作を行ってもよい。その結果、短時間で段差解消を実施することができる。
【0074】
(逆V字型のリンク機構300)
次に、図6は、逆V字型のリンク機構300の詳細の一例を示す模式図であり、図7は、逆V字型のリンク機構300の機構モデルの一例を示す模式図である。
【0075】
図6に示すように、逆V字型のリンク機構300は、第1リンク310、第2リンク320、固定軸315、リンク軸325、可動軸335を含む。
図6に示すように、駆動部540が動作していない場合には、回動面110は、フレーム190(凹部G200)とほぼ平行な状態である。
次いで、駆動部540が動作した場合、プッシャー565が逆V字型のリンク機構300の方向へ進む。その結果、可動軸335が押し出され、かつ固定軸315は固定されているため、リンク軸325が上方向へ移動する。その結果、リンク軸325の上昇により回動面110が矢印R10(図4参照)の方向へ回動される。
【0076】
図7は、逆V字型のリンク機構300の機構モデルの一例を示す模式図である。図7に示すように、第1リンク310の距離をL31、第2リンク320の距離をL32、固定軸315および可動軸335の距離をLnとし、固定軸315および可動軸335の水平面からリンク軸325までの垂直方向の距離(以降、リンク高さhともいう)をhとする。また、固定軸315とリンク軸325とを結ぶ直線の鉛直方向からの角度をθ1、可動軸335とリンク軸325とを結ぶ直線の鉛直方向からの角度をθ2とする。さらに、駆動部540が動作せず、回動面110が水平の場合の距離LnをLn1とし、リンク高さhをh1とする。
そして、図7(b)に示すように、駆動部540が動作し、回動面110が移動した場合、固定軸315および可動軸335の距離Ln‘(Ln1>Ln’)、固定軸315および可動軸335の水平面からリンク軸325までの垂直方向の距離h2(h2>h1)となる。
この場合、固定軸315が支点となり、リンク軸325が作用点となり、可動軸335が力点となるとして考えることができる。
また、図7では、第2リンク320の距離L32と第1リンク310の距離L31との比L32/L31(以降、リンク比bともいう)は1.5である。
【0077】
(逆V字型リンクのリンク比bの検討)
逆V字型リンクのリンク比bの検討にあたっては、可動軸335の自重負荷時必要推力F2(図7のF2)と垂直負荷F3(図7のF3)、リンク軸325の上下昇降時間、および逆V字型リンクの最大長さを考慮する必要がある。また、上下昇降時間は可動軸335の水平ストロークSt(図7のLn1-Ln‘に相当)と許容すべり速度Vとの比に相当し、逆V字型リンクの最大長さは、回動面110が水平の場合の距離Ln1 (以降、初期長さともいう)に相当する。
まず、可動軸335の自重負荷時必要推力F2と垂直負荷F3について検討する。
今、図7に記載のようにθ1、θ2を定義すると、リンク高さhは、
h=L31×cos(θ1)=L32×cos(θ2)
また、リンク軸325に鉛直方向に自重負荷F0が印加された場合、可動軸335の自重負荷時必要推力F2と垂直負荷F3は、
F2=F0×(sin(θ1))/sin(θ1+θ2)×cos(90―θ2)
F3=F0×(sin(θ1))/sin(θ1+θ2)×sin(90―θ2)、となる。
図8には、リンク高さhが31mm~111.8mmの範囲におけるリンク高さhと水平方向の自重負荷時必要推力F2のグラフを示した。なお、図8において、自重負荷F0の大きさは350.4kg重である。
【0078】
(駆動変換機構547に用いるDネジの安全性)
図9は、ねじの接触面圧Pとすべり速度Vとの関係の一例を示す模式的説明図である。
【0079】
以下、駆動変換機構547のねじにおける許容最高PV値を算出した手法について説明を行う。なお、駆動変換機構547の詳細については第2の実施形態において図19を用いて説明する。
図9に、駆動変換機構547に用いる潤滑油を用いた鋼と黄銅とからなるDネジの場合(図中1点鎖線)、および、無潤滑(ドライ)で鋼と樹脂とからなるDネジの場合(図中3点鎖線)における、ねじ部の異常摩耗を防止するための接触面圧P(N/mm2)とすべり速度V(m/min)と関係の標準的な安全ラインを示した。図9において、それぞれの線の左下側の領域が安全領域である。
本発明にかかる段差解消機100においては、上記安全ラインよりもさらに左下にくるようにPV=15を許容安全ラインとして設定し、PV積が15を超える場合は意図的にモータ回転数を落として危険領域に入らない制御を加えている。
なお、台形ネジナット仕様としては、軸径18mのものを使用している。
【0080】
次に、上記許容最高PV値の考え方に基づき、実際の許容すべり速度Vについて検討する。逆V字型リンクの可動軸335は、台形ネジなどのすべり伝達によって駆動されている。この場合、ねじ部の異常摩耗を防止するために、接触面圧P(N/mm)とすべり速度V(m/min)の積であるPV値を使用できるかどうかの目安としている。
そして、台形ネジが鋼製、真鍮軸受けの組み合わせの場合一般にはPV=25以下が使用の目安となるが、本実施形態では、安全を見て使用領域のPV値をPV=15以下と規定し、速度的にその範囲を超える場合は意図的にモータ回転数を落として危険領域に入らないよう制御を加えている。
したがって、許容すべり速度Vは、V=15/Pとなり、Pは自重負荷時必要推力F2に比例することから、許容すべり速度Vは自重負荷時必要推力F2に反比例する。
図8には、リンク高さhと許容すべり速度Vとの関係も示した。
図8において、自重負荷時必要推力F2は最大値が重要であり、許容すべり速度Vは最小値が重要であることから、逆V字型リンクのリンク比bの検討にあたっては、リンク高さhが最小の、すなわち、段差解消機100がほぼ平坦な状態での自重負荷時必要推力F2を検討すればよい。
この、リンク高さhが最小の場合の、可動軸335の自重負荷時必要推力F2、および垂直負荷F3のリンク比b依存性のグラフを図10に示した。
【0081】
また、上下昇降時間は可動軸335の水平ストロークSt(Ln1-Ln‘に相当)に比例し、逆V字型リンクの最大長さは初期長さLn1に相当するので、水平ストロークStおよび初期長さLn1のリンク比b依存性について検討した。
今、リンク高さhが最小の場合(図7(a)に相当)の高さをh1とし、リンク軸と固定軸との間の長さをL31、リンク軸と可動軸との間の長さをL32=b×L31とすると、
初期長さLn1は、
【数1】
また、水平ストロークStは、リンク高さが最大の場合(図7(b)に相当)の高さをh2として
【数2】
となる。
この、初期長さLn、および水平ストロークStのリンク比b依存性のグラフを図11に示した。
また、図12には水平ストロークStと許容すべり速度Vとの比に相当する作動時間Tt(相対値)のリンク比b依存性のグラフを示した。
【0082】
図10図12より、リンク比bを大きくすることによって
(a)可動軸335の垂直負荷F3は減少するが、自重負荷時必要推力F2は増加する。
(b)逆V字型リンク全体の初期長さは増加するが、水平ストロークStは減少する。
(c)自重負荷時必要推力F2と水平ストロークStとの比に相当する作動時間Ttは、リンク比b=1.5付近で最小となり、1.5より小さくなっても大きくなっても増加する。
との傾向がみられる。
【0083】
一方、リンク比bは、リンク軸325にかかる自重負荷F0にも影響を与える。
図13に、リンク比b=1.5の場合(a)と1.0の場合(b)との、段差解消機100の第2段階の駆動状態の一例を示す模式図である。
図13(a)と図13(b)とを比較するとわかるように、b=1.5とすることによって、リンク軸325の位置が回動面110のより先端側に移動し、モーメント荷重負荷の作用点が先端に近づいている。そして、モーメント荷重負荷の作用点が先端に近づくことによって、図13(a)のLbが図13(b)のLb‘より長くなり、(a)の自重負荷F0を(b)のF0’より小さくすることができる。
したがって、リンク比bを大きくすることで、自重負荷時必要推力F2と垂直負荷F3を小さくし、その結果、作動時間Ttを小さくすることができる。
【0084】
以上の結果より、作動時間Ttを短くするとの観点ではリンク比bは1.5付近が望ましいが、リンク比bを大きくすることによって可動軸335の垂直負荷F3が減少すること、および自重負荷F0自体が小さくなること、一方で、リンク比bを大きくしすぎると自重負荷時必要推力F2が大きくなりすぎ、逆V字型リンクの軸強度を上げる必要があること、および逆V字型リンクの最大長さが長くなりすぎること、から、リンク比bは、1.5以上、2.5以下とする。
【0085】
また、従来のパンダグラフ方式では、作用点となる部分が連結されているため、調整が複雑になったり、伸長動作を行う場合に、リフト機構自体を大きく移動させたりする必要があるという課題が多かった。さらに、作用点となる部分が連結されているため、負荷荷重が大きくなってしまうという課題もあった。
一方、本発明における段差解消機100は、作用点の負荷荷重を低減することができ、回動動作の後に伸長動作を行うことができるため、段差解消機100自体の機構を簡略化することができる。
【0086】
(制御部500)
次に、図14は、第1の実施形態にかかる段差解消機100の制御部500の制御の一例を示す模式的ブロック図である。
【0087】
図14に示すように、第1の実施形態にかかる段差解消機100の制御部500は、記録部510、接触センサー520、距離センサー530、駆動部540、およびスライド駆動部550のそれぞれと通信を行う。通信は有線であることが望ましいが、無線であってもよい。
また、第1の実施形態にかかる制御部500は、AI学習機能を有しており、過去の記録部510のデータから、最適な段差解消機100の動作を判定し、駆動させる。記録部510の詳細データの内容については、後述する。
【0088】
第1の実施形態における制御部500は、段差解消機100の内部に内蔵されている必要性は無い。制御部500は、記録部510、接触センサー520、距離センサー530、駆動部540、およびスライド駆動部550のそれぞれと通信を行うことができれば、内蔵されていてもよく、外部に別途設けられていてもよい。
また、図1に示したように、段差解消機100は、並列して配置される場合もあるため、並列された段差解消機100それぞれの制御部500が一つとして設けられてもよく、それぞれ設ける場合には、互いの制御部500が通信できる状態であることが望ましい。
例えば、並列配置された段差解消機100のうち1つの段差解消機100においてメンテナンスまたは、故障等の場合に、他の段差解消機100の駆動を停止させることが望ましいからである。
【0089】
記録部510は、列車の種類、列車の時刻表、列車の床の高さ、プラットホーム200の高さ、ホームドア、月、日、曜日、時間、気候、天気等を含めた情報である。
また、その他にも、駅構内に設けられた監視カメラからのデータを、機械学習、深層学習、ディープラーニング、YOLO、R-CNN、HOG、DETR(End-to-End Object Detection with Transformers)、SSD(Single Shot MultiBox Detector)、DCN等を用いて、人数を計算し、列車の混雑状況、車両毎の混雑状況を推定した情報を含んでもよい。さらには、段差解消機100を備えたプラットホーム200の前の駅、すなわち列車からすると上流にある駅の上記人数、混雑状況、現在の列車の床の高さ等の情報を含んでもよい。
【0090】
また、プラットホーム高さは、列車の種類、列車の床の高さ、線路の状況、カーブしたプラットホーム200なのか否か、混雑した列車から多数の人数が降りるのか否か、多数の人数が乗り込むのか、段差解消機100を用いて乗り込む人がいるのか、段差解消機100を用いて降りる人がいるのか、の情報等も含まれる。
乗り込む場合には、列車の床の高さと同じかそれより数ミリ高い方が好ましく、降りる場合には、列車の床の高さと同じかそれより数ミリ低い方が好ましい。
そのため、列車が到着した場合には、列車から降りる方が多いため、列車の床の高さと同じかそれより数ミリ低く設定し、列車が到着してから所定時間が経過した場合には、列車の床の高さと同じかそれより数ミリ高くなるよう微妙な制御を行ってもよい。
【0091】
また、記録部510には、プラットホーム200から乗客が転落しないように設置されているホームドアの型式、動作、駆動時間、開閉タイミング等が記録されている。これは、ホームドアの動作を阻害しないよう、制御部500が段差解消機100を動作させるために必要なデータである。
さらに、記録部510に記録された、月、日、曜日、時間、気候、天気などは、人数の変動、混雑状態等の情報と紐づけられている。また、図示していないが、駅舎付近のデパート、商業施設、イベント会場、飲食店等の混雑具合を固定カメラ、または携帯のGPSの個数等と紐づけてもよい。それにより、人の動きに応じて混雑情報等を推定することができる。さらには、車椅子のみならず、手動または電動ベビーカを使用する方の履歴を取得し、よく使われる駅から訪問先の駅までの情報等を取得し、上流の段差解消機100から下流の訪問先の段差解消機100へ情報を送信してもよい。
さらに、第1の実施形態においては、付加していないが、報知装置を設けて音声で注意を促す、または、安全に乗車してください、安全に降車してください。等を知らせるようにしてもよい。
【0092】
(制御部500の動作の一例)
図15は、制御部500の制御の一例を示すフローチャートである。
【0093】
まず、制御部500は、記録部510からの情報に基づいて、列車情報等を取得する(ステップS1)。次に、制御部500は、ホームドアが駆動したか等のホームドア情報を取得する(ステップS2)。
続いて、制御部500は、接触センサー520および/または距離センサー530からのセンサー検知を取得する(ステップS3)。
ここで、制御部500は、センサーの種類に応じて温度補正を実施してもよい。すなわち、屋外における温度特性を有するセンサーは、温度補正をすることが望ましい。
制御部500は、接触センサー520に接触履歴が無いかを確認し、距離センサー530からの距離データが、記録部510の列車情報と一致しているかを判定する。
【0094】
次に、制御部500は、駆動部540の駆動を開始する(ステップS4)。そして、制御部500は、スライド駆動部550を駆動させスライド開始する(ステップS5)。ここで、車椅子の乗客が円滑に乗降する。
次いで、ホームドアが閉まり始め、列車のドアが閉まり始めた場合に、スライド駆動部550を駆動させ、スライド収納を開始する。なお、ホームドアが閉まり始める前、または列車のドアが閉まり始める前に、スライド収納を開始させてもよい。
最後に、制御部500は、駆動部540を駆動させ、段差解消機100を収納する(ステップS7)。
【0095】
(段差解消機100のメンテナンス回転機構の説明)
図16は、段差解消機100のメンテナンス回転機構の一例を示す模式的説明図である。
【0096】
図16に示すように、段差解消機100のメンテナンスの場合には、逆V字型のリンク機構300との接続を解除することにより、回動面110を矢印R20の方向に、回動軸115を中心に大きく軸回転させることができる。
その結果、駆動部540またはスライド駆動部550、接触センサー520、距離センサー530、プッシャー565、回動ハウジング546、伸縮プッシャー555、ローラ600等の点検またはメンテナンス、修理等を実施することができる。特に、回動面110が大きく回動することによりメンテナンス等を実施しやすいという効果が得られる。
【0097】
(変形例の段差解消機100aの構造)
図17に、変形例の段差解消機100aの構造を示す。
図5の段差解消機100では、プラットホーム200の高さに固定された上部面130と上部面130の列車乗降口側に回動面110とを備え、上部面130と回動面110との境界に回動軸115を有するが、図17に記載の変形例の段差解消機100aでは、上部面130がなく回動軸115が段差解消機100aの列車乗降口に対向する側の端部に設けられている。
この場合、てこの原理によりリンク軸325への自重負荷F0は小さくなるが、一方で、回動面110の長さが長くなるため、回動面110の強度を上げる必要がある。
【0098】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の段差解消機100bは第1の実施形態の段差解消機100または100aに故障予測機能を追加したものである。したがって、図1から図13および図15から図17の図面、および関連の説明は第2の実施形態の段差解消機100bにも当てはまる。
ただし、第1の実施形態の段差解消機100または100aでは上下昇降機構に逆V字型のリンク機構300を用いているが、第2の実施形態の段差解消機100bでは、モータの回転を直線運動に変換して回動面110を上下昇降するものであれば、逆V字型のリンク機構300を用いなくてもよい。また、第1の実施形態の段差解消機100または段差解消機100aでは伸縮面120をスライド移動させるスライド機構を備えているが、第2の実施形態の段差解消機100bでは、伸縮面120およびスライド機構を備えず、回動面110自体を列車乗降口の方向に移動するようにしてもよい。
【0099】
図18は、第2の実施形態の段差解消機100bの制御部500の制御の一例を示す模式的ブロック図である。図18のブロック図では、図14の第1の実施形態の段差解消機100のブロック図に故障予測部570およびトルクセンサ575が追加されている。
図19は、第2の実施形態の段差解消機100bの上下昇降機構の駆動部分の構造を示す模式的上面図である。駆動部540が回転軸545を回転し、駆動変換機構547(Dネジ)で直線運動に変換する。駆動変換機構547と枠体548a,548b、プッシャー駆動部材562、およびプッシャー565は互いに連結されており、駆動変換機構547の直線運動はそのままプッシャー565に伝達される。プッシャー565は軸受564aおよび564bを貫通しており、軸受564aおよび564bはプッシャー565の直線運動を支える。
回転軸545にはトルクセンサ575が貼着されており、回転軸545に印加されるトルクの測定値が制御部500に送信される。
【0100】
段差解消機100bは多くの乗降客が列車に乗降するプラットフォームに設置されるため、故障した場合には混乱が予想される。従来は、このような設備では、一定「期間」ごとに段差解消機100bの部品交換などのメンテナンスを行い、故障を未然に防ぐTBM(Time Based Maintenance:時間基準保全)が実行されていた。
しかし、TBMの場合、故障していなくても、営業時間外の夜間作業にて一定期間利用した部品交換等の保全作業を実施する為、見切り交換により無駄な費用が発生していた。
これに対して、段差解消機100bの「状態」の計測および/または監視を行い、故障の前兆を検知してメンテナンスを行い、故障を未然に防ぐCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)による保全方法があるが、CBMを採用するためには故障の前兆を確実に検知する必要がある。
【0101】
(トルク値に基づく故障予測)
段差解消機100bの上下昇降機構では、距離センサー530の測定値をもとに駆動部540で上下昇降機構を駆動する、フィードバック制御が行われている。フィードバック制御が正常に行われている場合には、上下昇降機構の内部で故障の前兆が発生していても、距離センサー530の測定値は正常である場合が多い。このような場合には、上下昇降機構を駆動する駆動部540の回転軸545のトルクの時間変化を測定することでより確実に故障の前触れを検知することができる。
【0102】
図20は、トルクの時間変化の実測値(row_data)と予測値(predict_data)の一例を示す模式図である。なお、数値は相対値である。
図20において、トルクの実測値は時間とともに増加する。図20の場合は、ほぼ時間の線形関数で増加しており、予測値はこの傾向を表したものである。
ところが、時間が170を超える付近から実測値が急激に増加し、予測値からの乖離も大きくなっている。このような場合には、例えば駆動変換機構547(Dネジ)で急激な摩耗が始まっているなど、故障の予兆が進行している可能性がある。
第2の実施形態の段差解消機100bでは、トルクセンサ575で測定した時系列のトルクに基づいてトルクの時間変化を予測し、実測値と予測値との差または予測値に対する実測値の比が所定の範囲を超える場合上下昇降機構が故障する可能性が高いと判断して、警報を出し、または点検を指示する。
実測値と予測値の乖離の大きさと警報または点検指示との関係は、段差解消機100bの設計、あるいはフィードバック制御の強さ等によっても異なるが、例えば、過去所定の日数における予測値に対する実測値の比の平均値が1.05倍以上の場合または0.95倍以下の場合警報を出し、平均値が1.1倍以上の場合点検を指示するようにしてもよい。この場合の所定の日数は、例えば2日から10日とすることが望ましく、5日が最も望ましい。
また、実測値と予測値との乖離が少ない場合でも、トルクの実測値と初期値との差または比が所定の範囲を超える場合には、警報を出し、または点検を指示してもよい。この場合の所定の範囲とは、例えば―20%から+100%である。
【0103】
図20の場合は、時間が170を超える付近からトルクが急激に増加しているが、それまではトルクは時間に対して線形に増加している。しかし、正常な状態において、常にトルクが線形に増加するとは限らない。例えば、使用環境によって、雨および/または雪が多い場所、平均気温が高いもしくは低い場所などでは、トルクが2次の関数で増加する、あるいは指数関数で増加することも考えられる。このような場合には、まず、実測のトルクの時系列変化をどのような関数で近似するかを検討し、そのうえで係数を決定して予測値の時間変化を計算する必要がある。
しかし、実測のトルクの時系列変化をどのような関数で近似するかを検討し、そのうえで係数を決定して予測値の時間変化を計算するという作業は煩雑でかつ必ずしも正確な結果が得られるとは限らない。
【0104】
このような、実測値の時間変化を予測する方法として、例えば、RNN(リカレントニューラルネットワーク)の時系列を考慮する層を改良したLSTM(Long Short Term Memory)が用いられるようになってきた(LSTMについては、Sepp Hochreiter; Jurgen Schmidhuber 著(1997). “Long short-term memory”. Neural Computation 9 (8): 1735-1780.参照)。
LSTMでは、時系列のデータを入力し、学習させることにより、線形か、2次関数かどうかなどによらず時間変化の予測値を出力することができる。
【0105】
図21に線形関数の場合の実測値(row_data)と予測値(predict_data)との関係のグラフを示した。また、図22には2次関数の場合の実測値(row_data)と予測値(predict_data)との関係のグラフを示した。
各図において、LSTMは時間0~24の実測値をもとに時間25の予測値を計算し、次に時間1~25の実測値をもとに時間26の予測値を計算し、同様にして時間200までの予測値を計算している。
LSTMでは、単なる2次関数ではなく、2次関数と正弦波関数のような周期関数との和関数についても精度の高い予測ができることが分かっており、第2の実施形態の段差解消機100bのトルクの時間変化の予測にLSTMを用いることで効率が良く、かつ正確な故障予測を行うことができる。
【0106】
以上の説明は、上下昇降機構の故障予測の説明であるが、段差解消機100bが伸縮面120とスライド機構とを備えている場合には、スライド機構の回転軸545aにもトルクセンサ575を追加し、トルクセンサ575で測定した時系列のトルクに基づいてトルクの時間変化を予測し、実測値と予測値との差または予測値に対する実測値の比が所定の範囲を超える場合、または時系列のトルクの実測値と初期値との差または初期値に対する実測値の比が所定の範囲を超える場合に、スライド機構が故障する可能性が高いと判断してもよい。
【0107】
(距離センサの測定値に基づく故障予測)
以上は、トルクセンサ575で測定した時系列のトルク値に基づいて故障予測を行う場合の実施形態であるが、上下昇降機構またはスライド機構の制御ゲインが比較的低い場合は、トルク値の時間変化よりも距離センサの測定値の時間変化の方に故障の前兆が現れる場合がある。
この場合は、検知センサーで検知した高さおよび伸長距離の指示値からのずれ量を記録し、それぞれのずれ量の過去所定の日数における平均値または標準偏差値が所定の値を超える場合に、上下昇降機構が故障する可能性が高いと判断することが望ましい。
具体的には、検知した高さおよび伸長距離のずれ量の過去所定の日数における平均値または標準偏差値が所定の値を超える場合に、上下昇降機構が故障する可能性が高いと判断する。所定の日数としては2日から10日とすることが望ましく、5日が最も望ましい。
ずれ量の標準偏差に着目するのは、制御が不安定になってきた場合、指示値からのずれ量が段差解消機100bの起動のたびにばらつくことが多いためである。
【0108】
以上のトルクセンサおよび距離センサの時系列の実測値に基づく故障予測を行い、警告あるいは点検指示に合わせて点検することにより、突発的な故障による稼働停止の排除、故障モードに入っていない時期にする定期メンテナンスでメンテナンス人件費と交換部品代のコストを削減することができる。また、段差解消機100自らが、点検を故障前に通信で要求でき、潤滑油供給・部品交換・検知センサーの清掃、レンズ清掃などの予防保全を実施することができる。特に、段差解消機100が自ら点検を要求する時間帯は、旅客事業稼働時間内でなく、営業終了後から営業開始までの夜間時間を指定し、要求することが望ましい。その結果、交換品の手配または交換作業者を予め手配することができ、最適なタイミング、最小の部品交換でメンテナンスでき、安定した段差解消機100の運用を実現しつつ、メンテナンスコストの抑制に貢献することができ、安全性および安定的な稼働を向上することができる。
【0109】
[第3の実施形態]
第3の実施形態の段差解消機100cは第1の実施形態の段差解消機100または100aに緊急原点復帰機構560を追加したものである。したがって、図1から図13および図15から図17の図面、および関連の説明は第3の実施形態の段差解消機100cにも当てはまる。
ただし、第1の実施形態の段差解消機100または段差解消機100aでは上下昇降機構に逆V字型のリンク機構300を用いているが、第3の実施形態の段差解消機100cでは、モータの回転を直線運動に変換して回動面110を上下昇降するものであれば、逆V字型のリンク機構300を用いなくてもよい。また、第1の実施形態の段差解消機100または100aでは伸縮面120をスライド移動させるスライド機構を備えているが、第3の実施形態の段差解消機100cでは、伸縮面120およびスライド機構を備えず、回動面自体を列車乗降口の方向に移動するようにしてもよい。
【0110】
図23は、第3の実施形態の段差解消機100cの制御部500の制御の一例を示す模式的ブロック図である。図23のブロック図では、図14の第1の実施形態の段差解消機100のブロック図に緊急原点復帰機構560が追加されている。
図24は、第3の実施形態の段差解消機100bの上下昇降機構の駆動部分の構造を示す模式的上面図であり、図25図24のA-A’部分に相当する緊急原点復帰機構560の断面構造および動作を示す模式的説明図である。
図24は、第2の実施形態の段差解消機100bの上下昇降機構の駆動部分の構造を示す図19に対して、緊急原点復帰機構560が追加されている。なお、図24にはトルクセンサ575が備えられていないが、第3の実施形態の段差解消機100cにトルクセンサ575と故障予測部570とを備えて、故障予測機能を追加することも可能である。
図19では、駆動変換機構547と枠体548a,548b、プッシャー駆動部材562、およびプッシャー565は互いに連結されており、駆動変換機構547の直線運動はそのままプッシャー565に伝達される。しかし、図24の第3の実施形態の段差解消機100bでは、プッシャー駆動部材562は円柱形状であって枠体548a,548bを貫通しており、回転が可能である。
【0111】
また、第3の実施形態の段差解消機100cではプッシャー565が、プッシャー駆動部材562と交錯する緊急原点復帰機構560の部分で長手方向に直交する半円形状の凹部563を備えている(図25参照)。
一方、プッシャー駆動部材562は緊急原点復帰機構560の付近で長手方向に直交する面での断面が半円形状になっている。そして、通常状態ではプッシャー駆動部材562の半円形状の部分をプッシャー565の凹部563に係合させることによってプッシャー駆動部材562の直線運動を、プッシャー565を介して逆V字型のリンク機構300またはスライド機構の伸縮面120へ伝達している(図25(a)参照)。
緊急時には制御部500が図示しないアクチュエータを駆動してプッシャー駆動部材562を180度回転する(図25(b)参照)。すると、プッシャー駆動部材562とプッシャー565との係合が外れて、プッシャー565が後退し、回動面110が水平な位置まで下がる。これによって、段差解消機100cは収納状態に復帰する(図25(c)参照)。
なお、緊急原点復帰機構560には最大で1000kg程度の負荷荷重が印加される。このため、緊急原点復帰機構560のプッシャー565およびプッシャー駆動部材562には硬度の高いものを使用する必要がある。具体的には、SUS440Cを焼き入れし焼き戻してロックウェルCスケール硬度(HRC)を58以上60以下としたものを使用することが望ましい。
SKD(合金工具鋼)またはSUJ(高炭素クロム軸受鋼)等の鋼材で焼き入れし硬度を同等にしたものでも使用できるが、雨水等による錆防止のためSUS材(SUS440C)を使用した方が良い。
【0112】
以上は、上下昇降機構の駆動部分に緊急原点復帰機構560を追加した場合の動作の説明であるが、スライド駆動部550に、回転軸545、駆動変換機構547、枠体548a、548b、プッシャー駆動部材562、プッシャー565、および緊急原点復帰機構560を追加した場合にもプッシャー駆動部材562を180度回転することによってプッシャー565が後退し、伸縮面120が回動面110に収納される。
なお、上下昇降機構の駆動部分に緊急原点復帰機構560を追加した場合、およびスライド駆動部550に緊急原点復帰機構560を追加した場合、緊急原点復帰時の移動速度は、周囲に影響を与えない速度であることが望ましい。
【0113】
(制御部500および記録部510の他の例)
第1から第3の実施の形態にかかる段差解消機100、段差解消機100a、段差解消機100b、段差解消機100cの制御部500は、AI分析による段差解消機利用者の判別または/および顔認証・形態認証システムを採用してもよい。
例えば、駅改札において、車椅子またはベビーカ等の利用者を識別、特に、利用頻度の多い人は顔認証を併せて実施してもよい。この場合、これらの利用者に対して、エレベーターの案内を実施することもでき、さらには、段差解消機100の配置エリアへの自動案内も実施することができる。案内は音声および表示機器(LED表示等を含む)で、安全な乗車位置である段差解消機100の配置エリアの車両停車位置へ誘導することができる。
その結果、駅務員の業務を削減することができ、乗客にも適切なサービスを実施することができる。特に、乗客数の多い駅または主要駅においては、大きな効果を得ることができる。以上のように、本発明にかかる段差解消機100、段差解消機100a、段差解消機100b、段差解消機100cの制御部500においては、総合的判断をする認証アルゴリズムを生成してメンテナンス時期を判断したり、誘導サービスを実施したりできる。
【0114】
本発明においては、プラットホーム200が「プラットホーム」に相当し、段差解消機100、100a、100b、100cが「段差解消機」に相当し、回動面110が「回動面」に相当し、伸縮面120が「伸縮面」に相当し、逆V字型のリンク機構300が「逆V字型のリンク機構」に相当し、駆動部540、回転軸545、駆動変換機構547、枠体548a,548b、プッシャー駆動部材562、およびプッシャー565が「上下昇降機構」に相当し、スライド駆動部550が「スライド機構」に相当し、接触センサー520および/または距離センサー530および/または近接スイッチが「検知センサー」に相当し、制御部500が「制御部」に相当し、固定軸315が「固定軸」に相当し、可動軸335が「可動軸」に相当し、リンク軸325が「リンク軸」に相当し、逆V字型のリンク機構300と回動面110との接続の解除が「メンテナンス機構」に相当し、回動軸115が「メンテナンス回転機構」に相当し、駆動変換機構547が「駆動変換機構」に相当し、故障予測部570が「故障予測部」に相当し、回転軸545が「回転軸」に相当し、トルクセンサ575が「トルクセンサ」に相当し、緊急原点復帰機構560が「緊急原点復帰機構」に相当し、プッシャー565が「プッシャー」に相当し、プッシャー駆動部材562が「プッシャー駆動部材」に相当する。
【0115】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施の形態が他になされることは理解されよう。さらに、第1から第3の実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0116】
100、100a、100b、100c 段差解消機
110 回動面
120 伸縮面
200 プラットホーム
300 逆V字型のリンク機構
315 固定軸
325 リンク軸
335 可動軸
500 制御部
510 記録部
520 接触センサー
530 距離センサー
540 駆動部
545,545a 回転軸
547 駆動変換機構
548a、548b 枠体
550 スライド駆動部
562 プッシャー駆動部材
565 プッシャー
560 緊急原点復帰機構
570 故障予測部
575 トルクセンサ

図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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