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特開2024-11519食肉の赤変防止剤、食肉加工品の赤変防止方法、食肉加工品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011519
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】食肉の赤変防止剤、食肉加工品の赤変防止方法、食肉加工品
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/40 20230101AFI20240118BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20240118BHJP
【FI】
A23L13/40
A23L13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113554
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】三好 敬太
(72)【発明者】
【氏名】迫田 紘史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 康平
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC02
4B042AD01
4B042AG03
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK04
4B042AW10
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、加工における瑕疵の不安や品質の誤認を起こさせない、食肉の赤変防止剤、赤変防止された食肉加工品及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、キレート剤を含有することを特徴とする、食肉の赤変防止剤を提供する。本発明によれば、キレート剤を用いた赤変防止剤を食肉に使用することで、加工における瑕疵の不安や品質の誤認を起こさせない、赤変防止された食肉加工品を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キレート剤を含有することを特徴とする、食肉の赤変防止剤。
【請求項2】
前記キレート剤が、有機酸の塩であることを特徴とする、請求項1に記載の食肉の赤変防止剤。
【請求項3】
食肉、及び、請求項1又は2に記載の食肉の赤変防止剤を含有することを特徴とする、食肉加工品。
【請求項4】
前記キレート剤の含有量は、0.1質量%以上であることを特徴とする、請求項3に記載の食肉加工品。
【請求項5】
亜硝酸塩を含有しないことを特徴とする、請求項3に記載の食肉加工品。
【請求項6】
真空包装品であることを特徴とする、請求項3に記載の食肉加工品。
【請求項7】
キレート剤を添加することを特徴とする、食肉加工品の赤変防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉の赤変防止剤及び食肉加工品の赤変防止方法に関するものである。また、本発明は、赤変防止された食肉加工品及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食肉加工品は、調味や加熱などの加工により、保存性に優れているという特徴を有しており、真空パックやレトルト食品などとして様々な態様で広く食されている。なかでもハムやソーセージなどは、食肉の外観が視認しやすい状態で保存され、その保存期間中にも風味や色調を維持することが求められている。
このような食肉加工品においては、その色調、風味を損なわないような工夫をした多様な製品が開発されている。とりわけ、食肉加工品の色調の安定化や不自然な発色の抑制は、消費者の購買意欲を左右する観点において重要な技術である。
例えば特許文献1には、表面層のpHを調整することで、赤身食肉及びその加工品の色調を安定化させる方法が開示されている。また、特許文献2には、微生物が産生する還元性物質を利用した、畜肉加工品に対する色調改善剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-213253号公報
【特許文献2】国際公開第2011/142300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ハムやソーセージなどの加工食品が、その保存状態において表面に赤色への変色を起こす現象が知られている。これらの変色は、消費者に加工食品の加工における瑕疵の不安や品質の誤認を起こさせ、購買意欲を減退させる原因となり得る。
そこで、本発明の課題は、加工における瑕疵の不安や品質の誤認を起こさせない、食肉の赤変防止剤、赤変防止された食肉加工品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、キレート剤の添加により、この食肉加工品の保存状態における赤変が防止できるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の食肉の赤変防止剤、食肉加工品、及び食肉加工品の赤変防止方法である。
【0006】
上記課題を解決するための本発明の食肉の赤変防止剤は、キレート剤を含有することを特徴とするものである。
本発明の赤変防止剤によれば、キレート剤を含有することにより、食肉に用いた場合に、その食肉を加工した食肉加工品の保存状態における赤色への変色を防止することができる。これにより、色調変化による食肉加工品の品質誤認を防ぐことができる。
【0007】
本発明の食肉の赤変防止方法の一実施態様としては、キレート剤が有機酸の塩であることを特徴とするものである。
この特徴によれば、食肉加工品の保存状態における赤変を防止し、さらには、保水率を向上するという効果を有する。保水率を向上することにより、しっとりとした食感を得ることができる。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の食肉加工品は、食肉、及び、赤変防止剤を含有する食肉加工品であることを特徴とするものである。
この特徴によれば、食肉加工品の赤変を防止され、加工工程や保存処理の瑕疵についての消費者の品質誤認を防ぐことができる。
【0009】
本発明の食肉加工品の一実施態様としては、キレート剤の含有量は、0.1質量%以上であることを特徴とするものである。
この特徴によれば、食肉加工品のキレート剤の含有量を特定することにより、本発明の食肉加工品に対する赤変防止の効果をより確実に奏することができる。
【0010】
本発明の食肉加工品の一実施態様としては、亜硝酸塩を含有しないことを特徴とするものである。
亜硝酸塩などの発色剤を添加しない場合には、赤変がより明確に生じるため、亜硝酸塩を含有しない食肉加工品では、赤変を抑制するという本発明の効果を一層発揮することができる。
【0011】
本発明の食肉加工品の一実施態様としては、真空包装品であることを特徴とするものである。
食肉の赤変は、空気と接触すると退色するため、空気との接触を防止する真空包装品では、赤変が明確に生じる。よって、真空包装品では、赤変を抑制するという本発明の効果を一層発揮することができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の食肉加工品の赤変防止方法は、キレート剤を添加することを特徴とするものである。
本発明の食肉加工品の赤変防止方法によれば、キレート剤を添加することにより、食肉加工品の予期せぬ赤変を防止することができる。これにより、加熱加工や保存処理における瑕疵などの品質誤認を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加工における瑕疵の不安や品質の誤認を起こさせない、食肉の赤変防止剤、赤変防止された食肉加工品及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の赤変防止剤、食肉加工品及び赤変防止方法について詳細に説明する。なお、実施態様に記載する事項については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これらに限定されるものではない。また、物の発明についての記載は、実質的に同一とみなせる方法の発明(製造方法又は単純方法)の説明に置き換えるものとする。
【0015】
[赤変防止剤]
本発明の赤変防止剤は、キレート剤を含有することを特徴とする。この赤変防止剤を食肉、又は食肉を加工した食肉加工品に使用することで、食肉加工品の保存時の赤変を防止することができる。この赤変現象は、食肉加工品の包装後、保存時に食肉の表面において起こる現象であり、例えば、冷蔵保存中に真空包装したロースハムの周囲に経時的に現れるリング状の赤変部位が挙げられる。また、リング状の赤変から食肉全体に赤変が生じる場合もある。これらの赤変は、生焼けなどの加熱不良や保存状態の瑕疵の不安を消費者に惹起する可能性がある。なお、本発明のおける「赤変」について、その現象が起こる条件について詳細は不明であるが、保存中に経時的に起こる同様の現象であれば、これらを含む概念である。
【0016】
本発明の赤変防止剤の使用態様は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。例えば、ピックル液等に赤変防止剤を添加し、塩漬法やインジェクション法により、ピックル液と共に食肉に注入する方法や、赤変防止剤を溶解した溶液を食肉に滴下したり、粉末状の赤変防止剤を食肉に振りかけたりする方法で使用してもよい。
【0017】
赤変防止剤の形態は、流通や使用の態様に合わせて適宜設定されるものであり、例えば、液体、懸濁液、粉末、粉末組成物の顆粒剤又は錠剤などが挙げられる。なお、キレート剤からなるものであってもよく、他の添加剤と混合して用いてもよい。また、その製造方法も特に限定されず、公知の方法を用いて製造することができる。
【0018】
(キレート剤)
本発明の赤変防止剤は、キレート剤を含有する。本発明に使用できるキレート剤としては、本発明の効果を奏する限り特に限定はされず、使用する食肉の種類、食肉加工品の形態、風味、求められる保水性等に応じて変更可能である。
【0019】
本発明のキレート剤としては、有機酸又はその塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などが挙げられ、好ましくは有機酸又はその塩である。有機酸は、赤変を抑制する作用に優れ、本発明の効果をより発揮することができる。有機酸の塩は、赤変を抑制する効果を奏するだけでなく、食肉加工品の保水性を向上し、しっとりとした食感の食肉加工品を得ることができる。
有機酸又はその塩の具体例としては、例えば、クエン酸、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸、フィチン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウムなどが挙げられる。なお、これらのキレート剤は公知の方法によって製造してもよいし、市場に流通する市販品を使用してもよい。また、キレート剤をそれぞれ単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて任意の配合で用いてもよい。さらに、キレート剤を赤変防止剤に添加するタイミングや方法も特に限定されない。
【0020】
本発明の赤変防止剤におけるキレート剤の含有量は、投与態様、剤型などに応じて変更可能であり、特に限定されないが、例えば、1~100質量%である。下限値として、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。赤変防止剤におけるキレート剤の含有量が大きいほど、食肉加工品への赤変防止剤の添加量を低減することができる。
【0021】
赤変防止剤に使用できるキレート剤以外の材料としては、食品として許容される材料であれば特に限定はされない。例えば、水、油脂、蛋白質、澱粉、デキストリン、糖類、糖アルコール、プルラン、pH調整剤、食塩、酸化防止剤などが挙げられる。
【0022】
食肉加工品に対する本発明の赤変防止剤の添加量は、赤変防止剤中のキレート剤の含有量により変更可能であるが、例えば、後述する食肉加工品中における赤変防止剤の含有量となるように添加すればよい。
【0023】
[食肉加工品の赤変防止方法]
本発明の食肉加工品の赤変防止方法は、キレート剤を添加することを特徴とする。
これにより、食肉加工品の予期せぬ赤変を防止することができ、加熱加工や保存処理における瑕疵などの品質誤認を防ぐことができる。
【0024】
[食肉加工品]
本発明の食肉加工品は、食肉、及び、前述の食肉の赤変防止剤を含有することを特徴とする。この食肉加工品によれば、赤変が防止され、加工工程や保存処理の瑕疵についての消費者の品質誤認を防ぐことができる。
【0025】
本発明の食肉加工品は、食肉を含有する加工品である。これら食肉加工品としては、例えば、ドライソーセージ、ビーフジャーキー、サラミソーセージなどの乾燥食肉製品、生ハムなどの非加熱食肉製品、ローストビーフ、ローストポーク、スモークドビーフなどの特定加熱食肉製品、サラダチキン、ロースハム、プレスハム、ソーセージ、ベーコンなどの加熱食肉製品などが挙げられる。その他、ハンバーグ、しゅうまい、とんかつ、ぎょうざ、ミートボール、焼き豚などでもよい。
本発明の食肉加工品の赤変防止効果において、より生焼けの印象を与えることを防ぐことができるという観点から、加熱調理を経た食肉製品であることが好ましい。さらには、食肉加工品の色が薄く、赤変がはっきりと表れるという観点から、サラダチキンや、加熱ハムにおいて、本発明の赤変防止効果が一層発揮される。
【0026】
(食肉)
赤変防止剤を使用する食肉としては特に限定はされず、本発明の食肉加工品の原料となる食肉であればよい。このような食肉の動物種は、特に限定されないが、例えば、豚、牛、羊、馬などの家畜、鶏、鴨、七面鳥、アヒルなどの家禽、猪、鹿、熊などの野生鳥獣、サケ、サンマ、マグロなどの魚類、クジラなどの海洋哺乳類等が挙げられる。好ましくは豚肉、牛肉、鶏肉である。これらの食肉原料は、1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
本発明の食肉加工品に用いる食肉の形状は、食肉加工品の態様に応じて変更可能であり特に限定されない。肉塊をそのまま使用してもよいし、肉塊を細断又はミンチ状にした食肉であってもよい。
【0028】
本発明の食肉加工品中における赤変防止剤の含有量は、赤変防止剤中のキレート剤の含有量により変更可能であるが、例えば、食肉加工品中におけるキレート剤の含有量として、0.01~2.0質量%である。下限値として、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、特に好ましくは0.4質量%以上である。上限値として、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下である。本発明の赤変防止剤の添加量を上記範囲とすることにより、赤変防止効果を発揮しつつ、食肉加工品の味への影響を小さくすることができる。
【0029】
本発明の食肉加工品の一実施態様としては、亜硝酸塩を含有しないことを特徴とするものである。食肉の褐色化を防止するため、ハム・ソーセージなどの食肉加工品には、亜硝酸塩などの発色剤が一般的に用いられているが、硝酸塩、亜硝酸塩は、健康志向の消費者には敬遠されることもあって、亜硝酸塩を用いていない無塩せき製品が大きな市場を獲得している。しかし、無塩せき製品では、発色剤が添加されていないため、上述の赤変現象(擬似発色)が明確に表れる。従って、亜硝酸塩等を含まない無塩せき製品においては、本発明の赤変防止効果が一層発揮される。
【0030】
本発明の食肉加工品の別の一実施態様としては、真空包装品であることを特徴とするものである。食肉の赤変は、空気と接触すると退色するため、空気との接触を防止する真空包装品では、上述の赤変現象(擬似発色)が明確に表れる。従って、真空包装品では、赤変を抑制するという本発明の効果を一層発揮することができる。
【0031】
本発明の食肉加工品における加熱処理の条件は、食肉を加熱する処理であれば特に制限されないが、加熱温度は、例えば、40~100℃である。加熱温度の下限値として、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは60℃以上である。加熱温度の上限値として、より好ましくは90℃以下であり、さらに好ましくは80℃以下である。また、加熱時間は、例えば、5~120分間である。加熱時間の下限値として、より好ましくは10分間以上であり、さらに好ましくは20分間以上である。加熱時間の上限値として、より好ましくは60分間以下であり、さらに好ましくは40分間以下であり、特に好ましくは30分間以下である。
【0032】
また、本発明の食肉加工品は、塩漬処理することが好ましい。塩漬処理としては、例えば、乾塩法と湿塩法が挙げられる。ピックル液に赤変防止剤を含有させ、赤変防止剤を全体に浸透させることができることから、湿塩法が好ましい。湿塩法としては、例えば、ピックル液をミンチ状の原料肉に混合する方法や、ピックル液に食肉を浸漬する方法や、インジェクターによりピックル液を注入する方法等が挙げられる。
【0033】
本発明のピックル液は、赤変防止剤、食塩を水に溶解した水溶液であり、その他、亜硝酸塩などの発色剤、砂糖、ニコチン酸アミドなどの発色助剤、アスコルビン酸などの酸化防止剤、重合リン酸塩などの結着補強剤、グルタミン酸ナトリウムなどの調味料類などを含有してもよい。
【0034】
本発明の食肉加工品中における食肉原料の含有量は、特に制限されないが、例えば、50~90質量%である。食肉原料の含有量の上限値は、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。
【0035】
本発明の食肉加工品には、食肉原料のほか、脂肪、原料タンパク質、食塩、発色剤(亜硝酸塩等)、調味料(香辛料、アミノ酸、有機酸等)、水などが含まれる。その他、リン酸塩、保存料(ソルビン酸塩等)、酸化防止剤(アスコルビン酸塩等)、甘味料、着色料、品質改良剤(pH調整剤、乳化剤等)などを添加してもよい。また、本発明の効果を奏する範囲において、糖類、澱粉、糖アルコールなどの糖質を添加してもよい。
【0036】
[食肉加工品の製造方法]
本発明の食肉加工品の製造方法は、上記の食肉加工品を得ることができれば特に制限されないが、例えば、赤変防止剤を調製する赤変防止剤調製工程、食肉原料をグラインダーで挽肉にするグラインド工程、原料肉にピックル液を添加する塩漬工程、塩漬肉をケーシングに充填する充填工程、及び充填された塩漬肉を加熱する熱処理工程を備える。その他、必要に応じて燻煙処理を行う燻煙工程、真空包装する真空包装工程などを設けてもよい。
【実施例0037】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[試験例1:豚肉におけるクエン酸、クエン酸三ナトリウムの赤変防止効果]
キレート剤としてクエン酸、クエン酸三ナトリウムを用いたモデルハムについての赤変防止効果を検証した。表1に示す配合にて、豚肉のモデルハムを製造した。具体的には、以下のとおりである。
(1)原料処理工程:食肉原料として冷凍した豚ロース肉(シーボード)を三方袋に入れ、真空包装した。真空包装後の原料を水とともに容器に入れ、0℃設定の塩漬庫にて解凍した。
(2)グラインド工程:この解凍した食肉原料の表面の脂肪を除去し、孔径5mmのカットプレートをセットしたグラインダーで処理し、ミンチ状の食肉原料を調製した。
(3)ピックル液調製工程:次に、表1に示す配合でそれぞれの添加剤をスターラーにより水に溶解した。溶解後、0℃設定の塩漬庫内で一晩静置した。
(4)塩漬工程:得られたミンチ状の食肉原料100に対し前記ピックル液を30の質量比で添加し、スパイラルミキサー(GM-LJ、愛工舎製作所製)を用いて10分間真空脱気撹拌し(2速)、塩漬肉を得た。
(5)充填工程:撹拌後、塩漬肉を真空包装し、袋の底に塩漬肉を寄せ、円柱形に丸めて、両端を輪ゴムで閉じた。
(6)熱処理工程:次に、充填後の塩漬肉を熱処理条件(60℃で60分→70℃で昇温時間を含む30分→80℃で昇温時間を含む90分)でボイル処理をした。
(7)冷却・保管工程:熱処理終了後、冷却したのち、10℃で保管した。
【0038】
<発色評価>
40日の保管後、モデルハムをカットし、擬似発色の有無を目視にて確認した。発色の有無を以下の基準により評価した。結果を表1に示す。
◎:擬似発色が認められない。
○:薄い擬似発色が認められる
×:濃い擬似発色が認められる。
【0039】
<pH>
カット部のpHをD-51(型番SS054、堀場製作所製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
試験例1より、豚肉の食肉加工品にクエン酸及びクエン酸三ナトリウムを添加すると、保存中の食肉加工品における赤色の擬似発色(赤変現象)を抑制することができることがわかった。また、食肉加工品にクエン酸及びクエン酸三ナトリウムを0.4質量%以上含有させることにより、特に優れた赤変防止効果を得られることがわかった。
【0042】
[試験例2:鶏むね肉におけるクエン酸、クエン酸三ナトリウムの赤変防止効果]
キレート剤としてクエン酸、クエン酸三ナトリウムを用いたモデルハムについての赤変防止効果を検証した。表2に示す配合にて、鶏むね肉のモデルハムを製造した。製造方法及び評価方法は、試験例1と同様に行った。ただし、評価については、保存後50日目とした。
【0043】
【表2】
【0044】
試験例2より、鶏むね肉の食肉加工品にクエン酸及びクエン酸三ナトリウムを添加すると、保存中の食肉加工品における赤色の擬似発色(赤変現象)を抑制することができることがわかった。また、食肉加工品にクエン酸を0.15質量%以上含有させることにより、特に優れた赤変防止効果を得られることがわかった。
【0045】
[試験例3:豚肉における各種キレート剤の赤変防止効果]
キレート剤としてクエン酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸カリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウムを用いたモデルハムについての赤変防止効果を検証した。表3に示す配合にて、豚肉のモデルハムを製造した。製造方法は、試験例1と同様に行った。また、評価は、試験1と同様に、発色評価、カット部のpHを評価し、さらに以下の方法により保水性及び加熱損失の評価を行った。ただし、評価については、保存後40日目とした。
【0046】
<保水性>
保水性は、家畜改良センター技術マニュアル21「食肉の理化学分析及び官能評価マニュアル」の「4-1 保水性(加圧・遠心)・圧搾肉汁率」、「2遠心保水性」に準じて測定した。
【0047】
<加熱損失>
加熱損失は、家畜改良センター技術マニュアル21「食肉の理化学分析及び官能評価マニュアル」の「4-2 加熱損失」に準じて測定した。
【0048】
【表3】
【0049】
試験例3より、豚肉の食肉加工品にクエン酸又はその塩、グルコン酸又はその塩を添加すると、保存中の食肉加工品における赤色の擬似発色(赤変現象)を抑制できることがわかった。また、グルコン酸又はその塩と比較して、クエン酸又はその塩は、赤変防止効果に優れることがわかった。
また、クエン酸を添加した場合と比較して、クエン酸の塩を添加した食肉加工品は、保水性が高く、しっとりとした食感の食肉加工品を得ることができた。また、離水は加熱時に生じていることがわかった。
【0050】
[試験例4:鶏むね肉における各種キレート剤の赤変防止効果]
キレート剤としてクエン酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸カリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸カリウムを用いたモデルハムについての赤変防止効果を検証した。表4に示す配合にて、鶏むね肉のモデルハムを製造した。製造方法は、試験例1と同様に行った。また、評価は、試験3と同様に、発色評価、カット部のpH、保水性、加熱損失を評価した。ただし、評価については、保存後50日目とした。
【0051】
【表4】
【0052】
試験例4より、鶏むね肉の食肉加工品にクエン酸又はその塩、グルコン酸又はその塩を添加すると、保存中の食肉加工品における赤色の擬似発色を抑制することができることがわかった。また、グルコン酸又はその塩と比較して、クエン酸又はその塩は、赤変防止効果に優れることがわかった。但し、グルコン酸カルシウムは、優れた赤変防止効果を示した。
また、クエン酸を添加した場合と比較して、クエン酸の塩を添加した食肉加工品は、保水性が高く、しっとりとした食感の食肉加工品を得ることができた。また、離水は加熱時に生じていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の食肉の赤変防止剤及び食肉加工品の赤変防止方法は、ハム、ソーセージなどの食肉原料を含む食肉加工品に好適に利用することができる。