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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115190
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】分散剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20240819BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20240819BHJP
   C08L 33/16 20060101ALI20240819BHJP
   C08F 220/24 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C09K23/52
C08L27/12
C08L33/16
C08F220/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020742
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000108030
【氏名又は名称】AGCセイミケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆之
【テーマコード(参考)】
4D077
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4D077AB20
4D077AC05
4D077BA03
4D077DD03Y
4D077DD09Y
4D077DD10Y
4D077DD18Y
4D077DE02X
4D077DE35Y
4J002BD13X
4J002BD15X
4J002BG08W
4J002FD02W
4J002GT00
4J002HA06
4J100AL02Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA08Q
4J100BB18P
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA36
4J100FA03
4J100FA04
4J100JA15
(57)【要約】
【課題】本発明は、分散性、熱分解性が優れる分散剤を提供することを目的とする。
【解決手段】式(a)で表される化合物から導かれる構成単位(A)を50~98質量%、式(b)で表される化合物から導かれる構成単位(B)を2~50質量%、および、式(c)で表される化合物から導かれる構成単位(C)を0~2質量%で有する含フッ素重合体を含み、当該分散剤を350℃で加熱した後の残渣量が、加熱前の分散剤の5質量%未満であり、溶剤中にフッ素樹脂粒子を分散させるための、分散剤。
CH=CR-COO-Q-Rf (a)
CH=CR-COO-Q-R (b)
CH=CR-COO-Q-OCO-CR=CH (c)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位(A)を50~98質量%、下記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位(B)を2~50質量%、および、下記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位(C)を0~2質量%で有する含フッ素重合体を含み、
当該分散剤を350℃で加熱した後の残渣量が、前記加熱前の分散剤の5質量%未満であり、
溶剤中にフッ素樹脂粒子を分散させるための、分散剤。
CH=CR-COO-Q-Rf (a)
:水素原子またはメチル基、
Rf:炭素数1~6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基、
:単結合または2価の連結基。
CH=CR-COO-Q-R (b)
:水素原子またはメチル基、
:水素原子、メチル基またはOH基、
:炭素数1~12のアルキレン基または下記式(t)で表される基。
-(RO)n- (t)
:炭素数2~4のアルキレン基、
n:1~9の整数。
CH=CR-COO-Q-OCO-CR=CH (c)
:水素原子またはメチル基、
:水素原子またはメチル基、
:単結合または2価の連結基。
【請求項2】
前記含フッ素重合体が、炭素原子、水素原子、フッ素原子および酸素原子のみで構成される、請求項1に記載の分散剤。
【請求項3】
前記式(b)において、Rが水素原子であり、Qが炭素数1~5のアルキレン基である、請求項1または2に記載の分散剤。
【請求項4】
前記式(b)で表される化合物が、下記式(b1)で表される化合物を含む、請求項1または2に記載の分散剤。
CH=CR21-COO-Q21-R31 (b1)
21:水素原子またはメチル基、
31:OH基、
21:炭素数1~12のアルキレン基。
【請求項5】
前記式(b)で表される化合物が、下記式(b2)で表される化合物を更に含む、請求項4に記載の分散剤。
CH=CR22-COO-Q22-R32 (b2)
22:水素原子またはメチル基、
32:メチル基、
22:下記式(t2)で表される基。
-(R42O)n2- (t2)
42:炭素数2~4のアルキレン基、
n2:1~9の整数。
【請求項6】
n2が1~3の整数である、請求項5に記載の分散剤。
【請求項7】
前記含フッ素重合体が、下記式(d)で表される化合物から導かれる構成単位(D)を更に有し、前記構成単位(D)の含有量が、前記含フッ素重合体を構成する全構成単位中の20質量%以下である、請求項4に記載の分散剤。
CH=CR23-COO-Q23-R33 (d)
23:水素原子またはメチル基、
33:メチル基、
23:下記式(t3)で表される基。
-(R43O)n3- (t3)
43:炭素数2~4のアルキレン基、
n3:10~30の整数。
【請求項8】
更に、溶媒を含有し、
当該分散剤を乾燥し350℃で加熱した後の残渣量が、前記乾燥後の分散剤の5質量%未満である、請求項1または2に記載の分散剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ素樹脂は耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性、絶縁性が高く、様々な用途に用いられている。上記のような、フッ素樹脂の性能をうまく発現させるためにはフッ素樹脂の粒子(フッ素樹脂粒子)を溶剤中に分散させる必要がある。しかしながら、フッ素樹脂粒子は、その極めて低い表面自由エネルギーのため、溶剤中に分散することが難しい。溶剤中にフッ素樹脂粒子を分散させるために、通常、分散剤が使用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-70401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、近年、分散剤等を含む分散液を焼成した場合、焼成後に焼け残った分散剤の残渣が絶縁性等の性能に影響する可能性が危惧されている。しかし、熱分解性が優れる、つまり、加熱後の残渣量が少ない、フッ素樹脂粒子用の分散剤はいまだ開発されていない。
【0005】
このようななか、本発明者は特許文献1を参考にして分散剤を調製しこれを評価したところ、上記分散剤は、溶剤中にフッ素樹脂粒子を分散させる性能(分散性。以下同様)について改善の余地があることが明らかとなった。
【0006】
そこで、本発明は、熱分解性、分散性が優れる分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の構成単位(A)、(B)および(C)を特定の量で有する含フッ素重合体を含み、かつ、350℃で加熱した後の残渣量が加熱前の5質量%未満である分散剤によれば、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0008】
[1] 式(a)で表される化合物から導かれる構成単位(A)を50~98質量%、式(b)で表される化合物から導かれる構成単位(B)を2~50質量%、および、式(c)で表される化合物から導かれる構成単位(C)を0~2質量%で有する含フッ素重合体を含み、
当該分散剤を350℃で加熱した後の残渣量が、上記加熱前の分散剤の5質量%未満であり、
溶剤中にフッ素樹脂粒子を分散させるための、分散剤。
なお、式(a)、(b)、(c)を後述する。
[2] 上記含フッ素重合体が、炭素原子、水素原子、フッ素原子および酸素原子のみで構成される、[1]に記載の分散剤。
[3] 上記式(b)において、Rが水素原子であり、Qが炭素数1~5のアルキレン基である、[1]または[2]に記載の分散剤。
[4] 上記式(b)で表される化合物が、後述する式(b1)で表される化合物を含む、[1]または[2]に記載の分散剤。
[5] 上記式(b)で表される化合物が、後述する式(b2)で表される化合物を更に含む、[4]に記載の分散剤。
[6] 上記式(b2)中のn2が1~3の整数である、[5]に記載の分散剤。
[7] 上記含フッ素重合体が、後述する式(d)で表される化合物から導かれる構成単位(D)を更に有し、上記構成単位(D)の含有量が、上記含フッ素重合体を構成する全構成単位中の20質量%以下である、[4]に記載の分散剤。
[8] 更に、溶媒を含有し、当該分散剤を乾燥し350℃で加熱した後の残渣量が、上記乾燥後の分散剤の5質量%未満である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の分散剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分散剤は、分散性、熱分解性が優れる。
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
本明細書において(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを表す。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、分散性および熱分解性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0011】
[分散剤]
本発明の分散剤は、
下記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位(A)を50~98質量%、下記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位(B)を2~50質量%、および、下記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位(C)を0~2質量%で有する含フッ素重合体を含み、
本発明の分散剤を350℃で加熱した後の残渣量が、上記加熱前の分散剤の5質量%未満であり、
溶剤中にフッ素樹脂粒子を分散させるための、分散剤である。
CH=CR-COO-Q-Rf (a)
:水素原子またはメチル基、
Rf:炭素数1~6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基、
:単結合または2価の連結基。
CH=CR-COO-Q-R (b)
:水素原子またはメチル基、
:水素原子、メチル基またはOH基、
:炭素数1~12のアルキレン基または下記式(t)で表される基。
-(RO)n- (t)
:炭素数2~4のアルキレン基、
n:1~9の整数。
CH=CR-COO-Q-OCO-CR=CH (c)
:水素原子またはメチル基、
:水素原子またはメチル基、
:単結合または2価の連結基。
以下、本発明の分散剤に含有される各成分について詳述する。
【0012】
[含フッ素重合体]
本発明の分散剤に含有される含フッ素重合体は、構成単位(A)および(B)を有し、構成単位(C)を任意で有する。
【0013】
[構成単位(A)]
本発明において、含フッ素重合体が有する構成単位(A)は下記式(a)で表される化合物から導かれる。なお、構成単位(A)は、式(a)に示される二重結合が開裂した構造である。
CH=CR-COO-Q-Rf (a)
:水素原子またはメチル基、
Rf:炭素数1~6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基、
:単結合または2価の連結基。
【0014】
・R
式(a)において、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0015】
・Rf
式(a)において、Rfは炭素数1~6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基を表す。Rfは炭素数が3~6のポリフルオロアルキル基である場合、上記ポリフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0016】
Rfとしての炭素数1~6のポリフルオロアルキル基は、複数のフッ素原子を有する炭素数1~6のアルキル基である。Rfが炭素数1のポリフルオロメチル基である場合、上記ポリフルオロメチル基は2~3個のフッ素原子を有するメチル基であればよい。Rfが炭素数2~6のポリフルオロアルキル基である場合、上記ポリフルオロアルキル基を構成する各炭素原子が少なくとも1個のフッ素原子を有すればよい。Rfとしての炭素数1~6のポリフルオロアルキル基は、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基(炭素数1~6のアルキル基が有する水素原子が全てフッ素原子に置換されている)であってもよい。
【0017】
Rfとしてのポリフルオロエーテル基は、複数のフッ素原子を有するエーテルであれば特に制限されない。ポリフルオロエーテル基としては、例えば、複数のフッ素原子を有する炭素数1~6のオキシアルキレン基(アルキレン基部分の複数の水素が上記複数のフッ素原子で置換されている)、又は、上記オキシアルキレン基を2個以上で有する基が挙げられる。Rfとしてのポリフルオロエーテル基は、パーフルオロエーテル基(エーテルを構成する炭化水素が有する水素原子が全てフッ素原子に置換されている)であってもよい。
【0018】
炭素数1~6のポリフルオロアルキル基としては、例えば、-CF、-CFCF、-CFCFCF、-CF(CF、-CFCFCFCF、-CFCF(CF、-C(CF、-(CFCF、-(CFCF(CF、-CFC(CF、-CF(CF)CFCFCF、-(CFCF、及び-(CFCF(CFのような炭素数1~6のパーフルオロアルキル基;
-CHF
-CHFCF、-CFCHF
-CHFCFCF、-CFCHFCF、-CFCFCFH、
-CH(CF、-CF(CHF)(CF)、
-CHFCFCFCF、-CFCHFCFCF、-CFCFCHFCF、-CFCFCFCFH、
-CHFCF(CF、-CFCH(CF、-CFCF(CHF)(CF)、
-C(CHF)(CF
-CHFCFCFCFCF、-CFCHFCFCFCF、-CFCFCHFCFCF、-CFCFCFCHFCF、-CFCFCFCFCFH、
-CHFCFCF(CF、-CFCHFCF(CF、-CFCFCH(CF、-CFCFCF(CHF)(CF)、
-CHFC(CF、-CFC(CHF)(CF
-CH(CF)CFCFCF、-CF(CHF)CFCFCF、-CF(CF)CHFCFCF、-CF(CF)CFCHFCF、-CF(CF)CFCFCFH、
-CHFCFCFCFCFCF、-CFCHFCFCFCFCF、-CFCFCHFCFCFCF、-CFCFCFCHFCFCF、-CFCFCFCFCHFCF、-CFCFCFCFCFCFH、及び
-CHFCFCFCF(CF、-CFCHFCF-CF(CF、-CFCFCHF-CF(CF、-CFCFCF-CH(CF、-CFCFCF-CF(CHF)(CF)のような、水素原子を有する炭素数1~6のポリフルオロアルキル基が挙げられる。
【0019】
Rfは、炭素数1~6のポリフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数4~6のポリフルオロアルキル基がより好ましい。
【0020】
・Q
式(a)において、Qは単結合または2価の連結基を表す。
上記2価の連結基としては、炭素数が1~10のアルキレン基、炭素数が2~10のアルケニレン基、炭素数が1~10のオキシアルキレン基、6員のアリーレン基、4~6員環の2価脂環基、5または6員のヘテロアリーレン基、-X-、-X-X-、-Z-X-、-X-Z-X-、-Z-X-X-、-Z-X-Z-X-、およびこれらのうち2つ以上を組み合わせてなる2価の基が挙げられる。ここで、複数の環基を組み合わせてなる2価の基においては、複数の単環が縮合していてもよい。なお、Qとしての2価の連結基はフッ素原子を有さない。
【0021】
上記-X-、-X-X-、-Z-X-、-X-Z-X-、-Z-X-X-および-Z-X-Z-X-において、
およびXは、それぞれ独立に、炭素数が1~10のアルキレン基、炭素数が1~10のオキシアルキレン基、6員のアリーレン基、4~6員の2価脂環基、5または6員のヘテロアリーレン基、および6員のアリーレン基、ならびに4~6員の2価脂環基および5もしくは6員のヘテロアリーレン基のうち2つ以上組み合わせてなる、2つ以上の単環が縮合していてもよい2価の基からなる群から選択される2価の基を表し、
およびZは、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-、-N(R)-、-SO-、-PO(OR)-、-N(R)-COO-、-COO-N(R)-、-N(R)-CO-、-CO-N(R)-、-N(R)-SO-、-SO-N(R)-、-N(R)-PO(OR)-、および-PO(OR)-N(R)-からなる群から選択される2価の基を表し、上記式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。
【0022】
は、2価の連結基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基であることがより好ましい。
【0023】
が2価の連結基である場合、2価の連結基は更にOH基を有してもよい。上記の場合、2価の連結基が更に有することができるOH基の数、又は、2価の連結基におけるOH基の結合位置は特に制限されない。OH基を有する2価の連結基としては、例えば、OH基を有する炭素数1~10のアルキレン基が挙げられ、具体的には例えば、-CHCH(OH)CH-が挙げられる。
【0024】
式(a)で表される化合物としては、例えば、Rfが炭素数1~6のパーフルオロアルキル基(炭素数1~6のパーフルオロアルキル基の例は上述のとおり。以下同様)であり、Qは2価の連結基(無置換のアルキレン基)である組合せの(メタ)アクリレートが挙げられる。上記の場合の一例として例えば、CH=C(H又はCH)COO-CHCH-C13、CH=C(H又はCH)COO-CHCH-Cが挙げられる。
また、式(a)で表される化合物としては、例えば、Rfが水素原子を有する炭素数1~6のポリフルオロアルキル基(水素原子を有する炭素数1~6のポリフルオロアルキル基の例は上述のとおり)であり、Qは2価の連結基(無置換のアルキレン基)である組合せの(メタ)アクリレートが挙げられる。上記の場合の一例として例えば、CH=C(H又はCH)COOCHCHFCF、CH=C(H又はCH)COOCHCFCFHが挙げられる。
また、式(a)で表される化合物としては、例えば、Rfが炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であり、QはOH基を有する2価の連結基である組合せの(メタ)アクリレートが挙げられる。上記の場合の一例として例えば、CH=C(H又はCH)COOCHCH(OH)CH13、CH=C(H又はCH)COOCHCH(OH)CHのような、が挙げられる。
【0025】
式(a)で表される化合物は、本発明の効果がより優れるという観点から、Rfが炭素数4~6のポリフルオロアルキル基であり、Qは、2価の連結基である組合せの(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、CH=C(CH)COO-CHCH-C13および/またはCH=C(CH)COO-CHCH-Cを含むことがより好ましい。
【0026】
[構成単位(B)]
本発明において、含フッ素重合体が有する構成単位(B)は下記式(b)で表される化合物から導かれる。なお、構成単位(B)は、式(b)に示される二重結合が開裂した構造である。
CH=CR-COO-Q-R (b)
:水素原子またはメチル基、
:水素原子、メチル基またはOH基、
:炭素数1~12のアルキレン基または下記式(t)で表される基。
-(RO)n- (t)
:炭素数2~4のアルキレン基、
n:1~9の整数。
【0027】
・R
式(b)において、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0028】
・R
式(b)において、Rは、水素原子、メチル基またはOH基を表す。
【0029】
・Q
式(b)において、Qは炭素数1~12のアルキレン基または下記式(t)で表される基を表す。
炭素数1~12のアルキレン基は、炭素数が3以上である場合、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
なお、Rにおけるメチル基及びQはフッ素原子を有さない。
【0030】
式(t)は以下のとおりである。
-(RO)n- (t)
式(t)において、Rは炭素数2~4のアルキレン基を表し、nは1~9の整数を表す。
炭素数2~4のアルキレン基は、炭素数が3以上である場合、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。炭素数2~4のアルキレン基は、本発明の効果がより優れるという観点から、炭素数2のアルキレン基(ジメチレン基)であることが好ましい。
が式(t)で表される基である場合、式(t)中のnは、本発明の効果がより優れるという観点から、1~3の整数であることが好ましい。
【0031】
式(b)で表される化合物としては、Qが炭素数1~12のアルキレン基である場合、例えば、
アルキル基の炭素数が1~13であるアルキル(メタ)アクリレート(Qが炭素数1~12のアルキレン基であり、Rが水素原子またはメチル基である態様1)、
炭素数が1~12であるヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(Qが炭素数1~12のアルキレン基であり、Rがヒドロキシ基である態様2)が挙げられる。
【0032】
式(b)で表される化合物は、本発明の効果がより優れるという観点から、炭素数が1~12であるヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(態様2)を含むことが好ましい。
【0033】
・Qが炭素数1~12のアルキレン基であり、Rが水素原子またはメチル基である場合(態様1)
アルキル基の炭素数が1~13であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
式(b)で表される化合物が態様1の化合物を含む場合、式(b)で表される化合物は、本発明の効果がより優れるという観点から、Rが水素原子またはメチル基であり、Rが水素原子であり、Qが炭素数1~5のアルキレン基である化合物を含むことが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレートを含むことが更に好ましい。
【0035】
・Qが炭素数1~12のアルキレン基であり、Rがヒドロキシ基である場合(態様2)
炭素数が1~12であるヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(態様2)としては、例えば、後述する、式(b1)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
・式(b1)で表される化合物
本発明の効果がより優れるという観点から、式(b)で表される化合物が、下記式(b1)で表される化合物を含むことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
CH=CR21-COO-Q21-R31 (b1)
式(b1)において、
21は水素原子またはメチル基を表し、
31はOH基を表し、
21は炭素数1~12のアルキレン基を表す。
21で表される炭素数1~12のアルキレン基は、式(b)中のQで表される炭素数1~12のアルキレン基と同様である。
【0037】
式(b1)で表される化合物は、本発明の効果がより優れるという観点から、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0038】
式(b)で表される化合物が式(b1)で表される化合物を含む場合、例えば、式(b)で表される化合物が後述する式(b2)で表される化合物を更に含む態様(態様2′)、含フッ素重合体が下記式(d)で表される化合物から導かれる構成単位(D)を更に有する態様(態様2′′)が挙げられるが、上記の中では、本発明の効果がより優れるという観点から、態様2′が好ましい。
【0039】
・式(b2)で表される化合物
式(b)で表される化合物が式(b1)で表される化合物を含む場合、本発明の効果がより優れるという観点から、式(b)で表される化合物が、下記式(b2)で表される化合物を更に含むことが好ましい(態様2′)。
CH=CR22-COO-Q22-R32 (b2)
式(b2)において、
22は水素原子またはメチル基を表し、
32はメチル基を表し、
22は下記式(t2)で表される基を表す。
-(R42O)n2- (t2)
式(t2)において、R42は炭素数2~4のアルキレン基を表し、n2は1~9の整数を表す。R42で表される炭素数2~4のアルキレン基は、上記式(t)におけるRと同様であり、n2は上記式(t)におけるnと同様である。
【0040】
式(t2)中のn2は、本発明の効果がより優れるという観点から、1~3の整数であることが好ましい。
【0041】
[構成単位(C)]
本発明において、含フッ素重合体が有する構成単位(C)は下記式(c)で表される化合物から導かれる。なお、構成単位(C)は、式(c)に示される二重結合のうちの一方または両方が開裂した構造である。
CH=CR-COO-Q-OCO-CR=CH (c)
式(c)において、
は水素原子またはメチル基を表し、
は水素原子またはメチル基を表し、
は単結合または2価の連結基を表す。
なお、Qが単結合である場合、上記式(c)において「-COO-Q-OCO-」がパーオキサイドを形成する場合を除く。
【0042】
で表される2価の連結基としては、例えば、式(a)中のQで表される2価の連結基と同様のものが挙げられる。
は、2価の連結基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基であることがより好ましい。
【0043】
式(c)で表される化合物は、本発明の効果がより優れるという観点から、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0044】
[各構成単位の含有量]
本発明において、含フッ素重合体は、構成単位(A)を含フッ素重合体を構成する全構成単位中の50~98質量%で有し、構成単位(B)を含フッ素重合体を構成する全構成単位中の2~50質量%で有し、構成単位(C)を含フッ素重合体を構成する全構成単位中の0~2質量%で有する。
本発明において、含フッ素重合体を構成する上記の各構成単位の含有量(割合)は、含フッ素重合体を製造する際に使用される、式(a)、(b)、(c)で表される化合物の量が反映されるものとできる。
【0045】
・構成単位(A)の含有量
本発明において、含フッ素重合体は、構成単位(A)を含フッ素重合体を構成する全構成単位中の50~98質量%で有する。なお、含フッ素重合体が構成単位(C)を含フッ素重合体を構成する全構成単位中の2質量%以下で有する場合、構成単位(A)の含有量を含フッ素重合体を構成する全構成単位中の50~96質量%とすることができる。
構成単位(A)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の50~96質量%であることが好ましく、50~80質量%がより好ましい。
【0046】
・構成単位(B)の含有量
本発明において、含フッ素重合体は、構成単位(B)を含フッ素重合体を構成する全構成単位中の2~50質量%で有する。
構成単位(B)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の20~50質量%であることが好ましい。
【0047】
・構成単位(A)と構成単位(B)との合計含有量
構成単位(A)と構成単位(B)との合計含有量は、本発明の効果(特に熱分解性)がより優れるという観点から、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の90~100質量%であることが好ましく、95~100質量%であることがより好ましい。
【0048】
・式(b)で表される化合物が上記態様1に該当する化合物を含む場合
式(b)で表される化合物が上記態様1に該当する化合物を含む場合、構成単位(A)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の60~98質量%であることが好ましい。
また、上記の場合、構成単位(B)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の2~40質量%であることが好ましい。
また、上記の場合、構成単位(C)の含有量は、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の0~2質量%である。
【0049】
・式(b)で表される化合物が式(b1)で表される化合物を含有する場合(態様2または態様2′)
式(b)で表される化合物が式(b1)で表される化合物を含有する場合(態様2または態様2′)、構成単位(A)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の50~70質量%であることが好ましい。
また、上記の場合、構成単位(B)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の30~50質量%であることが好ましい。
また、上記の場合、構成単位(C)の含有量は、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の0~2質量%である。
【0050】
・式(d)で表される化合物
式(b)で表される化合物が式(b1)で表される化合物を含む場合、本発明の効果がより優れるという観点から、含フッ素重合体は、下記式(d)で表される化合物から導かれる構成単位(D)を更に有することが好ましい(態様2′′)。なお、構成単位(D)は、式(d)に示す二重結合が開裂した構造である。
CH=CR23-COO-Q23-R33 (d)
式(d)において、
23は水素原子またはメチル基を表し、
33はメチル基を表し、
23は下記式(t3)で表される基を表す。
-(R43O)n3- (t3)
式(t3)において、R43は炭素数2~4のアルキレン基を表し、n3は10~30の整数を表す。R43で表される炭素数2~4のアルキレン基は、上記式(t)におけるRと同様である。なお、R33及びQ23はフッ素原子を有さない。
【0051】
式(t3)中、n3は、本発明の効果がより優れるという観点から、20~25の整数であることが好ましい。
【0052】
上記含フッ素重合体が下記式(d)で表される化合物から導かれる構成単位(D)を更に有する態様(態様2′′)において、
構成単位(A)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の50~70質量%であることが好ましい。
また、上記の場合、構成単位(B)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の20~40質量%であることが好ましい。
また、上記の場合、構成単位(C)の含有量は、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の0~2質量%である。
また、上記の場合、構成単位(D)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、含フッ素重合体を構成する全構成単位中の20質量%以下であることが好ましく、5~15質量%がより好ましく、5~10質量%が更に好ましい。
【0053】
含フッ素重合体は、本発明の効果がより優れるという観点から、炭素原子、水素原子、フッ素原子および酸素原子のみで構成されることが好ましい。
含フッ素重合体は、本発明の効果がより優れるという観点から、窒素原子を有さないことが好ましい。また、含フッ素重合体は、本発明の効果がより優れるという観点から、硫黄原子を有さないことが好ましい。
【0054】
(溶媒)
本発明の分散剤は、更に、溶媒を含有することができる。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールのようなアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)のようなケトン類;ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)のようなアミド系化合物;トルエンのような芳香族炭化水素;オクタン、ノナン、ヘプタンのようなパラフィン系炭化水素;ハイドロフルオロエーテル(HFE);ハイドロフルオロカーボン(HFC);パーフルオロケトン(PFK)が挙げられる。
【0055】
上記ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、一般的に、骨格が炭素で構成され、上記炭素に結合する水素の一部または全てがフッ素で置換された化合物を指す。
ハイドロフルオロカーボン(HFC)としては、例えば、フルオロアルキル基を有する芳香族炭化水素化合物が挙げられ、具体的には例えば、m-キシレンヘキサフルオリド(以下、m-XHFと記す。)、p-キシレンヘキサフルオリドのようなキシレンヘキサフルオリドが挙げられる。
【0056】
溶媒は、含フッ素重合体を製造する際に使用される重合溶媒に由来してもよい。また、含フッ素重合体に溶媒を後添加してもよい。
【0057】
本発明の分散剤が更に溶媒を含有する場合、上記分散剤が有する固形分(上記分散剤から溶媒を除いた残部)の含有量(固形分濃度)は、特に制限されず、上記分散剤全量中の10~90質量%とできる。
本発明の分散剤が更に溶媒を含有する場合、含フッ素重合体が溶媒に溶解または分散していることが好ましい態様として挙げられる。
【0058】
(含フッ素重合体の製造方法)
含フッ素重合体の製造方法としては、例えば、重合溶媒中、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)のような重合開始剤の存在下で、50~80℃で加温しながら、モノマーとしての、式(a)で表される化合物、および、式(b)で表される化合物、並びに、必要に応じて使用される、式(c)で表される化合物、および/または、式(d)で表される化合物を重合させる方法が挙げられる。
【0059】
上記の製造方法において使用できる重合溶媒としては、例えば、上述の溶媒と同様のものが挙げられる。
重合溶媒の使用量は、本発明の効果がより優れるという観点から、モノマー全量100質量部に対して、100~600質量部であることが好ましく、200~400質量部がより好ましい。
重合開始剤の使用量は、本発明の効果がより優れるという観点から、モノマー全量100質量部に対して、0.1~5.0質量部であることが好ましく、0.3~2.0質量部がより好ましい。
【0060】
上記のように製造した含フッ素重合体を、分散剤として使用することができる。例えば、上記重合後の反応液(溶媒を含んでもよい)をそのまま分散剤として使用してもよい。
【0061】
(用途)
本発明の分散剤は溶剤中にフッ素樹脂粒子を分散させるために使用することができる。
本発明の分散剤を使用することによって、溶剤中にフッ素樹脂粒子を分散させることができる。溶剤、フッ素樹脂粒子について後述する。
【0062】
[残渣量]
本発明において、本発明の分散剤を350℃で加熱した後の残渣量は、上記加熱前の本発明の分散剤の5質量%未満である。
本発明の分散剤は優れた熱分解性を有するので、本発明の分散剤およびフッ素樹脂粒子を含む分散液を加熱(例えば焼成)した場合、加熱後のフッ素樹脂の絶縁性等の性能を向上させることができると考えられる。
【0063】
上記残渣量は、加熱前(後述する示差熱熱重量分析を開始したとき)の分散剤(試料)の量を100質量%とする割合(質量%)で表される。
【0064】
本発明の分散剤を350℃で加熱する条件は、以下のとおりである。
示差熱熱重量分析により、示差熱熱重量同時測定装置を用いて、空気流量400ml/minの条件下で、まず、2℃/minの速度で0℃から450℃へ温度を上昇させ、次いで、1000℃へ温度を上昇させた。上記分析によって得られた分解曲線から、示差熱熱重量分析を開始したときの分散剤(試料)の量を100質量%として、350℃到達時の質量割合を、350℃到達時の残渣量(質量%)とした。
【0065】
本発明の分散剤が更に溶媒を含有する場合、上記の分散剤を乾燥し350℃で加熱した後の残渣量が、上記乾燥後(つまり示差熱熱重量分析を開始したとき)の分散剤の5質量%未満であればよい。
350℃で加熱する前(示差熱熱重量分析前)に分散剤を乾燥する条件は特に制限されない。例えば、真空乾燥機を用いて、100℃以下、減圧の条件下で、上記分散剤を乾燥させることができる。
【0066】
(分散液)
本発明の分散剤を含む分散液としては、例えば、フッ素樹脂粒子と、溶剤と、本発明の分散剤とを含む分散液が挙げられる。
本発明の分散剤は、溶剤中にフッ素樹脂粒子を分散させることができる。
上記分散液において、フッ素樹脂粒子は、溶剤中に分散している状態であればよい。
【0067】
(フッ素樹脂粒子)
上記分散液に含有されるフッ素樹脂粒子は、フッ素を有するポリマー(フッ素ポリマー)の粒子であれば特に制限されない。
フッ素ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなポリフルオロアルケンの単独重合体、共重合体が挙げられる。
上記フッ素樹脂粒子の粒子径は特に制限されないが、例えば、一次粒子径で0.01~1.0μmが挙げられる。
上記フッ素樹脂粒子の含有量は、分散液全量中の1.0~50質量%とできる。本発明において、上記フッ素樹脂粒子の含有量は、上記範囲内であれば適宜調節することができる。上記フッ素樹脂粒子の含有量は、分散液全量中の1.0~30質量%又は1.0~25質量%であってもよい。
【0068】
(分散剤)
上記分散液に含有される分散剤は、本発明の分散剤であれば特に制限されない。
上記分散液に含有される分散剤(本発明の分散剤が更に溶媒を含有する場合、上記分散剤から溶媒を除いた固形分)の含有量は、分散性がより優れるという観点から、分散液全量中の0.1~20質量%であることが好ましい。本発明において、上記分散剤の含有量は、上記範囲内であれば適宜調節することができる。上記分散剤の含有量は、分散液全量中の1.0~10質量%であってもよい。
【0069】
(溶剤)
上記分散液に含有される溶剤は特に制限されない。
上記分散液に含有される溶剤としては、例えば、フッ素溶剤、本発明の分散剤が更に含有することができる上述の溶媒と同様のもの(ただし上記溶媒からフッ素溶剤を除く。)、ミネラルスピリット、これらの組合せが挙げられる。
【0070】
上記溶剤としてのフッ素溶剤は、フッ素原子を有し、且つ、溶剤として使用できるものであれば特に制限されない。フッ素溶剤としては、例えば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロケトン(PFK)、これらの組合せが挙げられる。上記のハイドロフルオロカーボン(HFC)等は、本発明の分散剤が更に含有することができる溶媒と同様であってもよい。
【0071】
また、フッ素溶剤としては、具体的には例えば、以下の化合物、及び、これらの混合物が挙げられる。
CHFCFOCHCF(1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル)
m-キシレンヘキサフルオリド
p-キシレンヘキサフルオリド
CFCHCFCH
CFCHCF
13OCH
13OC
13CHCH
OCH
OC
13
CFHCFCHOCFCF
CFCFHCFHCFCH
CF(OCFCF(OCFOCFH(m、nは、それぞれ独立に、1~20の整数を表す。)
17OCH
15OCH
13OCH
OCH
OC
CFCHOCFCFCF
【0072】
上記分散液に含有される溶剤は、分散性がより優れ、洗浄性(例えば、電子部品、半導体部品等に対する洗浄性)が優れるという観点から、ケトン類および/またはアミド系化合物を含むことが好ましく、アミド系化合物を含むことがより好ましく、環状のアミド系化合物を含むことが更に好ましく、N-メチルピロリドン(NMP)を含むことがより更に好ましい。
溶剤としてのケトン類は、カルボニル基を有する化合物であれば特に限定されない。ケトン類としては例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)のようなケトンが挙げられる。
溶剤としてのアミド系化合物は、アミド結合を有する化合物であれば特に限定されない。アミド系化合物としては、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)のようなアミド系化合物が挙げられる。環状のアミド系化合物としては例えば、NMPが挙げられる。
NMPは、一般的に電子部品、半導体部品等に対する洗浄剤として使用されるが、表面張力が高くフッ素樹脂(例えばPTFE)との乖離が大きいため、NMP自体はフッ素樹脂粒子(例えばPTFE粒子)を分散させる能力が非常に低い。
しかし、本発明の分散剤を含む分散液は所定の含フッ素重合体を含有するため、分散液に含まれる溶剤中にNMPのような、フッ素樹脂粒子を分散させにくい溶剤が存在したとしても、容易にフッ素樹脂粒子を溶剤に分散させることができる。
なお、本発明の分散剤が更に溶媒を含有する場合、上記溶媒と、分散液に使用されうる溶剤とは、洗浄性が優れるいう観点から、いずれもケトン類および/またはアミド系化合物を含むことが好ましく、いずれもアミド系化合物を含むことがより好ましく、いずれもNMPを含むことが更に好ましい。
本発明において、上記分散液における溶剤の含有量は適宜調節することができる。例えば、上記分散液における溶剤(例えば、NMP。以下同様)の含有量は上記分散液からフッ素樹脂粒子及び本発明の分散剤を除いた残部の量とすることができる。また、上記分散液における溶剤の含有量は、例えば、分散液全量中の30質量%以上とできる。また、溶剤の含有量の上限は特に制限されないが、例えば、分散液全量中の98質量%以下とできる。なお、本発明の分散剤が更に溶媒を含有する場合、溶剤の含有量に、本発明の分散剤に由来する溶媒の量を含ませてよい。
上記分散液における溶剤がNMPを含む場合、NMPの含有量は、分散液中、一般的にNMPに対し分散しにくいフッ素樹脂粒子を上述のとおり優れたレベルで分散させつつ、分散液の洗浄性が優れるいう観点から、上記分散液全量中の、60~90質量%であることが好ましく、70~80質量%がより好ましい。
【0073】
・添加剤
上記分散剤は、必要に応じて、更に添加剤を含有することができる。上記添加剤としては、例えば、フッ素樹脂粒子を構成するポリマー以外のポリマー、充填剤、可塑剤、老化防止剤が挙げられる。
【0074】
・分散液の製造方法
分散液の製造方法としては、例えば、フッ素樹脂粒子と、溶剤と、本発明の分散剤と、必要に応じて使用することができる添加剤とを含む混合液に、超音波をかける方法が挙げられる。
【0075】
・分散液の使用方法
分散液の使用方法としては、例えば、基材に分散液を塗布し、乾燥する方法が挙げられる。上記乾燥後の分散液を加熱(例えば焼成)してもよい。
【実施例0076】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明は実施例に限定されない。
【0077】
[分散剤の製造]
下記第1表の[分散剤の製造]欄に示す各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを500mLアンプル瓶に入れて、窒素パージ後、密栓した。アンプル瓶を恒温槽しんとう器で撹拌し、70℃で、16時間重合反応を行い、分散剤(分散剤1~12、比較分散剤1~2)を製造した。
ガスクロマトグラフィーにより求めた、モノマーの反応率を第1表に示す。
また、製造された各分散剤中の固形分濃度(質量%)を第1表に示す。
【0078】
第1表の[分散剤の製造]に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
[式(a)で表される化合物]
・C6FMA:下記構造。下記式において-C13は直鎖状のポリフルオロアルキル基である。
【化1】
・C4FMA:CH=CCH-CO-O-CHCH-C。上記化学式において-Cは直鎖状のポリフルオロアルキル基である。
【0079】
[式(b)で表される化合物]
(態様1)
・BMA:n-ブチルメタクリレート
・ライトエステルL-7:上記は商品名。下記構造の化合物。共栄社化学社製。
【化2】
【0080】
(式(b1)で表される化合物)
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0081】
(式(b2)で表される化合物)
・ブレンマーPME-100:上記は商品名。下記構造の化合物。日油社製。
【化3】
・ブレンマーPME-400:上記は商品名。下記構造の化合物。日油社製。
【化4】
【0082】
(式(d)で表される化合物)
・ブレンマーPME-1000:上記は商品名。下記構造の化合物。日油社製。
【化5】
【0083】
・比較化合物1:ライトエステルDOD-MA、共栄社化学社製。下記構造。
【化6】
【0084】
[式(c)で表される化合物]
・EGDM:下記構造の化合物。
【化7】
【0085】
・連鎖移動剤:C1225SH
・開始剤:商品名V-601。2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)。富士フイルム和光純薬製。
【0086】
(溶媒)
・NMP:N-メチルピロリドン
・m-XHF:下記構造の化合物
【化8】
・MEK:メチルエチルケトン
・アイソパーE:上記は商品名。イソパラフィン系炭化水素。オクタン(60~70質量%)、ノナン(30~40質量%)、および、ヘプタン(0~5質量%)の混合物。安藤パラケミー製
・DMAc:ジメチルアセトアミド
【0087】
[分散剤の熱分解性]
上記のとおり製造された各分散剤の熱分解性の評価を以下のとおり行った。結果を第1表に示す。
・評価方法
各分散剤を真空乾燥機VOS-451SDを用いて、90℃、-1MPaの条件下で、4時間乾燥させた。次いで、乾燥後の各分散剤(固形分)を、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)を用いて、空気流量400ml/minの条件下で、まず、2℃/minの速度で0℃から450℃へ温度を上昇させ、次いで、1000℃へ温度を上昇させた。上記分析によって得られた分解曲線から、示差熱熱重量分析を開始したときの分散剤(固形分)の量を100質量%として、350℃到達時の質量割合を、350℃到達時の残渣量(質量%)とした。
・判定
本発明において、350℃で加熱した後の残渣量が、上記加熱前の分散剤(上記分析で使用された固形分)の量の5質量%未満であった場合、分散剤の熱分解性が優れると評価し、これを「○」と表示した。また、上記の場合、上記残渣量が少ない程、分散剤の熱分解性がより優れる。
一方、上記残渣量が、加熱前の分散剤の量の5質量%以上であった場合、分散剤の熱分解性が悪いと評価し、これを「×」と表示した。
【0088】
[分散液の製造]
下記第1表の[分散液の製造]欄に示す、PTFE粒子(株式会社喜多村製KTL-500F。一次粒子径0.3μm)、上記のとおり製造した各分散剤、および、溶剤を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを混合し、混合液を発振周波数40kHz、出力600Wの超音波条件で10分間分散させ、各分散液を製造した。
【0089】
第1表の[分散液の製造]に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(フッ素樹脂粒子)
・PTFE粒子:ポリテトラフルオロエチレンの粒子。株式会社喜多村製KTL-500F。一次粒子径0.3μm
【0090】
(分散剤)
・上記のとおり製造された各分散剤。第1表の[分散剤の製造]で示す「製造された分散剤の番号」で各分散剤を示す。なお、各分散剤は製造後の溶媒を含んだ状態で使用された。
【0091】
(溶剤)
・MEK:メチルエチルケトン
・酢酸ブチル
・AE-3000:商品名アサヒクリンAE-3000(AGC社製)。CHFCFOCHCF
・NMP:N-メチルピロリドン
・DMAc:ジメチルアセトアミド
【0092】
[分散剤の分散性]
上記のとおり製造された各分散液を用いて、分散剤の分散性を以下のとおり評価した。結果を第1表に示す。
(分散性)
・分散性の評価方法
上記のとおり超音波をかけて製造された各分散液を静置し、静置してから10分経過後の各分散液を目視で観察した。
・分散性の判定
本発明において、静置開始から10分経過後の分散液において、PTFE粒子の沈降が、なかった、または、ほとんど認められなかった場合、分散剤の分散性が優れると評価し、これを「○」と表示した。
上記評価が「○」であり、分散液に含有される溶剤および/または分散剤(以下、「分散液に含有される溶剤および/または分散剤」を「上記溶剤等」と称する。)に含まれる溶媒がケトン類および/またはアミド系化合物を含む場合、分散性がより優れると評価した。
上記評価が「○」であり、上記溶剤等がアミド系化合物を含む場合、分散性が更に優れると評価した。
上記評価が「○」であり、上記溶剤等がNMPを含む場合、分散性が最も優れると評価した。NMPは表面張力が高くフッ素樹脂(例えばPTFE)との乖離が大きいためである。
【0093】
一方、静置開始から10分経過後の分散液において、上澄み層は見えないが、容器下部にPTFE粒子が沈降した塊が認められた場合、分散剤の分散性が悪いと評価し、これを「△」と表示した。
また、静置開始から10分経過後の分散液において、透明な上澄み層があった場合、または、容器下部にPTFE粒子が沈降した塊が多く認められた場合、分散剤の分散性が非常に悪いと評価し、これを「×」と表示した。
また、静置開始から10分経過後の分散液において、PTFEが溶剤の上に浮いている状態であった場合、分散剤の分散性が最も悪いと評価し、これを「××」と評価した。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
第1表に示す結果から、比較例1の分散剤(比較分散剤1)は、残渣量が5質量%以上であり、熱分解性が悪く、フッ素樹脂粒子を溶剤中に分散させる分散性も悪かった。
含フッ素重合体が構成単位(B)を有さない比較例2の分散剤(比較分散剤2)は残渣量が5質量%以上であり、熱分解性が悪く、フッ素樹脂粒子を溶剤中に分散させる分散性も悪かった。
所定の分散剤を含有せず、溶剤としてNMP又はDMAcを含む比較例3、5は、フッ素樹脂粒子を溶剤中に分散させる分散性が最も悪かった。
所定の分散剤を含有せず、溶剤としてMEKを含む比較例4は、フッ素樹脂粒子を溶剤中に分散させる分散性が非常に悪かった。
【0097】
これに対して、本発明の分散剤は、分散性、熱分解性が優れた。