(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115191
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】基板分割治具
(51)【国際特許分類】
B26F 3/00 20060101AFI20240819BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B26F3/00 A
H05K3/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020743
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 久志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】北井 敦
(72)【発明者】
【氏名】大久保 仁智
【テーマコード(参考)】
3C060
【Fターム(参考)】
3C060AA11
3C060CB03
(57)【要約】
【課題】 分割部近傍の実装部品に対するストレスを軽減できる基板分割治具を提供する。
【解決手段】 基板分割治具は、分割部を介して接続された基板本体及び捨て基板からなる実装基板の基板本体が搭載される搭載面を有するベースと、搭載面の上方において、分割部に沿った搭載面の端部に亘って延在するレール部を備える支持梁部と、レール部に沿って係合して移動自在であり、搭載面に向かって突出し基板本体に接する固定部材を備えるスライド押さえ部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割部を介して接続された基板本体及び捨て基板からなる実装基板の前記基板本体が搭載される搭載面を有するベースと、
前記搭載面の上方において、前記分割部に沿った前記搭載面の端部に亘って延在するレール部を備える支持梁部と、
前記レール部に沿って係合して移動自在であり、前記搭載面に向かって突出し前記基板本体に接する固定部材を備えるスライド押さえ部と、を有する
ことを特徴とする基板分割治具。
【請求項2】
前記支持梁部は前記レール部に沿って延在する案内溝を有し、
前記スライド押さえ部は、前記案内溝の所定位置で前記案内溝を介して締結部材により前記支持梁部に固定されることを特徴とする請求項1に記載の基板分割治具。
【請求項3】
前記スライド押さえ部は、前記搭載面に向かう貫通孔と、前記固定部材として前記貫通孔に位置調整自在に挿入される押さえピンとを備え、前記押さえピンは、その先端が前記基板本体に接する位置に調整可能であり、前記締結部材により固定されて前記基板本体を押さえることを特徴とする請求項2に記載の基板分割治具。
【請求項4】
前記支持梁部及び前記ベースは、前記支持梁部の長手方向に平行な軸周りに前記支持梁部を前記ベースに対して回動可能に支持するヒンジ部を有し、
前記支持梁部及び前記ベースは互いに締結可能とする締結機構を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の基板分割治具。
【請求項5】
前記搭載面の前記端部から出る前記捨て基板を前記分割部に沿って押圧する基板押付け部と、
前記基板押付け部の両端部に係合して前記基板押付け部を移動自在に保持し、前記搭載面の前記端部に垂直に交差する方向に延在するように、前記支持梁部及び前記ベースに亘って設けられているガイドレールと、
前記ガイドレールにおける前記基板押付け部の移動を制限する前記支持梁部に設けられているストッパーと、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の基板分割治具。
【請求項6】
前記スライド押さえ部は、前記搭載面に向かう貫通孔と、前記貫通孔の内壁に設けられた貫通開口から所定深さに横溝を備える縦溝と、前記固定部材として前記貫通孔に挿入される押さえピンを有し、
前記押さえピンは、挿入時に前記縦溝に係合する突起部を備える円柱部を有し、
前記突起部は、前記押さえピンの先端が前記基板本体に接する位置にて、前記円柱部の中心軸周りの回動に応じて前記縦溝の前記横溝と互いに嵌合可能になされ、
前記押さえピンは、前記突起部と前記横溝との嵌合により固定されて前記基板本体を押さえることを特徴とする請求項2に記載の基板分割治具。
【請求項7】
前記ベースは、前記搭載面として、前記基板本体の裏面に裏面実装部品が搭載されている場合に前記裏面実装部品を受ける前記裏面実装部品の補完形状の凹部が形成された上面を、備えた受け台を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の基板分割治具。
【請求項8】
前記受け台は、前記受け台に対して前記基板本体の浮きを防止する基板浮き防止ツメを、前記基板本体の端部に対応する前記搭載面の前記端部の反対側の部分に有することを特徴とする請求項7に記載の基板分割治具。
【請求項9】
前記ベースは、前記受け台を固定する固定ツメ又は固定溝を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の基板分割治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板分割治具に関し、特にプリント基板、特に電子部品が搭載された基板本体と捨て基板を有する実装基板を分割するための基板分割治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、従来から、実装基板の基板本体と捨て基板を分割する場合は、プリント基板が挿入可能なスリットを設けた分割治具へ捨て基板を挿入し、基板本体を手で持って曲げることにより、基板本体と捨て基板の境界に予め設けられたV溝またはミシン目等の分割部で折り、分離していた。
【0003】
特許文献1には、引張り方向のストレスに弱い部品を実装した基板を部品を損傷させることなく、正確かつ効率よく分割除去できる基板分割用治具が記載されている。
【0004】
特許文献2には、同一の分割治具を使用しながら、様々な仕様の実装基板について、捨て基板と基板本体とを分離することが記載されている。また、別の従来の分割方法としてカッターやルーター等、専用の分割機を用いて分割部を切断、または切削により分離する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-1594号公報
【特許文献2】特開平11-254400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、基板本体を曲げるため、基板本体が撓み、特に分割部の近傍に実装された電子部品は強いストレス(歪み)が加わるため、電子部品が破壊される恐れがある。また、基板本体を手で持って曲げることから、作業者や製品ごとに持つ位置や曲げ方が一定ではない。そのため分割部の近傍に実装された電子部品が受けるストレスを事前に予測する場合、最もストレスが大きくなる条件を検討し、電子部品の配置を決定することになるため、分割部近傍の電子部品配置は必要以上に制約、例えば、分割部から遠く離す等を受ける可能性がある。
【0007】
例えば、特許文献1では、電子部品が特定の方向のストレスに弱い場合、実装基板の折り曲げる方向を制限することで、電子部品がストレスに弱い方向に誤って折り曲げることがない分割治具を提案しているが、実装基板の両面に電子部品が搭載される場合、片側に搭載されている電子部品を考慮するともう片側は逆向きのストレスを受けるため、ストレスをすべて解消することは不可能である。
【0008】
また、従来のカッターやルーターなどの分割機を用いる場合、基板本体や部品が受けるストレスは小さくなるものの、専用の分割機の導入や、基板本体端部にコネクタ等が配置されていると分割機の使用が困難であったり、基板本体の種類ごとに受け台を新たに製作する必要があったりする等、制約が多いことが課題であった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、プリント基板等をV溝やミシン目などの分割部を折り曲げて分割する場合、折り曲げる際に基板本体が撓むことによって分割部近傍の実装部品が大きなストレスを受けて破損することを防ぐことのできる基板分割治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による基板分割治具は、分割部を介して接続された基板本体及び捨て基板からなる実装基板の前記基板本体が搭載される搭載面を有するベースと、前記搭載面の上方において、前記分割部に沿った前記搭載面の端部に亘って延在するレール部を備える支持梁部と、前記レール部に沿って係合して移動自在であり、前記搭載面に向かって突出し前記基板本体に接する固定部材を備えるスライド押さえ部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板分割に際して、分割部近傍の実装部品に対するストレスを軽減する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による第1の実施例の基板分割治具の外観を示す概略斜視図である。
【
図2】第1の実施例の基板分割治具のベースを示す概略斜視図である。
【
図3】第1の実施例の基板分割治具により分割処理される分割対象のプリント基板の一例の実装基板を示す概略斜視図である。
【
図4】第1の実施例の基板分割治具により分割処理される分割対象のプリント基板の他の例の両面実装基板を示す概略斜視図である。
【
図5】第1の実施例の基板分割治具により分割処理される分割対象のプリント基板の他の例の両面実装基板を受ける受け台を示す概略斜視図である。
【
図6】第1の実施例の基板分割治具の受け台上に実装基板を装填した基板分割治具を示す概略斜視図である。
【
図7】第1の実施例の基板分割治具の受け台上に実装基板を装填した当該基板分割治具を示す正面図である。
【
図9】第1の実施例の基板分割治具の受け台上に実装基板を装填した基板分割治具の支持梁部が回動する様子を示す概略斜視図である。
【
図10】第1の実施例のヒンジの変形例を有する基板分割治具の受け台上に実装基板を装填した基板分割治具を示す概略斜視図である。
【
図11】第1の実施例のスライド押さえ部の変形例を有する基板分割治具の受け台上に実装基板を装填した基板分割治具を示す概略斜視図である。
【
図12】第2の実施例の基板分割治具の受け台上に実装基板を装填した当該基板分割治具を示す正面図である。
【
図14】第2の実施例の基板分割治具の受け台上に実装基板を装填した基板分割治具を示す概略斜視図である。
【
図15】第3の実施例における基板分割治具のスライド押さえ部と押さえピンを示す概略分解斜視図である。
【
図16】第3の実施例における基板分割治具の押さえピンを示す概略斜視図である。
【
図17】第3の実施例における基板分割治具のスライド押さえ部に押さえピンを嵌合させた様子を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明による実施例の基板分割治具について詳細に説明する。なお、実施例において、実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
(第1の実施例)
図1は、本実施例の基板分割治具JGを示す概略斜視図である。なお、説明の便宜上、図に示すように直交XYZ座標軸の各軸の方向をXYZ方向として、基板出し入れ側から基板分割治具JGの背面に向かう方向をZ方向(すなわち、手前と奥手)とし、基板出し入れ側から見て左右(X方向)、上下(Y方向)として説明する。
【0015】
基板分割治具JGは、正面と上面が開放可能な基板出し入れ側を有する略長方体の例えば金属製の枠体を有する。基板分割治具JGは、分割対象のプリント基板等が搭載される受け台2(搭載面TF)を有するベース1と、支持梁部3と、スライド押さえ部5と、を有する。
【0016】
図2は、搭載面TFを有する受け台2を除いた基板分割治具JGのベース1を示す概略斜視図である。基板分割治具JGのベース1の枠体は、上面からみてC文字状の壁部の奥と左右の壁部の底部をつなぐ底部BTMを備え、奥壁部には底部BTMを拡大させた受け台2を固定する固定溝FG(又は固定ツメであってもよい)が設けられている。
【0017】
図1は、
図2のベース1上に受け台2が固定配置された様子を示している。受け台2には、その搭載面TF上に分割対象のプリント基板を所定位置に配置できるように、当該基板の基準孔に嵌合される例えば3個のボス8が搭載面TFに設けられている。
【0018】
図3は、基板分割治具JGにより分割処理される分割対象のプリント基板の一例の実装基板13を示す概略斜視図である。実装基板13は分割部12を介して接続された基板本体9及び捨て基板10からなる。
【0019】
基板本体9のおもて面には複数の実装部品7が搭載されている。また、同おもて面には、予め決められた基板本体9の位置決め用に基準孔RHの複数(2個以上、例えば3個)が穿孔されている。これにより、受け台2の対応する位置にボス8を設けることで速やかに実装基板13の位置決めおよび固定を行うことができる。
【0020】
図4は、基板分割治具JGにより分割処理される分割対象のプリント基板の他の例の両面実装基板13aを示す概略斜視図である。
図5は、当該他の例の両面実装基板13aを受ける受け台2aを示す概略斜視図である。受け台2は合成樹脂で成形でき、基板本体9の裏面に裏面実装部品7a等が搭載されている場合、受け台2aの搭載面TFの該当部分(裏面部品実装部15)を切削または成形しておくことで、実装基板13aの裏面の裏面実装部品7aが受け台2と干渉せず、安定して実装基板13aを受け台2aに配置することができる。これにより裏面実装部品7aが受けるストレスを小さくすることができる。また異なる種類の実装基板13に対応する受け台2を複数用意しておけば、ベース1は1種類のみで異なる種類の実装基板に対応が可能となる。
【0021】
このように、ベース1は、搭載面TFとして、基板本体9の裏面に裏面実装部品7aが搭載されている場合に裏面実装部品7aを受ける裏面実装部品7aの補完形状の凹部が形成された上面を、備えた受け台2を有することができる。
【0022】
翻って、
図1に示すように、基板本体9の位置決め用に基準孔RHと受け台2の搭載面TFのボス8の嵌合により、受け台2の搭載面TFの端部TFEが基板本体9の分割部12側の縁部がほぼ揃って、ほぼ捨て基板10が受け台2の端部TFEから手前に出るように、基板本体9をセットできる。
【0023】
分割部12は、基板本体9から捨て基板10を分割するためのVカットやミシン目(スリット)を付けられた周囲よりも脆弱な線状の部位である。基板分割治具JGの搭載面TFの端部TFEから出る捨て基板10を基板本体9に対して曲げることにより、分割部12が割れて、基板本体9を取り出し分割処理は完了する。
【0024】
当該分割処理を円滑に行うための基板分割治具JGの詳細を説明する。
図6は、搭載面TFを有する受け台2上に実装基板13を装填した基板分割治具JGを示す概略斜視図である。
図7は、当該基板分割治具JGを示す正面図である。
図8は、
図7の線BBにおける断面図である。
【0025】
図6~
図8に示すように、支持梁部3は、搭載面TFの上方において、実装基板13の分割部12に沿った搭載面TFの端部TFEに亘って延在する水平レールRL(レール部)を備える。
【0026】
支持梁部3には、離れて対向した一対の平行な水平レールRLが設けられている。水平レールRLの間には、これらに沿って係合して左右方向に移動自在であるスライド押さえ部5が取り付けられている。支持梁部3は手前側の水平レールRLに沿って延在する案内溝GGを有し、スライド押さえ部5は、案内溝GGの所定位置で案内溝GGを介して固定ビス11(締結部材)により支持梁部3に固定される。
【0027】
スライド押さえ部5の中央には上下に貫通する貫通孔KHが設けられており、これに押さえピン6(基板本体9を固定する固定部材)が挿入され、案内溝GGを通過した固定ビス11の先端で押さえピン6の側面を固定する。この際、押さえピン6は、押さえピン6が上下の任意の高さに調整された後、押さえピン6の先端が基板本体9の表面に接する位置でビス11により支持梁部3(案内溝GG)に固定される。このように、スライド押さえ部5は、搭載面TFに向かって突出し基板本体9に接する固定部材としてのスライド押さえ部5を有する。
【0028】
図6及び
図8に示すように、基板本体9が搭載される搭載面TFを有するベース1において、支持梁部3はヒンジ4によってベース1と接続されている。
【0029】
支持梁部3及びベース1を接続するヒンジ4は、支持梁部3の長手方向(左右方向)に平行な軸周りに支持梁部3をベース1に対して、
図9に示すように、回動可能に支持する。
【0030】
支持梁部3の下面及びベース1の手前側上面には、互いに締結可能とする固定ツメ14(ラッチ受け及びボルト等の締結機構)が備えられている。ベース1の手前側側面には、固定ツメ14の締結を解除するための解除ボタンBUが設けられている。
【0031】
(ヒンジの変形例)
図10は、ヒンジの変形例を有する受け台2上に実装基板13を装填した基板分割治具JGを示す概略斜視図である。この変形例は、ヒンジ4aが、例えばベース1の最も奥側に配置され、支持梁部3両端にヒンジ4a(ベース1の奥壁)まで拡張した拡張部3aを設ける構造とした以外、第1の実施例と同一である。この変形例では、ヒンジ4aにより拡張部3aと支持梁部3が、支持梁部3の長手方向(左右方向)に平行な軸周りに、回動可能に支持されることにより、作業時の受け台2や実装基板13の出し入れが容易になる。
【0032】
(スライド押さえ部の変形例)
図11は、2個のスライド押さえ部を用いる変形例の、受け台2上に実装基板13を装填した基板分割治具JGを示す概略斜視図である。この変形例は、実装基板13に2個の分割部12a,12bがある場合にそれぞれに対応する位置にスライド押さえ部5a,5b(それぞれ貫通孔KH、押さえピン6およびビス11を備える)を用いた以外、第1の実施例と同一である。
図10に示すように、スライド押さえ部5、押さえピン6およびビス11は分割部12の数との長さに合わせて複数組使用してもよい。
【0033】
(動作の説明)
図1に示す基板分割治具JGを用いて実装基板13から捨て基板10を分離する動作について順に説明する。まず、初期状態は
図9に示すように支持梁部3は解放位置にあり、実装基板13の基板本体9を受け台2に設置しやすい状態とする。
【0034】
この状態で実装基板13を手前から挿入し、実装基板13の基板本体9に開けられた基準孔RHとボス8の位置を合わせ、実装基板13を設置する。
【0035】
次にスライド押さえ部5をスライドさせて、押さえピン6が分割部12に最も近くなるように位置を調整し、支持梁部3を手前に倒し、固定ツメ14によりベース1へ固定する。この時点でスライド押さえ部5の左右位置が分割部12からずれている場合や、押さえピン6が基板本体9と接触していない場合は位置を調整する。以上により実装基板13は分割治具へ固定された状態となる。
【0036】
調整後の状態にて捨て基板10の分割部12近傍を、手もしくはペンチ等の既存の工具で挟み、
図8の破線で示す捨て基板10のように、上方向に折り曲げることで捨て基板10は分割部12から切り離される。捨て基板10が切り離された後は解除ボタンBUを押して固定ツメ14の締結を解除し、支持梁部3を奥へ倒し、基板本体9を持ち上げて受け台2から取り外す。
【0037】
(効果の説明)
実装基板13の基板本体9を分割治具に固定し、手もしくはペンチ等の既存の工具で挟み、上方向に折り曲げようとすると、基板本体9は押さえピン6に押さえられており浮きあがることがない。また押さえピン6で基板本体9は分割部12近傍で拘束されているため、基板本体9が受けるストレスは極めて小さくなり、よって実装部品7が受けるストレスも同様に極めて小さく、実装部品が破壊される懸念は十分に小さくなるという効果が得られる。
【0038】
また、ストレスに弱い実装部品を実装基板13の分割部12に近づけることができ、実装基板13の小型化にも寄与できる。
【0039】
一方でカッターやルーターを使用する従来技術との比較では、従来技術では装置導入や受け台2の作成にコストがかかっていたが、第1の実施例ではベース1および支持梁部3が金属製でコストがかかるものの、受け台2を樹脂製とし実装基板13ごとに製作することで、ベース1および支持梁部3を流用することが可能で低コストでの運用が期待できる。なお、受け台2は金属製であってもよい。
【0040】
(第2の実施例)
図12は、第2の実施例の基板分割治具JGを示す正面図である。
図13は、
図12の線BBにおける断面図である。
図14は、第2の実施例の基板分割治具JGを示す概略斜視図である。本実施例は、捨て基板押付け部22とガイドレール24とを有する捨て基板分離機構21および基板浮き防止ツメ25を追加した以外、第1の実施例と同一である。
【0041】
捨て基板押付け部22は、搭載面TFの端部TFEから出る捨て基板10を分割部12に沿って押圧する。ガイドレール24は、捨て基板押付け部22の両端部に係合して捨て基板押付け部22を移動自在に保持し、搭載面TFの端部TFEに垂直に交差する方向に延在するように、支持梁部3及びベース1に亘って設けられている。ガイドレール24には、ストッパー23が捨て基板押付け部22の上方の移動を制限する支持梁部3に設けられている。
【0042】
第1の実施例では捨て基板10を基板本体9から切り離すには手や工具を使用する想定であったが、実装基板13に複数の分割線があり、各分割線の長さが異なっている場合は、複数の工具を用意して、分割するため時間がかかる。また、第1の実施例では工具を当てる位置が作業者間で異なり、曲げ方が一定ではない可能性がある。そのため、第2の実施例では、作業者間で曲げ方に差異が出ないように捨て基板10を分離する捨て基板分離機構21を追加する。
【0043】
図12~
図14に示すように、第1の実施例に対し、第2の実施例ではベース1および支持梁部3にガイドレール24を追加し、ガイドレール24に取り付ける形で捨て基板分離機構21を追加しており、捨て基板分離機構21は捨て基板押付け部22をガイドレール24に沿って平行に上下に動かすことができる。
【0044】
受け台2は、受け台2に対して基板本体9の浮きを防止する基板浮き防止ツメ25を、基板本体9の端部に対応する搭載面TFの端部TFEの反対側の部分に有する。受け台2に対して基板浮き防止ツメ25が追加されているので、捨て基板分離機構21の捨て基板押付け部22が下方に移動して、捨て基板10を押し下げても基板本体9が外れることがない。
【0045】
(動作の説明)
図12~
図14に示すように、第2の実施例においては、実装基板13を受け台2に設置する際、実装基板13をまず基板浮き防止ツメ25へ差し込んでから基板本体9に開けられた基準孔RHとボス8の位置を合わせて受け台2に置く。
【0046】
支持梁部3を手前に倒し、固定ツメ14によりベース1へ固定した後、捨て基板分離機構21をガイドレール24に沿って指または手で上から下に向かって平行に押す。捨て基板分離機構21の捨て基板押付け部22が捨て基板10に接触するが、さらに捨て基板分離機構21を下方に押し込むことで捨て基板10は下方向に折れ、分割部12から切り離される。
【0047】
捨て基板10が切り離された後は捨て基板分離機構21をストッパー23に当たるまで手で下から上に持ち上げる。なお、ストッパー23に磁石やツメなどで捨て基板分離機構21を固定する機能を付加してもよい。
【0048】
解除ボタンBUを押し固定ツメ14の締結を解除して支持梁部3を奥へ倒し、基板本体9の手前を先に持ち上げ、引き抜くようにすることで基板浮き防止ツメ25の影響を受けることなく基板本体9を取り出すことができる。
【0049】
(効果の説明)
以上のように、第2の実施例によれば、手や工具で捨て基板10を直接折る動作が不要になったため、基板本体9や実装部品7が受けるストレスについて、作業者間でのばらつきが小さくなり、分割部12の近傍に配置する電子部品の制約は最小限で済むと期待される。
【0050】
また、第1の実施例では支持梁部3固定後、手や工具で捨て基板10を挟むという動作が必要だが、第2の実施例では支持梁部3固定後は捨て基板分離機構21を押し込むだけでよく、より効率よく作業を行えると期待される。
【0051】
さらに、捨て基板分離機構21を押し込んだ後、ばねなどを用いてストッパー23まで自動で復帰する機能を付加したり、さらに手で押し込むのではなく、例えば電動で下降し捨て基板10を分離、上昇しストッパー23まで復帰を自動で行ったりすることで、作業者の省力化と基板本体9や実装部品7が受けるストレスのばらつきをさらに小さくすることが可能になると期待される。
【0052】
(第3の実施例)
本実施例は、第1の実施例における固定ビス11によるスライド押さえ部5の水平位置調整と押さえピン6の上下位置調整に代えて、固定ビス11によるスライド押さえ部5Xの水平位置調整のみを行い、押さえピン6Xの上下位置調整を固定ビス11で行わないように構成した以外、第1の実施例の基板分割治具JGと同一である。よって、スライド押さえ部5Xと押さえピン6Xだけを説明する。
【0053】
図15は、本実施例の基板分割治具におけるスライド押さえ部5Xと押さえピン6Xを示す概略分解斜視図である。
図16は、本実施例における押さえピン6Xを示す概略斜視図である。
図17は、本実施例におけるスライド押さえ部5Xに押さえピン6Xを嵌合させた様子を示す概略斜視図である。
【0054】
図16、
図17に示すように、押さえピン6Xは、スライド押さえ部5Xの貫通孔KHへの挿入される円柱部CBを有し、円柱部CBにスライド押さえ部5Xの縦溝VGに係合する一対の対向する突起部PPを備える。押さえピン6Xは、その先端から突起部PPの距離KRを、例えば規格化された複数の基板厚さに対応できるよう設定しておき、規格化された基板厚さそれぞれに対応する複数の押さえピン6Xを製造しておく。
【0055】
図15、
図17に示すように、スライド押さえ部5Xは、基板本体9に向かう貫通孔KHの内壁に設けられた貫通開口KHOから所定深さDPに各々が横溝LGを備える一対の対向する縦溝VGを備える。所定深さDPは、挿入時に押さえピン6Xの上部が貫通開口KHOから出て、作業者の手指で摘まめるような長さである。
【0056】
図15、
図17に示すように、押さえピン6Xがスライド押さえ部5Xの貫通孔KHに挿入され、押さえピン6Xの突起部PPがスライド押さえ部5Xの縦溝VGに沿って下方に進み、押さえピン6Xの先端が基板本体9のおもて面に接する規格化された所定の位置にて、突起部PPは、円柱部CBの中心軸周りの回動に応じて縦溝VGの横溝LGと互いに嵌合する。これにより、押さえピン6Xは、突起部PPと横溝LGとの嵌合により固定されて基板本体9を押さえることが可能となる。
【0057】
本実施例によれば、支持梁部3にスライドするスライド押さえ部5Xと押さえピン6Xとを備える基板分割治具による分割処理において、固定ビス11によるスライド押さえ部5の支持梁部3上の水平位置調整のみを行い、規格化された押さえピン6Xの複数の中から、対象のプリント基板の厚さに合う押さえピン6Xを選択して、スライド押さえ部5に挿入して回転嵌合により押さえピン6Xを固定できて作業効率が向上する。
【0058】
上記実施例では電子部品が実装されたプリント基板(プリント回路板(PCB:printed circuit board)を分割する場合を説明したが、プリント基板は電子部品が実施されていないプリント配線板(PWB:printed wiring board)でもよく、またプリント基板以外でも板状のものであれば適用可能である。
【0059】
さらに、本発明は上記の実施例と変形例のいずれの組み合わせをも含む。
【符号の説明】
【0060】
1 ベース
2 受け台
3 支持梁部
4 ヒンジ
5 スライド押さえ部
6 押さえピン
7 実装部品
8 ボス
9 基板本体
10 捨て基板
11 ビス
12 分割部
13 実装基板
14 固定ツメ
15 裏面部品実装部
21 捨て基板分離機構
22 捨て基板押付け部
23 ストッパー
24 ガイドレール
25 基板浮き防止ツメ
FG 固定溝
TF 搭載面
TFE 端部
RL レール
KH 貫通孔
KHO 貫通開口
RH 基準孔
GG 案内溝
LG 横溝
VG 縦溝
PP 突起部
CB 円柱部