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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115192
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 21/00 20060101AFI20240819BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
G01D21/00 N
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020746
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】梶山 輝明
【テーマコード(参考)】
2F076
2G036
【Fターム(参考)】
2F076BA05
2F076BA12
2F076BE04
2F076BE06
2F076BE07
2F076BE08
2F076BE09
2F076BE13
2F076BE17
2G036AA19
2G036AA24
2G036AA27
2G036BB07
2G036CA08
2G036CA10
(57)【要約】
【課題】 試験装置本体の構成品について適切な交換タイミングを報知して、効率的な保守を行うことができる試験装置を提供する。
【解決手段】 複数の測定器10のいずれかと被試験器2とを複数のリレー31により接続する信号切換器30と、複数の測定器10からの計測結果を入力して分析する被試験器用コントローラ(制御部)20とを備え、被試験器用コントローラ20が、信号切換器30における複数のリレーのそれぞれについてオンとオフを制御すると共に、当該オンとオフの切換回数をカウントし、当該カウントした切換回数が特定のしきい値を超えると当該リレーの交換タイミングを通知する試験装置としている。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験器を試験する試験装置であって、
試験信号を出力して前記被試験器からの出力を計測する複数の測定器と、
前記測定器のいずれかと前記被試験器とを複数のリレーにより接続する切換器と、
前記複数の測定器からの計測結果を入力して分析する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記切換器における前記複数のリレーのオンとオフを制御すると共に、当該オンとオフの切換回数をカウントし、当該カウントした切換回数が特定のしきい値を超えると当該リレーの交換タイミングを通知することを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記被試験器と前記切換器との間に、接続部を接続し、
前記接続部は、複数のリレーを備えており、
前記制御部は、前記接続部における前記複数のリレーのオンとオフを制御すると共に、当該オンとオフの切換回数をカウントし、当該カウントした切換回数が特定のしきい値を超えると当該リレーの交換タイミングを通知することを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項3】
前記制御部は、リレー毎にカウントした切換回数を管理するリレー切換回数管理テーブルを備え、前記リレー切換回数管理テーブルで前記リレー毎のカウントした切換回数の総計が前記特定のしきい値を超えたか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2記載の試験装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数のリレーに対して、リレー毎にリレー番号、耐用回数、切換回数及び切換残数を保守画面に表示することを特徴とする請求項3記載の試験装置。
【請求項5】
前記制御部は、複数のしきい値が設定されており、当該しきい値により前記切換残数の表示欄の表示色を変更することを特徴とする請求項4記載の試験装置。
【請求項6】
前記制御部は、リレーの交換を促すメッセージをタスクトレイに表示させることを特徴とする請求項1又は2記載の試験装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記被試験器から前記測定器までを接続する経路の内、交換タイミングが通知されたリレーが関係する経路を特定し、当該特定された経路についてリレーチェックの処理を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験器の試験を行う試験装置に係り、特に、試験装置本体の構成品について適切な交換タイミングを通知して、効率的な保守管理を行うことができる試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
航空機や船舶等に搭載される電子機器(ユニット)が故障すると、電子機器を構成する交換可能な複数のモジュールのうち、どのモジュールが故障したかが特定(要因解析)され、特定された故障モジュールの調整、修理又は交換が行われる。
また、従来、作動時間等から現時点の推定性能を求め、モジュールの寿命を予測して、実際に故障が発生する前に交換する予防交換を行うこともあった。
【0003】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2021-152502号公報「試験装置」(特許文献1)がある。
特許文献1には、被試験器が故障する前に被試験器の電子部品のモジュールの性能劣化を推定し、モジュールの利用効率を向上させ、予防交換等の整備作業を効率的に行うことが示されている。
【0004】
特に、特許文献1の試験装置は、被試験器について、複数のモジュールから構成されるユニットが故障する前に性能劣化を推定して、各モジュールを新品に交換した場合に、ユニットが故障するまでに動作可能な時間(予測故障作動時間)を算出し、予測故障作動時間が長いモジュールから順に交換候補モジュールとして特定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-152502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の試験装置では、被試験器についての性能劣化を推定するものの、試験装置本体の構成品について適切な交換タイミングを報知することはできず、試験装置に対して効率的な保守を行うことができないという問題点があった。
【0007】
尚、特許文献1には、試験装置を構成するリレーの劣化を切換回数に基づいて推定して、リレー交換のタイミングを通知する構成については記載がない。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、試験装置本体の構成品について適切な交換タイミングを報知して、効率的な保守を行うことができる試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、被試験器を試験する試験装置であって、試験信号を出力して被試験器からの出力を計測する複数の測定器と、測定器のいずれかと被試験器とを複数のリレーにより接続する切換器と、複数の測定器からの計測結果を入力して分析する制御部と、を備え、制御部は、切換器における複数のリレーのオンとオフを制御すると共に、当該オンとオフの切換回数をカウントし、当該カウントした切換回数が特定のしきい値を超えると当該リレーの交換タイミングを通知することを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、上記試験装置において、被試験器と切換器との間に、接続部を接続し、接続部は、複数のリレーを備えており、制御部は、接続部における複数のリレーのオンとオフを制御すると共に、当該オンとオフの切換回数をカウントし、当該カウントした切換回数が特定のしきい値を超えると当該リレーの交換タイミングを通知することを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、上記試験装置において、制御部は、リレー毎にカウントした切換回数を管理するリレー切換回数管理テーブルを備え、リレー切換回数管理テーブルでリレー毎のカウントした切換回数の総計が特定のしきい値を超えたか否かを判定することを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、上記試験装置において、制御部は、複数のリレーに対して、リレー毎にリレー番号、耐用回数、切換回数及び切換残数を保守画面に表示することを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、上記試験装置において、制御部は、複数のしきい値が設定されており、当該しきい値により切換残数の表示欄の表示色を変更することを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記試験装置において、制御部は、リレーの交換を促すメッセージをタスクトレイに表示させることを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記試験装置において、制御部は、被試験器から測定器までを接続する経路の内、交換タイミングが通知されたリレーが関係する経路を特定し、当該特定された経路についてリレーチェックの処理を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被試験器を試験する試験装置であって、試験信号を出力して被試験器からの出力を計測する複数の測定器と、測定器のいずれかと被試験器とを複数のリレーにより接続する切換器と、複数の測定器からの計測結果を入力して分析する制御部と、を備え、制御部は、切換器における複数のリレーのオンとオフを制御すると共に、当該オンとオフの切換回数をカウントし、当該カウントした切換回数が特定のしきい値を超えると当該リレーの交換タイミングを通知する試験装置としているので、リレーが消耗して実際に切換器が故障する前に、適切なタイミングでリレーの交換を促し、故障を防ぐことができ、試験装置の保守や試験の効率を向上させることができる効果がある。
【0017】
また、本発明によれば、被試験器と切換器との間に、接続部を接続し、接続部は、複数のリレーを備えており、制御部は、接続部における複数のリレーのオンとオフを制御すると共に、当該オンとオフの切換回数をカウントし、当該カウントした切換回数が特定のしきい値を超えると当該リレーの交換タイミングを通知する上記試験装置としているので、切換器に加えて、接続部のリレーの消耗による故障発生を防ぐことができ、試験装置の保守や試験の効率を向上させることができる効果がある。
【0018】
また、本発明によれば、制御部は、複数のリレーに対して、リレー毎にリレー番号、耐用回数、切換回数及び切換残数を保守画面に表示し、複数のしきい値が設定されており、当該しきい値により切換残数の表示欄の表示色を変更する上記試験装置としているので、リレーの交換タイミングを段階的に通知することができ、作業者は、表示色によって一目で各リレーの交換タイミングを認識でき、保守作業を計画的に行って作業効率を向上させることができる効果がある。
【0019】
また、本発明によれば、制御部は、被試験器から測定器まで接続する経路の内、交換タイミングが通知されたリレーが関係する経路を特定し、当該特定された経路についてリレーチェックの処理を行う上記試験装置としているので、リレーの消耗が進んでいない経路のチェックを省略してリレーチェックの時間を短縮し、効率的に行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本試験装置の概略構成図である。
図2】測定経路の構築例を示す説明図である。
図3】リレーテーブルの例を示す説明図である。
図4】試験パラメータテーブルの例を示す説明図である。
図5】試験Aプログラムの概略を示す説明図である。
図6】試験Bプログラムの概略を示す説明図である。
図7】リレー切換回数管理テーブルの例を示す説明図である。
図8】アラーム定義テーブルの例を示す説明図である。
図9】保守画面の例を示す説明図である。
図10】通知画面の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る試験装置(本試験装置)は、被試験器を試験する試験装置であって、複数の測定器のいずれかと被試験器とを複数のリレーにより接続する信号切換器と、複数の測定器からの計測結果を入力して分析する制御部とを備え、制御部が、信号切換器における複数のリレーのそれぞれについてオンとオフを制御すると共に、当該オンとオフの切換回数をカウントし、当該カウントした切換回数が特定のしきい値を超えると当該リレーの交換タイミングを通知するものであり、リレーが消耗して実際に信号切換器に故障が発生する前に、適切なタイミングで交換を促すことができ、試験装置の保守や試験の効率を向上させることができるものである。
【0022】
[本試験装置の構成:図1
本試験装置の構成について図1を参照しながら説明する。図1は、本試験装置の概略構成図である。
図1に示すように、試験装置(本試験装置)1は、被試験器(被試験装置)2とネットワーク等により接続され、各種の試験を実施するものである。
試験装置1は、被試験器用コントローラ(試験コントローラと記載することもある)20と、各種の計測を行うn台の測定器10-1,10-2,…10-n(測定器10と記載することもある)、特殊な計測を行う専用試験器11-1,11-2,…11-n(専用試験器11と記載することもある)と、信号切換器(切換器)30と、接続部40とを備えている。
尚、専用試験器11が、接続部40を介さずに被試験器2と直接接続される場合もある。また、専用試験器11を備えない場合もある。
【0023】
測定器10-1,10-2,…10-n及び専用試験器11-1,11-2,…11-nは、試験コントローラ20の指示に従って、信号切換部30及び接続部40を介して試験信号を被試験器2に出力し、被試験器2からの出力信号を受信して計測し、計測結果を試験コントローラ20に出力する。
個々の測定器10及び専用試験器11を区別しない場合には、測定器等、又は測定器群と称することもある。
【0024】
信号切換器30は、各測定器10、専用試験器11に接続する複数のリレーを備え、リレーのON/OFFにより、被試験器2に接続する測定器等を切り換える。具体的には、信号切換器30は、試験コントローラ20と切換部制御ラインによって接続され、試験コントローラ20からのリレー制御信号により各リレーがON/OFFされる。
【0025】
接続部40は、被試験器2の各モジュール(被試験モジュール)に接続する複数のリレーを備え、試験コントローラ20からのリレー制御信号(図示せず)によってリレーをON/OFFして、試験信号が入力される被試験モジュールを切り換える。
そして、接続部40から出力される試験信号が被試験器2の被試験モジュールに入力されて試験が行われる。
【0026】
試験コントローラ20は、試験全体の制御を行うコンピュータであり、基本的に、処理を行う制御部と、処理プログラムやデータを記憶する記憶部と、ネットワーク等に接続するインタフェース部とを備えている。また、試験コントローラ20は、表示部及び入力部を備えている。尚、試験コントローラ20は、請求項に記載した制御部に相当している。
後述する実施の形態で説明する各種の処理は、制御部が、記憶部に記憶された処理プログラムを起動することによって実行されるものである。
また、試験コントローラ20の記憶部には、後述する各種テーブルが記憶されている。
【0027】
試験コントローラ20は、ネットワーク等を介して測定器10、専用試験器11、信号切換器30、接続部40、及び被試験器2と接続されている。
また、試験コントローラ20は、試験結果を蓄積するデータベース(図示せず)に接続され、データベースへのデータの書き込み/読み出しを行う。
【0028】
被試験器2は、たとえば航空機や船舶等に搭載され、無線システムで用いられる電子機器であって、試験装置1によって実行される試験の対象となる機器である。また、被試験器2は、交換可能な複数のモジュール(被試験モジュール)を備えている。
被試験器2は、ネットワーク等を介して試験コントローラ20に接続し、試験に必要な情報の送受信を行う。
例えば、試験コントローラ20は、被試験器2に各種の試験条件を設定し、被試験器2は、応答を送信する。
【0029】
[測定経路の構築:図2
上述したように、試験装置1では、同一構成により複数の被試験器2の試験を可能とするため、信号切換器30及び接続部40内に複数のリレーを設け、被試験器2及び実施する試験の内容に応じて、リレーのON/OFFを制御して測定器10又は専用試験器11と被試験器2とを接続して、試験経路(測定経路)を構築している。
【0030】
測定経路の構築について図2を用いて説明する。図2は、測定経路の構築例を示す説明図である。図2では、説明を簡単にするために、測定器群として測定器(1)10-1,測定器(2)10-2,専用試験器(1)11-1の3台のみを示している。
信号切換器30は、複数のリレー31を備えている。ここでは、リレー31-1,31-2,31-3を備えるものとする。リレー31-1は測定器(1)10-1に接続し、リレー31-2は測定器(2)10-2に接続し、リレー31-3は専用試験器(1)11-1に接続している。
【0031】
また、接続部40は、複数のリレー41を備え、ここでは、信号切換器30のリレー31-1に接続するリレー41-1,41-2、信号切換器30のリレー31-2に接続するリレー41-3,41-4、信号切換器30のリレー31-3に接続するリレー41-5,41-6が設けられている。
【0032】
そして、信号切換器30及び接続部40では、試験コントローラ20からのリレー制御信号によってリレー31,41のON/OFFが切り換えられる。
例えば、被試験器Aの試験において、測定器(1)10-1を被試験器Aに接続する場合には、図2に示すように、試験コントローラ20は、信号切換器30のリレー31-1及び接続部40のリレー41-1をONにするようリレー制御を行って、太線で示す測定経路を構築する。
【0033】
試験コントローラ20は、予め各被試験器2について実施される試験プログラム毎に接続すべきリレーが記憶されたテーブル(リレーテーブル)を記憶しており、被試験器2及び試験項目が特定されると、リレーテーブルに従って信号切換器30及び接続部40のリレーのON/OFFを制御して測定経路を構築する。図2の測定経路は、後述する図3のリレーテーブルに基づいて、測定器(1)を使用する際に構築される経路である。
【0034】
[リレーテーブルの例:図3
リレーテーブルの例について図3を用いて説明する。図3は、リレーテーブルの例を示す説明図である。
図3に示すように、リレーテーブルは、被試験器毎に、試験装置1に設けられた測定器10及び専用試験器11と、信号切換器30でONにするリレー31の番号(信号切換器リレーNo.)及び接続部40でONにするリレーの番号(接続部リレーNo.)とを対応付けて記憶している。
リレーテーブルにおいてリレー番号が対応付けられていない測定器等は、試験に使用しないものである。
【0035】
図3では、被試験器A用のリレーテーブルを示しており、測定器(1)、測定器(2)、専用試験器(1)に対応して、各測定器等と接続する際にONとするリレーの番号が記憶されている。
図3の信号切換器リレー番号「1」「2」「3」は、それぞれ、図2のリレー31-1,31-2,31-3に対応し、接続部リレー番号「1」「3」「6」は、それぞれ、図2のリレー41-1,41-3,41-6に対応している。
【0036】
そして、被測定器Aの試験で測定器(1)を使用する際には、図3のリレーテーブルに基づいて、信号切換器30のリレー31-1と接続部40のリレー41-1をONとし、測定器(2)を使用する際には、リレー31-2とリレー41-3をONとし、専用試験器(1)を使用する際には、リレー31-3とリレー41-6をONとして、経路を形成する。
【0037】
[試験パラメータテーブル:図4
次に、試験のプログラムについて図4~6を用いて説明する。図4は、試験パラメータテーブルの例を示す説明図であり、図5は試験Aプログラムの概略を示す説明図であり、図6は試験Bプログラムの概略を示す説明図である。
図4に示すように、試験パラメータテーブルは、試験コントローラ20に設定される試験項目(試験名)に対応する試験プログラム名を記憶するテーブルである。
本実施の形態では、説明を簡単にするために、被試験器と試験プログラムとは1対1に対応しているものとしており、試験Aは被試験器Aの試験プログラムを示している。
同様に、他の被試験器B~被試験器Eに対応する試験項目及び試験プログラムが記憶されている。
【0038】
そして、試験実施時に、試験コントローラ20の操作部から被試験器2の試験パラメータが設定されると、試験コントローラ20は、試験パラメータテーブルで対応付けられている試験プログラムをロードして、試験プログラムに記載されている処理を順次実行し、試験を行う。
【0039】
試験プログラムの例について説明する。
[試験Aプログラム:図5
試験Aプログラムは、被試験器Aの試験を行うプログラムであり、図5に示すように、項番に対応して、処理種別、送受信先、送受信種別、処理、パラメータが記憶されている。
図5の例では、項番1として、パラメータで指定されている各リレーに対して、リレーONの制御信号を送信する処理を行う。
リレーは、通常、モジュール(リレーモジュール)の基板上に設けられており、図5のパラメータに記載された「A1」はモジュールAの1番のリレー、「D3」はモジュールDの3番のリレーを示している。ここでは6個のリレーがONされて、試験経路が構築される。
【0040】
そして、項番2~9の処理によって周波数設定や特性の取得が行われ、項番10として、パラメータで指定されている各リレーに対して、リレーOFFの制御信号を送信する処理を行うことが記憶されている。
項番10の処理によって、項番1で構築された試験経路が切断され、試験終了となる。
【0041】
[試験Bプログラム:図6
試験Bプログラムは被試験器Bの試験を行うプログラムであり、試験Aプログラムと同様に、項番1で複数のリレーに対してリレーONの指示を送信して試験経路を構築し、順次設定や測定を行い、最後の項番でリレーOFFの指示を送信して試験経路を切断するようになっている。
このように、試験プログラムが特定されれば、どのリレーがON/OFFされるかが特定され、ON/OFFの切換回数をカウント可能となっている。
【0042】
[リレーの寿命]
一般的なリレーについては、具体的な耐用年数や推奨交換時期の規定はないものの、接点の寿命とコイルの寿命がある。
本試験装置は、接点の寿命を考慮してリレーの消耗度合いを推定し、消耗が進んでいる場合には、実際に寿命によるリレーの不具合が発生する前にその旨を報知して交換を促すものであり、試験装置の故障を防ぎ、効率的な試験装置の保守及び試験実施を可能とするものである。
【0043】
具体的には、試験コントローラ20が、試験を実施する度に、当該試験プログラムによりON/OFFしたリレーを特定して切り換え回数をカウントし、切り換え回数の総数がしきい値を超えた場合に、消耗度に応じてアラームを発するようにしている。
切り換え回数は、リレーをONからOFF又はOFFからONに切り換えた回数をそれぞれ1回としてカウントする。
【0044】
試験コントローラ20は、記憶部に各リレーの切り換え回数を管理する管理テーブル(リレー切換回数管理テーブル)を備えており、リレー毎の切り換え回数を管理する。
また、試験コントローラ20は、予めメーカから取得したリレー切り換えの耐久回数を記憶している。
尚、リレーを交換する際には、モジュール単位又はリレー単体での交換が可能となっている。
【0045】
[リレー切換回数管理テーブル:図7]
リレー切換回数管理テーブルについて図7を用いて説明する。図7は、リレー切換回数管理テーブルの例を示す説明図である。
図7に示すように、リレー切換回数管理テーブルは、試験実施日毎に、各リレー番号に対応した切換回数を記憶している。
ここで、リレー番号A1~A5のリレーはモジュールAに搭載され、B1~B5はモジュールBに搭載されている。
【0046】
図7の例では、リレーA1は、2022/7/1に20回切り換えられ、2022/7/4には40回切り換えられたことが記憶されている。
また、「合計」として、リレー交換時(まだ一度もリレー交換していない試験装置であればシステム稼働開始時)から現時点までの合計切換回数(ここでは2022/8/7までの総切換回数)を算出して記憶している。
そのため、試験コントローラ20は、各リレー番号に対応してリレー交換日を記憶しておき、当該リレー交換日から現時点までの合計切換回数を「合計」として記憶する。
【0047】
また、図7では、各リレーについて、試験実施日毎の切換回数を管理すると共に、切換回数の合計を管理しているが、試験実施日毎にリレー交換日からその時点までの累計を記憶するようにしてもよい。
この場合、リレーの交換が行われた場合には、その時点で、当該リレーに対応する累計は0にリセットされる。
また、日ごとの切り換え回数の管理が不要な場合には、試験実施日毎ではなく、現時点におけるリレー交換日から累計切換回数のみを記憶してもよい。
【0048】
[アラーム定義テーブル:図8]
また、試験コントローラ20は、各リレーについて、メーカから取得する耐用切換回数を保持しており、リレー切換回数管理テーブルに記憶された合計切換回数が耐用切換回数に近づいた場合に、リレーの消耗が進んでいることを示すアラームを出力する。
試験コントローラ20は、アラーム出力の基準をアラーム定義テーブルとして記憶部に記憶している。
【0049】
アラーム定義テーブルについて図8を用いて説明する。図8は、アラーム定義テーブルの例を示す説明図である。
図8に示すように、アラーム定義テーブルは、リレーごとに、切換回数のしきい値と出力するアラームレベルとを対応付けて記憶している。
【0050】
図8の例は、A1リレーのアラーム定義テーブルであり、カウントした合計切換回数が9000回を超えると注意のアラームを出力し、9900回を超えると警告のアラームを出力するよう定義されている。アラーム出力は、後述する保守画面において、特定エリアの表示色を変えることで行う。
図示は省略するが、他のリレーについても同様にアラーム定義テーブルが記憶されている。
【0051】
また、図示はしていないが、全てのリレーについて、耐用回数を超えた場合には至急交換が必要である旨を示すアラーム(至急交換のアラーム)を出力する。至急交換のアラームのしきい値(第1のしきい値)は、どのリレーについても耐用回数としている。
尚、ここでは、警告のしきい値(第2のしきい値)は耐用回数の99%の回数、注意のしきい値(第3のしきい値)は耐用回数の90%の回数としているが、任意に設定可能である。
【0052】
本試験装置1では、アラームレベルを3段階に分けて後述する色分け表示を行うことにより、消耗の度合いだけでなく、当該リレーをいつ頃交換すればよいか、交換時期(交換タイミング)の目安を報知することができるものである。
【0053】
[保守画面:図9]
試験コントローラ20は、切換回数に基づいて、表示部に各リレーの消耗度合いを示す保守画面を表示する。保守画面の例について図9を用いて説明する。図9は、保守画面の例を示す説明図である。
図9に示すように、保守画面では、リレー番号と、耐用回数、切換数(合計切換回数)、切換残数を表示する画面である。
切換残数は、耐用回数から実際の合計切換回数を差し引いた値であり、あと何回切り換え可能かを示す値である。
試験コントローラ20は、メーカから取得して記憶している耐用回数、及び図7図8に示したテーブルに基づいて算出した合計切換回数、切換残数を算出して保守画面を表示する。
【0054】
本試験装置1の特徴として、試験コントローラ20は、各リレーについて、合計切換回数が予め設定されたしきい値を超えたかどうかを判断し、超えた場合には、切換残数の表示エリア(表示欄)を通常とは異なる表示色で着色表示する。
具体的には、合計切換回数が第1のしきい値を超えた場合には、至急交換のアラームとして当該リレーに対応する切替残数の表示エリアを第1の表示色で表示する。
同様に、第2のしきい値を超えた場合には、警告のアラームとして第2の表示色で、第3のしきい値を超えた場合には、注意のアラームとして第3の表示色で表示する。
切換回数が第1~第3のいずれかのしきい値を超えて、保守画面で第1~第3の表示色で表示されるリレーは、交換タイミングが通知されたリレーに相当する。
【0055】
図9の例では、リレーA1とリレーA2は警告のアラームに該当し、オレンジ色(図では細かいドット)で表示されている。また、リレーA3は注意のアラームに該当し、切換残数のエリアが黄色(図では粗いドット)で表示されている。
更に、リレーA5は切換残数がマイナスの値になっており、既に耐用回数を超えていて故障が発生する危険が高いため、赤色(図ではグレー)で表示して、迅速な交換を促すようにしている。
【0056】
着色表示によって、消耗の度合いと共に、交換時期(交換タイミング)が近いことや、今すぐ交換しなければならないことが一目で認識できるものである。
交換時期の表し方は、上述した例のように色あい(色相)を変えてもよいし、色の濃淡、あるいは明るさ(明度)や鮮やかさ(彩度)を変えてもよい。明るさの違いで表す場合には、モノクロ表示であっても、白~黒の間で消耗の度合いや交換時期を段階的に表すことが可能である。
【0057】
これにより、試験を実施するオペレータは、試験コントローラ20の画面上で保守画面を閲覧して、耐用回数に近づいているリレーや、直ちに交換すべきリレーやモジュールがあるか等を目視で容易に確認でき、試験装置が故障する前に適切なタイミングでリレーを交換して、試験を滞りなく実施することができるものである。
また、保守画面によって各リレーの消耗度合いを確認でき、計画的な調達や交換を行うことで、試験装置の保守作業の効率を向上させることができるものである。
【0058】
[通知画面:図10]
更に、試験コントローラ20は、至急交換、警告、注意のアラームに該当するリレーがあると(発生すると)、図10に示すように、交換を促す通知画面をタスクトレイに表示する。図10は、通知画面の例を示す説明図である。
図10に示すように、通知画面では、お知らせとして「交換対象の構成品があります」のメッセージを表示する。通知画面は、試験実施中であっても、ポップアップで表示されるため、見逃しにくく、通知画面が表示されると、作業員は図9に示した保守画面を表示させて、どのリレー又はモジュールが交換対象であるかを確認できるものである。
【0059】
また、試験コントローラ20は、通知画面において、交換対象のリレーを特定する表示を行ってもよい。例えば、「信号切換器のモジュールA」「接続部のモジュールF」等、交換対象のモジュール名を表示してもよい。
更に、リレーは個別に交換することも可能であるため、「信号切換器のリレーA5」等、交換すべきリレーを特定する表示を行ってもよい。
【0060】
[リレーチェック]
試験装置1には、測定経路が正常に構築されて動作しているかを確認するリレーチェック機能がある。
これは、リレーチェック用の被試験器2を接続して、試験コントローラ20が、実際の試験プログラムと同じようにリレーを制御して測定経路を構築し、リレーの接点確認のための通電確認及び損失確認の試験を行うものである。
【0061】
しかし、複数の試験プログラムについてリレーチェックを行うには、多くの測定経路を構築して試験を行う必要があり、時間がかかる。
一方、切換回数がまだ少なく消耗が進んでいないリレーは、故障の危険性は低いため、消耗が進んでいないリレーのみで構築される経路についてはチェックを省略することも可能である。
【0062】
そこで、本試験装置1では、保守画面で注意又は警告のアラームの着色表示が為されたリレー(交換タイミングが通知されたリレー)を含む測定経路のみに絞ってリレーチェックを行う。
アラームに該当するリレーは消耗が進んでいて故障の可能性もあるので、そのようなリレーを含む経路を選択してチェックを行うようリレーチェック用の試験プログラムを編集しておき、編集されたプログラムでリレーチェックを行うことにより、リレーチェックの時間を短縮し、効率的にチェックを実施することができるものである。
【0063】
[実施の形態の効果]
本試験装置によれば、複数の測定器10(又は専用試験器11)のいずれかと被試験器2とを複数のリレーにより接続する信号切換器30と、複数の測定器10からの計測結果を入力して分析する試験コントローラ20とを備え、試験コントローラ20が、信号切換器30や接続部40における複数のリレーのそれぞれについてオンとオフを制御すると共に、当該オンとオフの切換回数をカウントし、当該カウントした切換回数が特定のしきい値を超えると当該リレーの交換タイミングを保守画面上の表示色の違いによって通知するものであり、リレーの接点の消耗度合いから、実際に故障が発生する前の適切なタイミングで信号切換器30や接続部40のリレーの交換を促すことができ、試験装置の保守や試験の効率を向上させることができる効果がある。
【0064】
また、本試験装置によれば、複数のしきい値が設定されており、しきい値に応じて保守画面上の表示色をそれぞれ異なる色としているので、リレーの交換タイミングを段階的に通知することができ、保守作業を計画的に行って作業効率を向上させることができる効果がある。
【0065】
また、本試験装置によれば、リレーチェック時に、切換回数がしきい値を超えたリレーを含む試験経路についてチェックを行い、切換回数がしきい値を超えたリレーを含まない試験経路についてはチェックを行わないようにしているので、リレーチェックの時間を短縮し、効率的に行うことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、試験装置本体の構成品について適切な交換タイミングを通知して、効率的な保守管理を行うことができる試験装置に適している。
【符号の説明】
【0067】
1…試験装置、 2…被試験器、 10…測定器、 11…専用試験器、 20…被試験器用コントローラ、 30…信号切換器、 31,41…リレー、 40…接続部
図1
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図10