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特開2024-115201閉塞部材、貫通孔の閉塞構造、及び貫通孔の閉塞方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115201
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】閉塞部材、貫通孔の閉塞構造、及び貫通孔の閉塞方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/16 20060101AFI20240819BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20240819BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20240819BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240819BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A62C3/16 B
F16L5/02 D
F16L5/04
E04B1/94 Z
H02G3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020764
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】久保田 悠揮
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佳志
【テーマコード(参考)】
2E001
5G363
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA34
2E001GA47
2E001HD11
2E001HF12
2E001JA20
2E001JD02
2E001KA03
5G363AA05
5G363AA15
5G363BA01
5G363BA07
5G363CA06
5G363CA07
5G363CA14
5G363CB11
(57)【要約】
【課題】隙間の形成を抑制できるとともに、見栄えの低下を抑制できる閉塞部材、貫通孔の閉塞構造、及び貫通孔の閉塞方法を提供すること。
【解決手段】貫通孔Waの閉塞構造を形成する閉塞部材30は、当該閉塞部材30の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリット35を備える。複数のスリット35は、第1交差方向F1に延びる複数の第1スリット351と、第2交差方向F2に延びる複数の第2スリット352と、を含む。閉塞部材30は、板厚方向の他端側に長板状の基材を備えるとともに、基材から突出する複数の突出部42を備える。複数の突出部42の各々は、第1スリット351と第2スリット352に囲まれて形成された棒状である。複数の突出部42の各々は、個別に三次元方向に変形可能であるとともに、手により切断可能である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、
前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、
前記閉塞部材は、当該閉塞部材の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリットを備え、
前記閉塞部材は、前記板厚方向の他端側に板状の基材を備えるとともに、前記基材から突出する複数の突出部を備え、
前記複数の突出部の各々は、複数の前記スリットに囲まれて形成された棒状であり、
前記複数の突出部の各々は、個別に三次元方向に変形可能であるとともに、手により切断可能であることを特徴とする閉塞部材。
【請求項2】
前記複数の突出部の各々は、前記板厚方向に同じ断面形状が連続しており、
前記閉塞部材は、前記板厚方向に見て長四角形状であり、前記基材は、当該基材の長手方向の両端に位置する第1端縁と、前記長手方向及び前記板厚方向に直交する第2方向の両端に位置する第2端縁と、を備え、
前記基材の前記第1端縁に沿って並ぶ前記突出部、及び前記第2端縁に沿って並ぶ前記突出部の各々は、断面形状の異なる2種類の突出部を含む請求項1に記載の閉塞部材。
【請求項3】
前記複数の突出部は、前記基材の前記第1端縁に沿って並ぶ前記突出部、及び前記第2端縁に沿って並ぶ前記突出部の各々と異なる断面形状の突出部をさらに備える請求項2に記載の閉塞部材。
【請求項4】
建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、
前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、
前記閉塞部材は、当該閉塞部材の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリットを備え、
前記閉塞部材を前記板厚方向に見て、前記閉塞部材は、四角形状であるとともに、前記複数のスリットは、前記四角形の四つの辺のうちの一つの辺に対して斜めに交差し、かつ当該一つの辺と異なる他の辺に到達するまで直線状に延びる複数の第1スリットと、前記複数の第1スリットの各々と異なる角度で前記一つの辺に対して斜めに交差し、かつ当該一つの辺と異なる他の辺に到達するまで直線状に延びる複数の第2スリットと、を含み、
前記閉塞部材は、前記板厚方向の他端側に四角板状の基材を備えるとともに、前記基材から突出する複数の突出部を備え、
前記複数の突出部の各々は、前記第1スリットと前記第2スリットに囲まれた部分に形成された棒状であり、
前記複数の突出部の各々は、個別に三次元方向に変形可能であるとともに、手により切断可能であることを特徴とする閉塞部材。
【請求項5】
建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、
前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、
前記閉塞部材の板厚方向の両端のうちの一端には、前記板厚方向の他端側の基材から前記板厚方向に突出する複数の突出部の先端面が同一面上に配置されており、
前記複数の突出部の各々は、前記先端面側を自由端としているとともに、多角柱状であり、
前記複数の突出部の各々は、個別に三次元方向に変形可能であることを特徴とする閉塞部材。
【請求項6】
前記複数の突出部の各々における前記板厚方向への長さは、前記基材における前記板厚方向への長さ以上であり、かつ前記突出部の前記先端面を形成するいずれの辺の長さよりも長い請求項5に記載の閉塞部材。
【請求項7】
建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に、熱膨張性能を有する閉塞部材が収容されて前記空隙が閉塞された貫通孔の閉塞構造であって、
前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、
前記閉塞部材は、当該閉塞部材の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリットを備え、
前記閉塞部材は、前記板厚方向の他端側に板状の基材を備えるとともに、前記基材から突出する複数の突出部を備え、
前記複数の突出部の各々は、複数の前記スリットに囲まれて形成された棒状であり、かつ個別に三次元方向に変形可能であり、
前記突出部の前記板厚方向への長さは、前記建物壁としての防火区画壁に形成された前記貫通孔に必要長として定められる壁表からの耐火材の必要充填長さよりも長く、
前記貫通部材の外面に接触する前記複数の突出部の各々は、前記貫通部材の外面への接触に伴って変形しており、
前記複数の突出部のうちの一部は切断されるとともに、当該切断によって形成された閉塞補助部材は、変形している前記突出部同士の間に形成された空隙に充填された状態で前記貫通孔に挿入されていることを特徴とする貫通孔の閉塞構造。
【請求項8】
前記閉塞部材は、熱により膨張する熱膨張性能を有する請求項7に記載の貫通孔の閉塞構造。
【請求項9】
建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に、熱膨張性能を有する閉塞部材が収容されて前記空隙が閉塞された貫通孔の閉塞構造であって、
前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、
前記閉塞部材は、当該閉塞部材の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリットを備え、
前記閉塞部材は、前記板厚方向の他端側に板状の基材を備えるとともに、前記基材から突出する複数の突出部を備え、
前記複数の突出部の各々は、複数の前記スリットに囲まれて形成された棒状であり、かつ個別に三次元方向に変形可能であり、
前記貫通部材の外面に接触する前記複数の突出部の各々は、前記貫通部材の外面への接触に伴って変形しており、
変形した前記突出部のうち、前記貫通孔から壁表側に臨む突出部は、前記貫通部材の外面に沿って先端側が切断されていることを特徴とする貫通孔の閉塞構造。
【請求項10】
建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に、閉塞部材を収容して前記空隙を閉塞する貫通孔の閉塞方法であって、
前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、
前記閉塞部材は、当該閉塞部材の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリットを備え、
前記閉塞部材は、前記板厚方向の他端側に板状の基材を備えるとともに、前記基材から突出する複数の突出部を備え、
前記複数の突出部の各々は、複数の前記スリットに囲まれて形成された棒状であり、
前記閉塞部材を前記空隙に収容することで、前記貫通部材の外面に接触する複数の前記突出部の各々を前記貫通部材の外面への接触に伴って変形させ、
変形した前記突出部のうち、前記建物壁の前記貫通孔から壁表側に突出した突出部を前記貫通孔内に向けて押し込むことを特徴とする貫通孔の閉塞方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞部材、貫通孔の閉塞構造、及び貫通孔の閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物壁としての防火区画壁には、長尺の貫通部材を貫通させるための貫通孔が形成されている。防火区画壁の貫通孔の画定面と、貫通部材の外面と、の間には、閉塞部材が収容されている。閉塞部材は、貫通孔の画定面と、貫通部材の外面と、の間を閉塞する。
【0003】
例えば、特許文献1には、閉塞部材及び貫通孔の閉塞構造が開示されている。特許文献1に開示の閉塞部材は、圧縮変形可能な複数のブロック部を備える。複数のブロック部は、閉塞部材の一方向に並んでいる。全てのブロック部は、当該ブロック部の厚さ方向の一端側で繋がっている。
【0004】
また、特許文献1に開示の閉塞部材は、複数のスリットを備える。複数のスリットの各々は、閉塞部材の一方向に隣り合うブロック部の側面同士の間に形成されている。閉塞部材の一方向に並ぶブロック部の各々は、独立して圧縮変形可能である。スリットを区画するブロック部の側面は、湾曲面である。
【0005】
特許文献1に開示の貫通孔の閉塞構造において、貫通部材に対する閉塞部材の圧接により、ブロック部が圧縮変形する。閉塞部材の一方向に隣り合うブロック部同士の間でスリットが広がると、ブロック部同士の間に隙間ができる。しかし、隙間の奥行方向の先には非連通面が位置しているため、隙間が、防火区画壁の厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。その結果、防火区画壁の一方の壁表側から他方の壁表側が視認できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-42847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
貫通部材には、太さの異なる配線や配管を複数本纏めた形態のものなどがある。つまり、貫通部材には、外形の複雑なものがある。特許文献1に開示の閉塞部材では、貫通部材の外面に追従しにくい場合がある。このため、特許文献1に開示の閉塞部材を用いた閉塞構造では、ブロック部の変形によってブロック部同士の間に隙間が形成されてしまうとともに、変形したブロック部が防火区画壁の壁表側に飛び出してしまって見栄えが低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための閉塞部材は、建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、前記閉塞部材は、当該閉塞部材の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリットを備え、前記閉塞部材は、前記板厚方向の他端側に板状の基材を備えるとともに、前記基材から突出する複数の突出部を備え、前記複数の突出部の各々は、複数の前記スリットに囲まれて形成された棒状であり、前記複数の突出部の各々は、個別に三次元方向に変形可能であるとともに、手により切断可能であることを要旨とする。
【0009】
閉塞部材について、前記複数の突出部の各々は、前記板厚方向に同じ断面形状が連続しており、前記閉塞部材は、前記板厚方向に見て長四角形状であり、前記基材は、当該基材の長手方向の両端に位置する第1端縁と、前記長手方向及び前記板厚方向に直交する第2方向の両端に位置する第2端縁と、を備え、前記基材の前記第1端縁に沿って並ぶ前記突出部、及び前記第2端縁に沿って並ぶ前記突出部の各々は、断面形状の異なる2種類の突出部を含んでいてもよい。
【0010】
閉塞部材について、前記複数の突出部は、前記基材の前記第1端縁に沿って並ぶ前記突出部、及び前記第2端縁に沿って並ぶ前記突出部の各々と異なる断面形状の突出部をさらに備えていてもよい。
【0011】
上記問題点を解決するための閉塞部材は、建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、前記閉塞部材は、当該閉塞部材の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリットを備え、前記閉塞部材を前記板厚方向に見て、前記閉塞部材は、四角形状であるとともに、前記複数のスリットは、前記四角形の四つの辺のうちの一つの辺に対して斜めに交差し、かつ当該一つの辺と異なる他の辺に到達するまで直線状に延びる複数の第1スリットと、前記複数の第1スリットの各々と異なる角度で前記一つの辺に対して斜めに交差し、かつ当該一つの辺と異なる他の辺に到達するまで直線状に延びる複数の第2スリットと、を含み、前記閉塞部材は、前記板厚方向の他端側に四角板状の基材を備えるとともに、前記基材から突出する複数の突出部を備え、前記複数の突出部の各々は、前記第1スリットと前記第2スリットに囲まれた部分に形成された棒状であり、前記複数の突出部の各々は、個別に三次元方向に変形可能であるとともに、手により切断可能であることを要旨とする。
【0012】
上記問題点を解決するための閉塞部材は、建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に収容されて前記空隙を閉塞する閉塞部材であって、前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、前記閉塞部材の板厚方向の両端のうちの一端には、前記板厚方向の他端側の基材から前記板厚方向に突出する複数の突出部の先端面が同一面上に配置されており、前記複数の突出部の各々は、前記先端面側を自由端としているとともに、多角柱状であり、前記複数の突出部の各々は、個別に三次元方向に変形可能であることを要旨とする。
【0013】
閉塞部材について、前記複数の突出部の各々における前記板厚方向への長さは、前記基材における前記板厚方向への長さ以上であり、かつ前記突出部の前記先端面を形成するいずれの辺の長さよりも長くてもよい。
【0014】
上記問題点を解決するための貫通孔の閉塞構造は、建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に、熱膨張性能を有する閉塞部材が収容されて前記空隙が閉塞された貫通孔の閉塞構造であって、前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、前記閉塞部材は、当該閉塞部材の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリットを備え、前記閉塞部材は、前記板厚方向の他端側に板状の基材を備えるとともに、前記基材から突出する複数の突出部を備え、前記複数の突出部の各々は、複数の前記スリットに囲まれて形成された棒状であり、かつ個別に三次元方向に変形可能であり、前記突出部の前記板厚方向への長さは、前記建物壁としての防火区画壁に形成された前記貫通孔に必要長として定められる壁表からの耐火材の必要充填長さよりも長く、前記貫通部材の外面に接触する前記複数の突出部の各々は、前記貫通部材の外面への接触に伴って変形しており、前記複数の突出部のうちの一部は切断されるとともに、当該切断によって形成された閉塞補助部材は、変形している前記突出部同士の間に形成された空隙に充填された状態で前記貫通孔に挿入されていることを要旨とする。
【0015】
貫通孔の閉塞構造において、前記閉塞部材は、熱により膨張する熱膨張性能を有していてもよい。
上記問題点を解決するための貫通孔の閉塞構造は、建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に、熱膨張性能を有する閉塞部材が収容されて前記空隙が閉塞された貫通孔の閉塞構造であって、前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、前記閉塞部材は、当該閉塞部材の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリットを備え、前記閉塞部材は、前記板厚方向の他端側に板状の基材を備えるとともに、前記基材から突出する複数の突出部を備え、前記複数の突出部の各々は、複数の前記スリットに囲まれて形成された棒状であり、かつ個別に三次元方向に変形可能であり、前記貫通部材の外面に接触する前記複数の突出部の各々は、前記貫通部材の外面への接触に伴って変形しており、変形した前記突出部のうち、前記貫通孔から壁表側に臨む突出部は、前記貫通部材の外面に沿って先端側が切断されていることを要旨とする。
【0016】
上記問題点を解決するための貫通孔の閉塞方法は、建物壁に設けられた貫通孔の内面と、前記貫通孔に挿通された貫通部材の外面との間の空隙に、閉塞部材を収容して前記空隙を閉塞する貫通孔の閉塞方法であって、前記閉塞部材は圧縮変形可能な板状であり、前記閉塞部材は、当該閉塞部材の板厚方向の一端から他端に向けて切り込まれている複数のスリットを備え、前記閉塞部材は、前記板厚方向の他端側に板状の基材を備えるとともに、前記基材から突出する複数の突出部を備え、前記複数の突出部の各々は、複数の前記スリットに囲まれて形成された棒状であり、前記閉塞部材を前記空隙に収容することで、前記貫通部材の外面に接触する複数の前記突出部の各々を前記貫通部材の外面への接触に伴って変形させ、変形した前記突出部のうち、前記建物壁の前記貫通孔から壁表側に突出した突出部を前記貫通孔内に向けて押し込むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、隙間の形成を抑制できるとともに、見栄えの低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の貫通孔の閉塞構造を示す正面図である。
図2】実施形態の閉塞部材を示す斜視図である。
図3】実施形態の閉塞部材の第1端面を示す平面図である。
図4】実施形態の閉塞部材の第2端面を示す平面図である。
図5】実施形態の閉塞部材の第1短側面を示す側面図である。
図6】実施形態の閉塞部材の第2長側面を示す側面図である。
図7】貫通孔の閉塞方法を示す斜視図である。
図8】閉塞部材の変形を示す平面図である。
図9】圧接突出部を切断した後の閉塞部材を示す平面図である。
図10】切断後の閉塞部材を示す正面図である。
図11】貫通孔の閉塞構造を示す正面図である。
図12】別例の閉塞部材を示す斜視図である。
図13図12に示す閉塞部材の部分を示す平面図である。
図14図12に示す閉塞部材の第2長側面を示す側面図である。
図15図12に示す閉塞部材の第1短側面を示す側面図である。
図16】実施形態の閉塞部材の部分を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、閉塞部材、貫通孔の閉塞構造、及び貫通孔の閉塞方法を具体化した一実施形態を図1図11にしたがって説明する。
<建物壁>
図1に示すように、建物壁としての防火区画壁Wには、貫通孔Waが形成されている。防火区画壁Wを壁表側から見ることを正面視とする。防火区画壁Wの正面視では、貫通孔Waは横長な長四角形状である。防火区画壁Wの正面視において、貫通孔Waの長辺は、横方向に延びるとともに、貫通孔Waの短辺は、上下方向に延びる。貫通孔Waは、防火区画壁Wを壁厚方向に貫通している。防火区画壁Wは、コンクリート製である。貫通孔Waには、貫通部材11が挿通されている。
【0020】
<貫通部材>
貫通部材11は、長尺状である。貫通部材11は、複数本の配管11bによって形成されている。貫通部材11は、外径及び内径の異なる複数種類の配管11bを備える。貫通部材11を形成する複数本の配管11bは、全て同じ方向に延びている。貫通部材11の長手方向は、配管11bの延びる方向である。貫通部材11の外面11aは、複数本の配管11bの外面によって形成されている。貫通部材11の外面11aは、凹凸状である。配管11bは、合成樹脂製可撓電線管、鋼製電線管等である。
【0021】
<貫通孔の閉塞構造>
貫通孔Waの閉塞構造は、防火区画壁Wに設けられた貫通孔Waの内面と、貫通孔Waに挿通された貫通部材11の外面11aとの間の空隙に、熱膨張性能を有する閉塞部材30が複数収容されることにより形成されている。貫通孔Waの閉塞構造において、空隙は、当該空隙に収容された複数の閉塞部材30によって閉塞されている。
【0022】
貫通孔Waの閉塞構造において、貫通孔Waには、支持部材20が挿通されている。図7に示すように、支持部材20は、長尺な梯子状である。支持部材20は、一対の長尺部材20aと、一対の長尺部材20aに架け渡された複数の架設部材20bと、を備える。一対の長尺部材20aは、貫通孔Waの横方向に離れている。一対の長尺部材20aは、防火区画壁Wを壁厚方向に貫通するように貫通孔Waに挿通されている。架設部材20bは、貫通孔Wa内に配置されていない。架設部材20bは、防火区画壁Wの壁厚方向の両面よりも外側に配置されている。貫通部材11は、複数の架設部材20bによって下方から支持されている。したがって、貫通部材11は、貫通孔Wa内では架設部材20bによって下方から支持されていない。
【0023】
<閉塞部材>
図2図6に示すように、閉塞部材30は、長四角板状である。閉塞部材30は、圧縮変形可能な板状である。閉塞部材30は、長四角板状の基材41と、基材41から突出する複数の突出部42と、を備える。閉塞部材30にはシート材50が貼着されている。シート材50は、図2のみ図示している。図3図6は、シート材50を省略している。
【0024】
閉塞部材30は、熱膨張性能を有する発泡体である。閉塞部材30は、母材に熱膨張性材料が均一に分散された発泡体である。閉塞部材30は、熱膨張性材料及び発泡剤を母材に混練させた母材材料における発泡剤のみを発泡させて得られたものである。熱膨張性材料の一例は、膨張黒鉛である。母材の一例は、ポリマーである。ポリマーの具体例は、合成ゴムである。合成ゴムとしてはクロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(IR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)が挙げられる。
【0025】
発泡剤の発泡開始温度は、熱膨張性材料の発泡開始温度より低い。閉塞部材30の製造方法の一例は、クロロプレンゴムに膨張黒鉛及び発泡剤を均一に分散させて母材材料を調整した後、膨張黒鉛が膨張しないように、膨張黒鉛が膨張する温度より低い温度で母材材料を加熱する。すると、発泡剤のみが発泡して、閉塞部材30が製造される。上記製造方法によって製造された閉塞部材30は、発泡剤の発泡によって形成された微細な気泡を多数有するスポンジ状である。気泡は、閉塞部材30の内部及び表面に多数存在している。閉塞部材30は、圧縮変形可能な長板状である。具体的には、閉塞部材30は、圧縮変形可能なブロック体である。また、閉塞部材30は、熱により膨張する熱膨張性能を有する。
【0026】
閉塞部材30は、板厚方向Zの両端のうちの一端に第1端面31を備えるとともに、他端に第2端面32を備える。第1端面31は、後述する複数の突出部42の先端面42aが同一面上に配置されて形成されている。閉塞部材30を板厚方向Zに見ることを平面視とする。閉塞部材30の平面視では、第1端面31及び第2端面32の各々は、長四角形状である。したがって、閉塞部材30は、板厚方向Zに見て長四角形状である。第1端面31及び第2端面32の各々は、第1長辺33a及び第2長辺33bと、第1短辺34a及び第2短辺34bと、を備える。
【0027】
第1長辺33a及び第2長辺33bの各々は、第1短辺34a及び第2短辺34bより長い。第1長辺33aと第2長辺33bは平行である。第1長辺33a及び第2長辺33bは、第1端面31及び第2端面32の長四角形での長辺である。第1短辺34a及び第2短辺34bは、第1端面31及び第2端面32の長四角形での短辺である。第1短辺34aと第2短辺34bは平行である。
【0028】
閉塞部材30において、第1長辺33a及び第2長辺33bの延びる方向を第1方向Xとするとともに、第1短辺34a及び第2短辺34bの延びる方向を第2方向Yとする。第2方向Yは、第1方向X及び板厚方向Zに直交する方向である。閉塞部材30の平面視において、第1方向Xに斜めに交差する方向を第1交差方向F1とするとともに、第1方向Xに対し斜めに交差し、かつ第1交差方向F1に交差する方向を第2交差方向F2とする。第1交差方向F1と第2交差方向F2は直角に交差する。
【0029】
閉塞部材30の第1方向Xへの寸法は、貫通孔Waの長辺方向への長さより短い。閉塞部材30の第2方向Yへの寸法は、防火区画壁Wの壁厚方向への寸法と同じ又は略同じである。閉塞部材30の板厚方向Zへの寸法は、貫通孔Waの短辺方向への長さより短い。
【0030】
閉塞部材30は、第1方向Xの両端面のうちの一方に第1短側面37aを備えるとともに、他方に第2短側面37bを備える。図5は、第1短側面37aを示す。第2短側面37bは、図2に示されるとともに、第1短側面37aと対称に表れるため、正面図としての図示を省略する。第1短側面37a及び第2短側面37bの各々は、第1方向Xから見て長四角形状である。第1短側面37a及び第2短側面37bの各々は、第2方向Yに長辺が延びるとともに、板厚方向Zに短辺が延びる長四角形である。
【0031】
閉塞部材30は、第2方向Yの両端面のうちの一方に第1長側面38aを備えるとともに、他方に第2長側面38bを備える。図6は、第1長側面38aを示す。第2長側面38bは、図2に示されるとともに、第1長側面38aと対称に表れるため、正面図としての図示を省略する。第1長側面38a及び第2長側面38bの各々は、長四角形状である。第1長側面38a及び第2長側面38bの各々は、第1方向Xに長辺が延びるとともに、板厚方向Zに短辺が延びる長四角形である。第1短側面37a、第2短側面37b、第1長側面38a、及び第2長側面38bは、第1端面31及び第2端面32を囲む面である。
【0032】
閉塞部材30は複数のスリット35を備える。複数のスリット35の各々は、閉塞部材30の板厚方向Zの一端から他端に向けて切り込まれている。板厚方向Zへのスリット35の深さは、全てのスリット35で同じである。閉塞部材30は、板厚方向Zの他端側に四角板状の基材41を備える。
【0033】
スリット35は、第1方向X、第2方向Y、第1交差方向F1、及び第2交差方向F2のいずれかにおいて隣り合う突出部42同士の間に形成されている。スリット35は、長四角板状の発泡体に形成した切り込みである。このため、スリット35が形成されていても閉塞部材30は長四角板状である。よって、第1端面31及び第2端面32の各々は、平面視で長四角形状である。
【0034】
複数のスリット35には、閉塞部材30の平面視で第1交差方向F1に延びる複数の第1スリット351と、閉塞部材30の平面視で第2交差方向F2に延びる複数の第2スリット352と、がある。閉塞部材30の平面視では、第1スリット351と第2スリット352は直交する。
【0035】
複数の第1スリット351は互いに平行である。複数の第1スリット351は、第1方向X及び第2方向Yへ等間隔おきに形成されている。第1方向Xへの第1スリット351の間隔は、7mm~10mmの範囲のいずれかの値に設定されている。複数の第1スリット351の各々は、第1端351aと、第2端351bと、を備える。複数の第1スリット351には、第1端351aが第1長側面38aに位置するとともに、第2端351bが第2長側面38bに位置するものがある。第1スリット351には、第1端351aが第1長側面38aに位置するとともに、第2端351bが第2短側面37bに位置するものがある。第1スリット351には、第1端351aが第1短側面37aに位置するとともに、第2端351bが第2長側面38bに位置するものがある。したがって、第1短側面37aと、第2短側面37bと、第1長側面38aと、第2長側面38bとは、第1スリット351によって切り込まれている。したがって、複数の第1スリット351の各々は、第1端面31における四角形の四つの辺のうちの一つの辺に対して斜めに交差し、かつ当該一つの辺と異なる他の辺に到達するまで直線状に延びる。
【0036】
複数の第2スリット352は互いに平行である。複数の第2スリット352は、第1方向X及び第2方向Yへ等間隔おきに形成されている。第2方向Yへの第2スリット352の間隔は、7mm~10mmの範囲のいずれかの値に設定されている。複数の第2スリット352の各々は、第1端352aと、第2端352bと、を備える。複数の第2スリット352には、第1端352aが第1長側面38aに位置するとともに、第2端352bが第2長側面38bに位置するものがある。第2スリット352は、第1端352aが第1長側面38aに位置するとともに、第2端352bが第1短側面37aに位置するものがある。第2スリット352には、第1端352aが第2短側面37bに位置するとともに、第2端352bが第2長側面38bに位置するものがある。したがって、第1短側面37aと、第2短側面37bと、第1長側面38aと、第2長側面38bとは、第2スリット352によって切り込まれている。したがって、複数の第2スリット352の各々は、第1端面31における四角形の四つの辺のうちの一つの辺に対して斜めに交差し、かつ当該一つの辺と異なる他の辺に到達するまで直線状に延びる。
【0037】
第1長側面38aにおいて、第1スリット351の第1端351aと、第2スリット352の第1端352aとは第1方向Xに離れている。第2長側面38bにおいて、第1スリット351の第2端351bと、第2スリット352の第2端352bとは第1方向Xに離れている。第1短側面37aにおいて、第1スリット351の第1端351aと、第2スリット352の第2端352bとは第2方向Yに離れている。第2短側面37bにおいて、第1スリット351の第2端351bと、第2スリット352の第1端352aとは第2方向Yに離れている。
【0038】
スリット35は、長四角板状の発泡体に形成した切り込みである。このため、スリット35が形成されていても、第1短側面37a、第2短側面37b、第1長側面38a、及び第2長側面38bの各々は、長四角板状である。
【0039】
閉塞部材30において、板厚方向Zへの基材41の長さは、板厚方向Zへの閉塞部材30の長さの1/4以上である。板厚方向Zへの基材41の長さが、板厚方向Zへの閉塞部材30の長さの1/4の場合、板厚方向Zへの突出部42の長さは、板厚方向Zへの閉塞部材30の長さの3/4である。板厚方向Zへの基材41の長さが、板厚方向Zへの閉塞部材30の長さの1/4より長い場合、板厚方向Zへの突出部42の長さは、板厚方向Zへの閉塞部材30の長さの3/4より短くなる。
【0040】
また、閉塞部材30において、複数の突出部42の各々における板厚方向Zへの長さは、基材41における板厚方向Zへの長さ以上であり、かつ先端面42aを形成するいずれの辺の長さよりも長い。
【0041】
具体的には、板厚方向Zへの突出部42の長さは、以下のように設定される。貫通孔Waの閉塞構造において、貫通孔Waには、壁表面から必要長として定められる耐火材の必要充填長さが設定されている。閉塞部材30は、熱膨張性能を有する耐火材である。そして、板厚方向Zへの突出部42の長さは、上記必要充填長さ以上に設定されている。したがって、突出部42を基端から切断すると、切断された突出部42の板厚方向Zへの長さは、必要充填長さと等しくなる。
【0042】
複数の突出部42は、第1突出部44と、第2突出部45と、第3突出部46と、を含む。第1突出部44の断面形状と、第2突出部45の断面形状と、第3突出部46の断面形状は、異なる。突出部42の断面形状は、板厚方向Zに直交し、かつ第1方向X及び第2方向Yへの断面での形状である。そして、複数の突出部42の各々は、手により切断可能である。
【0043】
第1突出部44は、基材41から板厚方向Zへ、多角柱状の一つである四角柱状に突出する。第1突出部44の断面形状は、正方形である。第1突出部44は、板厚方向Zのいずれの位置であっても同じ断面形状である。したがって、複数の第1突出部44の各々は、板厚方向Zに同じ断面形状が連続している。第1突出部44の先端面42aは、正方形である。
【0044】
第2突出部45は、基材41から板厚方向Zへ、多角柱状の一つである三角柱状に突出する。第2突出部45の断面形状は、三角形である。第2突出部45は、板厚方向Zのいずれの位置であっても同じ断面形状である。したがって、複数の第2突出部45の各々は、板厚方向Zに同じ断面形状が連続している。
【0045】
第3突出部46は、基材41から板厚方向Zへ、多角柱状の一つである五角柱状に突出する。第3突出部46の断面形状は、五角形である。第3突出部46は、板厚方向Zのいずれの位置であっても同じ断面形状である。したがって、複数の第3突出部46の各々は、板厚方向Zに同じ断面形状が連続している。
【0046】
第1突出部44は、第1方向Xに隣り合う2本の第1スリット351と、第1方向Xに隣り合う2本の第2スリット352と、によって囲まれて形成された棒状である。複数の第1突出部44の各々は、三次元方向に個別に変形可能である。複数の第1突出部44の各々は、先端面42a側を自由端として変形可能である。第1突出部44は、4本のスリット35によって囲まれることによって形成されている。第1交差方向F1には第1突出部44が隣り合うように並んでいるとともに、第2交差方向F2には第1突出部44が隣り合うように並んでいる。第1交差方向F1に隣り合う第1突出部44同士の間には、第2スリット352が介在している。第2交差方向F2に隣り合う第1突出部44同士の間には、第1スリット351が介在している。
【0047】
第1突出部44の先端面42aにおいて、先端面42aを形成する四つの辺の長さは、全て同じである。第1突出部44の先端面42aを形成する各辺の長さは、上記した耐火材の必要充填長さよりも短い。実施形態では、先端面42aを形成する各辺の長さは、7mm~10mmの範囲のいずれかの値に設定されている。先端面42aを形成する各辺の長さは、第1スリット351の間隔及び第2スリット352の間隔と同一又は僅かに短い。
【0048】
第1方向Xに隣り合う第1突出部44同士は、互いの角を第1方向Xに対向させて並んでいる。第2方向Yに隣り合う第1突出部44同士は、互いの角を第2方向Yに対向させて並んでいる。第1交差方向F1に隣り合う第1突出部44同士は、互いの側面を対向させて並んでいる。第2交差方向F2に隣り合う第1突出部44同士は、互いの側面を対向させて並んでいる。一つの第1突出部44に対し、第1方向Xに二つの第1突出部44が重なり合っている。つまり、複数の第1突出部44は、基材41上にマトリックス状に並んでいるとともに、それぞれ独立して変形可能である。
【0049】
基材41は、基材41の長手方向となる第1方向Xの両端に位置する第1端縁41aを備えるとともに、基材41の長手方向及び板厚方向Zに直交する第2方向Yの両端に位置する第2端縁41bと、を備える。一対の第1端縁41aの一方は第1短辺34aに沿う端縁であるとともに、一対の第1端縁41aの他方は第2短辺34bに沿う端縁である。一対の第2端縁41bの一方は第1長辺33aに沿う端縁であるとともに、一対の第2端縁41bの他方は第2長辺33bに沿う端縁である。閉塞部材30は、第1端縁41aに沿って並ぶ第2突出部45及び第3突出部46を含むとともに、第2端縁41bに沿って並ぶ第2突出部45及び第3突出部46を含む。
【0050】
複数の第2突出部45の各々は、1本の第1スリット351と、1本の第2スリット352と、によって囲まれて形成された棒状である。複数の第2突出部45の各々は、三次元方向に個別に変形可能である。複数の第2突出部45の各々は、先端面42a側を自由端として変形可能である。第2突出部45は、基材41の一対の第1端縁41aの各々に沿って形成されているとともに、一対の第2端縁41bの各々に沿って形成されている。
【0051】
一対の第1端縁41aに形成された第2突出部45と、一対の第2端縁41bに形成された第2突出部45とは、断面での三角形の大きさが同じであるが、異なっていてもよい。第2突出部45の先端面42aは、三角形である。第2突出部45の先端面42aにおいて、先端面42aを形成する三つの辺の長さは、全て同じである。第2突出部45の先端面42aを形成する各辺の長さは、上記の耐火材の必要充填長さよりも短い。
【0052】
一対の第1端縁41aに形成された第2突出部45の各々は、第1方向Xに第1突出部44と隣り合っている。第1方向Xに隣り合う第1突出部44と第2突出部45は、互いの角を第1方向Xに対向させて並んでいる。一対の第2端縁41bに形成された第2突出部45の各々は、第2方向Yに第1突出部44と隣り合っている。第2方向Yに隣り合う第1突出部44と第2突出部45は、互いの角を第1方向Xに対向させて並んでいる。
【0053】
複数の第3突出部46の各々は、第1方向Xに隣り合う2本の第1スリット351と、第1方向Xに隣り合う2本の第2スリット352と、によって囲まれて形成された棒状である。複数の第3突出部46の各々は、三次元方向に個別に変形可能である。複数の第3突出部46の各々は、先端面42a側を自由端として変形可能である。第3突出部46は、基材41の一対の第1端縁41aに沿って形成されるとともに、一対の第2端縁41bに沿って形成されている。
【0054】
一対の第1端縁41aに沿って形成された第3突出部46と、一対の第2端縁41bに沿って形成された第3突出部46とは、断面での五角形の大きさが同じであるが、異なっていてもよい。第3突出部46の先端面42aは、五角形である。第3突出部46の先端面42aにおいて、先端面42aを形成する五つの辺の長さは、必要充填長さよりも短い。
【0055】
一対の第1端縁41aに形成された第3突出部46の各々は、第1方向Xに第1突出部44と隣り合っている。第1方向Xに隣り合う第1突出部44と第3突出部46は、互いの角を第1方向Xに対向させて並んでいる。一対の第2端縁41bに形成された第3突出部46の各々は、第2方向Yに第1突出部44と隣り合っている。第2方向Yに隣り合う第1突出部44と第3突出部46は、互いの角を第2方向Yに対向させて並んでいる。
【0056】
一対の第1端縁41aに沿って形成された第2突出部45と、第3突出部46とは、第2方向Yへ交互に形成されている。一対の第2端縁41bに沿って形成された第2突出部45と、第3突出部46とは、第1方向Xへ交互に形成されている。
【0057】
したがって、閉塞部材30において、基材41の第1端縁41aに沿って並ぶ突出部42は、断面形状の異なる2種類の突出部42である。また、基材41の第2端縁41bに沿って並ぶ突出部42は、断面形状の異なる2種類の突出部42である。さらに、複数の突出部42のうちの第1突出部44は、第1端縁41a及び第2端縁41bに沿って並ぶ第2突出部45及び第3突出部46の各々と異なる断面形状の突出部である。
【0058】
閉塞部材30、ひいては複数の突出部42の各々は、圧縮変形させた状態から原形状に復帰しようとする反力を備える。また、複数の突出部42の各々は、手で切断することができる。当然、複数の突出部42の各々は、ハサミ等の手動工具で切断することができる。したがって、複数の突出部42の各々は、三次元方向へ変形可能な柔軟性を備えると同時に、切断を容易とする柔らかさも備える。
【0059】
<シート材>
図2に示すように、シート材50は、第1端面31の全体、及び第2端面32の全体に貼着されている。シート材50は、不織布製である。第1端面31に貼着されたシート材50は、スリット35に沿って分断されている。このため、突出部42毎に独立してシート材50が貼着されている。つまり、複数の突出部42の先端面42aの各々に、シート材50が貼着されている。なお、スリット35は、閉塞部材30の第1端面31及び第2端面32と同じ大きさのシート材50を、スリット35を形成する前に第1端面31及び第2端面32に貼着した後、シート材50及び閉塞部材30に切り込みを入れることで形成されている。
【0060】
<貫通孔の閉塞構造の形成方法>
次に、貫通孔Waの閉塞構造の形成方法について説明する。なお、図8及び図9では、シート材50を省略している。
【0061】
まず、図7に示すように、防火区画壁Wに貫通部材11を貫通させるための貫通孔Waを形成する。次に、貫通孔Waに支持部材20を配設する。次に、支持部材20の複数の架設部材20bに貫通部材11を支持させるとともに、防火区画壁Wに貫通部材11を貫通させる。
【0062】
次に、貫通孔Waの内面と貫通部材11の外面11aとの間の空隙Kに複数の閉塞部材30を収容する。このとき、図1に示すように、閉塞部材30の第1方向Xが横方向に延び、かつ板厚方向Zが上下方向に延びるように閉塞部材30を貫通孔Waの空隙Kに収容する。防火区画壁Wの壁厚方向へは閉塞部材30を1つだけ収容する。閉塞部材30の第2方向Yへの寸法は、防火区画壁Wの壁厚方向への寸法と同じ又は略同じであるため、閉塞部材30の第2方向Yの両端は、防火区画壁Wの壁面と同一面上に位置する。
【0063】
貫通孔Waの下側から上に向けて閉塞部材30を積み重ねていく。また、貫通孔Waの横方向に閉塞部材30を並べていく。図1において、長尺部材20aと貫通部材11との間に、閉塞部材30の第1方向Xへの寸法より短い隙間が形成される場合がある。この場合は、その隙間の寸法より若干長くなるように閉塞部材30を切断し、その切断した閉塞部材30を隙間に詰め込む。このとき、第1方向Xへの閉塞部材30の寸法を実施形態より短くした別種類の閉塞部材30を予め準備しておいてもよい。そして、別種類の閉塞部材30を、閉塞部材30の第1方向Xへの寸法より短い隙間に詰め込んでもよい。
【0064】
図11に示すように、複数の閉塞部材30のうち、貫通部材11の上側に配置された閉塞部材30と、貫通部材11の下側に配置された閉塞部材30とを、貫通部材11の外面11aである各配管11bの外面に圧接させる。貫通部材11に対し、上側から圧接させる閉塞部材30は、第1端面31を下に向けて配置される。貫通部材11に対し、下側から圧接させる閉塞部材30は、第1端面31を上に向けて配置される。このとき、複数の配管11bの下端の各々は、第1方向Xへ同じ高さに位置する。このため、貫通部材11の下側から圧接される閉塞部材30は、第1方向Xへ同じ高さとなるように凹む。一方、複数の配管11bの上端は、第1方向Xへ凹凸状に位置する。このため、貫通部材11の上側から圧接される閉塞部材30は、第1方向Xへ凹凸状に凹む。
【0065】
閉塞部材30の複数の突出部42のうち、貫通部材11の外面11aに圧接した突出部42を圧接突出部と記載する。図8図9、及び図10に示すように、圧接突出部は、閉塞部材30の第1方向Xの中央部付近の突出部42である。なお、貫通部材11に対する閉塞部材30の圧接位置は、施工現場や、施工の仕方等によって変更されるため、圧接突出部の形成される位置は、第1方向Xの中央部付近に限らず、第1方向Xの片側であったり、任意である。圧接突出部は、閉塞部材30の第2方向Yの全体に亘って存在する。
【0066】
そして、閉塞部材30を空隙Kに挿入するとともに、閉塞部材30を貫通部材11に圧接させると、図8に示すように、複数の圧接突出部のうち、第2端縁41bに沿う圧接突出部は、防火区画壁Wの壁表側及び壁裏側に向けて変形する。このため、第2端縁41bに沿って並ぶ圧接突出部や、第2端縁41bに近い圧接突出部は、貫通部材11との接触に伴って壁表側及び壁裏側へ飛び出す。一方、複数の圧接突出部のうち、第2方向Yの中央部に近い圧接突出部ほど、第1方向X、第2方向Y、第1交差方向F1、及び第2交差方向F2に、他の突出部42が隣り合っている。このため、第2方向Yの中央部に近い圧接突出部は、第1方向X、第2方向Y、第1交差方向F1、及び第2交差方向F2への変形が抑制されやすい。このため、圧接突出部のうち、第2方向Yの中央部に近い圧接突出部ほど、板厚方向Zのみに変形したり、折れ曲がったりしやすい。
【0067】
そして、変形した圧接突出部のうち、壁表側に飛び出た圧接突出部については、図10及び図11に示すように、先端面42a側を切断して板厚方向Zへの長さを短くする。ここで、切断される圧接突出部は、切断してもその壁裏側に別の突出部42が位置している突出部42である。
【0068】
板厚方向Zへの圧接突出部の長さ調整は、手により圧接突出部を切断して行われる。このとき、圧接突出部は、手によって容易に切断することができる。なお、圧接突出部の長さ調整は、ハサミ等の手動工具による切断によって行ってもよい。
【0069】
そして、切断された後の圧接突出部の長さは、貫通部材11の外面11aに対して適度な反力で圧接するとともに、変形しても防火区画壁Wの壁表側へ飛び出さないような長さである。その結果、貫通部材11に対して圧接した突出部42のうち、貫通孔Waから壁表側に臨む突出部42は、貫通部材11の外面11aに沿って先端側が切断されている。その結果、図9に示すように、貫通孔Waから壁表側に臨む複数の突出部42は、防火区画壁Wの壁表面と略面一となる。なお、防火区画壁Wの壁裏側に飛び出した突出部42は、防火区画壁Wの裏側から切断してもよいし、切断することなく飛び出したままとしてもよい。また、閉塞部材30において、防火区画壁Wの壁裏側の突出部42が、壁裏面にまで至らない場合は、それら壁裏側の突出部42は、貫通孔Wa内に位置している。この場合は、突出部42は、壁裏側に飛び出さないため、見栄えも低下しない。よって、壁裏側の突出部42は、切断するなどの処理を不要とする。
【0070】
また、壁表側の圧接突出部のうち、壁表側への飛び出し量の少ない圧接突出部や、切断しても壁表側に飛び出してしまった圧接突出部については、手によって貫通孔Wa内に向けて壁裏側へ押し込む。その結果、壁表側へ飛び出す圧接突出部がほぼ無くなる。なお、壁表側の圧接突出部のうち、壁表側へ飛び出してしまった圧接突出部の全てについて、切断することなく貫通孔Wa内に向けて壁裏側へ押し込んでもよい。
【0071】
圧接突出部を切断することによって得られた切断片は、閉塞補助部材43となる。閉塞補助部材43は、閉塞部材30で閉塞できない微細な隙間に充填する。つまり、閉塞補助部材43は、変形した圧接突出部同士の間に充填される。微細な隙間は、配管11b同士の間に形成された隙間や、第1突出部44同士の間に形成された隙間である。
【0072】
その結果、貫通孔Waの内面と貫通部材11の外面11aとの間の空隙Kが、複数の閉塞部材30及び閉塞補助部材43によって閉塞される。また、支持部材20における長尺部材20aの外面に対しても閉塞部材30が圧接する。なお、閉塞補助部材43でも閉塞できない微細な隙間は、図11のドットハッチングに示すように、耐火パテ49を充填する。その結果、防火区画壁Wにおける貫通孔Waの閉塞構造が完成する。
【0073】
<実施形態の作用>
横方向に並設された複数の閉塞部材30の各々は、第1方向Xに圧縮されるとともに、圧縮状態から原形状に復帰しようとする反力が発生している。この反力により、横方向に隣り合う閉塞部材30同士、閉塞部材30と長尺部材20a、閉塞部材30と防火区画壁Wの内面とが互いに圧接している。また、上下方向に並設された複数の閉塞部材30の各々は、板厚方向Zに圧縮されるとともに、圧縮状態から原形状に復帰しようとする反力が発生している。この反力により、上下方向に隣り合う閉塞部材30同士、閉塞部材30と貫通部材11、閉塞部材30と防火区画壁Wの内面とが互いに圧接している。
【0074】
複数の突出部42の各々は、多角柱状に基材41から突出している。そして、複数の突出部42は、基材41上にマトリックス状に並ぶ細長な棒状である。このため、複数の圧接突出部の各々は、貫通部材11の外面11aの形状に合わせて個別に変形する。圧接突出部の断面形状が小さい程、貫通部材11の外面11aに合わせて変形しやすい。第1突出部44の先端面42aの各辺の長さは、7mm~10mmと非常に短い。また、第2突出部45及び第3突出部46の先端面42aも非常に短い。このため、複数の突出部42の各々は、貫通部材11の外面11aが凹凸状であったり、複雑な形状であったりしても、その形状に沿うように変形する。
【0075】
また、圧接突出部には、上下方向に重なる他の閉塞部材30に発生した反力が作用している。加えて、圧接突出部には、隣接する別の突出部42によって発生した付勢力が作用している。この反力及び付勢力により、圧接突出部は、貫通部材11の外面11aに圧接している。
【0076】
圧接突出部に発生した反力及び付勢力は、圧接突出部を貫通部材11の外面11aに押し付ける力として作用する。すると、圧接突出部の各々は、貫通部材11の外面11aの形状に合わせて個別に変形する。圧接突出部は、三次元方向へ任意に変形する。また、変形しない突出部42の先端にあるシート材50は、他の閉塞部材30との間に発生する摩擦力を低減させる。
【0077】
また、圧接突出部の三次元方向への変形に伴い、第1方向Xや第2方向Yに隣り合う圧接突出部同士の間隔が広がるように変形している。このため、閉塞部材30には、スリット35が広がる箇所が生じている。
【0078】
閉塞部材30において、圧接突出部の各々に対し、第2方向Yに複数の突出部42が重なり合っているとともに、第1方向Xの両側から他の突出部42が重なり合っている。つまり、圧接突出部が任意の方向へ変形しても、スリット35は第2方向Yに一直線に延びていない。このため、防火区画壁Wの壁表側から閉塞構造を見た場合、第2方向Yへの視線の先には必ず突出部42が存在している。よって、広がったスリット35を通して防火区画壁Wの壁表側から壁裏側が視認不能となっている。
【0079】
このような建築物において、防火区画壁Wの一方の壁表側で火災等が発生した場合、第1方向Xに隣り合う突出部42同士の間の隙間が、火炎、煙、有毒ガス、熱の経路となることが抑制される。
【0080】
貫通部材11が燃焼したとする。このとき、貫通部材11から発生する熱によって閉塞部材30が即座に焼失してしまうことはない。閉塞部材30は熱を受けて膨張する。すると、膨張した閉塞部材30によって、貫通部材11と貫通孔Waとの間が密封閉鎖される。すなわち、貫通部材11の外面11aと貫通孔Waの内面との間の隙間が火炎、煙、有毒ガス、熱の経路となることが防止される。
【0081】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)閉塞部材30において、複数の突出部42は、第1交差方向F1に延びる第1スリット351と、第2交差方向F2に延びる第2スリット352に囲まれた部分に形成されている。このため、各突出部42には、第2方向Yに他の突出部42が重なり合うとともに、第1方向Xからも他の突出部42が重なり合っている。貫通孔Waの閉塞構造において、貫通部材11に対する閉塞部材30の圧接により、圧接突出部が三次元方向に変形することで、スリット35が広がっても、広がったスリット35の第2方向Yの先には別の突出部42が位置している。このため、広がったスリット35が、防火区画壁Wの壁厚方向へ一直線状に延びることはない。その結果、防火区画壁Wの壁表側から壁裏側が視認できない。よって、貫通孔Waを一直線に貫通する隙間が形成されることを抑制できる。
【0082】
加えて、複数の突出部42の各々は、手により容易に切断することができる。このため、圧接突出部のうち、壁表側へ突出したものについては容易に切断することができる。よって、閉塞部材30を用いることで、隙間の形成を抑制できるとともに、閉塞構造の見栄えの低下を抑制できる。
【0083】
(2)複数の突出部42の各々は、個別に三次元方向へ変形可能である。貫通部材11の外面11aが凹凸状であっても、外面11aの形状に合わせて各圧接突出部が個別に変形する。このため、複数の圧接突出部は、貫通部材11の外面11aの形状に柔軟に対応して変形する。よって、複数の圧接突出部によって、貫通部材11の外面11aと閉塞部材30との間に隙間が形成されにくくなる。
【0084】
(3)複数の突出部42の各々は、手により容易に切断することができる。このため、板厚方向Zへの突出部42の長さ調整を容易に行うことができる。よって、圧接突出部の長さを、貫通部材11に圧接させるのに適した寸法にする作業を容易に行うことができる。
【0085】
(4)複数の突出部42の各々は、手により容易に切断することができる。このため、圧接突出部のうち、壁表側へ突出したものについては容易に切断することができる。また、切断された圧接突出部の一部分は、閉塞補助部材43として突出部42同士の間の隙間や、閉塞部材30同士の間の隙間に詰め込むことができる。よって、隙間を無くすことができる。
【0086】
(5)複数の突出部42の各々は、板厚方向Zへ同じ断面積である。このため、複数の突出部42の各々について、板厚方向Zのいずれの位置であっても同じように手により切断することができる。
【0087】
(6)壁表側の突出部42は、第1突出部44よりも断面積の小さい第2突出部45及び第3突出部46によって形成されている。このため、第1突出部44を切断する場合に比べて、第2突出部45及び第3突出部46は切断しやすい。したがって、壁表側に飛び出した突出部42の長さ調整が行いやすい。また、第2突出部45及び第3突出部46は、第1突出部44よりも変形させやすい。つまり、第1端縁41a及び第2端縁41bに沿って並ぶ第2突出部45及び第3突出部46は、それら第2突出部45及び第3突出部46に囲まれた第1突出部44よりも断面積が小さい。第1端縁41a及び第2端縁41bに沿って並ぶ第2突出部45及び第3突出部46は、それら第2突出部45及び第3突出部46に囲まれた第1突出部44よりも細い。このため、第2突出部45及び第3突出部46は、第1突出部44に比べて変形させたり、手により切断しやすい。その結果として、防火区画壁Wの壁表側に飛び出した圧接突出部を壁裏側へ変形させやすい。したがって、壁表側の突出部42を第2突出部45及び第3突出部46で形成することにより、貫通孔Waの閉塞構成を形成しやすい。
【0088】
(7)壁表側の第2端縁41bに沿って並ぶ突出部42は、第2突出部45及び第3突出部46によって形成されている。このため、突出部42を切断する場合、隙間の大きさに適した突出部42を切断することができる。よって、壁表側の圧接突出部が第1突出部44のみで形成されている場合と比べると、貫通孔Waの閉塞構造が形成しやすい。
【0089】
(8)複数の突出部42は、発泡体に複数の第1スリット351及び複数の第2スリット352を形成することで形成される。このため、複数の突出部42を備える閉塞部材30を容易に形成できる。
【0090】
(9)複数の突出部42の各々における板厚方向Zへの長さは、基材41における板厚方向Zへの長さ以上であり、かつ突出部42の先端面42aを形成するいずれの辺の長さよりも長い。このため、複数の突出部42は、細長に基材41から突出する棒状である。したがって、突出部42は、手により容易に切断できる。
【0091】
(10)板厚方向Zへの突出部42の長さは、板厚方向Zへの閉塞部材30の長さの3/4程度である。そして、板厚方向Zへの突出部42の長さは、壁表面から必要長として定められる耐火材の必要充填長さ以上に設定されている。このため、突出部42を基端から切断すれば、切断した突出部42は、耐火材の必要充填長さを有することになる。よって、切断した突出部42を壁表面から壁裏側に向けて配置して、切断された突出部42の板厚方向Zへの長さを防火区画壁Wの壁厚方向に沿わせて貫通孔Waに挿入して貫通孔Waの閉塞構造を形成した場合、切断した突出部42により、壁表面から必要長として定められる耐火材の必要充填長さが確保される。
【0092】
(11)複数の突出部42の各々における板厚方向Zへの長さは、基材41における板厚方向Zへの長さより長い。板厚方向Zへの突出部42の長さが基材41よりも長いほど、突出部42は、三次元方向へ変形しやすいため、貫通部材11の外面11aの形状に追従しやすい。これにより、貫通部材11の外面11aと、変形した突出部42との間に隙間が形成されることを抑制できる。
【0093】
(12)閉塞部材30において、複数の突出部42は、第1交差方向F1に延びる第1スリット351と、第2交差方向F2に延びる第2スリット352に囲まれた部分に形成されている。このため、各突出部42には、第2方向Yに他の突出部42が重なり合うとともに、第1方向Xからも他の突出部42が重なり合っている。貫通孔Waの閉塞構造において、貫通部材11に対する閉塞部材30の圧接により、圧接突出部が三次元方向に変形することで、スリット35が広がっても、広がったスリット35の第2方向Yの先には別の突出部42が位置している。このため、広がったスリット35が、防火区画壁Wの壁厚方向へ一直線状に延びることはない。その結果、防火区画壁Wの壁表側から壁裏側が視認できない。よって、貫通孔Waを一直線に貫通する隙間が形成されることを抑制できる。
【0094】
加えて、複数の突出部42の各々は、手により容易に切断することができる。このため、圧接突出部のうち、壁表側へ突出したものについては容易に切断することができる。よって、閉塞部材30を用いることで、隙間の形成を抑制できるとともに、閉塞構造の見栄えの低下を抑制できる。
【0095】
このような閉塞部材30の第1端面31は、全ての突出部42の先端面42aを集めて形成されている。このため、閉塞部材30は、複数の突出部42が基材41から突出する形状であっても、平坦かつ四角形状な第1端面31を備えている。よって、貫通孔Waの閉塞構造において、第1端面31によって、閉塞部材30を上下方向に積み重ねることができる。また、貫通部材11と圧接する閉塞部材30においては、第1端面31全体が変形するのではなく、第1端面31の中から、貫通部材11と圧接する第1端面31だけを、貫通部材11の外面11aの形状に倣って個別に変形させることができる。
【0096】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図12に示すように、第1長側面38aにおいて、第1スリット351の第1端351aと、第2スリット352の第1端352aとが一致している。また、第2長側面38bにおいて、第1スリット351の第2端351bと、第2スリット352の第2端352bとが一致している。さらに、第1短側面37aにおいて、第1スリット351の第1端351aと、第2スリット352の第2端352bとが一致している。第2短側面37bにおいて、第1スリット351の第2端351bと、第2スリット352の第1端352aとが一致している。
【0097】
このように構成した場合、突出部42としては、断面四角形状の第1突出部44と、断面三角形状の第2突出部45とが形成される。第2突出部45は、基材41の第1端縁41a及び第2端縁41bに沿って形成される。第1端縁41aには、第1突出部44と第2突出部45が第1方向Xへ交互に並んで形成される。第2端縁41bには、第1突出部44と第2突出部45が第2方向Yへ交互に並んで形成される。つまり、閉塞部材30は、第1端縁41a及び第2端縁41bに並ぶ第2突出部45及び第1突出部44と、それら閉塞部材30の周縁に並ぶ突出部42に囲まれた第1突出部44と、を備える。したがって、この形態において、閉塞部材30が備える複数の突出部42の断面形状は、四角形と三角形の2種類である。
【0098】
○ 閉塞部材30が備える複数の突出部42の全てが同じ三角柱状であってもよい。
○ 閉塞部材30の側面は、第1短側面37a、第2短側面37b、第1長側面38a、及び第2長側面38bのように平坦面でなく、凹凸状であってもよい。例えば、実施形態の閉塞部材30において、第1端縁41a及び第2端縁41bの各々から、第2突出部45を無くして、第3突出部46だけとすることによって凹凸状としてもよい。また、図12に示す閉塞部材30において、第1端縁41a及び第2端縁41bの各々から第2突出部45を無くして第1突出部44だけとすることによって凹凸状としてもよい。
【0099】
○ 閉塞部材30を空隙Kに詰め込んだとき、壁表側に飛び出た圧接突出部を切断して閉塞補助部材43とした。そして、閉塞補助部材43を隙間に充填したが、隙間の充填は、これに限らない。例えば、閉塞部材30を、隙間充填専用の閉塞部材30として準備をしておく。そして、隙間が形成された場合、その隙間充填専用の閉塞部材30の一部を切断し、切断した閉塞部材30の一部を隙間に充填してもよい。
【0100】
○ 壁表側に並ぶ圧接突出部において、壁表側に飛び出しても、貫通孔Wa内に向けて押し込まなくてもよい。
○ 閉塞部材30には、シート材50が貼着されていなくてもよい。
【0101】
○ シート材50は、第1端面31及び第2端面32のいずれか一方のみに貼着されていてもよい。
○ 閉塞部材30の第1スリット351及び第2スリット352の数は、適宜変更してもよい。これにより、形成される突出部42の断面積が変更される。
【0102】
○ 第1スリット351及び第2スリット352の傾斜角度は任意に変更してもよいし、第1スリット351と第2スリット352との交差角度も任意に変更してもよい。
○ 第1スリット351を形成する間隔は任意に変更してもよいし、第2スリット352を形成する間隔は任意に変更してもよい。
【0103】
○ 閉塞部材30の複数のスリット35の深さは、全て同じでなく、異なっていてもよい。例えば、第1スリット351の深さと第2スリット352の深さを異ならせることにより、突出部42における三次元方向への変形のし易さや、変形しやすい方向を異ならせる。
【0104】
○ 板厚方向Zへの突出部42の長さは、防火区画壁Wの壁表面からの必要長として定められる耐火材の必要充填長さより短くてもよい。この場合、板厚方向Zへの突出部42の長さが上記となるようにスリット35の深さが調節される。
【0105】
○ 板厚方向Zへの基材41の長さと、板厚方向Zへの突出部42の長さとが同じであってもよい。又は、板厚方向Zへの基材41の長さよりも、板厚方向Zへの突出部42の長さが短くてもよい。この場合、板厚方向Zへの突出部42の長さが基材41よりも短いほど、突出部42は弾発力が大きくなる。これにより、突出部42が圧縮変形したときの反力が大きくなるため、貫通部材11に対する圧接突出部の圧接力を確保できる。
【0106】
○ 閉塞部材30は、施工前はスリット35を備えておらず、施工時に、シート材50及び発泡体を同時に切り込んでスリット35を形成してもよい。
○ 閉塞部材30は、正方形な四角板状であってもよいし、楕円形な板状であってもよい。さらには、閉塞部材30は、四角形以外の長板状であってもよい。
【0107】
○ 防火区画壁Wの貫通孔Waは矩形孔状でなく、円孔状や、楕円孔状であってもよい。貫通孔Waが円孔状の場合、貫通部材11の外面11aに沿わせて閉塞部材30を環状に変形させる。
【0108】
○ 閉塞部材30は、圧縮変形可能であり、かつ突出部42が三次元方向に変形可能であれば、熱膨張性能を有していなくてもよい。
○ 防火区画壁Wはコンクリート製ではない石膏ボード製の壁でもよい。建物壁は、防火区画壁ではない区画壁でもよい。この場合、閉塞部材30は、貫通孔Waの壁厚方向の全体に亘って充填されずに、片側に偏って設置されていてもよいし、壁面の両方に偏って配置されるとともに、両方の壁面側の閉塞部材30の間に空間が形成されていてもよい。この場合、貫通孔Waの閉塞構造においては、空間には、変形した突出部42が入り込む。
【0109】
図13図15に、図12に示す閉塞部材30の部分を複数示す。なお、図13は、説明を容易とするため、図14及び図15よりも拡大して示している。図13に示す第1端面31と、図14に示す第1長側面38aと、図15に示す第1短側面37aとは、一つの閉塞部材30が備える面である。なお、図12に示す閉塞部材30の第2端面32は、図4に示す第2端面32と同じであるため、図示を省略している。図13において、閉塞部材30の一部だけが実線で表されるとともに、それ以外の部分は破線で表されている。実線で表した部分が、以降に説明する部分である。また、一点鎖線は、以降に説明する部分である実線部分と、その他の部分である破線部分との境界のみを示す線である。
【0110】
閉塞部材30における部分の各々は、多角柱状であり、かつ三次元方向に圧縮変形可能な突出部42を複数備える。このような部分として、部材番号301~部材番号303で示す部分がある。部材番号301で示す部分は、第1長辺33aに沿う一つの第1突出部44に対し第1方向Xに隣り合う二つの第2突出部45と、第1交差方向F1、第2交差方向F2、及び第1方向Xの各々に隣り合う第1突出部44の一部分と、を含む。
【0111】
その他の部分として、部材番号302で示す部分がある。部材番号302で示す部分では、第1方向Xに一列に並ぶ第1突出部44の一部分と、第1方向Xに隣り合う第1突出部44の間に挟まれた第1突出部44の一部分と、を含む。
【0112】
さらに、その他の部分として、部材番号303で示す部分がある。部材番号303で示す部分は、第2長辺33bに沿って第1方向Xに一列に並ぶ第1突出部44と、第1方向Xに一列に並ぶ第2突出部45と、第1方向Xに隣り合う第1突出部44の間に挟まれた第1突出部44の一部分と、を含む。
【0113】
図16に、実施形態で説明した閉塞部材30の部分を複数示す。なお、図16において、閉塞部材30の一部だけが実線で表されるとともに、それ以外の部分は破線で表されている。実線で表した部分が、以降に説明する部分である。また、一点鎖線は、以降に説明する部分である実線部分と、その他の部分である破線部分との境界のみを示す線である。
【0114】
閉塞部材30における特徴的な部分の各々は、多角柱状であり、かつ三次元方向に圧縮変形可能な突出部42を複数備える。このような部分として、部材番号401~404で示す部分がある。部材番号401で示す部分は、第1長辺33aに沿う一つの第3突出部46に対し第1方向Xに隣り合う二つの第2突出部45と、第1方向Xに隣り合う二つの第3突出部46の一部分と、一つの第3突出部46に対し第1交差方向F1及び第2交差方向F2に隣り合う第1突出部44と、それら第1突出部44に対し第1交差方向F1及び第2交差方向F2に隣り合う第1突出部44の一部分と、を含む。
【0115】
その他の部分として、部材番号402で示す部分がある。部材番号402で示す部分は、第1交差方向F1及び第2交差方向F2に隣り合う四つの第1突出部44と、各第1突出部44に対し、第1交差方向F1及び第2交差方向F2に隣り合う第1突出部44の一部分と、を含む。
【0116】
さらに、その他の部分として、部材番号403で示す部分がある。部材番号403で示す部分は、一つの第1突出部44に対し、第1交差方向F1に隣り合う二つの第1突出部44と、その二つの第1突出部44に対し第1交差方向F1及び第2交差方向F2に隣り合う第1突出部44の一部分と、一つの第1突出部44に対し、第2交差方向F2に隣り合う二つの第1突出部44と、その二つの第1突出部44に対し第1交差方向F1及び第2交差方向F2に隣り合う第1突出部44の一部分と、を含む。
【0117】
それ以外の部分として、部材番号404で示す部分がある。部材番号404で示す部分は、第2長辺33bに沿って第1方向Xに一列に並ぶ第1突出部44と、第1方向Xに一列に並ぶ第2突出部45と、第1方向Xに一列に並ぶ第3突出部46と、隣り合う第1突出部44の間に挟まれた第1突出部44の一部分と、を含む。
【符号の説明】
【0118】
X…第1方向、Y…第2方向、Z…板厚方向、W…建物壁としての防火区画壁、Wa…貫通孔、11…貫通部材、11a…外面、30…閉塞部材、33a…第1長辺、33b…第2長辺、34a…第1短辺、34b…第2短辺、35…スリット、41…基材、41a…第1端縁、41b…第2端縁、42…突出部、42a…先端面、43…閉塞補助部材、44…第1突出部、45…第2突出部、46…第3突出部、351…第1スリット、352…第2スリット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16