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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115202
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】分析メソッド管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
G01N30/86 D
G01N30/86 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020766
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中尾 孝
(57)【要約】
【課題】新規の分析メソッドの作成の際に、作成中の分析メソッドに類似する既存の分析メソッドの探索負荷を軽減する。
【解決手段】過去に実施された分析で使用された分析メソッドである既存メソッドを格納するメソッドデータベース(6)と、新規メソッド編集画面を表示してメソッド編集窓をディスプレイ(4)に表示し、前記メソッド編集窓において設定された条件パラメータに基づいて新規メソッドを作成するように構成された新規メソッド作成部(12)と、前記新規メソッド編集画面の表示中に、前記メソッドデータベース(6)に格納されている前記既存メソッドの中から作成中の前記新規メソッドに類似する前記既存メソッドを類似メソッドとして検索するように構成された類似メソッド検索部(14)と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去に実施された分析で使用された分析メソッドである既存メソッドを格納するメソッドデータベースと、
メソッド編集窓をディスプレイに表示し、前記メソッド編集窓において設定された条件パラメータに基づいて新規メソッドを作成するように構成された新規メソッド作成部と、
前記メソッド編集窓が表示されているときに、前記メソッドデータベースに格納されている前記既存メソッドの中から作成中の前記新規メソッドに類似する前記既存メソッドを類似メソッドとして検索するように構成された類似メソッド検索部と、を備えている分析メソッド管理システム。
【請求項2】
前記類似メソッド検索部により検索された前記類似メソッドを前記メソッド編集窓と同時に前記ディスプレイに表示するように構成された情報表示部をさらに備えている、請求項1に記載の分析メソッド管理システム。
【請求項3】
前記メソッドデータベースに格納されている前記既存メソッドを使用して実施された過去の分析の分析結果を前記既存メソッドと対応させて格納する分析結果データベースをさらに備え、
前記情報表示部は、前記類似メソッド検索部により検索された前記類似メソッドを用いた分析で得られた分析結果を前記分析結果データベースから読み出し、読み出した前記分析結果を前記メソッド編集窓と同時に前記ディスプレイに表示するように構成されている、請求項1に記載の分析メソッド管理システム。
【請求項4】
前記分析結果はクロマトグラムである、請求項3に記載の分析メソッド管理システム。
【請求項5】
前記類似メソッド検索部は、所定条件に従って前記メソッドデータベースに格納されている前記既存メソッドの中から検索対象メソッドを選定し、選定した前記検索対象メソッドの中から前記類似メソッドを検索するように構成されている、請求項1に記載の分析メソッド管理システム。
【請求項6】
前記メソッドデータベースは、前記既存メソッドをそれぞれが用いられた分析を実施した分析装置の構成と対応付けて格納するように構成され、
前記類似メソッド検索部は、対応付けられている分析装置の構成が作成中の前記新規メソッドが使用される分析装置の構成と同じであることを前記所定条件として前記検索対象メソッドを選定するように構成されている、請求項5に記載の分析メソッド管理システム。
【請求項7】
前記検索対象の既存メソッドを選定するための選定条件をユーザによる入力情報に基づいて設定するように構成された対象条件設定部をさらに備え、
前記類似メソッド検索部は、前記対象条件設定部により設定された前記選定条件に従って前記検索対象の既存メソッドを選定するように構成されている、請求項5に記載の分析メソッド管理システム。
【請求項8】
前記分析メソッドの前記条件パラメータからなるメソッド行列を作成するように構成されたメソッド行列作成部をさらに備え、
前記類似メソッド検索部は、前記新規メソッドのメソッド行列に対する前記既存メソッドのメソッド行列のコサイン類似度に基づいて前記類似メソッドを検索するように構成されている、請求項1に記載の分析メソッド管理システム。
【請求項9】
前記分析メソッドの前記条件パラメータは複数のグループに分けられ、
前記メソッド行列作成部は、前記分析メソッドの前記グループごとのメソッド行列を作成するように構成され、
前記類似メソッド検索部は、前記新規メソッドの前記グループごとのメソッド行列に対する前記既存メソッドの前記グループごとのメソッド行列のコサイン類似度を計算し、前記グループごとの前記メソッド行列のコサイン類似度の総合評価に基づいて前記類似メソッドを検索するように構成されている、請求項8に記載の分析メソッド管理システム。
【請求項10】
前記総合評価は平均値である、請求項9に記載の分析メソッド管理システム。
【請求項11】
ユーザによる入力情報に基づいて前記分析メソッドの前記グループに優先度を設定するように構成された優先度設定部をさらに備え、
前記類似メソッド検索部は、前記グル―プごとのメソッド行列の前記コサイン類似度に前記グループの優先度の高さに応じた重み付けを行なった上で前記平均値を計算するように構成されている、請求項10に記載の分析メソッド管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフなどの分析装置で実施する分析のための分析メソッドの作成及び管理を行なうための分析メソッド管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフなどの分析装置で分析を行なうために、カラムの種類、試料注入量、カラムオーブンの温度、移動相の種類、移動相の流量などの複数の条件パラメータを設定して分析条件を設定する必要がある。しかし、分析の都度、ユーザがそれらの条件パラメータを入力して分析条件を設定するのは煩雑である。そこで、一度設定した分析条件を分析メソッドとしてデータベースに記憶させておき、分析の際にその分析メソッドを分析装置の制御部が読み出して各機器を制御するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、新たな分析の分析条件の設定の際に、データベースに記憶されている既存の分析メソッドをそのまま使用したり、既存の分析メソッドの一部の条件パラメータに変更を加えて新たな分析メソッドを作成したりすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-029270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新規に分析メソッドを作成する際、作成中の分析メソッドで分析を行なった場合にどのような分析結果が得られるかを予測できれば、適切な分析メソッドの作成が容易になる。しかしながら、作成中の分析メソッドで得られる分析結果を予測するためには、データベースに記憶されている分析メソッドを1つずつ確認しながら作成中の分析メソッドと似たような条件パラメータをもつ分析メソッドを探し出し、さらに探し出した分析メソッドを使用して得られた分析結果を探し出すという煩雑な作業が必要である。
【0006】
作成中の分析メソッドと似たような分析メソッドを探し出すためにデータベースに記憶されている既存の分析メソッドを1つずつ確認する作業は非常に煩雑である。暫定的な分析メソッドを作成してテスト分析を実行し、得られる分析結果を確認するという方法もあるが、サンプルが貴重なものである場合にはそのような方法を採用することは難しい。また、分析装置のコンディショニングや分析自体に長時間を要する場合にも、得られる分析結果の確認に多大な時間を要することになり、採用が難しい。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、新規の分析メソッドの作成の際に、作成中の分析メソッドに類似する既存の分析メソッドの探索負荷を軽減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分析メソッド管理システムは、過去に実施された分析で使用された分析メソッドである既存メソッドを格納するメソッドデータベースと、メソッド編集窓をディスプレイに表示し、前記メソッド編集窓において設定された条件パラメータに基づいて新規メソッドを作成するように構成された新規メソッド作成部と、前記メソッドデータベースに格納されている前記既存メソッドの中から作成中の前記新規メソッドに類似する前記既存メソッドを類似メソッドとして検索するように構成された類似メソッド検索部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る分析メソッド管理システムによれば、新規メソッド作成モード中に、メソッドデータベースに格納されている既存メソッドの中から作成中の新規メソッドに類似する既存メソッドを類似メソッドとして検索するように構成されているので、作成中の分析メソッドに類似する既存の分析メソッドの探索負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】分析メソッド管理システムの一実施例を示すブロック図である。
図2】類似メソッドに関する情報をメソッド編集窓と同時に表示した画面の一例である。
図3】分析メソッドの条件パラメータをメソッド行列化する方法の一例を説明するための図である。
図4】分析メソッドの条件パラメータをメソッド行列化する方法の他の例を説明するための図である。
図5】分析メソッドの条件パラメータから複数のメソッド行列を作成した場合の各分析メソッドの類似度の評価方法の一例を説明するための類似度テーブルである。
図6】分析メソッドの条件パラメータから複数のメソッド行列を作成した場合の各分析メソッドの類似度の評価方法の他の例を説明するための類似度テーブルである。
図7】分析メソッドの条件パラメータの各グループに優先度を設定した一例である。
図8】同実施例における新規メソッド作成の流れを説明するためのフローチャートである。
図9】同実施例における類似メソッド表示の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係る分析メソッド管理システムの一実施例について説明する。
【0012】
図1に示されているように、分析メソッド管理システム1は、演算処理装置2とディスプレイ4を備えている。演算処理装置2は、CPU(中央演算装置)や情報記憶デバイスなどを備えたコンピュータ装置(例えば、パーソナルコンピュータ)によって実現される。演算処理装置2は液体クロマトグラフなどの分析装置100と通信可能に設けられる。分析メソッド管理システム1は、分析装置100で新たに実施する分析のための分析メソッド(新規メソッド)を作成する新規メソッド作成機能のほか、新規メソッドの作成に際し、過去に実施された分析で使用された分析メソッド(既存メソッド)のうち作成中の新規メソッドに類似する既存メソッド(類似メソッドともいう)、及びその類似メソッドを使用して得られた分析結果等をユーザに参照させる類似メソッド参照機能を有する。分析メソッド管理システム1は、作成した新規メソッドを分析装置100へ提供することができる。
【0013】
新規メソッド作成機能及び類似メソッド参照機能を実現するために、分析メソッド管理システム1の演算処理装置2は、メソッドデータベース6、分析結果データベース8、解析結果データベース10、新規メソッド作成部12、類似メソッド検索部14、対象条件設定部16、メソッド行列作成部18、優先度設定部20、及び情報表示部22を備えている。
【0014】
メソッドデータベース6は既存メソッドを各既存メソッドが使用された分析装置の装置構成とともに格納する記憶領域である。分析結果データベース8は、既存メソッドを使用した分析で得られた分析結果を格納する記憶領域である。分析結果とはクロマトグラムなどである。分析結果データベース8に格納されている分析結果は、各分析結果が得られた分析に使用された既存メソッドと対応付けられている。解析結果データベース10は、分析結果データベース8に格納されている各分析結果の解析処理により得られた解析結果を格納している。解析結果とは、ピークテーブル、検量線などである。解析結果データベール10に格納されている解析結果は、それぞれの解析処理の基となっている分析結果が得られた分析に使用された既存メソッドと対応付けられている。
【0015】
新規メソッド作成部12は、例えば、ユーザが新規メソッド作成の指示を入力したときに、新規メソッド編集画面を起動して図2の左側に示されているような新規メソッド編集窓を開き、ユーザに各条件パラメータを設定させ、設定された条件パラメータに基づいて新規メソッドを作成する。図2の右側下段の窓は、作成中の新規メソッドに類似する既存メソッド(類似メソッド)を表示する類似メソッド表示窓である。図2では、複数の類似メソッドのほかに、各類似メソッドを使用した分析で得られた分析結果(クロマトグラム)、その分析結果の解析結果(ピークテーブル及び検量線)が表示されている。図2の右側上段の窓は、類似メソッドの検索の際に検索対象の既存メソッドを選定するための条件をユーザが指定するための対象条件設定窓である。
【0016】
類似メソッド検索部14は、新規メソッド編集画面を表示中に、メソッドデータベース6に格納されている既存メソッドの中から作成中の新規メソッドに類似する既存メソッドを検索する。すなわち、類似メソッド検索部14は、メソッド編集窓において条件パラメータが変更される度に、変更後の条件パラメータによって作成される新規メソッドに類似する既存メソッドをバックグランドで検索する。類似メソッド検索部14は、類似メソッドの検索の際に、作成中の新規メソッドに対する既存メソッドの類似度を算出し、類似度の高い所定数の既存メソッドを類似メソッドとすることができる。分析メソッド同士の類似度はどのようなものであってもよいが、この実施例では、後述するメソッド行列のコサイン類似度を使用する。
【0017】
対象条件設定部16は、類似メソッドの検索対象の既存メソッドを選定するための条件をユーザによる入力に基づいて設定する機能である。図2においては、この機能が右側上段の対象条件設定窓によって実現されている。ここで対象条件が設定されると、類似メソッド検索部14は、メソッドデータベース6に格納されている既存メソッドを設定された対象条件でフィルタリングし、類似メソッドの検索対象となる既存メソッドを絞り込む。これにより、類似メソッドの検索による計算負荷が軽減される。
【0018】
メソッド行列作成部18は、作成中の新規メソッドのメソッド行列、及び既存メソッドのメソッド行列を作成する機能である。
【0019】
メソッド行列の作成方法として、図3の例に示されているように、分析メソッドのすべての条件パラメータを1つの行列で表現する方法が挙げられる。
【0020】
また、メソッド行列の作成方法として、図4の例に示されているように、分析メソッドの条件パラメータを複数のグループに分け、各グループに属する条件パラメータを1つの行列で表現することで1つの分析メソッドから複数のメソッド行列(メソッド行列1、メソッド行列2、・・・)を作成する方法も挙げられる。
【0021】
作成中の新規メソッドのメソッド行列は、新規メソッド編集画面の表示中、条件パラメータが設定(変更)される度にメソッド行列作成部18によって作成される。一方で、既存メソッドのメソッド行列については、類似メソッドの検索の際にメソッド行列作成部18によって作成されてもよいし、既存メソッドがメソッドデータベース6に格納される際にメソッド行列作成部18によって作成されて既存メソッドと対応付けられてメソッドデータベース6に格納されてもよい。メソッドデータベース6に既存メソッドのメソッド行列が格納されるようにしておくことで、類似メソッドの検索の際の計算負荷を軽減することができる。
【0022】
図1に戻って、類似メソッド検索部14は、メソッド行列作成部18によって作成された新規メソッドのメソッド行列に対する検索対象の既存メソッドのメソッド行列のコサイン類似度を計算し、計算したコサイン類似度に基づいて類似メソッドを検索する。
【0023】
1つの分析メソッドについて複数のメソッド行列がメソッド行列作成部18によって作成される場合、類似メソッド検索部14は、新規メソッドと検索対象の既存メソッドの互いに対応するメソッド行列同士のコサイン類似度を計算し、それらのコサイン類似度の総合評価を計算することよって行なうことができる。総合評価としては、各メソッド行列のコサイン類似度の平均値が挙げられる。
【0024】
図5に示されているように、検索対象の既存メソッドとしてメソッドA~Cが存在し、1つの分析メソッドについて3つのメソッド行列1~3が作成される場合、作成中の新規メソッドのメソッド行列1に対するメソッドA~Cのそれぞれのメソッド行列1のコサイン類似度、作成中の新規メソッドのメソッド行列2に対するメソッドA~Cのそれぞれのメソッド行列2のコサイン類似度、作成中の新規メソッドのメソッド行列3に対するメソッドA~Cのそれぞれのメソッド行列3のコサイン類似度がそれぞれ計算される。この例では、メソッドAのメソッド行列1~3のそれぞれのコサイン類似度は0.95、0.95、0.7である。この場合、メソッドAの新規メソッドに対する類似度の総合評価の値は、
(0.95+0.95+0.7)/3=0.87
となる。類似メソッド検索部14は、このようにして計算した類似度の総合評価を値が高い順にソートし、総合評価値が高い方から所定数の既存メソッドを類似メソッドとすることができる。
【0025】
なお、作成中の新規メソッドに対する類似度の総合評価の対象から除外するメソッド行列をユーザが任意に指定できるようになっていてもよい。そうすれば、ユーザが重要でないと考える条件パラメータを類似度の計算対象から除外することができ、類似メソッドの検索の際の計算負荷を軽減することができる。図6の例では、メソッド行列2が総合評価の計算対象から除外されている。これにより、メソッド行列Aの新規メソッドに対する類似度の総合評価の値は、
(0.95+0.7)/2=0.83
となる。
【0026】
また、分析メソッドの条件パラメータが複数のグループに分けられて各グループのメソッド行列が作成される場合、図7に示されているように、各グループに対して類似度評価の優先度を設定することができるようになっていてもよい。演算処理装置2の優先度設定部20は、分析メソッドの条件パラメータの各グループに優先度を設定するための機能である。分析メソッドの条件パラメータの各グループに優先度が設定されている場合、新規メソッドに対する既存メソッドの類似度の総合評価値の計算の際に、各グループのメソッド行列の類似度にその優先度に応じた重み付けがなされる。
【0027】
例えば、1つの分析メソッドから3つのメソッド行列1~3が作成される場合において、メソッド行列1、メソッド行列2、メソッド行列3の順に高い優先度が設定されたとする。その場合、総合評価の計算では、メソッド行列1の類似度の値Xには最も高い係数A(例えば、1)が掛けられ、メソッド行列2の類似度の値Xには係数Aよりも低い係数B(例えば、0.9)が掛けられ、メソッド行列3の類似度の値Xには係数Bよりも低い係数C(例えば、0.8)が掛けられる。その結果、ある既存メソッドの類似度の総合評価(平均値)は、
(A×X+B×X+C×X)/3
によって求められる。
【0028】
図1に戻って、情報表示部22は、類似メソッド検索部14により検索された類似メソッドを、メソッド編集窓と同じ画面上に、図2の例で言えば、メソッド編集窓の右側の類似メソッド表示窓に、分析結果や解析結果などの他の情報とともに表示する機能である。なお、図2の例では、メソッド編集窓の右側の類似メソッド表示窓に、類似メソッド、分析結果、及び解析結果のすべてが同時表示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、類似メソッド、分析結果、及び解析結果のうちの一部の情報のみが表示されるようになっていてもよいし、ユーザがどの情報を表示するのかを設定することができるようになっていてもよい。
【0029】
次に、分析メソッド管理システム1における新規メソッド作成の流れの一例について、図1とともに図8のフローチャートを用いて説明する。
【0030】
ユーザが新規メソッド作成の指示を演算処理装置2に対して入力すると、新規メソッド作成部12は、新規メソッド編集画面を表示してディスプレイ4にメソッド編集窓を表示する(ステップ101)。このとき、メソッド編集窓の各設定項目には、デフォルトの条件パラメータが設定されている。メソッド編集窓においてユーザが何らかの条件パラメータに変更を加える(設定する)と(ステップ102)、変更後の条件パラメータを反映した新規メソッドに類似する既存メソッド(類似メソッド)を、類似メソッド検索部14がメソッドデータベース6の中から検索し、情報表示部22が検索された類似メソッドに関する情報をメソッド編集窓と同じ画面上に同時に表示する(ステップ103)。類似メソッド検索部14及び情報表示部22の機能は、ユーザが新規メソッドの作成を完了して新規メソッド作成モードを終了するまで有効であり(ステップ104)、これによって、ユーザがメソッド編集窓で条件パラメータの変更を行なう度に変更後の条件パラメータが反映された新規メソッドに類似する分析メソッドとその関連情報がメソッド編集窓と同じ画面にリアルタイムで表示される。
【0031】
次に、分析メソッド管理システム1における類似メソッド表示の流れの一例について、図1とともに図9のフローチャートを用いて説明する。
【0032】
上記の新規メソッド編集画面においてユーザが何らかの条件パラメータに変更を加えると、類似メソッド検索部14は、メソッドデータベース6に格納されている既存メソッドの中から、現在の分析装置100の装置構成と同じ装置構成で実施された分析において使用された既存メソッドを抽出し、さらに、ユーザによって設定されている選定条件でフィルタリングを行なって検索対象の既存メソッドを選定する(ステップ201)。
【0033】
次に、類似メソッド検索部14は、メソッド行列作成部18によって作成された新規メソッドのメソッド行列と検索対象の既存メソッドのメソッド行列をそれぞれ取得し(ステップ202)、新規メソッドのメソッド行列に対する各既存メソッドのメソッド行列のコサイン類似度を計算する(ステップ203)。そして、類似メソッド検索部14は、計算したコサイン類似度によって検索対象の既存メソッドをソートし(ステップ204)、作成中の新規メソッドに対する類似度の高い所定数(例えば5つ)の既存メソッドを類似メソッドとしてディスプレイ4のメソッド編集窓と同じ画面上に表示する(ステップ206)。
【0034】
なお、以上において説明した実施例は本発明に係る分析メソッド管理システムの実施形態の一例に過ぎない。本発明に係る分析メソッド管理システムの実施形態は以下のとおりである。
【0035】
本発明に係る分析メソッド管理システムの一実施形態は、過去に実施された分析で使用された分析メソッドである既存メソッドを格納するメソッドデータベースと、
新規メソッド編集画面を表示してメソッド編集窓をディスプレイに表示し、前記メソッド編集窓において設定された条件パラメータに基づいて新規メソッドを作成するように構成された新規メソッド作成部と、
前記新規メソッド編集画面の表示中に、前記メソッドデータベースに格納されている前記既存メソッドの中から作成中の前記新規メソッドに類似する前記既存メソッドを類似メソッドとして検索するように構成された類似メソッド検索部と、を備えている。
【0036】
分析メソッド管理システムの一実施形態の態様[1]では、前記類似メソッド検索部により検索された前記類似メソッドを前記メソッド編集窓と同時に前記ディスプレイに表示するように構成された情報表示部をさらに備えている。この態様[1]により、ユーザは、作成中の新規メソッドに類似する既存メソッドを容易に参照することができる。
【0037】
分析メソッド管理システムの一実施形態の態様[2]では、前記メソッドデータベースに格納されている前記既存メソッドを使用して実施された過去の分析の分析結果を前記既存メソッドと対応させて格納する分析結果データベースをさらに備え、前記情報表示部は、前記類似メソッド検索部により検索された前記類似メソッドを用いた分析で得られた分析結果を前記分析結果データベースから読み出し、読み出した前記分析結果を前記メソッド編集窓と同時に前記ディスプレイに表示するように構成されている。この態様[2]により、ユーザは、作成中の新規メソッドに類似する既存メソッドを使用した過去の分析で得られた分析結果を容易に参照することができる。この態様[2]は、上記態様[1]と組み合わせることができる。
【0038】
態様[2]において、前記分析結果の一例はクロマトグラムである。
【0039】
分析メソッド管理システムの一実施形態の態様[3]では、前記類似メソッド検索部は、所定条件に従って前記メソッドデータベースに格納されている前記既存メソッドの中から検索対象の既存メソッドを選定し、選定した前記検索対象の既存メソッドの中から前記類似メソッドを検索するように構成されている。この態様[3]により、類似メソッドの検索対象となる既存メソッドの数を絞ることができるので、類似メソッドの検索の際の計算負荷が軽減される。この態様[3]は、上記態様[1]及び/又は[2]と組み合わせることができる。
【0040】
態様[3]において、前記メソッドデータベースは、前記既存メソッドをそれぞれが用いられた分析を実施した分析装置の構成と対応付けて格納するように構成され、前記類似メソッド検索部は、対応付けられている分析装置の構成が作成中の前記新規メソッドが使用される分析装置の構成と同じであることを前記所定条件として前記検索対象の既存メソッドを選定するように構成されていてもよい。これにより、類似メソッドの検索対象を、新規メソッドが使用される分析装置と同じ構成の分析装置で使用された既存メソッドに絞ることができる。
【0041】
また、態様[3]において、前記検索対象の既存メソッドを選定するための選定条件をユーザによる入力情報に基づいて設定するように構成された対象条件設定部をさらに備え、前記類似メソッド検索部は、前記対象条件設定部により設定された前記選定条件に従って前記検索対象の既存メソッドを選定するように構成されている。これにより、ユーザが所望する条件で類似メソッドの検索対象となる既存メソッドを絞ることができる。
【0042】
分析メソッド管理システムの一実施形態の態様[4]では、前記分析メソッドの前記条件パラメータからなるメソッド行列を作成するように構成されたメソッド行列作成部をさらに備え、前記類似メソッド検索部は、前記新規メソッドのメソッド行列に対する前記既存メソッドのメソッド行列のコサイン類似度に基づいて前記類似メソッドを検索するように構成されている。この態様[4]は、上記態様[1]、[2]、及び/又は[3]と組み合わせることができる。
【0043】
態様[4]の変形例では、前記分析メソッドの前記条件パラメータは複数のグループに分けられ、前記メソッド行列作成部は、前記分析メソッドの前記グループごとのメソッド行列を作成するように構成され、前記類似メソッド検索部は、前記新規メソッドの前記グループごとのメソッド行列に対する前記既存メソッドの前記グループごとのメソッド行列のコサイン類似度を計算し、前記グループごとの前記メソッド行列のコサイン類似度の総合評価に基づいて前記類似メソッドを検索するように構成されている。この変形例によれば、分析メソッドのすべての条件パラメータを使用して1つのメソッド行列を作成する場合に比べて、メソッド行列同士のコサイン類似度の計算負荷を軽減することができる。
【0044】
態様[4]の上記変形例において、前記総合評価は平均値であってもよい。
【0045】
上記の場合において、ユーザによる入力情報に基づいて前記分析メソッドの前記グループに優先度を設定するように構成された優先度設定部をさらに備え、前記類似メソッド検索部は、前記グル―プごとのメソッド行列の前記コサイン類似度に前記グループの優先度の高さに応じた重み付けを行なった上で前記平均値を計算するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 分析メソッド管理システム
2 演算処理装置
4 ディスプレイ
6 メソッドデータベース
8 分析結果データベース
10 解析結果データベース
12 新規メソッド作成部
14 類似メソッド検索部
16 対象条件設定部
18 メソッド行列作成部
20 優先度設定部
22 情報表示部
100 分析装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9