(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115206
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ガス処理方法及びガス処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240819BHJP
B01D 53/40 20060101ALI20240819BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240819BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20240819BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20240819BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20240819BHJP
C07C 31/08 20060101ALI20240819BHJP
C07C 29/152 20060101ALI20240819BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/40 200
B01D53/78 ZAB
C07C1/12
C07C9/04
C07C31/04
C07C31/08
C07C29/152
C07B61/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020773
(22)【出願日】2023-02-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.学会での発表 開催日:令和4年10月26日 集会名:16th International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies(第16回 温室効果ガス制御技術国際会議) 開催場所:Cite Internationale Centre de Congres de Lyon (50 Quai Charles de Gaulle 69463 Lyon Cedex 06,France) (リヨン国際会議場、フランス国 69463 リヨン セデックス06 シャルル・ド・ゴール通り 50) 2.予稿集への掲載 ウェブサイトの掲載日:令和4年11月28日 ウェブサイトのアドレス:https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4285220
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】岸本 啓
(72)【発明者】
【氏名】前田 基秀
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋
(72)【発明者】
【氏名】則永 行庸
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4H006
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA04
4D002AA09
4D002AA19
4D002AB01
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA13
4D002DA31
4D002DA32
4D002DA35
4D002EA08
4D002HA08
4D020AA03
4D020AA06
4D020AA10
4D020BA16
4D020BA19
4D020BA23
4D020BB03
4D020BB04
4D020BC01
4D020CC09
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC41
4H006AC90
4H006BD10
4H006BD84
4H006BE20
4H006BE41
4H006FE11
(57)【要約】
【課題】処理液の再生に要するエネルギーを効果的に低減できるようにする。
【解決手段】ガス処理装置10は、二酸化炭素を含む被処理ガスと処理液とを接触させて、被処理ガスに含まれる二酸化炭素を前記処理液に吸収させる吸収器21と、二酸化炭素を吸収した処理液を加熱して、当該処理液から二酸化炭素を分離する再生器22と、再生器22において処理液から分離され且つ二酸化炭素を含むガスを用いて、メタンを合成する反応器14と、処理液からの二酸化炭素の分離を促進させる分離促進ガスを再生器22に導入する導入路52と、を備える。導入路52は、反応器14において発生する熱を熱源として、再生器22への導入前に分離促進ガスを予熱する伝熱路52bを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、処理液とを、吸収器内で接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収工程と、
前記酸性化合物を吸収した前記処理液を再生器において加熱して、当該処理液から前記酸性化合物を分離する再生工程と、
前記再生工程で前記処理液から分離され且つ前記酸性化合物を含むガスを用いて、合成反応を起こさせる反応工程と、
を備え、
前記再生工程において、前記処理液からの前記酸性化合物の分離を促進させる分離促進ガスを導入し、
前記分離促進ガスを、前記再生器に導入する前に、前記反応工程で発生する熱を熱源として予熱する、ガス処理方法。
【請求項2】
前記処理液は、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液であり、
前記分離促進ガスは、前記処理液にほぼ溶解しないガス、水蒸気、又は水蒸気と前記処理液にほぼ溶解しないガスとの混合ガスである、請求項1に記載のガス処理方法。
【請求項3】
前記反応工程は、メタンを合成する工程、メタノールを合成する工程、エタノールを合成する工程のいずれかである、請求項1又は2に記載のガス処理方法。
【請求項4】
前記再生工程で生じたガスを、前記反応工程で利用する前に、前記反応工程で予熱された前記分離促進ガスにより予熱する、請求項1又は2に記載のガス処理方法。
【請求項5】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと処理液とを接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収器と、
前記酸性化合物を吸収した前記処理液を加熱して、当該処理液から前記酸性化合物を分離する再生器と、
前記再生器において前記処理液から分離され且つ前記酸性化合物を含むガスを用いて、合成反応を起こさせる反応器と、
前記処理液からの前記酸性化合物の分離を促進させる分離促進ガスを前記再生器に導入する導入路と、を備え、
前記導入路は、前記反応器において発生する熱を熱源として、前記再生器への導入前に前記分離促進ガスを予熱する伝熱路を有している、ガス処理装置。
【請求項6】
前記処理液は、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液であり、
前記分離促進ガスは、前記処理液にほぼ溶解しないガス、水蒸気、又は水蒸気と前記処理液にほぼ溶解しないガスとの混合ガスである、請求項5に記載のガス処理装置。
【請求項7】
前記反応器は、メタンを合成する反応器、メタノールを合成する反応器、エタノールを合成する反応器のいずれかである、請求項5又は6に記載のガス処理装置。
【請求項8】
前記再生器で生じ且つ前記反応器に導入される前のガスを、前記反応器で発生する熱を熱源として予熱する予熱器をさらに備えている、請求項5又は6に記載のガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理方法及びガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理ガスに含まれる酸性化合物を処理液と接触させることによって、酸性化合物を分離させるガス分離方法が知られている。この種のガス分離方法では、吸入器において、被処理ガスと処理液とを接触させて、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させる一方で、再生器において、処理液を加熱することにより、処理液から酸性化合物を分離させる。一方、下記特許文献1には、CO2分離装置に加えて、メタネーション反応装置が設けられたシステムが開示されており、このシステムでは、メタネーション反応装置で生じた熱をCO2分離装置における再生部での処理液の再生に利用している。また、下記特許文献2においても、メタン製造設備で生じた反応熱を、CO2分離回収装置におけるリボイラに供給することが開示されている。
【0003】
下記非特許文献1には、酸性化合物の含有率が高い第1相部分(例えばアミン相)と酸性化合物の含有率が低い第2相部分(例えばエーテル相)とに液相分離する処理液を用いることにより、処理液の再生エネルギーを下げることが可能になることが開示されている。また、下記非特許文献2には、吸収液から酸化性化合物を脱離して処理液を再生する際に、水素ガスを吹き込むことにより、吸収液の再生促進ができて、再生温度の低温化を図れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-51901号公報
【特許文献2】特開2020-63206号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hiroshi Machida et al.,“Development of phase separation solvent for CO2 capture by aqueous(amine+ether) solution”,Journal of Chemical Thermodynamics,(米),Elsevier Ltd.,2017,Vol.113,p.64-70
【非特許文献2】Hiroshi Machida et al.,“Energy-Saving CO2 Capture by H2 Gas Stripping for Integrating CO2 Separation and Conversion Processes” ACS Sustainable Chem. Eng. 2020,8,23,8732-8740
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に示されているように、メタネーション反応装置で生じた熱をCO2分離装置での処理液の再生に利用すれば、処理液の再生に要するエネルギーを低減することができる。また、非特許文献2に開示されているように、処理液の再生時に水素を介在させることによっても、処理液の再生に要するエネルギーを低減することができる。このため、メタネーション反応装置で生じた熱を処理液の再生工程で利用するだけでなく、この再生工程を実施する再生器に水素ガスを導入すれば、さらなる再生エネルギーの低減を図ることが期待できる。しかしながら、再生器に水素ガスを導入したとしても、メタネーション反応装置からの熱が水素ガスの加熱用に消費されてしまうため、メタネーション反応装置で生じた熱を再生器に導入したとしても、この熱を処理液の再生に有効に利用できるとは限らない。
【0007】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、処理液の再生に要するエネルギーを効果的に低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係るガス処理方法は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、処理液とを、吸収器内で接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収工程と、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を再生器において加熱して、当該処理液から前記酸性化合物を分離する再生工程と、前記再生工程で前記処理液から分離され且つ前記酸性化合物を含むガスを用いて、合成反応を起こさせる反応工程と、を備える。前記再生工程において、前記処理液からの前記酸性化合物の分離を促進させる分離促進ガスを導入し、前記分離促進ガスを、前記再生器に導入する前に、前記反応工程で発生する熱を熱源として予熱する。
【0009】
本発明では、再生工程において分離促進ガスが用いられるため、処理液から酸性化合物を分離し易くすることができる。このため、再生器での再生温度として、より低い温度を設定することができ、かつより低いエネルギーで酸性化合物を分離することが可能となる。しかも、分離促進ガスを再生器に導入する前に、反応工程で発生する熱を熱源として分離促進ガスを予熱するため、再生工程で処理液の再生のために用いられるべき熱が分離促進ガスを加熱するのに消費されてしまうことを抑制できる。したがって、処理液からの酸性化合物の分離効率が低下することを抑制できる。また、反応工程で発生する熱を有効利用するため、分離促進ガスを予熱するための熱源を別途用意する必要もない。
【0010】
前記処理液は、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液であってもよい。この場合、前記分離促進ガスは、前記処理液にほぼ溶解しないガス、水蒸気、又は水蒸気と前記処理液にほぼ溶解しないガスとの混合ガスであってもよい。この態様では、再生工程において、処理液にほぼ溶解しないガスである分離促進ガスを処理液に接触させるだけでなく、酸性化合物の含有率の低い相部分を介在させた状態で、処理液から酸性化合物を分離する。このため、より一層、処理液の再生に要するエネルギーを低減することができる。また水蒸気や、水蒸気と処理液にほぼ溶解しないガスとの混合ガスの場合においても、再生工程において、水蒸気が処理液に接触することにより、再生に要するエネルギーを低減できる。
【0011】
前記反応工程は、メタンを合成する工程、メタノールを合成する工程、エタノールを合成する工程のいずれかであってもよい。この態様では、処理液から分離されたガスに含まれる酸性化合物を利用してメタン、メタノール又はエタノールが合成される。
【0012】
前記再生工程で生じたガスを、前記反応工程で利用する前に、前記反応工程で予熱された前記分離促進ガスにより予熱してもよい。
【0013】
この態様では、再生工程で生じたガスが、反応工程で利用される前に加熱されるため、再生工程での再生温度が低い場合においても、ガスを反応工程で効率的に利用できる。しかも、反応工程で生じた熱を分離促進ガスを介して再生工程で利用するため、熱収支をより高めることができる。
【0014】
本発明に係るガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと処理液とを接触させて、前記被処理ガスに含まれる前記酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収器と、前記酸性化合物を吸収した前記処理液を加熱して、当該処理液から前記酸性化合物を分離する再生器と、前記再生器において前記処理液から分離され且つ前記酸性化合物を含むガスを用いて、合成反応を起こさせる反応器と、前記処理液からの前記酸性化合物の分離を促進させる分離促進ガスを前記再生器に導入する導入路と、を備える。前記導入路は、前記反応器において発生する熱を熱源として、前記再生器への導入前に前記分離促進ガスを予熱する伝熱路を有している。
【0015】
本発明では、導入路を通して再生器に分離促進ガスが導入されるため、処理液から酸性化合物を分離し易くすることができる。このため、再生器での再生温度として、より低い温度を設定することができ、かつより低いエネルギーで酸性化合物を分離することが可能となる。しかも、分離促進ガスを再生器に導入する前に、反応器で発生する熱を熱源として分離促進ガスを予熱するため、再生器で処理液の再生のために用いられるべき熱が分離促進ガスを加熱するのに消費されてしまうことを抑制できる。したがって、処理液からの酸性化合物の分離効率が低下することを抑制できる。また、反応器で発生する熱を有効利用するため、分離促進ガスを予熱するための熱源を別途用意する必要もない。
【0016】
前記処理液は、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液であってもよい。この場合、前記分離促進ガスは、前記処理液にほぼ溶解しないガス、水蒸気、又は水蒸気と処理液にほぼ溶解しないガスとの混合ガスであってもよい。この態様では、再生器内において、処理液にほぼ溶解しないガスである分離促進ガスを処理液に接触させるだけでなく、酸性化合物の含有率の低い相部分を介在させた状態で、処理液から酸性化合物を分離する。このため、より一層、処理液の再生に要するエネルギーを低減することができる。また水蒸気や、水蒸気と処理液にほぼ溶解しないガスとの混合ガスの場合においても、再生器内において、水蒸気が処理液に接触することにより、再生に要するエネルギーを低減できる。
【0017】
前記反応器は、メタンを合成する反応器、メタノールを合成する反応器、エタノールを合成する反応器のいずれかであってもよい。
【0018】
前記ガス処理装置は、前記再生器で生じ且つ前記反応器に導入される前のガスを、前記反応器で発生する熱を熱源として予熱する予熱器をさらに備えていてもよい。
【0019】
この態様では、再生器で生じたガスが、反応器に導入される前に加熱されるため、再生器における再生工程での処理液の再生温度が低い場合においても、ガスを反応器で効率的に利用できる。しかも、反応器で生じた熱を再生器で利用するため、熱収支をより高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、処理液の再生に要するエネルギーを効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図2】第1実施形態の変形例に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図3】第1実施形態の変形例に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図4】第2実施形態に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図5】第2実施形態の変形例に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図6】第2実施形態の変形例に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図7】第2実施形態の変形例に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【
図8】第2実施形態の変形例に係るガス処理装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係るガス処理装置10は、処理液を用いて酸性化合物を含む被処理ガスから酸性化合物を分離するために利用されるガス分離装置12と、ガス分離装置12で得られたガスを用いて、合成反応を起こさせる反応器14と、を備えている。本実施形態では、酸性化合物は二酸化炭素であり、反応器14は、ガス分離装置12で分離された二酸化炭素を含むガスを用いて炭化水素であるメタンを合成するように構成されている。したがって、ガス処理装置10は、炭化水素ガスを生成するガス生成装置としても機能する。
【0024】
本実施形態のガス処理装置10は、炭化水素ガスを生成するための装置として構成されるため、酸性化合物としての二酸化炭素を処理対象としている。ただし、ガス分離装置12が分離する酸性化合物としては、水溶液が酸性となるものであれば特に限定されず、例えば塩化水素、二酸化炭素、二酸化硫黄、二硫化炭素等が挙げられる。酸性化合物を含む被処理ガスとしては、例えば産業排ガス、精製時に生ずるプロセスガス、天然ガス等が挙げられる。
【0025】
ガス分離装置12は、吸収器21と、再生器22と、循環路24と、熱交換器26とを備えている。循環路24は、吸収器21から処理液(リッチ液)を抜き出して再生器22に導入させる第1流路24aと、再生器22から処理液(リーン液)を抜き出して吸収器21に還流させる第2流路24bとを含む。
【0026】
熱交換器26は、第1流路24a及び第2流路24bに接続され、第1流路24aを流れる処理液と第2流路24bを流れる処理液との間で熱交換させる。なお、熱交換器26は省略することが可能である。
【0027】
吸収器21には、被処理ガスを供給する導入路31と、処理後のガスを排出するガス排出路32と、処理液を再生器22に送るための第1流路24aと、再生器22から処理液を吸収器21に戻すための第2流路24bと、が接続されている。導入路31は、吸収器21の下端部に接続され、ガス排出路32は、吸収器21の上端部に接続されている。第1流路24aは、吸収器21の下端部又は下端部近傍に接続されている。すなわち、第1流路24aは、吸収器21内に溜まった処理液を抜き出すことができる位置に接続されている。第2流路24bは、吸収器21の上端部又は上端部近傍に接続されている。すなわち、第2流路24bは、再生器22から還流された処理液を上から流下させることができる位置に接続されている。
【0028】
吸収器21は、被処理ガスと処理液とを接触させることにより、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させ、酸性化合物が除去されたガスを排出する。このような吸収器21としては、被処理ガスと処理液とを連続的に接触させられるものであればよい。なお、吸収器21における酸性化合物の吸収は発熱反応である。酸性化合物が二酸化炭素である場合、二酸化炭素の吸収量1t当たりの発熱量は約1.8GJである。吸収器21において発生するこの反応熱は、被処理ガス及び処理液の温度を上昇させる。
【0029】
再生器22には、第1流路24aと、第2流路24bとが接続されている。第1流路24aは、再生器22の上部に接続されており、酸性化合物を吸収し吸収器21から導出された処理液を再生器22内に導入させる。第1流路24aには、ポンプ34が設けられている。第2流路24bは、再生器22の下端部又は下端部近傍に接続されており、再生器22内に貯留された処理液を導出させる。第2流路24bには、ポンプ36が設けられている。
【0030】
再生器22は、酸性化合物を吸収した処理液が貯留され、この貯留された処理液を加熱することによって、酸性化合物を処理液から脱離させる。この処理液からの酸性化合物の脱離は、吸熱反応である。再生器22は、処理液を加熱すると、酸性化合物が脱離するだけでなく、処理液中の水が蒸発する。
【0031】
再生器22には、加熱流路42と供給路40とが接続されている。加熱流路42は、再生器22内の処理液を加熱するための流路であり、熱源から熱を受け取るリボイラ46が設けられている。加熱流路42は、再生器22から処理液を流出させてリボイラ46において処理液を加熱し、再生器22内における底部に戻す。なお、リボイラ46は、後述の反応器14からの回収熱を熱源としてもよいが、これ以外に、例えば電気、蒸気、バーナー等任意の熱源を用いて、直接的又は間接的に処理液を加熱する構成であってもよい。
【0032】
加熱流路42の一端部は再生器22の下部に接続されている。加熱流路42の他端部は第2流路24bに接続されているが、再生器22の下端部又は下端部近傍に接続されていてもよい。
【0033】
供給路40は、再生器22内で得られた酸性化合物を含むガスを反応器14に供給する。供給路40には、処理液から蒸発した酸性化合物のガスと水蒸気との混合気体を冷却するためのコンデンサ44が設けられている。混合気体は冷却されると、水蒸気が凝縮するので、水蒸気を分離することができる。分離された水蒸気は再生器22に還流される。コンデンサ44としては、川水等の安価な冷却水を用いた熱交換器を用いることができる。
【0034】
反応器14は、再生器22において処理液から分離され且つ酸性化合物を含むガスを用いて、合成反応を起こさせる。すなわち、反応器14では、二酸化炭素を含むガスと、後述の導入路52を通して供給される水素ガスとを用いてメタンが合成される。具体的に、反応器14では、二酸化炭素と水素とによる逆シフト反応も進行し、これにより、一酸化炭素と水素とが生成される。
【0035】
【0036】
この反応式(1)による反応は高温であるほど右側(一酸化炭素が生成される側)に平衡が偏るため、高温下で反応が行われる。また、逆シフト反応で生成された一酸化炭素と水素とからメタンが生成されるとともに、二酸化炭素と水素とからもメタンが生成される。
【0037】
【0038】
この反応式(2)による反応は、発熱反応である。また、この反応は平衡反応であるため、生成物にはメタン、水素及び二酸化炭素が含まれる。
【0039】
ガス処理装置10は、再生器22に、酸性化合物の分離を促進するためのガス(以下、分離促進ガスと称する)を供給する導入路52を備えている。導入路52は、分離促進ガスを流すための流路であり、下流端は、再生器22の下端部又は下端部近傍に接続されている。
【0040】
導入路52によって再生器22に供給される分離促進ガスは、処理液にほぼ溶解しないガスである。つまり、分離促進ガスは処理液にほぼ吸収されない。分離促進ガスとして、水素ガス、酸素ガス、メタンガス等の炭化水素ガスを挙げることができるが、本実施形態では水素ガスが用いられる。また、分離促進ガスとして、水蒸気、又は水蒸気と処理液にほぼ溶解しないガスとの混合ガスを挙げることもできる。処理液にほぼ溶解しないガス、水蒸気、又は水蒸気と処理液にほぼ溶解しないガスとの混合ガスを再生器22に供給することにより、再生器22内における酸性化合物のガス分圧を下げることができて、再生器22における処理液からの酸性化合物の分離を促進することができる。ここで、処理液に「ほぼ溶解しない」は、処理液への溶解度が所定値以下であることを表していてもよい。分離促進ガスは、例えば、ヘンリーの法則に従うガスであって、0℃、100kPaの条件下において、処理液100gに対する溶解度が1mol以下の溶解度であるガスであればよい。なお、水に対する酸素の溶解度は、1.3×10-4mol/100g、水に対するメタンの溶解度は、8×10-4mol/100g、水に対する水素の溶解度は、9.5×10-5mol/100gである。これに対し、水に対するアンモニアの溶解度は、6mol/100gであるので、アンモニアは分離促進ガスに該当しない。
【0041】
導入路52は、反応器14を経由しており、導入路52の分離促進ガスは、反応器14で発生する熱(反応熱)を受け取って、この熱を再生器22に導入する。導入路52は、分離促進ガスの供給源に繋がる上流路52aと、上流路52aに繋がり反応器14内に位置する伝熱路52bと、伝熱路52bに繋がるとともに再生器22に繋がる下流路52cと、を含む。供給源は、例えば、再生可能エネルギーを用いて水素を製造できるように構成された水電解装置によって構成されていてもよい。
【0042】
伝熱路52bが反応器14内に配置されているため、導入路52を流れる分離促進ガスは、反応器14で発生する熱(反応熱)を伝熱路52bにおいて受け取ることができる。言い換えると、分離促進ガスは、再生器22に導入される前に、反応器14で発生する熱を熱源として、導入路52において予熱される。なお、伝熱路52bは、反応器14内を通過する構成に限られず、反応器14を構成する容器に接触するように配置されていてもよい。
【0043】
導入路52には、上流路52aに繋がり、上流路52aを流れる分離促進ガスである水素ガスの一部を反応器14内に導入させる分岐路52dが設けられている。なお、水素ガスが導入路52を通して反応器14内に流入する構成が限られるものではなく、導入路52とは別個の流路を通して水素ガスが反応器14内に供給されてもよい。この場合、分岐路52dが省略される。
【0044】
導入路52における下流路52cには、予熱器50が配置されている。予熱器50は、反応器14で生じた熱を受けて加熱(予熱)された分離促進ガスにより、供給路40を通して反応器14に導入されるガスを、反応器14に流入する前に予熱するために設けられている。予熱器50は、導入路52における下流路52cを流れる分離促進ガスと、供給路40を流れるガスとを熱交換させ、供給路40を流れるガスを昇温させる構成である。
【0045】
本実施形態においては、ガス処理装置10に用いる処理液(吸収剤)として、酸性化合物を可逆的に吸収脱離することが可能な吸収剤が用いられている。処理液は、例えば、水、アミン化合物及び有機溶剤を含むアルカリ性の吸収剤である。アミン化合物は30wt%、有機溶剤は60wt%、水は10wt%としてもよい。処理液は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物の吸収により相分離するのが好ましいが、これに限られるものではない。例えば、有機溶剤を用いないで、アミン化合物の水溶液とした処理液であってもよい。また、処理液は、アミン化合物、有機溶媒、イオン液体やそれらの混合物、水溶液などであってもよい。
【0046】
アミン化合物としては、例えば、2-アミノエタノール(MEA:溶解度パラメータ=14.3(cal/cm3)1/2)、2-(2-アミノエトキシ)エタノール(AEE:溶解度パラメータ=12.7(cal/cm3)1/2)等の1級アミン、例えば2-(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2-(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2-(ブチルアミノ)エタノール(BAE)等の2級アミン、例えばトリエタノールアミン(TEA)、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル等の3級アミンなどが挙げられる。
【0047】
有機溶剤としては、例えば1-ブタノール(溶解度パラメータ=11.3(cal/cm3)1/2)、1-ペンタノール(溶解度パラメータ=11.0(cal/cm3)1/2)、オクタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDEE)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)等が挙げられ、複数種を混合して用いてもよい。
【0048】
アミン化合物及び有機溶剤のそれぞれの溶解度パラメータが所定範囲に収まっている場合、処理液は、酸性化合物の吸収により酸性化合物の含有率が高い相と酸性化合物の含有率が低い相とに二相分離される。ここで、溶解度パラメータは、以下の式(3)で示される。
【0049】
【0050】
ΔHはモル蒸発潜熱、Rはガス定数、Tは絶対温度、Vはモル体積である。
【0051】
【0052】
表1に示すように、水、アミン化合物及び有機溶剤を含む吸収剤において、アミン化合物の溶解度パラメータから有機溶剤の溶解度パラメータを減じた値が1.1(cal/cm3)1/2以上4.2(cal/cm3)1/2以下となるように、アミン化合物及び有機溶剤の組合せを選択することによって、酸性化合物の吸収により酸性化合物の含有率が高い相と酸性化合物の含有率が低い相とに二相分離される。溶解度パラメータの差分の値が前記下限値に満たない場合、処理液が酸性化合物を吸収しても二相に分離しないおそれがある。一方、溶解度パラメータの差分の値が前記上限値を超える場合、処理液が酸性化合物を吸収する前から二相に分離し、処理液を酸性化合物を含む被処理ガスに接触させる工程において、処理液と被処理ガスとの接触状態が不均一となり、吸収効率が低下するおそれがある。なお、表1における「良好」とは、二酸化炭素の吸収前は単一液相であり、二酸化炭素の吸収により二液相に分離したことを意味する。また、表1における「混和せず」とは、二酸化炭素の吸収前から二液相状態であり、単一液相を形成しなかったことを意味する。また、表1における「分離せず」とは、二酸化炭素の吸収後でも単一液相であったことを意味する。
【0053】
吸収器21における吸収条件を、処理液が二相に分離しながら二酸化炭素が多く溶解する領域に設定し、再生器22における再生条件を、処理液が二相分離せず二酸化炭素があまり溶解しない領域に設定することが望ましい。すなわち、温度によって二酸化炭素の吸収度合いが変化して相分離し易さが変わることによって二酸化炭素吸収濃度の平衡がずれることを利用しているため、再生温度と吸収温度との温度差を低く抑えることが可能となる。加えて、再生器22に、分離促進ガスを供給するため、再生温度をより低く抑えることができる。
【0054】
ここで、第1実施形態に係るガス処理装置10を使用したガス処理方法について説明する。ガス処理方法は、吸収工程と、再生工程と、反応工程と、を含む。
【0055】
吸収工程は、吸収器21において被処理ガスと処理液とを接触させる工程である。吸収器21には、導入路31を通して少なくとも二酸化炭素を含む被処理ガスが供給される。また、吸収器21には、循環路24の第2流路24bを通して処理液が導入される。被処理ガスは、例えば、40℃、30kPaGの温度及び圧力を有してもよい。処理液は、被処理ガスに含まれる二酸化炭素と接触して該二酸化炭素を吸収する。二酸化炭素を放出した被処理ガスは、例えば、50℃、10kPaGとなる。吸収器21内には、二酸化炭素を吸収した処理液が貯留される。相分離する処理液が用いられている場合には、二酸化炭素と接触した処理液は、二酸化炭素の含有率が高い第1相部分と二酸化炭素分離の含有率が低い第2相部分とに相分離する。
【0056】
吸収器21内に貯留された処理液は、再生器22に送られる。このとき、第1流路24aを流れる処理液は、熱交換器26において、第2流路24bを流れる処理液によって加熱され、その上で再生器22内に導入される。
【0057】
再生工程は、再生器22内に導入された処理液を加熱することにより、処理液から二酸化炭素を分離する工程である。再生器22内の処理液は60~90℃程度に加熱されている。導入路52を通して再生器22内に流入した分離促進ガスは、処理液に接触する。再生器22内において、分離促進ガスを介在させた状態で処理液が加熱されるため、二酸化炭素の再生温度を低く抑えることができる。
【0058】
再生器22内において、処理液が加熱されると処理液から蒸発した水蒸気が得られることがある。処理液から分離された二酸化炭素及び水蒸気は、供給路40を流れる。再生器22から供給路40に流出するガスは、例えば50℃の温度、850kPaG以下の圧力を有する。供給路40において、水蒸気はコンデンサ44で凝縮し、再生器22に戻される。
【0059】
再生器22内に貯留された処理液は、第2流路24bを流れて吸収器21に還流する。処理液は、例えば、65℃の温度、850kPaG以下の圧力を有する。なお、処理液は、熱交換器26において、第1流路24aを流れる処理液を加熱するので、温度が下がる。
【0060】
供給路40を流れる二酸化炭素を含むガスは、予熱器50において、導入路52を流れる分離促進ガスによって加熱される。すなわち、供給路40を流れるガスは、予熱器50において、反応器14において加熱された分離促進ガスと熱交換し、加熱される。予熱器50で加熱されたガスは、例えば、250~500℃の温度、850kPaG以下の圧力を有する。この加熱(予熱)された二酸化炭素を含むガスは、反応器14に流入する。
【0061】
反応器14において反応工程が行われる。反応工程では、供給路40を通して導入された二酸化炭素及び水素と、導入路52の分岐路52dを通して導入された水素とを用いて、メタンの合成反応が起こる。すなわち、導入路52を流れる水素の一部が反応工程で利用される。反応器14には、二酸化炭素を含むガスが予熱器50で予熱された上で導入されるため、メタネーション反応を促進できる。このメタネーション反応によって、反応器14内は昇温するため、導入路52の伝熱路52bを流れる分離促進ガスは、この反応器14での熱を熱源として加熱される。導入路52の分岐路52dを通して反応器14に導入される分離促進ガス(水素ガス)は、例えば、25℃の温度、850kPaG以下の圧力を有し、導入路52を流れて反応器14を通過した分離促進ガスは、約400℃の温度、850kPaG以下の圧力を有する。一方、反応器14で生成されたメタンガスは、250~500℃の温度、850kPaG以下の圧力を有する。このメタンガスは、反応器14の上部に接続された導出路55を通して、反応器14から導出される。
【0062】
導入路52の伝熱路52bを流れる分離促進ガス(水素ガス)は、反応器14で生ずる反応熱を受け取って加熱され、この加熱された分離促進ガスは導入路52の下流路52cを流れ、予熱器50で二酸化炭素及び水素を含むガスを加熱した上で再生器22に導入される。再生器22に導入される分離促進ガスは、例えば、60℃の温度、850kPaG以下の圧力を有する。つまり、再生器22に導入される分離促進ガスの温度は、処理液の再生温度と同程度となっている。したがって、再生器22において、リボイラ46から供給される熱が分離促進ガスの加熱に用いられることを抑制できる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態では、導入路52を通して再生器22に分離促進ガスが導入されるため、処理液から酸性化合物を分離し易くすることができる。このため、再生器22での再生温度として、より低い温度を設定することができ、かつより低いエネルギーで酸性化合物を分離することが可能となる。しかも、分離促進ガスを再生器22に導入する前に、反応器14で発生する熱を熱源として分離促進ガスを予熱するため、再生器22で処理液の再生のために用いられるべき熱が分離促進ガスを加熱するのに消費されてしまうことを抑制できる。したがって、処理液からの酸性化合物の分離効率が低下することを抑制できる。また、反応器14で発生する熱を有効利用するため、分離促進ガスを予熱するための熱源を別途用意する必要もない。
【0064】
また、再生器22で生じた二酸化炭素を含むガスが、反応器14に導入される前に予熱器50において加熱されるため、再生器22における再生工程での処理液の再生温度が低い場合においても、ガスを反応器14での反応に効率的に利用できる。しかも、反応器14で生じた熱を分離促進ガスを介して再生器22で利用するため、熱収支をより高めることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、リボイラ46が、再生器22の外側に配置されて、例えば電気、蒸気、バーナー等任意の熱源により直接又は間接的に処理液を加熱するように構成されているが、この構成に限られない。例えば、
図2に示すようにリボイラ46は、導入路52の下流路52cに接続されるとともに、再生器22の中(又は再生器22に接触するよう)に配置されていてもよい。この場合、反応器14で加熱された分離促進ガスがリボイラ46に流れるため、反応器14で生じた熱をリボイラ46の熱源として利用することができる。
【0066】
本実施形態では、反応器14が、メタンを合成する反応器として構成されているが、これに代え、
図3に示すように、反応器14は、メタノールやエタノールを合成する反応器として構成されてもよい。この場合、反応器14は、触媒の存在下で二酸化炭素の水素化反応を進行させてメタノールやエタノールを合成するように構成されてもよく、あるいは、触媒の存在下で、一酸化炭素に水素を反応させてメタノールやエタノールを合成するように構成されてもよい。一酸化炭素を用いる場合には、反応式(1)のように逆シフト反応によって一酸化炭素を生成するようにしてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、予熱器50が設けられているが、予熱器50を省略してもよい。
【0068】
(第2実施形態)
第1実施形態では、分離促進ガスを再生器22に導入するための導入路52が反応器14を通過し、分離促進ガスを予熱する伝熱路52bが反応器14内に設けられている。これに対し、第2実施形態では、
図4に示すように、導入路52が反応器14を通過しておらず、伝熱路52bは、反応器14の外部に設けられている。具体的に、伝熱路52bは、反応器14においてメタネーション反応によって生じた高温のガス(メタンガス)を反応器14から導出させる導出路55に設けられ、導出路55を介して反応器14の熱を受け取る。すなわち、伝熱路52bは、反応器14からの高温のガスと導入路52を流れる分離促進ガスとを熱交換させる予熱器51に設けられている。
【0069】
反応器14においてメタンを生成する反応は発熱反応である。反応器14において安定した運転を行うためには、反応器14の温度を一定の温度に調整しながら反応を起こさせることが必要である。このため、分離促進ガスを反応器14に導入する構成では、分離促進ガスによって反応器14の温度を調整することが難しい場合もあるため、本実施形態では、分離促進ガスを予熱するための伝熱路52bを、反応器14とは別のところに配置している。なお、反応器14の温度調整を、水や油などで行ってもよいが、反応器14から流出する反応後のガスの温度は約400℃となるため、反応器14で生ずる熱を有効利用できるようにするのが好ましい。
【0070】
第2実施形態では、
図4に示すように、反応器14から反応後のガス(メタンガス)を導出させる導出路55が反応器14の上部に接続されている。この導出路55には、予熱器50、リボイラ46及び伝熱路52b(予熱器51)が設けられている。反応器14は、メタネーション反応を促進させるため、例えば約400℃の温度に調整されている。このため、反応器14で生成されて導出路55を通して反応器14から導出されるメタンガスは、例えば、約400℃の温度、850kPaG以下の圧力を有する。この反応器14で生成されたメタンガスは、まず予熱器50において、供給路40を流れるガス(再生器22内で得られた酸性化合物を含むガス)を加熱し、その後、リボイラ46において、処理液を加熱し、さらに、伝熱路52bにおいて、分離促進ガスを加熱する。したがって、導出路55を流れるメタンガスは、予熱器50、リボイラ46及び伝熱路52b(予熱器51)を通過するたびに温度が下がり、伝熱路52b(予熱器51)から流出するときには、100℃未満となっている。伝熱路52bでは、約25℃の水素ガス等の分離促進ガスが加熱されて、約90℃未満の温度まで昇温する。この昇温した分離促進ガスが再生器22に導入される。すなわち、反応器14での発熱反応の熱を熱源として、供給路40を流れる水素ガス及び二酸化炭素ガスの予熱、再生器22で必要となる吸熱反応のためのリボイラ46での加熱、また、導入路52での水素ガスの予熱を行っている。したがって、熱の有効利用を図ることが出来る。なお、水素ガスの供給源は、例えば、再生可能エネルギーを用いて水素を製造できるように構成された水電解装置によって構成されていてもよい。
【0071】
図4に示す構成では、導出路55が加熱流路42のリボイラ46も通過する構成としている。これに対し、
図5に示す構成では、加熱流路42のリボイラ46が、反応器14からのガスの熱ではなく任意の熱源によって処理液を加熱するように構成されており、その一方で、導出路55が、再生器22内に設けられた熱交換器57にも接続されている。この熱交換器57は、再生器22内の処理液を加熱するリボイラ(第2のリボイラ)として機能する。熱交換器57は、導出路55において、伝熱路52b(予熱器51)よりも上流側に配置されている。すなわち、予熱器50を通過したメタンガスは、第2のリボイラである熱交換器57において、処理液を加熱し、その後、伝熱路52b(予熱器51)において分離促進ガスを加熱する。
【0072】
図5の構成では、リボイラ46が設けられているが、リボイラとして機能する熱交換器57が再生器22内に配置されているため、
図6に示すように、加熱流路42及びリボイラ46を省略することも可能である。なお、リボイラとして機能する熱交換器57が再生器22内に配置される場合には、第1流路24aは、再生器22において熱交換器57よりも上側の部位に接続されているのが好ましい。また、第2流路24bは、再生器22において、熱交換器57よりも下側の部位に接続されているのが好ましい。
【0073】
図7に示すように、予熱器50は、反応器14内に配置されていてもよい。すなわち、供給路40が反応器14の内側を通過しており(又は反応器14に接触するように配置されており)、この反応器14の内側を通過する部分(又は反応器14に接触する部分)に予熱器50が設けられていてもよい。反応器14内での反応後のガスによって加熱された予熱器50内の水素及び二酸化炭素を含むガスは、供給路40を通して予熱器50から流出した後、反応器14内に導入されて、メタネーション反応に供される。メタネーション反応によって生成された高温のメタンガスは、導出路55を通して伝熱路52bに送られて、促進分離ガスを加熱する。
【0074】
図7の構成では、リボイラ46が再生器22及び反応器14とは別個に配置されているが、これに代え、
図8に示す構成では、リボイラ46が反応器14の中に配置されている(又は反応器14に接触するように配置されている)。すなわち、リボイラ46は、反応器14内での発熱反応で生じた熱を熱源として利用してもよい。この場合、予熱器50は
図8の位置ではなく、
図6の位置であってもよい。
【0075】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 :ガス処理装置
14 :反応器
21 :吸収器
22 :再生器
50 :予熱器
52 :導入路
52b :伝熱路