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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115207
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240819BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240819BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240819BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240819BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240819BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 D
H01M4/133
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020776
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 直利
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA09
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】負極活物質としてSi系材料を含む負極を備える二次電池であって、優れたサイクル特性を有する二次電池を提供すること。
【解決手段】ここに開示される二次電池は、正極および負極60を有する電極体を備えた二次電池であって、負極60は、負極集電体62と、該負極集電体上に配置された負極活物質層64と、を備えている。負極活物質層64は、負極活物質として、黒鉛粒子66と、Si含有粒子68と、を含み、Si含有粒子68は、第1Si含有粒子68aと、第2Si含有粒子68bと、を含んでいる。第1Si含有粒子68aの圧縮弾性率は、第2Si含有粒子68bの圧縮弾性率よりも小さく、第1Si含有粒子68aの圧縮弾性率は250MPa以上2000MPa以下である。かかる二次電池では、第1Si含有粒子68aと第2Si含有粒子68bとの重量比が、50:50~90:10である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有する電極体を備えた二次電池であって、
前記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配置された負極活物質層と、を備えており、
前記負極活物質層は、負極活物質として、黒鉛粒子と、Si含有粒子と、を含み、
前記Si含有粒子は、第1Si含有粒子と、第2Si含有粒子と、を含んでおり、
前記第1Si含有粒子の圧縮弾性率は、前記第2Si含有粒子の圧縮弾性率よりも小さく、
前記第1Si含有粒子の圧縮弾性率は、250MPa以上2000MPa以下であり、
前記第1Si含有粒子と前記第2Si含有粒子との重量比が、50:50~90:10である、二次電池。
【請求項2】
前記第2Si含有粒子の圧縮弾性率は、2000MPaを超えて5000MPa以下である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記黒鉛粒子の圧縮弾性率は、10MPa以上250MPa以下である、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記黒鉛粒子と前記Si含有粒子との重量比が、90:10~40:60である、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1Si含有粒子の空隙率が5vol%以上である、請求項1または2に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。このような二次電池に用いられる負極は、一般的に、負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層が配置された構成を有する。
【0003】
近年では、二次電池の高容量化を目的として、負極活物質としてSi系材料を使用することが検討されている(例えば特許文献1および2)。特許文献1には、Si系材料からなる第1活物質粉末と、板状黒鉛粒子からなる第2活物質粉末とを含む負極活物質が開示されている。特許文献2には、負極は、複数の種類の黒鉛粒子を含む炭素粒子と、Si系材料とを含み、上記複数の種類の黒鉛粒子の粒度分布が調整される二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6385749号公報
【特許文献2】特許6596815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Si系材料は、黒鉛粒子等の炭素材料と比較して比容量が大きい一方で、充放電時の膨張収縮が大きく、導電パスが切れやすい傾向にある。このため、Si系材料を用いた場合には、高容量化できる一方で、二次電池のサイクル特性が低下しやすい。特に、高容量化のためにSi系材料の含有率を高くした場合には、二次電池のサイクル特性の低下が顕著である。したがって、Si系材料を負極活物質として用いた場合の二次電池のサイクル特性の向上については未だ改善の余地がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、負極活物質としてSi系材料を含む負極を備える二次電池であって、優れたサイクル特性を有する二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される二次電池は、正極および負極を有する電極体を備えた二次電池であって、上記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配置された負極活物質層と、を備えている。上記負極活物質層は、負極活物質として、黒鉛粒子と、Si含有粒子と、を含んでいる。上記Si含有粒子は、第1Si含有粒子と、第2Si含有粒子と、を含んでおり、上記第1Si含有粒子の圧縮弾性率は、上記第2Si含有粒子の圧縮弾性率よりも小さく、上記第1Si含有粒子の圧縮弾性率は250MPa以上2000MPa以下である。上記二次電池では、上記第1Si含有粒子と上記第2Si含有粒子との重量比が、50:50~90:10である。
【0008】
圧縮弾性率が小さい第1Si含有粒子は、充放電時の膨張収縮に追従して変形しやすく、かかる膨張収縮のストレスを緩和することができる。一方で、圧縮弾性率が大きい第2Si含有粒子は、充放電時において変形し難く、クサビのように一定の導電パスを維持することができる。圧縮弾性率が異なるSi含有粒子が所定の割合で含まれていることにより、充放電を繰り返した際にも導電パスが切れ難くなり、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る二次電池の内部構造を模式的に示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る電極体の構成を模式的に示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る負極を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここに開示される技術を特徴付けない二次電池の一般的な構成および製造プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と、当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、各図面は模式的に描かれており、寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において範囲を示す「A~B」(A,Bは任意の数値)の表記は、A以上B以下を意味する。
【0011】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスをいい、いわゆる蓄電池、および電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0012】
図1は、一実施形態に係る二次電池100の内部構造を模式的に示す図である。図1に示すように、二次電池100は、正極50および負極60を有する電極体20と、非水電解質(図示せず)と、電極体20および非水電解質を収容する電池ケース30と、を備えている。図1に示される二次電池100は、ここでは、リチウムイオン二次電池である。ここに開示される負極60は、好ましくはリチウムイオン二次電池用の負極として用いられる。
【0013】
電池ケース30は、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36と、が設けられている。また、電池ケース30には、非水電解液を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0014】
図2は、電極体20の構成を模式的に示す図である。ここでは、電極体20は、扁平形状の捲回電極体である。図2に示すように、電極体20は、長尺シート状の正極50(以下、「正極シート50」ともいう。)と、長尺シート状の負極60(以下、「負極シート60」ともいう。)とが、2枚の長尺状のセパレータ70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成された構成を有する。図1および図2に示すように、正極集電体露出部52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および、負極集電体露出部62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極集電体露出部52aおよび負極集電体露出部62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0015】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、特に限定されない。例えば、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。正極集電体52としては、アルミニウム箔が好ましい。正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0016】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の組成の正極活物質を用いてよい。具体的に例えば、正極活物質として、リチウム複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物(例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO))等を用いることができる。正極活物質の結晶構造は、特に限定されず、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等であってよい。
【0017】
リチウム複合酸化物としては、遷移金属元素として、Ni、Co、Mnのうちの少なくとも1種を含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、その具体例としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。これらの正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、正極活物質としては、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物を好ましく用いることができる。
【0018】
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上記したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等についても同様である。
【0019】
正極活物質層54は、正極活物質以外の成分、例えば、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック;気相法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)等の炭素繊維;その他(例、グラファイトなど)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0020】
特に限定されないが、導電材の割合は、正極活物質を100重量部としたときに、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、1重量部以上5重量部以下であることがより好ましい。また、バインダの割合は、正極活物質を100重量部としたときに、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、1重量部以上5重量部以下であることがより好ましい。
【0021】
正極活物質層54の片面当たりの厚みは、特に限定されないが、例えば20μm以上であり、好ましくは50μm以上である。一方、当該厚みは、例えば300μm以下であり、好ましくは200μm以下である。
【0022】
セパレータ70としては、従来と同様の各種微多孔質シートを用いることができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、セパレータ70は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
【0023】
非水電解質は従来と同様のものを使用可能であり、例えば、有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させた非水電解液を用いることができる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を好適に採用し得る。あるいは、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)のようなフッ素化カーボネート等のフッ素系溶媒を好ましく用いることができる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.7mol/L以上1.3mol/L以下程度が好ましい。
なお、上記非水電解質は、本技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分を含んでいてもよく、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
【0024】
以下、ここに開示される二次電池の負極60について説明する。図3は、ここに開示される二次電池100の負極60を模式的に示す図である。図3に示すように、負極60は、負極集電体62と、該負極集電体62上に配置される負極活物質層64と、を備えている。負極集電体62は、従来公知のものを用いてよく、特に限定されない。例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属製のシートまたは箔状体が挙げられる。負極集電体62として銅箔を用いる場合には、その平均厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上30μm以下であり、好ましくは5μm以上20μm以下、より好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0025】
負極活物質層64は、少なくとも負極活物質を含んでいる。負極活物質層64は、負極活物質として、黒鉛粒子66と、Si含有粒子68と、を含んでいる。かかるSi含有粒子68は、圧縮弾性率が異なる第1Si含有粒子68aと、第2Si含有粒子68bと、を含んでおり、第1Si含有粒子68aの圧縮弾性率は第2Si含有粒子68bの圧縮弾性率よりも小さい。そして、第1Si含有粒子68aと第2Si含有粒子68bとの重量比が50:50~90:10に調整されている。圧縮弾性率(ヤング率ともいう。)は、この値が大きいほど変形し難い物質であると言える。換言すれば、ここに開示される負極60は、変形しやすい第1Si含有粒子68aと、相対的に変形し難い第2Si含有粒子68bと、を所定の割合で含むことにより、二次電池100のサイクル特性を向上させることができる。
【0026】
ここに開示される技術を限定する意図はないが、かかる効果が得られる理由は、以下のように推測される。Si含有粒子は、黒鉛粒子と比べて比容量が大きい一方で、充放電による膨張収縮率が高い。このため、充放電を繰り返すことにより、導電パスが切れやすく、サイクル特性が低下しがちである。ここで、圧縮弾性率が小さい第1Si含有粒子68aは、充放電時の膨張収縮に追従して変形しやすく、かかる膨張収縮のストレスを緩和することができる。一方で、圧縮弾性率が大きい第2Si含有粒子68bは、充放電時において変形し難く、クサビのように一定の導電パスを維持することができる。圧縮弾性率が小さい第1Si含有粒子68aと、圧縮弾性率が大きい第2Si含有粒子68bとが所定の割合で含まれていることにより、第2Si含有粒子68bによって維持されている導電パスの隙間を埋めるように第1Si含有粒子68aが配置されると推測される。これによって、充放電を繰り返したとしても導電パスが切れ難くなり、二次電池100のサイクル特性を好適に向上することができる。
【0027】
黒鉛粒子66としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛等が用いられる。黒鉛粒子66は、その表面に非晶質炭素の被覆層を有していてもよい。特に限定されないが、黒鉛粒子66は略球形状であるとよい。なお、本明細書において、「略球形状」とは、球状、ラグビーボール状等を包含する用語であり、例えば、平均アスペクト比(粒子の外接する最小の長方形において、短軸方向の長さに対する超軸方向の長さの比。)が、例えば1~2(好ましくは、1~1.5)であるものをいう。
【0028】
黒鉛粒子66の平均粒子径(D50粒子径)は、特に限定されないが、例えば5μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上25μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、レーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒子径(D50粒子径)のことをいう。
【0029】
特に限定されないが、黒鉛粒子66の圧縮弾性率は、10MPa以上250MPa以下であることが好ましく、50MPa以上180MPa以下であることがより好ましい。かかる範囲の圧縮弾性率を有する黒鉛粒子66であれば、膨張収縮に追従して好適に変形することができる。なお、本明細書において、「圧縮弾性率」は、25℃の環境下において、微小圧縮試験機を用いて測定することができる。まず、微小圧縮試験機に粒子を1つセットし、当該粒子1つを垂直方向(重力方向)に圧縮し、このときの圧縮変位量と、圧縮応力とを測定する。次いで、測定した圧縮変位量を粒子の平均粒子径で割って(圧縮変位量/平均粒子径)、圧縮ひずみを算出する。圧縮応力を圧縮ひずみで割って(圧縮応力/圧縮ひずみ)、圧縮弾性率を算出する。平均粒子径が略同等である複数個の粒子(例えば5~10個の粒子)において、同様にして圧縮弾性率を算出し、かかる値の平均値をここでの圧縮弾性率とする。
【0030】
Si含有粒子68は、Siを含む粒子であれば特に限定されない。Si含有粒子68は、Siを含む限り、Si以外の成分を含んでいてもよい。Si含有粒子68としては、例えば、SiOx、Si-C複合体、多孔質粒子内にナノSi粒子が分散されたもの等が挙げられる。なかでも、Si含有粒子68としては、Si-C複合体が好ましく採用される。Si-C複合体は、少なくともSiとCとを含む粒子である。Si-C複合体は、例えば、炭素材料(黒鉛、非晶質炭素等)に、Siメタル、Si酸化物等が担持されることにより、形成され得る。
【0031】
特に限定されないが、上記した黒鉛粒子66とSi含有粒子68との重量比は、90:10~40:60となるように調整されていることが好ましく、90:10~60:40となるように調整されていてもよい。黒鉛粒子66とSi含有粒子68との重量比が上記した範囲に調整されていることで、高容量化とサイクル特性の向上とが好適に両立され得る。
【0032】
Si含有粒子68は、上記したとおり、圧縮弾性率が異なる第1Si含有粒子68aと第2Si含有粒子68bとを含んでいる。第1Si含有粒子68aの圧縮弾性率は、第2Si含有粒子68bの圧縮弾性率よりも小さく設定されている限りにおいて、特に限定されない。第1Si含有粒子68aの圧縮弾性率は、例えば2000MPa以下であることが好ましく、1500MPa以下であることがより好ましく、1200MPa以下であることがさらに好ましく、1000MPa以下であってもよい。かかる圧縮弾性率を有する第1Si含有粒子68aであれば、充放電に伴う膨張収縮に好適に追従することができる。これにより、充放電による膨張収縮のストレスを緩和することができ、負極活物質層内における導電パス切れを抑制することができる。第1Si含有粒子68aの圧縮弾性率の下限は、特に限定されないが、例えば250MPa以上であることが好ましい。第1Si含有粒子68aの圧縮弾性率は、例えば250MPa以上2000MPa以下であることが好ましく、250MPa以上1500MPa以下であることがより好ましい。
【0033】
第1Si含有粒子68aとしては、Si-C複合体が好ましく採用される。第1Si含有粒子68aは、例えば、表面に非晶質炭素コートを有する炭素粒子中に、該炭素粒子よりも微小なSi粒子が分散されているSi-C複合体であることが好ましい。かかるSi-C複合体の粒子内部には、CドメインとSiドメインとが存在しており、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるSiドメインの直径の平均は50nm以下であることが好ましい。また、特に限定されないが、Siドメインの直径の平均は、例えば、5nm以上であり得る。なお、Siドメインの直径の平均値は、少なくとも10個のSiドメインの直径の算術平均のことをいう。
【0034】
特に限定されないが、第1Si含有粒子68aが上記したようなSi-C複合体である場合、Si-C複合体の酸素含有量は、Si-C複合体全体を100wt%としたときに、例えば7wt%以下であるとよい。なお、酸素含有量は、酸素分析装置により測定することができる。
【0035】
第1Si含有粒子68aは、その内部に空隙を有し得る。第1Si含有粒子68aの空隙率は、例えば5vol%以上であることが好ましい。かかる空隙率の上限は特に限定されないが、例えば60vоl%以下であるとよい。なお、「空隙率」は、式:空隙率(%)=1-第1Si含有粒子の嵩密度/第1Si含有粒子の真密度)×100;に基づいて算出することができる。
【0036】
第1Si含有粒子68aは、圧縮弾性率が上記した範囲に設定されるように調整されていればよく、外形等については特に限定されない。例えば、第1Si含有粒子68aは、略球形状であるとよい。第1Si含有粒子68aの平均粒子径(D50粒子径)は、特に限定されないが、例えば1μm以上15μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0037】
第2Si含有粒子68bの圧縮弾性率は、第1Si含有粒子68aの圧縮弾性率よりも大きく設定されている限りにおいて、特に限定されない。第2Si含有粒子68bとしては、少なくともSiとCとを含有するSi-C複合体が好ましく採用される。第2Si含有粒子68bの圧縮弾性率は、例えば2000MPa超えることが好ましく、2500MPa以上であることがより好ましく、3500MPa以上であることがさらに好ましい。かかる圧縮弾性率を有する第2Si含有粒子68bであれば、充放電に伴う膨張収縮の際に変形し難く、一定の導電パスを維持することができる。第2Si含有粒子68bが一定の導電パスを維持しつつ、かかる第2Si含有粒子68bの間に変形しやすい第1Si含有粒子68aが好適に配置されることにより、導電パスが切れ難くなり、サイクル特性が向上する。第2Si含有粒子68bの圧縮弾性率の上限は、特に限定されないが、例えば5000MPa以下であることが好ましい。第2Si含有粒子68bの圧縮弾性率は、例えば2000MPaを超えて5000MPa以下であることが好ましく、2500MPa以上5000MPa以下であることがより好ましい。
【0038】
第2Si含有粒子68bは、圧縮弾性率が上記した範囲に設定されるように調整されていればよく、外形等については特に限定されない。例えば、第2Si含有粒子68bは、略球形状であるとよい。第2Si含有粒子68bの平均粒子径(D50粒子径)は、特に限定されないが、例えば1μm以上15μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0039】
上記した第1Si含有粒子68aと第2Si含有粒子68bとの圧縮弾性率は、例えば、空隙率や、表面コート、炭素粒子の種類等によって適宜調整することができる。あるいは、圧縮弾性率が上記した範囲を満たす市販品のSi含有粒子を購入することにより、第1Si含有粒子68aと第2Si含有粒子68bとを用意してもよい。
【0040】
ここに開示される負極60は、第1Si含有粒子68aと第2Si含有粒子68bとの重量比が、50:50~90:10となるように含んでいる。より好ましくは、第1Si含有粒子68aの含有率は、第2Si含有粒子68bの含有率よりも多いとよい。これにより、第1Si含有粒子68aによる膨張収縮のストレス緩和効果がさらに好適に発揮され得る。かかる観点からは、第1Si含有粒子68aと第2Si含有粒子68bとの重量比が、60:40~90:10であることがより好ましく、65:35~90:10であることがさらに好ましい。
【0041】
特に限定されないが、負極活物質層64において、第2Si含有粒子68bは、第1Si含有粒子68aおよび/または黒鉛粒子66と隣接するように配置されることが好ましい。これにより、膨張収縮のストレスがより好適に緩和され、導電パスが切れ難くなる。
【0042】
負極活物質層64は、本技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、Si含有粒子として、上記した第1Si含有粒子68aおよび第2Si含有粒子68b以外のSi含有粒子(第3Si含有粒子)を含んでいてもよい。第3Si含有粒子としては、例えば、SiOx、多孔質粒子内にナノSi粒子が分散されたもの等が挙げられる。
【0043】
負極活物質層64は、上記した負極活物質(黒鉛粒子66およびSi含有粒子68)以外の成分、例えば、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、従来公知のものを使用することができる。導電材としては、例えば、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)等のカーボンナノチューブ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、炭素繊維等を使用することができる。このなかでも、カーボンナノチューブが好ましく、単層カーボンナノチューブがより好ましい。カーボンナノチューブを導電材として用いることにより、導電パスがさらに好適に維持され、二次電池100のサイクル特性をより好適に向上させ得る。
【0044】
導電材の割合は、負極活物質を100重量部としたとき、例えば0.01重量部以上であって、0.05重量部以上であり得る。また、導電材の割合は、負極活物質を100重量部としたとき、2重量部以下であって、1重量部以下、0.5重量部以下、または0.2重量部以下であり得る。
【0045】
バインダとしては、従来公知のものを使用することができる。バインダとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。なかでも、CMC、PAA、SBRを好ましく用いることができる。また、特に限定されないが、CMC、PAAおよびSBRを併用することがより好ましい。
【0046】
バインダ全体の割合は、負極活物質を100重量部としたとき、例えば1重量部以上であって、3重量部以上であることが好ましく、3.5重量部以上であることがより好ましい。また、バインダ全体の割合は、負極活物質を100重量部としたとき、10重量部以下であって、8重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。
【0047】
負極活物質層64の片面当たりの厚みは、特に限定されないが、例えば20μm以上であり、好ましくは50μm以上である。一方、当該厚みは、例えば300μm以下であり、好ましくは200μm以下である。
【0048】
特に限定されないが、負極活物質層64全体に占める負極活物質の割合は、例えば、80質量%以上であって、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。また、特に限定されるものではないが、負極活物質層64全体に占める負極活物質の割合は、例えば98質量%以下であってよい。
【0049】
負極活物質層64は、負極活物質としての黒鉛粒子66およびSi含有粒子68と、必要に応じて用いられる材料(例えば、導電材やバインダ)を、適当な溶媒(例えば水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物を負極集電体62の表面に塗布して、乾燥することにより形成することができる。その後、必要に応じてプレスすることにより、負極活物質層64の厚みや密度を調整することができる。
【0050】
以上、一実施形態に係る負極60の構成及び二次電池100の構成について説明した。負極60は、非水電解液二次電池に好適に採用される。かかる負極60は、充放電の繰り返しによる膨張収縮によって導電パスが切れることが好適に抑制される。したがって、サイクル特性が向上した二次電池100が実現される。かかる二次電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。二次電池100は、組電池の構築においても好適に用いることができる。
【0051】
また、上述の二次電池100では、電極体20として捲回電極体を例示したが、これに限られず、例えば、複数の略矩形状の正極と、複数の略矩形状の負極とがセパレータを介して交互に積層された電極体である積層電極体であってもよい。
【0052】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0053】
<実施例1>
まず、負極活物質として、黒鉛粒子(圧縮弾性率:180MPa、D50粒子径:13μm)と、第1Si含有粒子(Si/C複合粒子、圧縮弾性率:1000MPa、D50粒子径:8μm)と、第2Si含有粒子(Si/C複合粒子、圧縮弾性率:3500MPa、D50粒子径:7μm)と、を用意した。また、導電材として、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を用意した。そして、バインダとして、カルボキシメチルセルロース(CMC)と、ポリアクリル酸(PAA)と、スチレンブタジエンラバー(SBR)と、を用意した。これらを、黒鉛粒子:第1Si含有粒子:第2Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=60:32:8:0.1:1:1:1.5の重量比となるように、溶媒としての水と混錬し、負極活物質層形成用スラリーを調製した。
【0054】
具体的に、負極活物質層形成用スラリーの混合および混錬は、以下のようにして実施した。まず、黒鉛粒子と、第1Si含有粒子と、第2Si含有粒子と、CMCと、PAAと、を乾式混合した。次いで、乾式混合した混合粉体と、ペースト状のSWCNT(固形分率2%)と、分散媒と、を固練り混錬した。固練り混錬時の固形分率は61%であった。固練り混錬した混合物に対して、さらにSBRと、溶媒(水)とを加えて混合した。このようにして、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、銅箔(厚み10μm)の両面に帯状に塗布した。そして、銅箔上のスラリーを乾燥し、所定の厚みまでプレスした後、所定の寸法に加工することで負極シートを作製した。
【0055】
次いで、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのPVDFとを用意した。これらを、NCM:AB:PVDF=100:1:1の重量比となるように、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、アルミニウム箔(厚み15μm)の両面に帯状に塗布した。そして、アルミニウム箔上のスラリーを乾燥し、所定の厚みまでプレスした後、所定の寸法に加工することで正極シートを作製した。
【0056】
上記用意した負極シートと、正極シートとをセパレータを介して積層し、積層電極体を作製した。正極シートと負極シートとにそれぞれ集電用のリードを取り付け、積層電極体をアルミニウムラミネートシートで構成される外装体に挿入した。外装体の内部に非水電解液を注入し、外装体の開口部を封止して実施例1の評価用電池を作製した。なお、セパレータとしては、PP/PE/PPの三層構造を有する多孔性ポリオレフィンシートを使用した。また、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、EC:FEC:EMC:DMC=15:5:40:40の体積比となるように混合した混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0057】
<実施例2>
第1Si含有粒子として圧縮弾性率が1200MPa、第2Si含有粒子として圧縮弾性率が3000MPaであるものを用意したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の評価用電池を作製した。
【0058】
<実施例3>
黒鉛粒子:第1Si含有粒子:第2Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=60:26:14:0.1:1:1:1.5の重量比となるように、各材料のは配合比を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の評価用電池を作製した。
【0059】
<比較例1>
黒鉛粒子:第1Si含有粒子:第2Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=60:14:26:0.1:1:1:1.5の重量比となるように、各材料のは配合比を変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の評価用電池を作製した。
【0060】
<比較例2>
黒鉛粒子:第1Si含有粒子:第2Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=60:40:0:0.1:1:1:1.5の重量比となるように、各材料のは配合比を変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の評価用電池を作製した。すなわち、比較例2では第2Si含有粒子を含んでいない。
【0061】
<比較例3>
黒鉛粒子:第1Si含有粒子:第2Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=60:0:40:0.1:1:1:1.5の重量比となるように、各材料のは配合比を変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の評価用電池を作製した。すなわち、比較例3では第1Si含有粒子を含んでいない。
【0062】
<圧縮弾性率の測定>
第1Si含有粒子の圧縮弾性率は、以下のようにして測定した。圧縮弾性率の測定は、25℃の環境下において、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT-211)を用いて実施した。第1Si含有粒子1つを、垂直方向(重力方向)に一定の圧縮速度(2.6mN/sec)で圧縮し、圧縮変位量と圧縮応力とを測定した。次いで、測定した圧縮変位量を、第1Si含有粒子の平均粒子径(D50粒子径)で割って(圧縮変位量/平均粒子径)、圧縮ひずみを算出した。圧縮応力を、算出した圧縮ひずみで割って(圧縮応力/圧縮ひずみ)、圧縮弾性率を算出した。平均粒子径が同等程度の第1Si含有粒子を5つ選んで、上記したように圧縮弾性率を算出し、5つの粒子の圧縮弾性率の平均値をここでの圧縮弾性率の値とした。なお、第2Si含有粒子および黒鉛粒子の圧縮弾性率についても同様にして算出した。
【0063】
<サイクル容量維持率の評価>
25℃環境下、CCCV充電(4.2Vまでレート0.4C、その後0.1Cカット)をした後、CC放電(レート0.4Cで2.5Vカット)することを1サイクルとして、250サイクル充放電を繰り返すサイクル試験を行った。1サイクル目の放電容量(初期容量)と、250サイクル目の放電容量とを測定し、サイクル容量維持率を以下の式(1)により求めた。サイクル容量維持率が高いほど、二次電池のサイクル特性が高いと言える。結果を表1に示す。
サイクル容量維持率(%)=((250サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量))×100 ・・・式(1)
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、実施例1~3の評価用電池では、容量維持率が85%以上であることがわかる。これらの結果より、負極活物質として黒鉛粒子と、第1Si含有粒子と、第2Si含有粒子と、を含み、第1Si含有粒子の圧縮弾性率は、第2Si含有粒子の圧縮弾性率よりも小さく、かかる第1Si含有粒子の圧縮弾性率は250MPa以上2000MPa以下であり、第1Si含有粒子と前記第2Si含有粒子との重量比が、50:50~90:10であることにより、優れたサイクル特性を有する二次電池が実現される。
【0066】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0067】
以上のとおり、ここに開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極および負極を有する電極体を備えた二次電池であって、上記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配置された負極活物質層と、を備えており、上記負極活物質層は、負極活物質として、黒鉛粒子と、Si含有粒子と、を含み、上記Si含有粒子は、第1Si含有粒子と、第2Si含有粒子と、を含んでおり、上記第1Si含有粒子の圧縮弾性率は、上記第2Si含有粒子の圧縮弾性率よりも小さく、上記第1Si含有粒子の圧縮弾性率は、250MPa以上2000MPa以下であり、上記第1Si含有粒子と上記第2Si含有粒子との重量比が、50:50~90:10である、二次電池。
項2:上記第2Si含有粒子の圧縮弾性率は、2000MPaを超えて5000MPa以下である、項1に記載の二次電池。
項3:上記黒鉛粒子の圧縮弾性率は、10MPa以上250MPa以下である、項1または項2に記載の二次電池。
項4:上記黒鉛粒子と上記Si含有粒子との重量比が、90:10~40:60である、項1~項3のいずれか一つに記載の二次電池。
項5:上記第1Si含有粒子の空隙率が5vol%以上である、項1~項4のいずれか一つに記載の二次電池。
【符号の説明】
【0068】
20 電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極(正極シート)
52 正極集電体
52a 正極集電体露出部
54 正極活物質層
60 負極(負極シート)
62 負極集電体
62a 負極集電体露出部
64 負極活物質層
66 黒鉛粒子
68 Si含有粒子
68a 第1Si含有粒子
68b 第2Si含有粒子
70 セパレータ
100 二次電池
図1
図2
図3