(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115208
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】押出成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/16 20190101AFI20240819BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20240819BHJP
B29C 48/12 20190101ALI20240819BHJP
B29C 48/49 20190101ALI20240819BHJP
B29C 48/30 20190101ALI20240819BHJP
B29C 48/15 20190101ALI20240819BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240819BHJP
B29K 7/00 20060101ALN20240819BHJP
B29K 59/00 20060101ALN20240819BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
B29C48/16
B29C48/88
B29C48/12
B29C48/49
B29C48/30
B29C48/15
B29C44/00 E
B29K7:00
B29K59:00
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020777
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】猪又 健太
(72)【発明者】
【氏名】大堺 茂樹
【テーマコード(参考)】
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
4F207AA03
4F207AA45
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4F214UN01
4F214UN04
4F214UN52
4F214UP58
4F214UP65
(57)【要約】
【課題】低比重化,省資源化等に貢献、かつ所望の表面平滑性や機械的物性を得られ易くすることが可能な押出成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、発泡性TPE組成物と、非発泡性TPE組成物と、を用いて押出成形し、当該押出成形によって当該発泡剤を発泡させる。これにより、発泡性TPE組成物または非発泡性TPE組成物から成り自動車の車体の任意位置に取り付け自在な取付基部11と、発泡性TPE組成物から成り自動車における前記任意位置に近接する近接位置に対して弾接自在な弾性部12と、非発泡性TPE組成物から成り弾性部12の表面に被覆された被覆層13,14と、を備えた押出成形体A1を形成する。発泡性TPE組成物および非発泡性TPE組成物は、それぞれゴム成分と熱可塑性樹脂成分との両者が配合されて成り、当該両者のゴム成分/熱可塑性樹脂成分が70/30~60/40の範囲内であるものする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、発泡剤が配合されている発泡性熱可塑性エラストマー組成物と、当該発泡剤が配合されていない非発泡性熱可塑性エラストマー組成物と、を用いて押出成形し、当該押出成形によって当該発泡剤を発泡させる成形工程により、
前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物または前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記押出成形の押出方向に長尺な形状であって、自動車の車体の任意位置に取り付け自在な取付基部と、
前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記押出方向に長尺な中空部を有した形状であって、前記自動車における前記任意位置に近接する近接位置に対して弾接自在な弾性部と、
前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記弾性部の外周面に被覆された外周面被覆層と、
前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記弾性部の内周面に被覆された内周面被覆層と、
を備えた押出成形体を形成し、
前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物は、それぞれゴム成分と熱可塑性樹脂成分との両者が配合されて成り、当該両者の重量比であるゴム成分/熱可塑性樹脂成分が70/30~60/40の範囲内であることを特徴とする押出成形体の製造方法。
【請求項2】
少なくとも、発泡剤が配合されている発泡性熱可塑性エラストマー組成物と、当該発泡剤が配合されていない非発泡性熱可塑性エラストマー組成物と、を用いて押出成形し、当該押出成形によって当該発泡剤を発泡させる成形工程により、
前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物または前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記押出成形の押出方向に長尺な形状で自動車の車体の任意位置に取り付け自在な取付基部と、
前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記押出し方向に長尺で前記取付基部から突出して設けられたリップ状であって、前記自動車における前記任意位置に近接する近接位置に対して弾接自在な弾性部と、
前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記弾性部における前記近接位置側である弾接側面に被覆された弾接側被覆層と、
前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記弾性部における前記近接位置側の反対側である非弾接側面に被覆された非弾接側被覆層と、
を備えた押出成形体を形成し、
前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物は、それぞれゴム成分と熱可塑性樹脂成分との両者が配合されて成り、当該両者の重量比であるゴム成分/熱可塑性樹脂成分が70/30~60/40の範囲内であることを特徴とする押出成形体の製造方法。
【請求項3】
前記弾性部,前記外周面被覆層,前記内周面被覆層は、前記成形工程において前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物を共押出しすることにより、形成されたことを特徴とする請求項1記載の押出成形体の製造方法。
【請求項4】
前記弾性部および前記内周面被覆層は、前記成形工程において前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物を共押出しすることにより、形成され、
前記外周面被覆層は、前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成る長尺帯状のフィルムを前記弾性部の外周面に積層して形成されたことを特徴とする請求項1記載の押出成形体の製造方法。
【請求項5】
前記弾性部,前記弾接側被覆層,前記非弾接側被覆層は、前記成形工程において前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物を共押出しすることにより、形成されたことを特徴とする請求項2記載の押出成形体の製造方法。
【請求項6】
前記弾接側被覆層,前記非弾接側被覆層は、それぞれ前記成形工程において、前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成る長尺帯状のフィルムを前記弾性部における前記弾接側面,前記非弾接側面に積層して形成されたことを特徴とする請求項2記載の押出成形体の製造方法。
【請求項7】
前記成形工程は、
口金を介して前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物を吐出して押出成形する吐出工程と、
前記吐出工程により前記口金から押出成形された押出成形体を、引取機により前記押出方向に引張移動させながら冷却する冷却工程と、
を有し、
前記口金は、
前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物を前記押出方向に吐出する発泡用吐出口部と、
前記被覆層を形成するための前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物を前記押出方向に吐出する非発泡用吐出口部と、
を有し、
前記非発泡用吐出口部において前記被覆層の層厚方向に対応する寸法は、前記冷却後の前記被覆層における層厚方向の寸法の1.2倍~2倍の範囲内に設定することを特徴とする請求項1または2記載の押出成形体の製造方法。
【請求項8】
前記被覆層の層厚方向の寸法は、50μm~500μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の押出成形体の製造方法。
【請求項9】
前記発泡剤の発泡によって押出成形体内に形成される発泡セルのセル径が50μm~100μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の押出成形体の製造方法。
【請求項10】
前記弾性部は、比重が0.4~0.8の範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の押出成形体の製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性エラストマー組成物は、TPO,TPS,TPVの何れかを配合して成ることを特徴とする請求項1または2記載の押出成形体の製造方法。
【請求項12】
前記押出成形の押出成形温度は、195℃~220℃の範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の押出成形体の製造方法。
【請求項13】
前記発泡剤は、マイクロカプセル,有機発泡剤,超臨界流体発泡剤のうち何れかであることを特徴とする請求項1または2記載の押出成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形体の製造方法に係るものであって、例えば自動車の車体に取り付けられるウェザーストリップ等に適用可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の車体に取り付けられるウェザーストリップ(例えばエンジンルーム周辺やドア等に適用されるウェザーストリップ)等の成形体は、近年の地球環境対策(例えば自動車の燃費向上やリサイクル等)に貢献できるように、低比重化や省資源化(リサイクル容易化,低コスト化)等を図ることが求められている。
【0003】
ウェザーストリップ等の成形体の製造方法の一例としては、ゴム材料に発泡剤等を配合して成る発泡性の組成物(以下、単に発泡性ゴム組成物と適宜称する)を適用し、当該発泡性ゴム組成物を押出成形して発泡させる方法が挙げられる。このような方法による成形体(以下、ゴム発泡成形体と適宜称する)によれば、単に低比重化するだけでなく、ゴム材料消費量の低減等により低コスト化できる可能性もあるが、当該ゴム材料自体は所望のリサイクルを妨げる要因となる場合があった。
【0004】
他の例としては、前記発泡性ゴム組成物の替わりに、熱可塑性エラストマー(以下、単にTPEと適宜称する)に発泡剤等を配合して成る発泡性の組成物(以下、単に発泡性TPE組成物と適宜称する)を適用し、当該発泡性TPE組成物を押出成形して発泡させる方法が挙げられる。このような方法の成形体(以下、単にTPE発泡成形体と適宜称する)によれば、単なるゴム発泡成形体と比較してゴム成分の割合が低減するため、リサイクル容易化する可能性はあるが、当該TPE発泡成形体の表面粗さが大きくなり(例えば、いわゆるササクレが形成され)、ウェザーストリップに要求される諸特性(例えばシール性等)や外観性が低くなる場合があった。
【0005】
特許文献1では、200℃以上に加熱された口金を介してTPE発泡性組成物を押出成形する方法により、TPE発泡成形体の表面を当該押出成形と同時に加熱処理して平滑化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
TPE発泡成形体の場合、当該TPE発泡成形体の発泡率が大きくなるに連れて低比重化するが、当該TPE発泡成形体の熱可塑性樹脂成分の割合が減少してしまうため、機械的物性(引張強度,耐経たり性等)が低下してしまうおそれがある。
【0008】
また、特許文献1のように押出成形と同時にTPE発泡成形体の表面を加熱処理する方法の場合、例えば当該TPE発泡成形体の表面が不均一に加熱されてしまう可能性がある。その結果、TPE発泡成形体の表面平滑性が低減し、ウェザーストリップに要求される所望の諸特性や外観性が得られなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、前述のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、低比重化,省資源化等に貢献、かつ所望の表面平滑性や機械的物性を得られ易くすることが可能な押出成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る押出成形体の製造方法は、前記課題の解決に貢献できるものであり、その一態様としては、少なくとも、発泡剤が配合されている発泡性熱可塑性エラストマー組成物と、当該発泡剤が配合されていない非発泡性熱可塑性エラストマー組成物と、を用いて押出成形し、当該押出成形によって当該発泡剤を発泡させる成形工程により、前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物または前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記押出成形の押出方向に長尺な形状であって、自動車の車体の任意位置に取り付け自在な取付基部と、前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記押出方向に長尺な中空部を有した形状であって、前記自動車における前記任意位置に近接する近接位置に対して弾接自在な弾性部と、前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記弾性部の外周面に被覆された外周面被覆層と、前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記弾性部の内周面に被覆された内周面被覆層と、を備えた押出成形体を形成するものである。そして、前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物は、それぞれゴム成分と熱可塑性樹脂成分との両者が配合されて成り、当該両者の重量比であるゴム成分/熱可塑性樹脂成分が70/30~60/40の範囲内であることを特徴とする。
【0011】
また、他の態様としては、少なくとも、発泡剤が配合されている発泡性熱可塑性エラストマー組成物と、当該発泡剤が配合されていない非発泡性熱可塑性エラストマー組成物と、を用いて押出成形し、当該押出成形によって当該発泡剤を発泡させる成形工程により、前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物または前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記押出成形の押出方向に長尺な形状で自動車の車体の任意位置に取り付け自在な取付基部と、前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記押出し方向に長尺で前記取付基部から突出して設けられたリップ状であって、前記自動車における前記任意位置に近接する近接位置に対して弾接自在な弾性部と、前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記弾性部における前記近接位置側である弾接側面に被覆された弾接側被覆層と、前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成り、前記弾性部における前記近接位置側の反対側である非弾接側面に被覆された非弾接側被覆層と、を備えた押出成形体を形成するものである。そして、前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物は、それぞれゴム成分と熱可塑性樹脂成分との両者が配合されて成り、当該両者の重量比であるゴム成分/熱可塑性樹脂成分が70/30~60/40の範囲内であることを特徴とする。
【0012】
前記弾性部,前記外周面被覆層,前記内周面被覆層は、前記成形工程において前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物を共押出しすることにより、形成されたことを特徴としても良い。
【0013】
また、前記弾性部および前記内周面被覆層は、前記成形工程において前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物を共押出しすることにより、形成され、前記外周面被覆層は、前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成る長尺帯状のフィルムを前記弾性部の外周面に積層して形成されたことを特徴としても良い。
【0014】
また、前記弾性部,前記弾接側被覆層,前記非弾接側被覆層は、前記成形工程において前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物を共押出しすることにより、形成されたことを特徴としても良い。
【0015】
また、前記弾接側被覆層,前記非弾接側被覆層は、それぞれ前記成形工程において、前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物から成る長尺帯状のフィルムを前記弾性部における前記弾接側面,前記非弾接側面に積層して形成されたことを特徴としても良い。
【0016】
また、前記成形工程は、口金を介して前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物および前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物を吐出して押出成形する吐出工程と、前記吐出工程により前記口金から押出成形された押出成形体を、引取機により前記押出方向に引張移動させながら冷却する冷却工程と、を有するものとしても良い。前記口金は、前記発泡性熱可塑性エラストマー組成物を前記押出方向に吐出する発泡用吐出口部と、前記被覆層を形成するための前記非発泡性熱可塑性エラストマー組成物を前記押出方向に吐出する非発泡用吐出口部と、を有し、前記非発泡用吐出口部において前記被覆層の層厚方向に対応する寸法は、前記冷却後の前記被覆層における層厚方向の寸法の1.2倍~2倍の範囲内に設定することを特徴としても良い。
【0017】
また、前記被覆層の層厚方向の寸法は、50μm~500μmの範囲内であることを特徴としても良い。
【0018】
また、前記発泡剤の発泡によって押出成形体内に形成される発泡セルのセル径が50μm~100μmの範囲内であることを特徴としても良い。
【0019】
また、前記弾性部は、比重が0.4~0.8の範囲内であることを特徴としても良い。
【0020】
また、前記熱可塑性エラストマー組成物は、TPO,TPS,TPVの何れかを配合して成ることを特徴としても良い。
【0021】
また、前記押出成形の押出成形温度は、195℃~220℃の範囲内であることを特徴としても良い。
【0022】
また、前記発泡剤は、マイクロカプセル,有機発泡剤,超臨界流体発泡剤のうち何れかであることを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、低比重化,省資源化等に貢献、かつ所望の表面平滑性や機械的物性を得られ易くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例1による押出成形体A1を説明する概略構成図(径方向断面図)。
【
図2】実施例1に適用可能な押出成形機L1を説明する概略構成図。
【
図3】実施例1に適用可能な口金2Aを説明する概略構成図(押出方向側から臨んだ図)。
【
図4】実施例1に適用可能な押出成形機L2を説明する概略構成図。
【
図5】実施例1による押出成形体A2を説明する概略構成図(径方向断面図)。
【
図6】実施例2による押出成形体B1を説明する概略構成図(径方向断面図)。
【
図7】実施例2に適用可能な口金2Bを説明する概略構成図(押出方向側から臨んだ図)。
【
図8】実施例2に適用可能な押出成形機L3を説明する概略構成図。
【
図9】実施例2による押出成形体B2を説明する概略構成図(径方向断面図)。
【
図10】試料P1をマイクロスコープにより観察した図(表面状態)。
【
図11】試料P2をマイクロスコープにより観察した図((A)は表面状態、(B)は表面側の断面状態、(C)は内部側の断面状態)。
【
図12】試料P3をマイクロスコープにより観察した図((A)は表面状態、(B)は表面側の断面状態、(C)は内部側の断面状態)。
【
図13】試料P4をマイクロスコープにより観察した図((A)は表面状態、(B)は内部側の断面状態)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態による押出成形体の製造方法は、例えば特許文献1のように単に押出成形と同時にTPE発泡成形体の表面を加熱処理する方法(以下、単に表面加熱処理方法と適宜称する)とは全く異なるものである。
【0026】
すなわち、本実施形態は、少なくとも、発泡性TPE組成物と、発泡剤が配合されていない非発泡性熱可塑性エラストマー組成物(以下、単に非発泡性TPE組成物と適宜称する)と、を用いて押出成形し、当該押出成形によって当該発泡剤を発泡させる成形工程を有する方法である。この方法により、発泡性TPE組成物または非発泡性TPE組成物から成り自動車の車体の任意位置(以下、単に任意位置と適宜称する)に取り付け自在な取付基部と、発泡性TPE組成物から成り自動車における前記任意位置に近接する近接位置(例えば、自動車において任意位置に対向する位置;以下、単に近接位置と適宜称する)に対して弾接自在な弾性部と、非発泡性TPE組成物から成り前記弾性部の表面(例えば中空部を有した弾性部の場合は、外周面および内周面)に被覆された被覆層と、を備えた押出成形体を形成する。そして、発泡性TPE組成物および非発泡性TPE組成物は、それぞれゴム成分と熱可塑性樹脂成分との両者が配合されて成り、当該両者の重量比であるゴム成分/熱可塑性樹脂成分が70/30~60/40の範囲内であるものする。
【0027】
このような本実施形態の押出成形体によれば、たとえ発泡性TPE組成物を用いて低比重化したスポンジ状の弾性部を有する構成であっても、剛性が高くなり過ぎないように抑制でき、リサイクル容易化を図ることもできる。また、弾性部の表面を被覆層によって被覆できるため、たとえ弾性部が発泡剤によってスポンジ状に形成されても、当該弾性部の表面粗度を抑制でき、所望の諸特性や外観性が得られ易くなる。さらに、非発泡性TPEから成る被覆層を、単に弾性部の外周面のうち近接位置側である弾接側面に被覆するだけでなく、当該弾性部における近接位置側の反対側である非弾接側面にも被覆するため、当該弾性部の機械的物性を高めることが容易となる。ゆえに、低比重化,省資源化等に貢献、かつ所望の表面平滑性や機械的物性が得られ易くなる可能性がある。
【0028】
本実施形態の押出成形体の製造方法は、前述のように発泡性TPE組成物と非発泡性TPE組成物との両者を用いて押出成形する方法であり、当該両者においてゴム成分/熱可塑性樹脂成分を70/30~60/40の範囲内とし、当該発泡性TPE組成物から成る弾性部の表面(外周面および内周面)に対して、当該非発泡性TPE組成物から成る被覆層を被覆できる構成であれば良く、多様な設計変更が可能である。
【0029】
すなわち、種々の分野(例えば押出成形分野,ウェザーストリップ分野,熱可塑性エラストマー分野,発泡剤分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能であり、その一例として以下に示す実施例1,2が挙げられる。なお、後述の実施例1,2では、例えば互いに同様の内容について同一符号,同一用語を引用する等により、詳細な説明を適宜省略しているものとする。
【0030】
≪実施例1≫
<実施例1による押出成形体の一例>
図1は、本実施例1による押出成形体A1の構成を説明するものであって、図外の自動車のカウルトップとボンネットフードとの間に介在して適用されるフードシールの一例を示すものである。
【0031】
押出成形体A1は、発泡性TPE組成物と非発泡性TPE組成物との両者を用い押出成形(例えば後述の押出成形機L1,L2により押出成形)して得られるものであって、主として、それぞれ当該発泡性TPE組成物の押出成形により発泡して成るスポンジ状の取付基部11および弾性部12と、当該非発泡性TPE組成物の押出成形により成る外周面被覆層13および内周面被覆層14と、を備えている。
【0032】
取付基部11は、押出成形の押出方向(以下、単に押出方向と適宜称する)に長尺な薄板状に形成されており、この取付基部11の厚さ方向の一端面側(
図1では図示下側)がカウルトップの任意位置に取り付け自在となるように、構成されている。この取付基部11のカウルトップに対する取り付け構造は、特に限定されるものではないが、一例として、当該カウルトップに対して嵌合や接着等して取り付けたり、特許文献1のようなクリップ(特許文献1では符号4で示すクリップ)を用いて取り付ける態様等が挙げられる。
【0033】
弾性部12は、取付基部11の厚さ方向の他端面側(
図1では図示上側)に一体化して設けられているものであって、径方向断面形状が略円弧状を成し、これにより押出方向に長尺な形状の中空部15cを有して弾性変形自在となるように、構成されている。外周面被覆層13は、弾性部12の外周面15aに被覆して設けられており、例えば閉状態のボンネットフード(すなわち近接位置)に対して弾接自在となるように、構成されている。内周面被覆層14は、弾性部12の内周面15bに被覆して設けられている。
【0034】
外周面被覆層13,内周面被覆層14それぞれの層厚方向の寸法t1,t2等は、目的とする押出成形体A1の形状等や所望する機械的物性等に応じて適宜設定することが可能であり、特に限定されるものではない。一例として、当該層厚方向の寸法t1,t2を50μm~500μmの範囲内に設定することが挙げられる。
【0035】
<発泡性TPE組成物,非発泡性TPE組成物の一例>
発泡性TPE組成物,非発泡性TPE組成物それぞれは、ゴム成分と熱可塑性樹脂成分との両者が配合されて成り、当該両者の重量比であるゴム成分/熱可塑性樹脂成分が70/30~60/40の範囲内(以下、実施例成分範囲と適宜称する)であれば良く、目的とする押出成形体A1の形状等や所望する機械的物性等に応じて種々の添加剤(例えば無機充填剤,オイル等)を配合したものであっても良い。
【0036】
ゴム成分/熱可塑性樹脂成分を実施例成分範囲内に設定して得た押出成形体A1によれば、当該熱可塑性樹脂成分によるマトリックス(海相)中に、当該ゴム成分による架橋ゴム粒子がドメイン(島相)として細かく分散し易く、所望の海島構造を得ることが可能となる。発泡性TPE組成物から成る取付基部11や弾性部12の場合は、熱可塑性樹脂成分によるマトリックス(海相)中にて発泡剤が発泡することになる。
【0037】
ゴム成分/熱可塑性樹脂成分が実施例成分範囲から外れる場合、例えばゴム成分の配合割合を高く設定し過ぎると、押出成形体A1の剛性(硬度)を抑制し耐経たり性を良好にできる可能性はあるものの、熱可塑性樹脂成分によるマトリックスの領域が減少してしまう。この場合、発泡性TPE組成物においては、発泡剤の発泡が不十分になり易く、所望通りに押出成形されないおそれがある。
【0038】
また、発泡性TPE組成物,非発泡性TPE組成物においては、少なくとも発泡剤の有無による違いがあれば良く、当該発泡剤以外の各成分(例えばTPEや添加剤等)には共通するものを適用しても良い。TPEの一例としては、TPO,TPS,TPV等が挙げられる。
【0039】
<発泡剤の一例>
発泡性TPE組成物に配合される発泡剤の一例としては、当該発泡性TPE組成物を押出成形する際に発泡可能なマイクロカプセル,有機発泡剤,超臨界流体発泡剤等が挙げられ、目的とする押出成形体A1の外観性や機械的物性等を損ない過ぎない範囲内で適宜選択して適用することが可能である。
【0040】
例えば、発泡性TPE組成物を押出成形する際に所望通りに発泡(例えば押出成形温度195~220℃で発泡)し得る発泡剤を選択して、当該発泡剤を発泡性TPE組成物内に対して数WT%程度(具体例としては1~5WT%)の範囲内となるように配合し、当該発泡剤の発泡により押出成形体A1に形成される発泡セル(
図1の場合は取付基部11,弾性部12に形成される発泡セル)のセル径が数十マイクロミリ~数百マイクロミリ程度(具体例としては50μm~100μm)となるように、適用することが挙げられる。このように発泡剤を適用して得た押出成形体A1によれば、当該発泡剤を適用しない場合と比較して、低比重化(例えば比重0.4~0.8程度の範囲内に)することが可能となる。
【0041】
<実施例1に適用可能な押出成形機の一例>
図2は、押出成形体A1の製造方法に適用可能な押出成形機L1の構成を説明するものである。押出成形機L1は、口金2Aを介して発泡性TPE組成物を吐出し押出成形する押出機31と、当該口金2Aを介して非発泡性TPE組成物を吐出し押出成形する押出機32と、当該口金2Aから吐出して押出成形された押出成形体A1を押出方向に引張移動させて引き取る引取機41と、当該引取機41によって引張移動されている状態の押出成形体A1を冷却(口金2Aと引取機41との両者間で冷却)する冷却槽42と、を主として備えている。
【0042】
口金2Aは、種々の態様を適用することが可能であり、例えば
図1に示すような押出成形体A1を形成する場合には、
図3に示すような態様とすることが挙げられる。
図3に示す口金2Aにおいては、取付基部11および弾性部12を形成するための発泡性TPE組成物を押出方向に吐出する発泡用吐出口部22と、それぞれ外周面被覆層13,内周面被覆層14を形成するための非発泡性TPE組成物を押出方向に吐出する非発泡用吐出口部23,24と、が設けられている。
【0043】
以上のような押出成形機L1によれば、発泡性TPE組成物および非発泡性TPE組成物を共押出しして押出成形することができ、
図1に示すような押出成形体A1を得ることが可能となる。
【0044】
口金2Aから吐出するように押出成形された直後(冷却槽42で冷却される前)の押出成形体A1の形状は、いわゆるダイスウェル現象により、当該押出成形体A1の径方向に拡張され易い傾向を有するものの、その後、冷却槽42によって冷却されるまでの間は、引取機41の引張力により押出方向に引き伸ばされるため、当該押出成形体A1の径方向に縮小し易い傾向となる。例えば、引取機41の引張力が大きくなり過ぎると、押出成形体A1が径方向に縮小し過ぎてしまい、外周面被覆層13や内周面被覆層14においては十分な厚さを確保できなくなってしまうおそれがある。
【0045】
このような場合には、単に引取機41の引張力を抑制するのではなく、口金2Aの形状を適宜設定することが挙げられる。例えば、外周面被覆層13,内周面被覆層14において所望の厚さを確保し易くするには、非発泡用吐出口部23,24において、それぞれ外周面被覆層13,内周面被覆層14の層厚方向に対応する寸法tA1,tA2を、冷却槽42による冷却後における当該外周面被覆層13,内周面被覆層14の層厚方向の寸法t1,t2の1.2倍~2倍の範囲内となるように、設定することが挙げられる。
【0046】
<実施例1に適用可能な押出成形機の他例>
外周面被覆層13を形成する方法においては、押出成形機L1のように押出機32により発泡性TPE組成物を押出成形する方法に限定されるものではなく、例えば後述
図4に示すような押出成形機L2により、非発泡性TPE組成物から成る長尺帯状のフィルム13aを弾性部12の外周面15aに積層して形成する方法であっても良い。このようなフィルム13aを弾性部12の外周面15aに積層する方法自体は、周知の技術(例えば、特許6082091号公報;以下、単に参考文献と適宜称する)を適宜適用して容易に実現できる。
【0047】
図4に示す押出成形機L2は、押出成形機L1と同様の口金2A,押出機31,押出機32,引取機41,冷却槽42を備えている他に、フィルム送出ローラ43を、備えている。このフィルム送出ローラ43には、予め、非発泡性TPE組成物を用いて成るフィルム13aの一端側が巻き付けられており、当該フィルム13aの他端側を口金2a側に送り出して供給できる構成となっている。
【0048】
押出成形機L2の口金2Aにおいては、前記のようにフィルム送出ローラ43から供給されたフィルム13aの他端側を、例えば非発泡用吐出口部23の箇所から吐出して弾性部12の外周面15aに積層できるように、適宜設計(例えば参考文献の
図1~
図4において符号27で示す口金のように適宜設計)することが挙げられる。
【0049】
<その他>
図1では、押出成形体A2の取付基部11と弾性部12との両者において、同じ材料の発泡性TPE組成物によって構成した描写となっているが、これに限定されるものではなく、当該両者は互いに異なる材料によって構成しても良い。具体例として、
図5に示す押出成形体A2のように、非発泡性TPE組成物の押出成形により形成した取付基部11Aと、発泡性TPE組成物によって形成した弾性部12と、を有した構成が挙げられる。このような押出成形体A2によれば、取付基部11Aの剛性が高められる一方、少なくとも弾性部12においては低比重化し軽量化を図ることができる。
【0050】
この押出成形体A2を押出成形機L1,L2により形成する場合、口金2Aにおいては、発泡用吐出口部22を適宜設計変更し、取付基部11A用の非発泡性TPE組成物と弾性部12用の発泡性TPE組成物とを共押出しできるように構成(詳細な説明は省略)することが挙げられる。
【0051】
≪実施例2≫
<実施例2による押出成形体の一例>
図6は、本実施例2による押出成形体B1の構成を説明するものであって、図外の自動車のボディサイドパネルとドアパネルとの間に介在して適用されるドアシール部品(パーティングシール等)の一例を示すものである。
【0052】
押出成形体B1は、押出成形体A1,A2と同様に、発泡性TPE組成物と非発泡性TPE組成物との両者を用い押出成形(例えば押出成形機L1,L2や、後述の押出成形機L3により押出成形)して得られるものであって、主として、それぞれ当該発泡性TPE組成物の押出成形により発泡して成るスポンジ状の取付基部51および弾性部52,53と、当該非発泡性TPE組成物の押出成形により成る弾接側被覆層54a,55aおよび非弾接側被覆層54b,55bと、を備えている。
【0053】
取付基部51は、押出方向に長尺な薄板状に形成されており、この取付基部51の厚さ方向の一端面側(
図6では図示下側)がドアパネルの任意位置(例えばドアインナパネルの下部側)に取り付け自在となるように、構成されている。この取付基部51のドアパネルに対する取り付け構造は、特に限定されるものではないが、一例として、当該ドアパネルに対して嵌合や接着等して取り付けたり、特許文献1のようなクリップを用いて取り付ける態様等が挙げられる。
【0054】
弾性部52,53は、それぞれ取付基部51の幅方向の一端側,他端側(
図6では図示左側,右側)に一体化して設けられているものであって、当該幅方向断面形状が、当該一端側,他端側から突出してボディサイドパネル側から離反する方向に反って傾斜したようなリップ形状を成し、これにより弾性変形自在となるように、構成されている。
【0055】
弾接側被覆層54a,55aは、それぞれ弾性部52,53の外周面のうちボディサイドパネル側(すなわち近接位置側)の弾接側面52a,53aに被覆して設けられており、当該ボディサイドパネルに対して弾接自在となるように、構成されている。
【0056】
非弾接側被覆層54b,55bは、それぞれ弾性部52,53の外周面のうち弾接側面52a,53aの反対側である非弾接側面52b,53bに被覆して設けられている。
【0057】
弾接側被覆層54a,55aそれぞれの層厚方向の寸法t3a,t4a等や非弾接側被覆層54b,55bそれぞれの層厚方向の寸法t3b,t4b等は、実施例1の外周面被覆層13,内周面被覆層14と同様に、目的とする押出成形体B1の形状等や所望する機械的物性等に応じて適宜設定することが可能である。一例として、層厚方向の寸法t3a,t4a,t3b,t4bを50μm~500μmの範囲内に設定することが挙げられる。
【0058】
また、
図6では、弾接側被覆層54aと非弾接側被覆層54bとの両者が弾性部52の先端部52c側で一体化しているように描写されているが、これに限定されるものではなく、例えば当該両者を弾性部52の外周面に沿って離反させて別体構成(例えば後述
図9に示すように当該両者間に間隙52dを設けた構成)にしても良い。弾接側被覆層55aと非弾接側被覆層55bとの両者においても、弾接側被覆層54aと非弾接側被覆層54bとの両者と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0059】
<実施例2に適用可能な押出成形機の一例>
押出成形体B1は、押出成形体A1,A2と同様に、押出成形機L1,L2によって押出成形することが可能であるが、この場合、口金2Aを適宜設計変更して適用、例えば
図7に示すような口金2Bを適用することが挙げられる。
【0060】
図7に示す口金2Bにおいては、取付基部51および弾性部52,53を形成するための発泡性TPE組成物を押出方向に吐出する発泡用吐出口部62と、弾接側被覆層54aおよび非弾接側被覆層54bを形成するための非発泡性TPE組成物を押出方向に吐出する非発泡用吐出口部63と、弾接側被覆層55aおよび非弾接側被覆層55bを形成するための非発泡性TPE組成物を押出方向に吐出する非発泡用吐出口部64と、が設けられている。
【0061】
非発泡用吐出口部63は、非発泡用吐出口部23,24と同様に、弾接側被覆層54a,非弾接側被覆層54bの層厚方向に対応する寸法tB3a,tB3bを、冷却槽42による冷却後の弾接側被覆層54a,非弾接側被覆層54bにおける層厚方向の寸法t3a,t3bの1.2倍~2倍の範囲内に設定することが挙げられる。また、非発泡用吐出口部64においても同様であり、弾接側被覆層55a,非弾接側被覆層55bの層厚方向に対応する寸法tB4a,tB4bを、冷却槽42による冷却後の弾接側被覆層54a,非弾接側被覆層54bにおける層厚方向の寸法t4a,t4bの1.2倍~2倍の範囲内に設定することが挙げられる。
【0062】
なお、口金2Bを押出成形機L2に適用する場合、非発泡用吐出口部63,64においては、実施例1と同様に、非発泡性TPE組成物を用いて成るフィルム13aの他端側を吐出して弾性部52,53の外周面(弾性部52の場合は弾接側面52aや非弾接側面52b)に積層できるように、適宜設計(例えば参考文献の
図1~
図4において符号27で示す口金のように適宜設計)することが可能である。
【0063】
また、押出成形体B1において、弾接側被覆層54a,55aおよび非弾接側被覆層54b,55bの全ての層をフィルム13aによって形成する場合には、
図8に示すような押出成形機L3を適用することも可能である。
図8の押出成形機L3は、押出成形機L2において口金2Aの替わりに口金2Bを適用し、さらに押出機32を取り除いて簡略化した構成となっている。
【0064】
以上のような口金2Bを適用した押出成形機L1,L2,L3によれば、発泡性TPE組成物および非発泡性TPE組成物を共押出しして押出成形(またはフィルム13aを適用して押出成形)することができ、
図6に示すような押出成形体B1を得ることが可能となる。
【0065】
<その他>
図6では、押出成形体B1の取付基部51と弾性部52,53との両者において、同じ材料の発泡性TPE組成物によって構成した描写となっているが、これに限定されるものではなく、当該両者は互いに異なる材料によって構成しても良い。具体例として、
図9に示す押出成形体B2のように、非発泡性TPE組成物の押出成形により形成した取付基部51Aと、発泡性TPE組成物によって形成した弾性部52,53と、を有した構成が挙げられる。
【0066】
この押出成形体B2を押出成形機L1,L2,L3により形成する場合、口金2Bにおいては、発泡用吐出口部62を適宜設計変更し、取付基部51A用の非発泡性TPE組成物と弾性部52,53用の発泡性TPE組成物とを共押出しできるように構成(詳細な説明は省略)することが挙げられる。
【0067】
≪検証≫
<表面加熱処理方法による押出成形体の検証>
まず、特許文献1に示す表面加熱処理方法(特許文献1の段落[0024],
図1等に示す方法)により、TPEを押出成形してフードシールの試料P1~P3を作成した。また、試料P1~P3の参考例として、市販の自動車(ダイハツ社製のムーブ)のカウルトップとボンネットフードとの間に適用されているフードシールを、試料P4とした。
【0068】
そして、試料P1~P4において、比重(JIS K7112),引張強度(JIS K6251),伸張永久歪率(JIS K6262),表面粗度(Ra)の観測を行ったところ、後述の表1のような結果が得られた。また、試料P1~P4の表面状態,断面状態をマイクロスコープ(倍率300倍)により観察したところ、
図10~
図13に示すような結果が得られた。
【0069】
なお、試料P1~P3は、TPEの押出成形時において、押出成形機のシリンダー部に圧入する水(発泡剤の役割を果たす発泡用の水)を、0~2phrの範囲内となるように適用した。また、試料P1~P3の各表面(TPE発泡成形体の表面)の加熱処理は、押出成形機の口金を200℃~220℃の範囲内に設定して行った。
【0070】
また、表面粗度の観測においては、まず、試料P1~P4をそれぞれ矩形平板状(5mm×100mm×2mm)に打ち抜いて試料片を作製し、その試料片の表面の汚れをアルコールで拭き取った後、表面粗さ計(小坂研究所社製のサーフコーダSE30D)を用いた十点平均法(JIS-B0601に準拠した方法)により該試料片の表面粗さ(十点平均粗度)をそれぞれ測定した。なお、前記表面粗さ計の触針には、触針先端半径2μmのものを使用した。
【0071】
【0072】
表1に示す結果によると、試料P1~P3においては、発泡用の水の添加量に応じて比重を小さくできるものの、引張強度が低くなり、伸張永久歪率が大きくなってしまうことが判る。また、試料P1~P3においては、発泡用の水の添加量に応じて、例えば
図11,
図12に示すような発泡セルが形成され、これにより表面粗度が大きくなってしまうことが判る。
【0073】
なお、試料P1~P3の各表面において、押出成形機の口金付近に設置した外部ヒータにより300℃で加熱処理してみたところ、当該各表面が溶融し表面粗度が改善する傾向が観られたものの、表面粗度のバラツキや艶斑等の現象が起こった。また、このような現象は、特に試料P1~P3の形状が複雑になるに連れて顕著になることが判った。
【0074】
したがって、表面加熱処理方法により作成した試料P1~P3においては、たとえ比重を小さくして軽量化を図ることができても、引張強度や耐経たり性が低く、表面平滑性も低くなっていることを判明できた。
【0075】
<実施例1,2による押出成形体の検証>
まず、実施例1に示した方法により、発泡性TPE組成物と非発泡性TPE組成物との両者を用いて押出成形(押出成形温度195℃~220℃)して、
図1に示した押出成形体A1の試料S1~S3を作成した。また、試料S1~S3において外周面被覆層13,内周面被覆層14を形成しない場合の参考例として、発泡性TPE組成物のみを用いて押出成形体A1と同様の形状となるように押出成形体して作成したものを、スポンジ状の成形体の試料S4とし、非発泡性TPE組成物のみを用いて押出成形体A1と同様の形状となるように押出成形体して作成したものを、ソリッド状の成形体の試料S5とした。
【0076】
そして、試料S1~S5において、試料P1~P4と同様の観測条件により、比重,引張強度,圧縮永久歪率(JIS K6262),表面粗度(Ra),色差(ΔE)の観測を行ったところ、後述の表2のような結果が得られた。
【0077】
なお、試料S1~S5の発泡性TPE組成物,非発泡性TPE組成物においては、それぞれTPV(JSR社製のEL1306B)を用いて成るものであって、ゴム成分/熱可塑性樹脂成分が実施例成分範囲のものを適用した。また、発泡性TPE組成物においては、発泡剤としてマイクロカプセルを3wt%配合したものを適用した。
【0078】
色差の観測においては、JIS Z 8722‐Cに準拠して、試料S1~S5をそれぞれ温度70℃の雰囲気下で70時間の加熱処理を行ってから室温下にて30分間放置し、その放置後の試料S1~S5と加熱処理前(押出成形直後)の試料S1~S5との色相差(ΔE)を分光測色計(コニカミノルタ社製のcμ‐2600d)により測定し、白化現象を想定した耐変色性を調べた。
【0079】
【0080】
表2に示す結果によると、試料S1~S3においては、スポンジ状の試料S4と同様に比重が小さくなっていると共に、当該試料S4と比較すると、外周面被覆層,内周面被覆層の層厚方向の寸法に応じて引張強度が高くなっており、更に表面粗度,色差を小さく抑制できていることが判る。また、試料S1~S3においては、ソリッド状の試料S5と同様に圧縮永久歪率を抑制できていることが判る。
【0081】
したがって、試料S1~S3においては、単に比重を小さくして軽量化を図ることができるだけでなく、良好な引張強度や耐経たり性を得ることができ、表面平滑性も良好で所望の諸特性(シール性等)や外観性が得られ易くなっていることを判明できた。
【0082】
なお、実施例2に示した方法においても、発泡性TPE組成物と非発泡性TPE組成物との両者を用いて押出成形(押出成形温度195℃~220℃)し、
図6に示した押出成形体B1の試料を作成して、試料S1~S3と同様の観測条件により比重,引張強度,圧縮永久歪率,表面粗度,色差の観測を行ったところ、表2と同様の結果が得られたことを確認できた。
【0083】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0084】
A1,A2,B1,B2…押出成形体
L1~L3…押出成形機
11,51…取付基部
12,52,53…弾性部
13,14,54a,55a,54b,55b…被覆層
2A,2B…口金