(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115209
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】滑らかな閉鎖部を有する乳頭筋バンド
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023020782
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】519351325
【氏名又は名称】カーディアック・サクセス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・ノイシュテッター
(72)【発明者】
【氏名】ボアズ・マナッシュ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097BB09
4C097CC05
4C097DD01
4C097EE06
4C097SB10
(57)【要約】
【課題】本発明は、乳頭筋を整復するための改善されたデバイス及び方法に関する。
【解決手段】本開示の実施形態は、心臓の内部にループを形成するように構成され、第1の端部及び第2の端部を含むバンドと、第2の端部の近傍のバンドの領域に配置される複数の係止セグメントと、第1の端部のところ、又はその近くに配置される作動可能クラスプとを備える心臓デバイスを含む。各係止セグメントは、張出領域と傾斜領域とを有し得る。作動可能クラスプは、第2の端部がクラスプに挿入された後に係止セグメントの張出領域に係止することによって一定長さのループを形成するように構成され得る。隣接する係止セグメントは、互いに関して屈曲するように構成され、それによって、隣接する傾斜領域が互いに協働してセグメントがクラスプの内部に向かって滑動することを円滑にすることを可能にし得る。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の内部にループを形成するように構成されているバンドであって、第1の端部と第2の端部とを含んでいる前記バンドと、
前記第2の端部の近傍に位置する前記バンドの領域に配置されている一連の複数の係止セグメントであって、張出領域と傾斜領域とをそれぞれ含んでいる一連の複数の前記係止セグメントと、
前記第1の端部に又は前記第1の端部の近傍に配置されている調整可能なクラスプであって、前記第2の端部が前記クラスプに挿入された後に係止セグメントの前記張出領域に係止することによって一定長さのループを形成するように構成されている前記クラスプと、
を備えている心臓デバイスにおいて、
隣接する前記係止セグメントが、互いに対して屈曲するように構成されており、これにより、隣接する傾斜領域同士が、前記係止セグメントが前記クラスプの内部に向かって滑動するように互いに協働する、心臓デバイス。
【請求項2】
前記バンドの少なくとも一部が、チューブであり、
前記複数の係止セグメントが、前記チューブの内側に配置されている、請求項1に記載の心臓デバイス。
【請求項3】
前記係止セグメントそれぞれが、円錐形状である、請求項1に記載の心臓デバイス。
【請求項4】
隣接する前記係止セグメントが、前記係止セグメント同士を少なくとも1つの平面内において互いに対して回転させるように構成されている機械式継手を介して、連結されている、請求項1に記載の心臓デバイス。
【請求項5】
隣接する前記係止セグメントが、可撓性を有するワイヤに一列に並べられたビーズを備える、請求項1に記載の心臓デバイス。
【請求項6】
前記係止セグメント同士が、スペーサビーズによって隔てられている、請求項5に記載の心臓デバイス。
【請求項7】
隣接する前記係止セグメントが、内部空間を備えており、
前記内部空間において、前記係止セグメントそれぞれの前記傾斜領域が、隣接する前記係止セグメント同士の間の張出の大きさを縮小するために、前記係止セグメントのチェーンの中心線に関して回転することができる、請求項1に記載の心臓デバイス。
【請求項8】
前記スペーサビーズそれぞれの少なくとも一部が、前記係止セグメントの中空の内部に配置されている、請求項6に記載の心臓デバイス。
【請求項9】
一連の複数の前記係止セグメントが、一体成形品から一体形成されており、
前記一体成形品が、一連の複数の前記係止セグメントを接続する領域を含んでおり、
前記領域の可撓性が、前記係止セグメントの可撓性より高い、請求項1に記載の心臓デバイス。
【請求項10】
一連の複数の前記係止セグメントの前記張出領域及び前記傾斜領域が、前記張出領域及び前記傾斜領域が張出の無い滑らかな少なくとも1つの側面を有するように、一つの平面のみにおいて傾斜及び隆起している、請求項1に記載の心臓デバイス。
【請求項11】
前記バンドが、調整可能な前記クラスプを前記チューブの外側表面で閉じるように、且つ、調整可能な前記クラスプを前記チューブの内側の前記係止セグメントの前記張出領域に堅固に係止するように構成されている材料から作られている、請求項2に記載の心臓デバイス。
【請求項12】
前記バンドが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、又はダクロンのうち少なくとも1つを含んでいる、請求項1に記載の心臓デバイス。
【請求項13】
一連の複数の前記係止セグメントが、第1の端部と第2の端部とを含んでおり、
前記バンドの前記第2の端部が、一連の複数の前記係止セグメントの前記第1の端部に接続されている、請求項1に記載の心臓デバイス。
【請求項14】
一連の複数の前記係止セグメントの前記第2の端部が、前記バンドに沿った所定の場所に接続されている、請求項13に記載の心臓デバイス。
【請求項15】
前記係止セグメントが、凹部を含んでおり、
前記凹部が、前記バンドが屈曲した場合に、隣接する前記係止セグメントが隣接する前記係止セグメント同士の間に張出が形成されないように互いに位置合わせされるように構成されており、これにより、前記バンドの内側表面に沿って滑らかな表面が形成される、請求項4に記載の心臓デバイス。
【請求項16】
前記係止セグメント及び前記スペーサビーズが、前記バンドが屈曲した場合に、隣接する前記係止セグメントが隣接する前記係止セグメント同士の間に張出が形成されないように互いに位置合わせされるように構成されており、これにより、前記バンドの内側表面に沿って滑らかな表面が形成される、請求項6に記載の心臓デバイス。
【請求項17】
前記領域及び前記係止セグメントが、前記バンドが屈曲した場合に、隣接する前記係止セグメントが隣接する前記係止セグメント同士の間に張出が形成されないように互いに位置合わせされるように構成されており、これにより、前記バンドの内側表面に沿って滑らかな表面が形成される、請求項9に記載の心臓デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月23日に出願した米国仮特許出願第62/575,538号からの優先権を主張する、2018年10月22日に出願した米国非仮特許出願第16/166,291号の一部継続出願である。上で識別された出願の開示は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明の幾つかの応用は、一般に、心臓機能を改善するためのデバイス及び方法に関する。より具体的には、本発明の幾つかの応用は、身体の心臓の内部の乳頭筋を経カテーテル的に整復するための心臓デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
房室弁修復外科手術時に心臓の心室内の乳頭筋を整復することで転帰を改善し得る。虚血、心不全、又は心室再形成の他の原因による、乳頭筋の変位は、結果として、弁尖のテザリングを引き起こし、正常な機能を妨げる可能性がある。弁輪のみに集中する修復は、多くの場合に、結果として、弁尖テザリングによる逆流の再発を引き起こす。
【0004】
乳頭筋整復の方法は、乳頭筋から弁輪又は大動脈までの縫合糸、乳頭筋を引き寄せるために複数の乳頭筋を取り囲むスリング、及び乳頭筋を引き寄せるための縫合糸を含む。しかしながら、乳頭筋整復のこれらの方法は、典型的には心臓切開手術時に実施される。
【0005】
乳頭筋を整復する別の方法は、心臓機能を改善するために乳頭筋の周りにバンドを位置決めすることを含む。例えば、経カテーテル乳頭筋バンドは、カテーテルを介して心室に挿入され、乳頭筋の基部の周りにきつく係止されて乳頭筋を整復し、心臓機能を改善する。幾つかの経カテーテル乳頭筋バンドは、クラスプを備え、このクラスプはカテーテルを介して作動され、スリングを形成するループ内にバンドを係止することができる。クラスプは、バンドに沿った多数の隆起部(ridge)又は張出部(ledge)のいずれか1つに係止し、それによって、クラスプを係止する前にループのサイズの調整可能性を許容する。
【0006】
幾つかのスリング設計では、隆起部を収容するバンドの遠位端は、所望のループサイズが達成されるまでクラスプを通して引っ張られ得る。次いで、クラスプは作動され、クラスプ内に置かれているバンドの隆起部に係止し得る。バンドは乳頭筋の周りにきつく巻き付けられるので、挿入の際、バンドの遠位端は、真っ直ぐな構成でクラスプに挿入され得ず、むしろ、角度を付けて挿入され得る。バンドがクラスプに挿入される、多くの場合に90度まで又はそれ以上の角度であり得る、角度に起因して、バンドの遠位部分の係止隆起部は、クラスプ内へのバンドの挿入に干渉することがある。例えば、隆起部は、バンドをクラスプ内に引き込むのに必要な力の量を増やし、挿入をぎくしゃくさせ制御を困難にする可能性がある。バンド内の張出の結果生じるクラスプ内への挿入に対するこの干渉は、「張出効果」と称される。バンドの半径の変化は、クラスプを隆起部に係止することを可能にする機械的特徴であるが、半径の変化は、クラスプ内へのバンドの滑らかな挿入に干渉する機械的特徴でもある。
【0007】
したがって、クラスプ内へのバンドの滑らか挿入に干渉する張出効果を低減することができる乳頭筋整復を実行するためのシステム及び方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書で開示されている実施形態では、張出効果を低減することもしながら従来のデバイス及び方法に比べて位置決め、調整、適所への係止を容易に行える、乳頭筋を整復するための改善されたデバイス及び方法に対する必要性が存在していることを認識している。それに加えて、本明細書で開示されている実施形態は、カテーテルを介してポンプ動作を行っている心臓において乳頭筋整復を実行できる潜在的可能性を有する乳頭筋を整復するデバイス及び方法の必要性に対処し得る。さらに、乳頭筋整復のための従来のデバイス及び方法は、商業的にはほとんど成功を収めなかった。したがって、カテーテルを介して送達されるか又は他の何らかの仕方で送達されるかに関係なく、改善されたデバイス及び方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態は、乳頭筋を整復するためのデバイス及び方法を含む。有利には、例示的な実施形態は、バンドを小柱に通して送達することによって乳頭筋を整復する方法を提供する。バンドは、ループを形成するために調整可能なクラスプに挿入されるべき複数の一連の係止セグメント(sequential locking segment)を備え得る。本開示の様々な実施形態は、次の態様のうち1つ又は複数を含み得る。
【0010】
本開示の一実施形態により、心臓デバイスが提供され、これは心臓の内部にループを形成するように構成され、第1の端部及び第2の端部を含むバンドと、第2の端部の近傍のバンドの領域に配置される複数の係止セグメントとを備える。各係止セグメントは、張出領域と傾斜領域とを備え得る。心臓デバイスは、第1の端部のところ、又はその近くに配置されている調節可能クラスプも備え得る。調整可能クラスプは、第2の端部がクラスプに挿入された後に係止セグメントの張出領域に係止することによって一定長さのループを形成するように構成され得る。隣接する係止セグメントは、互いに関して屈曲するように構成され、それによって、隣接する傾斜領域が互いに協働してセグメントがクラスプの内部に向かって滑動することを円滑にすることを可能にし得る。
【0011】
本開示の一実施形態によれば、バンドの少なくとも一部は、チューブであってもよく、複数の係止セグメントは、チューブの内側に配置され得る。本開示の別の実施形態によれば、係止セグメントそれぞれは、円錐形であってもよい。幾つかの実施形態において、隣接する係止セグメントは、係止セグメントが少なくとも1つの平面内で互いに関して回転することを可能にするように構成されている機械式継手によって一緒に連結され得る。さらに別の実施形態では、隣接する係止セグメントは、可撓性ワイヤに一列に並べられたビーズを備え得る。幾つかの実施形態において、係止セグメントは、スペーサビーズによって分離され得る。幾つかの実施形態において、各スペーサビーズの少なくとも一部は、係止セグメントの中空の内部の内側に配置され得る。
【0012】
本開示の別の実施形態によれば、隣接する係止セグメントは、各係止セグメントの傾斜領域が、隣接する係止セグメント間の張出の大きさを縮小するために係止セグメントのチェーンの中心線に関して回転することができるような中空の内部を備え得る。幾つかの実施形態において、複数の係止セグメントは、一体成形品から一体形成されてもよく、一体成形品は、複数の係止セグメントを接続する領域を含み得る。これらの領域は、係止セグメントに比べて可撓性が高いものとしてよい。
【0013】
本開示のさらに別の実施形態では、複数の係止セグメントの張出領域及び傾斜領域は、張出領域及び傾斜領域が張出のない滑らかな少なくとも1つの側面を有するように1つの平面のみにおいて傾斜し、隆起しているものとしてよい。
【0014】
本開示の別の実施形態によれば、バンドは、調整可能クラスプがチューブの外側表面上で閉じ、チューブの内側の係止セグメントの張出領域上にきつく係止することを可能にするように構成されている材料から作られ得る。幾つかの実施形態において、バンドは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、又はダクロンのうち少なくとも1つを含み得る。
【0015】
本開示の別の実施形態によれば、複数の係止セグメントは、第1の端部及び第2の端部を備え得る。バンドの第2の端部は、複数の係止セグメントの第1の端部に接続され得る。幾つかの実施形態において、複数の係止セグメントの第2の端部は、バンドに沿ってある場所に接続され得る。
【0016】
本開示の別の実施形態によれば、係止セグメントは、凹部を備えていてもよく、凹部は、バンドが屈曲したときに、隣接する係止セグメントが隣接する係止セグメントの間に張出がないように互いに整列するように構成され、それによってバンドの内側表面に沿って滑らかな表面を提供するように構成され得る。
【0017】
本開示の別の実施形態において、係止セグメント及びスペーサビーズは、バンドが屈曲したときに、隣接する係止セグメントが隣接する係止セグメントの間に張出がないように互いに整列するように構成され、それによってバンドの内側表面に沿って滑らかな表面を提供するように構成され得る。
【0018】
本開示のさらに別の実施形態において、複数の係止セグメント及び係止セグメントを接続する領域は、バンドが屈曲したときに、隣接する係止セグメントが隣接する係止セグメントの間に張出がないように互いに整列するように構成され、それによってバンドの内側表面に沿って滑らかな表面を提供するように構成され得る。
【0019】
実施形態の追加の目的及び利点は、一部は次の説明において述べられ、一部は説明から明白であるか、又は実施形態の実施によって知り得る。実施形態の目的及び利点は、付属の請求項において特に指摘されている要素及び組合せを用いて実現され、達成される。
【0020】
前述の一般的な説明及び次の詳細な説明は両方とも、例示的であり、解説にすぎず、請求項を制限しないことは理解されるべきである。
【0021】
本発明の新規性のある特徴は、後に続く請求項において詳細に述べられる。本発明の特徴及び利点は、本発明の原理が利用されている例示的な実施形態について述べている次の詳細な説明と、添付図面を参照することによってよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本開示の一実施形態による乳頭筋を整復するための例示的なデバイスを例示する図である。
【
図1B】本開示の別の実施形態による乳頭筋を整復するための例示的なデバイスを例示する図である。
【
図2】本開示の別の実施形態による、ループで乳頭筋を整復するための例示的なバンドを例示する図である。
【
図3】本開示の実施形態が採用され得る人間の心臓の例示的な解剖学的構造を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、調整可能クラスプの例示的な実施形態を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態による、調整可能クラスプの別の例示的な実施形態を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態による、調整可能クラスプの別の例示的な実施形態を示す図である。
【
図7A】本開示の一実施形態による、調整可能クラスプの例示的な実施形態を示す図である。
【
図7B】本開示の一実施形態による、調整可能クラスプの別の例示的な実施形態を示す図である。
【
図7C】本開示の一実施形態による、調整可能クラスプの別の例示的な実施形態を示す図である。
【
図7D】本開示の一実施形態による、調整可能クラスプの別の例示的な実施形態を示す図である。
【
図8】本開示の実施形態が採用され得る人間の例示的な身体を示す図である。
【
図9】本開示の実施形態が採用され得る例示的な送達デバイスを示す図である。
【
図10】本開示の実施形態による、例示的な挿入ケーブルを伴う例示的な送達デバイスを示す図である。
【
図11】本開示の実施形態が採用され得る別の例示的な送達デバイスを示す図である。
【
図12】本開示の実施形態による、複数の係止セグメントの例示的な一実施形態を例示する図である。
【
図13A】本開示の実施形態による、スリングが屈曲したときの隣接する係止セグメントの協働の例示的な実施形態を例示する図である。
【
図13B】本開示の実施形態による、スリングが屈曲したときの隣接する係止セグメントの協働の別の例示的な実施形態を例示する図である。
【
図14】本開示の実施形態による、ボールインソケット継手を有する複数の係止セグメントの例示的な一実施形態を例示する図である。
【
図15】本開示の実施形態による、ワイヤに一列に並べられたスペーサを有する複数の係止セグメントの例示的な実施形態を例示する図である。
【
図16A】本開示の実施形態による、中空係止セグメントの例示的な一実施形態を例示する図である。
【
図16B】本開示の実施形態による、ボールインソケット継手を有する中空係止セグメントの例示的な一実施形態を例示する図である。
【
図16C】本開示の実施形態による、
図16Aの複数の中空係止セグメントの例示的な一実施形態を例示する図である。
【
図16D】本開示の実施形態による、スリングが屈曲したときの
図16Cの複数の中空係止セグメントの別の例示的な実施形態を例示する図である。
【
図17】本開示の実施形態による、複数の係止セグメントの別の例示的な実施形態を例示する図である。
【
図18】本開示の実施形態による、チューブ内に配設された複数の係止セグメントを有するチューブから形成されたスリングの例示的な一実施形態を例示する図である。
【
図19A】本開示の実施形態による、ボール形状係止セグメントの屈曲したチェーンの長さに沿った半径及び傾斜を例示するグラフである。
【
図19B】本開示の実施形態による、円錐形状係止セグメントの屈曲したチェーンの長さに沿った半径及び傾斜を例示するグラフである。
【
図19C】本開示の実施形態による、中空円錐形状係止セグメントの屈曲したチェーンの長さに沿った半径及び傾斜を例示するグラフである。
【
図20A】本開示の実施形態による、凹部を有する中空円錐形状係止セグメントの例示的な一実施形態を例示する図である。
【
図20B】本開示の実施形態による、
図20Aの中空円錐形状係止セグメントの別の図である。
【
図21】本開示の実施形態による、スペーサを有する中空円錐形状係止セグメントの例示的な一実施形態を例示する図である。
【
図22A】本開示の実施形態による、送達デバイスの遠位端、クラスプリテーナ、及びスリングの第2の端部上の放射線不透過性マーカーの例示的な一実施形態を例示する図である。
【
図22B】本開示の実施形態による、
図22Aの放射線不透過性マーカーの別の例示的な実施形態を例示する図である。
【
図22C】本開示の実施形態による、
図22Aの放射線不透過性マーカーの別の例示的な実施形態を例示する図である。
【
図22D】本開示の実施形態による、
図22Aの放射線不透過性マーカーの別の例示的な実施形態を例示する図である。
【
図23A】本開示の実施形態による、送達デバイスの遠位端、クラスプリテーナ、及びスリング挿入ケーブル上の放射線不透過性マーカーの例示的な一実施形態を例示する図である。
【
図23B】本開示の実施形態による、
図23Aの放射線不透過性マーカーの別の例示的な実施形態を例示する図である。
【
図23C】本開示の実施形態による、
図23Aの放射線不透過性マーカーの別の例示的な実施形態を例示する図である。
【
図23D】本開示の実施形態による、
図23Aの放射線不透過性マーカーの別の例示的な実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、心臓機能を改善するための方法及びデバイスに関係する。本開示は、複数の乳頭筋の周りでバンドをループにすることによって乳頭筋を整復する例を提供するが、本開示の態様は、最も広い意味で、複数の乳頭筋の周りでバンドをループにすることに限定されないことに留意されたい。むしろ、前述の原理は、心臓機能を改善するための他のデバイスにも適用され得ることが企図される。それに加えて、ループ形成は、小柱の間の複数の空間を通っても生じ、それによって複数の乳頭筋を引いて互いに近づけ乳頭筋を整復し得る。小柱の間の複数の空間は、心臓の心室の壁に沿って配置され得る。したがって、バンドを小柱の間の複数の空間に通してループを作り、バンドを単一ループで締め付けることで、心臓の心室の壁を内側に引っ張り、それによって乳頭筋を整復し、乳頭筋を引っ張って互いに近づけ得る。
【0024】
バンドという語は、所望の解剖学的構造を部分的に取り囲むか又は完全に取り囲むことのいずれかができる任意の要素を一般的に指す。例えば、バンドは、心臓の心室内の複数の乳頭筋を部分的に又は完全に取り囲み乳頭筋を互いの方へ近づけることができる要素であってよい。
図3に例示されているように、複数の乳頭筋の周りにループを作るバンドは、本開示により、乳頭筋を整復するためのデバイスの一例である。ループを作ることは、1つ又は複数の乳頭筋を部分的に又は完全に囲むことを伴い得る。上で説明されているように、ループを作ることは、それに加えて、又は代替的に、小柱の間の複数の空間にバンドを通すことを伴い得る。それに加えて、「隆起部」及び「張出」という語は、一般的に、バンドの表面からの任意の突出を指し、その上にクラスプが係止してループを形成することができる。したがって、「隆起部」及び「張出」という語は互いに入れ替えて使用され得る。
【0025】
図1A~
図1Cを参照すると、本開示による、乳頭筋を整復するための例示的なデバイス100は、バンド110を備え得る。バンド110は、第1の端部120と第2の端部130とを備え得る。バンド110は、心臓の心室内の少なくとも1つ、任意選択で少なくとも2つの乳頭筋の周りに置かれ得る。バンド110は、
図1A~
図1Cに例示されているように、第1の端部120が第2の端部130から接続を外される、細長構成と、バンド110がループに形成される、ループ構成との間で選択的に構成可能であるものとしてよい。幾つかの実施形態において、バンドは、複数の乳頭筋を同時に取り囲むサイズを有し、それによって、乳頭筋の周りにループを形成し、乳頭筋を互いの方へ引き寄せるものとしてよい。「バンド」という語は、チューブを含み得る。代替的に、バンド110は、チューブであってよい。幾つかの実施形態において、バンド110の一部はチューブであってよく、バンド110の別の部分はチューブでなくてもよい。バンド110は、
図1A~
図1Cに例示されているような長さの異なる部分に沿って異なる幅を有し得る。
【0026】
本開示の幾つかの実施形態において、バンド110は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ダクロン、及び/又は乳頭筋を引き寄せ近づける際に使用するのに適切な引張強さを有する任意の他の生物学的に不活性な合成材料から作られ得る。他の実施形態において、バンド110は、押出成形、編組、織ること、編むこと、又は生物学的に不活性な合成材料をバンド又はチューブ状バンドに形成する任意の他の方法によって製造され得る。バンド110は、弾性、非弾性、部分的弾性、又はこれらの任意の組合せのものであってよい。例えば、バンド110の一部は弾性的であってよいが、バンド110の別の部分は非弾性的であってよい。幾つかの実施形態において、バンド110は、複数の材料から作られ得る。例えば、バンド110の一部は1つの材料から作られてよいが、バンド110の別の部分は異なる材料から作られてよい。代替的に、バンド110は、患者から、別の人間ドナーから、又は動物由来の材料からの生物学的材料から作られてもよい。
【0027】
バンド110の第1の端部120のところ、又はその近くに、クラスプ150などの少なくとも1つの締め具が提供され得る。クラスプ150は、例えば、王冠形状の切断済みニチノールチューブから形成され得る。それに加えて、又は代替的に、クラスプ150は、一本の端部から突き出ている複数のフラップを備えるシリンダーの形態に形成され得る。クラスプ150は、開放構成(その一例が
図1Aに例示されている)から閉鎖構成(その一例が
図1B及び
図1Cに例示されている)へ、及びその逆の方向に遷移するように構成され得る。閉鎖構成では、
図1Bに例示されているように、クラスプ150のフラップはシリンダーの中心の方へ内向きに曲げられ、クラスプ150を通過するバンド110の一部を把持するクラスプを形成するものとしてよい。フラップは先端部のところで鋭利になっており、閉鎖構成でバンド110の材料をしっかり保持し及び/又は穿刺するものとしてよい。代替的に、フラップは、バンド110上の1つ又は複数の突起部の間で閉じ、突起部がクラスプ150を通過するのを防ぐために先端部のところで平坦であるか、又は丸くなっているものとしてよい。開放構成では、
図1Aに示されているように、フラップは、シリンダーの壁とともに真っ直ぐになっており、バンド110がクラスプ150を通過するのを許すものとしてよい。フラップは、閉鎖構成の方へ付勢されるものとしてよく、バンド110の位置決め及び調整の際に弾性的に曲げられて開放構成をとり得る。フラップは、クラスプアクチュエータ(図示せず)によって作動後に閉鎖構成に戻ることを許され得る。
【0028】
図1A~
図1Cの例を用いて示されているように、クラスプ150はバンド110の第1の端部120に取り付けられ得る。幾つかの実施形態において、バンド110は、チューブであってよい。したがって、クラスプ150は、バンド110の第1の端部120の内側に配置され得る。クラスプ150は、チューブの壁内に1つ又は複数の切り込みを備え得る。ワイヤ又はリングがチューブ内の1つ又は複数の切り込みの上でバンド110の外側の周りに巻き付けられてよく、それによって、バンド110の材料をチューブ内の切り込みの中に押し込む。前述の特徴は、バンド110をクラスプ150に恒久的に又は半恒久的に接続し得る。
【0029】
バンド110の第2の端部130は、突起要素140(「把持可能要素」とも呼ばれる)をさらに備えるものとしてよく、それらの間でクラスプ150が閉じ得る。突起要素140は、物体、プラスチック、金属、及び/又はポリマーから作られた軟質もしくは硬質のボール、突起部、スパイク、又はクラスプによって把持できる任意の材料であってよい。幾つかの実施形態において、
図1B及び
図1Cに例示されているように、突起要素140は、閉じられたクラスプ150を通り逆方向に進むことができない。幾つかの実施形態において、突起要素140は、バンド110の内側に配置された硬質ボールを含むものとしてよく、バンド110はチューブである。バンド110は、バンド110の外側の周りにあるリング、ワイヤ、又は紐によって硬質ボールの間に挟まれ、それにより、硬質ボールはバンド110内で移動できない。任意の数の突起部が、バンド110の第2の端部130のところに作られるものとしてよく、クラスプ150は、突起要素140のうちどれかの間に又は最後の突起要素140を越えて閉じられ係止してよく、それによってバンド110に沿った多数の場所のうちどれか1つのところで係止する。
【0030】
本開示の幾つかの実施形態において、クラスプ150は、クラスプ150が作動されたときにクラスプ150が送達デバイス190から自動的に切断されるように送達デバイス190の遠位端160に接続し得る。送達デバイス190の遠位端160の内径及び外径は、クラスプ150の内径及び外径に類似しているものとしてよい。それに加えて、送達デバイス190の遠位端160は、クラスプ150がチューブのシリンダー形状に曲げられているフラップを備える開放構成をとるときに、クラスプ150のフラップが、
図1Aに例示されているように、送達デバイス190の遠位端160の切り込みパターン内に係止し得るようにクラスプ150のフラップの形状と相補的である切り込みパターンにより切り取られ得る。クラスプ150が閉鎖構成に戻ることを許されたときに、フラップは内向きに曲がるものとしてよく、それによって、送達デバイス190の遠位端160のところで切り込みパターンから切断する。したがって、クラスプ150及びバンド110は、
図1Bに例示されているように、送達デバイス190から切断し得る。
【0031】
図1A及び
図1Bに例を用いて例示されているように、デバイス100は、クラスプアクチュエータ180及び/又はプルワイヤ170をさらに備え得る。プルワイヤ170は、クラスプアクチュエータ180によってクラスプが作動された後、クラスプリテーナリング165がクラスプ150から引っ込むように、クラスプ150内に、及び送達デバイス190の遠位端160内に配置されているクラスプリテーナリング165に結合され得る。したがって、クラスプアクチュエータ180による作動後に、クラスプ150は、クラスプ150がバンド110の第2の端部130のところの突起要素140の間で閉じる、閉鎖構成に遷移し得る。そのため、クラスプ150及びバンド110は、送達デバイス190から切断し、それによってループを形成し得る。
【0032】
本開示の別の実施形態により、バンド110は、乳頭筋と心室の壁との間の小柱の間の空間を通過するように構成され得る。
図3は、例えば、クラスプ320を有するバンド310を備えるデバイス300を例示している。バンド310は、乳頭筋340と心室350の壁との間の小柱330の間の空間を通過するように構成され得る。本開示の幾つかの実施形態において、バンドに沿った2つの場所は、バンドが1つ、2つ、又はそれ以上の乳頭筋の周りに通された後一緒に取り付けられてループを形成し得る。幾つかの実施形態において、取り付け部は、バンド又はループが乳頭筋を互いの方へ引き寄せるように構成される。
【0033】
本開示の幾つかの実施形態において、バンドは、乳頭筋の対向面に接触しないように構成され得る。例えば、バンドは、乳頭筋の非対向面の側部としか接触し得ない。
図3は、例えば、乳頭筋340の非対向面の側部とのみ接触しているバンド310を例示している。代替的に、バンドは、乳頭筋の非対向側部と接触し、乳頭筋を互いの方へ引き寄せるように構成され得る。
【0034】
本開示の別の実施形態において、バンドは、乳頭筋の対向面が間に挟装されるバンド材料を有しないように乳頭筋と接触するように構成され得る。
図3において、例えば、乳頭筋340の間に挟装されるバンド材料がないように乳頭筋340の周りにバンド310がループを作る。したがって、バンド310は、乳頭筋340の周りに位置決めされたときに、バンド310が周りに位置決めされる乳頭筋340の間に介在するバンド310の部分がないように構成され得る。幾つかの実施形態において、バンド310は、乳頭筋340を引き寄せるときに、乳頭筋340が互いに接触することができ、それらの間にバンド310又は他の異なる材料の部分がないように構成され得る。
【0035】
本開示の幾つかの実施形態において、バンドをループに形成する取り付け部の2つの場所は、バンドの第1の端部及び第2の端部のところにあってよい。「取り付け部」という語は、クラスプ、又はバンドの端部を1つにまとめてループを形成するために使用される任意の材料を指すものとしてよい。
図1Aを再び参照すると、例えば、バンド110を形成する取り付け部の2つの場所は、バンド110の第1の端部120及び第2の端部130のところにあるものとしてよい。本開示の幾つかの実施形態において、バンド110をループに形成する取り付け部の2つの場所は、バンド110の第1の端部120及び第2の端部130の近くにあってよい。代替的に、バンド110をループに形成する取り付け部は、第2の端部130よりも第1の端部120に近いものとしてよい。他の実施形態では、バンド110をループに形成する取り付け部は、バンド110の第1の端部120に関して固定された位置にあるものとしてよく、バンド110の第2の端部130に関するその位置は、バンド110のサイズを調整するために変化させることができる。
【0036】
図2は、例えば、バンド210を備えるデバイス200を例示している。バンド210は、第1の端部230と、第2の端部220と、クラスプ240とを備える。クラスプ240は、バンド210の第1の端部230に関して固定された位置に配置され得る。バンド210の第2の端部220に関するクラスプ240の位置は、バンド210によって形成されるループのサイズを調整するために変化させることができる。任意選択で、バンドを形成する取り付け部は、バンドの一方の端部をバンドに沿った任意の場所に取り付けるものとしてよい。さらに別の実施形態では、バンドを形成する取り付け部は、任意の2つの場所をバンドに沿って一緒に取り付けるものとしてよい。
【0037】
本開示の実施形態により、バンドはクラスプをさらに備え得る。
図1A~
図1Cは、例えば、バンド110に沿って第1の端部120と第2の端部130との間に取り付け部を形成しループを形成するクラスプ150を備えるバンド110を例示している。幾つかの実施形態では、クラスプ150は、バンド110が用意され、バンド110に取り付けられてよい。他の実施形態では、クラスプ150は、バンド110の第1の端部120に、又はその近くに取り付けられ得る。他の実施形態では、クラスプ150は、クラスプ150が作動されるまでバンド110に取り付けられ得ない。クラスプ150が作動されると、クラスプ150はバンド110の第1の端部120と第2の端部130とにくっつきループを形成し得る(その一例は
図2に示されている)。本開示の幾つかの実施形態において、デバイス100は、クラスプ150を作動させるために使用され得るクラスプアクチュエータ(図示せず)をさらに備え得る。バンドの第2の端部130に関するクラスプ150の位置は、クラスプアクチュエータ(図示せず)がクラスプ150を作動させるまでバンド110によって形成されるループのサイズを調整するために変化させることができる。例えば、いったん作動すると、クラスプ150は、開放構成(一例が
図1Aに示されている)から閉鎖構成(一例が
図1B及び
図1Cに示されている)に遷移し得る。代替的に、バンド110によって形成されるループの長さは、少なくとも5mm、少なくとも8mm、又は少なくとも10mmの範囲にわたって調整され得る。
【0038】
幾つかの実施形態において、クラスプは、バンドの端部のうち1つの近傍のバンドの壁に取り付けられ得る。
図2は、例えば、第1の端部230の近傍のバンド210の壁に取り付けられているクラスプ240を例示している。クラスプ240は、例えば、心臓に埋め込む前に、第1の端部230のところでバンド210に取り付けられ得る。バンドの第2の端部は、クラスプ240を通過するか、又はそれを通り越すものとしてよい。例えば、
図2を参照すると、バンド210の第2の端部220は、クラスプ240を通過するか、又はそれを通り越すものとしてよい。クラスプ240が作動すると、心臓に埋め込んだ後、この作動により、クラスプ240はクラスプ240を通過するか、又は通り越したバンド210の一部を把持し、それによって、バンド210の第2の端部220をバンド210の第1の端部230に関して固定された位置に係止し得る。したがって、ループが形成され得る。
【0039】
バンドの幅又は直径は、約2mmから約5mmの範囲内であってよい。例えば、バンドの幅又は直径は、約3mmから約4mmの範囲内であってよい。バンドの幅は、バンドの長さに沿って一定であるものとしてよい。代替的に、バンドの幅はその長さに沿って変化することがあり、一方の端部で他方の端部より大きいことがある。例えば、クラスプが接続されるバンドの端部は、クラスプに挿入されるバンドの端部よりも大きい幅を有し得る。したがって、クラスプに挿入されるバンドの端部は、より小さい幅を有し得る。
【0040】
幾つかの実施形態において、バンドはチューブを含み得る。幾つかの実施形態において、クラスプは、バンドの第1の端部の内側に配置されてよく、及び/又は第1の端部の近傍のバンドの壁に取り付けられ得る。
図2は、例えば、第1の端部230の近傍のバンド210の壁に取り付けられているクラスプ240を例示している。バンドの第2の端部は、バンドの内部管腔内のクラスプを通過するか、又はそれを通り越すものとしてよい。例えば、バンド210の第2の端部220は、バンド110の内部管腔内のクラスプ240を通過するか、又はそれを通り越すものとしてよい。クラスプ240が作動すると、心臓に埋め込んだ後、この作動により、クラスプ240はクラスプ240を通過するか、又は通り越したバンド210の一部を把持し、それによって、バンド210の第2の端部220をバンド210の第1の端部230に関して固定された位置に係止し得る。したがって、ループが形成され得る。幾つかの実施形態において、クラスプは、バンドがクラスプが心臓組織と接触するのを妨げるようにバンド内に位置決めされ得る。
図3は、例えば、バンド310とバンド310内に配置されているクラスプ320とを備えるデバイス300を例示している。バンド310は、クラスプ320が心臓の心室350内の周囲組織と接触するのを妨げ得る。
【0041】
本開示の例示的な実施形態により、クラスプは、患者の固有の解剖学的構造に対応するようにループの長さを固定する構成をとり得る。それに加えて、クラスプは、患者の心臓の内部で作動されるように構成され得る。したがって、クラスプは、ループが患者の固有の解剖学的構造に対応するようにバンドによって形成されるループの長さを固定するように選択的に作動可能である構成をとり得る。上で説明されているように、クラスプは、複数の機械的構成を有するものとしてよい。例えば、患者の心臓の内部にバンドを挿入し、位置決めするときに、クラスプは、開放構成(その一例は
図1Aに示されている)をとり得る。開放構成において、例えば、挿入ケーブル(図示せず)及びバンドの第2の端部は、クラスプを通って、又は通り越して自由に移動し得る。バンドが適切に位置決めされ調整された後、クラスプアクチュエータはクラスプを作動させるために使用され、それを閉鎖構成(一例は
図1B及び
図1Cに示されている)に再構成するものとしてよい。閉鎖構成では、例えば、クラスプは、クラスプを通過した、又は通り越したバンドの一部を把持し、それによってバンドがクラスプに関して移動し、ループを形成することを妨げ得る。
【0042】
クラスプは、クリップ、把持器、留め金、締め具、バックル、又はバンドの一方の場所をバンドの別の場所に取り付けることができる他の任意のタイプのクラスプであってよい。
図4は、開放構成及び閉鎖構成をとるクラスプの様々な例示的な実施形態を示している。例えば、
図4を見るとわかるように、クラスプは、熊罠タイプのクラスプ410、クリップタイプのクラスプ420、締め具タイプのクラスプ430、自動ロック式ジップタイタイプのクラスプ440、バックルタイプのクラスプ450、締め具タイプのクラスプ460、又はバンドの一方の場所をバンドの別の場所に取り付けることができる他の任意のタイプのクラスプであってよい。
【0043】
幾つかの実施形態において、クラスプは、金属、例えば、バネ鋼、ステンレス鋼、及び/又はニチノールから作られ得る。他の実施形態において、クラスプは、ポリマー材料、又は開放構成と閉鎖構成とをもたらすために必要な機械的特性を有する任意の他の材料から作られ得る。幾つかの実施形態において、クラスプは、閉鎖構成へ付勢されるものとしてよく、クラスプアクチュエータによって作動されるまで開放構成に弾性的に変形され得る。例えば、クラスプアクチュエータは、クラスプが閉鎖構成に戻ることを可能にし得る。バンドの第2の端部は、開放構成でクラスプを通過するか、又はそれを通り越すものとしてよい。したがって、バンドの第2の端部が適切に位置決めされたときに、クラスプアクチュエータは、クラスプがバンドを把持してバンドを適所に係止し、それによってループを形成し得るようにクラスプが閉鎖構成に弾性的に戻ることを可能にし得る。
【0044】
他の実施形態において、クラスプは、開放構成へ付勢されるものとしてよく、クラスプアクチュエータによって作動されたときに閉鎖構成に変形され得る。例えば、クラスプアクチュエータは、クラスプを強制的に閉鎖構成にし得る。そのような実施形態において、バンドの第2の端部は、開放構成でクラスプを通過するか、又はそれを通り越すものとしてよい。バンドの第2の端部が適切に位置決めされたときに、クラスプアクチュエータは、クラスプがバンドを把持してバンドを適所に係止し、それによってループを形成し得るようにクラスプを強制的に閉鎖構成にし得る。
【0045】
本開示の別の実施形態により、クラスプは、シリンダーの内側に内向きに貫入する弾性要素を備えるシリンダーであってよい。開放構成において、クラスプの弾性要素は、シリンダーの壁の中又は近くに外向きに保持され得る。
図5は、例えば、シリンダーであり得るクラスプの様々な実施形態を例示している。例えば、クラスプ510は、弾性要素がチューブの壁から切り取られ、次いで内向きに曲げられる切断チューブから製造され得る。クラスプ510は、バンドに沿った任意の場所のところでバンドの一部を把持するように構成され得るか、又はクラスプ510は、バンドに沿った特定の場所のところに配置されている把持可能な構成要素又は特徴を把持するように構成され得る。クラスプ510は、クラスプ510内に置かれたチューブ(図示せず)によって開放構成に保持され得る。クラスプ510は、クラスプ510内からチューブを取り外すことによって閉鎖構成に戻るように作動され得る。
【0046】
代替的に、クラスプ520は、コイルバネなどの、曲げられたワイヤから作られるものとしてよく、弾性要素は、シリンダーの内側内に内向きに延在するように構成されている曲げられたワイヤの一部分であってよい。クラスプ510及び520は、クラスプ510及び520の領域内のバンドが可撓性を有したままになるように可撓性を有するものとしてよい。この可撓性は、曲げられたワイヤバネの設計によって、又はチューブに可撓性を加えるように構成されている切断チューブの壁内の切り込みによって達成され得る。
【0047】
別の実施形態では、クラスプは、複数のリーフを形成する複数の切り込みを有する円板であってよい。複数のリーフは、円板の平面から外へ回転し得る。
図6は、例えば、複数のリーフ630を形成する複数の切り込み620を備えるクラスプ610を例示している。クラスプ610の周は、損なわれることなく、リーフ620は、リーフ620がクラスプ610の平面から外へ回転したときにリーフ620がクラスプ610の真ん中を通り開チャネル640を出るように周の近くでクラスプ610に接続され得る。リーフ620は、物体(図示せず)が一方向に開チャネル640を通りクラスプ610の真ん中を通るときに、リーフ620が物体を圧迫し、物体が開チャネル610を通り反対方向に戻るのを妨げるか、又はその可能性を低減し得るように構成され得る。別の実施形態では、リーフ620は、開チャネル640を通過している物体(図示せず)と接触する領域のところに少なくとも1つのスパイク650を備え得る。したがって、通過する物体が貫通可能である場合、スパイク650は物体を貫通し、クラスプ610がクラスプ610を通過する物体を把持する能力を高め得る。
【0048】
図6にはクラスプ610が1つしか例示されていないが、クラスプ610がその中を通過する物体を把持し得る強さを高めるために複数のクラスプ610が一緒に使用されてよい。代替的に、単一のクラスプ610が複数の層のリーフ630を備え、それによってクラスプ610が中を通過する物体を把持し得る強さを高めるものとしてよい。そのような多層クラスプは、クラスプが接続される、バンドの一部が可撓性を有したままであるように可撓性を付与され得る。クラスプ610は、平らなシートからクラスプ610の形態を切断もしくは型抜きすることによって、又はチューブからクラスプ610の形態を切断しリーフ630を内向きに曲げることによって製造され得る。
【0049】
幾つかの実施形態において、クラスプは、複数のパネルから作られ得る。
図7A~
図7Bは、例えば、複数のパネル720を備えるクラスプ710を例示している。パネル720は、パネル720から突き出ている複数のスパイク730を備え得る。スパイク730は、互いに圧迫し合って、例えば、パネル720の間を通る、バンドを把持するものとしてよい。パネル720は、パネル720が互いに圧迫し合うことを引き起こす弾性コンポーネントによってエッジのところに接続され得る。パネル720は、自然に互いに平坦に圧迫し合うような可撓性を有していてよいが、
図7A~
図7Bの例を用いて例示されているように、湾曲形状に弾性的に変形され得る。
【0050】
クラスプ710は、パネル720とともにチューブから切断されてよく、パネル720をそのエッジのところで一緒に保持する弾性コンポーネントも同じチューブから切断され得る。パネル720から突き出るスパイク730は、パネル720の壁から切断され、内向きに曲げられ、突起スパイク730を形成し得る。スパイク730及び/又はパネル720は、内部チューブ(図示せず)をパネル720の間に置くことによって外向きにクラスプ710の開放構成に弾性的に変形され得る。内部チューブを取り外した後、スパイク730及びパネル720は閉鎖構成に戻るものとしてよく、その際に、スパイク730はパネル720に垂直に突き出て、パネル720は互いに圧迫し合うものとしてよい。
【0051】
他の実施形態において、クラスプは、リングからなるものとしてよく、スパイクがリングから突き出ている。
図7C~
図7Dは、例えば、リング750を備え、複数のスパイク760がリング750から突き出ている、クラスプ740を例示している。閉鎖構成(その例は
図7C~
図7Dに示されている)では、スパイク760は、リング750の内側の一部(
図7C)又は全部(
図7D)を横切るものとしてよい。開放構成では、スパイク760はリング750の平面から外に回転されてよく、バンドなどの物体がリング750の中心を通過することを可能にし得る。スパイク760は、閉鎖構成の方へ付勢されるものとしてよく、乳頭筋の周りのバンドの位置決め及び調整の際に弾性的に回転されて開放構成をとり得る。次いで、スパイク760は、クラスプアクチュエータによる作動後に閉鎖構成に戻ることを許され得る。代替的に、スパイク760は、開放構成へ付勢されるものとしてよく、クラスプアクチュエータによって作動された後に閉鎖構成に強制的に曲げられ得る。幾つかの実施形態において、スパイク760は、スパイク760がリング750の平面を越えて回転し得ないように閉鎖構成でリング750又はリング750から延在する突起部(図示せず)に当たって静止するように構成され得る。
【0052】
上で説明されているように、クラスプは、クラスプアクチュエータによる作動後に閉鎖構成に係止され得る。本開示の幾つかの実施形態において、クラスプアクチュエータは、心臓の外からなど、離れた場所からクラスプを作動させることを可能にするように構成され得る。他の実施形態において、クラスプアクチュエータは、患者の身体の外からクラスプを作動することを可能にするように構成され得る。したがって、クラスプアクチュエータは、使用者がクラスプから遠い場所からクラスプを作動させることを可能にするように構成され得る。
【0053】
図8は、例えば、使用者が身体830の外からクラスプ840を作動することを可能にし得るクラスプアクチュエータ800を例示している。クラスプアクチュエータ800は、身体の外から心臓の内部に配置されているクラスプを作動させるためにプルワイヤ、回転シャフト、回転チューブ、移動可能シャフト、移動可能チューブ、電気的アクチュエータ、空気圧式アクチュエータ、油圧式アクチュエータ、又は離れた場所から作動させる他の任意の手段を含むものとしてよい。例えば、クラスプアクチュエータ800は、身体830の外から軟性カテーテル820を介してクラスプ840の作動を可能にするように構成され得る。幾つかの実施形態において、クラスプアクチュエータ800は、心臓の内側に配置されたクラスプ840を作動させるために使用できる身体830の外に配置されているトリガー810をさらに備え得る。
【0054】
本開示の幾つかの実施形態において、バンドの第1の端部は、乳頭筋の周りをバンドで取り囲むために送達デバイス上に装着され得る。送達デバイスは、デバイス内にクラスプアクチュエータの一部又は全部を組み込むものとしてよい。さらに、送達デバイスは、硬質又は可撓性チューブを備え得る。代替的に、送達デバイスは、硬質部分と可撓性部分とを有するチューブを備え得る。送達デバイスは、乳頭筋の周りにループを形成するように構成されているバンドの側壁を通過するチューブ又は導管を備え得る。
【0055】
例えば、
図9は、バンド970の第1の端部980の近くに接続された例示的な送達デバイス910を例示している。バンド970は、バンド970の側壁上に開口部930を備えるものとしてよく、この開口部930を取り外し可能な送達デバイス910が通過し得る。送達デバイス910は、送達デバイス910の一部が第1の端部980の近傍のバンド970の一部の中にあるように第1の端部980の近傍のバンド970の壁を通過し得る。バンド970内に送達デバイス910を含むバンド970の部分、例えば、バンド970の第1の端部980から送達デバイス910がバンド970の開口部930を通過する場所までの距離は、約5mmから約25mmの範囲内にあるものとしてよい。例えば、距離は、約10mmから約15mmまでの範囲内にあるものとしてよい。幾つかの実施形態において、クラスプ940は、バンド970の第1の端部980から25mm、15mm、10mm、又は5mmの範囲内に配置されるものとしてよい。クラスプ940は、中に送達デバイス910を有するバンド970の部分内に配置され得る。幾つかの実施形態において、クラスプと係合するクラスプ作動メカニズムのコンポーネント、例えば、プルワイヤ又はクラスプリテーナリングは、バンド970内にある送達デバイス910の部分内に配置され得る。クラスプ940は、送達デバイス910の一端に配置されるものとしてよい。送達デバイス910の他端は、患者の身体の外に配置されるものとしてよい。他の実施形態では、クラスプ作動メカニズムは、送達デバイス910を通過し得る細長部材を備え得る。
【0056】
送達デバイス910は、送達デバイス910が可撓性を有する及び/又は能動的に偏向可能であってよいバンド970の開口部930を通過する場所の近傍の領域をさらに含み得る。偏向可能な領域920の偏向は、少なくとも0度から90度までの間で制御可能であるものとしてよい。幾つかの実施形態において、送達デバイス910は、送達デバイス910の両端から突き出ている挿入ケーブル通し器960をさらに備え得る。送達デバイス910の一端から突き出ている通し器960の一端は、バンド970に結合されている挿入ケーブル(図示せず)を把持するように構成されている把持器950を備え得る。幾つかの実施形態において、把持器950は、バンド970に結合されている挿入ケーブルを取り外し可能に把持し得る。送達デバイス910の他端から突き出る、通し器960の他端は、送達デバイス910を通して挿入ケーブル(図示せず)を引くために引かれるように構成され得る。挿入ケーブルは、送達デバイス910に引き通された後に通し器960から解放され得る。
【0057】
幾つかの実施形態において、バンドに結合されている挿入ケーブルは、バンドを心臓の内部に挿入するのを補助するために用意され得る。例えば、
図10は、バンド1010に結合されている挿入ケーブル1050を備えるデバイス1000を例示している。挿入ケーブル1050は、バンド1010を心臓の内部及び乳頭筋の周りに挿入するのを補助するものとしてよい。幾つかの実施形態において、挿入ケーブル1050は、バンド1010をクラスプ1040に挿入するのを補助し得る。
【0058】
本開示の実施形態により、挿入ケーブル1050の遠位端は、バンド1010の第2の端部1030に取り外し可能に接続され得る。挿入ケーブル1050は、乳頭筋を取り囲むバンド1010によって形成されるループのサイズを調整するように構成され得る。挿入ケーブル1050は可撓性を有するものとしてよく、挿入ケーブル1050は、バンド1010を乳頭筋の周りに誘導してループを形成するのを補助し得る。挿入ケーブル1050の近位端は、乳頭筋と心室の壁との間の小柱の間の空間を通過するように構成され得る。さらに、挿入ケーブル1050は、クラスプ1040が開放構成をとったときにバンド1010の第1の端部1020に嵌合し、クラスプ1040を通るか、又はそれを通り越すものとしてよい。代替的に、挿入ケーブル1050は、バンド1010の第1の端部1020内に配置され得る送達デバイス(その一例は
図9に示されている)の遠位端内に嵌合し得る。
【0059】
代替的な一実施形態において、挿入ケーブル1050は、挿入ケーブル1050の近位端に、又はその近くに配置された挿入ケーブル解放トリガー(図示せず)をさらに備え得る。挿入ケーブル1050の遠位端は、挿入ケーブル解放トリガーの作動後にバンド1010の第2の端部1030から分離するように構成され得る。幾つかの実施形態において、挿入ケーブル解放トリガーは、挿入ケーブル1050の解放を作動させるために、引かれるか、押されるか、回転されるか、又は他の何らかの方法で操作される挿入ケーブル1050の管腔を貫通するワイヤ又はチューブ(図示せず)の近位端であってよい。
【0060】
バンド1010は、挿入ケーブル1050に解放可能に接続され得る。例えば、挿入ケーブルは、挿入ケーブルアダプタ1060を用いてバンド1010に解放可能に接続され得る。挿入ケーブルアダプタ1060は、バンド1010の第2の端部1030に取り付けられ得る。他の実施形態において、挿入ケーブルアダプタ1060は、バンド1010の第2の端部1030に恒久的に取り付けられるものとしてよく、挿入ケーブル1050は、挿入ケーブルアダプタ1060に取り外し可能に取り付けられ得る。
【0061】
幾つかの実施形態において、バンドの少なくとも一部はチューブ内に事前装填されてよい。例えば、
図11は、チューブ1120内に事前装填されたバンド1110の少なくとも一部を例示している。代替的に、バンド1110の少なくとも一部、これに取り付けられた挿入ケーブル1170の少なくとも一部、及び取り付けられた送達デバイス1180の少なくとも一部は、チューブ1120内に事前装填されてよい。
【0062】
図10を再び参照すると、バンド1010、送達デバイス(図示せず)、及び挿入ケーブル1050は、経胸腔的アプローチ、経動脈的アプローチ、経静脈的アプローチ、経動脈的/経大動脈的アプローチ、経静脈的/経中隔的/経僧帽弁的アプローチ、又は心臓への任意の他の外科的もしくは低侵襲性のアプローチを介して心臓の内部に挿入するように構成され得る。
【0063】
幾つかの実施形態において、クラスプ1040は、バンド1010の第1の端部1020のところ、又はその近くに取り付けられてよく、バンド1010がクラスプ1040を通過するか、又は通り越す場所でバンド1010を把持するように構成され得る。したがって、所望の円周を有するループを形成するために必要なバンド調整の量は、クラスプ1040の長さと無関係であるものとしてよい。
【0064】
上で説明されているように、クラスプ1040は、バンド1010の第1の端部1020のところに、又はその近くに取り付けられるものとしてよく、バンド1010の第2の端部1030のところに、もしくはその近くに、又はバンド1010に沿った任意の場所に、配置されている把持可能なコンポーネント又は特徴を把持するように構成され得る。他の実施形態では、複数の把持可能なコンポーネント又は特徴は、バンド1010に沿った複数の場所に配置されてよい。クラスプ1040は、複数の場所で、又はクラスプ1040の長さに沿った任意の場所で把持可能なコンポーネントもしくは特徴を把持するように構成され得る。幾つかの実施形態において、所望の円周を有するループを形成するために必要なバンド調整の量は、把持可能なコンポーネントもしくは特徴が把持されるべきクラスプ内にある必要があり得るのでクラスプ1040の長さ及び把持可能なコンポーネントもしくは特徴の場所の数に依存し得る(この一例は
図1A~
図1Cに示されている)。
【0065】
幾つかの実施形態において、クラスプ1040は、この把持を達成する際にバンド1010それ自体の材料と相互作用し得る。他の実施形態において、クラスプ1040が把持し得るバンド1010内の、又はバンド1010上の場所にコンポーネントもしくは特徴があり得る。クラスプ1040が把持し得る把持可能なコンポーネント又は特徴は、バンド1010の第2の端部1030の位置に関して移動可能であってよい。
【0066】
クラスプ1040は、接着剤もしくは粘着剤を使用してバンド1010の第1の端部1020のところ、又はその近くでバンド1010の壁に取り付けられ得る。それに加えて、又は代替的に、クラスプ1040は、バンド1010の壁への融解もしくは熱接着を使用して、バンド1010の壁への縫合せ、縫綴じ、もしくは縫付け(suturing, stitching, or sewing)を使用して、バンド1010の壁にクラスプ1040を結合するクラスプ要素を使用して、又はバンド1010の壁にクラスプ1040を取り付けることができる任意の他の取り付け方法もしくは取り付け方法の組合せを使用して取り付けられ得る。
【0067】
例えば、
図11は、バンド1110の第2の端部1150のところに、又はその近くに複数の把持可能なコンポーネント1130を備えるバンド1110を例示している。把持可能な要素1130は、物体、プラスチック、金属、及び/又はポリマーから作られた軟質もしくは硬質のボール、突起部、スパイク、又はクラスプによって把持できる任意の材料であってよい。バンド1110の第1の端部1160のところに、又はその近くに、把持可能なコンポーネント1130のうち少なくとも1つを把持するように構成されているクラスプ1140が設けられ得る。バンド1110の第2の端部1150は、バンド1110の第1の端部1160に引き通されるものとしてよい。次いで、クラスプ1140は、好ましくは患者の固有の解剖学的構造に基づき、所望の円周を有するループを形成するためにクラスプアクチュエータによる作動の後に開放構成から閉鎖構成に遷移し把持可能なコンポーネント1130のうち少なくとも1つを把持するように構成され得る。
【0068】
図1A~
図1Bを再び参照すると、幾つかの実施形態において、送達デバイス190の遠位端は、送達デバイス190の外部チューブ内にクラスプリテーナリング165を備え得る。外部チューブの遠位端は、クラスプ150の近位に配置され、クラスプ150が外部チューブに嵌合できないような直径を有するものとしてよい。クラスプリテーナリング165は、外部チューブの遠位端を超えて遠位に延在し、クラスプ150内に位置決めされてよく、クラスプ150を開放構成に保持する(その一例は
図1Aに例示されている)。したがって、クラスプ150は閉鎖構成の方へ付勢されるものとしてよく、クラスプ160内に配置されているクラスプリテーナリング165によって開放構成に保持され得る。クラスプ150の作動は、クラスプリテーナリング165がクラスプ150内から外部チューブ内に引き込まれるようにクラスプリテーナリング165を外部チューブに関して近位に引き、それによってクラスプ150が閉鎖構成に戻ることを可能にすることを含み得る(その一例は
図1Bに例示されている)。それに加えて、又は代替的に、プルワイヤ又はプルチューブは、クラスプリテーナリング165に接続されてよく、送達デバイス190を通り送達デバイス190の近位端まで引き回され得る。送達デバイス190の近位端において、プルワイヤ又はプルチューブは、クラスプリテーナリング165を外部チューブ内に引き込むためにプルワイヤを送達デバイス190に関して近位に引き得るトリガーに接続されるものとしてよい。クラスプ150の作動後、送達デバイス190はバンド110から取り外されてよい。
【0069】
幾つかの態様において、挿入ケーブル(その一例は
図10に示されている)はチューブを含むものとしてよく、ワイヤがそのチューブ内に配置されている。チューブの遠位端は、チューブの壁を複数のフラップに分割する縦スリットを有するものとしてよい。フラップは、ワイヤがチューブの内側にあるときに、チューブの遠位端が直径がチューブの外径と同じである孔を通して嵌合できないように遠位先端部のところで厚くなっている壁を有するものとしてよい。しかしながら、ワイヤがチューブの遠位端から取り外されたときに、チューブの遠位端は直径がチューブの外径と同じである孔を通して嵌合することができるものとしてよい。他の実施形態では、フラップを外向きに保持するワイヤの遠位領域は、ワイヤの残り部分よりも大きい直径を有し得る。幾つかの態様において、チューブは遠位端のところに中実チューブ状領域を有するコイルであってよい。コイルは、圧縮を回避するようにきつく巻かれるものとしてよく、伸長を回避するために両端で接続されているコイルを通して引き回されるワイヤ又はリボンを有し得る。
【0070】
本開示の一実施形態により、フラップは、遠位端の近傍のチューブの壁を切り開くことによって形成され得る。フラップの遠位先端部の壁の厚みは、フラップの遠位先端部を1回又は複数回それ自体の上に折り返すことによって形成され得る。フラップを形成するのに使われる挿入ケーブルのチューブの遠位部分は、金属、ポリマー、もしくはプラスチック、又は厚くなっている壁を有するフラップに形成できる他の任意の材料から作られ得る。
【0071】
他の態様において、フラップは、厚くなっている部分の前で半径方向外向きの段を有するものとしてよい。したがって、挿入ケーブルは、フラップを外向きに保持しているワイヤに過剰な力を加えることなく直径がチューブの外径と同じである孔を通過することを許され得ない。それに加えて、又は代替的に、フラップは、ワイヤがフラップを含むチューブの領域に配置されていないときにフラップが内向きに曲がり得るように半径方向内向きに付勢されるものとしてよく、チューブは、直径がチューブの外径と同じである孔を自由に通過してよい。
【0072】
図10を再び参照すると、挿入ケーブルアダプタ1060が、バンド1010の第2の端部1030に取り付けられ得る。挿入ケーブルアダプタは、例えば、その中を通る、直径が挿入ケーブル1050のチューブの外径に等しいか、又はわずかに大きいチャネル(図示せず)を有し得る。チャネルの領域は、内側にワイヤを備えるチューブの遠位端と嵌合する十分に大きい直径を有し得る。チューブの直径、チューブの遠位端で厚くなっているフラップ、ならびにアダプタ内のチャネルの狭い及び広い領域は、外部チューブがアダプタ内のチャネルの内側にあり、ワイヤがチューブの遠位端の内側にあるときに、チューブは、その遠位端がチャネルの狭い領域を通して嵌合できないのでアダプタ内に係止され得るように構成され得る。そのため、ワイヤがチューブの遠位端から取り外されたときに、チューブはアダプタから取り外され得る。ワイヤはチューブを貫通し、それに加えて又は代替的にチューブの近位端を超えて延在するものとしてよく、したがってワイヤは近位端から引かれることで、チューブの遠位端からワイヤを引き込み、挿入ケーブルをアダプタから脱着することができる。それに加えて、又は代替的に、ワイヤの近位端はプラーに取り付けられるものとしてよく、これはチューブの近位端に取り外し可能に取り付けられ得る。したがって、プラーが取り外され、チューブから引き離されると、プラーはワイヤをそれと一緒に引っ張り、それによってワイヤをチューブの遠位端から引っ込めるものとしてよい。幾つかの態様において、プラーは、チューブの遠位端上にねじ込まれるか、その中にねじ込まれることによってチューブの近位端に取り外し可能に取り付けられ得る。代替的に、プラーはチューブの遠位端になくてもよいが、遠位端の近傍のチューブの真ん中に配置され得る。
【0073】
幾つかの態様において、挿入ケーブルは、1つ又は複数のワイヤ、ファイバ、又は他の薄い細長要素がチューブの壁の孔を通って出て、挿入ケーブルアダプタ及びチューブの壁の孔を通ってチューブ内に戻ることによって挿入ケーブルアダプタに取り外し可能に接続され得る。ワイヤ、ファイバ、又は他の薄い細長要素は、チューブを貫通し、チューブの近位端のところで、又はその近くで引っ張られ、それらを孔から取り出し、それによって、挿入ケーブルと挿入ケーブルアダプタとの接続を解放するものとしてよい。挿入ケーブルは、バンドの第2の端部から挿入ケーブルを脱着するために切断される縫合糸、紐、ファイバ、又はワイヤであってよい。挿入ケーブルは、ネジが遠位端に付いている可撓性トルクケーブル又はトルクチューブであってよい。挿入ケーブルの遠位端のところのネジは、バンドの第2の端部に接続されている挿入ケーブルアダプタ内にねじ込まれ得る。したがって、挿入ケーブルの近位端を回すことで、挿入ケーブルの遠位端を、ネジを逆に回して挿入ケーブルアダプタから外し、バンドから脱着させ得る。他の実施形態では、可撓性トルクケーブル又はトルクチューブは可撓性編組チューブによって覆われ、その引張強さを高め得る。可撓性編組チューブは、細い編組紐内に作り込まれ、トルクケーブル又はトルクチューブを覆って引張強さを高めるために使用できる金属、ポリマー、絹、又は他の任意の生体適合性材料から作られ得る。
【0074】
本開示の別の実施形態により、心臓インプラントが提供される。心臓インプラントは、チューブの側壁に開口部を有するチューブと開口部を通過する取り外し可能な導管とから形成される乳頭バンドを備え得る。心臓インプラントは、それに加えて、バンドと関連付けられているクラスプを備えるものとしてよい。クラスプは、取り外し可能な導管を通過する、細長部材によって作動されるように構成され得る。作動後、クラスプは、バンドに沿った2つの場所を互いにくっつけてバンドをループに形成し得る。クラスプは導管の遠位端に配置されてよく、導管の近位端は患者の身体の外に配置されてよい。取り外し可能な導管は、クラスプの作動後にチューブから取り外されるように構成され得る。
【0075】
上で説明されているように、バンドは、乳頭筋の非対向面と接触するように構成され得る。バンドは、複数の乳頭筋又は乳頭筋の群を取り囲むように構成されてよく、それによって、乳頭筋を互いの方へ引き、バンドのどの部分も乳頭筋の間に挟装されないようにする(その一例は
図3に示されている)。
【0076】
本開示の別の実施形態により、心臓インプラントが提供される。心臓インプラントは、第1の端部と第2の端部とを有し、第1の端部が第2の端部から切断される細長構成と、バンドがループに形成されるループ構成との間で選択的に構成可能である乳頭バンドを備え得る。心臓インプラントは、バンドの第2の端部よりもバンドの第1の端部に近い、バンドに取り付けられているクラスプをさらに備え得る。インプラントは、バンドの第2の端部に取り外し可能に接続されている細長挿入ケーブルをさらに備え得る。乳頭バンドは、乳頭筋の群を同時に取り囲むループを形成するように構成されるものとしてよく、細長挿入ケーブルは、ループのサイズを調整するように構成され得る。バンドは、乳頭筋の非対向部分と接触するように構成され得る。バンドは、複数の乳頭筋を取り囲むように構成されてよく、それによって、複数の乳頭筋を互いの方へ引き、バンドのどの部分も乳頭筋の間に挟装されないようにする。幾つかの実施形態において、クラスプは、2つの構成-開放構成と閉鎖構成-との間で選択的に構成可能であるものとしてよい。開放構成では、挿入ケーブル及びバンドの第2の端部はクラスプを通過し得る。閉鎖構成では、クラスプを通過するバンドの領域は、バンドがクラスプに関して移動できないように適所に保持され得る。
【0077】
本開示の別の実施形態によれば、バンドは、作動可能クラスプを備えるスリングと、作動可能クラスプの内部に向かって滑動して入るように構成されている複数の係止セグメントとを具備し得る。例えば、
図12に示されているように、バンドは、スリング1200と、複数の係止セグメント1210とを備え得る。各係止セグメント1210は、張出領域1220と傾斜領域1230とを備え得る。隣接する係止セグメント1210は、互いに関して屈曲するように構成され、それによって隣接する傾斜領域1230が互いに協働することを可能にし、係止セグメント1210が
図2のクラスプ240及び/又は
図11のクラスプ1140などの作動可能クラスプの内部に向かって滑動して入るのを円滑にし得る。
【0078】
図12に示されているように、傾斜領域1230では、各係止セグメント1210の半径は、スリング1200の一端1240からの距離の増大とともに大きくなり得る。したがって、傾斜領域1230では、係止セグメント1210の外側表面は、正の勾配を有し得る。対照的に、張出領域1220では、各係止セグメント1210の半径は、スリング1200の一端1240からの距離の増大とともに小さくなり得る。したがって、張出領域1220では、係止セグメント1210の外側表面は、負の勾配を有し得る。
【0079】
幾つかの実施形態において、作動可能クラスプなどのクラスプは、張出領域1220の小さくなる半径上で係止し得る。そのため、傾斜領域1230のより大きな正の勾配は、スリング1200をクラスプ内に引き込むのに必要な力を増大させ得る。したがって、係止セグメント1210の設計は、クラスプが係止することができる十分な張出を維持しながら傾斜領域1230の正の勾配を最小にする必要があり得る。
【0080】
本開示の幾つかの実施形態において、スリングが屈曲したときの隣接する係止セグメントの協働は、屈曲したスリングの内側に沿った張出の大きさを縮小し、それによって張出効果を低減し得る。例えば、
図13A及び
図13Bに示されているように、スリング1300が屈曲したときに、隣接する係止セグメント1310は互いに協働し、したがって、張出1320の大きさは、屈曲したスリング1300の内側1330に沿って縮小する。したがって、スリング1300が屈曲し、張出1320の大きさが縮小したときに、スリング1300は、クラスプをより容易に滑動させることができ得る。
【0081】
本開示の幾つかの実施形態によれば、係止セグメントは、円錐形であってもよい。例えば、
図14に示されているように、係止セグメント1410は、円錐形であってもよく、したがって、張出領域1420及び傾斜領域1430は、円錐形セグメント1410によって形成され得る。それに加えて、又は代替的に、複数の係止セグメント1410は、係止セグメント1410が互いに関して屈曲することを可能にする仕方で一緒に嵌るように構成された個別の係止部品を備え得る。例えば、複数の係止セグメント1410は、ボールインソケット継手1440、シリンダーインソケット継手、又は隣接セグメントを一緒に係止することができる任意の他の類似のタイプの継手と嵌合し、その一方でセグメントが少なくとも1つの平面内で互いに関して回転することを可能にし得る。
【0082】
幾つかの実施形態において、複数の係止セグメントは、バンド、スリング、ワイヤ、糸、紐、又はケーブル等に一列に並べられている。任意選択で、スペーサは、各係止セグメント間に配置され得る。例えば、
図15に示されているように、スリング1500は、係止セグメント1510間にスペーサ1520を入れてワイヤに一列に並べられた複数の係止セグメント1510を収容する。一連の複数の係止セグメント1510は、ワイヤに沿って移動できないようにワイヤに個別に結合され得る。幾つかの実施形態において、スペーサ1520は、隣接する係止セグメント1510の間でワイヤに一列に並べられている。幾つかの実施形態において、スペーサ1520は、幾つかの隣接する係止セグメント1510の間に一列に並べられるが、すべての隣接する係止セグメント1510の間において一列に並べられていなくても良い。幾つかの実施形態において、スペーサ1520は、ワイヤに結合され、係止セグメント1510を適所に保持してもよい。それに加えて、又は代替的に、複数の係止セグメント1510の最初と最後のものだけが、それらが一列に並べられたワイヤに結合されてもよい。したがって、複数の係止セグメント1510の最初と最後のものは、残りの係止セグメント1510を適所に保持するように構成され得る。さらに別の実施形態では、複数の係止セグメント1510は、ワイヤに結合されなくてもよい。むしろ、他のコンポーネントが、複数の係止セグメント1510の端部のところでワイヤに結合され、コンポーネントは、係止セグメント1510を適所に保持するように構成され得る。
【0083】
本開示の幾つかの実施形態によれば、複数の係止セグメントは、一体成形品として一体形成され得る。一体成形品は、係止セグメントに比べて可撓性の高い領域を含み得る。可撓性のより高い領域は、可撓性のより低い係止セグメントを接続し得る。幾つかの実施形態において、係止セグメントを接続する可撓性のより高い領域は、可撓性のより低い係止セグメントを作るために使用される材料と異なる材料から作られ得る。したがって、異なる領域の異なる柔軟性は、異なる機械的特性を有する異なる材料を使用する結果もたらされ得る。それに加えて、又は代替的に、可撓性領域及び係止セグメントを含む、係止セグメントのチェーン全体が、同じ材料から作られてよい。したがって、異なる領域の異なる柔軟性は、同じ材料の厚さが異なる結果もたらされ得る。例えば、可撓性のより高い領域は、材料の第1の厚さを備え、係止セグメントは、同じ材料の第2の厚さを備え得る。第2の厚さは、第1の厚さよりも大きくてもよい。すなわち、係止セグメントは、可撓性接続領域よりも厚くてよい。
【0084】
幾つかの実施形態において、係止セグメントの傾斜領域は、中空の内部を備え得る。例えば、
図16A及び
図16Bに示されているように、係止セグメント1600は、アンダーカットなどの、中空の内部1610を備え得る。中空の内部1610は、各係止セグメント1600が、係止セグメント1600のチェーンの中心線に関して回転することを可能にし得る。したがって、屈曲したスリングの内側の張出の大きさは、縮小され得る。例えば、
図13A及び
図13Bに関して説明されているように、複数の係止セグメントのスリングが屈曲すると、隣接する係止セグメントは、互いに協働し、それにより、屈曲したスリングの内側に沿って張出の大きさが縮小され得る。したがって、スリングは、クラスプをより容易に滑動させることができ得る。同様に、
図16Cは、まだ屈曲していない複数の係止セグメント1600のスリング1620を例示している。対照的に、
図16Dは、屈曲したスリング1620を例示している。
図16C及び
図16Dに示されているように、係止セグメント1600のスリング1620が屈曲したときに、屈曲したスリング1620の内側で張出1630の大きさが著しく縮小される。各係止セグメント1600の中空の内部1610は、スリング1620が屈曲したときに隣接する係止セグメント1600がよりよく互いに協働することを可能にし、したがって、張出の大きさのさらなる縮小を円滑にし得る。
【0085】
本開示の幾つかの実施形態において、係止セグメントの傾斜領域は、1つの平面でのみ又は1つの方向にのみ半径を拡大し得る。例えば、
図17に示されているように、係止セグメント1710の傾斜領域1700は、1つの平面でのみ半径を拡大し得る。傾斜領域1700が1つの平面でのみ半径を拡大するときに、張出効果は、不均一な曲げによる力の幾つかの可能な変動を除き、実質的に完全に排除され得る。それに加えて、傾斜領域1700が1つの平面でのみ半径を拡大するときに、クラスプの係止強度は、各係止セグメント1710の張出1720が各係止セグメント1710の厚さ内でも1つの平面でのみ拡大するので低下し得る。
【0086】
本開示の幾つかの実施形態において、バンドはチューブを備え、複数の係止セグメントはチューブの内側に配設され得る。例えば、
図18を見るとわかるように、複数の係止セグメントがチューブ1800の内側に配設され得る。チューブ1800は、クラスプがチューブ1800の外側表面上で閉じ、チューブ1800の内側に配設されている係止セグメントの張出領域にしっかり係止することができるように軟質可撓性材料から作られてもよい。幾つかの実施形態において、チューブ1800は、ePTFE、ダクロン、又は軟質で可撓性を有する他の任意の生体適合性材料から作られ得る。幾つかの実施形態において、チューブ1800の一端は、係止セグメントのチェーンの一端に接続され得る。他の実施形態において、チューブ1800の一端は、アダプタを通して係止セグメントのチェーンの一端に接続され得る。例えば、アダプタは、係止セグメントのチェーンの端部及びチューブ1800の端部に接続され、それにより、係止セグメントのチェーンをチューブ1800に接続し得る。さらに別の実施形態では、チューブ1800の中間にある場所が、係止セグメントのチェーンの別の端部に接続され得る。
【0087】
図19A~
図19Cは、それぞれ、ボール形状係止セグメント、円錐形状係止セグメント、及び中空円錐形状係止セグメントの屈曲チェーンの長さに沿った半径及び勾配を例示するグラフである。
図19Aに示されているように、例えば、上のグラフは、ボール形状係止セグメントの屈曲チェーンの内側の長さに沿った半径を例示している。下のグラフは、ボール形状係止セグメントの屈曲チェーンの長さに沿った最大勾配が約1.2mm/mmであることを例示している。対照的に、
図19Bは、円錐形状係止セグメントの屈曲チェーンの長さに沿った半径(上のグラフ)及び勾配(下のグラフ)を例示している。ボール形状係止セグメントの屈曲チェーンの長さに沿った最大勾配と比較して、円錐形状係止セグメントの屈曲チェーンの長さに沿った最大勾配は、約0.4mm/mmに縮小される。したがって、円錐形状係止セグメントは、最大勾配を約1.2mm/mmから約0.4mm/mmに小さくすることによってボール形状係止セグメントに対する改善をもたらし得る。
【0088】
同様に、
図19Cは、中空円錐形状係止セグメントの屈曲チェーンの長さに沿った半径(上のグラフ)及び勾配(下のグラフ)を例示している。ボール形状係止セグメントの屈曲チェーンの長さに沿った最大勾配及び円錐形状係止セグメントの屈曲チェーンの長さに沿った最大勾配と比較して、中空円錐形状係止セグメントの屈曲チェーンの長さに沿った最大勾配は、約0.17mm/mmまでさらに小さくなる。したがって、中空円錐形状係止セグメントは、最大勾配を約0.17mm/mmに減らし得るが、これはボール形状係止セグメント及び円錐形状係止セグメントの両方よりも小さい。中空円錐形状係止セグメントは、また、中空円錐形状セグメントが比較的小さな半径を有し得る点でも異なり得るが、これは特にスリングが締め付けられるにときに張力が増大する場合に係止セグメントのチェーンをクラスプ内に引き込むのに必要な力を減少させ得る。
【0089】
本開示の別の実施形態によれば、中空円錐形状係止セグメントは、凹部を備えてもよい。例えば、
図20A及び
図20Bに示されているように、中空円錐形状係止セグメント2010は、凹部2020を備え得る。中空円錐形状係止セグメント2010は、
図14のボールインソケット継手1440などのボールインソケット継手を備え得る。幾つかの実施形態において、
図20A及び
図20Bを見るとわかるように、凹部2020は、スリング2000が屈曲したときに、スリング2000の内側に沿って張出が少ない又は全くない滑らかな表面を形成するために隣接する係止セグメント2010が互いに整列することを可能にし得る。したがって、係止セグメント2010が凹部2020を介して互いに整列されるときに、中心線からの半径は、ゼロの正の勾配で一定であってあり、それによって、隣接する係止セグメント2010間の角度に起因する力の可能な変動を除き、張出効果をなくすか、又は低減し得る。
【0090】
幾つかの実施形態において、中空円錐形状係止セグメントは、各係止セグメント間にスペーサを入れてバンド、スリング、ワイヤ、糸、紐、又はケーブル等に一列に並べられている。例えば、
図21に示されているように、中空円錐形状係止セグメント2110は、各隣接する係止セグメント2110間にスペーサ2120を入れてバンド2100に一列に並べられている場合がある。
図20A及び
図20Bの中空円錐形状係止セグメント2010と同様に、中空円錐形状係止セグメント2110は、凹部2130を備え得る。凹部2130は、スリング2100が屈曲したときに、スリング2100の内側に沿って張出が全くない滑らかな表面を形成するために隣接する係止セグメント2110が互いに整列することを可能にし得る。したがって、係止セグメント2110が凹部2130を介して互いに整列されるときに、中心線からの半径は、ゼロの正の勾配で一定であってあり、それによって、隣接する係止セグメント2110間の角度に起因する力の可能な変動を除き、張出効果をなくすか、又は著しく低減し得る。
【0091】
本開示の別の実施形態によれば、デバイスを可視化する改善された方法が開示されている。例えば、身体内の経カテーテルデバイスの操作及び作動は、一般的に、蛍光透視を使用する可視化によって案内される。したがって、蛍光透視を使用する経カテーテルデバイスの可視化を支援するために、放射線不透過性マーカーが使用され得る。放射線不透過性マーカーは、蛍光透視画像上で高いコントラストで出現し、経カテーテルデバイスの位置、配向、及び/又は相対位置が明確に可視化され得るように重要な配置で経カテーテルデバイスに取り付けられ得る。
【0092】
幾つかの実施形態において、放射線不透過性マーカーは、バンドのコンポーネント上、バンド上、又はバンド送達デバイス上の1つ又は複数の配置で配設され得る。放射線不透過性マーカーは、例えば、経カテーテル乳頭筋バンド又は心室バンドの位置決め及び配備を支援し得る。本開示の幾つかの実施形態において、放射線不透過性マーカーは、バンドが展開のために適切に位置決めされていることを視覚的に確認することによって経カテーテルバンドの位置決めを支援し得る。例えば、ループを形成するためにバンドに沿った位置に係止するその第1の端部のところで作動可能なクラスプなどのクラスプを含むバンドについては、バンドの第2の端部がクラスプ内に十分に挿入されていることの視覚的確認が必要になり得る。したがって、バンドの第2の端部がクラスプに十分に挿入される前にクラスプがたまたま作動してしまうことが回避され得る。
【0093】
別の実施形態では、放射線不透過性マーカーは、クラスプ作動が生じたことを視覚的に確認することによって、経カテーテルバンドの配備を支援し得る。例えば、クラスプリテーナの後退によって作動するクラスプを備えるバンドについては、クラスプが作動して適所に係止されていることをユーザに確信させるためにクラスプリテーナが実際にクラスプから後退したことの視覚的確認が必要になり得る。
【0094】
本開示のさらに別の実施形態では、バンド送達デバイスは、その遠位端のところに放射線不透過性マーカーを備え得る。放射線不透過性マーカーは、バンド内に配設されたクラスプに隣接していてもよく、バンドは、その第2の端部のところに別の放射線不透過性マーカーを備えてもよい。したがって、バンドの第2の端部上の放射線不透過性マーカーがバンド送達デバイスの遠位端の放射線不透過性マーカーを通るときに、これは、バンドの第2の端部が、クラスプが作動され得るように十分にクラスプに通されて挿入されているという確認をもたらし得る。
【0095】
本開示の幾つかの実施形態において、バンド送達デバイスは、バンドのクラスプに隣接する、その遠位端のところに放射線不透過性マーカーを備え、バンドの第2の端部に取り付けられ得る、バンド挿入ケーブルは、挿入ケーブルをバンドに取り付ける位置の近くに放射線不透過性マーカーを備え得る。したがって、挿入ケーブル上の放射線不透過性マーカーが送達デバイスの遠位端の放射線不透過性マーカーを通過するときに、これは、バンドの第2の端部が、クラスプが作動され得るように十分にクラスプに通されて挿入されているという確認をもたらす。
【0096】
本開示の幾つかの実施形態において、送達デバイスは、クラスプリテーナ上に放射線不透過性マーカーを備え、バンドは、その第2の端部のところに放射線不透過性マーカーを備え得る。したがって、バンドの第2の端部上の放射線不透過性マーカーがクラスプリテーナ上の放射線不透過性マーカーを通過するときに、これは、バンドの第2の端部が、クラスプが作動され得るように十分にクラスプに通されて挿入されるという確認をもたらし得る。
【0097】
本開示の幾つかの実施形態において、バンド送達デバイスは、クラスプリテーナ上に放射線不透過性マーカーを備え、バンドの第2の端部に取り付けられ得る、バンド挿入ケーブルは、挿入ケーブルをバンドに取り付ける位置の近くに放射線不透過性マーカーを備え得る。したがって、挿入ケーブル上の放射線不透過性マーカーがクラスプリテーナ上の放射線不透過性マーカーを通過するときに、これは、バンドの第2の端部が、クラスプが作動され得るように十分にクラスプに通されて挿入されるという確認をもたらす。
【0098】
本開示の幾つかの実施形態において、バンド送達デバイスは、クラスプリテーナ上に放射線不透過性マーカーを備え、送達デバイスの遠位端上に第2の放射線不透過性マーカーを備え得る。それに加えて、又は代替的に、放射線不透過性マーカーは、リテーナがクラスプ内にあるときに、放射線不透過性マーカーが蛍光透視画像内に単一のマーカーのように見える(例えば、互いに重なる)ように整列され得る。それに加えて、リテーナがクラスプから引っ込められたときに、マーカーは、蛍光透視画像内に2つの別々のマーカーとして出現する(例えば、もはや互いに重なり合わない)。それに加えて、又は代替的に、放射線不透過性マーカーは、リテーナがクラスプ内にあるとき、放射線不透過性マーカーが蛍光透視画像内に蛍光透視画像内の2つの別々のマーカーとして出現し、リテーナがクラスプから引っ込められたときに、マーカーが互いに重なり合い、蛍光透視画像内で単一のマーカーとして出現するように整列され得る。幾つかの実施形態において、放射線不透過性マーカーは、円筒形バンドを含み得る。
【0099】
図22A~
図22Dを参照すると、例えば、放射線不透過性マーカーは、クラスプの作動を確認するために、送達デバイス上、クラスプリテーナ上、及びバンド上に配設されてよい。例えば、
図22Aに示されているように、放射線不透過性マーカー2200aは、送達デバイス2220の遠位端2210上に配設されてよく、放射線不透過性マーカー2200bは、クラスプリテーナ2230上に配設されてよく、放射線不透過性マーカー2200cは、バンド2250の第2の端部2240上に配設されてよい。
図22Aでは、放射線不透過性マーカー2200a及び2200bは、蛍光透視画像内に単一のバンドとして出現し、それによって放射線不透過性マーカー2200a及び2200bが整列され互いに重なり合っていることを示唆する。
図22Aの蛍光透視画像では、バンド2250の第2の端部2240上の放射線不透過性マーカー2200cは、送達デバイス2220の遠位端2210の外側に配置され、したがって、バンド2250の第2の端部2240は、クラスプリテーナ2230に関連付けられているクラスプをまだ通過していない。
【0100】
次に
図22Bを参照すると、放射線不透過性マーカー2200cは送達デバイス2220の放射線不透過性マーカー2200aを通過しており、送達デバイス2220の内側に配置されている。これは、バンド2250の第2の端部2240がクラスプに通されて挿入され、クラスプは作動され得ることを指示する。次に
図22Cの蛍光透視画像を参照すると、放射線不透過性マーカー2200a及び2200bは分離して見え、もはや互いに重なり合っていない。これは、クラスプリテーナ2230に関連付けられているクラスプが作動されており、したがって、バンド2250の一部に係止されていることを確認するものである。
図22Dを見るとわかるように、バンド挿入ケーブル2260がバンド2250から脱着されたときでも、放射線不透過性マーカー2200cは、バンド2250の第2の端部2240上に残っている。
【0101】
次に
図23A~
図23Dを参照すると、幾つかの実施形態において、放射線不透過性マーカーは、クラスプの作動を確認するために、送達デバイス上、クラスプリテーナ上、及びバンド挿入ケーブル上に配設され得る。例えば、
図23Aに示されているように、放射線不透過性マーカー2300aは、送達デバイス2320の遠位端2310上に配設されてよく、放射線不透過性マーカー2300bは、クラスプリテーナ2330上に配設されてよく、放射線不透過性マーカー2300cは、バンド挿入ケーブル2340上に配設されてよい。
図23Aでは、放射線不透過性マーカー2300a及び2300bは、蛍光透視画像内に単一のバンドとして出現し、それによって放射線不透過性マーカー2300a及び2300bが整列され互いに重なり合っていることを示唆する。
図23Aの蛍光透視画像において、バンド挿入ケーブル2340上の放射線不透過性マーカー2300cは、送達デバイス2320の遠位端2310の外側に配置され、それによって、バンド挿入ケーブル2340に取り付けられているバンド2350の端部は、クラスプリテーナ2330に関連付けられているクラスプをまだ通過していないことを指示する。
【0102】
次に
図23Bを参照すると、放射線不透過性マーカー2300cは送達デバイス2320の放射線不透過性マーカー2300aを通過しており、送達デバイス2320の内側に配置されている。これは、バンド挿入ケーブル2340に取り付けられているバンド2350の端部がクラスプに通されて挿入され、クラスプは作動され得ることを指示する。次に
図23Cの蛍光透視画像を参照すると、放射線不透過性マーカー2300a及び2300bは分離して見え、もはや互いに重なり合っていない。これは、クラスプリテーナ2330に関連付けられているクラスプが作動されており、したがって、バンド2350の一部に係止されていることを確認するものである。
図23Dを見るとわかるように、放射線不透過性マーカー2300cは、バンド2350の端部から脱着されており、バンド挿入ケーブル2340がバンド2350の端部から脱着されていることを示している。
【0103】
本出願は、本明細書では、乳頭筋の整復及び心臓機能の改善などの、特定の応用事例に使用されるカテーテル、バンド、及びガイドワイヤの例示的な実施形態を参照しつつ説明されているが、本明細書で説明されている実施形態はそれに限定されないことは理解されるべきである。当技術分野の通常の技能を有し、本明細書において提供される教示を利用できる者は、すべて開示されている実施形態の範囲内に収まる追加の修正形態、応用形態、実施形態、及び等価形態の置換形態を認識するであろう。したがって、開示されている実施形態は、前述の、又は次の説明によって制限されるものと考えられるべきでない。
【0104】
本開示の多くの特徴及び利点は、詳述されている明細から明らかであり、本開示の真の精神及び範囲内に収まる本開示のすべてのそのような特徴及び利点を対象とすることは付属の請求項によって意図されている。さらに、多数の修正形態及び変更形態は当業者にとって容易に思いつくので、本開示を例示され説明されている正確な構造及び動作に限定することは望ましくなく、したがって、すべての好適な修正形態及び等価形態が利用されてよく、これは本開示の範囲内に収まる。
【0105】
さらに、当業者であれば、本開示が基づく着想は、本開示の幾つかの目的を実施するために他の構造、方法、及びシステムを設計するための基礎として容易に使用され得ることを理解するであろう。したがって、請求項は、前述の説明によって制限されるものと考えられるべきでない。
【符号の説明】
【0106】
100 デバイス
110 バンド
120 第1の端部
130 第2の端部
140 突起要素
150 クラスプ
160 遠位端
165 クラスプリテーナリング
170 プルワイヤ
180 クラスプアクチュエータ
190 送達デバイス
200 デバイス
210 バンド
220 第2の端部
230 第1の端部
240 クラスプ
300 デバイス
310 バンド
320 クラスプ
330 小柱
340 乳頭筋
350 心室
410 熊罠タイプのクラスプ
420 クリップタイプのクラスプ
430 締め具タイプのクラスプ
440 自動ロック式ジップタイタイプのクラスプ
450 バックルタイプのクラスプ
460 締め具タイプのクラスプ
510 クラスプ
520 クラスプ
610 クラスプ
620 切り込み
630 リーフ
640 開チャネル
650 スパイク
710 クラスプ
720 パネル
730 スパイク
740 クラスプ
750 リング
760 スパイク
800 クラスプアクチュエータ
810 トリガー
820 軟性カテーテル
830 身体
840 クラスプ
910 送達デバイス
920 偏向可能な領域
930 開口部
940 クラスプ
950 把持器
960 挿入ケーブル通し器
970 バンド
980 第1の端部
1000 デバイス
1010 バンド
1020 第1の端部
1030 第2の端部
1040 クラスプ
1050 挿入ケーブル
1060 挿入ケーブルアダプタ
1110 事前装填されたバンド
1120 チューブ
1130 把持可能なコンポーネント
1140 クラスプ
1150 第2の端部
1160 第1の端部
1170 挿入ケーブル
1180 送達デバイス
1200 スリング
1210 係止セグメント
1220 張出領域
1230 傾斜領域
1240 一端
1300 スリング
1310 係止セグメント
1320 張出
1330 内側
1410 係止セグメント
1410 円錐形セグメント
1420 張出領域
1430 傾斜領域
1440 ボールインソケット継手
1500 スリング
1510 係止セグメント
1520 スペーサ
1600 係止セグメント
1610 中空の内部
1620 スリング
1630 張出
1700 傾斜領域
1710 係止セグメント
1720 張出
1800 チューブ
2000 スリング
2010 中空円錐形状係止セグメント
2020 凹部
2100 バンド、スリング
2110 中空円錐形状係止セグメント
2120 スペーサ
2130 凹部
2200a 放射線不透過性マーカー
2200b 放射線不透過性マーカー
2200c 放射線不透過性マーカー
2210 遠位端
2220 送達デバイス
2230 クラスプリテーナ
2240 第2の端部
2250 バンド
2260 バンド挿入ケーブル
2300a 放射線不透過性マーカー
2300b 放射線不透過性マーカー
2300c 放射線不透過性マーカー
2310 遠位端
2320 送達デバイス
2330 クラスプリテーナ
2340 バンド挿入ケーブル
2350 バンド
【外国語明細書】