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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115234
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/07 20060101AFI20240819BHJP
   H10N 59/00 20230101ALI20240819BHJP
   H10N 52/00 20230101ALI20240819BHJP
【FI】
G01R33/07
H10N59/00
H10N52/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020833
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三浦 丈征
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AB09
2G017AD53
2G017BA05
5F092AA14
5F092AB01
5F092AC02
5F092BA02
5F092BA11
5F092BA37
5F092DA04
5F092DA06
5F092DA07
5F092EA06
(57)【要約】
【課題】高精度なオフセットキャンセルが可能な縦型ホール素子を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、半導体基板2の第1の領域に設けられ、第1の直線L1-L1上に所定の間隔を置いて配置された電極111~115を有する第1の縦型ホール素子100と、電流源120と、第1のアンプ110と、開閉可能な第1の経路及び第2の経路と、を備えるセンサ信号伝送回路10と、半導体基板の第1の領域とは異なる第2の領域に設けられ、第1の直線L1-L1と平行な第2の直線L2-L2上に所定の間隔を置いて配置された電極211~215と同数の電極211~215を有する第2の縦型ホール素子200と、電流源220と、第2のアンプ210と、第1の経路及び第2の経路とは異なる開閉可能な第3の経路及び第4の経路と、を備えるセンサ信号伝送回路20とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1の領域に設けられ、第1の直線上に所定の間隔を置いて、第1の電極、第2の電極、第3の電極及び第4の電極の順に配置される少なくとも4個の電極を有する第1の縦型ホール素子と、
前記第1の縦型ホール素子を駆動する第1の駆動電源と、
前記第1の縦型ホール素子の前記第1の電極及び前記第3の電極と前記第1の駆動電源とをそれぞれ開閉可能に接続する一方、前記第1の縦型ホール素子の前記第2の電極及び前記第4の電極と前記第1の駆動電源とはそれぞれ非接続に形成された第1の経路と、
前記第1の縦型ホール素子からの出力電圧を増幅する第1のアンプと、
前記第1の縦型ホール素子の前記第2の電極及び前記第4の電極と前記第1のアンプとをそれぞれ開閉可能に接続する一方、前記第1の縦型ホール素子の前記第1の電極及び前記第3の電極と前記第1のアンプとがそれぞれ非接続に形成される第2の経路と、
を備え、前記第1のアンプから第1の出力信号を得る第1のセンサ信号伝送回路と、
前記半導体基板の前記第1の領域とは異なる第2の領域に設けられ、前記第1の直線と平行な第2の直線上に前記所定の間隔を置いて、第1の電極、第2の電極、第3の電極及び第4の電極の順に配置される少なくとも4個の電極を含む前記第1の縦型ホール素子の電極と同じ数の電極を有する第2の縦型ホール素子と、
前記第1の駆動電源とは別に設けられ、前記第2の縦型ホール素子を駆動する第2の駆動電源と、
前記第2の縦型ホール素子の前記第2の電極及び前記第4の電極と前記第2の駆動電源とをそれぞれ開閉可能に接続する一方、前記第2の縦型ホール素子の前記第1の電極及び前記第3の電極と前記第2の駆動電源とはそれぞれ非接続に形成された第3の経路と、
前記第1のアンプとは別に設けられ、前記第2の縦型ホール素子からの出力電圧を増幅する第2のアンプと、
前記第2の縦型ホール素子の前記第1の電極及び前記第3の電極と前記第2のアンプとをそれぞれ開閉可能に接続する一方、前記第2の縦型ホール素子の前記第2の電極及び前記第4の電極と前記第2のアンプとがそれぞれ非接続に形成される第4の経路と、
を備え、前記第2のアンプから第2の出力信号を得る第2のセンサ信号伝送回路と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを加算する加算器をさらに備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記駆動電源は、電流源及び電圧源の何れか一方であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを加算する加算器と、
前記第1及び第2の駆動電源により前記第1及び第2の縦型ホール素子それぞれに流す電流の方向を第1の状態としたときに前記加算器から出力される第1の出力電圧を保持し、前記第1及び第2の駆動電源により前記第1及び第2の縦型ホール素子それぞれに流す電流の方向を第2の状態としたときに前記加算器から出力される第2の出力電圧と保持した前記第1の出力電圧とを加算または減算して、当該加算または減算結果を最終出力電圧として出力するサンプルホールド回路と、
一方の入力端子に前記最終出力電圧が入力され、他方の入力端子に所定の基準電圧が入力され、前記最終出力電圧と前記基準電圧とを比較した結果を出力信号として出力する比較器と、
をさらに備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の駆動電源と前記第2の駆動電源のうち少なくとも一方は、前記比較器の出力信号に応じてその電流値または電圧値が切り替えられる請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の駆動電源及び前記第2の駆動電源は、それぞれ、入力端と、出力端とを有し、
前記第1のアンプ及び前記第2のアンプは、それぞれ、第1の入力端子と、第2の入力端子とを有し、
前記第1の駆動電源の入力端と、前記第1の電極とを接続する第1のスイッチと、
前記第1の駆動電源の入力端と、前記第3の電極とを接続する第2のスイッチと、
前記第1の駆動電源の出力端と、前記第1の電極とを接続する第3のスイッチと、
前記第1の駆動電源の出力端と、前記第3の電極とを接続する第4のスイッチと、
前記第2の駆動電源の入力端と、前記第2の電極とを接続する第5のスイッチと、
前記第2の駆動電源の入力端と、前記第4の電極とを接続する第6のスイッチと、
前記第2の駆動電源の出力端と、前記第2の電極とを接続する第7のスイッチと、
前記第2の駆動電源の出力端と、前記第4の電極とを接続する第8のスイッチと、
前記第1のアンプの第1の入力端子と、前記第2の電極とを接続する第9のスイッチと、
前記第1のアンプの第1の入力端子と、前記第4の電極とを接続する第10のスイッチと、
前記第1のアンプの第2の入力端子と、前記第2の電極とを接続する第11のスイッチと、
前記第1のアンプの第2の入力端子と、前記第4の電極とを接続する第12のスイッチと、
前記第2のアンプの第1の入力端子と、前記第1の電極とを接続する第13のスイッチと、
前記第2のアンプの第1の入力端子と、前記第3の電極とを接続する第14のスイッチと、
前記第2のアンプの第2の入力端子と、前記第1の電極とを接続する第15のスイッチと、
前記第2のアンプの第2の入力端子と、前記第3の電極とを接続する第16のスイッチと、
を備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1のスイッチから前記第16のスイッチの開閉をそれぞれ制御する制御回路をさらに備える請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の縦型ホール素子と前記第2の縦型ホール素子とは、略同一構造を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、水平方向の磁界を検知する縦型ホール素子を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール素子は、磁気センサとして非接触での位置検知や角度検知が可能であることから様々な用途に用いられている。中でも半導体基板表面に対して垂直な磁界成分(垂直磁場)を検知する横型ホール素子を用いた磁気センサが一般に良く知られているが、半導体基板の表面に対して平行な磁界成分(水平磁場)を検知する縦型ホール素子を用いた磁気センサも各種提案されている。
【0003】
縦型ホール素子では、幾何学的な対称性の高い構造をとることが難しいため、磁界が印加されていないときにおいても出力される、いわゆるオフセット電圧が横型ホール素子以上に発生しやすい。そのため、磁気センサとして用いる場合には、かかるオフセット電圧を除去する必要があり、その方法として、スピニングカレント法が知られている。
【0004】
スピニングカレント法を用いて縦型ホール素子のオフセット電圧を除去する方法として、同様の構成の2つ(複数)の縦型ホール素子を並行に配置し、縦型ホール素子の電極の接続を切り替えて得られる信号を信号処理する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0210461号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数の縦型ホール素子が、同一基板上に半導体製造プロセスによって同時に形成されるとしても、不純物の濃度分布等を複数の縦型ホール素子間で完全に同一にすることは極めて難しい。このため、複数の縦型ホール素子間には特性ばらつきが生じることとなる。したがって、スピニングカレント法の実行時の各フェーズにおいて、電流経路の抵抗は完全には等しくならず、オフセットキャンセルの精度向上には限界がある。
【0007】
また、スピニングカレント法により、例えば四つの異なる電流方向の組み合わせで縦型ホール素子を駆動させる場合、理想的な電源を用いればスピニングカレントによりオフセットキャンセルが可能となる。ところが、実際の電源は特性にばらつきが存在するため、ホール素子を駆動させる能力にばらつきを生じてしまう。このため、より高精度なオフセットキャンセルが求められる場合、電源の特性ばらつきの影響も無視できない。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであり、より高精度に、スピニングカレント法によるオフセットキャンセルを実現可能な縦型ホール素子を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体装置は、半導体基板の第1の領域に設けられ、第1の直線上に所定の間隔を置いて、第1の電極、第2の電極、第3の電極及び第4の電極の順に配置される少なくとも4個の電極を有する第1の縦型ホール素子と、前記第1の縦型ホール素子を駆動する第1の駆動電源と、前記第1の縦型ホール素子の前記第1の電極及び前記第3の電極と前記第1の駆動電源とをそれぞれ開閉可能に接続する一方、前記第1の縦型ホール素子の前記第2の電極及び前記第4の電極と前記第1の駆動電源とはそれぞれ非接続に形成された第1の経路と、前記第1の縦型ホール素子からの出力電圧を増幅する第1のアンプと、前記第1の縦型ホール素子の前記第2の電極及び前記第4の電極と前記第1のアンプとをそれぞれ開閉可能に接続する一方、前記第1の縦型ホール素子の前記第1の電極及び前記第3の電極と前記第1のアンプとがそれぞれ非接続に形成される第2の経路と、を備え、前記第1のアンプから第1の出力信号を得る第1のセンサ信号伝送回路と、前記半導体基板の前記第1の領域とは異なる第2の領域に設けられ、前記第1の直線と平行な第2の直線上に前記所定の間隔を置いて、第1の電極、第2の電極、第3の電極及び第4の電極の順に配置される少なくとも4個の電極を含む前記第1の縦型ホール素子の電極と同じ数の電極を有する第2の縦型ホール素子と、前記第1の駆動電源とは別に設けられ、前記第2の縦型ホール素子を駆動する第2の駆動電源と、前記第2の縦型ホール素子の前記第2の電極及び前記第4の電極と前記第2の駆動電源とをそれぞれ開閉可能に接続する一方、前記第2の縦型ホール素子の前記第1の電極及び前記第3の電極と前記第2の駆動電源とはそれぞれ非接続に形成された第3の経路と、前記第1のアンプとは別に設けられ、前記第2の縦型ホール素子からの出力電圧を増幅する第2のアンプと、前記第2の縦型ホール素子の前記第1の電極及び前記第3の電極と前記第2のアンプとをそれぞれ開閉可能に接続する一方、前記第2の縦型ホール素子の前記第2の電極及び前記第4の電極と前記第2のアンプとがそれぞれ非接続に形成される第4の経路と、を備え、前記第2のアンプから第2の出力信号を得る第2のセンサ信号伝送回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数縦型ホール素子の特性を、当該縦型ホール素子を駆動させる電源の特性も含めて実質的に同一にした状態でスピニングカレント法を実行することができる。したがって、より高精度なオフセットキャンセルが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置(第1フェーズ)を説明するための概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置(第2フェーズ)を説明するための概略図である。
図3】III-III線(図1)に沿った断面に対応する断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置(第1フェーズ)を説明するための概略図である。
図5】本発明の第2の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置におけるアンプの構成を概略的に示した回路図である。
図6】本発明の第3の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置(第1フェーズ)を説明するための概略図である。
図7】第3の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の磁電変換特性を説明するための説明図である。
図8】第3の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の第2の構成例を説明するための概略図である。
図9】第3の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の第3の構成例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、説明中の上、下、左、右等の方向は、特段の説明がない限り、図示された状態を基準とした方向とする。図1等に示されるX,Y,Zは3軸直交座標系を構成する各軸を表している。
【0013】
[第1の実施形態]
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置としての半導体装置1を説明するための概略図である。より詳細には、図1は、スピニングカレント法の実行時において縦型ホール素子100及び200に流す電流の方向を第1の状態とした場合(第1フェーズ)を示し、図2は、スピニングカレント法の実行時において縦型ホール素子100及び200に流す電流の方向を第1の状態に対して逆方向である第2の状態とした場合(第2フェーズ)を示している。
【0014】
半導体装置1は、同一の半導体基板2に形成された、例えば2つ等の複数個のセンサ信号伝送回路10,20と、センサ信号伝送回路10,20の各出力信号を加算する加算器130とを備えている。図1及び図2において図示が省略されているが、半導体装置1は、第1の電源電圧を供給する電源端子と、第1の電源電圧とは異なる電源電圧であって、回路動作の基準となる電源電圧の一例として、0V(ゼロボルト)の電源電圧(以下、「接地電圧」と呼ぶ)を供給する接地端子を備えている。
【0015】
センサ信号伝送回路10は、縦型ホール素子100と、駆動電源としての電流源120と、アンプ110と、スイッチS11~S14と、スイッチS15~S18とを備えている。センサ信号伝送回路20は、縦型ホール素子200と、駆動電源としての電流源220と、アンプ210と、スイッチS21~S24と、スイッチS25~S28とを備えている。
【0016】
縦型ホール素子100及び200は、それぞれ図1に示される直線L1-L1上及び直線L2-L2上に所定の間隔を置いて配置された例えば5つの電極111~115及び電極211~215を備え、互いに略同一構造を有している。また、縦型ホール素子100及び200は、直線L1-L1と直線L2-L2とが互いに平行となるように配置されている。
【0017】
電流源120は、スイッチS11~S14を介して縦型ホール素子100が備えている電極111~115の一部である電極111、113及び115と開閉可能に接続される一方、電極111~115の他部である電極112及び114とは非接続に構成されている。すなわち、電流源120の入力端がスイッチS11を介して電極111及び115に接続され、スイッチS12を介して電極113に接続されている。電流源120の出力端がスイッチS13を介して電極111及び115に接続され、スイッチS14を介して電極113に接続されている。
【0018】
一方、電流源220は、スイッチS21~S24を介して縦型ホール素子200が備えている電極211~215の一部である電極212及び214と開閉可能に接続される一方、電極211~215の他部である電極211、213及び215とは非接続に構成されている。すなわち、電流源220の入力端がスイッチS21を介して電極212に接続され、スイッチS22を介して電極214に接続されている。電流源220の出力端がスイッチS23を介して電極212に接続され、スイッチS24を介して電極214に接続されている。
【0019】
ここで、縦型ホール素子100において電流源120と開閉可能に接続される電極111、113及び115と、縦型ホール素子200において電流源220と開閉可能に接続される電極212及び214との位置関係は、排他的な関係になっている。図1を参照して説明すれば、電流源120と開閉可能に接続される電極111、113及び115が左から1番目、3番目及び5番目であるのに対して、電流源220と開閉可能に接続される電極212及び214は、その残部である左から2番目及び4番目である。逆に、電流源120と非接続な電極112及び114が左から2番目及び4番目であるのに対して、電流源220と非接続な電極211、213及び215は、その残部である左から1番目、3番目及び5番目である。
【0020】
アンプ110は、スイッチS15~S18を介して縦型ホール素子100に接続されるように構成されている。すなわち、アンプ110の非反転入力端子(+)がスイッチS15を介して電極112に接続され、スイッチS16を介して電極114に接続され、アンプ110の反転入力端子(-)がスイッチS17を介して電極112に接続され、スイッチS18を介して電極114に接続されている。アンプ110と接続される電極112及び114以外の電極111、113及び115は、アンプ110とは非接続である。
【0021】
一方、アンプ210は、スイッチS25~S28を介して縦型ホール素子200に接続されるように構成されている。すなわち、アンプ210の反転入力端子(-)がスイッチS25を介して電極211及び215に接続され、スイッチS26を介して電極213に接続される。アンプ210の非反転入力端子(+)がスイッチS27を介して電極211及び215に接続され、スイッチS28を介して電極213に接続されている。アンプ210と接続される電極211、213及び215以外の電極212及び214は、アンプ210とは非接続である。
【0022】
縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とは、半導体製造プロセスによって同一半導体基板上に同時に形成されるものである。ここで、縦型ホール素子100及び200の構造の一例ついて図3を用いて説明する。図3は、図1に示される半導体装置のIII-III線に沿った断面に対応する断面図である。
【0023】
縦型ホール素子100及び200は、P型(第1導電型)の半導体基板101の領域RA及びRBにそれぞれ形成されている。領域RAと領域RBとは、半導体基板101上に設けられたN型(第2導電型)の半導体層102に形成されたP型の素子分離拡散層103によって互いに電気的に分離されている。縦型ホール素子100の電極111~115及び縦型ホール素子200の電極211~215は、領域RA及びRBそれぞれにおける半導体層102の表面に隣接して設けられた半導体層102よりも高濃度のN型の不純物領域により構成されている。
【0024】
図3には示していないが、図1及び図2に示す電流源120及び220、アンプ110及び210、並びにスイッチS11~S18及びS21~S28も、半導体基板101の領域RA及びRBとは別の領域に、素子分離拡散層103により縦型ホール素子100及び200と電気的に分離されて形成されている。
【0025】
なお、図3においては、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とをX(横)方向に並べて配置、すなわち、図1に示される直線L1-L1と直線L2-L2とが同一直線となるように配置した例を示しているが、これに限らず、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とは、直線L1-L1と直線L2-L2とが平行になるように配置されればどのような配置であっても構わない。例えば、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とをY(縦)方向に並べて配置、すなわち、図1及び図2において、縦型ホール素子100を紙面手前(表)側に、縦型ホール素子200を紙面奥(裏)側に配置しても構わない。さらに、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とは、必ずしも隣接して配置される必要はなく、例えば、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間に、電流源120及び220やアンプ110及び210等を配置することも可能である。
【0026】
次に、本実施形態の半導体装置における縦型ホール素子100及び200を用いて、スピニングカレント法によりオフセットキャンセルを行う方法(以下、「第1のオフセットキャンセル方法」と呼ぶ)について説明する。磁場は、図1及び図2に示される矢印Bの方向に印加されている。
【0027】
まず、図1に示すように、第1フェーズとして、縦型ホール素子100に接続されたスイッチS11、S14、S15及びS18、及び縦型ホール素子200に接続されたスイッチS21、S24、S25及びS28をオン(閉)にし、縦型ホール素子100に接続されたスイッチS12、S13、S16及びS17、及び縦型ホール素子200に接続されたスイッチS22、S23、S26及びS27をオフ(開)にする。各スイッチS11~S18及びS21~S28のオンとオフとの切り替えは、制御回路(図示省略)によって行われる。
【0028】
これにより、縦型ホール素子100には、電極113から両端の電極111及び115へ電流が流れるように電流源120から駆動電流が供給され(このときの電流の方向を「第1の電流方向」と呼ぶ)、電極112と電極114との間に電位差が生じる。スイッチS15及びS18がオンしており、アンプ110の非反転入力端子(+)が電極112に接続され、反転入力端子(-)が電極114に接続されていることから、アンプ110は、電極112と電極114との間の電位差を増幅して加算器130に出力する。
【0029】
縦型ホール素子200には、電極212から電極214へ電流が流れるように電流源220から駆動電流が供給され(このときの電流の方向を「第2の電流方向」と呼ぶ)、電極213と電極211及び215との間に電位差が生じる。スイッチS25及びS28がオンしており、アンプ210の非反転入力端子(+)が電極213に接続され、反転入力端子(-)が電極211及び215に接続されていることから、アンプ210は、電極213と電極211及び215との間の電位差を増幅して加算器130に出力する。
【0030】
加算器130は、アンプ110の出力信号とアンプ210の出力信号とを加算して、第1フェーズの出力電圧(以下、「出力電圧VOUT1」と呼ぶ)を出力端子131に出力する。出力電圧VOUT1は、サンプルホールド回路(図1,2において図示省略)等により保持される。
【0031】
次に、図2に示すように、第2フェーズとして、縦型ホール素子100に接続されたスイッチS12、S13、S16及びS17、及び縦型ホール素子200に接続されたスイッチS22、S23、S26及びS27をオン(閉)にし、縦型ホール素子100に接続されたスイッチS11、S14、S15及びS18、及び縦型ホール素子200に接続されたスイッチS21、S24、S25及びS28をオフ(開)にする。
【0032】
これにより、縦型ホール素子100には、両端の電極111及び115から電極113へ電流が流れるように、すなわち第1の電流方向とは逆方向に電流源120から駆動電流が供給され(このときの電流の方向を「第3の電流方向」と呼ぶ)、電極112と電極114との間に電位差が生じる。スイッチS16及びS17がオンしており、アンプ110の非反転入力端子(+)が電極114に接続され、反転入力端子(-)が電極112に接続されていることから、アンプ110は、電極114と電極112との間の電位差を増幅して加算器130に出力する。
【0033】
縦型ホール素子200には、電極214から電極212へ電流が流れるように、すなわち第2の電流方向とは逆方向に電流源220から駆動電流が供給され(このときの電流の方向を「第4の電流方向」と呼ぶ)、電極211及び215と電極213との間に電位差が生じる。スイッチS26及びS27がオンしており、アンプ210の非反転入力端子(+)が電極211及び215に接続され、反転入力端子(-)が電極213に接続されていることから、アンプ210は、電極211及び215と電極213との間の電位差を増幅して加算器130に出力する。
【0034】
加算器130は、アンプ110の出力信号とアンプ210の出力信号とを加算して、第2フェーズの出力電圧(以下、「出力電圧VOUT2」と呼ぶ)を出力端子131に出力する。
【0035】
そして、第2フェーズで得られた出力電圧VOUT2から第1フェーズで得られた出力電圧VOUT1を減算処理することによりオフセット電圧が除去された最終的な出力電圧(以下、「最終出力電圧」と呼ぶ)VOUTを得ることができる。
【0036】
ここで、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とは、同一半導体基板上に半導体製造プロセスによって同時に形成されるものの、不純物の濃度分布等を両者の間で完全に同一にすることは非常に困難である。このため、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間には特性ばらつきが生じている。
【0037】
そこで、本実施形態では、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とをそれぞれ別々の電流源120と電流源220とを用いて駆動する構成としている。かかる構成により、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200の駆動電流を別々に調整することができる。
【0038】
すなわち、予め電流源120の電流値と電流源220の電流値とを同一の電流値(以下、「初期電流値」と呼ぶ)とし、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200のそれぞれに同一方向、同一電流量の駆動電流を供給したときのそれぞれの出力電圧を測定する。そして、測定された両出力電圧の相違に基づき、これを補正するように、電流源120の電流値と電流源220の電流値を調整する。これにより、実質的に縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間の特性ばらつきを補償することができる。したがって、スピニングカレント法によるオフセットキャンセルを高精度に行うことが可能となる。
【0039】
なお、電流源120と電流源220の各電流値の調整は、例えば、電流源120の電流値を初期電流値からα増やし、電流源220の電流値を初期電流値からα減らして、トータルの電流値(駆動電流)が一定となるように調整することが好ましい。これにより、縦型ホール素子100及び200の出力側のアンプ110、210等の回路を調整する必要をなくすことができる。
【0040】
また、本実施形態では、縦型ホール素子100及び200の出力をそれぞれ別々のアンプ110及び210によって増幅する構成としていることにより、アンプ110及び210それぞれのゲインを調整することによって、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間の特性ばらつきを補償することも可能である。
【0041】
一方、図示は省略するが、縦型ホール素子100及び200の出力側を適宜結線し、出力電圧を1つアンプで増幅するように構成してもよい。この場合、上述のように2つのアンプ110及び210のゲインを調整することによる縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間の特性ばらつきの補償はできなくなるが、アンプを1つにできるため、回路規模を縮小することができる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、縦型ホール素子100及び200の各々で第1フェーズと第2フェーズとで駆動電流の方向を同一経路逆方向としているので、駆動電源としての電流源120及び220に特性ばらつきが生じていたとしても、当該特性ばらつきの影響を除去できる。すなわち、縦型ホール素子100及び200を駆動させる電流源120及び220の特性も含めて実質的に同一にした状態でスピニングカレント法を実行することができる。したがって、より高精度なオフセットキャンセルが可能となる。
【0043】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置としての半導体装置31(第1フェーズ)を説明するための概略図である。
【0044】
半導体装置31は、半導体装置1に対して、センサ信号伝送回路10,20の代わりにセンサ信号伝送回路10A,20Aを備えている点で相違するが、その他の点では実質的に相違しない。より詳しく説明すれば、センサ信号伝送回路10Aは、センサ信号伝送回路10に対して、アンプ110の代わりに、テール電流を個別に調整可能なアンプ170を備える点で相違し、センサ信号伝送回路20Aは、センサ信号伝送回路20に対して、アンプ210の代わりに、テール電流を個別に調整可能なアンプ270を備える点で相違する。しかしながら、センサ信号伝送回路10A,20Aは、それぞれ、センサ信号伝送回路10,20に対して、アンプ170,270を備える点以外の点では実質的に相違しない。そこで、本実施形態では、センサ信号伝送回路10A,20Aを中心に説明し、センサ信号伝送回路10,20と実質的に相違しない構成要素については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】
半導体装置31は、同一の半導体基板2に形成された、例えば2つ等の複数個のセンサ信号伝送回路10A,20Aを備えている。センサ信号伝送回路10Aは、縦型ホール素子100と、電流源120と、アンプ170と、スイッチS11~S14と、スイッチS15~S18とを備えている。センサ信号伝送回路20Aは、縦型ホール素子200と、電流源220と、アンプ270と、スイッチS21~S24と、スイッチS25~S28とを備えている。アンプ170及び270は、それぞれ、アンプ110及び210に対し、差動対のテール電流の電流値調整機能を付加して構成されている。テール電流の電流値調整機能は、可変電流源179,279によって提供される。
【0046】
図5は、アンプ170及び270の構成例を概略的に示した回路図である。
アンプ170は、例えば、NMOSトランジスタ177及び178を含む差動対と、当該差動対のテール電流の電流値を調整可能な可変電流源179とを有している。可変電流源179は、NMOSトランジスタ177及び178の各ソースと接続される第1端と、接地端子3と接続される第2端とを有している。
【0047】
アンプ270は、例えば、NMOSトランジスタ277及び278を含む差動対と、当該差動対のテール電流の電流値を調整可能な可変電流源279とを有している。可変電流源279は、NMOSトランジスタ277及び278の各ソースと接続される第1端と、接地端子3と接続される第2端とを有している。NMOSトランジスタ277のドレインは、NMOSトランジスタ177のドレインと接続されている。NMOSトランジスタ278のドレインは、NMOSトランジスタ178のドレインと接続されている。すなわち、アンプ170及び270は、ドレイン結線で接続されている。
【0048】
なお、半導体装置31における縦型ホール素子100及び200を用いたスピニングカレント法によるオフセットキャンセルを行う方法(以下、「第2のオフセットキャンセル方法」と呼ぶ)については、上述した第1のオフセットキャンセル方法に対して、さらに必要に応じて行う差動対のテール電流の電流値を調整するステップを含む点で相違するが、その他の点では実質的に相違しない。アンプ170において差動対を構成するNMOSトランジスタ177及び178のテール電流の電流値を調整するステップは、可変電流源179の電流値を調整することで行われる。アンプ270において差動対を構成するNMOSトランジスタ277及び278のテール電流の電流値を調整するステップは、可変電流源279の電流値を調整することで行われる。
【0049】
本実施形態によれば、半導体装置1及び第1のオフセットキャンセル方法と同様の効果を得られる他、縦型ホール素子100及び200の駆動電流差のみでは十分な補償が出来ない場合に、さらにテール電流差を利用して追加の補償効果を得ることができる。
【0050】
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置としての半導体装置51(第1フェーズ)を説明するための概略図である。
【0051】
半導体装置51は、半導体装置1に対して、サンプルホールド回路140と、比較器150と、基準電圧回路152と、をさらに備える点、すなわち電流源120及び220の電流値を調整可能にして、出力端子131から出力される半導体装置1の出力電圧にヒステリシス特性を付加可能に構成されている点において相違するが、その他の点では実質的に相違しない。
【0052】
また、半導体装置51は、半導体装置1に対して、半導体装置1を包含しており、半導体装置51の第1フェーズ及び第2フェーズのスイッチS11~S18及びスイッチS21~S28の開閉状態は、半導体装置1の第1フェーズ及び第2フェーズのスイッチS11~S18及びスイッチS21~S28の開閉状態と同様である。すなわち、図2に示される半導体装置1に対して、サンプルホールド回路140と、比較器150と、基準電圧回路152と、をさらに備えれば、第2フェーズの状態を示した半導体装置51となる。そこで、本実施形態では、半導体装置1に対して相違する構成要素を中心に説明し、半導体装置1と実質的に相違しない構成要素については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0053】
半導体装置51は、半導体装置1の構成に加え、サンプルホールド回路140と、比較器150と、基準電圧回路152と、をさらに備えている。サンプルホールド回路140は、加算器130と接続された入力端と、比較器150と接続された出力端とを有している。比較器150は、サンプルホールド回路140の出力端と接続された非反転入力端子(+)と、基準電圧回路152の正極端子と接続された反転入力端子(-)と、出力端子151と、を有している。比較器150の出力端子151と、半導体装置51の出力端子131が接続されている。出力端子151と出力端子131との接続点と同一のノードN1は、電流源120及び220の制御端と接続されている。
【0054】
サンプルホールド回路140は、上述の第1フェーズにおける出力電圧VOUT1を保持し、さらに第2フェーズにおける出力電圧VOUT2から保持しておいた出力電圧VOUT1を減算して、減算結果を最終出力電圧VOUTとして比較器150の非反転入力端子(+)へ出力する。
【0055】
比較器150の非反転入力端子(+)には、サンプルホールド回路140の出力電圧である最終出力電圧VOUTが入力される。比較器150の反転入力端子(-)には、基準電圧回路152の正極端子が接続され、基準電圧VREFが入力される。基準電圧回路152の負極端子は接地端子3に接続されている。比較器150は、最終出力電圧VOUTと基準電圧VREFとを比較した結果を出力信号CMPOUTとして出力端子151から出力する。出力信号CMPOUTは、電流源120及び220にそれぞれ入力されている。
【0056】
電流源120及び220は、上述のように、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間の特性ばらつきを補償するために予め電流値が調整されており、比較器150の出力信号CMPOUTに応じて、調整された状態の電流値を基準として、それぞれその電流値を2値の間で切り替えられるように構成されている。
【0057】
ここで、比較器150は、反転入力端子(-)に基準電圧VREF(≧0V)が入力されているため、以下のように非反転入力端子(+)の最終出力電圧VOUTの電圧値に応じた出力信号CMPOUTを出力する。
VOUT>VREFのとき、CMPOUT=“H”
VOUT<VREFのとき、CMPOUT=“L”
【0058】
次に、図7を用いて本実施形態に係る半導体装置の動作を説明する。なお、図7に示される丸数字1、2、3及び4が付された各矢印については、それぞれ、「矢印1」、「矢印2」、「矢印3」及び「矢印4」と呼称する。
【0059】
図7は、半導体装置51の磁電変換特性を説明するための説明図である。図7において、横軸が印加磁束密度B、縦軸がサンプルホールド回路140の最終出力電圧(比較器150の非反転入力端子(+)の入力電圧)VOUTを表している。また、図7は、説明を簡略化する観点から、0Vの基準電圧VREFが入力される場合を示している。
【0060】
電流源120及び220の電流値をそれぞれI1、I2とし、α及びβを定数とすると、
CMPOUT=“H”のとき、I1=I(1+α+β)、I2=I(1-α-β)
CMPOUT=“L”のとき、I1=I(1+α-β)、I2=I(1-α+β)
のように、比較器150の出力信号CMPOUTに応じて、電流源120及び220の電流値を2値の間で切り替えることによって、サンプルホールド回路140の最終出力電圧VOUTに、傾きが等しく、切片(B=0におけるVOUTの値)がそれぞれ±VOSだけオフセットした磁電変換特性を持たせることができる。
【0061】
ここで、αは、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間の特性ばらつきを補償するように予め調整された値である。β=0に対応する直線は、電流源120の電流値I1及び電流源220の電流値I2それぞれに上記αを加減算することにより特性ばらつきが補償された磁電変換特性を表す。βは、所望のヒステリスシス幅BHYSに応じて任意に設定される。
【0062】
印加磁束密度Bが零から正(S極)の方向に増加するとき、CMPOUT=“L”に対応する直線に沿ってサンプルホールド回路140の最終出力電圧VOUTが増加する(図中の矢印1に対応)。VOUT>0になると、比較器150の出力信号CMPOUTは“L”から“H”へと遷移し、印加磁束密度Bに対する磁電変換特性は、CMPOUT=“H”に対応する直線へと切り替えられる(図中の矢印2に対応)。このときの印加磁束密度Bが動作点BOPである。
【0063】
次に、印加磁束密度Bが負(N極)の方向に増加するとき、CMPOUT=“H”に対応する直線に沿ってサンプルホールド回路140の最終出力電圧VOUTが減少する(図中の矢印3に対応)。VOUT<0になると、比較器150の出力信号CMPOUTは“H”から“L”へと遷移し、印加磁束密度Bに対する磁電変換特性はCMPOUT=“L”に対応する直線へと再び切り替えられる(図中の矢印4に対応)。このときの印加磁束密度Bが復帰点BRPである。
【0064】
このように、磁電変換特性にヒステリシス性を持たせることによって、ヒステリシス幅BHYSを備えた交番検知特性を実現することが可能となる。したがって、通常、サンプルホールド回路140の出力側(サンプルホールド回路140の後段)にヒステリシス特性を付加するために設ける信号経路の信号伝達極性を切り替えるための回路等が不要となり、単純な構成の比較器を追加するだけでよいため、占有面積を削減することができる。
【0065】
なお、上述した比較器150の反転入力端子(-)に、基準電圧VREFとして0V以外の所定電圧が入力されるようにしてもよい。その場合には、サンプルホールド回路140の最終出力電圧VOUTの磁電変換特性の反転レベルは、0ではなくVREFになるため、
VOUT>VREFのとき、CMPOUT=“H”
VOUT<VREFのとき、CMPOUT=“L”
となり、動作点BOP及び復帰点BRPは、所定の基準電圧VREFの絶対値と極性に応じてオフセットすることとなる。すなわち、動作点BOP及び復帰点BRPが共に正になるように基準電圧VREF(>0)を入力すれば、S極側に動作点BOP及び復帰点BRPを有するS極検知特性を実現できる。また、動作点BOP及び復帰点BRPが共に負になるように基準電圧VREF(<0)を入力すれば、N極側に動作点BOP及び復帰点BRPを有するN極検知特性も実現できる。
【0066】
なお、半導体装置51における縦型ホール素子100及び200を用いたスピニングカレント法によるオフセットキャンセルを行う方法については、上述した第1のオフセットキャンセル方法に対して、処理ステップとしては実質的に相違しないため、その説明を省略する。
【0067】
このように、本発明の上述した実施形態に係る半導体装置によれば、縦型ホール素子100を駆動する電流源120とは別に縦型ホール素子200を駆動する電流源220が設けられていることから、電流源120と電流源220の各電流値を第1フェーズと第2フェーズとで同じにしつつ、駆動電流の方向を同一経路逆方向に調整することにより、電流源120及び220に特性ばらつきが生じていたとしても、当該特性ばらつきの影響を除去できる。すなわち、縦型ホール素子100及び200を駆動させる電流源120及び220の特性も含めて実質的に同一にした状態でスピニングカレント法を実行することができる。したがって、高精度なオフセットキャンセルが可能となる。
【0068】
また、比較器150の出力信号CMPOUTに基づき電流源120と電流源220の電流値を切り替え制御することによって、最終出力電圧VOUTにヒステリシス特性を付加することも可能となる。したがって、通常、最終出力電圧VOUTの後段に設けるヒステリシス特性を付加するための特別な回路の追加が不要となることから、半導体装置全体の面積を縮小することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0070】
例えば、半導体装置1等の本実施形態に係る半導体装置は、加算器130を備えているが、加算器130は別装置に設けられていてもよい。すなわち、本実施形態に係る半導体装置は、少なくとも、駆動電源からアンプまでを接続する伝送経路が互いに異なるセンサ信号伝送回路を備え、異なる伝送経路を伝送されたアンプ出力信号を取り出し可能に構成されていればよい。
【0071】
また、第3の実施形態に係る半導体装置として例示した半導体装置51(図6)は、半導体装置1の最終出力電圧VOUTにヒステリシス特性を付加する場合の構成例(第1の構成例)であるが、この例に限定されない。半導体装置1以外の最終出力電圧VOUTにヒステリシス特性が付加されていない半導体装置に対しても適用可能である。
【0072】
図8及び図9は、それぞれ、第3の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の他の(第2の構成例及び第3の構成例)を説明するための概略図である。
【0073】
例えば、半導体装置31の最終出力電圧VOUTにヒステリシス特性を付加可能に構成した一例が半導体装置71(図8)である。また、図6に示される半導体装置51及び図8に示される半導体装置71は、電流源120及び220の両方の電流値が比較器150の出力信号CMPOUTによって切り替えられる一例であるが、電流源120及び220のうち、いずれか一方の電流値を切り替え可能とする一方、他方の電流値を切り替え不可に構成してもよい。また、半導体装置71において、可変電流源179及び279の両方又は何れか一方の電流値が比較器150の出力信号CMPOUTによって切り替えられる構成としてもよい。さらに、電流源120及び220の両方又は何れか一方の電流値が比較器150の出力信号CMPOUTによって切り替えられる構成と併用されてもよい。
【0074】
さらに、上記実施形態においては、駆動電源として電流源を用いた例を示したが、電流源に替えて電圧源を用いることも可能である。この場合、電圧源の電圧値を調整することによって、縦型ホール素子の駆動電流を調整する。例えば、半導体装置71(図8)の電流源120及び220を電圧源160及び260に替えて、電圧源160及び260のうち、電圧源260の電圧値を切り替え可能に構成した半導体装置としてもよいし、さらに、電圧源260の電圧値に加えて可変電流源279の電流値を切り替え可能に構成した半導体装置91(図9)としてもよい。
【0075】
上記実施形態においては、2つの縦型ホール素子を有する半導体装置を例として説明したが、本発明は、3つ以上の縦型ホール素子を有する半導体装置にも適用可能である。その場合も、上記実施形態と同様、複数の縦型ホール素子の数と同数の駆動電源を設け、各縦型ホール素子をそれぞれ独立した駆動電源で駆動させることにより、複数の縦型ホール素子の半導体製造プロセス上で生じる特性誤差を補正することができる。特に、縦型ホール素子を4つ設ける構成とすれば、一度に第1の電流方向から第4の電流方向の駆動電流を各縦型ホール素子に供給できることから、オフセットキャンセルに必要な時間を短縮することができる。また、縦型ホール素子を8つ設ける構成とすれば、4方向の駆動電流をそれぞれ2つの縦型ホール素子に供給できるため、さらに高精度なオフセットキャンセルが可能となる。
【0076】
上記実施形態においては、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200にそれぞれアンプ110とアンプ210とを接続し、アンプ110の出力信号とアンプ210の出力信号とを加算器130により加算する例を示したが、例えば、アンプ110等、1個のアンプによる時分割処理によって、当該1個のアンプから得られた出力信号を加算した信号を得ることも可能である。
【0077】
より具体的に説明すれば、まず、図1に示す状態で縦型ホール素子100を駆動して得られた出力電圧の差を当該1個のアンプにより増幅して第1の出力信号とし、次に、図1に示す状態で縦型ホール素子200を駆動して得られた出力電圧の差を同アンプにより増幅して第2の出力信号とし、続いて、図2に示す状態で縦型ホール素子100を駆動して得られた出力電圧の差を同アンプにより増幅して第3の出力信号とし、最後に図2に示す状態で縦型ホール素子200を駆動して得られた出力電圧の差を同アンプにより増幅して第4の出力信号とし、これら第1の出力信号から第4の出力信号を加減算するようにしてもよい。これによりアンプが1つとなるため、回路規模を縮小することが可能となる。ただし、時分割処理となることから、オフセットキャンセルに必要な時間が長くなるため、高速性が求められる場合は、上述したように、縦型ホール素子それぞれに対応してアンプを設けるのが好ましい。
【0078】
上記実施形態においては、縦型ホール素子100及び縦型ホール素子200がそれぞれ5つの電極111~115及び電極211~215を有している例を示しているが、これに限らない。縦型ホール素子100と縦型ホール素子200の電極数が同数かつ4つ以上であれば、縦型ホール素子100及び200の電極数は何個でもよい。例えば、図1等に例示される縦型ホール素子100及び200で説明すれば、電極111又は115と電極211又は215を省略して同じ4個ずつとしてもよい。
【0079】
上記実施形態においては、第1導電型をP型、第2導電型をN型として説明したが、導電型を入れ替えて、第1導電型をN型、第2導電型をP型としても構わない。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1,31,51,71,91 半導体装置
2 半導体基板
10,10A,20,20A センサ信号伝送回路
100、200 縦型ホール素子
110,170,210,270 アンプ
111~115,211~215 電極
120,220 電流源(駆動電源)
130 加算器
131 出力端子
140 サンプルホールド回路
150 比較器
160,260 電圧源(駆動電源)
S11~S18,S21~S28 スイッチ
RA,RB 領域
L1-L1 第1の直線
L2-L2 第2の直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9