(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115235
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 7/01 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
G01K7/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020834
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田黒 義人
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056JT06
(57)【要約】
【課題】良好な温度検出を可能とする。
【解決手段】温度センサ(1)は、対象温度を有する位置に配置されたダイオードであって且つ第1ノード及び第2ノード間の対象経路(60)に挿入される温度検出ダイオード(D1)と、対象経路に対し、温度検出ダイオードの順方向に、第1~第3評価用電流(If1~If3)を互いに異なるタイミングで供給する電流供給回路(10)と、対象経路に第1~第3評価用電流が供給されているときの第1ノード及び第2ノード間の電圧(VF)を、夫々、第1評価用電圧~第3評価用電圧(VF1~VF3)として検出する電圧検出回路(20)と、第1~第3評価用電圧に基づき対象温度を検出する演算回路(30)と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象温度を有する位置に配置されたダイオードであって、且つ、第1ノード及び第2ノード間の対象経路に挿入される温度検出ダイオードと、
前記対象経路に対し、前記温度検出ダイオードの順方向に、第1評価用電流~第3評価用電流を互いに異なるタイミングで供給するよう構成された電流供給回路と、
前記対象経路に前記第1評価用電流~前記第3評価用電流が供給されているときの前記第1ノード及び前記第2ノード間の電圧を、夫々、第1評価用電圧~第3評価用電圧として検出するよう構成された電圧検出回路と、
前記第1評価用電圧~前記第3評価用電圧に基づき前記対象温度を検出するよう構成された演算回路と、を備える
、温度センサ。
【請求項2】
前記演算回路は、前記第1評価用電圧~前記第3評価用電圧を前記第1評価用電流~前記第3評価用電流の関係に基づく所定の演算式に従って加減算することを通じて前記対象温度を検出する
、請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
式(1)が成立するよう各評価用電流が設定され、
前記演算式は式(2)であり、
前記演算回路は、式(2)に従うΔVFを導出して、ΔVFの導出結果に応じた温度検出信号を生成し、
If1、If2、If3は、夫々、前記第1、第2、第3評価用電流を表し、
VF1、VF2、VF3は、夫々、前記第1、第2、第3評価用電圧を表し、
k1、k2及びk3の夫々は1以上の整数を表す
k3×If3=k1×If1+k2×If2 ・・・(1)
ΔVF=k3×VF3-(k1×VF1+k2×VF2) ・・・(2)
、請求項2に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記電流供給回路は、前記温度検出ダイオードに前記第1評価用電流を供給する第1供給動作をk1回実行し、前記温度検出ダイオードに前記第2評価用電流を供給する第2供給動作をk2回実行し、前記温度検出ダイオードに前記第3評価用電流を供給する第3供給動作をk3回実行し、
前記電圧検出回路は、前記第1供給動作が実行されるたびに前記第1評価用電圧を検出することで前記第1評価用電圧の検出値をk1個取得し、前記第2供給動作が実行されるたびに前記第2評価用電圧を検出することで前記第2評価用電圧の検出値をk2個取得し、前記第3供給動作が実行されるたびに前記第3評価用電圧を検出することで前記第3評価用電圧の検出値をk3個取得し、
前記演算回路は、前記第1評価用電圧についてのk1個の検出値、前記第2評価用電圧についてのk2個の検出値、及び、前記第3評価用電圧についてのk3個の検出値を用いて、式(2)に基づきΔVFを導出する
、請求項3に記載の温度センサ。
【請求項5】
ΔVFは式(3)を満たし、
ΔVF=(KB/q)×TD×ln(If3k3/(If1k1×If2k2))
・・・(3)
KBはボルツマン定数を表し、qは電子の電荷量を表し、TDは前記対象温度を表し、
ln(If3k3/(If1k1×If2k2))は(If3k3/(If1k1×If2k2))の自然対数を表す
、請求項4に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記電流供給回路は、前記温度検出ダイオードに前記第1評価用電流を供給する第1供給動作を(M×k1)回実行し、前記温度検出ダイオードに前記第2評価用電流を供給する第2供給動作を(M×k2)回実行し、前記温度検出ダイオードに前記第3評価用電流を供給する第3供給動作を(M×k3)回実行し、
前記電圧検出回路は、前記第1供給動作が実行されるたびに前記第1評価用電圧を検出することで前記第1評価用電圧の検出値を(M×k1)個取得し、前記第2供給動作が実行されるたびに前記第2評価用電圧を検出することで前記第2評価用電圧の検出値を(M×k2)個取得し、前記第3供給動作が実行されるたびに前記第3評価用電圧を検出することで前記第3評価用電圧の検出値を(M×k3)個取得し、
前記演算回路は、前記第1評価用電圧についての(M×k1)個の検出値、前記第2評価用電圧についての(M×k2)個の検出値、及び、前記第3評価用電圧についての(M×k3)個の検出値を用いて、式(2)に基づき(M×ΔVF)を導出し、(M×ΔVF)の導出結果に応じた前記温度検出信号を生成し、
Mは2以上の整数を表す
、請求項3に記載の温度センサ。
【請求項7】
前記電流検出回路はA/D変換器を有し、
前記A/D変換器は、前記温度検出ダイオードに前記第1評価用電流~前記第3評価用電流が供給されているときの前記第1ノード及び前記第2ノード間の電圧をアナログ/デジタル変換することで、前記第1評価用電圧~前記第3評価用電圧の検出値を表す第1デジタル検出値~第3デジタル検出値を生成し、
前記演算回路は、前記第1デジタル検出値~前記第3デジタル検出値に基づき前記対象温度を検出する
、請求項1~6の何れかに記載の温度センサ。
【請求項8】
前記演算回路は、前記対象温度の検出結果を示す温度検出信号を生成する
、請求項1又は2に記載の温度センサ。
【請求項9】
前記対象経路は抵抗成分を含み、
各評価用電流は前記温度検出ダイオード及び前記抵抗成分を通過する
、請求項1~6の何れかに記載の温度センサ。
【請求項10】
前記温度検出ダイオードは、互いに接続されたコレクタ及びベースを有するバイポーラトランジスタにて形成される
、請求項1~6の何れかに記載の温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
PN接合によるダイオードを用いて温度検出を行う温度センサが広く用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイオードを用いて温度検出を行う温度センサにおいて、性能面で改善の余地がある。
【0005】
本開示は、良好な温度検出を可能とする温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る温度センサは、対象温度を有する位置に配置されたダイオードであって、且つ、第1ノード及び第2ノード間の対象経路に挿入される温度検出ダイオードと、前記対象経路に対し、前記温度検出ダイオードの順方向に、第1評価用電流~第3評価用電流を互いに異なるタイミングで供給するよう構成された電流供給回路と、前記対象経路に前記第1評価用電流~前記第3評価用電流が供給されているときの前記第1ノード及び前記第2ノード間の電圧を、夫々、第1評価用電圧~第3評価用電圧として検出するよう構成された電圧検出回路と、前記第1評価用電圧~前記第3評価用電圧に基づき前記対象温度を検出するよう構成された演算回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、良好な温度検出を可能とする温度センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係り、ダイオードに関わる電流及び電圧の説明図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係り、ダイオードに関わる電流及び電圧の説明図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る温度センサの構成図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る温度センサにおいて、ダイオードの順方向電流が流れる経路に抵抗成分が存在する様子を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係る温度センサにおいて、ダイオードの順方向電流が流れる経路に抵抗成分が存在する様子を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、温度センサの全体動作フローチャートである。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、電圧検出処理のフローチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、演算処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、検出に関わる電圧と温度との関係を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、演算処理にて得られるデジタル値と温度との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、温度検出に関わるタイミングシーケンス図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、電圧検出処理のフローチャートである。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、演算処理のフローチャートである。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、ダイオードを構成するバイポーラトランジスタを示す図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態に属する第7実施例に係り、温度センサが組み込まれた半導体装置の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0010】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。
【0011】
MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。
【0012】
任意のスイッチを1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成することができ、或るスイッチがオン状態のときには当該スイッチの両端間が導通する一方で或るスイッチがオフ状態のときには当該スイッチの両端間が非導通となる。
【0013】
以下、任意のトランジスタ又はスイッチについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。また、任意のトランジスタ又はスイッチについて、トランジスタ又はスイッチがオン状態となっている期間をオン期間と称し、トランジスタ又はスイッチがオフ状態となっている期間をオフ期間と称する。
【0014】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0015】
図1を参照して、ダイオードを用いた温度センサによる温度検出方法を説明する。温度センサにより検出(換言すれば測定)されるべき温度を対象温度と称する。
【0016】
ダイオードD1は半導体のPN接合により形成されるダイオードである。ダイオードD1の順方向電流を記号“If”にて表す。ダイオードD1に順方向電流Ifを供給しているときに、ダイオードD1に発生する順方向電圧を記号“Vf”にて表す。ショックレーのダイオード方程式により、下記式(A1)が成立する。
Vf=(KB/q)×TD×ln(If/Is) ・・・(A1)
【0017】
ここで、KBはボルツマン定数を表し、qは電子の電荷量を表す。故に(KB/q)は固定値を持つ。TDはダイオードD1の温度(ダイオードD1が有する温度)を表す。ダイオードD1は対象温度を有する位置に配置される。このため、温度TDは対象温度に等しい。IsはダイオードD1の飽和電流を表す。尚、本明細書に示される各式において、ln(x)は、xの自然対数を表す。故に例えば、式(A1)におけるln(If/Is)は、(If/Is)の自然対数を表す。
【0018】
飽和電流Isは、基本的にはダイオードD1の種類に依存して定まる一定値を持つ。このため、既知の順方向電流IfをダイオードD1に供給したときの順方向電圧Vfを検出することにより、温度TD(従って対象温度)を検出できる。
【0019】
しかしながら、ダイオードD1の製造ばらつきによって、飽和電流Isはばらつく。これを考慮し、以下の式(A2)及び(A3)を満たす電圧Vf1及びVf2を検出し、電圧Vf1及びVf2から式(A4)に従って電圧ΔVfを求める参考方法が検討される。
【0020】
Vf1=(KB/q)×TD×ln(If1/Is) ・・・(A2)
Vf2=(KB/q)×TD×ln(If2/Is) ・・・(A3)
ΔVf=Vf1-Vf2
=(KB/q)×TD×ln(If1/If2) ・・・(A4)
【0021】
電流If1及びIf2は互いに異なる順方向電流Ifを表す。電圧Vf1は、“If=If1”を満たす順方向電流IfをダイオードD1に供給することでダイオードD1に発生する順方向電圧Vfである。Vf2は、“If=If2”を満たす順方向電流IfをダイオードD1に供給することでダイオードD1に発生する順方向電圧Vfである。
【0022】
式(A4)は飽和電流Isに依存しない。このため、電圧Vf1及びVf2の差分から電圧ΔVfを求めて式(A4)に従う演算を行うことで、飽和電流Isのばらつきの影響を受けずに、温度TDを求めることができる。
【0023】
但し、温度センサにおいて、
図2に示す如く、ダイオードD1に抵抗成分Rが直列接続され、ダイオードD1及び抵抗成分Rの直列回路の発生電圧VFが、対象温度を検出するために実測される場合がある。
図2の回路において、ノードND1は抵抗成分Rを介してダイオードD1のアノードに接続され、ダイオードD1のカソードがノードND2に接続される。ノードND2の電位から見たノードND1の電位が電圧VFである。抵抗成分Rは、温度センサを形成する際に生じた配線の寄生抵抗であり得る。或いは、静電保護用の抵抗又はフィルタ形成用の抵抗が、抵抗成分Rに相当し得る。
【0024】
図2の回路において、ダイオードD1に電流If1を順方向電流Ifとして供給したとき、電圧VFは式(B1)の電圧VF1と一致し、ダイオードD1に電流If2を順方向電流Ifとして供給したとき、電圧VFは式(B2)の電圧VF2と一致する。式(B1)及び式(B2)におけるRは、抵抗成分Rの抵抗値を表す(後述の式(B3)及び式(B4)においても同様)。
VF1=(K
B/q)×T
D×ln(If1/Is)+R×If1
・・・(B1)
VF2=(K
B/q)×T
D×ln(If2/Is)+R×If2
・・・(B2)
【0025】
抵抗成分Rの項をキャンセルするために電流If3を利用する。電流If1~If3は互いに異なる電流値を持つ。
図2の回路において、ダイオードD1に電流If3を順方向電流Ifとして供給したとき、電圧VFは式(B3)の電圧VF3と一致する。式(B3)の両辺を2倍することで式(B4)が得られる。
VF3=(K
B/q)×T
D×ln(If3/Is)+R×If3
・・・(B3)
2×VF3=(K
B/q)×T
D×ln(If3
2/Is
2)+2×R×If3
・・・(B4)
【0026】
ここで例えば、式(B5)が成立すると仮定する。この仮定の下、式(B6)を満たすように電圧ΔVFを定義すると、式(B6)の右辺から飽和電流IS及び抵抗成分Isを排除することができる。即ち、式(B1)~(B5)を用いて式(B6)を変形すると式(B7)が得られる。
2×If3=1×If1+1×If2 ・・・(B5)
ΔVF=2×VF3-(1×VF1+1×VF2) ・・・(B6)
ΔVF=(KB/q)×TD×ln(If32/(If1×If2))
・・・(B7)
【0027】
故に、電圧VF1、VF2及びVF3を検出した後、式(B6)に従って電圧ΔVFの値を導出し、その導出結果を用いて式(B7)により温度TDを求めることができる。式(B7)には飽和電流Isの項及び抵抗成分Rの項は含まれない。このため、式(B7)により求められる温度TDは、飽和電流Isのばらつきの影響を受けず、且つ、抵抗成分Rの影響を受けない。つまり、これらの影響を排除した高精度の温度検出が可能となる。
【0028】
図3に本実施形態に係る温度センサ1の構成図を示す。温度センサ1を半導体集積回路を用いて形成することができる。温度センサ1はダイオードD1を温度検出ダイオードとして有し、ダイオードD1を用いて対象温度を検出する(換言すれば測定する)。上述したように、ダイオードD1は対象温度を有する位置に配置される。このため、温度T
Dは対象温度に等しい。
【0029】
温度センサ1において、ノード61及び62間における電流経路を対象経路60と称する。対象経路60にダイオードD1が挿入される。ノード61は上述のノードND1に相当し、ノード62は上述のノードND2に相当する。温度センサ1において、電流Ifはノード61からノード62へとダイオードD1を通じて流れる電流(即ちダイオードD1の順方向電流)である。但し、タイミングによっては、“If=0”である。“If>0”であるとき、電流IfはダイオードD1の順方向に流れる。温度センサ1において、電圧VFは、ノード62の電位から見たノード61の電位を指す、即ちノード62の電位を基準としたノード61及び62間の電圧(電位差)を指す。温度センサ1においてノード62はグランドに接続される。従って電圧VFはグランド電位から見たノード61の電圧である。
【0030】
図3には図示されないが、ノード61及び62間に上述の抵抗成分Rが存在する。例えば、
図2に示す回路と同様に、
図4に示す如く、ノード61とダイオードD1のアノードとの間に抵抗成分Rが介在し、ダイオードD1のカソードがノード62に直接接続される。或いは、
図5に示す如く、ダイオードD1のカソードとノード62との間に抵抗成分Rが介在し、ダイオードD1のアノードがノード61に直接接続される。ノード61とダイオードD1のアノードとの間に第1抵抗成分が介在し且つノード62とダイオードD1のカソードとの間に第2抵抗成分が介在する場合もあり得る。
【0031】
温度センサ1は、電流供給回路10、電圧検出回路20、演算回路30及び制御回路40を備える。
【0032】
電流供給回路10は、対象経路60に対して第1~第3評価用電流を互いに異なるタイミングで供給する。第1~第3評価用電流は夫々にダイオードD1の順方向に供給される。第1評価用電流を、以下では記号“If1”にて参照し、評価用電流If1と称する。同様に、第2評価用電流を、以下では記号“If2”にて参照し、評価用電流If2と称する。同様に、第3評価用電流を、以下では記号“If3”にて参照し、評価用電流If3と称する。評価用電流If1~If3は互いに異なる電流値を持つ。評価用電流If1、If2、If3がダイオードD1に供給されるとき、夫々、評価用電流If1、If2、If3はダイオードD1の順方向電流Ifである。但し、温度センサ1において順方向電流Ifは抵抗成分R(
図4又は
図5参照)も通過する。
【0033】
電流供給回路10は、定電流源11と、トランジスタ12~15と、スイッチ16~18と、を備える。トランジスタ12~15はPチャネル型のMOSFETである。トランジスタ12~15の各ソースは電源電圧VACCが印加される端子に接続される。電源電圧VACCは所定の正の直流電圧値を有する。トランジスタ12のゲート及びドレインと、トランジスタ13~15の各ゲートは互いに共通接続される。定電流源11はトランジスタ12のドレインとグランドとの間に設けられる。トランジスタ13のドレインはスイッチ16の第1端に接続され、トランジスタ14のドレインはスイッチ17の第1端に接続され、トランジスタ15のドレインはスイッチ18の第1端に接続される。スイッチ16~18の夫々の第2端はノード61に共通接続される。
【0034】
定電流源11はトランジスタ12のドレインからグランドに向けて流れる基準電流Irefを発生させる。故にトランジスタ12のドレイン電流は基準電流Irefである。基準電流Irefは所定電流値を有する。トランジスタ12~15はカレントミラー回路を形成する。このため、トランジスタ13~15の夫々には基準電流Irefに比例するドレイン電流が流れる。トランジスタ13のドレイン電流が評価用電流If1であり、トランジスタ14のドレイン電流が評価用電流If2であり、トランジスタ15のドレイン電流が評価用電流If3である。
【0035】
但し、瞬間的な電流の流れを無視すれば、トランジスタ13のドレイン電流はスイッチ16がオンであるときにのみ発生し、トランジスタ14のドレイン電流はスイッチ17がオンであるときにのみ発生し、トランジスタ15のドレイン電流はスイッチ18がオンであるときにのみ発生する。制御回路40により、スイッチ16~18の何れか1つのみがオンに制御される、又は、スイッチ16~18が全てオフに制御される。
【0036】
スイッチ16のオン期間において“If=If1”である。“If=If1”とは、評価用電流If1が対象経路60を通じダイオードD1の順方向電流Ifとして流れることを意味する。スイッチ17のオン期間において“If=If2”である。“If=If2”とは、評価用電流If2が対象経路60を通じダイオードD1の順方向電流Ifとして流れることを意味する。スイッチ18のオン期間において“If=If3”である。“If=If3”とは、評価用電流If3が対象経路60を通じダイオードD1の順方向電流Ifとして流れることを意味する。
【0037】
電圧検出回路20は、バッファアンプ21とAD変換器であるADC22を備える。バッファアンプ21はノード61に接続される。バッファアンプ21は、ノード61における電圧VFを十分に高いインピーダンスにて受け、ノード61における電圧VFに応じた電圧を十分に低いインピーダンスにて出力する。ここでは、バッファアンプ21はボルテージフォロアであるものとし、故にバッファアンプ21の出力電圧は電圧VFと同じ電圧値を有するものとする。但し、バッファアンプ21にて電圧VFを1倍を超える増幅率で増幅し、増幅された電圧がバッファアンプ21から出力されるようにしても良い。
【0038】
ADC22はバッファアンプ21の出力電圧を自身への入力アナログ電圧として受け、入力アナログ電圧のAD変換(アナログ/デジタル変換)を行う。AD変換において、ADC22は、制御回路40により指定されたタイミングで入力アナログ電圧をサンプリングし、サンプリングした入力アナログ電圧をデジタル信号に変換する。ADC22はAD変換により得られたデジタル信号SVFを出力する。デジタル信号SVFは、サンプリングした入力アナログ電圧の値に相当するデジタル値DVFを有する。
【0039】
このように、電流検出回路20は、電圧VFを検出する機能を備え、電圧VFの検出結果をデジタル信号SVFとして出力する。デジタル信号SVFの値であるデジタル値DVFにより、電圧VFの検出値が示される。電圧VFが増大するにつれて(従って電圧VFの検出値が増大するにつれて)デジタル値DVFも増大する。デジタル信号SVFは演算回路30に入力される。
【0040】
演算回路30は、ADC22による複数回分のAD変換により得られたデジタル信号SVFに基づき所定の演算処理を行うことで対象温度を検出する。演算回路30は対象温度の検出結果を示す温度検出信号SDETを生成及び出力する。対象温度の検出と、温度検出信号SDETの生成又は出力は、互いに同義であると解しても良い。上記演算処理を行うロジック回路にて演算回路30を構成することができる。温度検出信号SDETはデジタル信号である。温度検出信号SDETが有するデジタル値を記号“DDET”にて表す。デジタル値DDETは対象温度の検出値を示す。尚、温度検出信号SDETをアナログ信号とする変形も可能である。
【0041】
制御回路40はスイッチ16~18のオン、オフを個別に制御する。また制御回路40は、ADC22によるAD変換の実行タイミングの制御を行う。AD変換の実行タイミングの制御は、ADC22におけるサンプリングのタイミング制御を含む。更に制御回路40は演算回路30による上記演算処理の実行制御を行う。
【0042】
以下、複数の実施例の中で、温度センサ1に関わる幾つかの具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0043】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。第1実施例では、評価用電流If1、If2、If3が、夫々、140μA(マイクロアンペア)、5μA、32μAであることを想定する。この場合、下記式(C1)が成立する。この際、下記式(C2)の如く電圧ΔVを定義することができる。VF1は、
図3のダイオードD1に対して評価用電流If1を順方向電流Ifとして供給したときの電圧VFを表す。VF2は、
図3のダイオードD1に対して評価用電流If2を順方向電流Ifとして供給したときの電圧VFを表す。VF3は、
図3のダイオードD1に対して評価用電流If3を順方向電流Ifとして供給したときの電圧VFを表す。
5×If3=1×If1+4×If2 ・・・(C1)
ΔVF=5×VF3-(1×VF1+4×VF2) ・・・(C2)
【0044】
式(C2)を上述の式(B1)、(B2)及び(B3)を用いて変形すると、下記式(C3)が得られる。また式(C3)の両辺を4倍することで式(C4)が得られる。
ΔVF=(KB/q)×TD×ln(If35/(If11×If24))
・・・(C3)
4×ΔVF=4×(KB/q)×TD×ln(If35/(If11×If24))
・・・(C4)
【0045】
このため、電圧VF1、VF2及びVF3を検出した後、式(C2)に従って電圧ΔVFの値を導出し、その導出結果を用いて式(C3)により温度TDを求めることができる。式(C3)には飽和電流Isの項及び抵抗成分Rの項は含まれない。このため、式(C3)により求められる温度TDは、飽和電流Isのばらつきの影響を受けず、且つ、抵抗成分Rの影響を受けない。つまり、これらの影響を排除した高精度の温度検出が可能となる。実際には、電圧検出回路20により電圧VF1、VF2及びVF3を検出し(即ち、電圧VF1、VF2及びVF3の各デジタル値を取得し)、電圧検出回路20の検出値を用いた式(C2)の演算を演算回路30にて行うことで電圧ΔVFを求めることができる。求めた電圧ΔVFから式(C3)に従い演算回路30にて対象温度に相当する温度TDを求めることができる。但し、式(C3)を用いた温度TDの導出を演算回路30にて行うことは必須では無い。尚、以下では、電圧ΔVFが演算電圧と称されることがある。
【0046】
図6に温度センサ1の全体動作フローチャートを示す。温度センサ1は、ステップS1の電圧検出処理を実行した後、ステップS2の演算処理を実行することで、対象温度を検出する。但し、ステップS1の電圧検出処理の実行中にステップS2の演算処理が開始されても良い。電圧検出処理は、制御回路40の制御の下、電流供給回路10及び電圧検出回路20により実行される。演算処理は演算回路30により実行される。ステップS2の演算処理の後、ステップS3の結果出力処理が実行される。結果出力処理では、ステップS2の演算処理の演算結果が温度検出信号S
DETとして演算回路30から出力される。
【0047】
図7に第1実施例に係る電圧検出処理のフローチャートを示す。第1実施例において、
図6に示されるステップS1の電圧検出処理はステップS11~S14の処理から成る。電圧検出処理では、まずステップS11にて制御回路40が自身で管理する変数iに対して1を代入する。その後、ステップS12に進む。
【0048】
ステップS12において、温度センサ1は第i回目のサイクル動作を実行する。1回分のサイクル動作において、温度センサ1は、第1単位検出処理を1回実行し、第2単位検出処理を4回実行し、第3単位検出処理を5回実行する。サイクル動作は、制御回路40の制御の下、電流供給回路10及び電流検出回路20により実行される。
【0049】
第1単位検出処理は、“If=If1”における電圧Vfを評価用電圧VF1として検出する処理である。第1単位検出処理は第1供給動作を含む。第1供給動作において、制御回路40はスイッチ16~18の内、スイッチ16のみをオンに制御する。これにより、第1供給動作において、電流供給回路10は評価用電流If1をダイオードD1に順方向電流Ifとして供給する。第1単位検出処理において、制御回路40は評価用電流If1が順方向電流IfとしてダイオードD1に供給される期間中の電圧VFである評価用電圧VF1を電圧検出回路20により検出させる。電圧検出回路20による評価用電圧VF1の検出により、評価用電圧VF1の検出値を表すデジタル値DVFが得られる。評価用電圧VF1の検出値を表すデジタル値DVFを、特にデジタル検出値DVF1と称する。1回の第1単位検出処理にて1つのデジタル検出値DVF1が取得される。このため、1回分のサイクル動作において、1つのデジタル検出値DVF1が取得される。
【0050】
第2単位検出処理は、“If=If2”における電圧Vfを評価用電圧VF2として検出する処理である。第2単位検出処理は第2供給動作を含む。第2供給動作において、制御回路40はスイッチ16~18の内、スイッチ17のみをオンに制御する。これにより、第2供給動作において、電流供給回路10は評価用電流If2をダイオードD1に順方向電流Ifとして供給する。第2単位検出処理において、制御回路40は評価用電流If2が順方向電流IfとしてダイオードD1に供給される期間中の電圧VFである評価用電圧VF2を電圧検出回路20により検出させる。電圧検出回路20による評価用電圧VF2の検出により、評価用電圧VF2の検出値を表すデジタル値DVFが得られる。評価用電圧VF2の検出値を表すデジタル値DVFを、特にデジタル検出値DVF2と称する。1回の第2単位検出処理にて1つのデジタル検出値DVF2が取得される。このため、1回分のサイクル動作において、4つのデジタル検出値DVF2が取得される。
【0051】
第3単位検出処理は、“If=If3”における電圧Vfを評価用電圧VF3として検出する処理である。第3単位検出処理は第3供給動作を含む。第3供給動作において、制御回路40はスイッチ16~18の内、スイッチ18のみをオンに制御する。これにより、第3供給動作において、電流供給回路10は評価用電流If3をダイオードD1に順方向電流Ifとして供給する。第3単位検出処理において、制御回路40は評価用電流If3が順方向電流IfとしてダイオードD1に供給される期間中の電圧VFである評価用電圧VF3を電圧検出回路20により検出させる。電圧検出回路20による評価用電圧VF3の検出により、評価用電圧VF3の検出値を表すデジタル値DVFが得られる。評価用電圧VF3の検出値を表すデジタル値DVFを、特にデジタル検出値DVF3と称する。1回の第3単位検出処理にて1つのデジタル検出値DVF3が取得される。このため、1回分のサイクル動作において、5つのデジタル検出値DVF3が取得される。
【0052】
ステップS12の後、ステップS13に進む。ステップS13において制御回路40は“i=4”の成否を判定する。“i=4”が成立する場合(ステップS13のY)、電圧検出処理を終える。“i=4”が不成立である場合(ステップS13のN)、ステップS14にて制御回路40により変数iに1が加算され、その後、ステップS12に戻る。ステップS12に戻ると上述のサイクル動作が再度実行される。このため、
図7の電圧検出処理を終える段階では、ステップS12のサイクル動作が4回実行済みである。
【0053】
図8に第1実施例に係る演算処理のフローチャートを示す。第1実施例において、
図6に示されるステップS2の演算処理はステップS21~S25の処理から成る。演算処理では、まずステップS21にて演算回路30が自身で管理する変数iに対して1を代入する。その後、ステップS22に進む。
【0054】
ステップS22の処理は第i回目のサイクル動作の終了後における任意のタイミングで実行される。ステップS22において、演算回路30は、第i回目のサイクル動作にて取得されたデジタル検出値に基づき、上述の式(C2)に従って演算電圧ΔVFの値を導出する。第i回目のサイクル動作について、ステップS21で導出される演算電圧ΔVFの値を、特に記号“ΔVF_cycle[i]”にて表す。
【0055】
第i回目のサイクル動作にて取得されたデジタル検出値は、1つのデジタル検出値DVF1と、4つのデジタル検出値DVF2と、5つのデジタル検出値DVF3と、から成る。このため、第i回目のサイクル動作に関し、1つのデジタル検出値DVF1を式(C2)の項(1×VF1)に代入し、4つのデジタル検出値DVF2の和を式(C2)の項(4×VF2)に代入し、5つのデジタル検出値DVF3の和を式(C2)の項(5×VF3)に代入することで式(C2)の左辺の値を求め、求めた左辺の値を値ΔVF_cycle[i]に設定する。
【0056】
ステップS22の後、ステップS23に進む。ステップS23において演算回路30は“i=4”の成否を判定する。“i=4”が成立する場合(ステップS23のY)、ステップS25に進む。“i=4”が不成立である場合(ステップS23のN)、ステップS24にて演算回路30により変数iに1が加算され、その後、ステップS22に戻る。ステップS22に戻るとステップS22の処理が再度実行される。このため、ステップS25に進む段階では、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[4]が導出済みである。
【0057】
ステップS25において演算回路30は、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[4]の総和を求める。値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[4]の総和は、電圧(4×ΔVF)に相当する。このため、ステップS25に係る演算回路30は、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[4]の総和を上記式(C4)の左辺に代入した上で式(C4)を温度TDについて解くことで対象温度(即ち温度TD)を検出することができる。評価用電流If1、If2及びIf3の各値、ボルツマン定数KB、並びに、電子の電荷量qは、温度センサ1(演算回路30)にとって既知である。
【0058】
演算回路30において値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[4]の総和に基づき温度検出信号S
DETが生成される。即ち、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[4]の総和に応じた値が、温度検出信号S
DETの値であるデジタル値D
DET(
図3参照)に設定され、デジタル値D
DETによって対象温度の検出値が示される。実際には、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[4]の総和そのものがデジタル値D
DETに設定される。但し、当該総和をK倍した値を、デジタル値D
DETに設定しても良い(K>1)。
【0059】
ここで、説明の具体化のため、ADC22及びデジタル値に関する具体的な数値例を挙げる。今、ADC22は10ビットのAD変換器であるものとする。そうすると、デジタル信号SVFは0から1023までの値をデジタル値DVFとして持つ。また、温度検出信号SDETも0から1023までの値をデジタル値DDETとして持つものとする。
【0060】
図9において、破線波形610は電圧ΔVFのアナログ電圧値と温度T
Dとの関係を示し、実線波形620は電圧(4×ΔVF)のアナログ電圧値と温度T
Dとの関係を示す。電圧(4×ΔVF)は電圧ΔVFの4倍に相当するため、電圧(4×ΔVF)は温度T
Dの変化に合わせ電圧ΔVFよりも広い数値範囲に亘って変化する。また、温度T
Dの単位変化量当たりの電圧(4×ΔVF)の変化量(即ち実線波形620の傾き)は、電圧ΔVFの変化量(即ち破線波形610の傾き)の4倍である。
【0061】
図10において、破線波形615は電圧ΔVFのデジタル値と温度T
Dとの関係を示し、実線波形625は電圧(4×ΔVF)のデジタル値と温度T
Dとの関係を示す。電圧ΔVFのデジタル値は、デジタル信号のダイナミックレンジの内、かなり限られた範囲の値(例えば0から100までの値)を持つ。これに対し、電圧(4×ΔVF)のデジタル値は、電圧ΔVFのデジタル値よりも、上記ダイナミックレンジ内の広いレンジ内で変動する。また、温度T
Dにおける1℃あたりのデジタル値の変化量は、電圧(4×ΔVF)において電圧ΔVFの4倍となる。これは、電圧(4×ΔVF)のデジタル値によって表現される温度T
Dの分解能が、電圧ΔVFのそれと比べて、4倍であることを意味する。例えば、電圧ΔVFのデジタル値において1LSBあたり2.4℃の分解能で温度T
Dが表現される場合、電圧(4×ΔVF)のデジタル値では1LSBあたり0.6℃の分解能で温度T
Dが表現される。
【0062】
図11に対象温度を検出するためのタイミングシーケンスを示す。時刻t1から時刻t2までにおいて第1回目のサイクル動作が行われ、続いて時刻t2から時刻t3までにおいて第2回目のサイクル動作が行われ、続いて時刻t3から時刻t4までにおいて第3回目のサイクル動作が行われ、続いて時刻t4から時刻t5までにおいて第4回目のサイクル動作が行われる。各サイクル動作において、温度センサ1は、第3単位検出処理の後に第2単位検出処理を行う動作を4回繰り返した後、第5回目の第3単位検出処理を経て第1単位検出処理を行う。これにより、各サイクル動作において、1つのデジタル検出値D
VF1と、4つのデジタル検出値D
VF2と、5つのデジタル検出値D
VF3と、が得られる。
【0063】
1つの単位検出処理は所定の単位時間TUNITを要する。このため、各サイクル動作は(10×TUNIT)分の時間を要し、対象温度の1検出あたり(40×TUNIT)分の時間を要する。電圧VFのセトリング時間及びADC22におけるサンプル/ホールド時間等に基づき、単位時間TUNITは決定される。順方向電圧Ifが或る評価用電流から他の評価用電流に変更されるとき、電圧Vfが変動する。この変動の収束に必要な時間が電圧VFのセトリング時間である。
【0064】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第1実施例に示した評価用電流If1、If2及びIf3の具体的数値は例に過ぎず、様々に変更可能である。第2実施例では、第1実施例に示した技術を変数k1、k2及びk3を用いて一般化する。変数k1、k2及びk3は、夫々に、1以上の整数値を持つ。
【0065】
第2実施例に係る温度センサ1において、下記式(D1)が成立するよう評価用電流If1、If2及びIf3が設定される。この際、温度センサ1において下記式(D2)の如く電圧ΔVを定義することができる。電圧VF1、VF2及びVF3の意義は第1実施例に示した通りである。
k3×If3=k1×If1+k2×If2 ・・・(D1)
ΔVF=k3×VF3-(k1×VF1+k2×VF2) ・・・(D2)
【0066】
式(D2)を上述の式(B1)、(B2)及び(B3)を用いて変形すると、下記式(D3)が得られる。また式(D3)の両辺をM倍することで式(D4)が得られる。Mは2以上の任意の整数を表す。
ΔVF=(KB/q)×TD×ln(If3k3/(If1k1×If2k2))
・・・(D3)
M×ΔVF=M×(KB/q)×TD×ln(If3k3/(If1k1×If2k2))
・・・(D4)
【0067】
このため、電圧VF1、VF2及びVF3を検出した後、式(D2)に従って電圧ΔVFの値を導出し、その導出結果を用いて式(D3)により温度TDを求めることができる。式(D3)には飽和電流Isの項及び抵抗成分Rの項は含まれない。このため、式(D3)により求められる温度TDは、飽和電流Isのばらつきの影響を受けず、且つ、抵抗成分Rの影響を受けない。つまり、これらの影響を排除した高精度の温度検出が可能となる。
【0068】
第2実施例に係る温度センサ1の全体動作フローチャートは第1実施例のそれ(
図6)と同様である。第1実施例は、(k1,k2,k3,M)=(1,4,5,4)に設定されたときの第2実施例に相当する。
【0069】
図12に第2実施例に係る電圧検出処理のフローチャートを示す。第2実施例において、
図6に示されるステップS1の電圧検出処理はステップS111~S114の処理から成る。電圧検出処理では、まずステップS111にて制御回路40が自身で管理する変数iに対して1を代入する。その後、ステップS112に進む。
【0070】
ステップS112において、温度センサ1は第i回目のサイクル動作を実行する。1回分のサイクル動作において、温度センサ1は、第1単位検出処理をk1回実行し、第2単位検出処理をk2回実行し、第3単位検出処理をk3回実行する。サイクル動作は、制御回路40の制御の下、電流供給回路10及び電流検出回路20により実行される。
【0071】
第1、第2及び第3単位検出処理の内容は第1実施例に示した通りである。1回の第1単位検出処理にて評価用電圧VF1の検出値を表す1つのデジタル検出値DVF1が取得される。このため、1回分のサイクル動作においてk1個のデジタル検出値DVF1が取得される。1回の第2単位検出処理にて評価用電圧VF2の検出値を表す1つのデジタル検出値DVF2が取得される。このため、1回分のサイクル動作においてk2個のデジタル検出値DVF2が取得される。1回の第3単位検出処理にて評価用電圧VF3の検出値を表す1つのデジタル検出値DVF3が取得される。このため、1回分のサイクル動作においてk3個のデジタル検出値DVF3が取得される。
【0072】
ステップS112の後、ステップS113に進む。ステップS113において制御回路40は“i=M”の成否を判定する。“i=M”が成立する場合(ステップS113のY)、電圧検出処理を終える。“i=M”が不成立である場合(ステップS113のN)、ステップS114にて制御回路40により変数iに1が加算され、その後、ステップS112に戻る。ステップS112に戻ると上述のサイクル動作が再度実行される。このため、
図12の電圧検出処理を終える段階では、ステップS112のサイクル動作がM回実行済みである。
【0073】
尚、各サイクル動作において、第1単位検出処理がk1回実行され、第2単位検出処理がk2回実行され且つ第3単位検出処理がk3回実行される限り、各サイクル動作における第1、第2及び第3単位検出処理の実行順序は任意である。
【0074】
図13に第2実施例に係る演算処理のフローチャートを示す。第2実施例において、
図6に示されるステップS2の演算処理はステップS121~S125の処理から成る。演算処理では、まずステップS121にて演算回路30が自身で管理する変数iに対して1を代入する。その後、ステップS122に進む。
【0075】
ステップS122の処理は第i回目のサイクル動作の終了後における任意のタイミングで実行される。ステップS122において、演算回路30は、第i回目のサイクル動作にて取得されたデジタル検出値に基づき、上述の式(D2)に従って演算電圧ΔVFの値を導出する。第i回目のサイクル動作について、ステップS121で導出される演算電圧ΔVFの値を、特に記号“ΔVF_cycle[i]”にて表す。
【0076】
第i回目のサイクル動作にて取得されたデジタル検出値は、k1個のデジタル検出値DVF1と、k2個のデジタル検出値DVF2と、k3個のデジタル検出値DVF3と、から成る。このため、第i回目のサイクル動作に関し、k1個のデジタル検出値DVF1を式(D2)の項(k1×VF1)に代入し、k2個のデジタル検出値DVF2を式(D2)の項(k2×VF2)に代入し、k3個のデジタル検出値DVF3を式(D2)の項(k3×VF3)に代入することで式(D2)の左辺の値を求め、求めた左辺の値を値ΔVF_cycle[i]に設定する。
【0077】
尚、k1個のデジタル検出値DVF1を式(D2)の項(k1×VF1)に代入するとは、“k1≧2”であれば、k1個のデジタル検出値DVF1の和を式(D2)の項(k1×VF1)に代入することを意味する。同様に、k2個のデジタル検出値DVF2を式(D2)の項(k2×VF2)に代入するとは、“k2≧2”であれば、k2個のデジタル検出値DVF2の和を式(D2)の項(k2×VF2)に代入することを意味する。同様に、k3個のデジタル検出値DVF3を式(D2)の項(k3×VF3)に代入するとは、“k3≧2”であれば、k3個のデジタル検出値DVF3の和を式(D2)の項(k3×VF3)に代入することを意味する。
【0078】
ステップS122の後、ステップS123に進む。ステップS123において演算回路30は“i=M”の成否を判定する。“i=M”が成立する場合(ステップS123のY)、ステップS125に進む。“i=M”が不成立である場合(ステップS123のN)、ステップS124にて演算回路30により変数iに1が加算され、その後、ステップS122に戻る。ステップS122に戻るとステップS122の処理が再度実行される。このため、ステップS125に進む段階では、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[M]が導出済みである。
【0079】
ステップS125において演算回路30は、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[M]の総和を求める。値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[M]の総和は、電圧(M×ΔVF)に相当する。このため、ステップS125に係る演算回路30は、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[M]の総和を上記式(D4)の左辺に代入した上で式(D4)を温度TDについて解くことで対象温度(即ち温度TD)を検出することができる。但し、式(D4)を用いた対象温度(即ち温度TD)の導出を演算回路30にて行うことは必須では無い。評価用電流If1、If2及びIf3の各値、ボルツマン定数KB、並びに、電子の電荷量qは、温度センサ1(演算回路30)にとって既知である。
【0080】
演算回路30において値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[M]の総和に基づき温度検出信号S
DETが生成される。即ち、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[M]の総和に応じた値が、温度検出信号S
DETの値であるデジタル値D
DET(
図3参照)に設定され、デジタル値D
DETによって対象温度の検出値が示される。実際には、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[M]の総和そのものがデジタル値D
DETに設定される。但し、当該総和をK倍した値を、デジタル値D
DETに設定しても良い(K>1)。
【0081】
電圧(M×ΔVF)を導出できる限り、導出手順は上述したものに限定されない。即ち例えば、任意の順番で、第1単位検出処理を(M×k1)回実行することによりデジタル検出値DVF1を(M×k1)個分取得し、第2単位検出処理を(M×k2)回実行することによりデジタル検出値DVF2を(M×k2)個分取得し、且つ、第3単位検出処理を(M×k3)回実行することによりデジタル検出値DVF3を(M×k3)個分取得する。その後、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[M]を1つずつ導出するのではなく、(M×k1)個のデジタル検出値DVF1、(M×k2)個のデジタル検出値DVF2及び(M×k3)個のデジタル検出値DVF3に基づき、値ΔVF_cycle[1]~ΔVF_cycle[M]の総和に相当にする電圧(M×ΔVF)を、直接、導出するようにしても良い。
【0082】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第2実施例に示したように、サイクル動作の実行回数(即ちMの値)は2以上であれば任意である。サイクル動作の実行回数を適正に設定することで、温度検出信号SDETのデジタル値DDETと対象温度と関係を所望通りに設定することができる。
【0083】
但し、サイクル動作の実行回数を1とすることも可能である。即ち“M=1”であっても良い。“M=1”である場合、演算処理でのステップS122にて値ΔVF_cycle[1]のみが導出され、ステップS125に係る演算回路30は、値ΔVF_cycle[1]を上記式(D3)の左辺に代入した上で式(D3)を温度T
Dについて解くことで対象温度(即ち温度T
D)を検出することができる。ステップS125にて値ΔVF_cycle[1]に基づき温度検出信号S
DETが生成される。即ち、値ΔVF_cycle[1]に応じた値が、温度検出信号S
DETの値であるデジタル値D
DET(
図3参照)に設定され、デジタル値D
DETによって対象温度の検出値が示される。実際には、値ΔVF_cycle[1]そのものがデジタル値D
DETに設定されて良い。但し、値ΔVF_cycle[1]をK倍した値を、デジタル値D
DETに設定しても良い(K>1)。
【0084】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。変数k1が2以上である場合、第2実施例では式(D2)の左辺の値を求めるために、以下の基本方法が実施される。基本方法では、1回分のサイクル動作において第1単位検出処理をk1回実行することでk1個のデジタル検出値DVF1を取得し、k1個のデジタル検出値DVF1の和を式(D2)の項(k1×VF1)に代入する。変数k1が2以上である場合、基本方法の代わりに、以下の第1又は第2変形方法を採用することもできる。
【0085】
第1変形方法では、1回分のサイクル動作において第1単位検出処理を1回だけ実行することで1つのデジタル検出値DVF1を取得し、演算回路30にて1つのデジタル検出値DVF1をk1倍する。そして、第1変形方法に係る演算回路30は、k1倍したデジタル検出値DVF1を式(D2)の項(k1×VF1)に代入する。第1変形方法を用いれば対象温度の検出に要する時間が基本方法よりも短くなる。反面、第1変形方法では、演算回路30におけるk1倍の演算過程で、演算回路30の前段の回路で生じる各種ノイズもk1倍される。このため、SN比(信号対雑音比)の観点からすれば、基本方法の方が有利である。
【0086】
第2変形方法では、1回分のサイクル動作において第1単位検出処理を1回だけ実行することで1つのデジタル検出値DVF1を取得するが、この際、“If=If1”であるときの電圧VFのk1倍がADC22への入力アナログ電圧となるようにアンプ21にて増幅動作を行わせる。従って、第2変形方法では、“If=If1”である期間中における電圧VFのk1倍がAD変換されることでデジタル検出値DVF1が取得され、デジタル検出値DVF1は評価用電圧VF1の検出値のk1倍を表す。このため、第2変形方法に係る演算回路30は、得られたデジタル検出値DVF1そのものを式(D2)の項(k1×VF1)に代入する。第2変形方法を用いれば対象温度の検出に要する時間が基本方法よりも短くなる。反面、第2変形方法では、アンプ21での増幅動作において各種ノイズもk1倍される。このため、SN比(信号対雑音比)の観点からすれば、基本方法の方が有利である。
【0087】
説明の具体化のため、第1単位検出処理、デジタル検出値DVF1及び項(k1×VF1)に注目して第1及び第2変形方法を説明した。しかしながら、第1単位検出処理、デジタル検出値DVF1及び項(k1×VF1)に対して第1変形方法が適用される場合、第2単位検出処理、デジタル検出値DVF2及び項(k2×VF2)に対しても第1変形方法が適用され、且つ、第3単位検出処理、デジタル検出値DVF3及び項(k3×VF3)に対しても第1変形方法が適用される。同様に、第1単位検出処理、デジタル検出値DVF1及び項(k1×VF1)に対して第2変形方法が適用される場合、第2単位検出処理、デジタル検出値DVF2及び項(k2×VF2)に対しても第2変形方法が適用され、且つ、第3単位検出処理、デジタル検出値DVF3及び項(k3×VF3)に対しても第2変形方法が適用される。
【0088】
例えば、第1変形方法が第2単位検出処理、デジタル検出値DVF2及び項(k2×VF2)に適用される場合、1回分のサイクル動作において第2単位検出処理を1回だけ実行することで1つのデジタル検出値DVF2を取得し、演算回路30にて1つのデジタル検出値DVF2をk2倍する。そして、演算回路30は、k2倍したデジタル検出値DVF2を式(D2)の項(k2×VF2)に代入すれば良い。
【0089】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。ダイオードD1はバイポーラトランジスタにより構成されるものであって良い。即ち、
図14に示す如く、NPN型バイポーラトランジスタであるトランジスタTr1をダイオードD1として用いて良い。この場合、トランジスタTr1において、コレクタ及びベースは互いに接続され、コレクタがダイオードD1のアノードとして機能してノード61に接続され、且つ、エミッタがダイオードD1のカソードとして機能してノード62に接続される。
【0090】
但し、
図4を参照して説明したように、ノード61とトランジスタTr1のコレクタとの間に抵抗成分Rが介在し得る。或いは、
図5を参照して説明したように、ノード62とトランジスタTr1のエミッタとの間に抵抗成分Rが介在し得る。ノード61とトランジスタTr1のコレクタとの間、ノード62とトランジスタTr1のエミッタとの間の夫々に抵抗成分Rが介在する場合もある。
【0091】
尚、NPN型バイポーラトランジスタの代わりに、PNP型バイポーラトランジスタを用いてダイオードD1を形成しても良い。
【0092】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。温度センサ1において第1~第3ダイオードを設けておき、第1~第3ダイオードをダイオードD1として用いて対象温度を検出しても良い。
【0093】
この場合、第1~第3ダイオードは共通の対象温度を有する位置に配置される。そして、評価用電流If1が第1ダイオードの順方向電流として第1ダイオードに供給される期間中において、第1ダイオードの電圧VFを評価用電圧VF1として電圧検出回路20に検出させる。同様に、評価用電流If2が第2ダイオードの順方向電流として第2ダイオードに供給される期間中において、第2ダイオードの電圧VFを評価用電圧VF2として電圧検出回路20に検出させる。同様に、評価用電流If3が第3ダイオードの順方向電流として第3ダイオードに供給される期間中において、第3ダイオードの電圧VFを評価用電圧VF3として電圧検出回路20に検出させる。第1、第2及び第3ダイオードの電圧VFは夫々にダイオードD1の電圧VFと同様に定義される。
【0094】
互いに同一の構造を有し且つ同一の電気的特性を有するよう第1~第3ダイオードが構成される。しかしながら、実際には、ダイオードの構造及び電気的特性が第1~第3ダイオード間で相対的にばらつき、それらのばらつきは対象温度の検出誤差となって現れる。また、3つのダイオードを設ける分、回路面積が増大する。このため、単一のダイオードD1を用いる構成(
図3の構成)の方が好ましい。
【0095】
<<第7実施例>>
第7実施例を説明する。
【0096】
厳密には、ダイオード方程式にて理想係数nが存在し、理想係数nを考慮すれば、以下の式が成立する。
k3×VF3-(k1×VF1+k2×VF2)=n×(KB/q)×TD×ln(If3k3/(If1k1×If2k2))
理想係数nは略“1”の値を持つ。理想係数nが完全に1と一致すれば近ければ又は十分に1に近ければ理想係数nの存在を無視できる。仮に、差(n-1)が無視できないのであれば、適宜、実測評価を介して、温度TDとデジタル値VDETとの関係式を微調整すれば良い。
【0097】
ノード62はグランド電位以外の電位を有していて良い。ノード62の電位とグランド電位との一致/不一致に依らず、電圧検出回路20はノード62の電位から見たノード61の電位(即ち電圧VF)を検出すれば良い。
【0098】
電流供給回路10は、ダイオードD1の順方向電流Ifとして、n種類の評価用電流を互いに異なるタイミングでダイオードD1に供給する。
図3の温度センサ1において、“n=3”であって、n種類の評価用電流は評価用電流If1、If2及びIf3である。但し、nは4以上の整数値を有していても良い。この場合、電圧検出回路20は、対象経路60に第i評価用電流が供給されているときの電圧VFを、第i評価用電圧として検出する動作を、“i=1”、“i=2”、“i=3”、・・・“i=n”である場合の夫々について実行する。そして、演算回路30は、第1評価用電圧~第n評価用電圧に基づき対象温度を検出するようにしても良い。
【0099】
温度センサ1は任意の半導体装置に組み込まれて良い。
図15は、温度センサ1が組み込まれた半導体装置100の外観斜視図である。半導体装置100は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から半導体装置100の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置100が形成される。尚、
図15に示される半導体装置100の外部端子の数及び半導体装置100の筐体の種類は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。半導体装置100における半導体集積回路には、温度センサ1が含まれる他、各種の機能回路が含まれる。機能回路は、例えばDC/DCコンバータ、モータドライバである。
【0100】
温度が検出されるべき位置を対象位置と称する。対象温度は対象位置における温度である。半導体装置100における任意の位置(例えば中央位置)を対象位置に設定することができる。半導体装置100において複数の位置が対象位置に設定されて良い。この場合、対象位置ごとに温度センサ1が設置されて良い。ダイオードD1を対象位置ごとに配置する一方で、複数のダイオードD1に対して電圧検出回路20及び演算回路30から成る検出ブロックを共通に割り当て、セレクタ等を利用してバッファアンプ21への入力信号を切り替えることで、単一の検出ブロックを複数の対象温度の検出に兼用しても良い。
【0101】
実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。
【0102】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。
【0103】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0104】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0105】
本開示の一側面に係る温度センサは、対象温度(TD)を有する位置に配置されたダイオードであって、且つ、第1ノード及び第2ノード間の対象経路(60)に挿入される温度検出ダイオード(D1)と、前記対象経路に対し、前記温度検出ダイオードの順方向に、第1評価用電流~第3評価用電流(If1~If3)を互いに異なるタイミングで供給するよう構成された電流供給回路(10)と、前記対象経路に前記第1評価用電流~前記第3評価用電流が供給されているときの前記第1ノード及び前記第2ノード間の電圧(VF)を、夫々、第1評価用電圧~第3評価用電圧(VF1~VF3)として検出するよう構成された電圧検出回路(20)と、前記第1評価用電圧~前記第3評価用電圧に基づき前記対象温度を検出するよう構成された演算回路(30)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0106】
これにより、良好な温度検出が可能となる。具体的には、ダイオードの飽和電流のばらつきに関する影響が抑制された温度検出が可能となる。また、3つの評価用電流を用いることで、対象経路に抵抗成分が含まれていた場合でも、当該抵抗成分の影響を抑制した状態で温度検出を行うことができる。
【0107】
上記第1の構成に係る温度センサにおいて、前記演算回路は、前記第1評価用電圧~前記第3評価用電圧を前記第1評価用電流~前記第3評価用電流の関係に基づく所定の演算式に従って加減算することを通じて前記対象温度を検出する構成(第2の構成)であっても良い。
【0108】
上記第2の構成に係る温度センサにおいて、式(1)が成立するよう各評価用電流が設定され、前記演算式は式(2)であり、前記演算回路は、式(2)に従うΔVFを導出して、ΔVFの導出結果に応じた温度検出信号を生成し、
If1、If2、If3は、夫々、前記第1、第2、第3評価用電流を表し、
VF1、VF2、VF3は、夫々、前記第1、第2、第3評価用電圧を表し、
k1、k2及びk3の夫々は1以上の整数を表す
k3×If3=k1×If1+k2×If2 ・・・(1)
ΔVF=k3×VF3-(k1×VF1+k2×VF2) ・・・(2)
構成(第3の構成)であっても良い。
【0109】
上記第3の構成に係る温度センサにおいて、前記電流供給回路は、前記温度検出ダイオードに前記第1評価用電流を供給する第1供給動作をk1回実行し、前記温度検出ダイオードに前記第2評価用電流を供給する第2供給動作をk2回実行し、前記温度検出ダイオードに前記第3評価用電流を供給する第3供給動作をk3回実行し、前記電圧検出回路は、前記第1供給動作が実行されるたびに前記第1評価用電圧を検出することで前記第1評価用電圧の検出値(DVF1)をk1個取得し、前記第2供給動作が実行されるたびに前記第2評価用電圧を検出することで前記第2評価用電圧の検出値(DVF2)をk2個取得し、前記第3供給動作が実行されるたびに前記第3評価用電圧を検出することで前記第3評価用電圧の検出値(DVF3)をk3個取得し、前記演算回路は、前記第1評価用電圧についてのk1個の検出値、前記第2評価用電圧についてのk2個の検出値、及び、前記第3評価用電圧についてのk3個の検出値を用いて、式(2)に基づきΔVFを導出する構成(第4の構成)であっても良い。
【0110】
上記第4の構成に係る温度センサにおいて、ΔVFは式(3)を満たし、
ΔVF=(KB/q)×TD×ln(If3k3/(If1k1×If2k2))
・・・(3)
式(2)に基づき導出される前記演算電圧の値が式(3)の左辺に代入され、KBはボルツマン定数を表し、qは電子の電荷量を表し、TDは前記対象温度を表し、ln(If3k3/(If1k1×If2k2))は(If3k3/(If1k1×If2k2))の自然対数を表す構成(第5の構成)であっても良い。
【0111】
上記第4又は第5の構成に係る温度センサにおいて、前記電流供給回路は、前記温度検出ダイオードに前記第1評価用電流を供給する第1供給動作を(M×k1)回実行し、前記温度検出ダイオードに前記第2評価用電流を供給する第2供給動作を(M×k2)回実行し、前記温度検出ダイオードに前記第3評価用電流を供給する第3供給動作を(M×k3)回実行し、前記電圧検出回路は、前記第1供給動作が実行されるたびに前記第1評価用電圧を検出することで前記第1評価用電圧の検出値を(M×k1)個取得し、前記第2供給動作が実行されるたびに前記第2評価用電圧を検出することで前記第2評価用電圧の検出値を(M×k2)個取得し、前記第3供給動作が実行されるたびに前記第3評価用電圧を検出することで前記第3評価用電圧の検出値を(M×k3)個取得し、前記演算回路は、前記第1評価用電圧についての(M×k1)個の検出値、前記第2評価用電圧についての(M×k2)個の検出値、及び、前記第3評価用電圧についての(M×k3)個の検出値を用いて、式(2)に基づき(M×ΔVF)を導出し、(M×ΔVF)の導出結果に応じた前記温度検出信号を生成し、Mは2以上の整数を表す構成(第6の構成)であっても良い。
【0112】
ΔVFのM倍を導出するに足る検出値群を用いて温度検出信号を生成することにより、検出の分解能を上げることが可能である。
【0113】
上記第1~第6の構成の何れかに係る温度センサにおいて、前記電流検出回路はA/D変換器(22)を有し、前記A/D変換器は、前記温度検出ダイオードに前記第1評価用電流~前記第3評価用電流が供給されているときの前記第1ノード及び前記第2ノード間の電圧をアナログ/デジタル変換することで、前記第1評価用電圧~前記第3評価用電圧の検出値を表す第1デジタル検出値~第3デジタル検出値(DVF1~DVF3)を生成し、前記演算回路は、前記第1デジタル検出値~前記第3デジタル検出値に基づき前記対象温度を検出する構成(第7の構成)であっても良い。
【0114】
上記第1又は第2の構成に係る温度センサにおいて、前記演算回路は、前記対象温度の検出結果を示す温度検出信号(SDET)を生成する構成(第8の構成)であっても良い。
【0115】
上記第1~第8の構成の何れかに係る温度センサにおいて、前記対象経路は抵抗成分(R)を含み、各評価用電流は前記温度検出ダイオード及び前記抵抗成分を通過する構成(第9の構成)であっても良い。
【0116】
上記第1~第9の構成の何れかに係る温度センサにおいて、前記温度検出ダイオードは、互いに接続されたコレクタ及びベースを有するバイポーラトランジスタにて形成される構成(第10の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0117】
D1 ダイオード
If 順方向電流
Vf 順方向電圧
R 抵抗成分
VF 電圧
1 温度センサ
10 電流供給回路
11 定電流源
12~15 トランジスタ
16~18 スイッチ
20 電圧検出回路
21 バッファアンプ
22 ADC
30 演算回路
40 制御回路
61、62 ノード
If1~If3 評価用電流
SVF デジタル信号
DVF デジタル値
SDET 温度検出信号
DDET デジタル値
Tr1 トランジスタ
100 半導体装置