(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115238
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 7/01 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
G01K7/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020837
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田黒 義人
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056JT01
(57)【要約】
【課題】良好な温度検出を可能とする。
【解決手段】温度センサ(1)は、対象温度を有する位置に配置された温度検出ダイオード(Da)と、温度検出ダイオードの順方向に第1及び第2評価用電流(If1及びIf2)を互いに異なるタイミングで供給する電流供給回路(10)と、温度検出ダイオードへの第1、第2評価用電流の供給期間において温度検出ダイオードの順方向電圧と基準電圧(Vref)との差を増幅することにより第1、第2増幅電圧を生成する増幅回路(20)と、第1及び第2増幅電圧に基づき対象温度を検出する温度検出回路(30)と、対象温度に応じた温度を有する位置に配置された参照ダイオード(Db)を有し、参照ダイオードの順方向に参照用電流(If0)が供給されているときの参照ダイオードの順方向電圧を用いて基準電圧を生成する基準電圧生成回路(40)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象温度を有する位置に配置された温度検出ダイオードと、
前記温度検出ダイオードに対し前記温度検出ダイオードの順方向へ第1評価用電流及び第2評価用電流を互いに異なるタイミングで供給するよう構成された電流供給回路と、
前記温度検出ダイオードへの前記第1評価用電流の供給期間において前記温度検出ダイオードの順方向電圧と基準電圧との差を増幅することにより第1増幅電圧を生成し、且つ、前記温度検出ダイオードへの前記第2評価用電流の供給期間において前記温度検出ダイオードの順方向電圧と前記基準電圧との差を増幅することにより第2増幅電圧を生成するよう構成された増幅回路と、
前記第1増幅電圧及び前記第2増幅電圧に基づき前記対象温度を検出するよう構成された温度検出回路と、
前記対象温度に応じた温度を有する位置に配置された参照ダイオードを有し、前記参照ダイオードの順方向に参照用電流が供給されているときの前記参照ダイオードの順方向電圧を用いて前記基準電圧を生成するよう構成された基準電圧生成回路と、を備える
、温度センサ。
【請求項2】
前記第1評価用電流及び前記第2評価用電流は互いに異なる電流値を有し、
前記温度検出回路は、前記第1増幅電圧及び前記第2増幅電圧間の差に基づき前記対象温度を検出する
、請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記温度検出回路は、前記増幅回路から前記第1増幅電圧及び前記第2増幅電圧を入力アナログ電圧として受け、前記第1増幅電圧を第1デジタル信号に変換し且つ前記第2増幅電圧を第2デジタル信号に変換するよう構成されたAD変換器と、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号間の差に基づき前記対象温度を検出するよう構成された演算回路と、を備える
、請求項2に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記電流供給回路は、前記第2評価用電流と同じ電流値を有する電流を前記参照用電流として前記参照ダイオードに供給する
、請求項1~3の何れかに記載の温度センサ。
【請求項5】
前記温度検出回路は、前記対象温度の検出結果を示す温度検出信号を生成する
、請求項1~3の何れかに記載の温度センサ。
【請求項6】
前記温度検出ダイオード及び前記参照ダイオードは、夫々に、互いに接続されたコレクタ及びベースを有するバイポーラトランジスタにて形成される
、請求項1~3の何れかに記載の温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
PN接合によるダイオードを用いて温度検出を行う温度センサが広く用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイオードを用いて温度検出を行う温度センサにおいて、性能面で改善の余地がある。
【0005】
本開示は、良好な温度検出を可能とする温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る温度センサは、対象温度を有する位置に配置された温度検出ダイオードと、前記温度検出ダイオードに対し前記温度検出ダイオードの順方向へ第1評価用電流及び第2評価用電流を互いに異なるタイミングで供給するよう構成された電流供給回路と、前記温度検出ダイオードへの前記第1評価用電流の供給期間において前記温度検出ダイオードの順方向電圧と基準電圧との差を増幅することにより第1増幅電圧を生成し、且つ、前記温度検出ダイオードへの前記第2評価用電流の供給期間において前記温度検出ダイオードの順方向電圧と前記基準電圧との差を増幅することにより第2増幅電圧を生成するよう構成された増幅回路と、前記第1増幅電圧及び前記第2増幅電圧に基づき前記対象温度を検出するよう構成された温度検出回路と、前記対象温度に応じた温度を有する位置に配置された参照ダイオードを有し、前記参照ダイオードの順方向に参照用電流が供給されているときの前記参照ダイオードの順方向電圧を用いて前記基準電圧を生成するよう構成された基準電圧生成回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、良好な温度検出を可能とする温度センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係り、ダイオードに関わる電流及び電圧の説明図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る温度センサの構成図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る温度センサの動作フローチャートである。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係り、温度検出に関わる演算値の温度依存性を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係り、ダイオードにおける順方向電流及び順方向電圧の関係を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に属する第4実施例に係り、ダイオードを構成するバイポーラトランジスタを示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、温度センサを内包するセンサ装置の構成図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に属する第6実施例に係り、温度センサの変形構成図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に属する第6実施例に係り、温度センサが組み込まれた半導体装置の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0010】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。
【0011】
MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。
【0012】
任意のスイッチを1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成することができ、或るスイッチがオン状態のときには当該スイッチの両端間が導通する一方で或るスイッチがオフ状態のときには当該スイッチの両端間が非導通となる。
【0013】
以下、任意のトランジスタ又はスイッチについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。また、任意のトランジスタ又はスイッチについて、トランジスタ又はスイッチがオン状態となっている期間をオン期間と称し、トランジスタ又はスイッチがオフ状態となっている期間をオフ期間と称する。
【0014】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0015】
図1を参照して、ダイオードを用いた温度センサによる温度検出方法を説明する。
図1において、ダイオードDaは半導体のPN接合により形成されるダイオードである。ダイオードDaの順方向電流を記号“If”にて表す。ダイオードDaに順方向電流Ifを供給しているときに、ダイオードDaに発生する順方向電圧を記号“Vf”にて表す。ショックレーのダイオード方程式により、下記式(A1)が成立する。
Vf=(K
B/q)×T
D×ln(If/Is) ・・・(A1)
【0016】
ここで、KBはボルツマン定数を表し、qは電子の電荷量を表す。故に(KB/q)は固定値を持つ。TDはダイオードDaの温度(ダイオードDaが有する温度)を表す。IsはダイオードDaの飽和電流を表す。尚、本明細書に示される各式において、ln(x)は、xの自然対数を表す。故に例えば、式(A1)におけるln(If/Is)は、(If/Is)の自然対数を表す。
【0017】
飽和電流Isは、基本的にはダイオードDaの種類に依存して定まる一定値を持つ。このため、既知の順方向電流IfをダイオードDaに供給したときの順方向電圧Vfを検出することにより、温度TDを検出できる。
【0018】
しかしながら、ダイオードDaの製造ばらつきによって、飽和電流Isはばらつく。これを考慮し、以下の式(A2)及び(A3)を満たす電圧Vf1及びVf2を検出し、電圧Vf1及びVf2から式(A4)に従って電圧ΔVfを求めることができる。
【0019】
Vf1=(KB/q)×TD×ln(If1/Is) ・・・(A2)
Vf2=(KB/q)×TD×ln(If2/Is) ・・・(A3)
ΔVf=Vf1-Vf2
=(KB/q)×TD×ln(If1/If2) ・・・(A4)
【0020】
電流If1及びIf2は互いに異なる順方向電流Ifを表す。電圧Vf1は、“If=If1”を満たす順方向電流IfをダイオードDaに供給することでダイオードDaに発生する順方向電圧Vfである。Vf2は、“If=If2”を満たす順方向電流IfをダイオードDaに供給することでダイオードDaに発生する順方向電圧Vfである。
【0021】
式(A4)は飽和電流Isに依存しない。このため、電圧Vf1及びVf2の差分から電圧ΔVfを求めて式(A4)に従う演算を行うことで、飽和電流Isのばらつきの影響を受けずに、温度TDを求めることができる。
【0022】
図2に本実施形態に係る温度センサ1の構成図を示す。温度センサ1により検出(換言すれば測定)されるべき温度を対象温度と称する。温度センサ1は上記式(A1)~(A4)に基づく原理を用いて対象温度を検出する。温度センサ1を半導体集積回路を用いて形成することができる。
【0023】
温度センサ1はダイオードDaを温度検出ダイオードとして有し、ダイオードDaを用いて対象温度を検出する(換言すれば測定する)。ダイオードDaは対象温度を有する位置に配置される。このため、ダイオードDaの温度TDは対象温度に等しい。温度センサ1において、ダイオードDaのアノードはノードNDaに接続され、ダイオードDaのカソードはグランドに接続される。温度センサ1において、特に記述なき限り、順方向電流IfとはダイオードDaの順方向電流を指すものとする。
【0024】
温度センサ1は、ダイオードDaに加えて、電流供給回路10、増幅回路20、温度検出回路30、基準電圧生成回路40及び制御回路50を備える。
【0025】
電流供給回路10は、ダイオードDaに対し第1及び第2評価用電流を互いに異なるタイミングで供給する。第1及び第2評価用電流は夫々にダイオードDaの順方向に供給される。第1評価用電流を、以下では記号“If1”にて参照し、評価用電流If1と称する。同様に、第2評価用電流を、以下では記号“If2”にて参照し、評価用電流If2と称する。評価用電流If1及びIf2は互いに異なる電流値を持つ。評価用電流If1、If2がダイオードDaに供給されるとき、夫々、評価用電流If1、If2はダイオードDaの順方向電流Ifである。
【0026】
電流供給回路10は、定電流源11と、トランジスタ12~15と、スイッチ16及び17と、を備える。トランジスタ12~15はPチャネル型のMOSFETである。トランジスタ12~15の各ソースは電源電圧VDD1が印加される端子に接続される。電源電圧VDD1は所定の正の直流電圧値を有する。トランジスタ12のゲート及びドレインと、トランジスタ13~15の各ゲートは互いに共通接続される。定電流源11はトランジスタ12のドレインとグランドとの間に設けられる。トランジスタ13のドレインはノードNDbに接続される。トランジスタ14のドレインはスイッチ16の第1端に接続され、トランジスタ15のドレインはスイッチ17の第1端に接続される。スイッチ16及び17の夫々の第2端はノードNDaに共通接続される。
【0027】
定電流源11はトランジスタ12のドレインからグランドに向けて流れる一定の電流Iaを発生させる。故にトランジスタ12のドレイン電流は電流Iaである。電流Iaは所定電流値を有する。トランジスタ12~15はカレントミラー回路を形成する。このため、トランジスタ13~15の夫々には電流Iaに比例するドレイン電流が流れる。トランジスタ13のドレイン電流は参照用電流If0であり、トランジスタ14のドレイン電流は評価用電流If1であり、トランジスタ15のドレイン電流は評価用電流If2である。
【0028】
但し、瞬間的な電流の流れを無視すれば、トランジスタ14のドレイン電流はスイッチ16がオンであるときにのみ発生し、トランジスタ15のドレイン電流はスイッチ17がオンであるときにのみ発生する。制御回路50により、スイッチ16及び17の何れか一方のみがオンに制御される、又は、スイッチ16及び17が共にオフに制御される。
【0029】
スイッチ16のオン期間において“If=If1”である。“If=If1”とは、評価用電流If1がダイオードDaの順方向電流Ifとして流れることを意味する。スイッチ17のオン期間において“If=If2”である。“If=If2”とは、評価用電流If2がダイオードDaの順方向電流Ifとして流れることを意味する。ノードNDaにおける電圧を記号“Vsns”にて参照し、センス電圧Vsnsと称する。スイッチ16のオン期間におけるセンス電圧Vsnsは、“If=If1”であるときのダイオードDaの順方向電圧Vfである。スイッチ17のオン期間におけるセンス電圧Vsnsは、“If=If2”であるときのダイオードDaの順方向電圧Vfである。
【0030】
増幅回路20に対してセンス電圧Vsnsが入力される。また、基準電圧生成回路40からの基準電圧Vrefも増幅回路20に入力される。増幅回路20は、センス電圧Vsns及び基準電圧Vref間の差を増幅し、増幅により得られた電圧を増幅電圧Vampとして出力する。
【0031】
具体的には、増幅回路20はオペアンプ21と抵抗22及び23を備える非反転増幅回路である。オペアンプ21は非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を有する。オペアンプ21の非反転入力端子はノードNDaに接続され、センス電圧Vsnsを受ける。抵抗22の第1端に対し基準電圧Vrefが入力される。抵抗22の第2端と抵抗23の第1端はオペアンプ21の反転入力端子に共通接続される。抵抗23の第2端はオペアンプ21の出力端子に接続される。オペアンプ21の出力端子に増幅電圧Vampが加わる。抵抗22及び23の抵抗値の比に基づき増幅回路20の増幅率が設定される。増幅回路20の増幅率を記号“AF”にて表す。そうすると、以下の式(B1)を満たす増幅電圧Vampが生成される。増幅率AFは1より大きければ任意である。
Vamp=(Vsns-Vref)×AF+Vref ・・・(B1)
【0032】
オペアンプ21は電源電圧VDD2の供給を受け、電源電圧VDD2に基づき駆動する。電源電圧VDD2は所定の正の直流電圧値を有する。電源電圧VDD2は上述の電源電圧VDD1と一致していても良いし、相違していても良い。電源電圧VDD2はオペアンプ21に対する高電位側の電源電圧であり、オペアンプ21に対する低電位側の電源電圧は0Vである。故に、オペアンプ21の出力電圧(即ち増幅電圧Vamp)は、0V以上且つ電源電圧VDD2以下の電圧である。
【0033】
温度検出回路30は、AD変換器であるADC31と演算回路32とを備える。ADC31は増幅回路20から出力される増幅電圧Vampを入力アナログ電圧として受け、入力アナログ電圧のAD変換(アナログ/デジタル変換)を行う。AD変換において、ADC31は、制御回路50により指定されたタイミングで入力アナログ電圧をサンプリングし、サンプリングした入力アナログ電圧をデジタル信号に変換する。ADC31はAD変換により得られたデジタル信号SADCを出力する。デジタル信号SADCは、サンプリングした入力アナログ電圧の値に相当するデジタル値を有する。ADC31はデジタル信号SADCを演算回路32に出力する。
【0034】
ADC31は電源電圧VDD2の供給を受け、電源電圧VDD2に基づき駆動する。電源電圧VDD2はADC31に対する高電位側の電源電圧であり、ADC31に対する低電位側の電源電圧は0Vである。故に、ADC31の入力ダイナミックレンジは0V以上且つ電源電圧VDD2以下である。即ち、ADC31は、0V以上且つ電源電圧VDD2以下の入力アナログ電圧を正しくデジタル信号SADCに変換することができる。入力アナログ電圧が負の電圧であるとき又は入力アナログ電圧が電源電圧VDD2を超えるとき、ADC31は入力アナログ電圧を正しくデジタル信号SADCに変換することができない。デジタル信号SADCのデジタル値は最小デジタル値から最大デジタル値までの範囲内の値である。最大デジタル値は最小デジタル値よりも大きい。ADC31が10ビットのAD変換器であるとき、最小デジタル値は0であって且つ最大デジタル値は1023である。
入力アナログ電圧が0Vから電源電圧VDD2までの範囲にあるとき、入力アナログ電圧の増大につれて、デジタル信号SADCのデジタル値は最小デジタル値から最大デジタル値に向けて単調に増大する。入力アナログ電圧が負の電圧であるとき、入力アナログ電圧の大きさに依らずデジタル信号SADCのデジタル値は最小デジタル値と一致する。入力アナログ電圧が電源電圧VDD2を超えるとき、入力アナログ電圧の大きさに依らずデジタル信号SADCのデジタル値は最大デジタル値と一致する。
【0035】
演算回路32は、ADC31からのデジタル信号SADCに基づき所定の演算処理を行うことで対象温度を検出する。演算回路32は対象温度の検出結果を示す温度検出信号SDETを生成及び出力する。対象温度の検出と、温度検出信号SDETの生成又は出力は、互いに同義であると解しても良い。上記演算処理を行うロジック回路にて演算回路32を構成することができる。温度検出信号SDETはデジタル信号である。温度検出信号SDETが有するデジタル値は対象温度の検出値を示す。尚、温度検出信号SDETをアナログ信号とする変形も可能である。
【0036】
演算回路32は電源電圧VDD2の供給を受け、電源電圧VDD2に基づき駆動する。電源電圧VDD2は演算回路32に対する高電位側の電源電圧であり、演算回路32に対する低電位側の電源電圧は0Vである。尚、演算回路32は電源電圧VDD2とは異なる電源電圧に基づき駆動するものであっても良い。
【0037】
基準電圧生成回路40は、ダイオードDbを参照ダイオードとして有すると共に、バッファアンプ41を有する。ダイオードDbはダイオードDaに近接した位置に配置される。このため、ダイオードDbの温度は実質的に対象温度と一致する。しかしながら、ダイオードDbの温度は対象温度と若干相違し得る。何れにせよ、ダイオードDbは対象温度に応じた温度を有する位置に配置され、対象温度が上昇すればダイオードDbの温度も上昇し且つ対象温度が低下すればダイオードDbの温度も低下する。また、ダイオードDa及びDbは互いに同じ構造を有し、故に互いに同じ電気的特性を有する。ここにおける電気的特性は温度特性を含む。
【0038】
ダイオードDbのアノードはノードNDbに接続され、ダイオードDbのカソードはグランドに接続される。上述したようにトランジスタ13のドレインはノードNDbに接続されるため、トランジスタ13のドレイン電流である参照用電流If0がダイオードDbの順方向に流れる。参照用電流If0は評価用電流If2と同じ電流値を有する。また、評価用電流If1の方が評価用電流If2よりも大きいものとする。但し、評価用電流If1を評価用電流If2より小さくする変形も可能である。
【0039】
ノードNDbにおける電圧を記号“Vref0”にて参照する。ノードNDbにおける電圧Vref0は、ダイオードDbの順方向に参照用電流If0が流れるときのダイオードDbの順方向電圧である。
【0040】
バッファアンプ41は、ノードNDbにおける電圧Vref0を十分に高いインピーダンスにて受け、ノードNDbにおける電圧Vref0に応じた電圧を十分に低いインピーダンスにて出力する。ここでは、バッファアンプ41はボルテージフォロアであるものとし、故にバッファアンプ41の出力電圧は電圧Vref0と同じ電圧値を有するものとする。バッファアンプ41の出力電圧が基準電圧Vrefである。尚、変形として、バッファアンプ41にて電圧Vref0を1倍を超える増幅率で増幅し、増幅された電圧が基準電圧Vrefとして出力されるようにしても良い。
【0041】
詳細には、バッファアンプ41はオペアンプから成り、バッファアンプ41としてのオペアンプにおいて、反転入力端子及び出力端子は互いに接続され、非反転入力端子はノードNDbに接続されて電圧Vref0を受ける。バッファアンプ41としてのオペアンプの出力端子から基準電圧Vrefが出力され、バッファアンプ41としてのオペアンプの出力端子は抵抗22の第1端に接続される。バッファアンプ41としてのオペアンプは電源電圧VDD1の供給を受け、電源電圧VDD1に基づき駆動する。バッファアンプ41に対する低電位側の電源電圧は0Vであって良い。
【0042】
制御回路50はスイッチ16及び17のオン、オフを個別に制御する。また制御回路50は、ADC31によるAD変換の実行タイミングの制御を行う。AD変換の実行タイミングの制御は、ADC31におけるサンプリングのタイミング制御を含む。更に制御回路50は演算回路32による上記演算処理の実行制御を行う。
【0043】
図3に温度センサ1の動作フローチャートを示す。
図3を参照して、温度センサ1の動作の流れを説明する。
【0044】
まずステップS11において、制御回路50は、スイッチ16及び17の内、スイッチ16のみをオンに制御することで“If=If1”に設定する。“If=If1”に設定するとは、ダイオードDaの順方向電流Ifとして評価用電流If1がダイオードDaに供給されるよう電流供給回路10を制御することを指す。
【0045】
“If=If1”に設定されているときのセンス電圧Vsnsを特にセンス電圧Vsns1と称する。ステップS11において、“If=If1”に設定されているときの増幅電圧Vampが増幅回路20から出力される。“If=If1”に設定されているときの増幅電圧Vampは、センス電圧Vsns1と基準電圧Vrefとの差の増幅電圧Vampであり、以下、増幅電圧Vamp1と称される。ステップS11において、制御回路50の制御の下、ADC31は増幅電圧Vamp1のAD変換を行う。これによりデジタル検出値ADCOUT1が得られる。即ち、増幅電圧Vamp1のAD変換により得られるデジタル信号SADC(第1デジタル信号)はデジタル検出値ADCOUT1を有する。デジタル検出値ADCOUT1は、増幅電圧Vamp1のアナログ電圧値を表すデジタル値である。
【0046】
続くステップS12において、制御回路50は、スイッチ16及び17の内、スイッチ17のみをオンに制御することで“If=If2”に設定する。“If=If2”に設定するとは、ダイオードDaの順方向電流Ifとして評価用電流If2がダイオードDaに供給されるよう電流供給回路10を制御することを指す。
【0047】
“If=If2”に設定されているときのセンス電圧Vsnsを特にセンス電圧Vsns2と称する。ステップS12において、“If=If2”に設定されているときの増幅電圧Vampが増幅回路20から出力される。“If=If2”に設定されているときの増幅電圧Vampは、センス電圧Vsns2と基準電圧Vrefとの差の増幅電圧Vampであり、以下、増幅電圧Vamp2と称される。ステップS12において、制御回路50の制御の下、ADC31は増幅電圧Vamp2のAD変換を行う。これによりデジタル検出値ADCOUT2が得られる。即ち、増幅電圧Vamp2のAD変換により得られるデジタル信号SADC(第2デジタル信号)はデジタル検出値ADCOUT2を有する。デジタル検出値ADCOUT2は、増幅電圧Vamp2のアナログ電圧値を表すデジタル値である。
【0048】
尚、ここでは、ステップS11の後にステップS12の処理が実行されることを想定しているが、ステップS12の後にステップS11の処理が実行されても良い。何れにせよステップS11及びS12の処理の後、ステップS13に進む。
【0049】
ステップS13において、温度検出回路30は、増幅電圧Vamp1と増幅電圧Vamp2との差電圧(Vamp1-Vamp2)に基づき対象温度を検出する。実際には、ステップS13において演算回路32がデジタル検出値ADCOUT1及びADCOUT2に基づいて対象温度を検出する。その後、ステップS14において、演算回路32は対象温度の検出結果を示す温度検出信号SDETを外部回路(不図示)に対して出力する。外部回路は、対象温度の検出結果を必要とする任意の回路である。
【0050】
数式を用いてステップS11~S14の動作に関する説明を補足する。まずステップS11及びS12にて発生するセンス電圧Vsns1及びVsns2は、以下の式(C1)及び(C2)を満たす。式(C1)及び(C2)の右辺は上記式(A2)及び(A3)の右辺と同じものである。
Vsns1=(KB/q)×TD×ln(If1/Is) ・・・(C1)
Vsns2=(KB/q)×TD×ln(If2/Is) ・・・(C2)
【0051】
増幅回路20の入出力電圧に関する関係式(上記式(B1)に相当)より、増幅電圧Vamp1及びVamp2は、以下の式(C3)及び(C4)を満たす。
Vamp1=(Vsns1-Vref)×AF+Vref ・・・(C3)
Vamp2=(Vsns2-Vref)×AF+Vref ・・・(C4)
【0052】
そうすると、差電圧(Vamp1-Vamp2)は、以下の式(C5)にて表される。差電圧(Vamp1-Vamp2)は上記式(A4)にて示される電圧ΔVfをAF倍したものに等しい。
Vamp1-Vamp2
=((Vsns1-Vref)×AF+Vref)-((Vsns2-Vref)×AF+Vref)=(Vsns1-Vsns2)×AF
=((KB/q)×TD×ln(If1/Is)-(KB/q)×TD×ln(If2/Is))×AF
=(KB/q)×TD×ln(If1/If2)×AF
・・・(C5)
【0053】
ボルツマン定数KB、電子の電荷量q、評価用電流If1及びIf2の各値、並びに、増幅回路20の増幅率AFは、温度センサ1(演算回路32)にとって既知である。このため、式(C5)に従い、演算回路32は対象温度(即ち温度TD)を求めることができる。
【0054】
実際には、演算回路32は差(ADCOUT1-ADCOUT2)を導出する。デジタル検出値ADCOUT1及びADCOUT2は増幅電圧Vamp1及びVamp2のアナログ電圧値を表すため、差(ADCOUT1-ADCOUT2)により差電圧(Vamp1-Vamp2)が数値で表現される。式(C5)から分かるように差電圧(Vamp1-Vamp2)は温度T
Dに比例するため、差(ADCOUT1-ADCOUT2)も温度T
Dに比例する(
図4参照)。
【0055】
このため、演算回路32は、差(ADCOUT1-ADCOUT2)そのもの又は差(ADCOUT1-ADCOUT2)をK倍した値を温度検出信号SDETに持たせて良い(K>1)。温度検出信号SDETの値によって対象温度(即ち温度TD)が表現される。増幅回路20の増幅率AF又は電流比(If1/If2)を調整することで、対象温度の検出分解能を調整できる。例えば、温度検出信号SDETの値における1の変化は温度TDにおける0.5℃の変化に相当し、この際、検出分解能は0.5℃である。
【0056】
以下、複数の実施例の中で、温度センサ1に関わる幾つかの具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0057】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。第1実施例においては、評価用電流If1が50μA(マイクロアンペア)であり、評価用電流If2及び参照用電流If0が5μAであり、増幅回路20の増幅率AFが8であり、且つ、電源電圧VDD2が1.5Vであることを想定する。このとき、上記式(C5)にて示される差電圧(Vamp1-Vamp2)は、以下の式で表される。
Vamp1-Vamp2
=(KB/q)×TD×ln(If1/If2)×AF
=(KB/q)×TD×ln(10)×8
【0058】
図5において曲線610_175及び610_m25は、夫々に、ダイオードDaにおける順方向電流Ifと順方向電圧Vfとの関係を示している。但し、曲線610_175は温度T
Dが175℃であるときの当該関係を示し、曲線610_m25は温度T
Dが-25℃であるときの当該関係を示す。上述したように、ダイオードDa及びDbは互いに同じ電気的特性を有するように形成されるため、ダイオードDbにおける順方向電流及び順方向電圧間の関係も曲線610_175及び610_m25に従う(ここでは、ばらつき等を無視)。また、ダイオードDa及びDbの温度は完全に一致していると考える。
【0059】
温度TDが-25℃である場合において、ダイオードDaに対して5μAの順方向電流Ifが供給されるときに発生するダイオードDaの順方向電圧Vfは0.744Vであるとする。同様に、温度TDが-25℃である場合において、ダイオードDbに対して5μAの順方向電流が供給されるときに発生するダイオードDbの順方向電圧も0.744Vであるとする。
温度TDが-25℃である場合において、ダイオードDaに対して50μAの順方向電流Ifが供給されるときに発生するダイオードDaの順方向電圧Vfは0.796Vであるとする。同様に、温度TDが-25℃である場合において、ダイオードDbに対して50μAの順方向電流が供給されるときに発生するダイオードDbの順方向電圧も0.796Vであるとする。
【0060】
温度TDが175℃である場合において、ダイオードDaに対して5μAの順方向電流Ifが供給されるときに発生するダイオードDaの順方向電圧Vfは0.329Vであるとする。同様に、温度TDが175℃である場合において、ダイオードDbに対して5μAの順方向電流が供給されるときに発生するダイオードDbの順方向電圧も0.329Vであるとする。
温度TDが175℃である場合において、ダイオードDaに対して50μAの順方向電流Ifが供給されるときに発生するダイオードDaの順方向電圧Vfは0.425Vであるとする。同様に、温度TDが175℃である場合において、ダイオードDbに対して5μ0Aの順方向電流が供給されるときに発生するダイオードDbの順方向電圧も0.425Vであるとする。
【0061】
そうすると、温度TDが-25℃であって且つ“If=If1”であるときの増幅電圧Vamp1は、上記式(C3)に従い、“Vamp1=(Vsns1-Vref)×AF+Vref=(0.796-0.744)×8+0.744=1.16”より、1.16Vである。
一方、温度TDが175℃であって且つ“If=If1”であるときの増幅電圧Vamp1は、上記式(C3)に従い、“Vamp1=(Vsns1-Vref)×AF+Vref=(0.425-0.329)×8+0.329=1.097”より、1.097Vである。
温度TDが-25℃から175℃までの温度範囲にあるとき、増幅電圧Vamp1は1.16Vから1.097Vまでの電圧範囲に収まり、当該電圧範囲はADC31の入力ダイナミックレンジに収まる。
【0062】
また、温度TDが-25℃であって且つ“If=If2”であるときの増幅電圧Vamp2は、上記式(C4)に従い、“Vamp2=(Vsns2-Vref)×AF+Vref=(0.744-0.744)×8+0.744=0.744”より、0.744Vである。
一方、温度TDが175℃であって且つ“If=If2”であるときの増幅電圧Vamp2は、上記式(C4)に従い、“Vamp2=(Vsns2-Vref)×AF+Vref=(0.329-0.329)×8+0.329=0.329”より、0.329Vである。
温度TDが-25℃から175℃までの温度範囲にあるとき、増幅電圧Vamp2は0.744Vから0.329Vまでの電圧範囲に収まり、当該電圧範囲はADC31の入力ダイナミックレンジに収まる。
【0063】
ここで、温度センサ1との対比に供される仮想温度センサについて説明する。仮想温度センサでは基準電圧Vrefが0.75Vにて固定される。基準電圧Vrefが0.75Vに固定される点を除き、仮想温度センサは
図2の温度センサ1と同様の構成を持つ。
【0064】
仮想温度センサにおいて、温度TDが-25℃であって且つ“If=If1”であるときの増幅電圧Vamp1は、上記式(C3)に従い、“Vamp1=(Vsns1-Vref)×AF+Vref=(0.796-0.75)×8+0.75=1.118”より、1.118Vである。
仮想温度センサにおいて、温度TDが175℃であって且つ“If=If1”であるときの増幅電圧Vamp1は、上記式(C3)に従い、“Vamp1=(Vsns1-Vref)×AF+Vref=(0.425-0.75)×8+0.75=-1.850”より、-1.850Vである。
仮想温度センサにおいて、温度TDが-25℃から175℃までの温度範囲にあるとき、増幅電圧Vamp1は1.118Vから-1.850Vまでの電圧範囲内で変動し、当該電圧範囲はADC31の入力ダイナミックレンジに収まらない。
【0065】
仮想温度センサにおいて、温度TDが-25℃であって且つ“If=If2”であるときの増幅電圧Vamp2は、上記式(C4)に従い、“Vamp2=(Vsns2-Vref)×AF+Vref=(0.744-0.75)×8+0.75=0.702”より、0.702Vである。
仮想温度センサにおいて、温度TDが175℃であって且つ“If=If2”であるときの増幅電圧Vamp2は、上記式(C4)に従い、“Vamp2=(Vsns2-Vref)×AF+Vref=(0.329-0.75)×8+0.75=-2.618”より、-2.618Vである。
仮想温度センサにおいて、温度TDが-25℃から175℃までの温度範囲にあるとき、増幅電圧Vamp1は0.702Vから-2.618Vまでの電圧範囲内で変動し、当該電圧範囲はADC31の入力ダイナミックレンジに収まらない。
【0066】
このように仮想温度センサでは、温度変化に対してADC31への入力アナログ電圧を入力ダイナミックレンジ内に収めることが難しい。仮想温度センサにおいて増幅率A
Fを低減させればADC31への入力アナログ電圧を入力ダイナミックレンジ内に収めることが可能となるが、増幅率A
Fの低減は温度検出の分解能低下に繋がる。これに対し、
図2の温度センサ1では、温度変化に対するダイオードDaの特性変化と同様の特性変化をもたらすダイオードDbを用いて基準電圧Vrefを生成するため、温度検出の分解能低下を招くことなくADC31への入力アナログ電圧を入力ダイナミックレンジ内に収めることができる(即ち高分解能且つ正確な温度検出が可能である)。
【0067】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。ダイオードDa及びDbに互いに同じ構造及び互いに同じ電気的特性を持たせることが基本である。しかしながら、ダイオードDbの構造はダイオードDaの構造と多少異なっていても良く、ダイオードDbの電気的特性はダイオードDaの電気的特性と多少異なっていても構わない。ダイオードDbの電気的特性がダイオードDaの電気的特性と多少異なっていても、第1実施例で述べたものと同様の作用及び効果を得ることができる。
【0068】
例えば第1実施例に示した数値例において、温度TDが-25℃であるときの基準電圧Vrefが0.744Vではなく0.740Vである一方で、温度TDが175℃であるときの基準電圧Vrefが0.329Vではなく0.325Vであったとしても、ADC31への入力アナログ電圧はADC31の入力ダイナミックレンジ内に収まる。
【0069】
<<第3実施例>>
第2実施例を説明する。参照用電流If0は評価用電流If2と同じ電流値を有することが基本である。しかしながら、参照用電流If0の電流値は評価用電流If2の電流値と多少異なっていても構わない。参照用電流If0の電流値が評価用電流If2の電流値と多少異なっていても、第1実施例で述べたものと同様の作用及び効果を得ることができる。
【0070】
例えば第1実施例に示した数値例において、参照用電流If0の値が5μAから電流値ΔIだけずれていたとしても、電流値ΔIが過度に大きくなければ、ADC31への入力アナログ電圧はADC31の入力ダイナミックレンジ内に収まる。
【0071】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。ダイオードDa及びDbはバイポーラトランジスタにより構成されるものであって良い。即ち、
図6に示す如く、NPN型バイポーラトランジスタであるトランジスタTraをダイオードDaとして用いると共に他のNPN型バイポーラトランジスタであるトランジスタTrbをダイオードDbとして用いるようにしても良い。この場合、トランジスタTraにおいて、コレクタ及びベースは互いに接続され、コレクタがダイオードDaのアノードとして機能してノードNDaに接続され、且つ、エミッタがダイオードDaのカソードとして機能してグランドに接続される。同様に、トランジスタTrbにおいて、コレクタ及びベースは互いに接続され、コレクタがダイオードDbのアノードとして機能してノードNDbに接続され、且つ、エミッタがダイオードDbのカソードとして機能してグランドに接続される。
【0072】
トランジスタTra及びTrbは互いに同じ構造を有し、故に互いに同じ電気的特性を有する。これにより、ダイオードDa及びDbの電気的特性が互いに同じとなる。但し、トランジスタTrbの構造はトランジスタTraの構造と多少異なっていても良く、トランジスタTrbの電気的特性はトランジスタTraの電気的特性と多少異なっていても構わない。この場合、ダイオードDa及びDbの電気的特性が互いに多少異なることになるが、第2実施例で述べたように特段の問題は生じない。
【0073】
尚、NPN型バイポーラトランジスタの代わりに、PNP型バイポーラトランジスタを用いてダイオードDa及びDbを形成しても良い。
【0074】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。
図7に第5実施例に係るセンサ装置1Aの構成を示す。センサ装置1Aは、
図2の温度センサ1に対してセレクタ61及び62を追加したものである。センサ装置1Aにおいて、セレクタ61に対して複数のセンス電圧が入力され、セレクタ61は制御回路50の制御に従い、複数のセンス電圧の何れか1つをオペアンプ21の非反転入力端子に出力する。センサ装置1Aにおいて、セレクタ62に対して複数の基準電圧が入力され、セレクタ62は制御回路50の制御に従い、複数の基準電圧の何れか1つを基準電圧Vrefとして抵抗22の第1端に出力する。
【0075】
セレクタ61に対して入力される複数のセンス電圧の内の1つが、センス電圧Vsnsである。セレクタ62に対して入力される複数の基準電圧の内の1つが、バッファアンプ41の出力電圧である。センサ装置1Aは温度センサを内包する。センサ装置1Aにおいて、セレクタ61がセンス電圧Vsnsをオペアンプ21の非反転入力端子に出力し且つセレクタ62がバッファアンプ41の出力電圧を基準電圧Vrefとして抵抗22の第1端に出力するとき、センサ装置1Aは
図2の温度センサ1と等価である。故にセンサ装置1Aは温度センサ1を内包すると考えることができる。
【0076】
センサ装置1Aでは、セレクタ61及び62を用いることで、増幅回路20を、電圧Vsns及びVref0間の差電圧の増幅用途とは異なる用途にも利用でき、ADC31を、電圧Vsns及びVref0間の差電圧のデジタル化とは異なる用途にも利用できる。
【0077】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。
【0078】
温度センサ1において、センス電圧Vsnsがオペアンプ21の反転入力端子側に、基準電圧Vrefがオペアンプ21の反転入力端子側に供給される変形が施されても良い。
図8に当該変形が施された温度センサ1である温度センサ1’を示す。温度センサ1’では、
図2の基準電圧生成回路40からバッファアンプ41が削除されて、ノードNDbにおける電圧Vref0がそのまま基準電圧Vrefとしてオペアンプ21の非反転入力端子に供給される。また温度センサ1’では、ノードNDaにおけるセンス電圧Vsnsがバッファアンプ41’を介して抵抗22の第1端に供給され、抵抗22の第2端がオペアンプ21の反転入力端子に接続される。これらの点を除き、
図8の温度センサ1’は
図2の温度センサ1と同様である。バッファアンプ41’は
図2のバッファアンプ41と同等の構成を有するボルテージフォロアである。詳細には、バッファアンプ41’はオペアンプから成り、バッファアンプ41としてのオペアンプにおいて、反転入力端子及び出力端子は互いに接続され、非反転入力端子はノードNDaに接続されてセンス電圧Vsnsを受ける。バッファアンプ41としてのオペアンプの出力端子から抵抗22の第1端に対してセンス電圧Vsnsに応じた電圧(センス電圧Vsnsと実質的に同じ電圧値を有する電圧)が出力される。ノードNDaにおけるセンス電圧Vsnsが、バッファアンプ41にてインピーダンス変換されてから、抵抗22の第1端に供給されることになる。
【0079】
ダイオードDa及びDbの各カソードの電位がグランド電位と一致する構成を上述したが、ダイオードDa及びDbの各カソードの電位はグランド電位と異なっていても良い。
【0080】
温度センサ1又はセンサ装置1Aは任意の半導体装置に組み込まれて良い。
図9は、温度センサ1又はセンサ装置1Aが組み込まれた半導体装置100の外観斜視図である。半導体装置100は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から半導体装置100の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置100が形成される。尚、
図9に示される半導体装置100の外部端子の数及び半導体装置100の筐体の種類は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。半導体装置100における半導体集積回路には、温度センサ1又はセンサ装置1Aが含まれる他、各種の機能回路が含まれる。機能回路は、例えばDC/DCコンバータ、モータドライバである。
【0081】
温度が検出されるべき位置を対象位置と称する。対象温度は対象位置における温度である。半導体装置100における任意の位置(例えば中央位置)を対象位置に設定することができる。半導体装置100において複数の位置が対象位置に設定されて良い。この場合、対象位置ごとに温度センサ1が設置されて良い。ダイオードDa及びDbの組を対象位置ごとに配置する一方で、複数組のダイオードDa及びDbに対して増幅回路20及び温度検出回路30から成る検出ブロックを共通に割り当て、セレクタ61及び62等を利用して増幅回路20への入力信号を切り替えることで、単一の検出ブロックを複数の対象温度の検出に兼用しても良い。
【0082】
実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。
【0083】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。
【0084】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0085】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0086】
本開示の一側面に係る温度センサ(1)は、対象温度を有する位置に配置された温度検出ダイオード(Da)と、前記温度検出ダイオードに対し前記温度検出ダイオードの順方向へ第1評価用電流(If1)及び第2評価用電流(If2)を互いに異なるタイミングで供給するよう構成された電流供給回路(10)と、前記温度検出ダイオードへの前記第1評価用電流の供給期間において前記温度検出ダイオードの順方向電圧と基準電圧(Vref)との差を増幅することにより第1増幅電圧(Vamp1)を生成し、且つ、前記温度検出ダイオードへの前記第2評価用電流の供給期間において前記温度検出ダイオードの順方向電圧と前記基準電圧との差を増幅することにより第2増幅電圧(Vamp2)を生成するよう構成された増幅回路(20)と、前記第1増幅電圧及び前記第2増幅電圧に基づき前記対象温度を検出するよう構成された温度検出回路(30)と、前記対象温度に応じた温度を有する位置に配置された参照ダイオード(Db)を有し、前記参照ダイオードの順方向に参照用電流(If0)が供給されているときの前記参照ダイオードの順方向電圧を用いて前記基準電圧を生成するよう構成された基準電圧生成回路(40)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0087】
仮に固定電圧を基準電圧に用いた場合、温度変化に対して増幅電圧が温度検出回路の入力ダイナミックレンジを超えることが懸念される。増幅率を低減させれば当該懸念を解消可能となるが、増幅率の低減は温度検出の分解能低下に繋がる。これを考慮し、第1の構成に係る温度センサでは、温度変化に対する温度検出ダイオードの特性変化と同様の特性変化をもたらす参照ダイオードを用いて基準電圧を生成する。これにより、温度検出の分解能低下を招くことなく増幅電圧を温度検出回路の入力ダイナミックレンジ内に収めることができる(即ち高分解能且つ正確な温度検出が可能である)。
【0088】
上記第1の構成に係る温度センサにおいて、前記第1評価用電流及び前記第2評価用電流は互いに異なる電流値を有し、前記温度検出回路は、前記第1増幅電圧及び前記第2増幅電圧間の差に基づき前記対象温度を検出する構成(第2の構成)であっても良い。
【0089】
上記第2の構成に係る温度センサにおいて、前記温度検出回路は、前記増幅回路から前記第1増幅電圧及び前記第2増幅電圧を入力アナログ電圧として受け、前記第1増幅電圧を第1デジタル信号に変換し且つ前記第2増幅電圧を第2デジタル信号に変換するよう構成されたAD変換器(31)と、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号間の差(ADCOUT1-ADCOUT2)に基づき前記対象温度を検出するよう構成された演算回路(32)と、を備える構成(第3の構成)であっても良い。
【0090】
入力アナログ電圧がAD変換器の入力ダイナミックレンジを超えると、正確な温度検出が不能となる。第3の構成に係る温度センサでは。温度変化に対する温度検出ダイオードの特性変化と同様の特性変化をもたらす参照ダイオードを用いて基準電圧を生成する。これにより、温度検出の分解能低下を招くことなく入力アナログ電圧をAD変換器の入力ダイナミックレンジ内に収めることができる(即ち高分解能且つ正確な温度検出が可能である)。
【0091】
上記第1~第3の構成の何れかに係る温度センサにおいて、前記電流供給回路は、前記第2評価用電流と同じ電流値を有する電流を前記参照用電流として前記参照ダイオードに供給する構成(第4の構成)であっても良い。
【0092】
上記第1~第4の構成の何れかに係る温度センサにおいて、前記温度検出回路は、前記対象温度の検出結果を示す温度検出信号を生成する構成(第5の構成)であっても良い。
【0093】
上記第1~第5の構成の何れかに係る温度センサにおいて、前記温度検出ダイオード及び前記参照ダイオードは、夫々に、互いに接続されたコレクタ及びベースを有するバイポーラトランジスタにて形成される構成(第6の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0094】
Da、Db ダイオード
If 順方向電流
Vf 順方向電圧
1、1’ 温度センサ
10 電流供給回路
11 定電流源
12~15 トランジスタ
16、17 スイッチ
20 増幅回路
21 オペアンプ
22、23 抵抗
30 温度検出回路
31 ADC
32 演算回路
40 基準電圧生成回路
41、41’ バッファアンプ
50 制御回路
NDa、NDb ノード
If0 参照用電流
If1、If2 評価用電流
Vref 基準電圧
Vamp 増幅電圧
SADC デジタル信号
SDET 温度検出信号
VDD1、VDD2 電源電圧
Vsns 電圧(センス電圧)
Ia 電流
Vref0 電圧
Tra、Trb トランジスタ
1A センサ装置
61、62 セレクタ
100 半導体装置