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特開2024-115241多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法、および、多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置
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  • 特開-多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法、および、多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置 図1
  • 特開-多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法、および、多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置 図2
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  • 特開-多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法、および、多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置 図10
  • 特開-多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法、および、多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置 図11
  • 特開-多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法、および、多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115241
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法、および、多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 38/00 20060101AFI20240819BHJP
   B21B 37/16 20060101ALI20240819BHJP
   B21B 13/14 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B21B38/00 D
B21B37/16
B21B13/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020843
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】片山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆広
【テーマコード(参考)】
4E124
【Fターム(参考)】
4E124AA07
4E124CC03
4E124DD19
4E124EE05
(57)【要約】
【課題】被圧延材の出側板厚偏差のうなりの原因となった2つのバックアップロールの組み合わせを特定する。
【解決手段】ロール径測定ステップS11は、すべてのバックアップロール40それぞれのロール径dを測定する。実測うなり周期測定ステップS12は、被圧延材Wの出側板厚偏差の実測うなり周期Tを測定する。圧延速度測定ステップS13は、被圧延材Wの圧延速度vを測定する。欠陥ロール対抽出ステップS20は、ロール径dと圧延速度vとに基づいて、バックアップロール群40gの中から欠陥ロール対を抽出する。欠陥ロール対は、実測うなり周期Tに最も近いうなり周期のうなりを発生させると想定される2つのバックアップロール40の組み合わせである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧延材を挟む一対のワークロールと、
前記一対のワークロールのそれぞれをロール背面側から支持する複数のバックアップロールを含む一対のバックアップロール群と、
を備える多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法であって、
前記被圧延材の圧延前に、すべての前記バックアップロールそれぞれのロール径を測定するロール径測定ステップと、
前記被圧延材の圧延中に、前記被圧延材の出側板厚偏差の実測うなり周期を測定する実測うなり周期測定ステップと、
前記被圧延材の圧延中に、前記被圧延材の圧延速度を測定する圧延速度測定ステップと、
前記ロール径測定ステップで測定した前記ロール径と前記圧延速度測定ステップで測定した前記圧延速度とに基づいて、前記バックアップロール群の中から欠陥ロール対を抽出する欠陥ロール対抽出ステップと、
を備え、
前記欠陥ロール対は、前記実測うなり周期測定ステップで測定した前記実測うなり周期に最も近いうなり周期のうなりを発生させると想定される2つの前記バックアップロールの組み合わせである、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法であって、
前記欠陥ロール対抽出ステップは、
前記バックアップロール群から1つの前記バックアップロールを選択し、
前記選択した前記バックアップロールの前記ロール径と、前記圧延速度と、前記実測うなり周期と、に基づいて、前記選択した前記バックアップロールと対となって前記実測うなり周期のうなりを発生させる前記バックアップロールの推定ロール径を算出し、
前記推定ロール径を、すべての前記バックアップロールについて算出し、
前記推定ロール径に最も近い前記ロール径を有する前記バックアップロールと、この前記バックアップロールと対となる前記選択された前記バックアップロールと、の組み合わせを、前記欠陥ロール対として抽出する、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法。
【請求項3】
請求項1に記載の多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法であって、
前記欠陥ロール対抽出ステップは、
前記バックアップロール群から2つの前記バックアップロールを選択し、
前記選択した2つの前記バックアップロールそれぞれの前記ロール径と、うなりの公式と、に基づいて、前記選択した2つの前記バックアップロールが発生させる推定うなり周期を算出し、
前記推定うなり周期を、2つの前記バックアップロールのすべての組み合わせについて算出し、
前記実測うなり周期に最も近い前記推定うなり周期のうなりを発生させる、2つの前記バックアップロールの組み合わせを、前記欠陥ロール対として抽出する、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法。
【請求項4】
請求項1に記載の多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法であって、
前記欠陥ロール対抽出ステップは、
前記圧延速度と前記ロール径とに基づいて、すべての前記バックアップロールそれぞれの回転周期を算出し、
前記バックアップロール群から2つの前記バックアップロールを選択し、
前記選択した2つの前記バックアップロールそれぞれの回転周期の最小公倍数を算出することで、前記選択した2つの前記バックアップロールが発生させる推定うなり周期を算出し、
前記推定うなり周期を、2つの前記バックアップロールのすべての組み合わせについて算出し、
前記実測うなり周期に最も近い前記推定うなり周期のうなりを発生させる、2つの前記バックアップロールの組み合わせを、前記欠陥ロール対として抽出する、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法であって、
前記多段圧延機は、20段圧延機であり、
前記多段圧延機は、
前記一対のワークロールのそれぞれを前記ロール背面側から回転自在に支持する複数の第一中間ロールを含む一対の第一中間ロール群と、
前記第一中間ロールのそれぞれを前記ロール背面側から回転自在に支持する複数の第二中間ロールを含む一対の第二中間ロール群と、
を備え、
前記第一中間ロールは、前記被圧延材の厚さ方向の両側に2つずつ設けられ、
前記第二中間ロールは、前記被圧延材の厚さ方向の両側に3つずつ設けられ、
前記バックアップロール群は、前記第二中間ロールのそれぞれを前記ロール背面側から回転自在に支持し、
前記バックアップロールは、前記被圧延材の厚さ方向の両側に4つずつ設けられる、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法。
【請求項6】
被圧延材を圧延する多段圧延機と、
制御部と、
を備え、
前記多段圧延機は、
前記被圧延材を挟む一対のワークロールと、
前記一対のワークロールのそれぞれをロール背面側から支持する複数のバックアップロールを含む一対のバックアップロール群と、
を備え、
前記制御部は、
前記被圧延材の圧延前に測定された、すべての前記バックアップロールそれぞれのロール径を取得するロール径取得部と、
前記被圧延材の圧延中に測定された前記被圧延材の出側板厚偏差の実測うなり周期を取得する実測うなり周期取得部と、
前記被圧延材の圧延中に測定された前記被圧延材の圧延速度を取得する圧延速度取得部と、
前記ロール径取得部で取得された前記ロール径と前記圧延速度取得部で取得された前記圧延速度とに基づいて、前記バックアップロール群の中から欠陥ロール対を抽出する欠陥ロール対抽出部と、
を備え、
前記欠陥ロール対は、前記実測うなり周期取得部で取得された前記実測うなり周期に最も近いうなり周期のうなりを発生させると想定される2つの前記バックアップロールの組み合わせである、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置であって、
前記欠陥ロール対抽出部は、
前記バックアップロール群から1つの前記バックアップロールを選択し、
前記選択した前記バックアップロールの前記ロール径と、前記圧延速度と、前記実測うなり周期と、に基づいて、前記選択した前記バックアップロールと対となって前記実測うなり周期のうなりを発生させる前記バックアップロールの推定ロール径を算出し、
前記推定ロール径を、すべての前記バックアップロールについて算出し、
前記推定ロール径に最も近い前記ロール径を有する前記バックアップロールと、この前記バックアップロールと対となる前記選択された前記バックアップロールと、の組み合わせを、前記欠陥ロール対として抽出する、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置。
【請求項8】
請求項6に記載の多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置であって、
前記欠陥ロール対抽出部は、
前記バックアップロール群から2つの前記バックアップロールを選択し、
前記選択した2つの前記バックアップロールそれぞれの前記ロール径と、うなりの公式と、に基づいて、前記選択した2つの前記バックアップロールが発生させる推定うなり周期を算出し、
前記推定うなり周期を、2つの前記バックアップロールのすべての組み合わせについて算出し、
前記実測うなり周期に最も近い前記推定うなり周期のうなりを発生させる、2つの前記バックアップロールの組み合わせを、前記欠陥ロール対として抽出する、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置。
【請求項9】
請求項6に記載の多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置であって、
前記欠陥ロール対抽出部は、
前記圧延速度と前記ロール径とに基づいて、すべての前記バックアップロールそれぞれの回転周期を算出し、
前記バックアップロール群から2つの前記バックアップロールを選択し、
前記選択した2つの前記バックアップロールそれぞれの回転周期の最小公倍数を算出することで、前記選択した2つの前記バックアップロールが発生させる推定うなり周期を算出し、
前記推定うなり周期を、2つの前記バックアップロールのすべての組み合わせについて算出し、
前記実測うなり周期に最も近い前記推定うなり周期のうなりを発生させる、2つの前記バックアップロールの組み合わせを、前記欠陥ロール対として抽出する、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置であって、
前記多段圧延機は、20段圧延機であり、
前記多段圧延機は、
前記一対のワークロールのそれぞれを前記ロール背面側から回転自在に支持する複数の第一中間ロールを含む一対の第一中間ロール群と、
前記第一中間ロールのそれぞれを前記ロール背面側から回転自在に支持する複数の第二中間ロールを含む一対の第二中間ロール群と、
を備え、
前記第一中間ロールは、前記被圧延材の厚さ方向の両側に2つずつ設けられ、
前記第二中間ロールは、前記被圧延材の厚さ方向の両側に3つずつ設けられ、
前記バックアップロール群は、前記第二中間ロールのそれぞれを前記ロール背面側から回転自在に支持し、
前記バックアップロールは、前記被圧延材の厚さ方向の両側に4つずつ設けられる、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置。
【請求項11】
請求項6~9のいずれか1項に記載の多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置であって、
前記出側板厚偏差を検出する出側板厚偏差検出部と、
前記圧延速度を検出する圧延速度検出部と、
を備え、
前記出側板厚偏差検出部が検出した前記出側板厚偏差、および、前記圧延速度検出部が検出した前記圧延速度は、前記多段圧延機による前記被圧延材の圧延の制御に用いられる、
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥のあるバックアップロールを検出するための、多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法、および、多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、被圧延材を圧延する圧延機が記載されている。この圧延機は、複数本のバックアップロールを備えている(特許文献1の図2を参照)。バックアップロールに偏心があり、複数のバックアップロールに若干の径差がある場合に、被圧延材の出側板厚偏差の、うなり(ビート)が生じることが、同文献の段落0002に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-196029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧延機では、バックアップロールが2つのみ設けられている(特許文献1の図2を参照)。そのため、うなりを生じさせるのは、これらの2つのバックアップロールである。バックアップロールが3つ以上設けられる場合に、うなりを生じさせバックアップロールを検出できることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、被圧延材の出側板厚偏差のうなりの原因となった2つのバックアップロールの組み合わせを特定することができる、多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法、および、欠陥バックアップロール検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法は、ロール径測定ステップと、実測うなり周期測定ステップと、圧延速度測定ステップと、欠陥ロール対抽出ステップと、を備える。前記多段圧延機は、一対のワークロールと、一対のバックアップロール群と、を備える。前記一対のワークロールは、被圧延材を挟む。前記一対のバックアップロール群は、前記一対のワークロールのそれぞれをロール背面側から支持する複数のバックアップロールを含む。前記ロール径測定ステップは、前記被圧延材の圧延前に、すべての前記バックアップロールそれぞれのロール径を測定する。前記実測うなり周期測定ステップは、前記被圧延材の圧延中に、前記被圧延材の出側板厚偏差の実測うなり周期を測定する。前記圧延速度測定ステップは、前記被圧延材の圧延中に、前記被圧延材の圧延速度を測定する。前記欠陥ロール対抽出ステップは、前記ロール径測定ステップで測定した前記ロール径と前記圧延速度測定ステップで測定した前記圧延速度とに基づいて、前記バックアップロール群の中から欠陥ロール対を抽出する。前記欠陥ロール対は、前記実測うなり周期測定ステップで測定した前記実測うなり周期に最も近いうなり周期のうなりを発生させると想定される2つの前記バックアップロールの組み合わせである。
【0007】
多段圧延機の欠陥バックアップロール検出装置は、被圧延材を圧延する多段圧延機と、制御部と、を備える。前記多段圧延機は、一対のワークロールと、一対のバックアップロール群と、を備える。前記一対のワークロールは、前記被圧延材を挟む。前記一対のバックアップロール群は、前記一対のワークロールのそれぞれをロール背面側から支持する複数のバックアップロールを含む。前記制御部は、ロール径取得部と、実測うなり周期取得部と、圧延速度取得部と、欠陥ロール対抽出部と、を備える。前記ロール径取得部は、前記被圧延材の圧延前に測定された、すべての前記バックアップロールそれぞれのロール径を取得する。前記実測うなり周期取得部は、前記被圧延材の圧延中に測定された前記被圧延材の出側板厚偏差の実測うなり周期を取得する。前記圧延速度取得部は、前記被圧延材の圧延中に測定された前記被圧延材の圧延速度を取得する。前記欠陥ロール対抽出部は、前記ロール径取得部で取得された前記ロール径と前記圧延速度取得部で取得された前記圧延速度とに基づいて、前記バックアップロール群の中から欠陥ロール対を抽出する。前記欠陥ロール対は、前記実測うなり周期取得部で取得された前記実測うなり周期に最も近いうなり周期のうなりを発生させると想定される2つの前記バックアップロールの組み合わせである。
【発明の効果】
【0008】
上記の多段圧延機の欠陥バックアップロール検出方法、および欠陥バックアップロール検出装置のそれぞれにより、被圧延材の出側板厚偏差のうなりの原因となった2つのバックアップロールの組み合わせを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】欠陥バックアップロール検出装置1を示す図である。
図2図1に示す多段圧延機20を示す図である。
図3図1に示す被圧延材Wの出側板厚偏差と時間との関係を示すグラフである。
図4図1に示す欠陥バックアップロール検出装置1の作動のフローチャートである。
図5図1に示す制御部60での計算値などの一例である。
図6】第2実施形態の欠陥バックアップロール検出装置201を示す図である。
図7図6に示す欠陥バックアップロール検出装置201の作動のフローチャートである。
図8図6に示す制御部60での計算に用いられる判定用推定値の計算式である。
図9】第3実施形態の欠陥バックアップロール検出装置301を示す図である。
図10図9に示す欠陥バックアップロール検出装置301の作動のフローチャートである。
図11図9に示す制御部60での計算に用いられる判定用推定値の計算式である。
図12】第4実施形態の欠陥バックアップロール検出装置401の多段圧延機420を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1図5を参照して、第1実施形態の欠陥バックアップロール検出装置1について説明する。
【0011】
欠陥バックアップロール検出装置1は、欠陥ロール対(後述)を抽出(検出、特定、同定)する装置である。図1に示すように、欠陥バックアップロール検出装置1は、圧延設備10と、制御部60と、を備える。
【0012】
圧延設備10は、被圧延材Wを圧延する設備である。被圧延材Wは、圧延設備10により圧延されるもの(ワーク)である。被圧延材Wは、板状である。被圧延材Wは、例えば金属などである。圧延設備10は、第一リール11と、第二リール12と、方向変更部15と、多段圧延機20と、出側板厚偏差検出部51と、出側板厚検出部52と、圧延速度検出部55と、を備える。
【0013】
第一リール11および第二リール12は、被圧延材Wが巻かれたリールである。第一リール11および第二リール12の一方は、被圧延材Wを巻き出す巻出リールである。第一リール11および第二リール12の他方(巻出リールとは異なる方)は、被圧延材Wを巻き取る巻取リールである。[圧延の例1]被圧延材Wは、第一リール11から巻き出され、多段圧延機20で圧延され、第二リール12で巻き取られてもよい。[圧延の例2]被圧延材Wは、第二リール12から巻き出され、多段圧延機20で圧延され、第一リール11で巻き取られてもよい。上記の[圧延の例1]および[圧延の例2]の、両方が交互に行われてもよく、一方のみが行われてもよい。
【0014】
方向変更部15は、被圧延材Wの移動方向(経路の方向)を変える。図1に示す例では、方向変更部15は、第一リール11と多段圧延機20との間(被圧延材Wの経路における間)と、第二リール12と多段圧延機20との間に設けられる。方向変更部15は、円筒状または円柱状の部材である。例えば、方向変更部15は、デフレクタを備えるもの(デフレクタロール)である。
【0015】
多段圧延機20は、被圧延材Wを圧延する圧延機である。図2に示すように、多段圧延機20は、多数のロール(後述するワークロール21、中間ロール30、およびバックアップロール40)を備える圧延機(クラスタ圧延機)である。多段圧延機20は、3つ以上のバックアップロール40(後述)を備える。多段圧延機20の段数(ロールの数)は様々に設定可能である。多段圧延機20は、図2に示す例では20段圧延機(20段ミル)であり、図12に示す例では12段圧延機(12段ミル)であり、6段圧延機、14段圧延機などでもよい。多段圧延機20は、ワークロール21と、中間ロール30と、バックアップロール40と、を備える。
【0016】
この多段圧延機20のロール(ワークロール21、中間ロール30、およびバックアップロール40)のそれぞれは、円筒状または円柱状の部材である。ロールは、図示しないフレーム(例えばハウジング)に回転自在に支持される。ロールは、ロールの長手方向に延びる中心軸を中心に回転自在である。多数のロールのうち、いずれかのロールは、駆動ロールである。駆動ロールは、ロールを駆動する駆動装置(例えば図示しない駆動モータ)により駆動される。
【0017】
この多段圧延機20では、被圧延材W、ワークロール21、中間ロール30(例えば、第一中間ロール31、第二中間ロール32)、バックアップロール40、の順に、クラスタ状(ぶどうの房状)に互いに接触する。この接触の順における、被圧延材W側とは反対側を、「ロール背面側」という。具体的には、ワークロール21のロール背面側は、ワークロール21から見て(ワークロール21を基準として)被圧延材Wに接触する側とは反対側の、中間ロール30側である。第一中間ロール31のロール背面側は、第一中間ロール31から見て、ワークロール21に接触する側とは反対側の、第二中間ロール32側である。第二中間ロール32の背面側は、第二中間ロール32から見て、第一中間ロール31に接触する側とは反対側の、バックアップロール40側である。
【0018】
ワークロール21(作業ロール)は、被圧延材Wに接触し、被圧延材Wを挟む。ワークロール21は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に、一対に(2つ)設けられる。2つのワークロール21・21が被圧延材Wを挟む方向(すなわち被圧延材Wの厚さ方向)は、上下方向である。
【0019】
中間ロール30は、ワークロール21とバックアップロール40との間に設けられる。なお、多段圧延機20の段数によっては、中間ロール30は設けられなくてもよい。例えば多段圧延機20の段数が6段(6段圧延機)の場合、中間ロール30は設けられなくてもよい。中間ロール30は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に(例えば上下一対に)設けられる。中間ロール30は、複数本設けられる。複数の中間ロール30は、中間ロール群30gを構成する。本実施形態では中間ロール30は、第一中間ロール31と、第二中間ロール32と、を備える。
【0020】
第一中間ロール31は、ワークロール21をロール背面側から回転自在に支持する。第一中間ロール31の外周面は、ワークロール21の外周面のロール背面側の部分に接触する。第一中間ロール31は、ワークロール21の外周面に接触しながら回転する。第一中間ロール31は、複数設けられる。複数の第一中間ロール31は、第一中間ロール群31gを構成する。複数の第一中間ロール31のそれぞれは、ワークロール21をロール背面側から回転自在に支持する。第一中間ロール31の数は、様々に設定可能である。図2に示す例では、第一中間ロール31は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に(例えば上下一対に)2つずつ(合計4つ)設けられる。
【0021】
第二中間ロール32は、第一中間ロール31をロール背面側から回転自在に支持する。第二中間ロール32の外周面は、第一中間ロール31の外周面のロール背面側の部分に接触する。第二中間ロール32は、第一中間ロール31の外周面に接触しながら回転する。第二中間ロール32は、複数設けられる。複数の第二中間ロール32は、第二中間ロール群32gを構成する。複数の第二中間ロール32のそれぞれは、第一中間ロール31をロール背面側から回転自在に支持する。第二中間ロール32の数は、様々に設定可能である。図2に示す例では、第二中間ロール32は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に(例えば上下一対に)3つずつ(合計6つ)設けられる。第二中間ロール32は、駆動装置(図示なし)に駆動される駆動ロールでもよい。例えば、6つの第二中間ロール32のうち、4つの第二中間ロール32は、駆動ロールである。例えば、6つの第二中間ロール32のうち、被圧延材Wの移動方向(図2の左右方向)における中央の2つの第二中間ロール32は、駆動ロールではない(駆動ロールでもよい)。なお、駆動ロールは、第二中間ロール32以外のロールでもよい。
【0022】
バックアップロール40(支持ロール)は、ワークロール21をロール背面側から回転自在に支持する。さらに詳しくは、バックアップロール40は、中間ロール30を介して、ワークロール21をロール背面側から支持する。図2に示す例では、バックアップロール40は、中間ロール30を(さらに詳しくは、第二中間ロール32を)、ロール背面側から回転自在に支持する。バックアップロール40の外周面は、中間ロール30(さらに詳しくは、第二中間ロール32)の外周面のロール背面側の部分に接触する。バックアップロール40は、中間ロール30(さらに詳しくは、第二中間ロール32)に接触しながら回転する。バックアップロール40は、複数設けられる。複数のバックアップロール40は、バックアップロール群40gを構成する。複数のバックアップロール40のそれぞれは、中間ロール30を介してワークロール21をロール背面側から支持する。
【0023】
このバックアップロール40の数は、様々に設定可能である。図2に示す20段の多段圧延機20では、バックアップロール40は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に(例えば上下一対に)4つずつ(合計8つ)設けられる。図12に示す12段の多段圧延機20では、バックアップロール40は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に(例えば上下一対に)3つずつ(合計6つ)設けられる。以下では、主に、図2に示すように、バックアップロール40が8つ設けられる場合について説明する。各バックアップロール40を区別する場合のバックアップロール40の符号を、40A、40B、40C、40D、40E、40F、40G、および40Hとする(これらをまとめて「40A~40H」などとする)。
【0024】
バックアップロール40の外径(外周面の直径)を、ロール径dという。複数のバックアップロール40(40A~40H)のロール径dは、互いにほぼ同じ大きさである(詳細は後述)。各バックアップロール40は(複数のバックアップロール40(40A~40H)のそれぞれは)、複数の分割ロール40rを備える。
【0025】
複数の分割ロール40rは、バックアップロール軸40s(シャフト)に回転自在に支持される。複数の分割ロール40rは、バックアップロール軸40sが延びる方向に互いに隣接するとともに同軸に(串刺し状に)配置される。1つのバックアップロール40を構成する分割ロール40rの数は、様々に設定可能であり、図2に示す例では5つである。複数の分割ロール40rのロール径dは、互いにほぼ同じ大きさである(詳細は後述)。以下では、多段圧延機20の各ロールについては、主に図2を参照して説明する。
【0026】
出側板厚偏差検出部51(出側板厚偏差検出手段)は、図1に示すように、ワークロール21で圧延された被圧延材Wの板厚偏差(出側板厚偏差)を検出する。出側板厚偏差検出部51は、出側板厚偏差を検出する装置(センサ、出側板厚偏差検出器)である。出側板厚偏差は、被圧延材Wの目標となる板厚に対する、実際の(検出された)板厚の差である。上記の[圧延の例1]および[圧延の例2]の両方が行われる場合がある。この場合、出側板厚偏差検出部51は、ワークロール21よりも第一リール11側(被圧延材Wの経路における第一リール11側)と、ワークロール21よりも第二リール12側と、の両側に設けられる。なお、2つの出側板厚偏差検出部51・51のうち入側に位置する方は、入側板厚偏差検出部として機能する。すなわち、2つの出側板厚偏差検出部51・51は、被圧延材Wの移動方向(圧延方向)に応じて出側または入側の板厚偏差検出部として機能する。
【0027】
出側板厚検出部52(出側板厚検出手段)は、ワークロール21で圧延された被圧延材Wの板厚(出側板厚)を検出する。例えば、出側板厚検出部52は、出側板厚偏差検出部51に検出された出側板厚偏差と、被圧延材Wの目標となる板厚と、の和を、出側板厚として検出(算出)する。なお、検出値から値を算出することは、検出に含まれる。
【0028】
圧延速度検出部55は、被圧延材Wの圧延速度vを検出する。圧延速度検出部55は、圧延速度vを検出する装置(センサ、圧延速度検出器)である。圧延速度vは、圧延された被圧延材Wの移動速度であり、被圧延材Wとワークロール21とのスリップがないと仮定した場合、ワークロール21の外周面の周速(外周面の接線方向における外周面の移動速度)である。ワークロール21の周速は、中間ロール30の周速と等しく、バックアップロール40の周速と等しい。そのため、圧延速度検出部55は、複数のロール(ワークロール21、中間ロール30、およびバックアップロール40)のいずれかの周速を検出してもよい。例えば、圧延速度検出部55は、駆動ロール(例えば第二中間ロール32)を駆動する駆動装置(図示なし)の回転速度と、駆動ロールの直径と、に基づいて、駆動ロールの周速を検出することで、圧延速度vを検出(算出)してもよい。圧延速度検出部55は、圧延速度vを、被圧延材Wの移動速度から直接的に検出してもよく、方向変更部15の回転速度などから検出してもよい。
【0029】
制御部60は、信号の入出力、演算(処理)、情報の記憶などを行うコンピュータである。例えば、制御部60の機能は、制御部60の記憶部60mに記憶されたプログラムが演算部で実行されることにより実現される。制御部60は、圧延設備10の内部(設備内)に設けられてもよく、圧延設備10の外部(例えば制御室など)に設けられてもよい。制御部60は、パーソナルコンピュータでもよく、制御盤に設けられてもよい。
【0030】
この制御部60は、欠陥ロール対(後述)を抽出するための演算を行う。制御部60は、圧延設備10の動作を制御するもの(動作制御部)と兼用されてもよい(後述)。制御部60が動作制御部と兼用されない場合は、制御部60は、動作制御部に接続され、動作制御部から情報(例えば、圧延速度v、後述する実測うなり周期T)を受信してもよい。この接続は、有線接続(通信ケーブルなどを介した接続)でもよく、無線接続でもよい。この接続は、インターネット回線を利用した接続でもよい。なお、制御部60は、動作制御部に接続されなくてもよい。
【0031】
この制御部60は、ロール径取得部61と、実測うなり周期取得部62と、圧延速度取得部63と、欠陥ロール対抽出部70と、欠陥ロール対情報出力部80と、を備える。
【0032】
ロール径取得部61(バックアップロール径入力手段)は、すべてのバックアップロール40それぞれのロール径dを取得する。ロール径取得部61の機能の詳細は後述する(制御部60の他の要素の機能の詳細も同様)。実測うなり周期取得部62(実測うなり周期検出手段)は、実測うなり周期Tを取得する。圧延速度取得部63(実測圧延速度検出手段)は、圧延速度vを取得する。欠陥ロール対抽出部70(欠陥バックアップロール抽出手段)は、バックアップロール群40gの中から、欠陥ロール対を抽出する。欠陥ロール対抽出部70は、判定用推定値取得部73と、比較抽出部75と、を備える。判定用推定値取得部73は、欠陥ロール対の抽出に用いる判定用推定値(例えば後述する推定ロール径dYなど)を取得(例えば算出)する。比較抽出部75は、判定用推定値と実測値とを比較し、欠陥バックアップロールを抽出する。欠陥ロール対情報出力部80は、欠陥ロール対抽出部70に抽出された欠陥ロール対の情報を出力する。
【0033】
(作動)
欠陥バックアップロール検出装置1は、以下のように作動するように構成される。欠陥バックアップロール検出方法は、以下のように行われる。
【0034】
(圧延設備10の作動)
圧延設備10は、次のように作動する。駆動装置(図示なし)が駆動ロール(例えば第二中間ロール32)を駆動することで、ワークロール21を駆動させる。被圧延材Wが、第一リール11と第二リール12との間で搬送され、多段圧延機20で圧延される。このとき、制御部60(上記「動作制御部」としての制御部60)は、多段圧延機20による被圧延材Wの圧延の制御を行う。具体的には、制御部60は、被圧延材Wの板厚を制御する。例えば、制御部60は、出側板厚偏差検出部51に検出される出側板厚偏差が目標値になるように、被圧延材Wの板厚を制御する。制御部60は、2つのワークロール21・21の隙間を制御することで、被圧延材Wの板厚を制御する。また、制御部60は、圧延速度vを制御する。例えば、制御部60は、圧延速度検出部55に検出される圧延速度vが目標値になるように、圧延速度vを制御する。具体的には、制御部60は、駆動ロール(例えば第二中間ロール32)を駆動する駆動装置(図示なし)の回転速度を制御する。
【0035】
この例では、出側板厚偏差検出部51が検出した出側板厚偏差は、多段圧延機20による被圧延材Wの圧延の制御と、欠陥ロール対の抽出(後述)とに兼用される。また、圧延速度検出部55が検出した圧延速度vは、多段圧延機20による被圧延材Wの圧延の制御と、欠陥ロール対の抽出(後述)とに兼用される。通常、既存の圧延のための設備でも、出側板厚偏差および圧延速度vは検出され、出側板厚偏差検出部51および圧延速度検出部55は設けられる。そのため、本実施形態の欠陥バックアップロール検出装置1では、既存の圧延機に対して、新たなセンサ(出側板厚偏差検出部51および圧延速度検出部55)を設けなくても、出側板厚偏差および圧延速度vを取得することができる。なお、出側板厚偏差検出部51および圧延速度検出部55の少なくともいずれかは、多段圧延機20による被圧延材Wの圧延の制御と欠陥ロール対の抽出(後述)とに兼用されなくてもよい。
【0036】
(うなりの発生)
バックアップロール40に偏心(欠陥、問題)がある場合がある。さらに詳しくは、バックアップロール40の回転軸に対して、バックアップロール40の外周面の中心軸がずれている場合がある。この場合、欠陥のあるバックアップロール40は、圧延された被圧延材Wの板厚(出側板厚)を変動させ、出側板厚偏差を変動させる。欠陥のあるバックアップロール40が発生させる出側板厚偏差の変動の周期は、このバックアップロール40が1回転する時間(回転周期t)である。2つのバックアップロール40に欠陥がある場合は、欠陥がある2つのバックアップロール40のそれぞれが、出側板厚偏差を変動させる。欠陥がある2つのバックアップロール40のロール径dが僅かに異なる場合、これらの2つのバックアップロール40は、図3に示すような出側板厚偏差のうなり(ビート)を発生させる。出側板厚偏差のうなりの周期を、うなり周期Tとする。欠陥がある2つのバックアップロール40を、「欠陥ロール対」という。なお、図3に示す出側板厚偏差と時間との関係を示すグラフの波形は一例にすぎない。グラフの波形は、出側板厚偏差のピークが周期的に表れ、実測うなり周期Tを特定できるような波形であればよい。
【0037】
(欠陥バックアップロール検出方法)
図1に示す欠陥バックアップロール検出装置1は、次のように欠陥ロール対を検出する。欠陥バックアップロール検出方法は、次のように欠陥ロール対を検出する。欠陥バックアップロール検出方法は、図4に示すように、ロール径測定ステップS11と、実測うなり周期測定ステップS12と、圧延速度測定ステップS13と、欠陥ロール対抽出ステップS20と、欠陥ロール対情報出力ステップS30と、を備える。
【0038】
ロール径測定ステップS11では、図1に示す被圧延材Wの圧延前に(予め)、すべてのバックアップロール40それぞれのロール径d(dA~dH)が測定される。この例では、バックアップロール40は8つ設けられる。各バックアップロール40(40A~40H)のロール径dを、dA、dB、dC、dD、dE、dF、dG、dGとする(これらをまとめて「dA~dH」などとする)。ロール径測定ステップS11(ロール径dの測定)は、圧延の作業(圧延作業)毎に行われる必要はない。例えば、ロール径測定ステップS11は、制御部60の初期設定時に行われ、さらに、バックアップロール40の交換時および保守時に定期的に行われてもよい。
【0039】
ロール径d(dA~dH)の測定結果は、記憶部60mに記憶される。なお、記憶部60mは、制御部60の外部に設けられてもよい。ロール径取得部61は、ロール径d(dA~dH)を、記憶部60mから取得する(読み込む)。なお、ロール径取得部61は、記憶部60mからロール径dを取得しなくてもよく、数値設定装置で設定(例えば数値入力)されたロール径dを取得してもよい。
【0040】
複数のバックアップロール40(40A~40H)のロール径dは、互いにほぼ同じである(極めて僅かな差異しかない)。ロール径d(dA~dH)の具体例を、図5の「ロール径dX」の列に示す。なお、図5に示す数値は、一例にすぎない。
【0041】
図2に示すように、1つのバックアップロール40は、複数の分割ロール40rにより構成される。この場合、複数の分割ロール40rの外径の差は、所定値以内に管理される。例えば、ある1つのバックアップロール40のロール径dが「300.1mm」であるとする。この場合、このバックアップロール40を構成するすべての分割ロール40rの外径は、「300.1mm±所定値」の範囲内である。具体的には例えば、上記所定値が、5μm=0.005mmである場合、このバックアップロール40を構成するすべての分割ロール40rの外径は、「300.1±0.005mm」の範囲内である。
【0042】
実測うなり周期測定ステップS12(図4参照)では、図1に示す被圧延材Wの圧延中に、被圧延材Wの出側板厚偏差の実測うなり周期Tが測定される。実測うなり周期Tは、実測うなり周期取得部62に取得される。例えば、実測うなり周期取得部62は、出側板厚偏差検出部51が検出した出側板厚偏差を取得し(読み込み)、取得した出側板厚偏差から実測うなり周期Tを取得(算出、検出)してもよい。周期取得部62は、出側板厚検出部52が検出した出側板厚を取得し、出側板厚から実測うなり周期Tを取得してもよい。
【0043】
圧延速度測定ステップS13(図4参照)では、被圧延材Wの圧延中に、被圧延材Wの圧延速度vが測定される。圧延速度vは、圧延速度検出部55に検出される。圧延速度取得部63は、圧延速度検出部55に検出された圧延速度vを取得する(読み込む)。
【0044】
欠陥ロール対抽出ステップS20(図4参照)では、欠陥ロール対が、バックアップロール群40gの中から抽出される。欠陥ロール対は、欠陥ロール対抽出部70により、バックアップロール群40gの中から抽出される(具体例は後述)。
【0045】
欠陥ロール対情報出力ステップS30(図4参照)では、欠陥ロール対情報出力部80が、欠陥ロール対抽出部70に抽出された欠陥ロール対の情報を出力する。欠陥ロール対情報出力部80は、表示を出力してもよく(表示器でもよく)、音声を出力してもよい。欠陥ロール対情報出力部80は、欠陥ロール対の情報を含む信号を出力(例えば制御部60の外部に出力)してもよく、表示や音声出力などを行わなくてもよい。欠陥ロール対情報出力部80は、どのバックアップロール40(40A~40H)が欠陥ロール対であるかを特定可能な情報を出力する。具体的には、欠陥ロール対情報出力部80は、バックアップロール40(40A~40H)を識別するための情報(例えばA~Hなどの番号や記号など)を出力してもよい。なお、欠陥ロール対抽出ステップS20で、複数組の欠陥ロール対が抽出された場合(後述)は、欠陥ロール対情報出力部80は、複数の欠陥ロール対の情報を出力する。
【0046】
欠陥ロール対情報出力部80が出力した欠陥ロール対の情報に基づいて、作業者は、欠陥ロール対として抽出されたバックアップロール40を交換する。この場合、作業者は、例えば、欠陥があるバックアップロール40を構成するすべての分割ロール40r(図2参照)を交換する。
【0047】
(欠陥ロール対抽出ステップS20の概要)
欠陥ロール対抽出ステップS20(図4参照)では、欠陥ロール対が、バックアップロール群40gの中から抽出される。欠陥ロール対抽出部70は、バックアップロール群40gの中から欠陥ロール対を抽出する(欠陥ロール対抽出ステップS20を行う)。
【0048】
欠陥ロール対抽出部70は、ロール径dと圧延速度vとに基づいて、実測うなり周期Tに最も近いうなり周期のうなりを発生させると想定される2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出する。欠陥ロール対抽出部70は、うなりの周期の計算に基づいて欠陥ロール対を抽出(計算)するので、欠陥ロール対を適切に抽出できる。うなりの周期に基づく計算が行われなければ、経験深い作業者であっても、欠陥のあるバックアップロール40を特定すること(原因究明)は困難である。
【0049】
欠陥ロール対抽出部70による欠陥ロール対の抽出は、様々な計算方法により行うことができる。例えば、欠陥ロール対の抽出に使われる情報は、ロール径d(例えばdA~dH)と、圧延速度vと、実測うなり周期Tと、を含む。欠陥ロール対の抽出には、うなりの公式、または、うなりの公式を変形した式が用いられてもよい(本実施形態の後述する具体例、および、第2実施形態を参照)。欠陥ロール対の抽出には、2つのバックアップロール40の回転周期tの最小公倍数に関する式が用いられてもよい(第3実施形態を参照)。
【0050】
欠陥ロール対の抽出は、例えば次のように行われる。判定用推定値取得部73が、判定用推定値を算出する。判定用推定値は、例えば、推定ロール径dY(本実施形態の後述する具体例を参照)でもよく、推定うなり周期T(X,Y)(第3実施形態を参照)でもよく、推定うなり周期T(X,Y)と圧延速度vとの積(推定vT値)(第2実施形態を参照)でもよい。次に、比較抽出部75が、判定用推定値と、実測値と、を比較する。そして、比較抽出部75が、判定用推定値に最も近い実測値に対応する2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出する。欠陥ロール対抽出部70が欠陥ロール対を抽出する条件に、判定用推定値と実測値との差が所定の閾値(抽出閾値)以下であることが含まれてもよい(具体例は後述)。
【0051】
欠陥ロール対抽出部70は、1組(一対)の欠陥ロール対を抽出することが好ましい。欠陥ロール対の抽出の計算結果によっては、複数組のバックアップロール40の組み合わせが、欠陥ロール対の候補として挙がる場合があり得る。この場合、欠陥ロール対抽出部70は、複数組(2対以上)の欠陥ロール対を抽出してもよい。なお、欠陥ロール対抽出部70は、計算結果によっては、欠陥ロール対を抽出しない場合があってもよい。
【0052】
(欠陥ロール対抽出ステップS20の具体例:推定ロール径dYを用いる例)
ここでは、欠陥ロール対抽出部70が、うなりの公式を変形した式を用いて、推定ロール径dY(判定用推定値の一例)を算出し、推定ロール径dYと実測のロール径dとの比較に基づいて、欠陥ロール対を抽出する例を説明する。
【0053】
この具体例の概要は、次の通りである。判定用推定値取得部73は(欠陥ロール対抽出部70は)、バックアップロール群40gから1つのバックアップロール40(「選択ロール」という)を選択する。判定用推定値取得部73は、選択ロールと対となって、実測うなり周期Tのうなりを発生させるバックアップロール40(「対ロール」という)の推定ロール径dYを算出する。このとき、判定用推定値取得部73は、選択ロールのロール径d(後述するdX)と、圧延速度vと、実測うなり周期Tと、に基づいて、対ロールの推定ロール径dYを算出する。判定用推定値取得部73は、すべてのバックアップロール40について(すべてのバックアップロール40を選択ロールとして)、対ロールの推定ロール径dYを算出する。そして、比較抽出部75は(欠陥ロール対抽出部70は)、推定ロール径dYに最も近いロール径dを有する対ロールを、欠陥ロールとして抽出する。また、比較抽出部75は、この対ロールと対となる選択ロールを、欠陥ロールとして抽出する。比較抽出部75は、これらの2つの欠陥ロールの組み合わせを、欠陥ロール対とする。
【0054】
欠陥ロール対抽出部70が、あるバックアップロール40を欠陥ロールとして抽出する条件には、推定ロール径dYに最も近いロール径dを有することと、他の条件(後述)と、が含まれてもよい。
【0055】
欠陥ロール対抽出部70による欠陥ロール対の抽出の計算に用いられる値、および、算出される値は、その値に相関する値でもよい。具体的には例えば、「推定ロール径dYを算出」することには、推定ロール径dYそのものを算出することだけでなく、推定ロール径dYに相関する値を算出することも含まれる。
【0056】
(推定ロール径dYを用いる例の詳細)
この欠陥ロール対抽出ステップS20(図4参照)での、推定ロール径dYを用いた欠陥ロール対の抽出の具体例の詳細は、次の通りである。
【0057】
一般に、周期T1の波と周期T2の波とにより、うなりが発生する場合、うなりの周期(T)は、次式で与えられる。ただし、T2>T1とする。
T=T1・T2/(T2-T1) (第1-1式)
【0058】
2つのバックアップロール40が1回転する回転周期tを、それぞれtX、tYとする。tX、tYを、第1-1式のT1、T2に代入すると、うなりの周期(T)は次式で与えられる。
T=tX・tY÷(tX-tY) (第1-2式)
【0059】
この2つのバックアップロール40のロール径dを、それぞれdX、dYとする。「距離=速度×時間」の関係から、バックアップロール40の周長は、周速(=圧延速度v)と回転周期tとの積で表される。よって、次式が成り立つ。なお、円周率をπとする。
π・dX=v・tX (第2-1式)
π・dY=v・tY (第3-1式)
【0060】
第2-1式および第3-1式を変形すると、次式が得られる。
tX=π・dX÷v (第2-2式)
tY=π・dY÷v (第3-2式)
【0061】
第2-2式および第3-2式の、tXおよびtYを第1‐2式に代入し、dYで整理すると次式が得られる。
dY=T・v・dX÷(T・v+π・dX) (第4式)
【0062】
ステップS23(判定用推定値取得ステップ)(図4参照)では、判定用推定値取得部73は、第4式から、すべてのバックアップロール40のロール径d(dA~dH)について、推定ロール径dYを算出する(図5参照)。なお、算出は「取得」に含まれる。
【0063】
さらに詳しくは、判定用推定値取得部73は、まず、バックアップロール群40gの中から1つのバックアップロール40(選択ロール)(例えばバックアップロール40A(図2参照))を選択する。判定用推定値取得部73は、第4式の「T」に実測うなり周期T(検出値、既知の値)を代入し、第4式の「v」に圧延速度v(検出値、既知の値)を代入する。判定用推定値取得部73は、第4式の「dX」に、選択ロールのロール径d(この例ではdA)を代入する。これにより、判定用推定値取得部73は、この選択ロールと対となる対ロールの推定ロール径dYを算出する。そして、判定用推定値取得部73は、この計算を、すべてのバックアップロール40(40A~40H)のロール径d(dA~dH)について行う。その結果、判定用推定値取得部73は、バックアップロール40の数と同じ数の、推定ロール径dYを算出する。例えば、バックアップロール40が8つ設けられる場合は、欠陥ロール対抽出部70は、8つの推定ロール径dYを算出する(図5参照)。ただし、欠陥ロール対抽出部70が算出する推定ロール径dYは、選択ロールのロール径dよりも小さい。これは、選択ロールと対ロールとが入れ替わる場合を排除するためである。
【0064】
ステップS25(比較抽出ステップ)(図4参照)では、比較抽出部75は、推定ロール径dYに最も近い、実測のロール径dを有するバックアップロール40を、欠陥ロールとして抽出する。具体的には、例えば、比較抽出部75は、複数の推定ロール径dYと、すべてのロール径d(dA~dH)と、のすべての組み合わせについて、推定ロール径dYと実測のロール径dとの差の大きさを算出する。比較抽出部75は、この差の大きさが最も小さくなる組み合わせ(実測のロール径dと推定ロール径dYとの組み合わせ)を特定する。比較抽出部75は、特定したロール径d(すなわち、推定ロール径dYに最も近い実測のロール径d)を有するバックアップロール40を、欠陥ロールとして抽出する。
【0065】
また、比較抽出部75は、抽出した欠陥ロール(対ロール)と対となる選択ロールを欠陥ロールとして抽出する。さらに詳しくは、比較抽出部75は、抽出した欠陥ロール(対ロール)のロール径dに最も近い推定ロール径dYを算出する際に用いた(第4式の右辺に代入した)ロール径dXを有する選択ロールを、欠陥ロールとして抽出する。そして、比較抽出部75は、これらの2つの欠陥ロールを、欠陥ロール対として抽出する。
【0066】
なお、比較抽出部75の計算結果によっては、複数組のバックアップロール40の組み合わせが、欠陥ロール対の候補として挙がる場合があり得る。具体的には例えば、推定ロール径dYと実測のロール径dとの差の大きさが最も小さくなる組み合わせが、2つ以上存在する場合がある。この場合、比較抽出部75は、対ロールとしての欠陥ロールを複数(例えば2つ)抽出してもよい。そして、比較抽出部75は、複数(例えば2つ)の欠陥ロールそれぞれについて、対となる選択ロール(例えば2つ)を抽出してもよい。このように、比較抽出部75は、複数組の欠陥ロール対を抽出してもよい。
【0067】
比較抽出部75がバックアップロール40を欠陥ロールとして抽出する条件に、上記の条件(推定ロール径dYに最も近いロール径dを有すること)とは異なる条件が含まれてもよい。具体的には、比較抽出部75がバックアップロール40を欠陥ロールとして抽出する条件に、推定ロール径dYと、実測のロール径dとの差が、所定の閾値(抽出閾値)以下であることが含まれてもよい。比較抽出部75は、推定ロール径dYに最も近い実測のロール径dを有し、かつ、この推定ロール径dYと実測のロール径dとの差が抽出閾値以下であるバックアップロール40を、欠陥ロール対として抽出してもよい。この場合、比較抽出部75は、推定ロール径dYとロール径dとの差が抽出閾値以下のバックアップロール40を、「欠陥ロールの候補に該当する」と判定してもよい(図5参照)。比較抽出部75は、推定ロール径dYとロール径dとの差が抽出閾値を超えるバックアップロール40を、「欠陥ロールの候補に該当しない」と判定してもよい。抽出閾値は、予め(判定前に)欠陥ロール対抽出部70に設定される。
【0068】
(具体的計算例)
図5に、図1に示すバックアップロール40のロール径d(dA~dH)(図5の「ロール径dX」)と、各バックアップロール40を選択ロールとしたときの対ロールの推定ロール径dYと、の具体例を示す。この例では、圧延速度vを、2000mm/秒(120m/分)とし、実測うなり周期Tを、200秒としている。この例では、抽出閾値を0.0mmとしている。この場合、推定ロール径dYとロール径dとの差の小数点第2位を四捨五入したときに0.0mmになる場合は、推定ロール径dYとロール径dとの差は、抽出閾値以下となる。
【0069】
図5に示す例では、バックアップロール40A(図5では「A」)を選択ロールとした場合、選択ロールのロール径dX(dA)は200.9mmであり、推定ロール径dYは200.6mmである。バックアップロール40Aを除くバックアップロール40のロール径d(dB~dH)の中で、200.6mmに最も近いものは、バックアップロール40Bの200.3mmである。この場合、推定ロール径dY(200.6mm)と、推定ロール径dYに最も近いロール径d(200.3mm)と、の差は、0.3mmである。また、バックアップロール40Aを選択ロールとしたときの推定ロール径dY(200.6mm)と、バックアップロール40Aを除くバックアップロール40のロール径d(dB~dH)と、の差の大きさは、いずれも抽出閾値(0.0mm)を超えている。そのため、バックアップロール40Aを選択ロールとした場合、欠陥ロールの候補に該当するバックアップロール40は、存在しない。
【0070】
図5に示す例では、バックアップロール40B(図5では「B」)を選択ロールとした場合、選択ロールのロール径dX(dB)は200.3mmであり、推定ロール径dYは200.0mmである。バックアップロール40Bを除くバックアップロール40のロール径d(dA、dC~dH)の中で、200.0mmに最も近いものは、バックアップロール40D(図5では「D」)の200.0mmである。この場合、推定ロール径dY(200.0mm)と、推定ロール径dYに最も近いロール径d(200.0mm)と、の差の大きさは、0.0mmである。この差は、抽出閾値(0.0mm)以下である。そのため、バックアップロール40Dは、欠陥ロールの候補に該当する。
【0071】
図5に示す例では、推定ロール径dYと、推定ロール径dYに最も近いロール径dと、の差の大きさが最も小さくなるのは、バックアップロール40Bを選択ロールとしたときである。また、この差の大きさが抽出閾値(0.0mm)以下となるのは、バックアップロール40Bを選択ロールとしたときだけである。よって、この例では、バックアップロール40B(選択ロール)と、バックアップロール40D(対ロール)と、が欠陥ロール対として抽出される。
【0072】
(欠陥ロール対を検出できない場合の検討)
図1に示す、本実施形態の欠陥バックアップロール検出装置1では、被圧延材Wの出側板厚偏差のうなりが発生したときに、欠陥ロール対を検出することができる。一方、出側板厚偏差のうなりが発生したときに、欠陥ロール対を検出できない場合には、次の問題がある。この場合、例えば、複数本のバックアップロール40を1つずつ交換していき、問題のあるバックアップロール40を特定する方法がある。この方法では、欠陥のあるバックアップロール40を特定するまでに(問題解決までに)時間がかかる。また、バックアップロール40を交換する作業のために、多段圧延機20を長時間停止させる必要がある。そのため、圧延設備10での生産性が悪い。出側板厚偏差のうなりが発生したときに、複数本のバックアップロール40のすべてを交換すれば、問題解決までの時間は短縮でき、多段圧延機20の停止時間は短縮できる。しかし、複数本のバックアップロール40のすべてを交換すると、複数本のバックアップロール40の一部のみを交換する場合に比べてコストがかさむ。一方、本実施形態の欠陥バックアップロール検出装置1では、出側板厚偏差のうなりが発生したときに、欠陥ロール対(欠陥のある2つのバックアップロール40)を検出することができるので、これらの問題を抑制することができる。
【0073】
(第1の発明の効果)
図1に示す多段圧延機20の欠陥バックアップロール検出方法による効果は、次の通りである。図2に示すように、多段圧延機20は、一対のワークロール21と、一対のバックアップロール群40gと、を備える。一対のワークロール21は、被圧延材Wを挟む。一対のバックアップロール群40gは、複数のバックアップロール40を含む。複数のバックアップロール40は、一対のワークロール21のそれぞれをロール背面側から支持する。多段圧延機20の欠陥バックアップロール検出方法は、図4に示すように、ロール径測定ステップS11と、実測うなり周期測定ステップS12と、圧延速度測定ステップS13と、欠陥ロール対抽出ステップS20と、を備える。ロール径測定ステップS11は、図1に示す被圧延材Wの圧延前に、すべてのバックアップロール40それぞれのロール径dを測定する。実測うなり周期測定ステップS12(図4参照)は、被圧延材Wの圧延中に、被圧延材Wの出側板厚偏差の実測うなり周期Tを測定する。圧延速度測定ステップS13(図4参照)は、被圧延材Wの圧延中に、被圧延材Wの圧延速度vを測定する。
【0074】
[構成1]欠陥ロール対抽出ステップS20(図4参照)は、ロール径測定ステップS11(図4参照)で測定したロール径dと、圧延速度測定ステップS13(図4参照)で測定した圧延速度vと、に基づいて、バックアップロール群40gの中から欠陥ロール対を抽出する。欠陥ロール対(抽出される欠陥ロール対)は、実測うなり周期測定ステップS12(図4参照)で測定した実測うなり周期Tに最も近いうなり周期のうなりを発生させると想定される2つのバックアップロール40の組み合わせである。
【0075】
上記[構成1]により、被圧延材Wの出側板厚偏差のうなりの原因となった2つのバックアップロール40の組み合わせ(すなわち欠陥バックアップロール対)を、特定(抽出)することができる。その結果、出側板厚偏差のうなりが発生したときに、バックアップロール40を1つずつ交換して、問題のあるバックアップロール40を特定する場合に比べて、確実かつ迅速に欠陥バックアップロール対を検出することができる。よって、バックアップロール40の交換作業のための、多段圧延機20の停止時間を短縮することができる。また、多段圧延機20の停止時間を短くするためにバックアップロール40をすべて交換する、という必要を無くすことができる。よって、交換するバックアップロール40のコストを抑制することができる。
【0076】
(第2の発明の効果)
[構成2]欠陥ロール対抽出ステップS20(図4参照)は、次のように行われる。バックアップロール群40gから1つのバックアップロール40(選択ロール)が選択される。選択されたバックアップロール40(選択ロール)のロール径dと、圧延速度vと、実測うなり周期Tと、に基づいて、推定ロール径dYが算出される。推定ロール径dYは、選択されたバックアップロール40(選択ロール)と対となって実測うなり周期Tのうなりを発生させるバックアップロール40(対ロール)の推定のロール径dである。推定ロール径dYが、すべてのバックアップロール40(選択ロール)について算出される。推定ロール径dYに最も近いロール径dを有するバックアップロール40(対ロール)と、この対ロールと対となる選択ロールと、の組み合わせが、欠陥ロール対として抽出される。
【0077】
上記[構成2]のように欠陥ロール対が抽出される結果、確実かつ迅速に欠陥バックアップロール対を特定することができる。
【0078】
(第5、第10の発明の効果)
[構成5、10]図2に示すように、多段圧延機20は、20段圧延機である。多段圧延機20は、一対の第一中間ロール群31gと、一対の第二中間ロール群32gと、を備える。一対の第一中間ロール群31gは、一対のワークロール21のそれぞれをロール背面側から回転自在に支持する複数の第一中間ロール31を含む。一対の第二中間ロール群32gは、第一中間ロール31のそれぞれをロール背面側から回転自在に支持する複数の第二中間ロール32を含む。第一中間ロール31は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に2つずつ設けられる。第二中間ロール32は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に3つずつ設けられる。バックアップロール群40gは、第二中間ロール32のそれぞれをロール背面側から回転自在に支持する。バックアップロール40は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に4つずつ設けられる。
【0079】
上記[構成5、10]では、多段圧延機20は、20段圧延機である。ここで、上記の、バックアップロール40を1つずつ交換する場合に問題解決までに時間がかかる問題、および、バックアップロール40をすべて交換する場合にコストが大きい問題は、バックアップロール40の数が多いほど、大きい問題となる。多段圧延機20の段数が20段である場合は、バックアップロール40が計8つもあるため、多段圧延機20の段数が20段未満の場合に比べ、これらの問題が大きい。一方、多段圧延機20の欠陥バックアップロール検出方法は、上記[構成1]により、これらの問題を抑制できる。よって、多段圧延機20の段数が20段である場合、段数が20段未満である場合に比べ、欠陥バックアップロール対を特定できる効果が、より顕著になる。
【0080】
(第6の発明の効果)
図1に示す多段圧延機20の欠陥バックアップロール検出装置1による効果は、次の通りである。欠陥バックアップロール検出装置1は、被圧延材Wを圧延する多段圧延機20と、制御部60と、を備える。図2に示すように、多段圧延機20は、一対のワークロール21と、一対のバックアップロール群40gと、を備える。一対のワークロール21は、被圧延材Wを挟む。一対のバックアップロール群40gは、複数のバックアップロール40を含む。複数のバックアップロール40は、一対のワークロール21のそれぞれをロール背面側から支持する。図1に示すように、制御部60は、ロール径取得部61と、実測うなり周期取得部62と、圧延速度取得部63と、欠陥ロール対抽出部70と、を備える。ロール径取得部61は、被圧延材Wの圧延前に測定された、すべてのバックアップロール40それぞれのロール径dを取得する。実測うなり周期取得部62は、被圧延材Wの圧延中に測定された、被圧延材Wの出側板厚偏差の実測うなり周期Tを取得する。圧延速度取得部63は、被圧延材Wの圧延中に測定された被圧延材Wの圧延速度vを取得する。
【0081】
[構成6]欠陥ロール対抽出部70は、ロール径取得部61で取得されたロール径dと、圧延速度取得部63で取得された圧延速度vと、に基づいて、バックアップロール群40gの中から欠陥ロール対を抽出する。欠陥ロール対(抽出される欠陥ロール対)は、実測うなり周期取得部62で取得された実測うなり周期Tに最も近いうなり周期のうなりを発生させると想定される2つのバックアップロール40の組み合わせである。
【0082】
上記[構成6]により、被圧延材Wの出側板厚偏差のうなりの原因となった2つのバックアップロール40の組み合わせ(すなわち欠陥バックアップロール対)を、特定(抽出)することができる。その結果、出側板厚偏差のうなりが発生したときに、バックアップロール40を1つずつ交換して、問題のあるバックアップロール40を特定する場合に比べて、確実かつ迅速に欠陥バックアップロール対を検出することができる。よって、バックアップロール40の交換作業のための、多段圧延機20の停止時間を短縮することができる。また、多段圧延機20の停止時間を短くするためにバックアップロール40をすべて交換する、という必要を無くすことができる。よって、交換するバックアップロール40のコストを抑制することができる。
【0083】
(第7の発明の効果)
[構成7]欠陥ロール対抽出部70は、バックアップロール群40gから1つのバックアップロール40(選択ロール)を選択する。欠陥ロール対抽出部70は、選択したバックアップロール40(選択ロール)のロール径dと、圧延速度vと、実測うなり周期Tと、に基づいて、推定ロール径dYを算出する。推定ロール径dYは、選択したバックアップロール40(選択ロール)と対となって実測うなり周期Tのうなりを発生させるバックアップロール40(対ロール)の推定のロール径dである。欠陥ロール対抽出部70は、推定ロール径dYを、すべてのバックアップロール40(選択ロール)について算出する。欠陥ロール対抽出部70は、推定ロール径dYに最も近いロール径dを有するバックアップロール40(対ロール)と、この対ロールと対となる選択ロールと、の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出する。
【0084】
上記[構成7]のように欠陥ロール対が抽出される結果、確実かつ迅速に欠陥バックアップロール対を特定することができる。
【0085】
(第11の発明の効果)
多段圧延機20の欠陥バックアップロール検出装置1は、出側板厚偏差を検出する出側板厚偏差検出部51と、圧延速度vを検出する圧延速度検出部55と、を備える。出側板厚偏差検出部51が検出した出側板厚偏差、および、圧延速度検出部55が検出した圧延速度vは、多段圧延機20による被圧延材Wの圧延の制御に用いられる。
【0086】
上記[構成11]では、出側板厚偏差検出部51および圧延速度検出部55を、欠陥ロール対の抽出と、多段圧延機20による被圧延材Wの圧延の制御と、に兼用することができる。よって、出側板厚偏差検出部51および圧延速度検出部55(具体的にはセンサ)のコストを抑制することができる。例えば、既存の圧延のための設備が出側板厚偏差検出部51および圧延速度検出部55を備えている場合、この設備に新たなセンサを追加しなくても、欠陥ロール対の抽出に必要な情報を検出することができる。
【0087】
(第2実施形態)
図6図8を参照して、第2実施形態の欠陥バックアップロール検出装置201について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、第2実施形態の欠陥バックアップロール検出装置201のうち、第1実施形態との共通点については、説明を省略する。共通点の説明を省略することについては、後述する第3実施形態および第4実施形態の説明も同様である。主な相違点は、欠陥ロール対抽出ステップS220(図7参照)、および、図6に示す欠陥ロール対抽出部270の構成(計算方法)である。
【0088】
欠陥ロール対抽出部270は、判定用推定値取得部273を備える。判定用推定値取得部273は、欠陥ロール対の抽出に用いる判定用推定値として、推定うなり周期T(X,Y)、または、推定うなり周期T(X,Y)に相関する値(例えば後述する推定vT値)を算出する。
【0089】
(欠陥ロール対抽出ステップS220の具体例:推定うなり周期T(X,Y)を用いる例)
第1実施形態では、図1に示す欠陥ロール対抽出部70は、うなりの公式を変形した式を用いて、推定ロール径dY(判定用推定値の一例)を算出し、推定ロール径dYと実測のロール径dとの比較に基づいて、欠陥ロール対を抽出した。一方、本実施形態では、図6に示す欠陥ロール対抽出部270は、うなりの公式を用いて、推定うなり周期T(X,Y)(判定用推定値の一例)を算出し、推定うなり周期T(X,Y)と実測うなり周期Tとの比較に基づいて、欠陥ロール対を抽出する。
【0090】
なお、第1実施形態の欠陥ロール対抽出部70(図1参照)での計算と同様に、欠陥ロール対抽出部270での計算に用いられる値、および、算出される値は、その値に相関する値でもよい。具体的には例えば、推定うなり周期T(X,Y)を算出や比較することには、推定うなり周期T(X,Y)そのものを算出や比較することだけでなく、推定うなり周期T(X,Y)と相関する値(例えば後述する推定vT値など)を算出や比較することも含まれる。
【0091】
この具体例の概要は、次の通りである。判定用推定値取得部273は(欠陥ロール対抽出部270は)、バックアップロール群40gから2つのバックアップロール40(「選択ロール対」ともいう)を選択する。欠陥ロール対抽出部270は、選択した2つのバックアップロール40(選択ロール対)それぞれのロール径dと、うなりの公式と、に基づいて、この選択ロール対が発生させる推定うなり周期T(X,Y)を算出する。欠陥ロール対抽出部270は、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせについて、推定うなり周期T(X,Y)を算出する(図8参照)。欠陥ロール対抽出部270は、実測うなり周期Tに最も近い推定うなり周期T(X,Y)のうなりを発生させる2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出する。
【0092】
(推定うなり周期T(X,Y)を用いる例の詳細)
欠陥ロール対抽出ステップS220(図7参照)での、推定うなり周期T(X,Y)を用いた欠陥ロール対の抽出の具体例の詳細は、次の通りである。
【0093】
上記の第1-2式に、上記の第2-2式、および、第3-2式を代入すると、次式が得られる。
T・v=π・dX・dY÷(dY-dX) (第5-1式)
【0094】
この第5-1式を、次式のように変形してもよい。
T=π・dX・dY÷[v(dY-dX)] (第5-2式)
なお、第5-1式および第5-2式の一方が、欠陥ロール対の抽出の計算に用いられればよい。
【0095】
第5-1式の右辺(π・dX・dY÷(dY-dX))は、被圧延材Wの圧延前に算出可能である。そこで、被圧延材Wの圧延前に(予め)、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせのロール径d(dX,dY)が、第5-1式の右辺のdX、dYに代入される。これにより、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせについて、推定うなり周期T(X,Y)と圧延速度vとの積が算出される。推定うなり周期T(X,Y)と圧延速度vとの積(v・T(X,Y))を、「推定vT値」という。2つのバックアップロール40のすべての組み合わせの推定vT値が、記憶部60mに記憶される。具体的には例えば、推定vT値は、図8に示すようなデータテーブルとして記憶される。この場合、被圧延材Wの圧延前に(予め、事前に)推定vT値が計算されている。よって、例えば第1実施形態での欠陥ロール対抽出ステップS20(図4参照)での計算などに比べ、欠陥ロール対の抽出時の計算量を抑制することができる。
【0096】
ステップS223(判定用推定値取得ステップ)(図7参照)では、判定用推定値取得部273は、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせの推定vT値を記憶部60mから読み込む。
【0097】
ステップS225(比較抽出ステップ)(図7参照)では、比較抽出部275は、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせの推定vT値と、実測vT値と、を比較する。実測vT値は、実測うなり周期Tと、圧延速度vとの積(v・T)である。そして比較抽出部275は、実測vT値に最も近い推定vT値に対応する、2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出する。
【0098】
比較抽出部275は、上記の第5-2式に基づいて、欠陥ロール対の抽出を行ってもよい。具体的には例えば、比較抽出部275は、図8に示す、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせの推定vT値を、圧延速度vで割り、推定うなり周期T(X,Y)を算出してもよい。そして、図6に示す比較抽出部275は、実測うなり周期Tに最も近い推定うなり周期T(X,Y)に対応する、2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出してもよい。
【0099】
比較抽出部275が、2つのバックアップロール40の組み合わせを欠陥ロール対として抽出する条件には、推定vT値と実測vT値との差が、所定の閾値(抽出閾値)以下であることが含まれてもよい。比較抽出部275は、推定vT値と実測vT値との差が抽出閾値以下、かつ、推定vT値に最も近いvT値に対応する、2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出してもよい。
【0100】
(第3の発明の効果)
図6に示す多段圧延機20の欠陥バックアップロール検出方法による効果は、次の通りである。
【0101】
[構成3]欠陥ロール対抽出ステップS220(図7参照)は、次のように行われる。バックアップロール群40gから2つのバックアップロール40(選択ロール対)が選択される。選択された2つのバックアップロール40それぞれのロール径dと、うなりの公式と、に基づいて、選択ロール対が発生させる推定うなり周期T(X,Y)が算出される(上記の例では推定vT値が算出される)。推定うなり周期T(X,Y)が、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせについて算出される。実測うなり周期Tに最も近い推定うなり周期T(X,Y)のうなりを発生させる、2つのバックアップロール40の組み合わせが、欠陥ロール対として抽出される。
【0102】
上記[構成3]のように欠陥ロール対が抽出される結果、確実かつ迅速に欠陥バックアップロール対を特定することができる。例えば、推定うなり周期T(X,Y)(例えば推定vT値)が、被圧延材Wの圧延前に(予め、事前に)計算されている場合には、例えば上記[構成2]などの場合に比べ、欠陥ロール対の抽出時の計算量を抑制することができる。
【0103】
(第8の発明の効果)
多段圧延機20の欠陥バックアップロール検出装置201による効果は、次の通りである。
【0104】
[構成8]欠陥ロール対抽出部270は、バックアップロール群40gから2つのバックアップロール40(選択ロール対)を選択する。欠陥ロール対抽出部270は、選択した2つのバックアップロール40(選択ロール対)それぞれのロール径dと、うなりの公式と、に基づいて、選択ロール対が発生させる推定うなり周期T(X,Y)を算出する(上記の例では推定vT値を算出する)。欠陥ロール対抽出部270は、推定うなり周期T(X,Y)を、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせについて算出する。欠陥ロール対抽出部270は、実測うなり周期Tに最も近い推定うなり周期T(X,Y)のうなりを発生させる、2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出する。
【0105】
上記[構成8]のように欠陥ロール対が抽出される結果、確実かつ迅速に欠陥バックアップロール対を特定することができる。例えば、推定うなり周期T(X,Y)(例えば推定vT値)が、被圧延材Wの圧延前に(予め、事前に)計算されている場合には、例えば上記[構成7]などの場合に比べ、欠陥ロール対の抽出時の計算量を抑制することができる。
【0106】
(第3実施形態)
図9図11を参照して、第3実施形態の欠陥バックアップロール検出装置301について、第1実施形態および第2実施形態との相違点を説明する。主な相違点は、欠陥ロール対抽出ステップS320(図10参照)、および、図9に示す欠陥ロール対抽出部370の構成(計算方法)である。欠陥ロール対抽出部370は、回転周期算出部371を備える(詳細は後述)。
【0107】
(欠陥ロール対抽出ステップS320の具体例:回転周期の最小公倍数を用いる例)
第2実施形態では、図6に示す欠陥ロール対抽出部270は、うなりの公式を用いて、推定vT値(推定うなり周期T(X,Y)に相関する値、判定用推定値の一例)を算出した。そして、欠陥ロール対抽出部270は、推定vT値と実測vT値との比較に基づいて、欠陥ロール対を抽出した。第3実施形態では、図9に示す欠陥ロール対抽出部370は、2つのバックアップロール40の回転周期tの最小公倍数を求めることで、推定うなり周期T(X,Y)を算出する。そして、欠陥ロール対抽出部370は、推定うなり周期T(X,Y)と実測うなり周期Tとの比較に基づいて、欠陥ロール対を抽出する。
【0108】
この具体例の概要は、次の通りである。回転周期算出部371は(欠陥ロール対抽出部370は)、圧延速度vとロール径dとに基づいて、すべてのバックアップロール40それぞれの回転周期t(tA~tH)を算出する。回転周期算出部371は、バックアップロール群40gから2つのバックアップロール40(選択ロール対)を選択する。回転周期算出部371は、選択した2つのバックアップロール40(選択ロール対)それぞれの回転周期tの最小公倍数を算出することで、選択ロール対が発生させる推定うなり周期T(X,Y)を算出する。回転周期算出部371は、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせについて、推定うなり周期T(X,Y)を算出する(図11参照)。そして、判定用推定値算出部373は(欠陥ロール対抽出部370は)、実測うなり周期Tに最も近い推定うなり周期T(X,Y)のうなりを発生させる、2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出する。
【0109】
(最小公倍数を用いる例の詳細)
欠陥ロール対抽出ステップS320(図10参照)での、最小公倍数を用いた欠陥ロール対の抽出の具体例の詳細は、次の通りである。
【0110】
一般に、周期T1の波と周期T2の波とにより、うなりが発生する場合、このうなりの周期は、周期T1と周期T2との最小公倍数である。XとYとの最小公倍数を「LCM(X,Y)」とし、XとYとの最大公約数を「GCM(X,Y)」とする(LCM;Least Common Multiple、GCM;Greatest Common Measure)。最小公倍数と最大公約数との関係は、次式で表される。
LCM(X,Y)=X・Y÷GCM(X,Y) (第6式)
【0111】
第6式のX,Yに、2つのバックアップロール40の回転周期tであるtXおよびtYを代入すると、次式が得られる。
LCM(tX,tY)=tX・tY÷GCM(tX,tY) (第7式)
【0112】
第7式の左辺のLCM(tX,tY)は、tXとtYの回転周期tから生じると想定されるうなりの周期である。そこで、LCM(tX,tY)を、推定うなり周期T(X,Y)に置き換えると、次式が得られる。
T(X,Y)=tX・tY÷GCM(tX,tY) (第8式)
【0113】
第8式の右辺に、2つのバックアップロール40の回転周期t(tX、tY)を代入することで、この2つのバックアップロール40の推定うなり周期T(X,Y)が求められる(詳細はステップS323の説明を参照)。
【0114】
ステップS321(回転周期算出ステップ)(図10参照)では、回転周期算出部371は、すべてのバックアップロール40それぞれの回転周期t(tA~tH)を算出する。さらに詳しくは、回転周期算出部371は、バックアップロール40のロール径d(例えばdA)を、上記の第2-2式に代入することで、このバックアップロール40の回転周期t(例えばtA)を算出する。回転周期算出部371は、この回転周期tの算出を、すべてのバックアップロール40について行う。この例では、バックアップロール群40gを構成するバックアップロール40(40A~40H(図2参照))は8つ設けられる。各バックアップロール40(40A~40H)の回転周期tを、tA、tB、tC、tD、tE、tF、tG、tGとする(これらをまとめて「tA~tH」とする)。
【0115】
ステップS323(判定用推定値取得ステップ)(図10参照)では、判定用推定値算出部373は、上記の第8式から、すべてのバックアップロール40の組み合わせについて、推定うなり周期T(X,Y)を算出する(図11参照)。さらに詳しくは、判定用推定値算出部373は、すべての回転周期t(tA~tA)と第8式とに基づいて、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせについて、推定うなり周期T(X,Y)を算出する。このとき、2つの回転周期tの値の少なくとも一方が小数を含む場合は、判定用推定値算出部373は、小数点以下の桁数nに応じて、この2つの回転周期tの値のそれぞれを10のn乗倍し、2つの整数にする。そして、判定用推定値算出部373は、この2つの整数の最大公約数を計算し、計算した最大公約数の値を10のn乗で割った値を、第8式の「GCM(tX,tY)」の値とする。
【0116】
ステップS325(比較抽出ステップ)(図10参照)では、比較抽出部375は、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせの推定うなり周期T(X,Y)と、実測うなり周期Tと、を比較する。そして比較抽出部375は、実測うなり周期Tに最も近い推定うなり周期T(X,Y)に対応する、2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出する。
【0117】
比較抽出部375が、2つのバックアップロール40の組み合わせを欠陥ロール対として抽出する条件には、推定うなり周期T(X,Y)と実測うなり周期Tとの差が、所定の閾値(抽出閾値)以下であることが含まれてもよい。比較抽出部375は、推定うなり周期T(X,Y)と実測うなり周期Tとの差が抽出閾値以下、かつ、推定うなり周期T(X,Y)に最も近い実測うなり周期Tに対応する、2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出してもよい。
【0118】
本実施形態での欠陥ロール対抽出ステップS320(図10参照)の計算量は、第1、第2実施形態での欠陥ロール対抽出ステップS20、S220(図4図7参照)の計算量よりも多くなりやすい。しかし、欠陥ロール対抽出ステップS320(図10参照)の計算は、出側板厚偏差のうなりが発生した際に行えばよい(圧延設備10の運転中に常に行う必要はない)。また、欠陥ロール対を抽出する際に、計算時間が問題になるような高速計算は不要である。そのため、本実施形態での計算方法でも、第1、第2実施形態の計算方法でも、これらの計算方法を変形した計算方法でも、どのような計算方法であっても、欠陥ロール対を確実かつ迅速に抽出することができる。なお、出側板厚偏差のうなりが発生していない際に計算が行われてもよい。
【0119】
(第4の発明の効果)
図9に示す多段圧延機20の欠陥バックアップロール検出方法による効果は、次の通りである。
【0120】
[構成4]欠陥ロール対抽出ステップS320(図10参照)は、次のように行われる。圧延速度vとロール径dとに基づいて、すべてのバックアップロール40それぞれの回転周期tが算出される。バックアップロール群40gから2つのバックアップロール40(選択ロール対)が選択される。選択された2つのバックアップロール40それぞれの回転周期tの最小公倍数が算出されることで、選択ロール対が発生させる推定うなり周期T(X,Y)が算出される。推定うなり周期T(X,Y)が、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせについて算出される。実測うなり周期Tに最も近い推定うなり周期T(X,Y)のうなりを発生させる、2つのバックアップロール40の組み合わせが、欠陥ロール対として抽出される。
【0121】
上記[構成4]のように欠陥ロール対が抽出される結果、確実かつ迅速に欠陥バックアップロール対を特定することができる。
【0122】
(第9の発明の効果)
多段圧延機20の欠陥バックアップロール検出装置301による効果は、次の通りである。
【0123】
[構成9]欠陥ロール対抽出部370は、圧延速度vとロール径dとに基づいて、すべてのバックアップロール40それぞれの回転周期tを算出する。欠陥ロール対抽出部370は、バックアップロール群40gから2つのバックアップロール40(選択ロール対)を選択する。欠陥ロール対抽出部370は、選択した2つのバックアップロール40(選択ロール対)それぞれの回転周期tの最小公倍数を算出することで、選択ロール対が発生させる推定うなり周期T(X,Y)を算出する。欠陥ロール対抽出部370は、推定うなり周期T(X,Y)を、2つのバックアップロール40のすべての組み合わせについて算出する。欠陥ロール対抽出部370は、実測うなり周期Tに最も近い推定うなり周期T(X,Y)のうなりを発生させる、2つのバックアップロール40の組み合わせを、欠陥ロール対として抽出する。
【0124】
上記[構成9]のように欠陥ロール対が抽出される結果、確実かつ迅速に欠陥バックアップロール対を特定することができる。
【0125】
(第4実施形態)
図12を参照して、第4実施形態の欠陥バックアップロール検出装置401について、第1実施形態などとの相違点を説明する。
【0126】
相違点は、多段圧延機420の段数(ロールの数)である。多段圧延機420の段数は、様々に設定可能である。また、中間ロール30の数、および、バックアップロール40の数は、様々に設定可能である。図2に示す例では、多段圧延機20は、20段圧延機である。20段圧延機では、中間ロール群30gには、第一中間ロール群31gと第二中間ロール群32gとの2つの群がある。また、バックアップロール40は8つ設けられる。一方、図12に示す例では、多段圧延機420は、12段圧延機である。12段圧延機では、中間ロール群30gは、1つのみの群を備える。中間ロール30は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に(例えば上下一対)に2つずつ、合計4つ設けられる。また、バックアップロール40は、被圧延材Wの厚さ方向の両側に(例えば上下一対)に3つずつ、合計6つ設けられる。
【0127】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態の構成要素(変形例を含む)どうしが組み合わされてもよい。例えば、上記実施形態の構成要素(変形例を含む)の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、上記実施形態の変形例どうしが様々に組み合わされてもよい。例えば、図1図6、および図9などに示す各構成要素の接続は変更されてもよい。例えば、構成要素の配置は変更されてもよい。例えば、構成要素の包含関係は様々に変更されてもよい。例えば、ある上位の構成要素に含まれる下位の構成要素として説明したものが、この上位の構成要素に含まれなくてもよく、他の構成要素に含まれてもよい。具体的には例えば、制御部60の構成要素として説明したもの(例えば記憶部60mなど)が、制御部60に含まれなくてもよい。また、例えば、制御部60の構成要素でなかったもの(例えば出側板厚検出部52)が、制御部60に含まれてもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。例えば、図4図7、および図10に示すフローチャートのステップの順序が変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよく、互いに異なるフローチャートのステップどうしが組み合わされてもよい。例えば、各構成要素は、各特徴(作用機能、配置、形状、作動など)の一部のみを有してもよい。
【0128】
例えば、計算などは、様々に行われてもよい。例えば、各実施形態の欠陥ロール対抽出ステップS20、S220、およびS320などの計算方法は、一例にすぎない。計算に用いられる数式は様々に変形可能である。計算の手順は様々に変更可能である。計算に用いられる値、および、計算により算出される値(例えば判定用推定値)などは様々に変更可能である。
【符号の説明】
【0129】
1、201、301、401 欠陥バックアップロール検出装置
20、420 多段圧延機
21 ワークロール
31 第一中間ロール
31g 第一中間ロール群
32 第二中間ロール
32g 第二中間ロール群
40 バックアップロール
40g バックアップロール群
51 出側板厚偏差検出部
55 圧延速度検出部
60 制御部
61 ロール径取得部
62 実測うなり周期取得部
63 圧延速度取得部
70、270、370 欠陥ロール対抽出部
d ロール径
dY 推定ロール径
S11 ロール径測定ステップ
S12 実測うなり周期測定ステップ
S13 圧延速度測定ステップ
S20、S220、S320 欠陥ロール対抽出ステップ
t 回転周期
T 実測うなり周期
T(X,Y) 推定うなり周期
v 圧延速度
W 被圧延材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12