(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115244
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】稼働制御装置及び電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20240819BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240819BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20240819BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240819BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20240819BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20240819BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20240819BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20240819BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20240819BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240819BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20240819BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240819BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/00 Z
H01M8/249
H01M8/04537
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04664
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04746
B60L58/30
H01M8/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020848
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 友章
【テーマコード(参考)】
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BD01
5H125EE32
5H126BB06
5H127AA05
5H127AB04
5H127AB17
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA59
5H127BB02
5H127DA01
5H127DA11
5H127DB49
5H127DB69
5H127DC02
5H127DC42
5H127DC45
(57)【要約】
【課題】燃料電池の劣化を抑制する。
【解決手段】稼働制御装置10は、車両において必要とされる電力である必要電力を示す情報を取得する取得部121と、当該車両に搭載される複数の燃料電池3それぞれの、出力可能な電力の範囲よりも狭い出力電力範囲を特定する第1特定部122と、燃料電池3の所定電力範囲と、必要電力とに基づいて、複数の燃料電池3のうち、所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に必要電力を供給可能となる一以上の燃料電池3を特定する第2特定部123と、第2特定部123が特定した一以上の燃料電池3が稼働状態となるように複数の燃料電池3の稼働を制御する稼働制御部124と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において必要とされる電力である必要電力を示す情報を取得する取得部と、
前記車両に搭載される複数の燃料電池それぞれの、出力可能な電力の範囲よりも狭い所定電力範囲を特定する第1特定部と、
前記燃料電池の前記所定電力範囲と、前記必要電力とに基づいて、前記複数の燃料電池のうち、前記所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に前記必要電力を供給可能となる一以上の燃料電池を特定する第2特定部と、
前記一以上の燃料電池が稼働状態となるように前記複数の燃料電池の稼働を制御する稼働制御部と、
を有する稼働制御装置。
【請求項2】
前記複数の燃料電池それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部を有し、
前記第2特定部は、一以上の燃料電池が稼働状態となるように、停止中の燃料電池の中から稼働させる燃料電池を一以上選択する場合に、停止中の一以上の燃料電池それぞれについて前記履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定し、特定した指標値に基づいて当該一以上の燃料電池の中から相対的に劣化していない燃料電池を稼働させる燃料電池として特定する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項3】
前記複数の燃料電池それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部を有し、
前記第2特定部は、一以上の燃料電池が稼働状態となるように、稼働中の燃料電池の中から停止させる燃料電池を一以上選択する場合に、稼働中の一以上の燃料電池それぞれについて前記履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定し、特定した指標値に基づいて当該一以上の燃料電池の中から相対的に劣化していない燃料電池を停止させる燃料電池として特定する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項4】
複数の劣化状態それぞれにおける燃料電池の前記所定電力範囲を示す情報と、前記複数の燃料電池それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部を有し、
前記第1特定部は、前記複数の燃料電池それぞれについて、前記履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定し、特定した指標値が示す劣化状態に対応する前記所定電力範囲を特定する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項5】
前記第2特定部は、前記所定電力範囲の最低電力及び最高電力と、前記必要電力とに基づいて、稼働させる一以上の燃料電池により、前記必要電力を供給可能となり、かつ、稼働させる一以上の燃料電池それぞれが供給する電力が前記最低電力を超えるように、一以上の燃料電池を特定する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項6】
前記複数の燃料電池それぞれが出力可能な電力の範囲は略同一であり、
前記第2特定部は、前記燃料電池の前記所定電力範囲と、前記必要電力とに基づいて、前記複数の燃料電池のうち、前記所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に前記必要電力を供給可能となる燃料電池の台数を特定し、
前記稼働制御部は、特定した台数の燃料電池が稼働状態となるように前記複数の燃料電池の稼働を制御する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項7】
前記稼働制御部は、特定した一以上の燃料電池が稼働状態となるように前記複数の燃料電池それぞれに燃料を供給するための燃料制御弁を制御する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項8】
複数の燃料電池と、
前記複数の燃料電池それぞれに燃料を供給する燃料タンクと、
前記複数の燃料電池それぞれと前記燃料タンクとの間に設けられ、前記複数の燃料電池それぞれに対して前記燃料タンクから燃料を供給するか否かを切り替える複数の燃料制御弁と、
前記複数の燃料制御弁それぞれを制御することにより前記複数の燃料電池それぞれの稼働を制御する稼働制御装置と、
を有し、車両に電力を供給する電力供給システムであって、
前記稼働制御装置は、
前記車両において必要とされる電力である必要電力を示す情報を取得する取得部と、
前記車両に搭載される前記複数の燃料電池それぞれにおいて、出力可能な電力範囲よりも狭い所定電力範囲を特定する第1特定部と、
前記燃料電池の前記所定電力範囲と、前記必要電力とに基づいて、前記複数の燃料電池のうち、前記所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に前記必要電力を供給可能となる一以上の燃料電池を特定する第2特定部と、
前記一以上の燃料電池が稼働状態となるように前記複数の燃料電池それぞれに燃料を供給するための燃料制御弁を制御する稼働制御部と、
を有する、
電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稼働制御装置及び電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の一種として、水素イオン交換膜型の燃料電池を積層した燃料電池スタックを搭載し、燃料電池スタックが発電した電力により走行用モータを駆動させる燃料電池車が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗用車に搭載される燃料電池スタックが1台であるのに対し、大型車両では出力電力を大きくする必要があるため、複数台の燃料電池スタックが搭載される。複数台の燃料電池スタックに対して燃料タンクから燃料を一律に供給するようにした場合、車両において必要とされる電力が低くなった場合に、複数の燃料電池スタックそれぞれの負荷が低くなりすぎることがある。この場合、燃料電池スタックを構成する燃料電池の電位が許容範囲を超えてしまい、燃料電池が劣化してしまうという問題が発生する。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、燃料電池の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る稼働制御装置は、車両において必要とされる電力である必要電力を示す情報を取得する取得部と、前記車両に搭載される複数の燃料電池それぞれの、出力可能な電力の範囲よりも狭い所定電力範囲を特定する第1特定部と、前記燃料電池の前記所定電力範囲と、前記必要電力とに基づいて、前記複数の燃料電池のうち、前記所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に前記必要電力を供給可能となる一以上の燃料電池を特定する第2特定部と、前記一以上の燃料電池が稼働状態となるように前記複数の燃料電池の稼働を制御する稼働制御部と、を有する。
【0007】
前記稼働制御装置は、前記複数の燃料電池それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部を有し、前記第2特定部は、一以上の燃料電池が稼働状態となるように、停止中の燃料電池の中から稼働させる燃料電池を一以上選択する場合に、停止中の一以上の燃料電池それぞれについて前記履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定し、特定した指標値に基づいて当該一以上の燃料電池の中から相対的に劣化していない燃料電池を稼働させる燃料電池として特定してもよい。
【0008】
前記稼働制御装置は、前記複数の燃料電池それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部を有し、前記第2特定部は、一以上の燃料電池が稼働状態となるように、稼働中の燃料電池の中から停止させる燃料電池を一以上選択する場合に、稼働中の一以上の燃料電池それぞれについて前記履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定し、特定した指標値に基づいて当該一以上の燃料電池の中から相対的に劣化していない燃料電池を停止させる燃料電池として特定してもよい。
【0009】
前記稼働制御装置は、複数の劣化状態それぞれにおける燃料電池の前記所定電力範囲を示す情報と、前記複数の燃料電池それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部を有し、前記第1特定部は、前記複数の燃料電池それぞれについて、前記履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定し、特定した指標値が示す劣化状態に対応する前記所定電力範囲を特定してもよい。
【0010】
前記第2特定部は、前記所定電力範囲の最低電力及び最高電力と、前記必要電力とに基づいて、稼働させる一以上の燃料電池により、前記必要電力を供給可能となり、かつ、稼働させる一以上の燃料電池それぞれが供給する電力が前記最低電力を超えるように、一以上の燃料電池を特定してもよい。
【0011】
前記複数の燃料電池それぞれが出力可能な電力の範囲は略同一であり、前記第2特定部は、前記燃料電池の前記所定電力範囲と、前記必要電力とに基づいて、前記複数の燃料電池のうち、前記所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に前記必要電力を供給可能となる燃料電池の台数を特定し、前記稼働制御部は、特定した台数の燃料電池が稼働状態となるように前記複数の燃料電池の稼働を制御してもよい。
前記稼働制御部は、特定した一以上の燃料電池が稼働状態となるように前記複数の燃料電池それぞれに燃料を供給するための燃料制御弁を制御してもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に係る電力供給システムは、複数の燃料電池と、前記複数の燃料電池それぞれに燃料を供給する燃料タンクと、前記複数の燃料電池それぞれと前記燃料タンクとの間に設けられ、前記複数の燃料電池それぞれに対して前記燃料タンクから燃料を供給するか否かを切り替える複数の燃料制御弁と、前記複数の燃料制御弁それぞれを制御することにより前記複数の燃料電池それぞれの稼働を制御する稼働制御装置と、を有し、車両に電力を供給する電力供給システムであって、前記稼働制御装置は、前記車両において必要とされる電力である必要電力を示す情報を取得する取得部と、前記車両に搭載される前記複数の燃料電池それぞれにおいて、出力可能な電力範囲よりも狭い所定電力範囲を特定する第1特定部と、前記燃料電池の前記所定電力範囲と、前記必要電力とに基づいて、前記複数の燃料電池のうち、前記所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に前記必要電力を供給可能となる一以上の燃料電池を特定する第2特定部と、前記一以上の燃料電池が稼働状態となるように前記複数の燃料電池それぞれに燃料を供給するための燃料制御弁を制御する稼働制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料電池の劣化を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】燃料電池の出力電流密度と出力電圧との関係を示す燃料電池I-V特性を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る稼働制御装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
[電力供給システムSの概要]
図1は、電力供給システムSの構成を示す図である。電力供給システムSは、例えば、モータを駆動力として走行する電気自動車に実装され、車両に搭載されている走行用のモータ、クレーン、冷凍機等を含む複数の車載機器の少なくともいずれかに対して、車両に搭載されている複数の燃料電池により電力を供給するために用いられる。限定はしないが、実施の形態に係る電力供給システムSは、バスやトラック等の大型の電気自動車に好適に用いられる。以下、本実施の形態では、車両がバスやトラック等の電気自動車であることを前提に説明する。
【0016】
実施の形態に係る電力供給システムSは、水素タンク1と、複数の燃料制御弁2と、複数の燃料電池3と、二次電池4と、インバータ5と、モータ6と、電動補機7とを有する。
【0017】
水素タンク1は、燃料電池の燃料である水素ガスを充填したタンクである。
燃料制御弁2は、複数の燃料電池3のそれぞれに対応して設けられている。
図1に示す例では、電力供給システムSは、複数の燃料制御弁2として、3つの燃料制御弁2A、2B、2Cを有している。燃料制御弁2Aは、稼働制御装置10の制御により、燃料電池3Aに対して燃料を供給するか否かを切り替える。燃料制御弁2Bは、稼働制御装置10の制御により、燃料電池3Bに対して燃料を供給するか否かを切り替える。燃料制御弁2Cは、稼働制御装置10の制御により、燃料電池3Cに対して燃料を供給するか否かを切り替える。
【0018】
燃料電池3は、例えば、水素イオン交換膜型の燃料電池セルを積層した燃料電池スタックである。燃料電池3は、酸素と、燃料制御弁2を介して水素タンク1から供給された水素ガスとを反応させて直流電力を発生させる。燃料電池3は、発生させた直流電力を、インバータ5を介してモータ6及び電動補機7に供給する。複数の燃料電池3それぞれが出力可能な電力の範囲は略同一であるものとする。
【0019】
図1に示す例では、電力供給システムSは、複数の燃料電池3として、3つの燃料電池3A、3B、3Cを有している。燃料電池3は、燃料制御弁2が開状態となり、水素タンク1から水素ガスが供給されると稼働を開始して発電を行う。また、燃料電池3は、燃料制御弁2が閉状態となり、水素タンク1から水素ガスが供給されなくなると稼働を停止して発電を停止する。
【0020】
二次電池4は、燃料電池3が発電した余剰電力を蓄積する。二次電池4は、蓄積した電力を出力する。二次電池4の出力電力は直流電力であるとする。二次電池4は、例えば、車両が停車してモータ6が停止しており、電動補機7において必要とされる電力が少量であるとともに、複数の燃料電池3の全てが停止している場合に、電動補機7に対して電力を供給する。
【0021】
インバータ5は、燃料電池3の発電電力又は二次電池4の出力電力を交流電力に変換する。例えば、インバータ5は、モータECU(不図示)の制御に基づいて交流電力をモータ6に供給したり、電動補機7に交流電力を供給したりする。
【0022】
モータ6は、走行用のモータであり、モータECUの制御に応じて、インバータ5を介して燃料電池から供給される電力により回転駆動力を発生させ、車両に設けられている車輪を駆動させる。
【0023】
電動補機7は、車両に搭載されているコントロールユニット、電動コンプレッサ、エアコンコンプレッサ、ヒータ、電動ウォータポンプ、電動ファン等であり、インバータ5を介して燃料電池3又は二次電池4から供給される電力により動作する。なお、車両が冷蔵車、冷凍車、塵芥車等である場合、電動補機7には、これらの車両に搭載されている電動の架装物も含まれる。
【0024】
稼働制御装置10は、複数の燃料電池3それぞれと、水素タンク1との間に設けられている複数の燃料制御弁2を個別に制御することにより、複数の燃料電池3それぞれの稼働を制御する。
【0025】
ここで、燃料電池3の出力電力の範囲には、燃料電池が劣化しにくい出力電力の範囲がある。
図2は、燃料電池の出力電流密度と出力電圧との関係を示す燃料電池I-V特性を示す図である。
図2に示す例では、横軸が電流密度を示し、縦軸が燃料電池の出力電圧を示している。
【0026】
図2に示すように、燃料電池の負荷が低い場合、すなわち、燃料電池3の出力電流密度が低い場合には出力電圧が高い。そして、燃料電池の負荷が高くなるにしたがって出力電圧が低下する。燃料電池の出力電圧は、特定出力範囲よりも高すぎても、低すぎても、燃料電池が劣化するおそれがある。したがって、負荷が低すぎる場合には出力電圧が高くなりすぎてしまい、燃料電池が劣化するおそれがある。また、燃料電池の負荷が高すぎる場合には出力電圧が低くなりすぎてしまい、燃料電池が劣化するおそれがある。特定の出力範囲は、燃料電池が劣化しにくい出力電圧の範囲であり、例えば、出力電圧の上限値と下限値とを用いて設けられている。
【0027】
図2に示す例において、電圧Vthuは、特定出力範囲の上限値を示し、電圧Vthlは、特定出力範囲の下限値を示している。また、本実施の形態において、出力電圧がVthuとなるときの燃料電池の出力電力を、燃料電池が劣化しにくい出力電力の範囲のうちの最低電力という。また、出力電圧がVthlとなるときの燃料電池の出力電力を、燃料電池が劣化しにくい出力電力の範囲のうちの最高電力という。また、燃料電池3が出力可能な電力の範囲のうち、最低電力から最高電力までの電力の範囲を所定電力範囲という。
【0028】
稼働制御装置10は、車両において必要とされる電力である必要電力と、複数の燃料電池3それぞれに対応する所定電力範囲を特定する。そして、稼働制御装置10は、燃料電池3の所定電力範囲と、必要電力とに基づいて、複数の燃料電池の内、所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に必要電力を供給可能となる一以上の燃料電池3を特定する。そして、稼働制御装置10は、特定した一以上の燃料電池3が稼働するように複数の燃料電池3の稼働を制御する。このようにすることで、電力供給システムSは、燃料電池3の出力電圧が最低電圧未満となることを抑制し、燃料電池3の劣化を抑制することができる。
【0029】
[稼働制御装置10の構成]
続いて、稼働制御装置10の構成について説明する。
図3は、稼働制御装置10の機能構成を示す図である。
図3に示すように、稼働制御装置10は、記憶部11と、制御部12とを有する。
【0030】
記憶部11は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)である。記憶部11は、制御部12を取得部121、第1特定部122、第2特定部123、及び稼働制御部124として機能させるプログラムを記憶する。
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部12は、記憶部11に記憶されているプログラムを実行することにより、取得部121、第1特定部122、第2特定部123、及び稼働制御部124として機能する。
【0031】
取得部121は、車両において必要とされる電力である必要電力を示す情報を取得する。取得部121は、車両のイグニッションキーがオンになると、所定時間おきに必要電力を示す情報を取得する。取得部121は、モータECUから、モータ6において必要とされる電力を示す電力情報を取得するとともに、一以上の電動補機7それぞれの駆動状態を特定する。記憶部11には、複数の電動補機7それぞれが駆動している場合の消費電力を示す消費電力情報が記憶されている。取得部121は、消費電力情報を参照し、駆動している電動補機7の消費電力を特定して合計することにより、一以上の電動補機7において必要とされる電力を特定する。取得部121は、モータ6において必要とされる電力と、一以上の電動補機7において必要とされる電力とを合計することにより、必要電力を示す情報を取得する。
【0032】
第1特定部122は、車両に搭載される複数の燃料電池3それぞれの、出力可能な電力の範囲よりも狭い所定電力範囲を特定する。まず、第1特定部122は、車両に搭載される複数の燃料電池3それぞれにおいて、燃料電池が劣化しにくい出力電力の範囲のうちの最低電力を特定する。例えば、第1特定部122は、車両のイグニッションキーがオンになると、複数の燃料電池3それぞれの最低電力を特定する。例えば、記憶部11には、燃料電池I-V特性を示す特性情報と、燃料電池が劣化しにくい出力電圧の範囲の上限値を示す第1閾値Vthuと、燃料電池が劣化しにくい出力電圧の範囲の下限値を示す第2閾値Vthlとが記憶されている。第1特定部122は、記憶部11に記憶されている特性情報と、第1閾値Vthuとに基づいて、出力電圧が第1閾値Vthuとなるときの燃料電池の電流密度を特定する。第1特定部122は、第1閾値Vthuと、特定した電流密度とに基づいて、燃料電池3の最低電力を特定する。
【0033】
また、第1特定部122は、複数の燃料電池3それぞれにおいて、燃料電池が劣化しにくい出力電力の範囲のうちの最高電力を特定する。例えば、第1特定部122は、車両のイグニッションキーがオンになると、複数の燃料電池3それぞれの最高電力を特定する。第1特定部122は、記憶部11に記憶されている特性情報と、第2閾値Vthlとに基づいて、出力電圧が第2閾値Vthlとなるときの燃料電池の電流密度を特定する。第1特定部122は、第2閾値Vthlと、特定した電流密度とに基づいて、燃料電池3の最高電力を特定する。なお、本実施の形態において、複数の燃料電池3のそれぞれの最低電力は同じであるものとする。同様に、複数の燃料電池3のそれぞれの最高電力は同じであるものとする。
【0034】
第1特定部122は、最低電力から最高電力までの電力範囲を所定電力範囲と特定する。なお、以上の説明において、第1特定部122は、記憶部11に記憶されている特性情報と、第1閾値Vthuと、第2閾値Vthlとに基づいて、最低電力及び最高電力を特定したが、これに限らない。記憶部11が、最低電力及び最高電力を示す閾値電力情報を記憶しており、第1特定部122は、記憶部11に記憶されている閾値電力情報を参照して最低電力及び最高電力を特定してもよい。
【0035】
第2特定部123は、複数の燃料電池3それぞれの所定電力範囲と、必要電力とに基づいて、複数の燃料電池3のうち、所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に必要電力を供給可能となる一以上の燃料電池3を特定する。まず、第2特定部123は、燃料電池3を一つ選択する。既に稼働している燃料電池3が存在する場合には、稼働している燃料電池3を優先して選択する。続いて、第2特定部123は、必要電力が、選択された燃料電池3の最低電力の合計電力を超え、かつ、選択された一以上の燃料電池3それぞれの最高電力の合計電力以下となるまで、燃料電池3の選択を繰り返すことにより、必要電力を供給するために稼働する燃料電池3を特定する。この場合、第2特定部123は、複数の燃料電池3のうち、出力電力が高い燃料電池3から順番に選択して、稼働させる燃料電池3の台数が少なくなるようにしてもよいし、出力電力が低い燃料電池3から順番に選択して、稼働させる燃料電池3の台数が多くなるようにしてもよい。
【0036】
なお、本実施の形態では、複数の燃料電池3の出力電力が略同一であることから、第2特定部123は、稼働状態にする燃料電池3の台数を特定してもよい。例えば、第2特定部123は、取得部121が必要電力を示す情報を取得すると、第1特定部122が特定した燃料電池3の所定電力範囲が示す燃料電池3の最高電力及び最低電力と、当該必要電力とに基づいて、稼働させる燃料電池3の台数を特定する。第2特定部123は、稼働させる一以上の燃料電池3により、予測した必要電力を供給可能となり、かつ、稼働させる一以上の燃料電池3それぞれが供給する電力が最低電力を超えるように、稼働させる燃料電池3の台数を特定する。
【0037】
例えば、第2特定部123は、稼働させる燃料電池3の台数を1台と仮定した場合に、必要電力が最低電力以上、かつ、最高電力以下であるかを判定する。第2特定部123は、稼働させる燃料電池3の台数が1台と仮定した場合に、必要電力が最低電力未満であると判定すると、稼働させる燃料電池3の台数を0台と特定する。稼働させる燃料電池3の台数が0台である場合には、二次電池4から電力が供給される。
【0038】
第2特定部123は、必要電力が最低電力以上、かつ、最高電力以下ではないと判定すると、稼働させる燃料電池3の台数を1台ずつ増加させ、それぞれの台数における最低電力の合計値及び最高電力の合計値のそれぞれを必要電力と比較することにより、必要電力が最低電力の合計値以上、かつ、最高電圧の合計値以下を満たすときの燃料電池3の台数を特定する。
【0039】
具体的には、第2特定部123は、稼働させる燃料電池3の台数を1台と仮定した場合に、必要電力が最高電力を超えると判定すると、稼働させる燃料電池3の台数を2台と仮定しなおし、必要電力が2台の燃料電池3それぞれの最低電力の合計電力以上、かつ、2台の燃料電池3の最高電力の合計電力以下であるかを判定する。第2特定部123は、必要電力が最低電力の合計電力以上、かつ、2台の燃料電池3の最高電力の合計電力以下であると判定すると、稼働させる燃料電池3の台数を2台と特定する。また、第2特定部123は、稼働させる燃料電池3の台数を2台と仮定した場合に、必要電力が、2台の燃料電池3の最高電力の合計電力を超えると判定すると、稼働させる燃料電池3の台数を3台と特定する。
【0040】
第2特定部123は、複数の燃料電池3のうち、特定した台数の燃料電池3を、必要電力を供給するために稼働する燃料電池3として特定する。例えば、第2特定部123は、特定した台数と、稼働中の燃料電池3の台数とが等しい場合には、稼働中の燃料電池3を、必要電力を供給するために稼働する燃料電池3として特定する。
【0041】
第2特定部123は、特定した台数が、稼働中の燃料電池3の台数よりも多い場合には、特定した台数から、稼働中の燃料電池3の台数を減算し、新たに稼働する燃料電池3の台数を特定する。第2特定部123は、停止中の燃料電池3の中から、新たに稼働する燃料電池3の台数の燃料電池3を選択し、選択した燃料電池3と、稼働中の燃料電池3とを、必要電力を供給するために稼働する燃料電池3として特定する。
【0042】
第2特定部123は、特定した台数が、稼働中の燃料電池3の台数よりも少ない場合には、稼働中の燃料電池3の台数から、特定した台数を減算し、燃料電池3の停止台数を特定する。第2特定部123は、稼働中の燃料電池3の中から、停止台数の燃料電池3を選択し、稼働中の燃料電池3のうち、選択されなかった燃料電池3を、必要電力を供給するために稼働する燃料電池3として特定する。
【0043】
稼働制御部124は、第2特定部123が必要電力を供給するために稼働する燃料電池3を特定すると、特定した燃料電池3が稼働状態となるように複数の燃料電池3それぞれに燃料を供給するための燃料制御弁2を制御する。稼働制御部124は、特定した燃料電池に対応する燃料制御弁2を開状態に制御するとともに、残りの燃料制御弁2を閉状態に制御する。
【0044】
[動作フロー]
続いて、稼働制御装置10における処理の流れについて説明する。
図4は、第1の実施の形態に係る稼働制御装置10における処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、車両のイグニッションキーがオンになると実行される。
【0045】
まず、第1特定部122は、複数の燃料電池3それぞれについて、燃料電池が劣化しにくい出力電力の範囲のうちの最低電力と、最高電力とを特定することにより、所定電力範囲を特定する(S1)。
続いて、取得部121は、車両において必要とされる電力である必要電力を示す情報を取得する(S2)。
【0046】
続いて、第2特定部123は、第1特定部122が特定した複数の燃料電池3それぞれの所定電力範囲と、取得部121が予測した必要電力とに基づいて、稼働させる燃料電池3を特定する(S3)。
続いて、稼働制御部124は、特定した燃料電池3が稼働状態となるように複数の燃料電池3それぞれに燃料を供給するための燃料制御弁2を制御する(S4)。
【0047】
続いて、制御部12は、イグニッションキーがオフになったか否かを判定する(S5)。制御部12は、イグニッションキーがオフになったと判定すると(S5のYES)、本フローチャートに係る処理を終了し、イグニッションキーがオンであると判定すると(S5のNO)、S2に処理を移す。
【0048】
<第1の実施の形態に係る効果>
以上説明したように、第1の実施の形態に係る稼働制御装置10は、車両において必要とされる電力である必要電力を示す情報を取得し、車両に搭載される複数の燃料電池3それぞれの、出力可能な電力の範囲よりも狭い所定電力範囲を特定する。そして、稼働制御装置10は、燃料電池3の所定電力範囲と、必要電力とに基づいて、複数の燃料電池3のうち、所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に必要電力を供給可能となる一以上の燃料電池を特定し、特定した一以上の燃料電池が稼働状態となるように複数の燃料電池3の稼働を制御する。このようにすることで、稼働制御装置10は、燃料電池3の劣化を抑制することができる。
【0049】
<第2の実施の形態>
続いて、第2の実施の形態について説明する。燃料電池は、起動又は停止を繰り返すことにより性能が劣化する。複数の燃料電池3において、起動と停止のバランスが異なると、一部の燃料電池3が早期に劣化してしまうという問題が発生する。これに対し、第2の実施の形態に係る稼働制御装置10は、劣化が少ない燃料電池を優先的に起動又は停止させることにより、一部の燃料電池3が早期に劣化させないように燃料電池3の起動及び停止を制御する。以下に、第2の実施の形態に係る稼働制御装置10について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ部分については適宜説明を省略する。
【0050】
第2の実施の形態において、複数の燃料電池3のそれぞれには、燃料電池3を識別するための電池識別情報が割り当てられている。また、第2の実施の形態において、記憶部11は、複数の燃料電池3それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する。例えば、記憶部11は、電池識別情報と、当該電池識別情報に対応する燃料電池3の起動回数及び停止回数とを関連付けて履歴情報として記憶する。なお、履歴情報には、起動回数及び停止回数が含まれることとしたが、これに限らず、いずれか一方の回数が含まれるようにしてもよい。また、履歴情報には、起動回数及び停止回数の代わりに、起動時刻と停止時刻とが含まれるようにしてもよい。
【0051】
第2の実施の形態において、第2特定部123は、特定した一以上の燃料電池3が稼働状態となるように、停止中の燃料電池3の中から稼働させる燃料電池3を一以上選択する場合に、停止中の一以上の燃料電池3それぞれについて履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定する。例えば、第2特定部123は、記憶部11に記憶されている履歴情報を参照し、停止中の一以上の燃料電池3それぞれの電池識別情報に関連付けられている起動回数を、劣化状態を示す指標値と特定する。ここで、起動回数が少なければ少ないほど、燃料電池3が劣化していないものとする。
【0052】
そして、第2特定部123は、特定した起動回数に基づいて、停止中の一以上の燃料電池3の中から相対的に劣化していない燃料電池3、すなわち、起動回数が相対的に少ない燃料電池3を、稼働させる燃料電池3として特定する。稼働制御部124は、特定した燃料電池3が稼働状態となるように当該燃料電池3に対応する燃料制御弁2を制御する。すなわち、稼働制御部124は、特定した燃料電池3に対応する燃料制御弁2の状態を開状態に制御する。また、稼働制御部124は、記憶部11において、特定した燃料電池3の電池識別情報に関連付けられている起動回数を1増加させる。
【0053】
また、第2特定部123は、特定した一以上の燃料電池3が稼働状態となるように、稼働中の燃料電池3の中から停止させる燃料電池3を一以上選択する場合に、停止中の一以上の燃料電池3それぞれについて履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定する。例えば、第2特定部123は、記憶部11に記憶されている履歴情報を参照し、稼働中の一以上の燃料電池3それぞれの電池識別情報に関連付けられている起動回数を、劣化状態を示す指標値と特定する。
【0054】
そして、第2特定部123は、特定した起動回数に基づいて、稼働中の一以上の燃料電池3の中から相対的に劣化していない燃料電池3、すなわち、起動回数が相対的に少ない燃料電池3を、停止させる燃料電池3として特定する。稼働制御部124は、特定した燃料電池3が停止状態となるように当該燃料電池3に対応する燃料制御弁2を制御する。すなわち、稼働制御部124は、特定した燃料電池3に対応する燃料制御弁2の状態を閉状態に制御する。また、稼働制御部124は、記憶部11において、特定した燃料電池3の電池識別情報に関連付けられている停止回数を1増加させる。このようにすることで、第2の実施の形態に係る稼働制御装置10は、劣化が少ない燃料電池3を優先的に起動又は停止させることにより、一部の燃料電池3が早期に劣化させないようにすることができる。
【0055】
なお、第2の実施の形態において、第2特定部123は、起動回数を、劣化状態を示す指標値と特定したが、これに限らない。第2特定部123は、記憶部11に記憶されている履歴情報を参照し、停止中の一以上の燃料電池3それぞれの電池識別情報に関連付けられている停止回数を、劣化状態を示す指標値と特定してもよい。ここで、停止回数が少なければ少ないほど、燃料電池3が劣化していないものとする。また、第2特定部123は、燃料電池3のアイドル時間、出力電圧が最低電力未満となった回数、出力電圧が最高出力電力以上となった回数に基づいて劣化状態を特定してもよい。
【0056】
<第3の実施の形態>
続いて、第3の実施の形態について説明する。燃料電池は劣化すると燃料電池I-V特性が変化する。具体的には、燃料電池は劣化すると、劣化していない場合に比べて、出力電流密度に対応する出力電圧が低下する。このため、燃料電池の劣化状況に応じて最低電力も変化する。これに対し、第3の実施の形態に係る稼働制御装置10は、燃料電池の劣化状況に応じて最低電力を特定する。
【0057】
第3の実施の形態に係る記憶部11は、複数の劣化状態それぞれにおける燃料電池3の最低電力を示す情報と、複数の燃料電池3それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する。例えば、記憶部11は、複数の起動回数の範囲それぞれと、燃料電池が起動回数の範囲に対応する劣化状態であるときの燃料電池I-V特性を示す特性情報と、第1閾値Vthuと、第2閾値Vthlとを関連付けて記憶させる。複数の起動回数の範囲それぞれに関連付けられる複数の第1閾値Vthuは異なっていてもよい。同様に、複数の起動回数の範囲それぞれに関連付けられる複数の第2閾値Vthlは異なっていてもよい。
【0058】
第3の実施の形態に係る第1特定部122は、複数の燃料電池3それぞれについて、履歴情報に基づいて燃料電池の劣化状態を示す指標値を特定する。例えば、第1特定部122は、複数の燃料電池3それぞれについて、履歴情報に含まれる起動回数を、燃料電池の劣化状態を示す指標値として特定する。そして、第1特定部122は、特定した起動回数が示す劣化状態に対応する最低電力を特定する。例えば、第1特定部122は、特定した起動回数が含まれる起動回数の範囲に関連付けられている、特性情報と、第1閾値Vthuと、第2閾値Vthlとに基づいて、最低電力を特定する。
【0059】
このようにすることで、第3の実施の形態に係る稼働制御装置10は、燃料電池3の劣化状況に応じて、最低電力を精度良く算出することができる。そして、稼働制御装置10は、このようにして算出した最低電力を用いて、稼働させる燃料電池3の台数を特定するので、特定した台数の燃料電池3を実際に稼働した場合において、当該燃料電池3の出力電力が、当該最低電力以下となることを抑制することができる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、上述の実施の形態では、電力供給システムSにおいて燃料電池3が3台設けられる例について説明したが、これに限らない。電力供給システムSにおいて4台以上の蓄電装置が設けられてもよい。
【0061】
また、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0062】
1 水素タンク
2 燃料制御弁
3 燃料電池
4 二次電池
5 インバータ
6 モータ
7 電動補機
10 稼働制御装置
11 記憶部
12 制御部
121 取得部
122 第1特定部
123 第2特定部
124 稼働制御部
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において必要とされる電力である必要電力を示す情報を取得する取得部と、
燃料電池の複数の劣化状態それぞれにおける、当該燃料電池の出力可能な電力の範囲よりも狭く、当該燃料電池が劣化しにくい出力電圧の上限値として設定された第1閾値に対応する当該燃料電池の出力電力の最低電力から、当該燃料電池が劣化しにくい出力電圧の下限値として設定された第2閾値に対応する当該燃料電池の出力電力の最高電力までの電力範囲である所定電力範囲を示す情報を記憶するとともに、前記車両に搭載される複数の前記燃料電池それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部と、
複数の前記燃料電池それぞれについて、前記履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定し、特定した指標値が示す劣化状態に対応する前記所定電力範囲を特定する第1特定部と、
前記燃料電池の前記所定電力範囲と、前記必要電力とに基づいて、複数の前記燃料電池のうち、前記所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に前記必要電力を供給可能となる一以上の燃料電池を特定する第2特定部と、
前記一以上の燃料電池が稼働状態となるように複数の前記燃料電池の稼働を制御する稼働制御部と、
を有する稼働制御装置。
【請求項2】
複数の前記燃料電池それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部を有し、
前記第2特定部は、一以上の燃料電池が稼働状態となるように、停止中の燃料電池の中から稼働させる燃料電池を一以上選択する場合に、停止中の一以上の燃料電池それぞれについて前記履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定し、特定した指標値に基づいて当該一以上の燃料電池の中から相対的に劣化していない燃料電池を稼働させる燃料電池として特定する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項3】
複数の前記燃料電池それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部を有し、
前記第2特定部は、一以上の燃料電池が稼働状態となるように、稼働中の燃料電池の中から停止させる燃料電池を一以上選択する場合に、稼働中の一以上の燃料電池それぞれについて前記履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定し、特定した指標値に基づいて当該一以上の燃料電池の中から相対的に劣化していない燃料電池を停止させる燃料電池として特定する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項4】
前記第2特定部は、前記所定電力範囲の最低電力及び最高電力と、前記必要電力とに基づいて、稼働させる一以上の燃料電池により、前記必要電力を供給可能となり、かつ、稼働させる一以上の燃料電池それぞれが供給する電力が前記最低電力を超えるように、一以上の燃料電池を特定する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項5】
複数の前記燃料電池それぞれが出力可能な電力の範囲は略同一であり、
前記第2特定部は、前記燃料電池の前記所定電力範囲と、前記必要電力とに基づいて、複数の前記燃料電池のうち、前記所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に前記必要電力を供給可能となる燃料電池の台数を特定し、
前記稼働制御部は、特定した台数の燃料電池が稼働状態となるように複数の前記燃料電池の稼働を制御する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項6】
前記稼働制御部は、特定した一以上の燃料電池が稼働状態となるように複数の前記燃料電池それぞれに燃料を供給するための燃料制御弁を制御する、
請求項1に記載の稼働制御装置。
【請求項7】
複数の燃料電池と、
複数の前記燃料電池それぞれに燃料を供給する燃料タンクと、
複数の前記燃料電池それぞれと前記燃料タンクとの間に設けられ、複数の前記燃料電池それぞれに対して前記燃料タンクから燃料を供給するか否かを切り替える複数の燃料制御弁と、
前記複数の燃料制御弁それぞれを制御することにより複数の前記燃料電池それぞれの稼働を制御する稼働制御装置と、
を有し、車両に電力を供給する電力供給システムであって、
前記稼働制御装置は、
前記車両において必要とされる電力である必要電力を示す情報を取得する取得部と、
前記燃料電池の複数の劣化状態それぞれにおける、当該燃料電池の出力可能な電力の範囲よりも狭く、当該燃料電池が劣化しにくい出力電圧の上限値として設定された第1閾値に対応する当該燃料電池の出力電力の最低電力から、当該燃料電池が劣化しにくい出力電圧の下限値として設定された第2閾値に対応する当該燃料電池の出力電力の最高電力までの電力範囲である所定電力範囲を示す情報を記憶するとともに、複数の前記燃料電池それぞれの稼働履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部と、
複数の前記燃料電池それぞれについて、前記履歴情報に基づいて劣化状態を示す指標値を特定し、特定した指標値が示す劣化状態に対応する前記所定電力範囲を特定する第1特定部と、
前記燃料電池の前記所定電力範囲と、前記必要電力とに基づいて、複数の前記燃料電池のうち、前記所定電力範囲に含まれる出力電力で稼働した場合に前記必要電力を供給可能となる一以上の燃料電池を特定する第2特定部と、
前記一以上の燃料電池が稼働状態となるように複数の前記燃料電池それぞれに燃料を供給するための燃料制御弁を制御する稼働制御部と、
を有する、
電力供給システム。