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特開2024-115250ポリアミド系樹脂発泡粒子及びポリアミド系樹脂発泡粒子成形体
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  • 特開-ポリアミド系樹脂発泡粒子及びポリアミド系樹脂発泡粒子成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115250
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ポリアミド系樹脂発泡粒子及びポリアミド系樹脂発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
C08J9/16 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020859
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】末永 勝之
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA71
4F074AB03
4F074AC02
4F074AC33
4F074AD16
4F074AD19
4F074AG03
4F074AG05
4F074AG06
4F074AG10
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA30
4F074CA34
4F074CA39
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA18
4F074DA33
4F074DA57
(57)【要約】
【課題】
良好な型内成形性を示し、優れた難燃性を示す発泡粒子成形体を提供可能なポリアミド系樹脂発泡粒子、及び成形性及び難燃性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子成形体を提供する。
【解決手段】
ポリアミド系樹脂発泡粒子は、ポリアミド系樹脂と、特定の難燃剤aおよび特定の難燃剤bを含み、ポリアミド系樹脂を含む基材樹脂100質量部に対し、難燃剤aの配合量と難燃剤bの配合量との合計が10質量部以上30質量部以下であり、難燃剤aの配合量と難燃剤bの配合量との質量比が90:10~30:70(ただし難燃剤aおよび難燃剤bの合計が100質量%である)のであり、ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径Aが5μm以上100μm以下、かつポリアミド系樹脂発泡粒子が二等分されて形成された切断面において観察される気泡のうち、気泡1つあたりの面積が大きい順に選択された5つの気泡の平均気泡径Bが250μm以下となるよう構成される。またポリアミド系樹脂発泡粒子成形体は、上記ポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形してなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃剤を含む発泡粒子であって、
前記難燃剤が、
ホスフィン酸及び/又はジホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤(難燃剤a)と、
メラミンとポリリン酸との反応生成物、メラミンの縮合物とポリリン酸との反応生成物、及びそれらの混合物からなる群から選択される1以上の窒素/リン系難燃剤(難燃剤b)と、を含み、
前記発泡粒子の基材樹脂がポリアミド系樹脂を含み、
前記基材樹脂100質量部に対し、前記難燃剤aの配合量と前記難燃剤bの配合量との合計が10質量部以上30質量部以下であり、前記難燃剤aの配合量と前記難燃剤bの配合量との質量比が90:10~30:70(ただし前記難燃剤aおよび前記難燃剤bの合計が100質量%である)であり、
前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径Aが5μm以上100μm以下、かつ前記ポリアミド系樹脂発泡粒子が二等分されて形成された切断面において観察される気泡のうち、気泡1つあたりの面積が大きい順に選択された5つの気泡の平均気泡径Bが250μm以下である、ポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
前記平均気泡径Aと前記平均気泡径Bとの差[B-A]が60μm以上200μm以下である、請求項1に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記平均気泡径Bが160μm以下である、請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記難燃剤aがホスフィン酸のアルミニウム塩であり、
前記難燃剤bがポリリン酸メラミンである、
請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
前記基材樹脂100質量部に対し、前記難燃剤bの配合量が2質量部以上10質量部以下である、請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
前記ポリアミド系樹脂発泡粒子が炭素系着色剤を含み、前記炭素系着色剤の配合量が前記ポリアミド系樹脂発泡粒子100質量%中において0.5質量%以上5質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
以下の式(IV)で示される部分構造を有するNOR型ヒンダードアミンをさらに含み、該NOR型ヒンダードアミンの配合量が前記難燃剤aと前記難燃剤bとの合計100質量部に対して0.5質量部以上8質量部以下である、請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子(式(IV)において、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、及びアリール基のいずれかであり、*は任意の構造が結合する)。
【化1】
【請求項8】
前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10kg/m以上80kg/m以下である、請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリアミド系樹脂発泡粒子成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤を含有するポリアミド系樹脂発泡粒子及び上記ポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形してなる難燃性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系樹脂は、一般的な樹脂材料の中では耐熱性が高く、また耐摩耗性、耐薬品性等にも優れた樹脂として知られている。このポリアミド系樹脂を発泡させた発泡成形体は、それらの優れた特性を保ちつつ、より軽量化を図ることが可能である。そのため、ポリアミド系樹脂発泡成形体は、自動車部品その他の用途への展開が期待される。特に、ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体は、断熱材及び遮音性に優れる部材として、車両におけるエンジンフードやエンジンカバーへの使用が期待されている。
【0003】
上述する自動車部品をはじめとする種々の用途において、ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体は、優れた難燃性が求められることがある。
【0004】
例えば特許文献1には、ポリアミド系樹脂発泡粒子に、種々の難燃剤を含有させることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016/001109
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1には、難燃剤の使用に関する具体的な検討は行われておらず、難燃剤を含有するポリアミド系樹脂発泡粒子又は難燃性の改善されたポリアミド系樹脂発泡粒子成形体について何ら具体的に開示されていない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、良好な型内成形性を示し、優れた難燃性を示す発泡粒子成形体を提供可能なポリアミド系樹脂発泡粒子、及び難燃性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、難燃剤及びポリアミド系樹脂を含むポリアミド系樹脂発泡粒子であって、上記難燃剤が、ホスフィン酸及び/又はジホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤(難燃剤a)と、メラミンとポリリン酸との反応生成物、メラミンの縮合物とポリリン酸との反応生成物、及びそれらの混合物からなる群から選択される1以上の窒素/リン系難燃剤(難燃剤b)と、を含み、上記ポリアミド系樹脂を含む基材樹脂100質量部に対し、上記難燃剤aの配合量と上記難燃剤bの配合量との合計が10質量部以上30質量部以下であり、難燃剤aの配合量と難燃剤bの配合量との質量比が90:10~30:70(ただし難燃剤aおよび難燃剤bの合計が100質量%である)のであり、上記ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径Aが5μm以上100μm以下、かつ上記ポリアミド系樹脂発泡粒子が二等分されて形成された切断面において観察される気泡のうち、気泡1つあたりの面積が大きい順に選択された5つの気泡の平均気泡径Bが250μm以下であることを特徴とする。
【0009】
また本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子成形体は、本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、良好な型内成形性を示し、優れた難燃性を示す発泡粒子成形体を提供可能なポリアミド系樹脂発泡粒子、及び難燃性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子成形体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態であるポリオレフィン系樹脂発泡粒子の全融解熱量及び高温ピークの融解熱量を得るための、JIS K7122:1987年に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に従って得たDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子(以下、単に本発明の発泡粒子という場合がある。)及び本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に本発明の発泡粒子成形体という場合がある。)について説明する。
【0013】
本発明の発泡粒子は、難燃剤及びポリアミド系樹脂を含むポリアミド系樹脂発泡粒子である。上記難燃剤は、難燃剤aと難燃剤bとを含む。
難燃剤aは、ホスフィン酸及び/又はジホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤である。難燃剤bは、メラミンとポリリン酸との反応生成物、メラミンの縮合物とポリリン酸との反応生成物、及びそれらの混合物からなる群から選択される1以上の窒素/リン系難燃剤である。本発明の発泡粒子は、難燃剤a及び難燃剤bが所定の範囲で配合されている。かかる所定の範囲についての詳細は後述する。
難燃剤aおよび難燃剤bを含む本発明の発泡粒子は、発泡粒子が二等分されて形成された切断面において観察される気泡に関し、発泡粒子全体の気泡の平均気泡径を反映する平均気泡径Aと、気泡1つあたりの面積が大きい順に選択された5つの気泡の平均値である平均気泡径Bとが、それぞれ所定範囲の値を示す。平均気泡径A及び平均気泡径Bの詳細は後述する。
【0014】
本発明の発泡粒子は、難燃剤として、上記所定の難燃剤aと難燃剤bとを含む。発明者の検討によれば、ポリアミド系樹脂発泡粒子においては、ハロゲン系難燃剤等の樹脂の難燃剤として従来汎用されている種々の難燃剤を適当量配合しても充分な難燃性が得られ難いことがわかった。そして更なる検討により、所定量の難燃剤aと難燃剤bとを併用することによって初めて所望の難燃性を発現可能であることがわかった。しかし、難燃剤a及び難燃剤bが所望の難燃性を発現させるために必要な程度に配合されたポリアミド系樹脂発泡粒子は、型内成形性が著しく悪化するという新たな問題が生じた。
そこで、ポリアミド系樹脂発泡粒子の気泡径に着眼し、平均気泡径A及び平均気泡径Bという2種類の平均気泡径を所定範囲に調整することによって、良好な成形性を維持することが可能となり、優れた難燃性を示すポリアミド系樹脂発泡粒子成形体を型内成形可能な、発泡粒子の提供に至った。
【0015】
以下に本発明の発泡粒子についてさらに詳細に説明する。尚、以下の説明において、適宜、本発明の好ましい数値範囲を示す場合がある。この場合に、数値範囲の上限及び下限に関する好ましい範囲、より好ましい範囲、特に好ましい範囲は、上限及び下限の全ての組み合わせから決定することができる。
また以下の説明において、基材とは、基材樹脂、難燃剤、及びその他の任意の添加剤を含み、ポリアミド系樹脂発泡粒子を構成する部材を指す。また上記基材樹脂は、ポリアミド系樹脂発泡粒子に含まれる重合体であり、具体的にはポリアミド系樹脂及び任意で配合されるその他の重合体を含む。
また以下の説明において、発泡粒子に関し型内成形性または成形性が良好であるとは、後述する融着性、表面性、及び回復性の3つの指標がいずれも所定評価以上である発泡粒子成形体を型内成形可能なことを意味する。
【0016】
[難燃剤]
本発明の発泡粒子は、基材樹脂100質量部に対し、難燃剤aの配合量と難燃剤bの配合量との合計が10質量部以上30質量部以下となるよう調整される。良好な成形性を維持しつつ、より優れた難燃性を発揮させる観点から上記合計は、12質量部以上28質量部以下であることが好ましく、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
また、本発明の発泡粒子において、難燃剤aの配合量と難燃剤bの配合量との質量比は90:10~30:70の範囲となるよう調整される。上記質量比は、難燃剤a及び難燃剤bの合計が100質量%である場合における両者の配合比率である。
当該合計100質量%中において、難燃剤aの配合量が90質量%を超えた場合、充分な難燃性が示されないおそれがある。より良好な難燃性を発揮される観点から当該合計100質量%中において、難燃剤aの配合量は85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
一方、当該合計100質量%中において、難燃剤bの配合量が70質量%を超えた場合、発泡粒子の成形性が損なわれるおそれがある。より良好な成形性を示す観点から当該合計100質量%中において、難燃剤bの配合量は60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。上記観点から、難燃剤aの配合量と難燃剤bの配合量との質量比は80:20~40:60の範囲内であることが好ましく、75:25~50:50の範囲内であることがより好ましく、70:30~55:45の範囲内であることがさらに好ましい。
【0017】
上述するとおり難燃剤として難燃剤aのみを配合した場合には良好な難燃性を発現することが難しく、所定の割合で難燃剤bを併用することが肝要である。一方、上述するとおり難燃剤bはポリアミド系樹脂発泡粒子の成形性の低下を招きやすい。そのため、基材樹脂100質量部に対し、難燃剤bの配合量は、2質量部以上10質量部以下に調整されることが好ましく、3質量部以上9質量部以下に調整されることがより好ましく、4質量部以上8質量部以下に調整されることがさらに好ましい。
【0018】
(難燃剤a)
本発明における難燃剤aは、ホスフィン酸及び/又はジホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤である。換言すれば、難燃剤aは、ホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤、ジホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤、ホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤とジホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤との混合物からなる群から選択される1以上のリン系難燃剤である。
上記ホスフィン酸金属塩は、下記式(I)で表される。また上記ジホスフィン酸金属塩は、下記式(II)で表される。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
上記式(I)及び式(II)において、R1及びR2は、同一であってもよく、また異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ線状もしくは分枝状であって炭素数1~6のアルキル及び/又はアリールである。式(II)において、R3は、線状もしくは分枝状であって炭素数1~10のアルキレン、炭素数6~10のアリーレン、炭素数6~10のアルキルアリーレン又は炭素数6~10のアリールアルキレンである。式(I)及び式(II)において、Mは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び/又は亜鉛イオンである。mは2又は3であり、nは1又は3であり、xは1又は2である。
【0022】
難燃剤aは、式(I)又は式(II)で表される1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物を含んでもよく、難燃剤aとして、式(I)で表されるホスフィン酸金属塩が含まれることが好ましい。ホスフィン酸の金属塩としては、具体的には、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛等が例示される。これらの中でも、難燃剤aとしてホスフィン酸のアルミニウム塩が含まれることがより好ましく、ジエチルホスフィン酸アルミニウムが含まれることが特に好ましい。
【0023】
(難燃剤b)
本発明における難燃剤bは、メラミンとポリリン酸との反応生成物、メラミンの縮合物とポリリン酸との反応生成物、及びそれらの混合物からなる群から選択される1以上の窒素/リン系難燃剤である。ここでメラミンの縮合物とは、メラム、メレム、メロン等が挙げられる。
たとえばメラミンとポリリン酸との反応生成物であるポリリン酸メラミンは、下記式(III)で表される。メラミンの縮合物とポリリン酸との反応生成物は、下記式(III)におけるメラミンの替りに、メラム、メレム、メロン等が付加される。
【0024】
【化3】
【0025】
難燃剤bは、式(III)で表される1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物でもよいが、難燃剤bとして、式(III)で表されるポリリン酸メラミンが含まれることが好ましい。式(III)中、nは縮合度であり、概ね2~500であり、好ましくは3~50である。
【0026】
本発明の所期の課題を良好に解決する観点から、本発明の発泡粒子は、難燃剤aとしてホスフィン酸のアルミニウム塩を主成分として含み、かつ難燃剤bとしてポリリン酸メラミンを主成分として含むことが好ましく、難燃剤aとしてホスフィン酸のアルミニウム塩のみを含み、かつ難燃剤bとしてポリリン酸メラミンのみを含むことがより好ましい。なお、難燃剤xとしてyを主成分として含むとは、難燃剤x100質量%中においてyが60質量%以上であることを意味する。上述する組合せにおけるポリリン酸メラミン100質量%中において、リンの含有量が15質量%以上30質量%以下であり、かつ窒素の含有量が10質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。上記のような難燃剤aと難燃剤bとを含む難燃剤として、たとえばクラリアント社製「Exolit OP1312」として市販されているものが例示される。
【0027】
その他の難燃剤:
本発明の発泡粒子は上述する難燃剤a及び難燃剤bに加え、難燃剤a及び難燃剤bのいずれにも該当しないその他の難燃剤をさらに含有してもよい。その他の難燃剤としては、たとえば、ホウ酸亜鉛が例示される。難燃剤a及び難燃剤bとともにホウ酸亜鉛が配合されることで、より良好な難燃性が示され易い上、平均気泡径A及び平均気泡径Bを所定の範囲に調整し易い。これは難燃剤a及び難燃剤bとホウ酸亜鉛との相乗効果により難燃性がより向上するとともに、ホウ酸亜鉛が樹脂粒子の発泡時に気泡核として良好に作用することによって望ましい気泡径の発泡粒子を製造しやすいためと推察される。難燃剤a及び難燃剤bに加え、その他の難燃剤をさらに配合する場合には、難燃剤a及び難燃剤bの配合量の合計100質量部に対し、その他の難燃剤の配合量が1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上8質量部以下であることが好ましい。
【0028】
[ポリアミド系樹脂]
本発明におけるポリアミド系樹脂としては、ポリアミド、又はポリアミド共重合体が挙げられ、ポリアミド共重合体が好ましい。
上記ポリアミドとしては、例えば、ポリ(カプロラクタム)としても知られるポリ(6-アミノヘキサン酸)(ポリカプロアミド、ナイロン6)、ポリ(ラウロラクタム)(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリ(7-アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8-アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9-アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10-アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11-アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン610)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン1010)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン69)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ナイロン46)、ポリ(テトラメチレンセバカミド)(ナイロン410)、ポリ(ペンタメチレンアジパミド)(ナイロン56)、及びポリ(ペンタメチレンセバカミド)(ナイロン510)等のホモポリマーが挙げられる。
ポリアミド共重合体とは、2種以上の繰り返し単位を有し、それぞれの繰り返し単位の少なくとも一部にアミド結合を有するものを意味する。
上記ポリアミド共重合体としては、例えば、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン6/66/12)、及びカプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂は、これらのポリアミド及びポリアミド共重合体を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以上のポリアミド系樹脂の中でも、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、及びナイロン6/66から選択される1種又は2種以上を組み合わせたポリアミド系樹脂であることが好ましく、ナイロン6/66/12及びナイロン6/66から選択される1種以上であることがより好ましい。
【0029】
本発明で用いられるポリアミド系樹脂は、曲げ弾性率が1000MPa以上であることが好ましく、1200MPa以上であることがより好ましく、1500MPa以上であることがさらに好ましい。ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率が上記範囲であれば、概ね曲げ弾性率が600MPa以下であるアミド系エラストマーとは異なり、発泡後に常温に晒されても収縮しにくく、高倍率の発泡粒子が得られ易くなるため好ましい。なお、ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率の上限は概ね3000MPa程度である。
【0030】
ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率は、試験片を温度23℃、湿度50%の状態で24時間静置した後、JIS K7171:2016に準拠して測定することにより求めることができる。
【0031】
(ポリアミド系樹脂の融点)
上記ポリアミド系樹脂の融点は、本発明の発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体の耐熱性を高める観点からは、180℃以上であることが好ましく、185℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることがさらに好ましい。一方、型内成形時において加熱媒体による装置への負荷を低減する観点からは、上記融点は、280℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましく、240℃以下であることがさらに好ましい。
尚、上述するポリアミド系樹脂の融点とは、発泡粒子を構成する樹脂がポリアミド系樹脂1種単独である場合、そのポリアミド系樹脂の融点を指す。発泡粒子が、2種以上のポリアミド系樹脂の混合物から構成されている場合、上述するポリアミド系樹脂の融点とは、所定の組成比で混合される各ポリアミド系樹脂を予め押出機等で混練してなる混合物の融点を指す。
【0032】
ポリアミド系樹脂の融点は、JIS K7121-1987に基づき、試料を熱流束示差走査熱量測定法により、10℃/分の加熱速度で23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱(1回目の加熱)させ、次いでその温度にて10分間保った後、10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却させ、再度、加熱速度10℃/分で融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱(2回目の加熱)させて得られるDSC曲線の融解ピークの頂点の温度(融解ピーク温度)として求めることができる。DSC曲線が複数の融解ピークを有する場合、最も大きな面積を有する融解ピークの融解ピーク温度をポリアミド系樹脂の融点として採用する。上記測定には、ポリアミド系樹脂を気温23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上静置して状態調節した試料が用いられる。尚、測定装置として、たとえば高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用することができる。
【0033】
(基材樹脂)
本発明の発泡粒子を製造するために用いられる基材樹脂は、上述するポリアミド系樹脂のみから構成されてもよいし、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、ポリアミド系樹脂以外の他の重合体を含んでもよい。
【0034】
上記他の重合体としては、ポリアミド系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等の重合体が挙げられる。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ポリアリーレンスルフィド系樹脂等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
上記他の重合体の含有量は、ポリアミド系樹脂100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましく、0、すなわち基材樹脂が重合体としてポリアミド系樹脂のみを含むことが特に好ましい。
【0035】
(基材)
本発明の発泡粒子を構成する基材は、基材樹脂及び難燃剤a及び難燃剤bを含み、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、その他の難燃剤や任意の添加剤を含んでもよい。基材を溶融混練して押出装置から押し出して粒状化され形成された樹脂粒子は、本発明の発泡粒子の製造に用いられる。
【0036】
上記任意の添加剤として、例えば、炭素系着色剤等の着色剤、難燃助剤、末端封鎖剤、帯電防止剤、導電性付与剤、耐候剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、及び結晶核剤等の各種の添加剤を、必要に応じて適宜配合することができる。これら任意の添加剤の添加量の合計は、成形体の使用目的により異なるが、基材樹脂100質量部に対して25質量部以下であることが好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、よりさらに好ましくは5質量部以下である。
【0037】
炭素系着色剤:
たとえば、自動車部品用等に提供される発泡粒子成形体は、炭素系着色剤を含有する発泡粒子を用いて製造される場合がある。しかしながら炭素系着色剤を含むポリアミド系樹脂発泡粒子は、炭素系着色剤を含まないポリアミド系樹脂発泡粒子に比べて成形性が低下しやすいとともに、得られる成形体の難燃性が低下する傾向にある。これに対し本発明の発泡粒子は、上述する難燃剤a及び難燃剤bが所定範囲で含まれているとともに、平均気泡径A及び平均気泡径Bが所定範囲に調整されているため、成形性が確保され、かつ充分に難燃性が改善されるため、炭素系着色剤を含む場合であっても、良好な難燃性を示すポリアミド系樹脂発泡粒子成形体を型内成形可能である。
【0038】
ポリアミド系樹脂発泡粒子が炭素系着色剤を含み、黒色などの所望の色味を呈しかつ良好な難燃性を示す発泡粒子成形体を提供するという観点から、発泡粒子100質量%中において炭素系着色剤の配合量が0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上4質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
本発明において、炭素系着色剤とは、炭素を含む着色剤である。炭素系着色剤は通常黒色であり発泡粒子に含まれることで黒色を呈することが可能な部材であれる。たとえば代表的な例としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。カーボンブラックには、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ローラーブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等が含まれる。
【0040】
難燃助剤:
基材に任意で添加されうる添加剤としては、たとえば、以下の式(IV)で示される部分構造を有するNOR型ヒンダードアミンが挙げられる。なお、下記式(IV)におけるRとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基等が例示される。また、下記式(IV)における*には任意の構造が結合する。本発明においてNOR型ヒンダードアミンは、主に難燃助剤として作用し、難燃剤a及び難燃剤bと併用することによって難燃剤a及び難燃剤bの配合量を減量しても良好な難燃性が示され得る。また、下式(IV)で示される部分構造を有するNOR型ヒンダードアミンが併用されることで、発泡粒子の製造時におけるブロッキングが抑制されやすくなる。なお、ブロッキングとは、後述する一段発泡工程において、密閉容器内から放出された直後の発泡粒子同士が接着してしまう現象をいう。式(IV)で示される部分構造を有する化合物の市販品としては、BASFジャパン株式会社製の難燃助剤NOR116やTinuvin123、株式会社ADEKA製のFP-T80等が例示される。ポリアミド系樹脂発泡粒子にNOR型ヒンダードアミンを配合する場合、その配合量は難燃剤aと難燃剤bとの合計100質量部に対して0.5質量部以上8質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0041】
【化4】
【0042】
[平均気泡径A及び平均気泡径B]
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径Aは5μm以上100μm以下である。平均気泡径Aが上記範囲内であることは、発泡粒子に形成されている気泡が比較的小さいことを意味している。ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径Aが小さすぎる場合には、発泡粒子の型内成形性が著しく悪化して発泡粒子成形体を得ることができないおそれがある。かかる観点から、平均気泡径Aは10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径Aの上限は、80μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0043】
(平均気泡径Aの測定方法)
本発明に関し平均気泡径Aは以下のとおり測定される。
まず、発泡粒子を略二等分して切断面を露出させる。そして、切断面が全て収まるよう写真を撮影する。撮影された写真上で発泡粒子の周縁から発泡粒子の中心部を通って対向する周縁まで、等角度(すなわち、45°)で4本の線分を引く。次に、4本の線分の長さの合計Lを各線分に接する気泡の合計数Nで除した値(L/N)を1つの発泡粒子の平均気泡径aとする。この操作を20個以上の発泡粒子について行い、その算術平均値を発泡粒子の平均気泡径Aとする。
【0044】
また、本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、後述する方法により測定される平均気泡径Bが250μm以下である。平均気泡径Bが大きすぎる場合には、発泡粒子の型内成形性が著しく悪化して発泡粒子成形体を得ることができないおそれがある。十分な難燃性を示しつつ、より優れた成形性を示す発泡粒子を提供する観点から、平均気泡径Bは、180μm以下であることが好ましく、170μm以下であることがより好ましく、160μm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
(平均気泡径のBの測定方法)
本発明に関し平均気泡径Bは以下のとおり測定される。
まず、発泡粒子を略二等分して切断面を露出させる。そして、切断面が全て収まるよう写真を撮影する。切断面において観察される全ての気泡を画像解析することにより各気泡の面積を測定する。そして上記切断面において、気泡1つあたりの面積が大きい順に5つの気泡を選択する。選択された5つの気泡それぞれの面積と同じ面積を有する仮想真円を想定し、当該仮想真円の直径を算出する。このように求められた直径を算術平均することによって得られた値を1つの発泡粒子の平均気泡径bとする。この操作を20個以上の発泡粒子について行い、その算術平均値を発泡粒子の平均気泡径Bとする。
【0046】
上記したように、難燃剤a及び難燃剤bを含む発泡粒子は、平均気泡径Aが小さくなりやすく、このような発泡粒子においては、上記平均気泡径Bが過度に大きい場合には著しく成形性が悪化するおそれがある。これは、難燃剤a及び難燃剤bを含む発泡粒子は気泡膜の強度が弱くなりやすく、さらに過度に大きな気泡が形成されている場合には成形時に気泡が破泡しやすいためであると考えられる。一方、本発明の発泡粒子は上記平均気泡径Bが所定以下に調整されているため、難燃剤a及び難燃剤bを含み、かつ上記平均気泡径Aが小さい発泡粒子であっても成形性を維持することが可能となる。
【0047】
平均気泡径Bの下限値は特に限定されないが、平均気泡径Aより大きく、平均気泡径Aの1.3倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。換言すると、平均気泡径Aに対する平均気泡径Bの比[B/A]は、1を超え、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。平均気泡径Aに対する平均気泡径Bの比が上記範囲であることは、発泡粒子の平均気泡径Aに対して相対的に大きな気泡が当該発泡粒子中に形成されていることを意味している。ポリアミド系樹脂発泡粒子中に難燃剤a及び難燃性bが併用されて含まれていることにより、発泡粒子内に形成される気泡が全体的に小さくなるとともに、相対的に大きな気泡が形成されやすくなる。発泡粒子の成形性をより確実に維持する観点から、平均気泡径Aに対する平均気泡径Bの比(平均気泡径B/平均気泡径A)は、10以下であることが好ましい。
【0048】
本発明の発泡粒子は、平均気泡径Aと平均気泡径Bとの差[B-A]が200μm以下であることが好ましく、180μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。
上述するとおり、本発明は、難燃性改善の観点から難燃剤a及び難燃剤bを所定範囲で併用しているため、相対的に大きな径の気泡が発泡粒子内に生じやすい。このように大小の気泡が混在する発泡粒子において、平均気泡径Aに対し平均気泡径Bの値が大きくなり過ぎて成形性が損なわれることをより確実に抑制する観点から、差[B-A]の上限は上記範囲内であることが好ましい。差[B-A]の下限は限定されないが、60μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましい。
【0049】
より良好な成形性を維持しつつ、優れた難燃性を発揮するという観点からは、特に、平均気泡径Bは、180μm以下であり、かつ平均気泡径Aと平均気泡径Bとの差[B-A]が60μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0050】
(平均気泡径の調整方法)
本発明の発泡粒子において、平均気泡径A及び平均気泡径Bが上述する範囲となるよう調整する調整方法は特に限定されないが、たとえば後述するポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法において示される構成1~構成6等の手段が挙げられる。
【0051】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子]
次に本発明の発泡粒子の物性について説明する。尚、本発明の発泡粒子に関し、適宜、一段発泡粒子、二段発泡粒子について説明する。一段発泡粒子とは、最初の発泡工程により得られた発泡粒子を指す。かかる最初の発泡工程を一段発泡又は一段発泡工程と呼ぶ場合がある。また二段発泡粒子とは、上記一段発泡粒子を用いて行う2回目の発泡工程により得られた発泡粒子を指す。かかる2回目の発泡工程を二段発泡又は二段発泡工程と呼ぶ場合がある。本発明の発泡粒子の製造において、一段発泡工程のみを行う場合には、一段発泡粒子が最終的に提供される本発明の発泡粒子となり、二段発泡工程を行う場合には、二段発泡粒子が最終的に提供される本発明の発泡粒子となる。本発明の発泡粒子は、二段発泡粒子を用いて行う三段発泡以上の多段発泡により製造された多段発泡粒子を包含する。本明細書において、型内成形に供される発泡粒子を、最終的に提供される発泡粒子又は最終の発泡粒子と呼ぶことがある。
【0052】
(発泡粒子の見掛け密度)
本発明の発泡粒子の見掛け密度は、提供される発泡粒子成形体の軽量性及び難燃性の観点から、150kg/m以下であることが好ましく、100kg/m以下であることがより好ましく、80kg/m以下であることがさらに好ましい。また提供される発泡粒子成形体の剛性等の観点から、上記見掛け密度は、10kg/m以上であることが好ましく、30kg/m以上であることがより好ましく、50kg/m以上であることがさらに好ましい。
本発明の発泡粒子の見掛け密度の好ましい範囲は、たとえば10kg/m以上80kg/mである。かかる範囲の見掛け密度に調整するための手段は特に限定されないが、たとえば後述する二段発泡工程を実施することが好ましい。
【0053】
発泡粒子の見掛け密度は、以下の方法により測定される。まず、測定に供する発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置する。このようにして得られた質量w(g)の発泡粒子群を23℃のアルコール(例えばエタノール)を入れたメスシリンダー内に、金網などを使用して沈め、水位の上昇分から発泡粒子群の体積v(cm)を求め、発泡粒子群の質量wを発泡粒子群の体積vで除す(w/v)。これにより求められる値をkg/mに単位換算することにより、発泡粒子の見掛け密度(kg/m)を得ることができる。
【0054】
発泡粒子の嵩密度は、以下の方法により測定される。まず、測定に供する発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置する。このようにして得られた質量W(g)の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させる。メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群の嵩体積V(L)を読み取り、発泡粒子群の質量Wを発泡粒子群の嵩体積Vで除す(W/V)。これにより求められる値をkg/mに単位換算することにより、発泡粒子の嵩密度(kg/m)を得ることができる。
【0055】
(発泡粒子の嵩倍率)
本発明において型内成形に供される発泡粒子の嵩倍率Mは、軽量性に優れる成形体を得る観点からは、15倍以上であることが好ましく、20倍以上であることが好ましく、25倍以上であることがさらに好ましい。
上述する嵩倍率Mの大きい発泡粒子を得るためには、たとえば後述する二段発泡などの多段発泡を実施することが好ましい。二段発泡を実施する際には、最初の発泡工程により得られた発泡粒子(一段発泡粒子)の嵩倍率M1に対する、二段発泡により得られた発泡粒子(二段発泡粒子)の嵩倍率M2の比率(M2/M1)が、1.2以上3.0以下となるよう調整されることが好ましい。比率(M2/M1)が、1.2以上であることで所望の嵩倍率M2が得られやすく、比率(M2/M1)が、3.0以下であることで平均気泡径Bの値が大きくなり過ぎることが抑制され、成形性の良好な発泡粒子を提供しやすい。かかる観点から、上記比率(M2/M1)は1.2以上2.0以下であることがより好ましい。
【0056】
一段発泡工程により得られた一段発泡粒子の嵩倍率M1は、一段発泡粒子を構成する基材樹脂の密度(単位:kg/m)を一段発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m)で除すことで求められる。一段発泡粒子の嵩倍率M1は、例えば、一段発泡工程における発泡剤の添加量や発泡時の温度、密閉容器内の圧力と密閉容器から内容物を放出する環境の圧力との圧力差等によって調節することができる。尚、一段発泡粒子の嵩密度は、一段発泡粒子を用い、上述する発泡粒子の嵩密度の測定方法を実施することで得られる。
【0057】
また、一段発泡粒子を用いて二段発泡を行うことで得られた二段発泡粒子の嵩倍率M2は、二段発泡粒子を構成する基材樹脂の密度(単位:kg/m)を二段発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m)で除すことで求められる。二段発泡粒子の嵩倍率M2は、例えば、内圧が付与された一段発泡粒子における気泡内の圧力と加熱を行う環境の圧力との圧力差や加熱温度、加熱時間等によって調節することができる。尚、二段発泡粒子の嵩密度は、二段発泡粒子を用い、上述する発泡粒子の嵩密度の測定方法を実施することで得られる。
尚、一段発泡粒子を構成する基材樹脂の密度および二段発泡粒子を構成する基材樹脂の密度は、これらを作製するために用いられた樹脂粒子を構成する基材樹脂の密度と同じ値である。
【0058】
(発泡粒子の独立気泡率)
本発明の発泡粒子の独立気泡率は、良好な成形性を維持しつつ優れた難燃性を示す発泡粒子を提供する観点から、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。発泡粒子の独立気泡率の上限は特に制限されないが、概ね99%である。
【0059】
発泡粒子の独立気泡率は、以下のように測定される。まず、嵩体積約20cmの発泡粒子群を水に浸漬することにより、発泡粒子群の見掛けの体積Vaを測定する。次に見掛けの体積Vaが測定された発泡粒子群を十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子群の体積(発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値(真の体積Vx)を測定する。この真の体積Vxの測定には、空気比較式比重計が用いられる。上記空気比較式比重計としては、たとえば東京サイエンス(株)製の空気比較式比重計「Beckman Model1000 Air Comparison Pycnometer」が挙げられる。次いで、下記の式(1)により独立気泡率を算出する。異なる測定用サンプルを用い、上述と同様の手順で5回の独立気泡率の測定を行い、各測定で得られた値の算術平均値を求め、これを発泡粒子の独立気泡率とする。
[数1]
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
Vx:上記方法で測定される発泡粒子群の真の体積(cm
Va:発泡粒子群をメスシリンダー中の水に沈めた際の水位上昇分から測定される発泡粒子群の見掛けの体積(cm
W:発泡粒子群の質量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
【0060】
(高温ピーク)
本発明の発泡粒子において、以下に説明する高温ピークを示す結晶構造が形成されていることが好ましい。高温ピークを示すポリアミド系樹脂発泡粒子は、一段発泡工程において製造された発泡粒子同士が接着するブロッキングが好適に防止される。したがって、一段発泡工程により得られた一段発泡粒子を、二段発泡粒子に供与し易く、良好に二段発泡工程を実施することができる。また、発泡粒子の耐熱性、成形性がより確実に確保される。
【0061】
ここで高温ピークとは、JIS K7122-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定によって、1~3mgのポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片として、加熱速度10℃/分にて、23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱させる際に測定される1回目のDSC曲線(図1参照)において、ポリアミド系樹脂に固有の融解ピーク(固有ピークa)よりも高温側に頂点温度が現れる融解ピーク(高温ピークb)のことを指す。図1は、ポリアミド系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定法に基づき測定されたDSC曲線の一例である。図1では1つの高温ピークbが示されているが、高温ピークbは2以上であってもよい。
【0062】
固有ピークaは、発泡粒子を構成する基材樹脂の固有の結晶の融解により生じるピークであり、発泡粒子を構成する基材樹脂が通常有する結晶の融解によって現れるピークであると考えられる。一方、固有ピークaの高温側に頂点温度を有する高温ピークbは、発泡粒子を構成する基材樹脂中に通常有する結晶とは異なる二次結晶が存在する場合に現れるものと推定される。
【0063】
固有ピークaの頂点温度は、後述する2回目のDSC曲線に現れる融解ピークの頂点温度と概ね一致する。一方、高温ピークbは、2回目のDSC曲線には現れない。したがって、第1回目、第2回目のDSC曲線の形状と、ピーク位置を比較することで固有ピークaと高温ピークbとを見分けることができる。
ここで2回目のDSC曲線とは、1回目のDSC曲線の測定終了後のポリアミド系樹脂発泡粒子を、1回目のDSC曲線の測定後における融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて、10分間保った後、冷却速度10℃/minにて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱させる際に測定されるDSC曲線を指す。
【0064】
緩衝性と剛性のバランスに優れる発泡粒子成形体を得る観点から、固有ピークaの頂点温度より高温側に頂点温度が現れる高温ピークbの融解熱量の合計は、3J/g以上であることが好ましく、5J/g以上であることがより好ましく、7J/g以上であることがさらに好ましい。また、発泡粒子の型内成形時における成形可能なスチームの圧力範囲が広くなるという観点から、上記融解熱量の合計は、30J/g以下であることが好ましく、20J/g以下であることがより好ましく、15J/g以下であることがさらに好ましい。尚、上記高温ピークbが2つ以上現れる場合には、高温ピークbの融解熱量は、全ての高温ピークbの合計熱量を意味する。
【0065】
高温ピークbの融解熱量は以下のとおり求められる。即ち、図1に示すDSC曲線において、DSC曲線上における80℃に相当する点Iと、発泡粒子の融解終了温度に相当する点IIとを結ぶ直線を引く。尚、融解終了温度は、高温ピークbにおける高温側の端点であり、DSC曲線における、高温ピークbと、高温ピークbよりも高温側のベースラインとの交点である。
次いで、図1に示すとおり、固有ピークaと高温ピークbとの間に存在する極大点IIIを通りグラフの縦軸に平行な直線と、点Iと点IIとを結んだ直線との交点をIVとする。
そして、点Iと点IVを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点Iと点IIIとを結ぶDSC曲線で囲まれる面積を固有ピークaの面積とする。また点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点IIIと点IIとを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分(斜線部分)の面積を高温ピークbの面積とする。上述のとおり求めた固有ピークaの面積と高温ピークbの面積との合計から発泡粒子の全融解熱量の値を算出し、高温ピークbの面積から高温ピークbの融解熱量の値を算出する。
尚、高温ピークbを得るための手段は、後述する発泡粒子の製造方法において説明する。
【0066】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法]
次に本発明の発泡粒子を製造する方法(以下、単に本製造方法ともいう)の好ましい一態様について説明する。
本製造方法は、樹脂粒子作製工程及び発泡工程を有し、製造される発泡粒子の平均気泡径A及び平均気泡径Bが所定の範囲となるよう調整する。本製造方法によれば、良好な成形性を示し、優れた難燃性を示す発泡粒子成形体を提供可能な発泡粒子を製造することができる。
【0067】
(樹脂粒子作製工程)
樹脂粒子作製工程は、難燃剤とポリアミド系樹脂とを含む基材を溶融混練して溶融混練物を調製し、上記溶融混練物を押出機から押し出してポリアミド系樹脂粒子を作製する工程である。一般的には、押出機から押し出された溶融混練物は、所望の質量及び形状に切断される。たとえば、溶融混練物を断面円形状のストランドとして押出し、水冷した後、ペレタイザーで切断することにより、円柱状の樹脂粒子を得ることができる。
ここで用いられる難燃剤は、ホスフィン酸及び/又はジホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤(難燃剤a)と、メラミンとポリリン酸との反応生成物、メラミンの縮合物とポリリン酸との反応生成物、及びそれらの混合物からなる群から選択される1以上の窒素/リン系難燃剤(難燃剤b)と、を含む。
難燃剤a及び難燃剤bの配合の際には、ポリアミド系樹脂を含む基材樹脂100質量部に対し、難燃剤aの配合量と難燃剤bの配合量との合計が10質量部以上30質量部以下であり、難燃剤aの配合量と難燃剤bの配合量との質量比が90:10~30:70(ただし難燃剤a及び難燃剤bの合計が100質量%である)となるよう調整する。
【0068】
(発泡工程)
発泡工程は、樹脂粒子作製工程において得られたポリアミド系樹脂粒子を発泡させてポリアミド系樹脂発泡粒子を製造する工程である。
本製造方法は、発泡工程として一段発泡工程のみを実施して発泡粒子を製造してもよいし、一段発泡工程の後、二段発泡工程を実施して発泡粒子を製造してもよい。また二段発泡工程後にさらに三段発泡工程以上の発泡工程を実施してもよい。本実施形態では、主として二段発泡工程を実施して発泡粒子を製造する方法を例に説明する。
【0069】
一段発泡工程:
樹脂粒子作製工程により形成された樹脂粒子を用いて一段発泡工程を実施する。一段発泡工程は、上記樹脂粒子、並びに水等の水性媒体、無機分散剤、及び界面活性剤等を圧力容器に供給し、分散工程、発泡剤含浸工程、放出工程を含む発泡粒子の製造工程を実施し、発泡粒子を製造することができる。
上記分散工程は、圧力容器内の無機分散剤を含む水性媒体中に樹脂粒子を分散させる工程である。上記無機分散剤としては、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、タルク、スメクタイト等の無機物質等を挙げることができる。また分散剤とともに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤等の分散助剤を添加してもよい。特に、難燃剤aと難燃剤bとともに上記式(IV)で示される部分構造を有する化合物(難燃助剤)を併用する場合には、分散工程において、上述する無機分散剤や分散助剤を併用することが好ましい。これによって、放出工程時における発泡粒子同士の接着(ブロッキング)を良好に防止することができる。
上記発泡剤含浸工程は、圧力容器内で樹脂粒子に二酸化炭素等の発泡剤を含浸させる工程である。
上記放出工程は、発泡剤を含む樹脂粒子を水性媒体と共に圧力容器から、当該圧力容器の内圧よりも低い圧力下に放出して発泡させて一段発泡粒子を得る工程である。
【0070】
尚、上述する一段発泡工程を、「ダイレクト発泡法」と呼ぶ場合がある。ただし、本発明の発泡粒子の製造方法はこの方法に限られず、一段発泡工程であるダイレクト発泡法に替えて、例えば発泡剤を含浸させた樹脂粒子を加熱して発泡させる「含浸発泡法」等を採用し、これにより得られた発泡粒子を適宜、後述する二段発泡工程に供することもできる。
【0071】
上述する説明において言及した高温ピークbを有する発泡粒子を製造する場合には、たとえば以下の方法が挙げられる。
即ち、高温ピークbを得るための調整は、上述する分散工程及び/又は発泡剤含浸工程において、圧力容器内の温度の昇温速度の調整や、圧力容器内の温度を所定の温度で所定時間保持するなどの調整を行うことで実施される。より具体的には、たとえば、上述する分散工程及び/又は発泡剤含浸工程において、(基材樹脂の融点-20℃)以上(基材樹脂の融解終了温度)未満の温度で10分~60分程度保持する一段保持工程を行う。その後、(基材樹脂の融点-15℃)から(基材樹脂の融解終了温度)未満の温度に調節する。そして、必要によりその温度でさらに10分~60分程度保持する二段保持工程を行う。次いで、放出工程を行うことにより、高温ピークを有する発泡粒子を製造することができる。
【0072】
本製造方法における一段発泡工程は上述する各工程以外に適宜任意の工程を追加することができる。尚、二段発泡工程を実施しない場合には、一段発泡工程によって製造された一段発泡粒子が、本発明の発泡粒子として提供される。
【0073】
二段発泡工程:
二段発泡工程は、上述の通り製造された一段発泡粒子を耐圧容器に供給し、耐圧容器内に発泡剤を圧入して一段発泡粒子の気泡内の内圧を高め、加熱して発泡させる工程である。二段発泡工程を実施することによって、所望の見掛け密度を示す発泡粒子を容易に製造できる。
また上述するとおり、一段発泡粒子の嵩倍率M1に対する、二段発泡により得られた発二段発泡粒子の嵩倍率M2の比率(M2/M1)が、1.2以上3.0以下、好ましくは1.2以上2.0以下となるよう調整することで、所望の嵩倍率M2を示す二段発泡粒子が得られやすく、当該二段発泡粒子における平均気泡径Bの値が大きくなり過ぎることが抑制される。
【0074】
(平均気泡径の調整)
上記樹脂粒子作製工程及び発泡工程を有する本製造方法において、ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径Aが5μm以上100μm以下、かつポリアミド系樹脂発泡粒子が二等分されて形成された切断面において観察される気泡のうち、気泡1つあたりの面積が大きい順に選択された5つの気泡の平均気泡径Bが250μm以下となるよう調整することが肝要である。
【0075】
平均気泡径A及び平均気泡径Bが上述する範囲となるよう調整する方法は特に限定されないが、以下の構成1~構成6の少なくともいずれかを実施することにより、平均気泡径の調整が図り易く好ましい。
【0076】
構成1:
発泡樹脂を構成する基材に、当該基材に含まれる基材樹脂100質量部に対しホウ酸亜鉛を0.5質量部以上10質量部以下の範囲で添加する。かかる範囲でホウ酸亜鉛が基材に添加されることによって発泡粒子の平均気泡径A及び平均気泡径Bを所定の範囲に調整し易いと共に、より優れた難燃性を示す発泡粒子成形体を提供しやすい。
【0077】
構成2:
樹脂粒子作製工程において、押出機から押し出される上記溶融混練物の温度を250℃以上275℃以下に調整する。これによって、得られる発泡粒子の平均気泡径A及び平均気泡径Bを上述する所定の範囲に調整し易い。この理由は明らかではないが、難燃剤aの一部や難燃剤bの一部が分解してガスが生じ、これが気泡の核剤や発泡剤として作用することが抑制されやすいためであると考えられる。
【0078】
構成3:
樹脂粒子作製工程における押出機として、二軸押出機を使用する。二軸押出機は一軸押出機に比べ、当該押出機に供給された基材を充分に混練することができる。この段階で充分に混練された溶融混練物を用いることで得られる発泡粒子の平均気泡径A及び平均気泡径Bを上述する所定の範囲に調整し易い。この理由は明らかではないが、発泡工程において核剤の作用を示す成分が樹脂粒子中において均一に分散されやすいためであると考えられる。
【0079】
構成4:
発泡工程として、ダイレクト発泡法を採用して発泡粒子を製造する。ここで、分散工程において添加される分散剤及び界面活性剤の添加量を所定範囲内とすることにより、ブロッキングがより確実に抑制され、得られる発泡粒子の平均気泡径A及び平均気泡径Bを所定の範囲に調整しやすい。具体的には、水性媒体における無機分散剤の添加量は、樹脂粒子100重量部に対して、0.3重量部以上2.0重量部以下であるとともに、水性媒体における界面活性剤の添加量は、樹脂粒子100重量部に対して、0.2重量部以上1.5重量部以下であることが好ましい。
上述する難燃剤含む場合、発泡工程において発泡粒子同士のブロッキングが生じやすい傾向にあるが、上述する範囲で無機分散剤が添加されることによって、上記ブロッキングの発生を良好に防止することが可能である。
【0080】
構成5:
発泡樹脂を構成する基材に、式(IV)で示される部分構造を有するNOR型ヒンダードアミンを難燃剤aと難燃剤bとの合計100質量部に対して0.5質量部以上8質量部以下の範囲で添加する。かかる範囲で上記NOR型ヒンダードアミンが基材に添加されることにより、ブロッキングがより確実に抑制され、得られる発泡粒子の平均気泡径A及び平均気泡径Bを所定の範囲に調整しやすい。この理由は定かではないが、電気的な相互作用により、NOR型ヒンダードアミンは、水性媒体中で無機分散剤を適度に引き付けやすいためであると考えられる。
【0081】
構成6:
本実施形態において示すとおり発泡工程が、一段発泡工程及び二段発泡工程を有することは、平均気泡径の調整の観点で好ましい。
ここで一段発泡工程は、ポリアミド系樹脂粒子を水等の分散媒が供給された密閉容器内に分散させるとともに発泡剤を含浸させて発泡性ポリアミド系樹脂粒子を調製し、次いで上記発泡性ポリアミド系樹脂粒子を上記密閉容器の一端を開放させることにより発泡性ポリアミド系樹脂粒子を上記分散媒とともに密閉容器よりも低圧下に放出して発泡させる工程である。即ち、一段発泡工程は、上述する分散工程、発泡剤含浸工程、および放出工程を含む。
また二段発泡工程は、一段発泡工程によって得られた一段発泡粒子を耐圧容器に供給し、内圧を付与して加熱して発泡させることによって、一段発泡粒子の嵩倍率M1よりも大きい嵩倍率M2を示すポリアミド系樹脂発泡粒子を得る工程である。
【0082】
構成6において、一段発泡工程において得られる一段発泡粒子の嵩倍率M1と、二段発泡工程において得られる二段発泡粒子であるポリアミド系樹脂発泡粒子の嵩倍率M2との比(M2/M1)が、1.2以上3.0以下となるよう調整されることが好ましく、1.2以上2.0以下となるよう調整されることがより好ましい。この場合には、二段発泡工程において気泡が成長することが抑制され、発泡粒子の平均気泡径A及び平均気泡径Bを所定の範囲に調整し易い。
【0083】
また構成6に関し、二段発泡工程において、耐圧容器内の圧力(加圧圧力)を0.3MPa以上1MPa以下の範囲に調整後、少なくとも24時間保持することにより一段発泡粒子に内圧を付与することが好ましい。
【0084】
また構成6に関し、二段発泡工程において、内圧が付与された一段発泡粒子を、0.01MPa以上0.08MPa以下のスチームで加熱することが好ましく、0.01MPa以上0.04MPa以下のスチームで加熱することがより好ましい。このように、二段発泡工程において、内圧が付与された一段発泡粒子をより低い圧力のスチームで加熱することにより、気泡が成長することが抑制され、発泡粒子の平均気泡径A及び平均気泡径Bを所定の範囲に調整し易い。
【0085】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体]
本発明の発泡粒子成形体は、上述する本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形して製造される。かかる本発明の発泡粒子成形体は、難燃性に優れるとともに、表面性及び回復性に優れ、融着率の高い良好な発泡粒子成形体である。かかる成形体は、自動車部材、建築材料などの種々の用途に好適に使用可能である。発泡粒子成形体の表面性及び回復性の評価、並びに融着率の測定は、後述する実施例の記載が参照される。
【0086】
(燃焼試験)
発泡粒子成形体の難燃性は、UL94規格に準拠した水平燃焼試験(UL94水平燃焼試験)に基づいて評価される。UL94水平燃焼試験の具体的な試験方法は、以下の通りである。
発泡粒子成形体から縦150±1mm×横50±1mm×厚み13mmのスキン面を有する試験片を5枚切り出し、試験片の縦150±1mm×横50mm±1の面における、縦方向の一端からの距離が25mm、60mm、125mmとなる位置に標線を引く。試験片を気温23℃、相対湿度50%で24時間静置して状態調節した後、試験片を標線が上となるようにして金網の上に設置し、試験片の下に綿を置く。その後、翼端付のバーナーから38mm±2mmの青炎が出るように調整して、試験片の端に炎を当てる。一分後、バーナーを試験片から100mm以上離し、試験片から炎が消えるまでの時間及び距離を測定する。
【0087】
UL94水平燃焼試験に基づく難燃性の評価は、試験片から炎が消えるまでの時間及び距離に基づき、5枚の試験片それぞれについて以下のように難燃性のクラスを判定する。そして、5枚の試験片のうち4枚以上が条件を満たしたクラスを、その発泡粒子成形体の難燃性として判定する。
HF-1:炎が当たっていた端部からの距離が試験片の縦寸法の4/5となる位置における消炎時間が2秒以下、炎が当たっていた端部からの距離が試験片の縦寸法の1/5となる位置における消炎時間が10秒以下、試験片の燃焼グローイングの時間が30秒以下、綿が燃焼していない、燃焼距離が60mm以下、のすべての条件を満たす。
HF-2:綿が燃焼する以外は、HF-1と同一の条件を満たす。
HBF:炎が当たっていた端部からの距離が25mmである標線から125mmである標線までの燃焼速度が40mm/min以内である、又は、25mmの標線から125mmの標線までの間で燃焼が停止する、のいずれかの条件を満たす。
【0088】
(成形体密度)
本発明の発泡粒子成形体の成形体密度は、軽量性と剛性等の機械的物性とのバランスに優れる観点及び難燃性を確実に発揮させる観点から15kg/m以上100kg/m以下であることが好ましく、20kg/m以上70kg/m以下であることがより好ましい。
【0089】
発泡粒子成形体の成形体密度は、発泡粒子成形体の質量を外径寸法に基づいて算出される体積で除することにより算出される。尚、外形寸法から体積を算出することが難しい場合には、3次元測定により発泡粒子成形体の体積を求めることができる。
【0090】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の製造方法]
本発明の発泡粒子成形体は、上述する本発明の発泡粒子を用いて型内成形により製造される。上記型内成形は、発泡粒子を用いた公知の型内成形方法を広く含む。たとえば、本発明の発泡粒子成形体は、以下のとおり製造される。まず所望する発泡粒子成形体の形状に対応したキャビティを有する成形型内に本発明の発泡粒子を充填し、スチーム等の加熱媒体により成形型内に充填された発泡粒子に所定の成形圧力をかけて加熱する。上記成形圧力は、たとえば、0.12MPa(G)以上、0.30MPa(G)以下の範囲で調整することができる。尚、本明細書において(G)とは、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした圧力の値を示す。このようにキャビティ内の発泡粒子を加熱することによってさらに発泡させると共に、発泡粒子を相互に融着させる。次いでスチーム等による加熱終了後、放圧するとともに、速やかに成形型及び成形型内の成形体の冷却を開始し、成形型の内面に生じる圧力(面圧)が0.02MPa(G)になったことが確認されたら冷却を終了し、当該成形型から発泡粒子成形体を取り出す。ここでの冷却方法は特に限定されないが、たとえば水冷等が挙げられる。かかる一連の成形工程によって、キャビティの形状に応じた発泡粒子成形体が得られる。
【実施例0091】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
表1~表3に、各実施例および各比較例の発泡粒子を製造するための基材の組成(グレード)について示すとともに各組成の配合量について以下のとおり示した。
表1~表3において、難燃剤の配合量は、基材樹脂100質量部に対する配合割合(質量部)であり、難燃剤の配合量の合計と、難燃剤として用いられた各組成の配合量それぞれを示した。また併せて、難燃剤aの配合量及び難燃剤bの配合量の合計(質量部)、並びに、難燃剤aの配合量及び難燃剤bの合計100質量%中における難燃剤a及び難燃剤bそれぞれの配合量の質量比(質量%)について示した。
表1~表3において、難燃助剤の配合量は、基材樹脂100質量部に対する配合割合(質量部)である。
表1~表3において、着色剤の配合量として、基材100質量%中における着色剤の配合割合を示した。
【0092】
[実施例1]
<発泡樹脂粒子の調製>
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
二軸押出機に、基材樹脂であるポリアミド樹脂(グレード;5033B、宇部興産株式会社製)、着色剤(カーボンブラック)、難燃剤(難燃剤a、難燃剤b、ホウ酸亜鉛)及び難燃助剤を表1に示す配合量にて供給し、溶融混練し溶融混練物を得た。また、気泡核剤としてのタルクが、後述のとおり得られる樹脂粒子中において8000ppmとなるように供給した。押出機先端に取り付けた口金の細孔から、押出温度274℃に調整された溶融混練物を断面円形状の単層ストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が1個当たり約2mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。
尚、ポリアミド樹脂(5033B)は、ポリアミド6/66コポリマー(ナイロン6/66)、ポリアミド6/ポリアミド66=85/15、融点197℃、密度1.14g/cm3、曲げ弾性率1300MPa、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレート(MFR)が3.5g/10min、製品名:UBEナイロン5033Bである。
またグレードOP1312は、クラリアント社製の難燃剤「Exolit ОP1312」であり、難燃剤aとしてホスフィン酸のアルミニウム塩と、難燃剤bとしてポリリン酸メラミンとを質量比2:1で含有している。また、ホウ酸亜鉛を5質量%含有している。
【0093】
<発泡粒子の製造>
一段発泡工程:
上述のとおり得られたポリアミド系樹脂粒子を用いて、以下のとおり一段発泡工程を実施した。
まずポリアミド系樹脂粒子1000gと、分散液(水)3リットルとを、撹拌機を備えた5リットルの密閉容器内に仕込み、更に、ポリアミド系樹脂粒子100質量部に対して、分散剤としてカオリンを6gと、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.6gとを分散液に添加した。密閉容器内の内容物を撹拌しながら室温(23℃)から昇温し、含浸温度(135.2℃)に到達後、該密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を、密閉容器内の平衡蒸気圧が4MPaとなるまで圧入した。このとき、室温(23℃)から含浸温度(135.2℃)に到達するまでの昇温時間は30分であった。次に、高温ピークを有する結晶性を示すよう135.2℃、4MPaで15分間保持し、発泡剤が含浸された樹脂粒子(発泡性樹脂粒子)を得た。
その後、発泡性樹脂粒子を分散液とともに大気圧(0.1MPa)下に放出して発泡させた。得られた発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することにより嵩倍率17.3倍の一段発泡粒子を得た。
【0094】
二段発泡工程:
養生後の一段発泡粒子を加圧可能な密閉容器に充填した。そして、当該密閉容器内の圧力を常圧から表1に示す加圧圧力(0.6MPa)になるまで表1に示す時間(1日間)かけて上昇させ、発泡粒子を加圧した。発泡粒子を当該圧力にて加圧した状態を24時間維持して空気を発泡粒子の気泡内に含浸させた。その後、密閉容器から発泡粒子を取り出した。その後、当該発泡粒子を二段発泡装置に供給し、装置内にスチーム(スチーム圧0.05MPa)を供給して発泡粒子を発泡させて、嵩倍率26.6倍の二段発泡粒子を得た。実施例1は、二段発泡により得られた二段発泡粒子を最終の発泡粒子とした。
【0095】
<発泡粒子成形体の製造>
[ポリアミド系樹脂発泡粒子成型体の製造]
まず、発泡粒子を耐圧容器に入れ、耐圧容器内の圧力を表1に示す設定圧(0.08MPa)になるまで12時間かけて昇圧し、当該圧力にて加圧した状態を24時間維持して発泡粒子に内圧を付与した。その後、金型のキャビティ内に発泡粒子を充填した。成形型として、縦200mm×横65mm×厚さ40mmの平板成形型の金型を用いた。上記金型を完全に閉じた状態から4mm開いた状態として、当該金型のキャビティの厚み40mmに対し10%のクラッキング量となるよう調整した充填完了後、金型を完全に閉じた。
その後、スチームを成形キャビティ内に供給して加熱による型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、移動側型よりスチームを供給し、次いで固定側型よりスチームを供給した後、表1に示す成形圧(0.16MPa(G))まで加熱した。
加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.02MPa(G)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体を80℃のオーブンにて12時間養生し、その後、室温まで徐冷した。このようにして、発泡粒子成形体を得た。
【0096】
[実施例2~実施例7及び比較例1~比較例7]
表1~表3に示す内容に変更したこと以外、実施例1と同様に発泡粒子および発泡粒子成形体を製造し、実施例2~実施例7及び比較例1~比較例7とした。
また、実施例7にОP1312とともに用いたOP1230は、クラリアント社製の難燃剤「Exolit ОP1230」であり、ホスフィン酸のアルミニウム塩である。
また実施例2,4は難燃助剤としてBASFジャパン株式会社製の難燃助剤NOR116を用いた。
また比較例4に用いたグレードMC6000は、主成分としてメラミンシアヌレートを含む日産化学社製の難燃剤であり、比較例5に用いたグレードSR-T20000は、主成分として臭素化エポキシを含む阪本薬品工業社製の難燃剤であり、比較例6に用いたグレードヒロマスターMA-80は、主成分として臭素化ポリスチレンを含む鈴裕化学社製の難燃剤であり、比較例7に用いたグレードPHOSMELは、ポリリン酸メラミンを含む日産化学社製の難燃剤である。
【0097】
[発泡粒子の物性の測定]
上述のとおり得られた一段発泡粒子及び/又は最終の発泡粒子の物性について以下のとおり測定した。尚、実施例3及び比較例3~7は二段発泡を行わなかったため、一段発泡粒子を最終の発泡粒子とした。測定結果は表1~表3に示す。
【0098】
(発泡粒子の嵩倍率)
一段発泡工程により得られた一段発泡粒子の嵩倍率M1を、一段発泡粒子を構成する基材樹脂の密度(1140kg/m)を後述する一段発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m)で除すことで求めた。
一段発泡粒子を用いて二段発泡を行うことで得られた二段発泡粒子の嵩倍率M2を、二段発泡子を構成する基材樹脂の密度(1140kg/m)を後述する二段発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m)で除すことで求めた。
また上述のとおり求めた嵩倍率M1に対する嵩倍率M2の比(M2/M1)を算出した。
【0099】
(発泡粒子の嵩密度)
まず、一段発泡粒子又は二段発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置した。このようにして得られた質量W(g)の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させた。メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群の嵩体積V(L)を読み取り、発泡粒子群の質量Wを発泡粒子群の嵩体積Vで除した(W/V)。これにより求められる値をkg/mに単位換算することにより、発泡粒子の嵩密度(kg/m)を得た。
【0100】
(発泡粒子の見掛け密度)
発泡粒子の見掛け密度は、以下の方法により測定した。まず、測定に供する発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置した。このようにして得られた質量w(g)の発泡粒子群を23℃のエタノールを入れたメスシリンダー内に、金網などを使用して沈め、水位の上昇分から発泡粒子群の体積v(cm)を求め、発泡粒子群の質量wを発泡粒子群の体積vで除す(w/v)。これにより求められる値をkg/mに単位換算することにより、発泡粒子の見掛け密度(kg/m)を得た。
【0101】
(発泡粒子の平均気泡径A)
まず発泡粒子を略二等分して切断面を露出させた。そして、切断面が全て収まるよう写真を撮影した。撮影された写真上で発泡粒子の周縁から発泡粒子の中心部を通って対向する周縁まで、等角度(すなわち、45°)で4本の線分を引いた。次に、4本の線分の長さの合計Lを各線分に接する気泡の合計数Nで除した値(L/N)を1つの発泡粒子の平均気泡径aとした。この操作を50個の発泡粒子について行い、その算術平均値を発泡粒子の平均気泡径Aとした。
【0102】
(発泡粒子の平均気泡径B)
発泡粒子を略二等分して切断面を露出させた。そして、切断面が全て収まるよう写真を撮影した。切断面において観察される全ての気泡を画像解析することにより各気泡の面積を測定した。そして上記切断面において、気泡1つあたりの面積が大きい順に5つの気泡を選択した。選択された5つの気泡それぞれの面積と同じ面積を有する仮想真円を想定し、当該仮想真円の直径を算出した。このように求められた直径を算術平均することによって得られた値を1つの発泡粒子の平均気泡径bとした。この操作を50個の発泡粒子について行い、その算術平均値を発泡粒子の平均気泡径Bとした。
また上述のとおり得られた平均気泡径Bの値と平均気泡径Aの値との差(B-A)を算出した。
【0103】
(一段発泡粒子の高温ピーク融解熱量)
一段発泡粒子の高温ピーク融解熱量は、JIS K7122:1987に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に基づいて、一段発泡粒子1~3mgを試験片とし、10℃/分の加熱速度で23℃から試験片の融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して得られるDSC曲線から求めた。具体的には、図1を用いて上述で説明するとおり、発泡粒子を用いて得られたDSC曲線において、DSC曲線上における80℃に相当する点Iと、発泡粒子の融解終了温度に相当する点IIとを結ぶ直線を引いた。尚、融解終了温度は、高温ピークbにおける高温側の端点であり、DSC曲線における、高温ピークbと、高温ピークbよりも高温側のベースラインとの交点である。
次いで、図1において参照されるとおり、固有ピークaと高温ピークbとの間に存在する極大点IIIを通りグラフの縦軸に平行な直線と、点Iと点IIとを結んだ直線との交点をIVとした。
そして、点Iと点IVを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点Iと点IIIとを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分の面積を固有ピークaの面積とした。また点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点IIIと点IIとを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分(斜線部分)の面積を高温ピークbの面積とした。上述のとおり求めた高温ピークbの面積から一段発泡粒子の高温ピーク融解熱量(J/g)の値を算出した。なお、二段発泡粒子の高温ピークの融解熱量の値は、当該二段発泡粒子の製造に用いられた一段発泡粒子の高温ピークの融解熱量の値と通常一致する。
【0104】
(発泡粒子の独立気泡率)
一段発泡粒子又は二段発泡粒子を用い、嵩体積約20cmの発泡粒子群を水に浸漬することにより、発泡粒子群の見掛けの体積Vaを測定した。次に見掛けの体積Vaが測定された発泡粒子群を十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子の体積(発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値(真の体積Vx)を測定した。この真の体積Vxの測定には、東京サイエンス(株)製の空気比較式比重計「Beckman Model1000 Air Comparison Pycnometer」を用いた。
次いで、下記の式(1)により独立気泡率を算出した。異なる測定用サンプルを用い、上述と同様の手順で5回、独立気泡率の測定を行い、各測定で得られた値の算術平均値を求め、これを発泡粒子の独立気泡率とした。
[数2]
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
Vx:上記方法で測定される発泡粒子群の真の体積(cm
Va:発泡粒子群をメスシリンダー中の水に沈めた際の水位上昇分から測定される発泡粒子群の見掛けの体積(cm
W:発泡粒子群の質量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
【0105】
[発泡粒子成形体の物性の測定]
上述のとおり製造された発泡粒子成形体の物性について以下のとおり測定又は評価した。結果は表1~表3に示す。尚、評価に関し△または〇の評価であれば実用可能であると判断した。
【0106】
(発泡粒子成形体の成形体密度)
発泡粒子成形体の質量を外径寸法に基づいて算出される体積で除することにより算出した。
【0107】
(発泡粒子成形体の表面性評価)
発泡粒子成形体の表面性を目視で観察し、以下のとおり評価した。
〇・・・成形体表面の発泡粒子間隙が完全に埋まっている。
△・・・成形体表面の発泡粒子間隙の一部に埋まっていない箇所が発見される。
×・・・成形体表面の発泡粒子間隙が埋まっていない箇所が散見される。
【0108】
(発泡粒子成形体の融着率)
発泡粒子成形体の中央部から試験片(縦100mm×横100mm×厚み:発泡粒子成形体の厚み)を切り出し、カッターナイフで各試験片の厚み方向に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から試験片を破断させた。次に、発泡粒子成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定した。そして全体の発泡粒子の個数(n)に対する、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を百分率で表して融着率(%)とし、以下のとおり評価した。
〇・・・融着率が80%以上である。
×・・・融着率が80%未満である。
【0109】
(発泡粒子成形体の回復性)
型内成形後、成形型から取り出され発泡粒子成形体を、気温23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置して養生した。
養生後の発泡粒子成形体を厚み方向から見た平面視における4か所の角からスキン面の中央に向かって10mm離れた位置で発泡粒子成形体の厚みを測定した。そして、これらの厚みのうち、最も大きい値を発泡粒子成形体の角部の厚みとした。これとは別に、発泡粒子成形体を厚み方向から見た平面視における、縦方向及び横方向のいずれにおいても中央となる位置で発泡粒子成形体の厚みを測定し、この値を発泡粒子成形体の中央部の厚みとした。そして、発泡粒子成形体の角部の厚みに対する中央部の厚みの比(%)を算出し、以下のとおり評価した。
〇・・・比(%)90%以上である。
△・・・比(%)85%以上90%未満である。
×・・・比(%)85%未満である。
【0110】
(発泡粒子成形体の難燃性)
発泡粒子成形体の難燃性を、UL94規格に準拠した水平燃焼試験(UL94水平燃焼試験)に基づき以下のとおり評価した。
まず発泡粒子成形体から縦150±1mm×横50±1mm×厚み13mmのスキン面を有する試験片を5枚切り出し、試験片の縦150±1mm×横50mm±1の面における、縦方向の一端からの距離が25mm、60mm、125mmとなる位置に標線を引いた。試験片を気温23℃、相対湿度50%で24時間静置して状態調節した後、試験片を標線が上となるようにして金網の上に設置し、試験片の下に綿を置いた。その後、翼端付のバーナーから38mm±2mmの青炎が出るように調整して、試験片の端に炎を当てた。一分後、バーナーを試験片から100mm以上離し、試験片から炎が消えるまでの時間及び距離を測定した。
上述のとおり測定された時間及び距離に基づき、5枚の試験片それぞれについてHF-1、HF-2、HBFとして分類される難燃性のクラスを判定した。HF-1、HF-2、HBFの詳細は、上述する発泡粒子の説明における記載が参照される。
そして、5枚の試験片のうち4枚以上が条件を満たしたクラスを、その発泡粒子成形体の難燃性として判定し表1~表3に示した。また、表1~表3において、各実施例および各比較例に関し、5枚の試験片のうちHF-1の基準を達成した枚数を、判定されたクラスの横に示す括弧内に示した。
【0111】
(発泡粒子成形体のドリップ評価)
上述するUL94水平試験において、試験片から樹脂の滴下の有無を観察し、以下のとおり評価した。
〇・・・滴下物による綿着火なし
×・・・滴下物による綿着火あり
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
上述する本発明は、以下の技術思想を包含する。
(1)難燃剤及びポリアミド系樹脂を含むポリアミド系樹脂発泡粒子であって、
前記難燃剤が、
ホスフィン酸及び/又はジホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤(難燃剤a)と、
メラミンとポリリン酸との反応生成物、メラミンの縮合物とポリリン酸との反応生成物、及びそれらの混合物からなる群から選択される1以上の窒素/リン系難燃剤(難燃剤b)と、を含み、
前記発泡粒子の基材樹脂がポリアミド系樹脂を含み、
前記ポリアミド系樹脂を含む基材樹脂100質量部に対し、前記難燃剤aの配合量と前記難燃剤bの配合量との合計が10質量部以上30質量部以下であり、前記難燃剤aの配合量と前記難燃剤bの配合量との質量比が90:10~30:70(ただし前記難燃剤aおよび前記難燃剤bの合計が100質量%である)のであり、
前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径Aが5μm以上100μm以下、かつ前記ポリアミド系樹脂発泡粒子が二等分されて形成された切断面において観察される気泡のうち、気泡1つあたりの面積が大きい順に選択された5つの気泡の平均気泡径Bが250μm以下である、ポリアミド系樹脂発泡粒子。
(2)前記平均気泡径Bが160μm以下である、上記(1)に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
(3)前記平均気泡径Aと前記平均気泡径Bとの差[B-A]が60μm以上200μm以下である、上記(1)又は(2)に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
(4)前記難燃剤aがホスフィン酸アルミニウムであり、
前記難燃剤bがポリリン酸メラミンであり、
前記ポリリン酸メラミン100質量%中において、リンの含有量が15質量%以上30質量%以下であり、かつ窒素の含有量が10質量%以上20質量%以下である、上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
(5)前記ポリアミド系樹脂を含む基材樹脂100質量部に対し、前記難燃剤bの配合量が2質量部以上10質量部以下である、上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
(6)前記ポリアミド系樹脂発泡粒子が炭素系着色剤を含み、前記炭素系着色剤の配合量が前記ポリアミド系樹脂発泡粒子100質量%中において0.5質量%以上5質量%以下である、上記(1)から(5)のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
(7)以下の式(IV)で示される部分構造を有するNOR型ヒンダードアミンをさらに含み、該NOR型ヒンダードアミンの配合量が前記難燃剤aと前記難燃剤bとの合計100質量部に対して0.5質量部以上8質量部以下である、上記(1)から(6)のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
(ただし、式(IV)において、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、及びアリール基のいずれかであり、*は任意の構造が結合する)
【化5】
(8)前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10kg/m以上80kg/m以下である、上記(1)から(7)のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
(9)上記(1)から(8)のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリアミド系樹脂発泡粒子成形体。
(10)ホウ酸亜鉛をさらに含み、該ホウ酸亜鉛の配合量が基材樹脂100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下である、上記(1)から(8)のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
(11)難燃剤とポリアミド系樹脂とを含む基材を溶融混練して溶融混練物を調製し、前記溶融混練物を押出機から押し出してポリアミド系樹脂粒子を作製する樹脂粒子作製工程及び、
前記ポリアミド系樹脂粒子を発泡させてポリアミド系樹脂発泡粒子を製造する発泡工程を有し、
前記難燃剤が、
ホスフィン酸及び/又はジホスフィン酸の金属塩からなるリン系難燃剤(難燃剤a)と、
メラミンとポリリン酸との反応生成物、メラミンの縮合物とポリリン酸との反応生成物、及びそれらの混合物からなる群から選択される1以上の窒素/リン系難燃剤(難燃剤b)と、を含み、
前記ポリアミド系樹脂を含む基材樹脂100質量部に対し、前記難燃剤aの配合量と前記難燃剤bの配合量との合計が10質量部以上30質量部以下であり、難燃剤aの配合量と難燃剤bの配合量との質量比が90:10~30:70(ただし難燃剤aおよび難燃剤bの合計が100質量%である)であり、
前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径Aが5μm以上100μm以下、かつ前記ポリアミド系樹脂発泡粒子が二等分されて形成された切断面において観察される気泡のうち、気泡1つあたりの面積が大きい順に選択された5つの気泡の平均気泡径Bが250μm以下となるよう調整する、ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
(12)上記製造方法において、以下の構成1~6の少なくともいずれかを実施する上記(11)に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法、
構成1は、前記基材に、基材樹脂100質量部に対しホウ酸亜鉛を0.5質量部以上10質量部以下の範囲で添加する、
構成2は、前記樹脂粒子作製工程において、押出機から押し出される前記溶融混練物の温度を250℃以上275℃以下に調整する、
構成3は、前記樹脂粒子作製工程における前記押出機が、二軸押出機である、
構成4は、前記発泡工程が、
前記ポリアミド系樹脂粒子、無機分散剤および界面活性剤を水等の分散媒が供給された密閉容器内に分散させるとともに発泡剤を含浸させて発泡性ポリアミド系樹脂粒子を調製し、次いで前記発泡性ポリアミド系樹脂粒子を前記密閉容器の一端を開放させることにより発泡性ポリアミド系樹脂粒子を前記分散媒とともに密閉容器よりも低圧下に放出して発泡させる一段発泡工程を少なくとも有し、
前記分散媒における前記無機分散剤の添加量が、前記ポリアミド系樹脂粒子100重量部に対して、0.3重量部以上2.0重量部以下であるとともに、前記分散媒における界面活性剤の添加量が、樹脂粒子100重量部に対して、0.2重量部以上1.5重量部以下である、
構成5は、前記基材に、式(IV)で示される部分構造を有するNOR型ヒンダードアミンを難燃剤aと難燃剤bとの合計100質量部に対して0.5質量部以上8質量部以下の範囲で添加する(式(IV)において、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、及びアリール基のいずれかであり、*は任意の構造が結合する)、
【化6】
構成6は、前記発泡工程が、
前記ポリアミド系樹脂粒子を水等の分散媒が供給された密閉容器内に分散させるとともに発泡剤を含浸させて発泡性ポリアミド系樹脂粒子を調製し、次いで前記発泡性ポリアミド系樹脂粒子を前記密閉容器の一端を開放させることにより発泡性ポリアミド系樹脂粒子を前記分散媒とともに密閉容器よりも低圧下に放出して発泡させる一段発泡工程および、
前記一段発泡工程によって得られた一段発泡粒子を耐圧容器に供給し、内圧を付与して加熱して発泡させることによって、一段発泡粒子の嵩倍率M1よりも大きい嵩倍率M2を示すポリアミド系樹脂発泡粒子を得る二段発泡工程を有する。
(13)前記構成6において、前記一段発泡工程において得られる一段発泡粒子の嵩倍率M1と、前記二段発泡工程において得られるポリアミド系樹脂発泡粒子の嵩倍率M2との比(M2/M1)が、1.2以上2.0以下である上記(12)に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
(14)前記構成6の前記二段発泡工程において前記一段発泡粒子の内部の内圧(加圧圧力)を0.3MPa以上1.0MPa以下の範囲に調整後、少なくとも24時間上記圧力を保持することにより一段発泡粒子に内圧を付与する上記(12)または(13)に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
(15)前記構成6の前記二段発泡工程において内圧が付与された前記一段発泡粒子を、0.01MPa以上0.08MPa以下のスチームで加熱する上記(12)から(14)のいずれか一項に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法。
図1