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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115251
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】曲げ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/01 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
B21D5/01 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020861
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】厚坊 祐介
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA01
4E063BA01
4E063CA05
4E063DA02
4E063JA01
4E063JA07
(57)【要約】
【課題】本発明では、安価な構成により、精度よく曲げ加工を行う曲げ加工装置を提供することを課題とする。
【解決手段】板状のワークWを、その一端側の被加工部W1を露出させた状態で挟持する挟持部と、被加工部W1に対する上下動により、被加工部W1を被加工部W1の厚み方向に曲げる曲げ刃14と、を備えた曲げ加工装置1であって、曲げ刃14は、被加工部W1を曲げ方向へ押圧する第1成形面部14aおよび第2成形面部14eと、第1成形面部14aおよび第2成形面部14eよりも被加工部W1から退避した位置に設けられる退避面部14cとを有し、曲げ刃14は、曲げ刃14のワークWに対する相対移動方向に、第1成形面部14a、退避面部14c、第2成形面部14eをこの順で有することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを、その一端側の被加工部を露出させた状態で挟持する挟持部と、
前記被加工部に対する相対移動により、前記被加工部を前記被加工部の厚み方向に曲げる曲げ加工部と、を備えた曲げ加工装置であって、
前記曲げ加工部は、前記被加工部を曲げ方向へ押圧する第1成形面部および第2成形面部と、前記第1成形面部および前記第2成形面部よりも前記被加工部から退避した位置に設けられる退避面部とを有し、
前記曲げ加工部の前記ワークに対する相対移動方向に、前記第1成形面部、前記退避面部、前記第2成形面部がこの順で設けられることを特徴とする曲げ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板状のワークを挟持した状態で、その一端側を曲げ加工部によりプレスして曲げ加工する曲げ加工装置が従来から存在する。
【0003】
このような曲げ加工装置によるワークの曲げ加工では、曲げ加工後のスプリングバックにより所望の曲げ形状を得られなくなるという問題がある。
【0004】
例えば図7(a)に示すように、パッド101と下型102によりワークWを挟持した状態で、曲げ刃103によりワークWの被加工部W1に対する曲げ加工を行う。この際、ワークWの曲げ部分の外側には引張応力が生じ、内側には圧縮応力が生じている。この状態で、図7(b)に示すように、曲げ刃103を被加工部W1から退避させて被加工部W1に対する押圧力を取り除くと、ワークWの弾性復帰力により、曲げ部分が元の形状へ戻る方向へ変形するスプリングバックが生じてしまう。
【0005】
これに対して、例えば特許文献1の曲げ加工装置では、第1の金型によりワークを曲げ代が残るように曲げ加工した後、第2の金型によりワークを最終形状に曲げ加工する曲げ加工装置が開示されている。
【0006】
特許文献1のように曲げ加工を2工程に分けることにより、1回だけで曲げ加工を行う場合と比較して2回目の加工時のスプリングバック量を低減させたり、1回目の加工で2回目の曲げ加工時にスプリングバックが生じにくい形状に曲げ加工したりすることが可能になり、最終形状を所望の形状により近づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第7008159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のように異なる成形型を用いて曲げ加工する場合、加工装置のコストアップにつながってしまうという問題があった。また、同じ成形型により二回の曲げ加工を行うこともできるが、この場合には、曲げ加工の時間が長くなってしまい、全体のタクトタイムに影響を与えてしまうという別の問題が生じる。
【0009】
本発明では、安価な構成により、精度良く曲げ加工を行う曲げ加工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、板状のワークを、その一端側の被加工部を露出させた状態で挟持する挟持部と、前記被加工部に対する相対移動により、前記被加工部を前記被加工部の厚み方向に曲げる曲げ加工部と、を備えた曲げ加工装置であって、前記曲げ加工部は、前記被加工部を曲げ方向へ押圧する第1成形面部および第2成形面部と、前記第1成形面部および前記第2成形面部よりも前記被加工部から退避した位置に設けられる退避面部とを有し、前記曲げ加工部の前記ワークに対する相対移動方向に、前記第1成形面部、前記退避面部、前記第2成形面部がこの順で設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明の曲げ加工装置によれば、曲げ加工部の一度の往復移動により、一度目の曲げ加工、被加工部からの退避によるスプリングバック、その後の二度目の曲げ加工という一連の工程を実施できる。一度目の押圧後に曲げ加工部を退避させることにより、被加工部に意図的にスプリングバックを生じさせた後、曲げ加工部を押圧位置へ移動させて再度の曲げ加工を行う。これにより、二度目のスプリングバックを小さくすることができ、被加工部に対する曲げ加工を精度良く行うことができる。また、これらを一つの曲げ加工装置により実施できるため、安価な構成で迅速に曲げ加工を完了できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安価な構成により、精度良く曲げ加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置を示す概略構成図である。
図2図1から上型を下降させた状態の図である。
図3】曲げ刃の構成を示す側面図である。
図4】(a)~(d)は、曲げ刃による曲げ加工の過程を説明する図である。
図5】曲げ刃の変形例を示す図である。
図6図5の実施形態において、曲げ刃を被加工部から退避させる様子を示す図である。
図7】(a)、(b)は、曲げ加工によるスプリングバックを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置を示す概略構成図である。本実施形態の曲げ加工装置は、板状のワークWに曲げ加工を施すための曲げ加工装置である。
【0016】
図1に示すように、曲げ加工装置1は、上型11と、下型12と、パッド13と、曲げ加工部としての曲げ刃14などを有する。
【0017】
ワークWは下型12上に載置され、その上面側からパッド13が押し当てられる。つまり、パッド13と下型12とにより、曲げ加工を行うワークWを、その一端側の被加工部W1を露出させた状態で挟持する(図4(a)参照)。このように、パッド13および下型12は、ワークWを挟持する挟持部を構成する。
【0018】
曲げ刃14は上型11に設けられており、上型11の上下動により一体的に上下動し、ワークWに対して上下方向に移動させることができる。例えば図1図2のように曲げ刃14を下降させることができる。曲げ刃14を図2よりもさらに下降させることにより、後述の曲げ加工を行うことができる。本実施形態では、挟持部(パッド13および下型12)の両側に曲げ刃14が設けられており、ワークWの両側に曲げ加工を施す構成である。しかし、いずれか一方であってもよい。
【0019】
パッド13は、スプリング15を介して上型11に保持されている。上型11の上下動により、スプリング15が伸び縮みする。これにより、図4(a)などに示す曲げ加工時の姿勢では、スプリング15の付勢力により、ワークWがパッド13と下型12との間で加圧された状態になり、ワークWの本体側が位置固定された状態で被加工部に対する曲げ加工を行うことができる。
【0020】
上型11には、パッド13の上型11からの脱落を防止するためのサイドピン16が設けられる。サイドピン16は、その一端側が上型11に保持され、他端側がパッド13内の所定位置に当接可能に設けられている。
【0021】
次に、本実施形態の曲げ加工部である曲げ刃14のより詳細な構成について、図3を用いて説明する。
【0022】
図3に示すように、曲げ刃14は、被加工部W1の側の側面に、曲げ刃14のワークWに対する相対移動方向である図3の上下方向において、第1成形面部14aと、退避面部14cと、第2成形面部14eとをこの順で有する。ここでいう「この順」とは、間に他の面部を挟むなどしていてもよい。第1成形面部14aと退避面部14cとの間には第1傾斜面部14bが設けられる。退避面部14cと第2成形面部14eとの間には第2傾斜面部14dが設けられる。
【0023】
第1成形面部14aおよび第2成形面部14eは、ワークWの一端側を曲げ方向へ押圧する部分である。第1成形面部14aおよび第2成形面部14eは、図3の左右方向(ワークWの一端側の突出方向あるいはその反対方向)において、ほぼ同じ位置に設けられている。退避面部14cは、第1成形面部14aおよび第2成形面部14eよりも、被加工部W1から退避した図3の左側の位置に設けられる面部である。言い換えると、退避面部14cは、ワークWの一端側の突出方向あるいは被加工部W1への押圧力を低減する方向へ退避した面部である。曲げ刃14の第1成形面部14aの下側の角部にR面取りがされている。
【0024】
次に、曲げ刃14によるワークWの曲げ加工の様子について、図4(a)~図4(d)を用いて説明する。図4(a)~図4(d)は図2の一点鎖線で示す範囲を示す図である。曲げ加工装置1は、被加工部W1をその厚み方向へ曲げる。この「厚み方向」とは、被加工部W1の曲げ加工前の厚み方向のことである。また、厳密に厚み方向と同じ方向に限らず、厚み方向のベクトルを有する方向といった程度の意味である。また、被加工部W1の曲げ方向は曲げ刃14の移動方向でもある。
【0025】
図4(a)に示すように、上型11を下降させて、下型12とパッド13により、一端側W1を露出させた状態でワークWを挟持する。そして、上型をさらに下方へ移動させて曲げ刃14を下方へ移動させ、曲げ刃14をワークWの一端側の被加工部W1に対して上方から接近させる。そして、曲げ刃14が被加工部W1に当接して曲げ加工し、図4(b)に示すように、曲げ刃14の第1成形面部14aが被加工部W1を曲げ方向へ押圧する。
【0026】
さらに曲げ刃14を下方向へ移動させることにより、図4(c)に示すように、被加工部W1が退避面部14cの位置へ相対移動する。これにより、被加工部W1に対する押圧力が解除され、被加工部W1はスプリングバックによって元の形状に戻る方向へ変形する。なお、図4(c)では退避面部14cは被加工部W1に対して非接触になっているが、必ずしもこれに限るものではなく、退避面部14cは第1成形面部14aおよび第2成形面部14eよりも被加工部W1から退避した位置に配置されていればよい。
【0027】
そして、曲げ刃14の移動により、図4(d)に示すように、被加工部W1が第2成形面部14eの位置まで相対移動すると、第2傾斜面部14d、そして、第2成形面部14eが被加工部W1を押圧し、被加工部W1が再び曲げ加工される。なお、退避面部14cと第2成形面部14eとの間に第2傾斜面部14d(図3参照)が形成されることにより、図4(c)→図4(d)の曲げ刃14の移動の際に、被加工部W1が退避面部14cと第2成形面部14eとの間に引っかかることを抑制できるとともに、被加工部W1を第2傾斜面部14dに沿って曲げ加工することができる。
【0028】
以上により、被加工部W1に対する曲げ加工が完了する。その後、曲げ刃14は再び上方へ移動してワークWから退避する。なお、第1成形面部14aと退避面部14cとの間に第1傾斜面部14b(図3参照)が形成されることにより、曲げ刃14をワークWから退避させる際に、被加工部W1が第1成形面部14aと退避面部14cとの間に引っかかることを抑制できる。
【0029】
以上のように、本実施形態では、被加工部W1を曲げ加工して被加工部W1を第1成形面部14aにより押圧した後、退避面部14cにおいて被加工部W1にスプリングバックを生じさせたうえで、第2傾斜面部14d、そして、第2成形面部14eにより再度曲げ加工を行う。このように、曲げ加工→押圧力の解除(あるいは低減)→再度の曲げ加工を行うことにより、2回目の曲げ加工後のスプリングバックを抑制し、被加工部W1を精度よく曲げ加工することができる。特に本実施形態では、この工程を曲げ刃14(上型11)の下方向への移動のみにより行うことができる。つまり、上型11を上下に一往復させるだけで上記工程を完了することができる。従って、複数の成形型を使用したり、あるいは、同じ成形型で二回の往復運動をさせることなく、曲げ加工を精度良く行うことができる。従って、曲げ加工装置のコストダウンあるいは曲げ加工の時間短縮を実現できる。
【0030】
また上型11の上下動を利用して上記の曲げ加工を実施できる。つまり、プレス成型のための上型11および下型12により上記の曲げ加工を実施できる。
【0031】
次に、曲げ刃の変形例について、図5を用いて説明する。
【0032】
図5に示すように、本実施形態の曲げ刃14の前述の実施形態と異なる点として、第1成形面部14aが第2成形面部14eよりも被加工部W1から被加工部W1の突出方向と反対方向へ退避した位置、つまり、図5の左方向に退避した位置に設けられる。つまり、第1成形面部14aと下型12の側面とのクリアランスAが、第2成形面部14eと下型12とのクリアランスに比べて大きく設定される。
【0033】
本実施形態の曲げ刃14による曲げ加工では、第1成形面部14aによる一度目の曲げ加工時に、二度目の曲げ加工時よりも小さく曲げ加工する予備曲げを行う。その後、退避面部14cによりスプリングバックを生じさせた後、第2成形面部14eにより所望の曲げ形状が得られるように曲げ加工を行う。これにより、前述の実施形態と同様、従って、複数の成形型を使用したり、あるいは、同じ成形型で二回の往復運動をさせることなく、曲げ加工を精度良く行うことができる。従って、曲げ加工装置のコストダウンあるいは曲げ加工の時間短縮を実現できる。
【0034】
本実施形態では、第1成形面部14aと下型12とのクリアランスAが大きく設定されるため、図6に示すように、2回の曲げ加工後に曲げ刃14を上方へ退避させる際に、被加工部W1を第1成形面部14aにより引っかかりにくくすることができる。また、ワークWの形状や厚み、材質などの成形条件によって、曲げ量の少ない予備曲げを行うことにより、2回目の曲げ加工後のスプリングバックを前述の実施形態と比較して小さくすることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 曲げ加工装置
11 上型
12 下型
13 パッド
14 曲げ刃(曲げ加工部)
14a 第1成形面部
14c 退避面部
14e 第2成形面部
W ワーク
W1 ワークの被加工部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7