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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115292
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】接着剤付与装置、及び鋼板接着方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20240819BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240819BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240819BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20240819BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240819BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20240819BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D7/24 301P
B05D7/14 Z
B05D3/00 D
B05D3/12 C
B05D3/12 D
H02K15/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020909
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】393023950
【氏名又は名称】大垣精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】鄭 日権
(72)【発明者】
【氏名】日比 庸之
(72)【発明者】
【氏名】森 幸泰
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
5H615
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC07
4D075AC09
4D075AC71
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC92
4D075AC93
4D075AC95
4D075BB05Z
4D075BB08X
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB02
4D075DC16
4D075EA05
4D075EA27
4D075EA35
4F041AA04
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA13
4F041BA23
4F041BA35
4F042AA13
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB08
4F042CB10
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS10
5H615SS13
5H615SS18
(57)【要約】
【課題】使用する接着剤の特性に応じて付与量を調整可能な接着剤付与装置、及び鋼板接着方法を提供することにある。
【解決手段】接着剤付与装置40は、上金型2及び下金型3の少なくとも一方に備えられ、鋼板素材30に接着剤41を付与する装置である。接着剤付与装置40は、鋼板素材30に接着剤41を付与するノズルユニット42と、接着剤41を貯留する接着剤貯留部と、接着剤貯留部からノズルユニット42へ接着剤41を供給する供給管44を備える。さらに、ノズルユニット42に形成され、接着剤41を鋼板素材30に付与するノズル先端部45と、ノズル先端部45が鋼板素材30に最も近接するときの鋼板素材30との間隔agを調整可能なノズル間隔調整装置を備える。
【選択図】図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板素材を打ち抜くため、対となる上金型と下金型が鉛直方向に沿って相対的に移動可能な金型を備え、前記鋼板素材から所定の形状に打抜き形成する鋼板を積層して、積層鋼板を製造する製造装置に組み込まれる接着剤付与装置であって、
前記上金型及び前記下金型の少なくとも一方に備えられ、
前記鋼板素材に接着剤を付与するノズルユニットと、
前記接着剤を貯留する接着剤貯留部と、
前記接着剤貯留部から前記ノズルユニットへ前記接着剤を供給する供給管と、
前記ノズルユニットに形成され、前記接着剤を前記鋼板素材に付与するノズル先端部と、
前記ノズル先端部が前記鋼板素材に最も近接するときの前記鋼板素材との間隔を調整するノズル間隔調整装置を備える接着剤付与装置。
【請求項2】
前記ノズル間隔調整装置は、
間隔調整カムと、
前記間隔調整カムに接触可能であり、該間隔調整カムによって前記ノズルユニットの移動方向へ移動可能な間隔調整ブロックを備える請求項1に記載の接着剤付与装置。
【請求項3】
前記ノズル間隔調整装置と前記ノズルユニットに挟まれて配置され、前記ノズルユニットが前記鋼板素材に前記接着剤を付与する状態と付与しない状態とを切り替え可能なノズル切替装置を備え、
前記ノズル切替装置は、切替作動カムと切替受動カムと保持部材を備え、
前記切替作動カムは、前記上金型の移動に伴って前記ノズルユニットが移動する方向に対して垂直方向に可動し、
前記切替受動カムは、前記切替作動カムの作動によって、前記上金型の移動に伴って前記ノズルユニットが移動する方向に沿って可動し、
前記保持部材は、前記上金型の移動に伴って前記ノズルユニットが移動する方向において、前記切替作動カム又は/及び前記切替受動カムを保持する請求項1に記載の接着剤付与装置。
【請求項4】
前記ノズルユニットと直接的に又は間接的に接触し、該ノズルユニットが前記鋼板素材から離間する方向へ移動するよう、弾性力によって押圧力を付与するキラーピンを備え、
前記ノズルユニットは、直接的に又は間接的に前記ノズル間隔調整装置と接触する状態が維持される請求項1に記載の接着剤付与装置。
【請求項5】
前記鋼板素材を挟んで、前記上金型と前記下金型に備えられ、
前記上金型と前記下金型とが近接する方向へ移動すると、
前記鋼板素材の第一面及び該第一面の裏面である第二面に前記接着剤が付与される請求項1に記載の接着剤付与装置。
【請求項6】
前記接着剤は、主剤と副剤の二種類の液剤からなり、
前記上金型及び前記下金型のいずれか一方の前記接着剤は前記主剤であり、他方の前記接着剤は前記副剤である請求項5に記載の接着剤付与装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の接着剤付与装置を利用し、前記鋼板を積層接着する方法であって、
前記ノズル間隔調整装置によって、前記ノズル先端部が前記鋼板素材に最も近接するときの前記鋼板素材との間隔を調整する第一工程と、
前記第一工程の後、前記鋼板素材に前記接着剤を付与する第二工程と、
前記第二工程の後、打ち抜かれた前記鋼板を積層接着する第三工程を備える鋼板接着方法。
【請求項8】
請求項5に記載の接着剤付与装置を利用し、前記鋼板を積層接着する方法であって、
前記上金型に備えられた前記ノズル間隔調整装置によって、前記ノズル先端部が前記鋼板素材の前記第一面に最も近接するときの前記鋼板素材との第一間隔を調整する第一工程と、
前記下金型に備えられた前記ノズル間隔調整装置によって、前記ノズル先端部が前記鋼板素材の前記第二面に最も近接するときの前記鋼板素材との第二間隔を調整する第二工程と、
前記第一工程及び前記第二工程の後、前記鋼板素材に前記接着剤を付与する第三工程と、
前記第三工程の後、外形が打ち抜かれた前記鋼板を積層接着する第四工程を備える鋼板接着方法。
【請求項9】
請求項6に記載の接着剤付与装置を利用し、前記鋼板を積層接着する方法であって、
前記上金型に備えられた前記ノズル間隔調整装置によって、前記ノズル先端部が前記鋼板素材の前記第一面に最も近接するときの前記鋼板素材との第一間隔を調整する第一工程と、
前記下金型に備えられた前記ノズル間隔調整装置によって、前記ノズル先端部が前記鋼板素材の前記第二面に最も近接するときの前記鋼板素材との第二間隔を調整する第二工程と、
前記接着剤付与装置によって、前記第一面に前記主剤を付与する第三工程と、
前記主剤が付与された位置に対応し、前記第二面に前記副剤を付与する第四工程と、
前記第四工程の後、外形が打ち抜かれた前記鋼板を積層接着する第五工程を備える鋼板接着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鋼板製造装置に搭載する接着剤付与装置、及び鋼板を接着して積層する鋼板接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機装置の電機子を構成する積層鋼板を製造する装置において、接着剤塗布装置について種々の提案があった。例えば、特許文献1による概要を説明すると以下のようである。積層鋼板の製造装置が、上金型と下金型により、間欠移送するフープ材から鋼板を打抜く順送り金型装置を備える。下金型内に設けられ、フープ材下面の対応部位に接着剤を塗布する接着剤塗布装置を備える。接着剤塗布装置は、接着剤塗布面に向けて接着剤を吐出する吐出孔を有する接着剤吐出部と、接着剤吐出部に対して常時所定圧力で接着剤を供給する接着剤供給部とを有する。上金型が降下してストリッパープレートでフープ材を下型上面へ当接させたときに接着剤をフープ材に転写させる構成である。さらに、吐出孔の先端は、上金型が降下してストリッパープレートにより帯状薄鋼板を下金型上面へと当接させた際に、帯状薄鋼板から離間している構成とすることができる、と記載されている。
【0003】
これによれば、接着剤塗布装置は、常時所定圧力で接着剤を供給する接着剤供給部を有し、上金型が降下するときに接着剤をフープ材に転写させるので、接着剤によって鋼板を接着した積層鋼板を製造することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-124828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の接着剤塗布装置は、接着剤吐出部から常時所定圧力で接着剤が供給される。接着剤塗布装置が、フープ材或いは鋼板に接触すると接着剤が塗布される。すなわち、上金型が降下してフープ材或いは鋼板に接触すると接着剤が塗布されてしまい、接着剤を塗布するタイミングのコントロールが難しいという課題がある。特に、上金型が降下してストリッパープレートにより帯状薄鋼板を下金型上面へと当接させた際、吐出孔の先端と帯状薄鋼板との隙間は一定であり、調整することができない。すなわち、接着剤の塗布量を調整することが難しいという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、使用する接着剤の特性に応じて付与量を調整可能な接着剤付与装置を提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、使用する接着剤の特性に応じて付与量を調整可能な接着剤付与装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る接着剤付与装置は、鋼板素材を打ち抜くため、対となる上金型と下金型が鉛直方向に沿って相対的に移動可能な金型を備え、前記鋼板素材から所定の形状に打抜き形成する鋼板を積層して、積層鋼板を製造する製造装置に組み込まれる接着剤付与装置であって、前記上金型及び前記下金型の少なくとも一方に備えられ、前記鋼板素材に接着剤を付与するノズルユニットと、前記接着剤を貯留する接着剤貯留部と、前記接着剤貯留部から前記ノズルユニットへ前記接着剤を供給する供給管と、前記ノズルユニットに形成され、前記接着剤を前記鋼板素材に付与するノズル先端部と、前記ノズル先端部が前記鋼板素材に最も近接するときの前記鋼板素材との間隔を調整するノズル間隔調整装置を備える。
【0009】
この場合、接着剤付与装置は、ノズル間隔調整装置を備えるので、ノズル先端部が鋼板素材に最も近接するときの間隔を調整することができる。よって、ノズル先端部が鋼板素材と接触して損傷することを防止し、かつ鋼板素材に対して適量の接着剤を付与することができる。
【0010】
また、前記接着剤付与装置の前記ノズル間隔調整装置は、間隔調整カムと、前記間隔調整カムに接触可能であり、該間隔調整カムによって前記ノズルユニットの移動方向へ移動可能な間隔調整ブロックを備えてもよい。
【0011】
この場合、接着剤付与装置のノズル間隔調整装置は、間隔調整カムを作動させて間隔調整ブロックを移動させることにより、ノズルユニットと鋼板素材との間隔を調整することができる。
【0012】
また、前記接着剤付与装置は、前記ノズル間隔調整装置と前記ノズルユニットに挟まれて配置され、前記ノズルユニットが前記鋼板素材に前記接着剤を付与する状態と付与しない状態とを切り替え可能なノズル切替装置を備え、前記ノズル切替装置は、切替作動カムと切替受動カムと保持部材を備え、前記切替作動カムは、前記上金型の移動に伴って前記ノズルユニットが移動する方向に対して垂直方向に可動し、前記切替受動カムは、前記切替作動カムの作動によって、前記上金型の移動に伴って前記ノズルユニットが移動する方向に沿って可動し、前記保持部材は、前記上金型の移動に伴って前記ノズルユニットが移動する方向において、前記切替作動カム又は/及び前記切替受動カムを保持してもよい。
【0013】
この場合、接着剤付与装置は、ノズル切替装置によってノズルユニットが接着剤を付与する状態と付与しない状態とを切り替えることができる。また、保持部材は、上金型の移動に伴ってノズルユニットが移動する方向において、切替作動カム又は/及び切替受動カムを保持するので、切替受動カムに対して切替作動カムがスムーズに可動する。
【0014】
また、前記接着剤付与装置は、前記ノズルユニットと直接的に又は間接的に接触し、該ノズルユニットが前記鋼板素材から離間する方向へ移動するよう、弾性力によって押圧力を付与するキラーピンを備え、前記ノズルユニットは、直接的に又は間接的に前記ノズル間隔調整装置と接触する状態が維持されてもよい。
【0015】
この場合、前記接着剤付与装置のノズルユニットは、キラーピンによって直接的又は間接的にノズル間隔調整装置と接触する状態が維持されるので、高速に動作したときもノズルユニットと鋼板素材との間隔を安定した状態に維持することができる。
【0016】
また、前記接着剤付与装置は、前記鋼板素材を挟んで、前記上金型と前記下金型に備えられ、前記上金型と前記下金型とが近接する方向へ移動すると、前記鋼板素材の第一面及び該第一面の裏面である第二面に前記接着剤が付与されてもよい。
【0017】
この場合、接着剤付与装置は、鋼板素材を挟んで、上金型と下金型に備えられるので、接着剤付与に要する時間を短縮することができる。
【0018】
また、前記接着剤は、主剤と副剤の二種類の液剤からなり、前記上金型及び前記下金型のいずれか一方の前記接着剤は前記主剤であり、他方の前記接着剤は前記副剤でもよい。
【0019】
この場合、上金型及び下金型のいずれか一方の接着剤は主剤であり、他方の接着剤は副剤なので、鋼板を積層すると主剤と副剤とが接触して硬化反応して接着する。よって、接着剤付与装置は、鋼板を積層する前に接着剤が乾燥或いは硬化して接着能力が低減することを防止できる。
【0020】
本発明の第二の態様に係る第一の鋼板接着方法は、前記接着剤付与装置を利用し、前記鋼板を積層接着する方法であって、前記ノズル間隔調整装置によって、前記ノズル先端部が前記鋼板素材に最も近接するときの前記鋼板素材との間隔を調整する第一工程と、前記第一工程の後、前記鋼板素材に前記接着剤を付与する第二工程と、前記第二工程の後、打ち抜かれた前記鋼板を積層接着する第三工程を備える。
【0021】
これによれば、ノズル先端部と鋼板素材の第一面との間の第一間隔、及び第二面との間の第二間隔を調整した後に接着剤を付与できる。よって、第一面と第二面のそれぞれに対して適量の接着剤を付与し、鋼板を積層接着することができる。
【0022】
本発明の第二の態様に係る第二の積層接着方法は、前記接着剤付与装置を利用し、前記鋼板を積層接着する方法であって、前記上金型に備えられた前記ノズル間隔調整装置によって、前記ノズル先端部が前記鋼板素材の前記第一面に最も近接するときの前記鋼板素材との第一間隔を調整する第一工程と、前記下金型に備えられた前記ノズル間隔調整装置によって、前記ノズル先端部が前記鋼板素材の前記第二面に最も近接するときの前記鋼板素材との第二間隔を調整する第二工程と、前記第一工程及び前記第二工程の後、前記鋼板素材に前記接着剤を付与する第三工程と、前記第三工程の後、外形が打ち抜かれた前記鋼板を積層接着する第四工程を備える。
【0023】
これによれば、ノズル先端部と鋼板素材の第一面との間の第一間隔、及び第二面との間の第二間隔をそれぞれ調整した後に接着剤を付与できる。よって、第一面に付与する主剤に適した第一間隔と、第二面に付与する副剤に適した第二間隔を調整した後にそれぞれの接着剤を付与するので、適量の主剤を第一面に付与し、適量の副剤を第二面に付与し、鋼板を積層接着することができる。
【0024】
本発明の第二の態様に係る第三の積層接着方法は、前記接着剤付与装置を利用し、前記鋼板を積層接着する方法であって、前記上金型に備えられた前記ノズル間隔調整装置によって、前記ノズル先端部が前記鋼板素材の前記第一面に最も近接するときの前記鋼板素材との第一間隔を調整する第一工程と、前記下金型に備えられた前記ノズル間隔調整装置によって、前記ノズル先端部が前記鋼板素材の前記第二面に最も近接するときの前記鋼板素材との第二間隔を調整する第二工程と、前記接着剤付与装置によって、前記第一面に前記主剤を付与する第三工程と、前記主剤が付与された位置に対応し、前記第二面に前記副剤を付与する第四工程と、前記第四工程の後、外形が打ち抜かれた前記鋼板を積層接着する第五工程を備える。
【0025】
これによれば、ノズル先端部と鋼板素材の第一面との間の第一間隔、及び第二面との間の第二間隔をそれぞれ調整した後に接着剤を付与できる。よって、第一面に付与する主剤に適した第一間隔と、第二面に付与する副剤に適した第二間隔を調整した後にそれぞれの接着剤を付与するので、適量の主剤を第一面に付与し、適量の副剤を第二面に付与し、鋼板を積層接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の金型4を示す平面図である。
図2図1における断面I-Iを示し、第一ステーションP1の断面図である。
図3図2におけるA部詳細図であり、第一回転駆動部7を示す断面図である。
図4図3におけるD部詳細図であり、(a)は上金型2が上死点にある状態で第一パンチ駆動部8と第一ダイ駆動部9とが回転する状態を示し、(b)は上金型2が下死点にあって第一パンチ駆動部8と第一ダイ駆動部9の回転が停止した状態を示す。
図5図3における断面V-Vを示す断面図である。
図6図2におけるB部詳細図であり、第一ステーションP1が、鋼板31の外形以外の部分を打ち抜く場合の第一パンチユニット5と第一ダイユニット6を示す断面図である。
図7図2におけるB部詳細図であり、第一ステーションP1が、鋼板31の外形を打ち抜く場合の第一パンチユニット5と第一ダイユニット6を示す断面図である。
図8図1における断面II-IIを示し、第四ステーションP4を示す断面図であり、第四ダイユニット22のみが回転する場合を示す。
図9図1における断面III-IIIを示し、第二ステーションP2を示す断面図である。
図10図9におけるVI-VIを示し、第二ステーションP2の一部断面を含む平面図である。
図11図10における断面VII-VIIを示し、第二ステーションP2の一部を抜き出した断面図である。
図12図10における断面VIII-VIIIを示し、第二ステーションP2の一部を抜き出した断面図であり、(a)は第二パンチが打ち抜き可能な状態を示し、(b)は第二パンチが打ち抜き不可能な状態を示す。
図13】本発明の積層鋼板製造装置1によって製造された積層鋼板32の例を示し、(a)は斜視図であり、(b)は平面図であり、(c)は側面図である。
図14図1における断面IV-IVを示し、接着剤付与装置40を示す断面図であり、ノズル先端部45から鋼板素材30に接着剤を付与する状態を示す。
図15図14に示す接着剤付与装置40のうち、上金型2に関する部分を抜粋した断面図であり、ノズル先端部45から鋼板素材30に接着剤を付与する状態を示す。
図16図14に示す接着剤付与装置40のうち、上金型2に関する部分を抜粋した断面図であり、ノズル先端部45から鋼板素材30に接着剤を付与しない状態を示す。
図17図14に示す接着剤付与装置40のうち、上金型2に関する部分を抜粋した断面図であって、鋼板素材30からノズル先端部45を離間する状態を示すが、キラーピン49が切替受動カム46bを押圧しない場合に接着剤付与装置40が自重によって下側に寄ってしまうことを説明する図である。
図18図14に示す接着剤付与装置40のうち、下金型3に関する部分を抜粋した断面図であり、ノズル先端部45から鋼板素材30に接着剤を付与する状態を示す。
図19図14に示す接着剤付与装置40のうち、下金型3に関する部分を抜粋した断面図であり、ノズル先端部45から鋼板素材30に接着剤を付与しない状態を示す。
図20図14に示す接着剤付与装置40のうち、下金型3に関する部分を抜粋した断面図であって、鋼板素材30からノズル先端部45を離間する状態を示すが、キラーピン49が切替受動カム46bを押圧しない場合に接着剤付与装置40が自重によって下側に寄ってしまうことを説明する図である。
図21図14における接着剤付与装置40のうち、ノズルユニット42を示す部分拡大図であって、鋼板素材30に対して接着剤41を付与しない状態を示し、(a)は上金型が上死点にあるときを示し、(b)は上金型が下降し、ノズル先端部45から接着剤41が露出している状態を示す。
図22図14における接着剤付与装置40のうち、ノズルユニット42を示す部分拡大図であって、鋼板素材30に対して接着剤41を付与する動作を示し、(a)は上金型2が下死点にあるときを示し、(b)は(a)のE部詳細図である。
図23図14における接着剤付与装置40のうち、ノズルユニット42を示す部分拡大図であって、鋼板素材30に対して接着剤41を付与した後に、上金型2が上死点に復帰した状態を示す。
図24】本発明の接着剤付与装置40によって鋼板素材30及び鋼板31に接着剤41を付与する位置を示し、(a)は鋼板31に接着剤41を付与する位置を示し、(b)は鋼板素材30に接着剤41を付与する位置を示す。
図25】積層鋼板製造装置1の制御装置500を示すブロック図である。
図26】従来の積層鋼板300を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した積層鋼板製造装置1、及び積層鋼板製造方法を説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いるものである。図面に記載する装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0028】
<<積層鋼板製造装置1の説明>>
本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置1を説明する。積層鋼板製造装置1は、鋼板素材30から所定の形状に打抜き形成する鋼板31を積層して、積層鋼板32を製造する製造装置である。図2等に示すように、積層鋼板製造装置1は、鋼板素材30に対して打ち抜きを行うため、対となる上金型2と下金型3が鉛直方向に沿って相対的に移動可能な金型4を備える。図1に示すように、金型4は、第一ステーションP1を備える。
【0029】
<<第一ステーションP1の説明>>
図2に示すように、第一ステーションP1は、第一プレス部T1と第一回転駆動部7を備える。第一プレス部T1は、上金型2に第一パンチユニット5と、下金型3に第一ダイユニット6を備える。第一回転駆動部7は、第一プレス部中心C1の周りに第一パンチユニット5を回転させる第一パンチ駆動部8と、第一ダイユニット6を回転させる第一ダイ駆動部9を備える。図1に示す例では、第一ステーションP1は、鋼板31の外形を打ち抜く第四ステーションP4の搬送方向の上流側に配置される。
【0030】
<第一回転駆動部7の説明>
図3を参照して、第一回転駆動部7を説明する。第一回転駆動部7は、第一パンチユニット5を回転させる第一パンチ駆動部8と、第一ダイユニット6を回転させる第一ダイ駆動部9を備える。第一パンチ駆動部8と第一ダイ駆動部9は、鉛直方向に延びる駆動部中心Cdの周りに回転可能である。駆動部中心Cdから径方向に離間した位置において、第一パンチ駆動部8と第一ダイ駆動部9のいずれか一方に駆動ガイドピン10を備え、他方に駆動ガイドピン孔11を備える。図3に示す例では、駆動ガイドピン10が第一パンチ駆動部8にあり、駆動ガイドピン孔11が第一ダイ駆動部9にある。
【0031】
上金型2と下金型3とが相対的に移動するときに、駆動ガイドピン10は、駆動ガイドピン孔11との間で常時係合状態を維持しながら鉛直方向に沿って摺動支持される。第一パンチ駆動部8と第一ダイ駆動部9のうちのいずれか一方が回転すると、他方は駆動ガイドピン10と駆動ガイドピン孔11との係合によって従動回転する。鋼板素材30を打ち抜くとき、毎回打ち抜く度に、或いは所定回数打ち抜く毎に、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6とをそれぞれ一方向に第一角度θ1回転させる。
【0032】
図3に示す例では、第一回転駆動部7は、下金型3に固定され、駆動部中心Cdを中心とする下駆動軸12と、上金型2に対して駆動部中心Cdの周りに回転可能に支持される上駆動軸13を備える。第一ダイ駆動部9は、下駆動軸12の周りに回転可能であり、第一パンチ駆動部8は、上駆動軸13と一体的に形成されて上金型2に対して回転可能である。第一ダイ駆動部9が回転すると、第一パンチ駆動部8が従動回転する。
【0033】
次に、図3を参照して、第一回転駆動部7の構成を詳細に説明する。まず、第一ダイ駆動部9を説明する。第一ダイ駆動部9の回転支軸である下駆動軸12は、下金型3の下駆動軸保持ブロック73にボルト74によって固定される。下駆動軸12には、それぞれラジアルベアリング70を介して、下から順に第一ダイ側プーリ72、駆動源プーリ68、下側回転体76が回転可能に取り付けられる。第一ダイ側プーリ72と下駆動軸保持ブロック73の間には、スラストベアリング57が取り付けられ、第一ダイ側プーリ72の回転負荷を低減する。第一ダイ側プーリ72と駆動源プーリ68と下側回転体76とは、それぞれ上下方向においてボルト66によって締結され、一体的に回転する。
【0034】
図2及び図3に示すように、駆動源プーリ68には駆動源タイミングベルト67が掛けられ、第一ダイ駆動部9に第一回転駆動源502の回転が伝えられる。第一回転駆動源502は、通常サーボモータが使用される。第一ダイ側プーリ72には第一ダイタイミングベルト71が掛けられ、図6に示す第一ダイユニット6の第一ダイ側従動プーリ94に回転が伝えられる。駆動源プーリ68と第一ダイ側プーリ72には、それぞれベルトガイド69が取り付けられ、それぞれのタイミングベルトのズレを防止する。下駆動軸12の上端部は、ボルト77によって上昇防止板79が締結され、上昇防止板79は下側回転体76との間にスラストベアリング57が介される。
【0035】
次に、駆動ガイドピン10と駆動ガイドピン孔11を説明する。図5に示すように、下側回転体76は、駆動部中心Cdを中心とする周方向の複数箇所に駆動ガイドピン孔11を備える。図5に示す例では、周方向において同一半径で均等の角度間隔で四箇所に備えられる。なお、駆動ガイドピン孔11の数に制限は無く、最低一箇所にあればよい。図4に示すように、駆動ガイドピン孔11は、下側回転体76に取り付けられるガイドブッシュ65と、ガイドブッシュ65の内側に取り付けられるボールリテナー63を備える。ボールリテナー63と駆動源プーリ68のベルトガイド69との間にはバネ64が取り付けられる。
【0036】
第一パンチ駆動部8の駆動ガイドピン10は、駆動ガイドピン孔11に対して上下方向に摺動可能に取り付けられる。駆動ガイドピン10は、駆動ガイドピン孔11において、ボールリテナー63を介してガイドブッシュ65に支持される。図4(a)に示すように、上金型2が下金型3に対して上死点にあるとき、駆動ガイドピン10は上側へ移動する。その際、ボールリテナー63は、バネ64の弾性力によって上側へ押し上げられ、駆動ガイドピン10との間の摺動状態が維持される。図4(b)に示すように、上金型2が下金型3に対して下死点にあるとき、駆動ガイドピン10は下側へ移動する。その際、ボールリテナー63は、駆動ガイドピン10の移動に伴ってバネ64の弾性力に逆らいながら下側へ移動し、駆動ガイドピン10との間の摺動状態が維持される。以上説明した駆動ガイドピン10と駆動ガイドピン孔11とは、上金型2と下金型3との間の相対的な移動に関わらず、常時摺動を伴って係合関係が維持される。
【0037】
次に、第一パンチ駆動部8を説明する。図3に示すように、上駆動軸13は、ラジアルベアリング52及びスラストベアリング57を介して上金型2の上側プーリ保持ブロック53に摺動可能に支持される。図2に示すように、上側プーリ保持ブロック53は上ダイセット24に固定される。プーリ保持回転体55の一部には第一パンチ側駆動プーリ50が固定され、第一パンチタイミングベルト56が掛けられる。第一パンチタイミングベルト56は、図6に示すように、第一パンチユニット5の第一パンチ側従動プーリ83に連結され、第一パンチ側駆動プーリ50の回転が伝えられる。
【0038】
図3に示すように、第一パンチ側駆動プーリ50の下側にはプーリ保持回転体55が取り付けられ、ボルト60によって互いに締結される。プーリ保持回転体55は、上下の二部品がボルト59によって一体化されている。さらに、プーリ保持回転体55の下側は、上側駆動回転体61が取り付けられ、ボルト60によって互いに締結される。上側駆動回転体61には、すでに説明した駆動ガイドピン10が固定される。プーリ保持回転体55の下側は、スラストベアリング57を介して上側プーリ保持ブロック53に載置され、上側駆動回転体61は、ラジアルベアリング58を介して上側プーリ保持ブロック53に摺動支持される。上駆動軸13の上側は、ベアリングカバー51が取り付けられ、ラジアルベアリング52の抜け止めとなる。
【0039】
以上説明した第一回転駆動部7の構成により、第一回転駆動源502が駆動されると、駆動源プーリ68に回転が伝達され、同時に第一ダイ駆動部9の第一ダイ側プーリ72が回転して、図6に示す第一ダイユニット6の第一ダイ側従動プーリ94に回転が伝達される。駆動源プーリ68の回転により、駆動ガイドピン孔11に係合する駆動ガイドピン10を介して第一パンチ駆動部8の第一パンチ側駆動プーリ50が従動回転し、図6に示す第一パンチユニット5の第一パンチ側従動プーリ83に伝達される。
【0040】
<第一回転駆動部7の効果>
以上説明した積層鋼板製造装置1における、第一ステーションP1の第一回転駆動部7によれば、以下の効果を奏する。図3から図5までに示すように、積層鋼板製造装置1は、上金型2と下金型3とが相対的に移動するときに、駆動ガイドピン10は、駆動ガイドピン孔11との間で常時係合状態を維持しながら鉛直方向に沿って摺動支持される。第一パンチ駆動部8と第一ダイ駆動部9のうちのいずれか一方が回転すると、他方は駆動ガイドピン10と駆動ガイドピン孔11との係合部によって従動回転する。よって、積層鋼板製造装置1の第一ステーションP1は、第一パンチ駆動部8と第一ダイ駆動部9とが周方向の位相ずれが少ない状態で回転するので、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6は、互いに周方向の位相ずれが少ない状態で鋼板素材30を打ち抜くことができる。
【0041】
また、図3に示すように、積層鋼板製造装置1の第一ステーションP1は、第一ダイ駆動部9が下駆動軸12の周りに回転可能であり、第一パンチ駆動部8が上駆動軸13と一体的に形成されて上金型2に対して回転可能である。第一ダイ駆動部9が回転すると、第一パンチ駆動部8が従動回転するので、第一ダイ駆動部9と第一パンチ駆動部8は安定して回転する。よって、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6を安定して回転させることができる。
【0042】
仮に、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6とが、互いに周方向の位相ずれが大きい状態にあると、鋼板素材30を打ち抜く度に第一パンチ5aと第一ダイ6aとが干渉して損傷する。すると、鋼板31の打ち抜き精度が低下し、積層鋼板製造装置1のメンテナンスを行う頻度が高くなる。これに対し、本発明の積層鋼板製造装置1における第一ステーションP1の構成によれば、鋼板31の打ち抜き精度を高め、メンテナンスの頻度を少なくすることができる。
【0043】
<第一プレス部T1の説明>
次に、第一ステーションP1における第一プレス部T1を説明する。第一プレス部T1の第一パンチユニット5及び第一ダイユニット6は、鋼板31の外形を除く部分を打ち抜き可能な構成にするか、或いは鋼板31の外形を打ち抜き可能な構成にすることができる。図1及び図6に示す例では、第一ステーションP1の第一プレス部T1が、鋼板31の外形を除く部分を打ち抜き可能な場合を示す。なお、第一ステーションP1は、鋼板31の外形を打ち抜き可能な場合、鋼板31を打ち抜くための最終ステーションとなる。この場合、第一ステーションP1は、後述する第四ステーションP4に相当する位置に配置されてもよい。
【0044】
<第一プレス部T1が、第一実施形態の場合の構成>
次に、第一プレス部T1が第一実施形態の場合を説明する。第一実施形態の第一プレス部T1は、鋼板31の外形を除く部分を打ち抜き可能である。図1に示すように、鋼板素材30は帯状であり、積層鋼板製造装置1は、金型4が鋼板素材30の搬送方向において第一ステーションP1よりも上流側に第三ステーションP3を備える。第三ステーションP3において、鋼板素材30は開口部33が形成される。開口部33は、第一ステーションP1へ搬送されたときに、第一プレス部中心C1を含む所定範囲に開口するよう形成される。
【0045】
第一プレス部T1は、第一パンチユニット5及び第一ダイユニット6のうちの一方にパイロットピン14を備え、他方にパイロットピン孔15を備える。図6に示す例では、第一パンチユニット5がパイロットピン14を備え、第一ダイユニット6がパイロットピン孔15を備える。なお、図示しないが、第一パンチユニット5がパイロットピン孔15を備え、第一ダイユニット6がパイロットピン14を備えてもよい。パイロットピン14及びパイロットピン孔15は、鋼板素材30に形成された開口部33の内部に相当する位置に配置される。パイロットピン14は、上金型2と下金型3とが相対的に移動して第一パンチユニット5が鋼板素材30を打ち抜く度毎に、パイロットピン孔15に挿抜される。
【0046】
図2及び図3に示すように、第一パンチユニット5は第一パンチ駆動部8によって回転駆動され、第一ダイユニット6は第一ダイ駆動部9によって回転駆動される。すると、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6との間には、周方向において若干の位相ずれが生じる場合がある。これに対し、パイロットピン14とパイロットピン孔15とが挿抜されることにより、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6との位相ずれが解消される。
【0047】
図1及び図6に示す例では、第一ステーションP1において、第一加工部35にスロット36が形成される。第一パンチユニット5と第一ダイユニット6は、スロット36を打ち抜くとき、毎回打ち抜く度に、或いは所定回数打ち抜く毎に、それぞれ一方向に第一角度θ1回転する。例えば、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6が、毎回打ち抜く度に第一角度θ1回転するとき、下流側に搬送される鋼板素材30は、スロット36が第一角度θ1ずつ位相差を有する状態となる。
【0048】
次に、図6を参照して第一プレス部T1を詳細に説明する。第一プレス部T1は、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6を備える。まず、第一パンチユニット5を説明する。第一パンチユニット5は、上金型2に形成され、第一パンチ駆動部8から回転駆動を受けて回転する。第一パンチ側従動プーリ83は、第一パンチタイミングベルト56の動きによって第一プレス部中心C1の周りに回転し、第一パンチユニット5を回転させる。
【0049】
第一パンチ側従動プーリ83の上側は、上金型2のバックアッププレート80の下側に配置される第一パンチ上部回転体81に締結され、下側は、第一パンチ保持回転体82に締結されて一体的に回転可能である。第一パンチ上部回転体81と第一パンチ保持回転体82は、上金型2との間にラジアルベアリング58を介して第一プレス部中心C1の周りに回転可能である。また、第一パンチ側従動プーリ83は、上金型2の一部と対向する下側にスラストベアリング57を介することで、上下方向の下側から支持され、回転可能である。
【0050】
図6に示すように、第一パンチユニット5は、さらにストリッパ回転体90を備える。ストリッパ回転体90は、上金型2のバックアッププレート84とストリッパホルダ97との間に配置される上側動力伝達回転体87との間で締結される。ストリッパ回転体90と上側動力伝達回転体87は、位置決めピン88によって位置決めされる。上側動力伝達回転体87は、ストリッパホルダ97との間にスラストベアリング57とラジアルベアリング58を介して、第一プレス部中心C1の周りに回転可能に支持される。
【0051】
第一パンチ5aは、上下方向において第一パンチ保持回転体82、上側動力伝達回転体87、及びストリッパ回転体90に支持され、上金型2の移動に伴って移動する。第一パンチ5aは、第一パンチ保持回転体82に固定されるパンチ用キープレート96がパンチ切欠き部5bと係合し、上金型2の移動に伴って移動する。
【0052】
パイロットピン14は、第一パンチ側従動プーリ83と上側動力伝達回転体87とストリッパ回転体90とを貫通する。パイロットピン14は、第一パンチ保持回転体82に取り付けられるガイドブッシュ86に支持され、上金型2の移動に伴って、第一ダイユニット6の第一ダイ6aに取り付けられるガイドブッシュ89に挿抜される。ガイドブッシュ89の内側が、パイロットピン孔15である。図6に示すように、パイロットピン14は、第一パンチ5aの内側であって、開口部33に相当する位置に形成される。同様に、パイロットピン孔15は、第一ダイ6aの内側であって、開口部33に相当する位置に形成される。パイロットピン14とパイロットピン孔15は一対備えてもよいし、複数対備えてもよい。
【0053】
第一パンチ側従動プーリ83等の部材は、上金型2と同期して移動するが、ストリッパ回転体90は、上金型2が下金型3に向かって移動する際、第一パンチ5aが鋼板素材30を打ち抜く前に鋼板素材30に接触して押圧する。また、第一パンチ側従動プーリ83等の部材とストリッパ回転体90等の部材は、いずれも第一パンチ5a及びパイロットピン14と共に、第一プレス部中心C1を中心として同期回転する。パイロットピン14は、第一パンチ5a及びストリッパ回転体90が鋼板素材30に接するよりも早いタイミングでパイロットピン孔15に挿入する。
【0054】
次に、図6を参照して第一ダイユニット6を説明する。第一ダイ6aは、第一ダイ回転体93に固定され、第一ダイ回転体93は、ラジアルベアリング58を介して下金型3に回転可能に支持される。第一ダイ側従動プーリ94は、第一ダイ回転体93の下側に締結される。第一ダイ側従動プーリ94はベルトガイド54を備え、第一ダイタイミングベルト71が掛けられる。第一ダイ駆動部9が駆動されると、第一ダイタイミングベルト71によって第一ダイ側従動プーリ94が回転し、第一ダイ回転体93と共に第一ダイ6aが回転する。下金型3はベアリングボルダ95を備え、第一ダイ側従動プーリ94は、ラジアルベアリング70を介して下金型3に対して回転可能である。第一パンチユニット5と第一ダイユニット6は、第一プレス部中心C1を中心として回転可能である。
【0055】
<第一プレス部T1が、第一実施形態の場合の効果>
以上説明した第一プレス部T1が、第一実施形態の場合、以下の効果を奏する。図6に示すように、積層鋼板製造装置1の第一プレス部T1は、第一ステーションP1が第一パンチユニット5及び第一ダイユニット6のうちの一方にパイロットピン14を備え、他方にパイロットピン孔15を備え、鋼板素材30に形成された開口部33の内部に相当する位置に配置される。パイロットピン14は、第一プレス部T1が鋼板素材30を打ち抜く度毎に、パイロットピン孔15に挿抜される。よって、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6とは、鋼板素材30を打ち抜く度に、周方向の位相ずれが矯正されるので、位相誤差が蓄積することを防止できる。さらに、パイロットピン14とパイロットピン孔15は、第一プレス部中心C1を含む所定の範囲に形成されるので、鋼板31が形成される範囲外に形成される場合に比べて、金型4をコンパクトにすることができる。
【0056】
また、積層鋼板製造装置1の第一プレス部T1は、鋼板31の外形を除く部分の打ち抜きが可能である。図13に示すように、第一ステーションP1において打ち抜いたスロット36は、積層したときに積層方向に対して斜め方向の形状を形成することができる。
【0057】
図13に示す例のように、積層鋼板32が電機子のステーターの場合、巻線がスロット36に巻かれる。スロット36が積層方向に対して斜めになっているので、巻線もスロット36に沿って斜めに巻かれる。よって、積層鋼板32によるステーターは、永久磁石が形成されているローターと組み合わせて使用する場合、ローターをスムーズに回転させることができる。なお、従来、図26に示す積層鋼板300は、スロット301及び外周の切欠き302が積層方向に沿った形状であった。
【0058】
<第一実施形態の第一プレス部T1を備えた第一ステーションP1に第四ステーションP4を組合せる場合の説明>
次に、第一実施形態の第一プレス部T1を備えた第一ステーションP1に、第四ステーションP4を組合せる場合を説明する。図1に示すように、鋼板素材30は帯状であり、金型4は、鋼板素材30の搬送方向において第一ステーションP1よりも下流側に第四ステーションP4を備える。図8に示すように、第四ステーションP4は、鋼板31の外形を打ち抜き可能であり、上金型2に第四パンチユニット21と、下金型3に第四ダイユニット22を備える。
【0059】
第四パンチユニット21と第四ダイユニット22のうち、少なくとも第四ダイユニット22は、第四プレス部中心C4の周りに回転可能であり、鋼板31を打ち抜き形成するとき、鋼板31を一枚打ち抜く度に、或いは、鋼板31を所定枚数打ち抜く毎に、第四ダイユニット22を一方向に第二角度θ2回転させる。このとき、第一ステーションP1において第一角度θ1の回転をする方向と、第四ステーションP4において第二角度θ2の回転をする方向とは同一方向でもよいし、互いに逆方向でもよい。第四ステーションP4において鋼板31の外形が打ち抜かれて積層されると、スロット36は積層方向に対してスキュー角度を有して形成される。スキュー角度は、第一角度θ1と第二角度θ2との組合せによって決定される。
【0060】
次に、図8を参照して第四ステーションP4を詳細に説明する。第四ステーションP4は、鋼板31の外形を打ち抜くステーションである。第四ステーションP4は、第四プレス部T4と第四回転駆動部23を備える。図8に示す例は、第四パンチユニット21が回転しない構造であり、第四ダイユニット22のみが第四プレス部中心C4の周りに回転可能である。第四ダイユニット22は、すでに説明した第一ダイユニット6の基本的な構成と同様であるが、打ち抜かれた鋼板31が積層されるため、鋼板案内路133を備える。
【0061】
第四回転駆動部23は、第四回転駆動源504であるサーボモータと、第四ダイ駆動プーリ134と、第四ダイタイミングベルト129を備える。第四パンチユニット21は、上ダイセット24に固定された第四パンチプレート120に第四パンチ21aが固定され、上金型2の移動に伴って移動する。また、ストリッパホルダ122に固定されたストリッパープレート123を備える。
【0062】
第四ダイユニット22は、第四ダイ回転体126に固定された第四ダイ22aが、下ダイセット25との間にラジアルベアリング52を介して回転可能である。第四ダイ側従動プーリ130は第四ダイ回転体126に固定され、下ダイセット25との間にスラストベアリング57を介して回転可能である。第四ダイタイミングベルト129は、第四ダイ駆動プーリ134と第四ダイ側従動プーリ130に掛けられ、第四回転駆動源504の回転が第四ダイ側従動プーリ130に伝達され、第四ダイユニット22が回転する。なお、第四プレス部T4は、第四ダイユニット22のみが回転する構成を説明したが、第四パンチユニット21が第四ダイユニット22に同期回転してもよい。この場合、後述する第二実施形態の第一プレス部T1の構成と第一回転駆動部7の構成を適用してもよい。
【0063】
<第一実施形態の第一プレス部T1を備えた第一ステーションP1に第四ステーションP4を組合せる場合の効果>
以上説明した、第一実施形態の第一プレス部T1を備えた第一ステーションP1に第四ステーションP4を組合せる場合、以下の効果を奏する。図1から図6までと、図8を参照して説明したように、積層鋼板製造装置1は、第一ステーションP1にて積層方向において斜め方向に形状を形成可能な状態に鋼板素材30を打ち抜き、第四ステーションP4において転積を伴って鋼板31の外形を打ち抜くことができる。よって、積層鋼板製造装置1は、図13の例に示すように、一部に積層方向に対して斜め方向の形状であるスロット36を形成し、さらに厚み方向の偏差を抑えた積層鋼板32を製造することができる。
【0064】
また、第四ステーションP4において打ち抜かれる鋼板31の形状が、第二角度θ2の回転をさせたときに一致する形状であれば、積層方向に連続する形状である切欠き34aを有する積層鋼板32を形成できる。図13(a)に示すように、スロット36は積層方向に対して斜めに形成され、外周の切欠き34aは積層方向に沿って形成される。すなわち、積層鋼板製造装置1は、積層方向に対して斜め方向に形成される形状と、積層方向に沿って形成される形状とを併せ持つ積層鋼板32を製造することができる。
【0065】
積層鋼板32が電機子のステーターとして使用されるとき、積層方向に沿って形成された切欠き34aは、他部品等への取付が容易となる。仮に、外周の切欠き34aがスロット36と同様に積層方向に対して斜めに形成されていると、他部品等への取付けに支障をきたす場合がある。
【0066】
<第一プレス部T1が、第二実施形態の場合の説明>
次に、図7を参照して、第一プレス部T1が第二実施形態の場合を説明する。第二実施形態の第一プレス部T1は、鋼板31の外形を打ち抜き可能である。第一回転駆動部7は、第一実施形態と共通である。図7を参照して、すでに説明した図6に対して異なる部分を説明する。符号は、図6に対して異なる要素に付している。パイロットピン114は、第一パンチ105aの外側に配置される。同様に、パイロットピン孔115は、第一ダイ106aの外側に配置される。図6に示す例では、第一ダイ6aの内側にも部材が存在するため、パイロットピン孔15を形成できるが、図7に示す例では第一ダイ106aの内側は鋼板案内路133が形成されるので、パイロットピン孔115を形成できないからである。第一ダイ回転体193は、図6の場合と同様に第一ダイ106aを固定し、第一ダイ側従動プーリ94と一体的に回転する。また、第四ダイユニット22と同様に、打ち抜かれた鋼板31を積層するための鋼板案内路133を備える。
【0067】
<第一プレス部T1が、第二実施形態の場合の効果>
以上説明した、第一プレス部T1が、第二実施形態の場合、以下の効果を奏する。図7に示すように、第一ステーションP1は、鋼板31の外形を打ち抜き可能である。第一パンチユニット5及び第一ダイユニット6を回転させながら転積を行うので、鋼板31が点対称形状に限定されることなく積層鋼板32を形成できる。よって、積層鋼板製造装置1は、第一回転駆動部7による効果に加えて、鋼板31の形状に制約が無く、厚み方向に偏差が少ない積層鋼板32を製造できる。
【0068】
<積載方向において不連続な形状を形成する構成の説明>
次に、図1及び、図9から図13までを参照して、積層鋼板32において積層方向に不連続な形状を形成するための構成を説明する。図1に示すように、積層鋼板製造装置1は、第二ステーションP2を備える。第二ステーションP2は、上金型2に第二パンチ16と、第二パンチ16が鋼板素材30を打ち抜き可能な状態とするか否かを選択するパンチ選択装置17を備える。下金型3に第二ダイ18を備える。
【0069】
パンチ選択装置17は、鋼板素材30を打ち抜くとき、毎回打ち抜く度に、或いは所定回数打ち抜く毎に、第二パンチ16が打ち抜き可能な状態と打ち抜き不可能な状態とを選択可能である。
【0070】
図10から図12までに示すように、パンチ選択装置17は、パンチスライドカム226と、パンチスライドカム226によって鉛直方向に押下されるプッシュピン228を備える。プッシュピン228が押下された状態のとき、第二パンチ16が打ち抜き可能な状態となり、プッシュピン228が押下されない状態のとき、第二パンチ16が打ち抜き不可能な状態となる。
【0071】
図9から図13までを参照して、パンチ選択装置17を詳細に説明する。第二ステーションP2は、例として図13に示す不連続な切欠き34bを形成する。図10に示すように、パンチ選択装置17と第二パンチ16及び第二ダイ18は、第二ステーション中心C2を中心に、90度間隔で四箇所に備えられる。
【0072】
図11に示すように、パンチ選択装置17は上ダイセット24に配置され、作動軸ピン230を介してエアシリンダー229によってスライドするパンチスライドカム226を備える。パンチスライドカム226は、スライドカムホルダ227によって水平方向への移動が案内される。パンチスライドカム226が図示の右方向に移動すると、カム凸部226aがプッシュピン228を下方向に押下する。図12(a)は、プッシュピン228がカム凸部226aによって押下された状態を示し、第二パンチ16が鋼板素材30を打ち抜き可能な状態を示す。図12(b)は、プッシュピン228にカム凹部226bが対向した状態を示し、第二パンチ16が鋼板素材30を打ち抜き不可能な状態を示す。
【0073】
図12に示すように、第二パンチ16は一部にパンチキー溝16aが形成され、第二パンチプレート220に固定されるパンチ用キープレート232によって移動量が規制される。パンチ選択装置17は、後述するパンチ制御装置520によって第二パンチ16が鋼板素材30を打ち抜き可能とするか否かが制御される。
【0074】
<積載方向において不連続な形状を形成する構成による効果>
以上説明した、積載方向において不連続な形状を形成する構成によれば以下の効果を奏する。図10から図12までに示すように、積層鋼板製造装置1は、鋼板素材30を打ち抜くとき、毎回打ち抜く度に、或いは所定回数打ち抜く毎に、パンチ選択装置17が第二パンチ16を打ち抜き可能な状態と打ち抜き不可能な状態とに選択可能である。よって、積層鋼板製造装置1は、積層鋼板32における積層方向において、不連続な形状を形成することができる。
【0075】
また、積層鋼板製造装置1は、パンチスライドカム226によってプッシュピン228が押下された状態のとき、第二パンチ16が打ち抜き可能な状態となり、プッシュピン228が押下されない状態のとき、第二パンチ16が打ち抜き不可能な状態となる。よって、第二パンチ16は、打ち抜き可能な状態と不可能な状態とを設定可能であり、積層鋼板32の積層方向において不連続の形状を形成することができる。
【0076】
図13の例に示すように、積層鋼板製造装置1のパンチ選択装置17は、積層方向において不連続な形状である切欠き34bを有する積層鋼板32を製造できる。パンチ選択装置17が無い場合、積層方向に不連続な形状は形成できないため、後加工が必要となる。積層方向に不連続な切欠き34bは、他部品等への組み付けの際に、位置決め或いは装着に使用することができ、有用である。
【0077】
<接着剤付与装置40の説明>
次に、図14から図24までを参照して、接着剤付与装置40を説明する。接着剤付与装置40は、上金型2及び下金型3の少なくとも一方に備えられ、鋼板素材30に接着剤41を付与する装置である。なお、以下の説明では、接着剤付与装置40は、積層鋼板製造装置1に搭載することを前提に説明するが、これに限らず、鋼板素材30に接着剤41を付与し、打ち抜いた鋼板31を積層する積層鋼板32を製造する装置であれば搭載可能である。
【0078】
図14等に示すように、接着剤付与装置40は、上金型2及び下金型3の少なくとも一方に備えられ、鋼板素材30に接着剤41を付与する装置である。接着剤付与装置40は、鋼板素材30に接着剤41を付与するノズルユニット42と、接着剤41を貯留する接着剤貯留部43と、接着剤貯留部43からノズルユニット42へ接着剤41を供給する供給管44を備える。さらに、ノズルユニット42に形成され、接着剤41を鋼板素材30に付与するノズル先端部45と、ノズル先端部45が鋼板素材30に最も近接するときの鋼板素材30との間隔agを調整可能なノズル間隔調整装置47を備える。
【0079】
図14から図23までに示す例は、接着剤付与装置40が上金型2と下金型3の双方に配置される例を示す。図1に示すように、接着剤付与装置40は、鋼板31の外形が打ち抜きされる第四ステーションP4よりも上流側の第五ステーションP5に配置される。接着剤41が速乾性の場合、接着剤付与装置40は可能な限り外形を打ち抜くステーションの直前に配置することが望ましい。なお、接着剤付与装置40は、上金型2又は下金型3のいずれか一方にのみ配置されてもよい。
【0080】
図14を参照して接着剤付与装置40の全体構成を説明する。上金型2に配置される接着剤付与装置40は、接着剤貯留部43が上ダイセット24又は上金型2のいずれかと、下ダイセット25又は下金型3のいずれかに形成され、供給管44によって接着剤41がノズルユニット42へ供給される。
【0081】
ノズルユニット42は、接着剤41を鋼板素材30に付与するノズル先端部45を備え、上金型2と下金型3とが、鉛直方向に沿う方向に移動するのに伴って移動する。図22に示すように、ノズル先端部45は、鋼板素材30に対して最も近接するとき、鋼板素材30との間に間隔agを有し、かつ露出する接着剤41の先端が鋼板素材30に接触する。
【0082】
図21から図23までを参照して、接着剤付与装置40によって鋼板素材30に接着剤41を付与するときの状態を説明する。ノズルユニット42は、供給管44に繋がるノズルハウジング152の内部に、Oリング150とノズル弁149とバネ151を備え、ノズルハウジング152の先端にノズル先端部45を備える。Oリング150は、接着剤41が供給管44から漏出することを防止する。
【0083】
図21(a)は、上金型2が上死点にあるときを示し、接着剤貯留部43からは接着剤41が供給されていない状態を示す。このとき、ノズル弁149は、バネ151の弾性力によってノズル先端部45とは反対側へ押し上げられ、供給管44を塞いだ状態である。図21(b)は上金型2が下金型3に向かって下降する途中段階であり、接着剤貯留部43から接着剤41の供給が始まった状態を示す。このとき、ノズル弁149は接着剤41の圧力によって、バネ151に逆らってノズル先端部45の側へ移動し、接着剤41をノズル先端部45に供給する。ノズル先端部45からは、接着剤41が露出した状態となる。接着剤41は、通常粘性を有し、表面張力によってノズル先端部45から露出した状態が保たれる。
【0084】
図21及び図22に示すように、上金型2に備えられるノズルユニット42は、上金型2の移動に伴って鋼板素材30に向かって移動する。下金型3に備えられるノズルユニット42は、上金型2の移動に連動して鋼板素材30に向かって移動する。下金型3に備えられるノズルユニット42が、上金型2の移動に連動する構成は説明を省略する。
【0085】
ノズルユニット42が上金型2に備えられる場合、図22に示すように、ストリッパープレート上140は、ノズル先端部45が接着剤41を露出する前に鋼板素材30の第一面30aを加圧し、ノズル先端部45と鋼板素材30の第一面30aとの間隔ag1を一定に維持する。ノズル用凹部160は、ストリッパープレート上140に形成され、ノズル先端部45を保護する。
【0086】
ノズルユニット42が下金型3に備えられる場合、図22に示すように、ストリッパープレート下141は、ノズル先端部45が接着剤41を露出する前に鋼板素材30の第二面30bを加圧し、ノズル先端部45と鋼板素材30の第二面30bとの間隔ag2を一定に維持する。ノズル用凹部160は、ストリッパープレート下141に形成され、ノズル先端部45を保護する。
【0087】
図22(a)は、上金型2が下死点に至った状態を示し、接着剤付与装置40が鋼板素材30に接着剤41を付与する状態を示す。図22(b)に示すように、ストリッパープレート上140及びストリッパープレート下141は鋼板素材30と接触した状態であるが、ノズル先端部45は鋼板素材30との間に間隔agを有して離間している。接着剤41は、ノズル先端部45から露出し、鋼板素材30に接触して付与される。このとき、接着剤41の付与量は、接着剤貯留部43からの接着剤供給圧力と、間隔agの量によって制御される。すなわち、接着剤41の量を多くするときは、間隔agを大きくして接着剤供給圧力を高める。逆に、接着剤41の量を少なくするときは、間隔agを小さくして接着剤供給圧力を低くする。
【0088】
図23は、上金型2が上死点へ復帰する状態を示し、接着剤41が鋼板素材30に付与されてノズルユニット42が鋼板素材30から離間した状態を示す。ノズル先端部45は、鋼板素材30に接触すること無く、接着剤41のみが鋼板素材30に接触して接着剤41が付与される。このとき、上金型2に備えられるノズルユニット42は、上金型2の移動に伴って移動するノズル保持プレート上146によって、鋼板素材30から離間する。下金型3に備えられるノズルユニット42は、上金型2の移動に連動するノズル保持プレート下148によって、鋼板素材30から離間する。
【0089】
次に、ノズル間隔調整装置47の詳細を説明する。図14から図20までに示すように、接着剤付与装置40は、ノズル先端部45が鋼板素材30に最も近接するときの鋼板素材30との間隔agを調整するノズル間隔調整装置47を備える。ノズル間隔調整装置47は、間隔調整カム47aと、間隔調整カム47aによってノズルユニット42の移動方向へ移動可能な間隔調整ブロック47bを備える。
【0090】
図14に示すように、ノズル間隔調整装置47は、回転式調整器144によって調整される。間隔調整カム47aと間隔調整ブロック47bは、共に接触面がテーパ状に形成される。図15を例にすると、間隔調整カム47aが右へ移動するほど間隔調整ブロック47bは下側へ移動し、ノズル先端部45と鋼板素材30との間隔agが少なくなる。図15は、間隔調整カム47aが最も右側へ移動しており、ノズル先端部45と鋼板素材30との間隔agが最小の状態を示す。図18も同様に、ノズル先端部45と鋼板素材30との間隔agが最小の状態を示す。
【0091】
なお、図14等に示すように、接着剤付与装置40が上金型2及び下金型3の双方に備えられる場合、ノズル間隔調整装置47は、上金型2と下金型3とに独立して備えられる。間隔agは、上金型2と下金型3とで独立して調整可能である。鋼板素材30の第一面30aとノズル先端部45との第一間隔ag1は、上金型2に備えられるノズル間隔調整装置47によって調整され、鋼板素材30の第二面30bとノズル先端部45との第二間隔ag2は、下金型3に備えられるノズル間隔調整装置47によって調整される。
【0092】
次に、ノズル切替装置46を説明する。図14から図20までに示すように、積層鋼板製造装置1は、ノズル切替装置46を備える。ノズル切替装置46は、ノズル間隔調整装置47とノズルユニット42に挟まれて配置され、ノズルユニット42が鋼板素材30に接着剤41を付与する状態と付与しない状態とを切り替え可能である。ノズル切替装置46は、切替作動カム46aと切替受動カム46bと保持部材143を備える。切替作動カム46aは、上金型2の移動に伴ってノズルユニット42が移動する方向に対して垂直方向に可動する。切替受動カム46bは、切替作動カム46aの作動によって、上金型2の移動に伴ってノズルユニット42が移動する方向に沿って可動する。保持部材143は、上金型2の移動に伴ってノズルユニット42が移動する方向において、切替作動カム46a又は/及び切替受動カム46bを保持する。例として、切替受動カム46bは、ノズルユニット42に固定される。
【0093】
図15及び図18は、ノズルユニット42が鋼板素材30に接近して接着可能な状態を示す。ノズル切替装置46は、エアシリンダー142によって切替作動カム46aが図示の左右方向へ移動する。切替作動カム46aと切替受動カム46bは、互いに対向する面に山と谷からなる凹凸形状が形成される。図15及び図18は、山同士が接触した状態であり、ノズル先端部45が鋼板素材30に対して近接する状態である。また、図16及び図19は、切替作動カム46aと切替受動カム46bの谷同士が対向する状態であり、ノズル先端部45が鋼板素材30から離間する状態である。
【0094】
図15及び図16に示す例では、保持部材143aがノズル保持プレート上146に形成され、バネ145によって間隔調整ブロック47bと切替作動カム46aを押圧する。切替作動カム46aが図示の左右方向に可動するとき、間隔調整ブロック47b及び切替受動カム46bとの摩擦抵抗を低減する。図18及び図19に示す例では、保持部材143bが下ダイセット25に形成され、バネ145によって切替受動カム46b及び切替作動カム46aを押圧する。図15の例と同様に、切替作動カム46aが図示の左右方向に可動するとき、間隔調整ブロック47b及び切替受動カム46bとの摩擦抵抗を低減する。
【0095】
図15及び図16に示すように、接着剤付与装置40が上金型2に備えられる場合、保持部材143aは、間隔調整ブロック47b及び切替作動カム46aを保持する。これにより、切替作動カム46aが図示の左右方向に可動するとき、切替作動カム46aは間隔調整ブロック47bとの間、及び切替受動カム46bとの間の摩擦が低減される。仮に保持部材143aが無いと、間隔調整ブロック47bと切替作動カム46aが自重によって下がり、切替受動カム46bを押圧する。すると、ノズル切替装置46は、切替作動カム46aを作動させるとき、切替受動カム46bとの互いの山と谷とがぶつかり合って作動できない可能性がある。
【0096】
また、図18及び図19に示すように、接着剤付与装置40が下金型3に備えられる場合、保持部材143bは切替受動カム46b及び切替作動カム46aを保持する。これにより、切替作動カム46aが図示の左右方向に可動するとき、切替作動カム46aは切替受動カム46bとの間、及び間隔調整ブロック47bとの間の摩擦が低減される。仮に保持部材143が無いと、ノズルユニット42が自重によって下がり、切替受動カム46bを押圧する。すると、ノズル切替装置46は、切替作動カム46aを作動させるとき、切替受動カム46bとの互いの山と谷とがぶつかり合って作動できない可能性がある。
【0097】
次に、キラーピン49について説明する。図14等に示すように、接着剤付与装置40はキラーピン49を備える。キラーピン49は、ノズルユニット42に直接的に又は間接的に接触し、ノズルユニット42が鋼板素材30から離間する方向へ移動するよう、バネ147の弾性力によって押圧力を付与する。ノズルユニット42は、直接的又は間接的にノズル間隔調整装置47と接触する状態が維持される。図14等に示すように、キラーピン49は、バネ147によって切替受動カム46bと接触して押圧する。切替受動カム46bはノズルユニット42に固定されるので、ノズルユニット42は、キラーピン49と間接的に接触する。
【0098】
なお、図示しないが、キラーピン49は、直接的にノズルハウジング152が固定されるノズル保持プレート上146、又はノズル保持プレート下148に接触して押圧する構成でもよい。
【0099】
次に、キラーピン49の作用を説明する。仮にキラーピン49が切替受動カム46bを押圧しない場合、ノズルユニット42は自重によって下方向に寄る傾向がある。図17に示すように、切替作動カム46aと間隔調整ブロック47bとの隙間g2と、切替作動カム46aと切替受動カム46bとの間の隙間g3が発生する可能性がある。
【0100】
図17に示すように、キラーピン49が切替受動カム46bに接触していない場合、間隔調整ブロック47b、切替受動カム46b、及びノズルユニット42が自重によって下降しようとする。そのため、間隔調整ブロック47bと切替受動カム46bとの隙間g1、切替作動カム46aと間隔調整ブロック47bとの隙間g2、及び切替作動カム46aと切替受動カム46bとの隙間g3が発生する可能性がある。
【0101】
これに対して、図15及び図16に示すようにキラーピン49が作用すると、切替受動カム46bを押圧することで間接的にノズルユニット42を押圧する状態が維持される。図16に示す例では、上金型2が下降するとき隙間g3が解消され、ノズル先端部45と鋼板素材30とが離隔した状態であり、接着剤41を付与しない。
【0102】
図20に示すように、キラーピン49が切替受動カム46bに接触しない場合、間隔調整ブロック47bが自重によって下降しようとする。切替作動カム46aは、保持部材143のバネ145によって押し上げられるので間隔調整ブロック47bとの隙間g4が発生する可能性がある。図20は、ノズル保持プレート上146及びノズルユニット42が上側に寄った状態を示すが、切替作動カム46aと切替受動カム46bとの隙間g5が発生する可能性がある。すなわち、隙間g5は上下方向のガタとなり、ノズルユニット42等が振動によって上下移動する可能性がある。
【0103】
これに対して、図19に示すようにキラーピン49が作用すると、切替受動カム46bを押圧することで間接的にノズルユニット42を押圧する状態が維持されて隙間g5が解消される。上金型2が下降することに連動してノズルユニット42が上昇するとき、ノズル先端部45と鋼板素材30とが離隔した状態であり、接着剤41を付与しない。
【0104】
図15から図20までを参照して説明したように、キラーピン49によって隙間g1から隙間g5までの全ての隙間が解消され、ノズル先端部45と鋼板素材30との間隔ag1及び間隔ag2が一定の間隔に維持される。
【0105】
また、図14等に示すように、接着剤付与装置40は、鋼板素材30を挟んで、上金型2と下金型3に備えられ、上金型2と下金型3とが近接する方向へ移動すると、鋼板素材30の第一面30a及び第二面30bに接着剤41が付与される構成でもよい。或いは、接着剤付与装置40は、上金型2又は下金型3の一方にのみ備えられてもよい。
【0106】
また、図14等に示すように、接着剤付与装置40は、鋼板素材30を挟んで、上金型2と下金型3に備えられる場合、接着剤付与装置40に搭載される接着剤41は、主剤41aと副剤41bの二種類の液剤からなり、上金型2及び下金型3のいずれか一方の接着剤41は主剤41aであり、他方の接着剤41は副剤41bでもよい。
【0107】
<接着剤付与装置40の効果>
以上説明した接着剤付与装置40は、以下の効果を奏する。接着剤付与装置40は、図21及び図22に示すように、ノズル先端部45が鋼板素材30に対して最も近接するとき、鋼板素材30との間に間隔agを有し、かつ露出する接着剤41の先端が鋼板素材30に接触する。間隔agはノズル間隔調整装置47によって調整可能なので、間隔agにおいて露出する接着剤41の量を調整することができる。
【0108】
これにより、ノズル先端部45は鋼板素材30と離間した状態で、適正量の接着剤41を付与することができる。接着剤41は、使用する種類によって粘性、接着力その他の特性が個々に異なる。間隔agが一定の場合、使用可能な接着剤41の種類が限定されてしまい、接着剤41を選定する際の自由度が奪われてしまう。これに対し、接着剤付与装置40は使用する接着剤41の特性に合わせて間隔agを調整することができるので、接着剤41の選定幅を広げて接着力を向上させることができる。合わせて、接着剤付与装置40は、接着剤貯留部43から供給する接着剤41を圧力調整することにより、接着剤41の付与量をさらに細かく調整することができる。また、ノズル先端部45は、鋼板素材30との間で間隔agを有するので、鋼板素材30に接触して損傷することを防止できる。
【0109】
なお、図14等に示すように、接着剤付与装置40が上金型2及び下金型3の双方に備えられる場合、間隔agは、上金型2と下金型3とで独立して調整可能である。すなわち、ノズル先端部45と鋼板素材30の第一面30aとの間の第一間隔ag1と、ノズル先端部45と鋼板素材30の第二面30bとの間の第二間隔ag2を異なる状態で調整することができる。よって、鋼板素材30の第一面30aと第二面30bに対して、適正な間隔agが異なる特性を有する接着剤41を使用することが可能である。或いは、第一間隔ag1と第二間隔ag2とを異なるように設定し、第一面30aと第二面30bとで接着剤41の付与量を異ならせることが可能である。なお、図21等に示す例では、第一面30aは鋼板素材30の上面であり、第二面30bは下面である。
【0110】
次に、ノズル間隔調整装置47の詳細な構成による効果を説明する。図14等に示すように、接着剤付与装置40のノズル間隔調整装置47は、間隔調整カム47aを作動させて間隔調整ブロック47bを移動させることにより、ノズルユニット42と鋼板素材30との間隔agを調整することができる。
【0111】
次に、ノズル切替装置46の効果を説明する。図14から図20までに示すように、積層鋼板製造装置1は、ノズル切替装置46によってノズルユニット42が接着剤41を付与する状態と付与しない状態とを切り替えることができる。よって、鋼板素材30を打ち抜く毎に、或いは所定の枚数毎に接着するか否かを設定可能である。例えば、鋼板31が設定枚数積層されたとき、ノズル切替装置46によって接着剤41の付与を停止することができる。また、保持部材143は、上金型2の移動に伴ってノズルユニット42が移動する方向において、切替作動カム46a又は/及び切替受動カム46bを保持するので、切替受動カム46bに対して切替作動カム46aがスムーズに可動する。
【0112】
次に、キラーピン49の効果を説明する。図14等に示すように、接着剤付与装置40は、キラーピン49がノズルユニット42に対して弾性力によって押圧力を付与する。さらに、ノズルユニット42と一体的な切替受動カム46bが切替作動カム46aに接触し、切替作動カム46aがノズル間隔調整装置47と接触する状態が維持される。よって、接着剤付与装置40は、上金型2が高速で移動したときでもガタつきが防止される。また、図17及び図20に示すように、切替作動カム46aが接着剤41を非付与状態にするよう作動すると、ノズル先端部45と鋼板素材30との間隔agが一定に保持される。
【0113】
また、接着剤付与装置40は、上金型2と下金型3の双方に備えられる場合、鋼板素材30の第一面30aと第二面30bとに接着剤41が付与される。よって、一度の工程で第一面30aと第二面30bとに接着剤41を付与できるので、接着剤41を付与する工数を少なくできる。また、第一面30aと第二面30bへの接着剤41を付与する工程を同時に行わず、それぞれの別の工程に分けて行うことも可能である。
【0114】
また、さらに上金型2及び下金型3のいずれか一方の接着剤41が主剤41aであり、他方の接着剤41が副剤41bであり、鋼板素材30の上面と下面との対向する位置に接着剤41を付与してもよい。この場合、鋼板31は、積層されるとき主剤41aと副剤41bとが接触して硬化反応をして接着する。よって、積層鋼板製造装置1は、鋼板31を積層する前に接着剤41が乾燥或いは硬化して接着能力が低減することを防止できる。
【0115】
<制御装置500の説明>
次に、図25を参照して、本発明の積層鋼板製造装置1の各要素を制御する制御装置500を説明する。制御装置500は、入力装置501によって各要素に対する指示がなされる。入力装置501は、鋼板31の打抜き作業の開始と停止の入力はもとより、第一ステーションP1及び第四ステーションP4において、鋼板素材30を何枚打ち抜く毎に第一プレス部T1及び第四プレス部T4を回転させるかを決定する打抜き枚数を入力する装置でもある。また、入力装置501では、第一ステーションP1における第一角度θ1と、第四ステーションP4における第二角度θ2の角度設定も行われる。
【0116】
入力装置501に入力した情報は、入出力インターフェース511が受取り、CPU512が各処理を行う。CPU512は、第一制御装置515による第一回転駆動源駆動処理、第四制御装置516による第四回転駆動源駆動処理、鋼板素材30を移送する移送制御装置521による移送駆動回路駆動処理、金型昇降制御装置517により上金型2を昇降させる金型昇降駆動処理、及びパンチ制御装置520によるパンチ選択駆動処理を行う。これらの処理に関し、ROM513及びRAM514は情報の記憶処理を行う。
【0117】
次に、CPU512は、処理した各駆動情報を入出力インターフェース511から各駆動回路に提供する。第一回転駆動源502を駆動するとき、CPU512は第一回転駆動回路503に駆動情報を与えて駆動する。第四回転駆動源504を駆動するとき、CPU512は第四回転駆動回路505に駆動情報を与えて駆動する。鋼板素材30を移送する移送駆動源507を駆動するとき、移送駆動回路506に駆動情報を与えて駆動する。パンチ選択駆動源519を駆動するとき、CPU512はパンチ選択駆動回路518に駆動情報を与えて駆動する。下金型3に対して上金型2を昇降させるとき、CPU512は金型昇降駆動回路508に駆動情報を与え、金型昇降駆動源509が金型昇降駆動装置510を駆動する。
【0118】
<<積層鋼板製造方法の説明>>
<第一の積層鋼板製造方法の説明>
次に、本発明の第二の態様に係る積層鋼板製造方法を説明する。積層鋼板32の一部に積層方向に対してスキューする形状を形成する第一の積層鋼板製造方法を説明する。第一の積層鋼板製造方法は、すでに説明した積層鋼板製造装置1を利用し、一方向に搬送される帯状の鋼板素材30を打ち抜いて積層鋼板32を製造する方法である。金型4は、上金型2と下金型3との相対的な移動を制御する金型昇降制御装置517を備える。
【0119】
図2図3及び図25に示すように、第一回転駆動部7は、第一パンチユニット5及び第一ダイユニット6を回転させる第一回転駆動源502と、第一回転駆動源502を制御する第一制御装置515を備える。第一の積層鋼板製造方法は、以下の工程を備える。金型昇降制御装置517により、上金型2と下金型3とを相対的に移動させることにより、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6とを相対的に移動させて鋼板素材30を打ち抜く第一工程S11を備える。第一工程S11の後、毎回或いは所定回数毎に、第一制御装置515が第一回転駆動源502を回転させることにより、第一パンチユニット5及び第一ダイユニット6を一方向に第一角度θ1の回転をさせる第二工程S12を備える。第二工程S12の後、鋼板素材30を所定量搬送する第三工程S13を備える。さらに、第三工程S13の後、鋼板31の外形を打ち抜き、鋼板31を積層する第四工程S14を備える。
【0120】
第一ステーションP1にて形成した第一加工部35は、第二工程S12と第三工程S13を経た後に、搬送方向に隣接する第一加工部35との間で、第一加工部中心Ch1に対して第一角度θ1の位相差を有する。第四工程S14において鋼板31を積層すると、第一加工部35は、積層方向に対してスキューした形状を形成する。第一加工部35は、図13(a)に示す例のようなスロット36である。鋼板31が積層された積層鋼板32は、スロット36が積層方向に対してスキューした形状を形成する。第四工程S14において外形を形成するとき、図13(a)、(c)の切欠き34aのように外周の形状は積層方向に沿った形状が形成される。すなわち、スロット36はスキューを伴い、外周の切欠き34aは積層方向に沿った形状に形成される。
【0121】
<第一の積層鋼板製造方法の効果>
以上説明した第一の積層鋼板製造方法によれば、以下の効果を奏する。図1から図6までに示したように、第一ステーションP1にて形成した第一加工部35は、第二工程S12と第三工程S13を経た後に、搬送方向に隣接する第一加工部35との間で、第一加工部中心Ch1に対して第一角度θ1の位相差を形成する。第四工程S14において鋼板31を積層すると、第一加工部35は、積層方向に対してスキューした状態に形成できる。よって、後加工を行うことなく、積層方向にスキューした形状を形成できる。さらに、第四工程S14において積層方向に沿った形状を形成可能である。よって、図13(a)に例示するように、積層方向に対してスキューしたスロット36を形成できる。さらに、外周の切欠き34aは積層方向に沿った形状に形成可能である。第一の積層鋼板製造方法によって製造した積層鋼板32を、電機子のステータに適用した場合の効果はすでに説明したとおりである。
【0122】
<第二の積層鋼板製造方法の説明>
次に、第二の積層鋼板製造方法を説明する。第二の積層鋼板製造方法は、すでに説明した積層鋼板製造装置1を利用して積層鋼板32を製造する方法であり、積層方向に対して不連続な形状を形成する方法である。第二の積層鋼板製造方法は、以下の工程を備える。図9から図12までを参照して説明したパンチ選択装置17によって、第二パンチ16が打ち抜き可能な状態とし、鋼板31の形状の一部である第二形状部34を打ち抜く第一工程S21と、パンチ選択装置17によって第二パンチ16が打ち抜き不可能な状態とし、第二形状部34の打ち抜きを停止する第二工程S22を備える。
【0123】
さらに、第一工程S21又は第二工程S22の後、鋼板素材30を所定量搬送する第三工程S23と、第三工程S23の後、鋼板31の外形を打ち抜き、鋼板31を積層する第四工程S24を備える。第二の積層鋼板製造方法は、第一工程S21と第二工程S22とを含めることにより、積層方向において不連続な形状を有する積層鋼板32を形成する。図13(a)及び(c)に示す例のように、積層鋼板32の外周に不連続な切欠き34bが形成される。
【0124】
<第二の積層鋼板製造方法の効果>
以上説明した第二の積層鋼板製造方法によれば、以下の効果を奏する。図10から図12までを参照して説明したように、第二の積層鋼板製造方法は、第二パンチ16を打ち抜き可能な状態にして第二形状部34を打ち抜く第一工程S21と、第二パンチ16を打ち抜き不可能な状態にして第二形状部34の打ち抜きを停止する第二工程S22とを含める。よって、後加工を行うことなく、積層方向において不連続な形状を有する積層鋼板32を形成することができる。図13に例示するように、第二の積層鋼板製造方法によれば、積層鋼板32に積層方向に不連続な切欠き34bを形成することができる。第二の積層鋼板製造方法によって製造した、積層方向に不連続な切欠き34bを有する積層鋼板32の効果はすでに説明したとおりである。
【0125】
<第三の積層鋼板製造方法の説明>
次に、第三の積層鋼板製造方法を説明する。第三の積層鋼板製造方法は、すでに説明した積層鋼板製造装置1を利用し、積層鋼板32の一部にスキューした形状を形成すると共に、外形を打ち抜く際に転積を行う製造方法である。第三の積層鋼板製造方法は、以下の工程を備える。図1から図6までを参照して説明した第一ステーションP1において、上金型2と下金型3とを相対的に移動させることにより、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6とを相対的に移動させて鋼板素材30から鋼板31の一部を打ち抜く第一工程S31を備える。第一工程S31の後、毎回或いは所定回数毎に、第一パンチユニット5及び第一ダイユニット6を一方向に第一角度θ1の回転をさせる第二工程S32を備える。
【0126】
さらに、第二工程S32の後、鋼板素材30を第四ステーションP4にまで搬送する第三工程S33を備える。第三工程S33の後、上金型2と下金型3とを相対的に移動させることにより、第四パンチユニット21と第四ダイユニット22とを相対的に移動させ、第一ステーションP1で一部を形成した鋼板31の外形を打ち抜き、鋼板31を積層する第四工程S34を備える。鋼板31を一枚打ち抜く毎に、又は所定枚数打ち抜く毎に、第四ダイユニット22を一方向に第二角度θ2の回転をさせる第五工程S35を備える。
【0127】
<第三の積層鋼板製造方法の効果>
以上説明した第三の積層鋼板製造方法によれば、以下の効果を奏する。第三の積層鋼板製造方法は、第一ステーションP1にて形成した第一加工部35が、第二工程S32と第三工程S33を経た後に、搬送方向に隣接する第一加工部35との間で、第一加工部中心Ch1に対して第一角度θ1の位相差を有する。第四工程S34において、転積を伴って鋼板31を積層すると、第一加工部35は、積層方向に対してスキューした状態に形成でき、さらに、厚み方向の偏差を抑えた積層鋼板32を製造することができる。
【0128】
また、第四工程S34において打ち抜く鋼板31の形状が、第二角度θ2の回転をさせたときに一致する形状であれば、積層方向に連続する形状として積層鋼板32を形成できる。図13(a)に示すように、スロット36は積層方向に対して斜めに形成され、外周の切欠き34aは積層方向に沿って形成される。すなわち、第三の積層鋼板製造方法は、積層方向に対して斜め方向に形成される形状と、積層方向に沿って形成される形状とを併せ持つ積層鋼板32を製造することができる。
【0129】
また、第四工程S34において打ち抜く形状が、第二角度θ2の回転をさせたときに一致する形状を含めれば、積層方向に形成される形状と、積層方向に対して斜め方向に形成される形状とを併せ持つ積層鋼板32を製造することができる。
【0130】
<第四の積層鋼板製造方法の説明>
次に、第四の積層鋼板製造方法を説明する。第四の積層鋼板製造方法は、すでに説明した積層鋼板製造装置1の第一ステーションP1において、転積を行って積層鋼板32を製造する方法である。第四の積層鋼板製造方法は、以下の工程を備える。図7に示すように、第四の積層鋼板製造方法は、上金型2と下金型3とを相対的に移動させることにより、第一パンチユニット5と第一ダイユニット6とを相対的に移動させて鋼板31の外形を打ち抜き、鋼板31を積層する第一工程S41を備える。第一工程S41の後、毎回或いは所定回数毎に、第一パンチユニット5及び第一ダイユニット6を、一方向に第一角度θ1の回転をさせる第二工程S42を備える。
【0131】
<第四の積層鋼板製造方法の効果>
以上説明した第四の積層鋼板製造方法によれば、以下の効果を奏する。第四の積層鋼板製造方法は、第一ステーションP1において鋼板31の外形を打ち抜き、転積を伴って積層鋼板32を製造することができる。よって、第一回転駆動部7による効果に加えて、点対称以外の形状を含む鋼板31を積層可能であり、厚み方向の偏差を抑えた積層鋼板32を製造することができる。
【0132】
<<鋼板接着方法の説明と効果>
次に、本発明の第二の態様に係る第一の鋼板接着方法を説明する。第一の鋼板接着方法は、すでに説明した接着剤付与装置40を利用し、鋼板31を接着して積層鋼板32を製造する方法であり、以下の工程を備える。図14から図22までを参照して説明した接着剤付与装置40のノズル間隔調整装置47によって、ノズル先端部45が鋼板素材30に最も近接するときの鋼板素材30との間隔agを調整する第一工程S51。第一工程S51の後、鋼板素材30に接着剤41を付与する第二工程S52。第二工程S52の後、打ち抜かれた鋼板31を積層接着する第三工程S53を備える。
【0133】
以上説明した第一の鋼板接着方法によれば、以下の効果を奏する。第一の鋼板接着方法は、ノズル間隔調整装置47によってノズル先端部45と鋼板素材30との間隔agを調整した後に鋼板素材30に接着剤41を付与できる。よって、第一の鋼板接着方法は、適正量の接着剤41が付与された鋼板31を積層接着することができる。
【0134】
次に、第二の鋼板接着方法を説明する。第二の鋼板接着方法は、すでに説明した接着剤付与装置40を利用し、鋼板31を接着して積層鋼板32を製造する方法であり、以下の工程を備える。上金型2に備えられたノズル間隔調整装置47によって、ノズル先端部45が鋼板素材30の第一面30aに最も近接するときの鋼板素材30との第一間隔ag1を調整する第一工程S61。下金型3に備えられたノズル間隔調整装置47によって、ノズル先端部45が鋼板素材30の第二面30bに最も近接するときの鋼板素材30との第二間隔ag2を調整する第二工程S62。第一工程S61及び第二工程S62の後、鋼板素材30に接着剤41を付与する第三工程S63。第三工程S63の後、外形が打ち抜かれた鋼板31を積層接着する第四工程S64を備える。
【0135】
以上説明した第二の鋼板接着方法によれば、以下の効果を奏する。ノズル先端部45と鋼板素材30の第一面30aとの間の第一間隔ag1、及び第二面30bとの間の第二間隔ag2を調整した後に接着剤41を付与する。よって、第一面30aと第二面30bのそれぞれに対して適量の接着剤41を付与し、鋼板31を積層接着することができる。
【0136】
次に、第三の鋼板接着方法を説明する。第三の鋼板接着方法は、すでに説明した接着剤付与装置40を利用し、鋼板31を接着して積層鋼板32を製造する方法であり、以下の工程を備える。上金型2に備えられたノズル間隔調整装置47によって、ノズル先端部45が鋼板素材30の第一面30aに最も近接するときの鋼板素材30との第一間隔ag1を調整する第一工程S71。下金型3に備えられたノズル間隔調整装置47によって、ノズル先端部45が鋼板素材30の第二面30bに最も近接するときの鋼板素材30との第二間隔ag2を調整する第二工程S72。第一工程S71及び第二工程S72の後、接着剤付与装置40によって、第一面30aに主剤41aを付与する第三工程S73と、主剤41aが付与された位置に対応し、第二面30bに副剤41bを付与する第四工程S74。第三工程S73及び第四工程S74の後、外形が打ち抜かれた鋼板31を積層接着する第五工程S75を備える。
【0137】
以上説明した第三の鋼板接着方法によれば、以下の効果を奏する。ノズル先端部45と鋼板素材30の第一面30aとの間の第一間隔ag1、及び第二面30bとの間の第二間隔ag2をそれぞれ調整した後に接着剤41を付与できる。よって、第一面30aに付与する主剤41aに適した第一間隔ag1と、第二面30bに付与する副剤41bに適した第二間隔ag2を調整した後にそれぞれを付与するので、適量の主剤41aを第一面30aに付与し、適量の副剤41bを第二面30bに付与し、鋼板31を積層接着することができる。
【符号の説明】
【0138】
2 上金型
3 下金型
4 金型
30 鋼板素材
30a 第一面
30b 第二面
31 鋼板
32 積層鋼板
40 接着剤付与装置
41 接着剤
41a 主剤
41b 副剤
42 ノズルユニット
43 接着剤貯留部
44 供給管
45 ノズル先端部
46 ノズル切替装置
46a 切替作動カム
46b 切替受動カム
47 ノズル間隔調整装置
47a 間隔調整カム
47b 間隔調整ブロック
49 キラーピン
143、143a、143b 保持部材
S51、S61、S71 第一工程
S52、S62、S72 第二工程
S63、S73 第三工程
S74 第四工程
S75 第五工程
ag1 第一間隔
ag2 第二間隔

図1
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