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特開2024-115300熱可塑性エラストマー発泡粒子及び発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115300
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー発泡粒子及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
C08J9/16 CES
C08J9/16 CFD
C08J9/16 CFF
C08J9/16 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020921
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】権藤 裕一
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA20
4F074AA21
4F074AA24
4F074AA24B
4F074AA66
4F074AA71
4F074AA71B
4F074AA78
4F074AD13
4F074BA33
4F074BA37
4F074BA38
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA42
4F074CA49
4F074CC04X
4F074CC04Y
4F074CC04Z
4F074CC10X
4F074CC22X
4F074CC47Z
4F074DA03
4F074DA33
4F074DA36
4F074DA57
(57)【要約】
【課題】本発明は、発泡成形時の収縮が抑制され、優れた外観を有する発泡成形体、及びこの発泡成形体を与え得る発泡粒子の提供を目的とする。
【解決手段】基材樹脂としての熱可塑性エラストマー及びワックスを含有する発泡粒子であって、
前記ワックスが、高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸ビスアミドからなる群から選択される少なくとも1種であり、
下記方法で特定される前記発泡粒子の表面吸光度比(Rsa)が中心部吸光度比(Rca)の5~50倍である、発泡粒子。
(吸光度比(Rsa及びRca))
発泡粒子の表面及び中心部をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから熱可塑性エラストマーに由来する吸光度(D-TPE)及び3300cm-1の吸光度(D3300)をそれぞれ得、D3300/D-TPEの数式に適用して得られる数値を、それぞれ表面吸光度比(Rsa)及び中心部吸光度比(Rca)とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂としての熱可塑性エラストマー及びワックスを含有する発泡粒子であって、
前記ワックスが、高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸ビスアミドからなる群から選択される少なくとも1種であり、
下記方法で特定される前記発泡粒子の表面吸光度比(Rsa)が中心部吸光度比(Rca)の5~50倍である、発泡粒子。
(吸光度比(Rsa及びRca))
発泡粒子の表面及び中心部をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから熱可塑性エラストマーに由来する吸光度(D-TPE)及び3300cm-1の吸光度(D3300)をそれぞれ得、D3300/D-TPEの数式に適用して得られる数値を、それぞれ表面吸光度比(Rsa)及び中心部吸光度比(Rca)とする。
【請求項2】
前記発泡粒子の表面吸光度比(Rsa)が中心部吸光度比(Rca)の7.5~50倍である、請求項1に記載の発泡粒子。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマーが、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びポリオレフィン系エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の発泡粒子。
【請求項4】
熱可塑性エラストマー100質量部に対して、ワックスを0.02~4質量部で含有する、請求項1又は2に記載の発泡粒子。
【請求項5】
基材樹脂としての熱可塑性エラストマー及びワックスを含有する型内発泡成形体であって、
前記ワックスが、高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸ビスアミドからなる群から選択される少なくとも1種であり、
下記方法で特定される前記発泡成形体の表面吸光度比(Rsb)が内部吸光度比(Rib)の2~30倍である、発泡成形体。
(吸光度比(Rsb及びRib))
発泡成形体の表面及び内部をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから熱可塑性エラストマーに由来する吸光度(D-TPE)及び3300cm-1の吸光度(D3300)をそれぞれ得、D3300/D-TPEの数式に適用して得られる数値を、それぞれ表面吸光度比(Rsb)及び内部吸光度比(Rib)とする。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマーが、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びポリオレフィン系エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の発泡成形体。
【請求項7】
発泡成形体の切断面において観察される気泡の平均気泡径が150μm以下である、請求項5又は6に記載の発泡成形体。
【請求項8】
熱可塑性エラストマー100質量部に対して、ワックスを0.02~4質量部で含有する、請求項5又は6に記載の発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー発泡粒子及び発泡成形体等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝材や梱包材として、ポリスチレンを基材樹脂とするポリスチレン型内発泡成形体が汎用されている。ここで、型内発泡成形体は、発泡性ポリスチレン粒子のような発泡性粒子を加熱して発泡(予備発泡)させて発泡粒子(予備発泡粒子)を得、得られた発泡粒子を金型のキャビティ内に充填した後、二次発泡させて発泡粒子同士を熱融着により一体化させることで得ることができる。ポリスチレン発泡成形体は、原料となる単量体がスチレンであるため、剛性は高いものの、反発弾性が低いことが知られている。そのため、繰り返し圧縮される用途や柔軟性が求められる用途では使用し難かった。
【0003】
そこで、発泡粒子及び発泡成形体の基材樹脂として熱可塑性エラストマーを使用することでポリスチレン発泡成形体よりも高い反発弾性を有する発泡成形体が製造されている(特許文献1~4)。熱可塑性エラストマー発泡成形体は、低密度下でも高い反発弾性を有するという特性を活かして、例えば、運動靴のインソール、ミッドソール、アウトソールや、他のスポーツ用品、吸音材等としても利用されている。
【0004】
ポリスチレン発泡成形体は、緩衝材や梱包材の用途で使用されることが多く、最終消費者の目に触れることが少ないため、発泡成形体の外観の美麗さについては高い水準で要求されなかった。しかし、熱可塑性エラストマー発泡成形体がスポーツ分野等で使用されるようになってくると、熱可塑性エラストマー発泡成形体が最終消費者の目に触れる機会が大幅に増加し、熱可塑性エラストマー発泡成形体には外観の美しさが求められるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-65272号公報
【特許文献2】特開2019-44123号公報
【特許文献3】特開2021-70713号公報
【特許文献4】国際公開第2018/012089号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発泡粒子から構成される発泡成形体は、発泡粒子単位での気泡の大きさにばらつきがあると、外部から光などが当たるなどすることにより、その大きさのばらつきにより、光の反射や透過度が変化することから、発泡成形体の外観を損なう。
【0007】
また、発泡粒子の発泡力及び発泡持続力が不足すると発泡成形時に発泡成形体が収縮する場合があり、この場合、発泡成形体の形状は金型の形状どおりでなく、問題となる。その場合、当該発泡粒子に適した発泡成形体の製造条件を再度探索・調整する必要性があり、製造上管理工数が増加すると共に、不良品が多発してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこれらの問題点を鑑みてなされたものである。本発明は、代表的には以下の態様を包含する。
項1.
基材樹脂としての熱可塑性エラストマー及びワックスを含有する発泡粒子であって、
前記ワックスが、高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸ビスアミドからなる群から選択される少なくとも1種であり、
下記方法で特定される前記発泡粒子の表面吸光度比(Rsa)が中心部吸光度比(Rca)の5~50倍である、発泡粒子。
(吸光度比(Rsa及びRca))
発泡粒子の表面及び中心部をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから熱可塑性エラストマーに由来する吸光度(D-TPE)及び3300cm-1の吸光度(D3300)をそれぞれ得、D3300/D-TPEの数式に適用して得られる数値を、それぞれ表面吸光度比(Rsa)及び中心部吸光度比(Rca)とする。
項2.
前記発泡粒子の表面吸光度比(Rsa)が中心部吸光度比(Rca)の7.5~50倍である、項1に記載の発泡粒子。
項3.
前記熱可塑性エラストマーが、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びポリオレフィン系エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の発泡粒子。
項4.
熱可塑性エラストマー100質量部に対して、ワックスを0.02~4質量部で含有する、項1~3のいずれか一項に記載の発泡粒子。
項5.
基材樹脂としての熱可塑性エラストマー及びワックスを含有する型内発泡成形体であって、
前記ワックスが、高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸ビスアミドからなる群から選択される少なくとも1種であり、
下記方法で特定される前記発泡成形体の表面吸光度比(Rsb)が内部吸光度比(Rib)の2~30倍である、発泡成形体。
(吸光度比(Rsb及びRib))
発泡成形体の表面及び内部をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから熱可塑性エラストマーに由来する吸光度(D-TPE)及び3300cm-1の吸光度(D3300)をそれぞれ得、D3300/D-TPEの数式に適用して得られる数値を、それぞれ表面吸光度比(Rsb)及び内部吸光度比(Rib)とする。
項6.
前記熱可塑性エラストマーが、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びポリオレフィン系エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種である、項5に記載の発泡成形体。
項7.
発泡成形体の切断面において観察される気泡の平均気泡径が150μm以下である、項5又は6に記載の発泡成形体。
項8.
熱可塑性エラストマー100質量部に対して、ワックスを0.02~4質量部で含有する、項5~7のいずれか一項に記載の発泡成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、表面及び中心部の吸光度が一定の関係を有する発泡粒子を使用することにより、従来よりも外観の美しい熱可塑性エラストマー発泡成形体を提供できる。
【0010】
本発明は、上記の外観の美しい熱可塑性エラストマー発泡成形体を与え得ることができ、さらに大幅に条件を変更せずに安定的に発泡成形可能な熱可塑性エラストマー発泡粒子を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0012】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又
は下限値は、その段落又は他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。
更に、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0013】
本発明の熱可塑性エラストマー発泡粒子(以下、単に「発泡粒子」とも云う)は基材樹脂としての熱可塑性エラストマー及びワックスを含有する。
本発明の型内発泡成形体(以下、単に「発泡成形体」とも云う)は、基材樹脂としての熱可塑性エラストマー及びワックスを含有する複数の発泡粒子が互いに融着及び一体化することで形成される融着体から構成されている。
【0014】
(1)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーは、例えば、熱可塑性エラストマーは、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーから選択でき、ポリエステル系エラストマーが好適である。熱可塑性エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
(i)ポリアミド系エラストマー
ポリアミド系エラストマーは、架橋していてもよく、非架橋であってもよい。本明細書において、非架橋とは、発泡粒子のアルコール系溶剤への不溶なゲル分率が3.0質量%以下のものを意味する。また、架橋とはこのゲル分率が3.0質量%より多いものを意味する。
【0016】
ここで、ポリアミド系エラストマー(発泡体)のゲル分率は下記の要領で測定される。
発泡体の質量W1を測定する。次に、130℃のアルコール系溶剤(例えば、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール)100mL中に発泡体を24時間に亘って浸漬する。
次に、アルコール系溶剤の残渣を80メッシュの金網を用いて濾過し、金網上に残った残渣を130℃にて1時間に亘って乾燥させて、金網上に残った残渣の質量W2を測定し、下記式に基づいて発泡体のゲル分率を算出できる。
ゲル分率(質量%)=W2/W1×100
基材樹脂としては、非架橋のポリアミド系エラストマーが含まれていることが好ましい。
【0017】
非架橋のポリアミド系エラストマーには、ポリアミドブロック(ハードセグメント)とポリエーテルブロック(ソフトセグメント)とを有するコポリマーを使用できる。
ポリアミドブロックとしては、例えば、ポリεカプラミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウラミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリナノメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)等のポリアミド構造が挙げられる。ポリアミドブロックは、これらポリアミド構造を構成する単位の組み合わせでもよい。
ポリエーテルブロックとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)等のポリエーテル構造が挙げられる。ポリエーテルブロックは、これらポリエーテル構造を構成する単位の組み合わせでもよい。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックはランダムに分散していてもよい。
【0018】
ポリアミドブロックの数平均分子量は300~15000であることが好ましく、600~5000であることがより好ましい。ポリエーテルブロックの数平均分子量は100~6000であることが好ましく、200~3000であることがより好ましい。
非架橋のポリアミド系エラストマーには、米国特許第4,331,786号明細書、米国特許第4,115,475号明細書、米国特許第4,195,015号明細書、米国特許第4,839,441号明細書、米国特許第4,864,014号明細書、米国特許第4,230,838号明細書及び米国特許第4,332,920号明細書に記載されたポリアミド系エラストマーも使用できる。
【0019】
非架橋のポリアミド系エラストマーは、反応性末端を有するポリアミドブロックと反応性末端を有するポリエーテルブロックとの共重縮合で得られるものが好ましい。この共重縮合としては特に下記のものを挙げることができる:
(a)ジアミン鎖端を有するポリアミドブロックとジカルボン酸鎖端を有するポリオキシアルキレンブロックとの共重縮合、
(b)ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシ化α,ω-ポリオキシアルキレン単位のシアノエチル化及び水素化で得られるジカルボン酸鎖端を有するポリアミド単位とジアミン鎖端を有するポリオキシアルキレン単位との共重縮合、
(c)ジカルボン酸鎖端を有するポリアミド単位とポリエーテルジオールとの共重縮合(この場合に得られるものを特にポリエーテルエステルアミドとよんでいる)。
【0020】
ジカルボン酸鎖端を有するポリアミドブロックを与える化合物としては、例えば、α,ω-アミノカルボン酸、ラクタム又はジカルボン酸の連鎖調節剤の存在下でのジカルボン酸とジアミンの縮合で得られる化合物が挙げられる。
(a)の共重縮合の場合、非架橋のポリアミド系エラストマーは、例えば、ポリエーテルジオールと、ラクタム(又はα,ω-アミノ酸)と、連鎖制限剤のジアシッドとを少量の水の存在下で反応させて得ることができる。非架橋のポリアミド系エラストマーは、種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有していてもよく、更に各成分がランダムに反応することでポリマー鎖中に分散していてもよい。
【0021】
上記共重縮合時において、ポリエーテルジオールのブロックはそのまま用いてもよく、その水酸基とカルボキシ末端基を有するポリアミドブロックとを共重合して用いてもよく、その水酸基をアミノ化してポリエーテルジアミンに変換した後にカルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと縮合して用いてもよい。また、ポリエーテルジオールのブロックをポリアミド前駆体及び連鎖制限剤と混合して共重縮合させることで、ランダムに分散させたポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むポリマーを得ることも可能である。
【0022】
(ii)ポリオレフィン系エラストマー
ポリオレフィン系エラストマーは、架橋していてもよく、非架橋であってもよい。非架橋とは、発泡体のキシレンへの不溶なゲル分率が3.0質量%以下のものを意味する。また、架橋とはこのゲル分率が3.0質量%より多いものを意味する。
ここで、ポリオレフィン系エラストマー(発泡体)のゲル分率は下記の要領で測定される。
発泡体の質量W1を測定する。次に沸騰キシレン80mL中に発泡体を3時間還流加熱する。次にキシレン中の残渣を80メッシュの金網を用いてろ過し、金網上に残った残渣を130℃にて1時間に亘って乾燥させて、金網上に残った残渣の質量W2を測定し、下記式に基づいて発泡体のゲル分率を算出できる。
ゲル分率(質量%)=W2/W1×100
基材樹脂としては、非架橋のポリオレフィン系エラストマーが含まれていることが好ましい。
非架橋のポリオレフィン系エラストマーは、鉱物性油非含有下で、発泡体に所定の密度と圧縮永久ひずみを与え得るものが好ましい。非架橋のポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントとソフトセグメントを組み合わせた構造を有するものが挙げられる。このような構造は、常温でゴム弾性を示し、高温では可塑化され成形可能となるという性質を与える。
例えば、ハードセグメントがポリプロピレン系樹脂であり、ソフトセグメントがポリエチレン系樹脂である非架橋のポリオレフィン系エラストマーが挙げられる。
【0023】
前者のポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンを主成分とする樹脂が使用できる。ポリプロピレンとしては、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチック等から選択される立体規則性を有していてもよい。
後者のポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレンを主成分とする樹脂が使用できる。ポリエチレン以外の成分としてはポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィンが挙げられる。
【0024】
非架橋のポリオレフィン系エラストマーには、潤滑油、パラフィン、ヤシ油、ステアリン酸、脂肪酸等の軟化剤が含まれていてもよい。
非架橋のポリオレフィン系エラストマーとしては、ハードセグメントとなるモノマーとソフトセグメントとなるモノマーの重合を行い、重合反応容器内において直接製造される重合タイプのエラストマー;バンバリーミキサーや二軸押出機等の混練機を用いてハードセグメントとなるポリプロピレン系樹脂とソフトセグメントとなるポリエチレン系樹脂とを物理的に分散させて製造されたブレンドタイプのエラストマーが挙げられる。
【0025】
非架橋のポリオレフィン系エラストマーは、ショアA硬度が30~100であることが好ましく、40~90であることがより好ましい。非架橋のポリオレフィン系エラストマーの硬度は、デュロメータ硬さ試験(JIS K6253:1997)に準拠して測定される。
また非架橋のポリオレフィン系エラストマーは、ショアD硬度が10~70であることが好ましく、20~60であることがより好ましい。非架橋のポリオレフィン系エラストマーの硬度は、デュロメータ硬さ試験(ASTM D2240:1995)に準拠して測定される。
【0026】
(iii)ポリエステル系エラストマー
ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントとソフトセグメントとを含むポリエステル系エラストマーが挙げられる。
ハードセグメントは、例えば、ジカルボン酸成分及び/又はジオール成分から構成される。ジカルボン酸成分と、ジカルボン酸成分及びジオール成分との2成分から構成されていてもよい。
【0027】
ジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその誘導体に由来する成分が挙げられる。
【0028】
ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール(例えば、1,4-ブタンジオール)等のC2-10アルキレングリコール、(ポリ)オキシC2-10アルキレングリコール、C5-12シクロアルカンジオール、ビスフェノール類又はこれらのアルキレンオキサイド付加体等が挙げられる。ハードセグメントは、結晶性を有していてもよい。
【0029】
ソフトセグメントは、ポリエステルタイプ及び/又はポリエーテルタイプのセグメントを使用できる。
【0030】
ポリエステルタイプのソフトセグメントとしては、ジカルボン酸類(アジピン酸のような脂肪族C4-12ジカルボン酸)とジオール類(1,4-ブタンジオールのようなC2-10アルキレングリコール、エチレングリコールのような(ポリ)オキシC2-10アルキレングリコール)との重縮合体、オキシカルボン酸の重縮合体やラクトン(ε-カプロラクトンのようなC3-12ラクトン)の開環重合体等の脂肪族ポリエステルが挙げられる。ポリエステルタイプのソフトセグメントは、非晶性であってもよい。
ソフトセグメントとしてのポリエステルの具体例としては、カプロラクトン重合体、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート等のC2-6アルキレングリコールとC6-12アルカンジカルボン酸とのポリエステルが挙げられる。このポリエステルの数平均分子量は、200~15000の範囲であってもよく、200~10000の範囲であってもよく、300~8000の範囲であってもよい。
【0031】
ポリエーテルタイプのソフトセグメントとしては、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール)のような脂肪族ポリエーテルに由来するセグメントが挙げられる。
ポリエーテルの数平均分子量は、200~10000の範囲であってもよく、200~6000の範囲であってもよく、300~5000の範囲であってもよい。
【0032】
ソフトセグメントは、脂肪族のポリエステルとポリエーテルとの共重合体(ポリエーテル-ポリエステル)のようなポリエーテル単位を有するポリエステル、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール)のようなポリエーテルと脂肪族ジカルボン酸とのポリエステルに由来するセグメントであってもよい。
【0033】
ハードセグメントとソフトセグメントとの質量割合は、20:80~90:10であってもよく、30:70~90:10であってもよく、30:70~80:20であってもよく、40:60~80:20であってもよく、40:60~75:25であってもよい。
【0034】
また、ジカルボン酸成分が、テレフタル酸成分とそれ以外のジカルボン酸成分である場合、ポリエステル系エラストマーが、ハードセグメントを30~80質量%の割合で含み、かつテレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分を5~30質量%の割合で含んでいてもよい。テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分の割合は5~25質量%であってもよく、5~20質量%でもよく、10~20質量%でもよい。なお、ジカルボン酸成分の割合は、樹脂のNMRスペクトルを定量評価することにより入手できる。
【0035】
テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分が、イソフタル酸成分であることが好ましい。イソフタル酸成分を含むことで、エラストマーの結晶化度が下がる傾向があり、発泡成形性が向上してより低密度の発泡成形体を得ることができる。
【0036】
ポリエステル系エラストマーには、東洋紡社製ペルプレン(PELPRENE)シリーズ、バイロン(VYLON)シリーズが好適に使用できる。特に、ペルプレンシリーズを使用することが好ましい。
【0037】
(iv)ポリウレタン系エラストマー
ポリウレタン系エラストマーとしては、例えば、長鎖ポリオール、短鎖グリコール、ジイソシアナート等を原料として、重付加反応により、分子内にウレタン結合を介して得られるエラストマーを使用できる
長鎖ポリオールとしては、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(1,6-ヘキサンアジペート)、ポリラクトンジオール、ポリカプロラトンジオール、ポリエナントラクトンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(プロピレングリコール/エチレングリコール)、ポリ(1,6-ヘキサメチレングリコールカーボネート)等が挙げられる。長鎖ポリオールの分子量は100~10000であってもよく、500~5000であってもよい。
【0038】
短鎖グリコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-キシリレングリコール、ビスフェノー
ルA、ハイドロキノンジエチロールエーテル、フェニレンビス-(β-ヒドロキシエチルエーテル)等が挙げられる。
ジイソシアナートとしては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルジイソシアナート、1,5-ナフタレンジイソシアナート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアナート、o-キシレンジイソシアナート、m-キシレンジイソシアナート、p-キシレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等が挙げられる。
【0039】
ポリウレタン系エラストマーにおいては、長鎖ポリオールとジイソシアナートでソフトセグメントを、短鎖グリコールとジイソシアナートでハードセグメントを構成していてもよい。
ポリウレタン系エラストマーは、必要に応じて、マレイン化、カルボキシル化、水酸化、エポキシ化、ハロゲン化、スルホン化等の変性処理や、イオウ架橋、過酸化物架橋、金属イオン架橋、電子線架橋、シラン架橋等の架橋処理に付されていてもよい。
ポリウレタン系エラストマーは、成形体としての強靱性や屈曲性の点から、5000~300000の、10000~100000の粘度分子量を有していてもよい。
ポリウレタン系エラストマーは、3000~200000の、5000~180000の、8000~150000の数平均分子量を有していてもよい。
【0040】
(2)基材樹脂
基材樹脂は、熱可塑性エラストマーに加え、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の樹脂を含んでもよいが、含まなくてもよい。他の樹脂は、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0041】
基材樹脂は、他に、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、展着剤、可塑剤、難燃助剤、架橋剤、充填剤、滑剤等を含んでいてもよい。
【0042】
難燃剤としては、ヘキサブロモシクロドデカン、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等が挙げられる。
【0043】
着色剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー等の有機顔料、金属粉、パール等の特殊顔料、染料等が挙げられる。
【0044】
帯電防止剤としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
【0045】
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
【0046】
基材樹脂における熱可塑性エラストマーの含有量は、80~100質量%、90~100質量%、100質量%等であってよく、95~100質量%が好ましく、98~100質量%がより好ましい。
【0047】
(3)ワックス
本発明の発泡粒子及び発泡成形体はワックスを含有する。ワックスは、高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸ビスアミドから選択できる。ワックスは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
より具体的には、高級脂肪酸アミドは、ラウリン酸アミド、トリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、マルガリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ノナデシル酸アミド、アラキジン酸アミド、ヘンイコシル酸アミド、ベヘン酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミド(炭素数12~22の高級脂肪酸アミド)から、高級脂肪酸ビスアミドは、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド(炭素数25~46の高級脂肪酸ビスアミド)から選択できる。
【0048】
(4)発泡粒子
発泡粒子は、基材樹脂としての熱可塑性エラストマーとワックスとを含有し、前記ワックスが高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸ビスアミドからなる群から選択される少なくとも1種であり、下記方法で特定される前記発泡粒子の表面吸光度比(Rsa)が中心部吸光度比(Rca)の5~50倍であり得る。
【0049】
(発泡粒子の吸光度比(Rsa及びRca))
発泡粒子の表面及び中心部をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから熱可塑性エラストマーに由来する吸光度(D-TPE)及び3300cm-1の吸光度(D3300)をそれぞれ得、D3300/D-TPEの数式に適用して得られる数値を、それぞれ表面吸光度比(Rsa)及び中心部吸光度比(Rca)とする。発泡粒子の吸光度比は、詳細には実施例に記載の方法で特定される。
【0050】
D-TPEは発泡粒子及び発泡成形体における熱可塑性エラストマーの分布を反映し、D3300は発泡粒子及び発泡成形体におけるワックスの分布を反映すると考えられる。
【0051】
発泡粒子の表面吸光度比(Rsa)は、中心部吸光度比(Rca)の5~50倍、6~50倍、7.5~50倍、5~30倍、6~30倍、7.5~30倍、5~20倍、6~20倍、7.5~20倍であり得る。表面吸光度比(Rsa)が前記範囲内であると、発泡成形時の発泡成形体の収縮が小さくなることにより成形の安定性が増し、発泡成形体のまだら模様が軽減され、平均気泡径が小さくなる等の点で有利である。
表面吸光度比が中心部吸光度比より大きいことは、つまり、発泡粒子中心部におけるワックス量の比率よりも、表面におけるワックス比率が大きいことを示す。したがって、添加されているワックスが表面に多量に存在することを示している。これは、熱可塑性エラストマーに添加されたワックスが気泡形成に寄与した際に、表面付近へと移行してくることを示している。発泡剤含浸時において熱可塑性エラストマーの結晶が生成される際に、微細な結晶が効果的に形成された後に、中心部のワックスは表面側へ追い出されると推測される。この微細な結晶が、気泡形成の際に気泡核として機能し、低気泡径化に寄与すると推測される。
【0052】
発泡粒子の表面吸光度比(Rsa)は、1.40~5であり得、1.50~5が好ましく、1.60~3がより好ましい。表面吸光度比(Rsa)が前記範囲内であると、発泡成形時の発泡成形体の収縮が小さい、発泡成形体のまだら模様が軽減され、平均気泡径が小さくなる等の点で有利である。
【0053】
発泡粒子の中心部吸光度比(Rca)は、0.01~0.30、0.05~0.28等であり得、0.05~0.25が好ましく、0.1~0.22がより好ましい。中心部吸光度比(Rca)が前記範囲内であると、発泡成形時の発泡成形体の収縮が小さい、発泡成形体のまだら模様が軽減され、平均気泡径が小さくなる等の点で有利である。
【0054】
発泡粒子における熱可塑性エラストマーの含有量は、80~99.98質量%、90~99.98質量%等であってよく、95~99.98質量%が好ましく、96~99.98質量%がより好ましい。
【0055】
発泡粒子におけるワックスの含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.02~4質量部であり得る。ワックスの含有量が前記範囲内であると、気泡形成の安定性とともに、発泡成形体の融着性の点で有利である。
【0056】
発泡粒子は、0.015g/cm~0.5g/cmの範囲の嵩密度を有することが好ましい。より好ましい嵩密度は0.02g/cm~0.3g/cmであり、更に好ましい嵩密度は、0.05g/cm~0.2g/cmである。
【0057】
発泡粒子の形状は、特に限定されず、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状等が挙げられる。
【0058】
発泡粒子の平均粒子径は、所望の発泡成形体が得られる限りにおいて得に制限されないが、1mm~10mmが好ましく、2mm~10mmがより好ましい。平均粒子径が前記範囲内にあると、発泡粒子の製造が容易であり、成形時の2次発泡性が低下し難く、加熱発泡により発泡成形体を作製する際に型への充填性が低下し難く、複雑な形状の発泡成形体も製造しやすい。発泡粒子の平均粒子径は、20個の発泡粒子の直径の最大値と最小値とを測定し、(最大値+最小値)÷2から算出される値の平均値を意味する。
【0059】
本発明の発泡粒子は、軽量で、反発弾性率を備え、発泡成形時の収縮が小さくなることにより成形の安定性が増し、まだら模様が軽減され、平均気泡径が小さく、外観が美しい発泡成形体の製造原料として有用である。
【0060】
(5)発泡成形体
発泡成形体は、基材樹脂としての熱可塑性エラストマーとワックスとを含有し、前記ワックスが、高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸ビスアミドからなる群から選択される少なくとも1種であり、下記方法で特定される前記発泡成形体の表面吸光度比(Rsb)が内部吸光度比(Rib)の2~30倍であり得る。
【0061】
(発泡成形体の吸光度比(Rsb及びRib))
発泡成形体の表面及び内部をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルから熱可塑性エラストマーに由来する吸光度(D-TPE)及び3300cm-1の吸光度(D3300)をそれぞれ得、D3300/D-TPEの数式に適用して得られる数値を、それぞれ表面吸光度比(Rsb)及び内部吸光度比(Rib)とする。発泡成形体の吸光度比は、詳細には実施例に記載の方法で特定される。
【0062】
発泡成形体の表面吸光度比(Rsb)は、内部吸光度比(Rib)の2~25倍、2~20倍、2~15倍、2~10倍、2~5倍であり得る。表面吸光度比(Rsb)が前記範囲内であると、発泡成形時の発泡成形体の収縮が小さく成形安定性が増し、発泡成形体のまだら模様が軽減され、平均気泡径が小さくなる等の点で有利である。
つまり、Rsb/Ribから導き出させる倍数が高い方が、発泡成形体内部におけるワックス量の比率よりも、表面におけるワックス量の比率が大きいことを示している。
【0063】
発泡成形体の表面吸光度比(Rsb)は、0.2~1.5であり得、0.2~0.8が好ましく、0.3~0.6がより好ましい。表面吸光度比(Rsb)が前記範囲内であると、発泡成形時の発泡成形体の収縮が小さい、発泡成形体のまだら模様が軽減され、平均気泡径が小さくなる等の点で有利である。
【0064】
発泡成形体の内部吸光度比(Rib)は、0.05~0.5であり得、0.08~0.4が好ましく、0.10~0.35がより好ましい。表面吸光度比(Rsb)が前記範囲内であると、発泡成形時の発泡成形体の収縮が小さい、発泡成形体のまだら模様が軽減され、平均気泡径が小さくなる等の点で有利である。
【0065】
発泡成形体における熱可塑性エラストマーの含有量は、80~99.98質量%、90~99.98質量%等であってよく、95~99.98質量%が好ましく、96~99.98質量%がより好ましい。
【0066】
発泡成形体におけるワックスの含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.02~4質量部であり得る。ワックスの含有量が前記範囲内であると、気泡形成の安定性とともに、発泡成形体の融着性の点で有利である。
【0067】
発泡成形体は、例えば、発泡粒子を金型内で加熱し、二次発泡させ、複数の発泡粒子が熱融着により一体化した融着体から構成される。
【0068】
発泡成形体は、20~150μmの平均気泡径を有し得る。平均気泡径は、20~120μmが好ましく、20~100μmがより好ましく、20~70μmが更に好ましい。発泡成形体の平均気泡径が前記範囲内であると、発泡粒子の発泡持続力が向上して発泡成形時の発泡成形体の収縮が小さくなり、成形の安定性が増し、発泡成形体のまだら模様が軽減され、平均気泡径が小さくなる等の点で有利である。
【0069】
発泡成形体の平均気泡径は発泡成形体をスライスした切断面を走査電子顕微鏡で撮影して測定する。詳細には、実施例に記載の方法で特定される。
【0070】
発泡成形体における平均気泡径の標準偏差は、1~50であってよい。標準偏差は、1~40が好ましく、1~35がより好ましく、1~30が更に好ましい。発泡成形体の平均気泡径が前記範囲内であると、発泡成形体のまだら模様が軽減される点で有利である。
【0071】
発泡成形体は、平均気泡径値±30μm範囲内である気泡の比率が40~100%であり得る。この比率は50~100%が好ましく、70~100%がより好ましく、80~100%更に好ましい。発泡成形体の平均気泡径が前記範囲内であると、発泡成形体のまだら模様が軽減される等の点で有利である。
【0072】
発泡成形体は、0.02~0.4g/cmの密度を有し得る。密度は、0.04~0.4g/cmの範囲であってもよく、0.06~0.4g/cmの範囲であってもよく、0.06~0.3g/cmの範囲であってもよい。密度が前記範囲内であると、発泡成形体は軽量かつ機械的物性に優れる。
【0073】
発泡成形体は、例えば、工業分野、スポーツ用品、緩衝材、ベッドの心材、シートクッション(座席シートのクッション等)、自動車部材(自動車内装材等)等に用いることができる。特に環境負荷低減と反発弾性の向上が求められる用途に用いることができる。例えば、シューズのミッドソール部材、インソール部材又はアウトソール部材;ラケット、バット等のスポーツ用品の打具類の芯材;パッド、プロテクター等のスポーツ用品の防具類;パッド、プロテクター等の医療、介護、福祉又はヘルスケア用品;自転車、車椅子等のタイヤ芯材;自動車、鉄道車両、飛行機等の輸送機器の内装材、シート芯材、衝撃吸収部材、振動吸収部材等;防舷材;フロート;玩具;床下地材;壁材;ベッド;クッション;電子部品、各種工業資材、食品等の搬送容器等に用いることができる。
【0074】
本発明の発泡成形体は、ミッドソール、インソール及びアウトソールのいずれか又は全てに使用できる。本発明の発泡成形体を使用しなかったミッドソール、インソール及びアウトソールのいずれかには、公知のミッドソール、インソール及びアウトソールを使用できる。
【0075】
発泡成形体は、上記用途に応じて適切な形状を取り得る。
【0076】
(6)発泡粒子の製造方法
型に充填される発泡粒子は、基材樹脂及びワックスを含有する粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得る工程(発泡剤含浸工程)、発泡性粒子を発泡させる発泡工程、さらには必要に応じて発泡粒子に無機系ガス等を含有させる内圧付与工程を経て得ることができる。
【0077】
(発泡剤含浸工程)
(a)樹脂粒子
樹脂粒子は、公知の製造方法及び製造設備を使用して得ることができる。例えば、押出機から押し出された基材樹脂の溶融混練物を、水中カット、ストランドカット等により造粒することによって、樹脂粒子を製造できる。溶融混練時の温度、時間、圧力等は、使用原料及び製造設備に合わせて適宜設定できる。
【0078】
溶融混練時の押出機内の溶融混練温度は、基材樹脂が十分に軟化する温度である。このため、使用する樹脂に応じて適宜設定できる。140℃~250℃が好ましく、150℃~220℃がより好ましい。溶融混練温度とは、押出機ヘッド付近の溶融混練物流路の中心部温度を熱伝対式温度計で測定した押出機内部の溶融混練物の温度を意味する。
【0079】
樹脂粒子の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状である。
【0080】
樹脂粒子は、その長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.8~3であることが好ましい。樹脂粒子のL/Dがこの範囲にあると、金型内への充填性が良好である。なお、樹脂粒子の長さLは、押出方向の長さをいい、平均径Dは長さLの方向に実質的に直交する樹脂粒子の切断面の直径をいう。
【0081】
樹脂粒子の平均径Dは0.5mm~1.5mmが好ましい。平均径Dが0.5mm以上であると、発泡剤の保持性が向上し発泡性粒子の発泡性が向上しやすい。平均径Dが1.5mm以下であると、型内への発泡粒子の充填性が向上すると共に、板状の発泡成形体を製造する場合に発泡成形体の厚みを大きくしやすくなる。
【0082】
(b)発泡性粒子
樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を製造する。樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法としては、公知の方法を用い得る。例えば、湿式含浸法や乾式含浸法が挙げられる。湿式含浸法は、オートクレーブ内に樹脂粒子、分散剤及び水を供給して撹拌することによって、樹脂粒子を水中に分散させて分散液を製造して、この分散液中に発泡剤を圧入し、樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法である。乾式含浸法は、密閉容器内の樹脂粒子に発泡剤を圧入して、樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法である。
【0083】
発泡剤含浸工程は、熱可塑性エラストマー及びワックスを含有する樹脂粒子、発泡剤及び水が投入された密閉容器中で前記樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程であることが、発泡成形時の発泡成形体の収縮が小さい、発泡成形体のまだら模様が軽減され、平均気泡径が小さくなる等の点で好ましい。この態様では水が使用されるが湿式含浸法ではない。湿式含浸法では水は分散媒として機能する。この態様において水を使用するが、分散媒としては利用しない。この態様において、密閉容器に投入される水の量が前記樹脂粒子の100質量部に対し1.5質量部以上80質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以上60質量部以下であることがより好ましく、さらには1.5質量部以上30質量部以下であることがさらに好ましい。このような少量の水を使用することによって、発泡成形体のまだら模様が軽減され、平均気泡径が小さくなり、発泡粒子を作成する際に未発泡粒子の生成を低減することができる。
【0084】
発泡剤含浸工程は、密閉容器 (例えば、回転混合可能な耐圧密閉容器)において、密閉容器内が、熱可塑性エラストマーのビカット軟化点より50℃低い温度以上融解温度以下の温度に上昇し一定時間該当温度内で保持する形で実施され得る。密閉容器内の温度は、例えば、20~160℃、好ましくは、50℃~130℃、さらに好ましくは70~120℃であり得る。
【0085】
熱可塑性エラストマーのビカット軟化点は、JIS 7196:1991「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」記載の方法により特定される。詳細には、実施例に記載の方法により特定される。
【0086】
熱可塑性エラストマーの融解温度は、前記したように、JIS K7121:1987、JIS K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法に準じたDSC測定により特定される。詳細には、実施例に記載の方法により特定される。
【0087】
発泡剤としては、汎用のものが用いられ、例えば、空気;窒素、二酸化炭素(炭酸ガス)等の不活性ガス;プロパン、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素;ハロゲン化炭化水素が挙げられ、空気、不活性ガス又は脂肪族炭化水素が好ましい。なお、発泡剤は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0088】
樹脂粒子に含浸させる発泡剤の量は、樹脂粒子100質量部に対して、3質量部~15質量部であることが好ましい。発泡剤の含有量が3質量部以上であると、発泡力が低くならず、高い発泡倍率でも、良好に発泡させやすい。発泡剤の含有量が15質量部以下であると、気泡膜の破れが抑えられ、可塑化効果が大きくなりすぎないために、発泡時の粘度の過度の低下が抑えられ、かつ収縮が抑えられる。より好ましい発泡剤の量は5質量部~10質量部である。この範囲内であれば、発泡力を十分に高めることができ、高い発泡倍率であっても、より一層良好に発泡させることができる。
【0089】
発泡剤には発泡助剤(可塑剤)を併用してもよい。発泡助剤(可塑剤)としては、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。
【0090】
含浸工程時に、添加剤を樹脂粒子及び発泡剤などと混合し、展着及び含浸させることができる。ステアリン酸亜鉛のような粉末状金属石鹸類、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を含浸時に投入してもよい。この含浸時の投入により、発泡工程における樹脂粒子同士の結合を減少できる。また、帯電防止剤、展着剤等の表面処理剤を粒子に塗布してもよい。帯電防止剤としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル及びステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール及びシリコンオイル等が挙げられる。
【0091】
(発泡工程(予備発泡工程))
(c)発泡粒子
発泡工程では、発泡性粒子を発泡させて、発泡粒子を得ることができれば発泡温度、加熱媒体等は特に限定されない。
【0092】
なお、発泡前に、発泡性粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛のような粉末状金属石鹸類、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を塗布してもよい。この塗布により、発泡工程における樹脂粒子同士の結合を減少できる。また、帯電防止剤、展着剤等の表面処理剤を塗布してもよい。帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル及びステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール及びシリコンオイル等が挙げられる。
【0093】
(7)発泡成形体の製造方法
発泡成形体は、発泡粒子を型内成形させて得られ、複数の発泡粒子の融着体から構成される。例えば、多数の小孔を有する閉鎖金型内に発泡粒子(予備発泡粒子)を充填し、加圧水蒸気で発泡粒子を加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させ、一体化させることにより得ることができる。その際、例えば、金型内への発泡粒子の充填量を調整する等して、発泡成形体の密度を調整できる。
【0094】
更に、発泡粒子に不活性ガス又は空気(以下、不活性ガス等とも称する)を含浸させて、発泡粒子の発泡力を向上させてもよい(内圧付与工程)。発泡力を向上させることにより、型内成形時に発泡粒子同士の融着性向上、及び得られる発泡成形体の表面性(発泡粒子間の空隙が少ない)が向上し、発泡成形体は更に優れた機械的強度を有する。なお、不活性ガスとしては、例えば、空気、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
【0095】
発泡粒子に不活性ガス等を含浸させる方法としては、例えば、常圧以上の圧力を有する不活性ガス等雰囲気下に発泡粒子を置くことによって、発泡粒子中に不活性ガス等を含浸させる方法が挙げられる。発泡粒子は、金型内に充填する前に不活性ガス等が含浸されてもよいが、発泡粒子を金型内に充填した後に金型ごと不活性ガス等雰囲気下に置くことで含浸されてもよい。なお、不活性ガスが窒素である場合、ゲージ圧(大気圧基準)0.1~2MPaの窒素雰囲気中に発泡粒子を20分~24時間に亘って放置してもよい。
【実施例0096】
以下、実施例等によって本発明の一実施態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれら態様に限定されない。
【0097】
測定方法
実施例等に記載の特定は次の方法により特定した。
【0098】
[熱可塑性エラストマーのビカット軟化点]
ビカット軟化点は、JIS 7196:1991「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」記載の方法により特定した。即ち、試料を熱プレスして、厚み2mmに潰した後、縦10mm×横20mm×厚み2mmの平面長方形状のフィルム状試験片を作製し、熱・応力・歪み測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、商品名「TMA/SS6200」)を用い、針入り試験モード(針の先端面積1mm)、荷重50gとし、フィルム状試験片に針を当てて、昇温速度5℃/分で温度を上げていき、フィルム状試験片の歪みが発生した時の温度をこの試料の軟化温度(ビカット軟化点)とした。
【0099】
[熱可塑性エラストマーのDSC測定と融解温度]
DSC測定は、JIS K7121:1987、JIS K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法に準じて行った。試料をアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう5.5±0.5mg充填後、アルミニウム製の蓋をした。任意に選択した熱可塑性エラストマーをスライスして小片を作製しこれを試料とした。
次いで、(株)日立ハイテクサイエンス製「NEXTA DSC600」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施した。窒素ガス流量20mL/分のもと、下記のステップ1~4で試料の加熱及び冷却を実施してDSC曲線を得た。基準物質としてはアルミナを用いた。DSC装置付属の解析ソフトを用いて、2回目昇温過程(ステップ4)に見られる融解ピークのトップの温度を読みとって融解温度(融点)とした。
(ステップ1)30℃から-70℃まで10℃/分で降温した後10分間保持、
(ステップ2)-70℃から220℃まで10℃/分で昇温した後、10分間保持、
(ステップ3)220℃から-70℃まで10℃/分で降温した後、10分間保持、
(ステップ4)-70℃から220℃まで10℃/分で昇温。
【0100】
[発泡粒子の嵩密度]
内圧付与前の発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させた後、メスシリンダーの底をたたいて試料の見掛け体積(V)cmを一定にし、その重量と体積を測定し、次式に基づいて発泡粒子の嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cm)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)
【0101】
[吸光度比]
発泡粒子の表面及び中心部並びに発泡成形体の表面及び内部における熱可塑性エラストマーに由来する吸光度(D-TPE)及び3300cm-1の吸光度(D3300)は、発泡粒子又は発泡成形体をATR法により赤外分光分析することで得られる赤外線吸収スペクトルに基づいて特定した。その詳細を次に示す。
発泡粒子の吸光度の測定では無作為に選択された3個の発泡粒子を使用した。表面については、発泡粒子の表面をATR法で測定した。中心部については、発泡粒子をカミソリ刃でほぼ真ん中をカットして露出した切断面を二等分し、切断面の中心(少なくとも円の中心から1/4より内側)をATR法で測定した。
発泡成形体の吸光度の測定では無作為に選択された3個の発泡成形体を使用した。表面については、発泡成形体の表面をATR法で測定した。内部については、発泡成形体をカミソリ刃でスライスして内部を露出させ、発泡粒子の界面を除く、露出した任意の部分をATR法で測定した。
ATR-FTIR測定は、フーリエ変換赤外分光光度計である「iS20」(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)にATRアクセサリーとして「Smart iTX」(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を接続し、以下の条件で行った。なお、ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって、赤外吸収スペクトルの強度が変化する。そのため、最大吸光度が均一になるようにATRアクセサリーで荷重をかけて測定を行った。
【0102】
(測定条件)
高屈折率結晶種: ダイヤモンド貼付KRS-5
入射角:45°
測定領域:4000cm-1~400cm-1
測定深度の端数依存性:補正せず
反射回数:1回
検出器:DTGS KBr
分解能:4cm-1
積算回数:16回
その他:試料と接触させずに赤外線吸収スペクトルを上記の条件で測定し、測定された赤外線吸収スペクトルをバックグラウンドとした。試料の赤外吸光スペクトルの測定では、バックグランドの影響が表れないように補正が加わるようにした。
【0103】
(吸光度)
得られた赤外線吸収スペクトルに基づいて、次のようにピーク処理をしてそれぞれの吸光度を求めた。
【0104】
(D3300)
赤外吸収スペクトルから得られる3300cm-1での吸光度D3300は、エチレンビスステアリン酸アミドのアミド基のN-H伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、3300cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施していない。吸光度D3300は、3300cm-1±5cm-1の領域の赤外吸収スペクトルにおけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度からベースラインの吸光度を控除した値)の最大値を意味する。べースラインは、赤外吸収スペクトルにおける3365m-1±5cm-1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトルにおける3215±5cm-1での最低吸収位置とを結ぶ直線である。
【0105】
(D-TPE)
赤外吸収スペクトルから得られる吸光度D-TPEは熱可塑性エラストマー由来するものであれば、例えば、2800cm-1での吸光度D2800は、ポリエステル系エラストマー樹脂に含まれるメチレン基のC-H伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、2800cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施していない。吸光度D2800は、2800cm-1±5cm-1の領域の赤外吸収スペクトルにおけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度からベースラインの吸光度を控除した値)の最大値を意味する。ベースラインは、赤外吸収スペクトル曲線における波数2815cm-1±5cm-1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数2760cm-1±5cm-1での最低吸収位置とを結ぶ直線である。
赤外吸収スペクトルから得られる吸光度D-TPEは、熱可塑性エラストマーに由来し、熱可塑性エラストマーの種類を反映する波長の吸光度であれば、随時選択される。当該波長の吸光度を求めるために分析されるピークが、他のピークと重なっている場合でもピーク分離は実施せず、当該波長の波数領域の赤外吸収スペクトルにおけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度からベースラインの吸光度を控除した値)の最大値を特定する。
【0106】
得られた個別の吸光度を以下の式に適用して個別の吸光度比を算出し、3個の個別の吸光度比の相加平均値を吸光度比とした。
(発泡粒子の表面吸光度比(Rsa)及び中心部吸光度比(Rca))
Rsa=(発泡粒子の表面のD3300/発泡粒子の表面のD-TPE)
Rca=(発泡粒子の中心部のD3300/発泡粒子の中心部のD-TPE)
(発泡成形体の表面吸光度比(Rsb)及び内部吸光度比(Rib))
Rsb=(発泡成形体の表面のD3300/発泡成形体の表面のD-TPE)
Rib=(発泡成形体の内部のD3300/発泡成形体の内部のD-TPE)
【0107】
[成形安定性]
耐圧密閉された容器に発泡粒子を投入し、空気を用いて0.4MPaで16時間以上内圧付与した。金型(200mm×240mm×厚み20mm)内に内圧付与した発泡粒子を充填し、導入する蒸気調圧を0.24MPaとして、加熱時間50秒で加熱し、冷却、離形を起こった際の発泡成形体の収縮有無を確認した。
発泡成形体が金型形状を保持している場合は成形安定性を有すると評価し、「〇」で示した。
発泡成形体に収縮があり金型形状を保持していない場合は成形安定性に欠けると評価し、「×」で示した。
【0108】
[発泡成形体の外観]
発泡成形体を光に透かして見た際に、発泡粒子の大きさが均一で、美麗な場合を「〇」で示し、発泡粒子が粗いものと密なものが混在し、まだら模様が見える場合を「△」で示した。成形安定性試験で収縮し金型形状を保持していない発泡成形体については外観評価が不要であるため、外観評価を実施せず、「-」で示した。
【0109】
[平均気泡径]
発泡成形体をカミソリを用いて、スライスし切断面を日立製作所社製「S-3400N」走査電子顕微鏡にて撮影した。撮影は、発泡成形体を構成する発泡粒子が1個以上入るように行った。撮影された画像をA4用紙に印刷し、印刷された画像中の発泡成形体の中の一つの発泡粒子に直線を2本引き、直線の長さL(μm)を測定した。直線が通過する気泡の数を数えた。直線が気泡と接点のみで接する場合は、この気泡も数に含めた。気泡が小さく数えることが難しい場合は、写真を拡大し、撮影、計測した。発泡成形体を構成する20個以上の任意の発泡粒子のデータを採取して、下記式により、各々の平均気泡径を算出し、それらの平均値を求めた。
平均弦長t(μm)=線長L/(気泡数N×写真の倍率)
平均気泡径(μm)=平均弦長t/0.616
さらに、標準偏差及び、平均気泡径値±30μm範囲内にある気泡の比率(%)を算出することで、気泡の均一性を評価した。
【0110】
[発泡成形体の密度]
成形直後に発泡成形体を温度40℃で12時間乾燥し、乾燥後に温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で72時間状態調節した。状態調節した発泡成形体の質量a(g)を小数点2桁まで測定すると共に、外寸をデジマチックキャリパ(ミツトヨ社製)で1/100mmまで測定して、見掛けの体積b(cm)を求めた。発泡成形体の密度を次式により算出した。
発泡成形体密度(g/cm)=a/b
【0111】
実施例1
<樹脂粒子の作製>
エステル系エラストマー(商品名:「ペルプレンP-75M」、東洋紡社製)100質量部と有機系気泡調整剤(エチレンビスステアリン酸アミド、商品名:「花王ワックスEBFF」、花王社製)0.3質量部を二軸押出機に供給し、180~280℃で溶融混練した。次に、溶融混練物を冷却して粘度を調整した後、単軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型(直径1.0mmのノズルを8穴有する)の各ノズルから樹脂を押し出し、30~50℃の水中でカットした。得られた樹脂粒子(ペレット1)は、粒子の長さLが1.1~1.5mm、粒子の平均径Dが1.1~1.5mmであった。任意の20個の樹脂粒子の平均粒子径は1.3mmであった。
【0112】
<発泡粒子の作製>
内容積150Lの耐圧密閉可能な回転混合機に、得られた樹脂粒子60kg(100質量部)、ポリエチレングリコール(日油社製PEG#300)0.1質量部、水2.5質量部、発泡剤としてのブタン(イソブタン:ノルマルブタン=3:7)を18質量部投入して回転させた。回転させながら器内を45分で100℃まで昇温させ100℃で1.5時間保持した後、25℃以下まで器内を冷却させ、耐圧密閉可能な容器へ発泡性粒子を取り出した。圧力を維持した密閉容器の中から、少量ずつ抜き出しただちに発泡させて、発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の嵩密度は、0.12g/cmであった。
なお、樹脂粒子に使用されたエステル系エラストマーのビカット軟化点は110℃であり、融解温度は153℃であった。
【0113】
<発泡成形体の作製>
得られた発泡粒子を密閉容器(オートクレーブ)内にいれ、この密閉容器内に窒素ガスを0.3MPaで圧入し、常温にて18時間静置して、発泡粒子内に窒素ガスを含浸(内圧付与)させた。
密閉容器から取り出した発泡粒子を直ちに凹型の金型と凸型の金型からなる一対の金型を有する成形装置の成形用キャビティ(200mm×240mm×厚み20mm)内に充填した。充填完了後、型締めし、0.24MPaの水蒸気で50秒間加熱成形し、発泡成形体を得た。
発泡成形体は50~70℃のオーブンで4時間以上放置して、内部水分などを逸散させ乾燥させた。オーブンから取り出した発泡成形体を常温で3時間以上放置したのち、各種の評価に供した。発泡成形体の密度は、0.14g/cmであった。結果を表1に示す。
【0114】
実施例2
樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程において水の使用量を0.25質量部へ変更したことを除き、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡成形体を作製し、各種評価に供した。結果を表1に示す。
【0115】
比較例1
樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程において水の使用量を0.20質量部へ変更したことを除き、実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡成形体を作製し、各種評価に供した。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】