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特開2024-115310候補区間の選定装置と選定方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115310
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】候補区間の選定装置と選定方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20240819BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240819BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
G08G1/01 D
G08G1/00 C
G01C21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020941
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 豪仁
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129DD22
2F129DD24
2F129DD49
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE57
2F129EE82
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF41
2F129FF67
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB15
5H181DD01
5H181DD03
5H181EE02
(57)【要約】
【課題】 ワイヤレス給電器を道路に設置する場合の候補区間の選定を容易化する。
【解決手段】 本開示の一態様に係る装置は、ワイヤレス給電器を設置する道路の候補区間の選定装置であって、前記道路の走行環境と交通量とを含む入力データを記憶する記憶部と、前記入力データを用いて前記候補区間の選定処理を実行する制御部と、を備え、前記候補区間の選定処理は、車両が所定速度以下の低速で走行する頻度が高い低速区間を抽出する処理と、抽出された前記低速区間のうち、前記車両が前記低速で走行する低速期間が所定時間以上である前記低速区間を前記候補区間とする処理と、を含む。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス給電器を設置する道路の候補区間の選定装置であって、
前記道路の走行環境と交通量とを含む入力データを記憶する記憶部と、
前記入力データを用いて前記候補区間の選定処理を実行する制御部と、を備え、
前記候補区間の選定処理は、
車両が所定速度以下の低速で走行する頻度が高い低速区間を抽出する処理と、
抽出された前記低速区間のうち、前記車両が前記低速で走行する低速期間が所定時間以上である前記低速区間を前記候補区間とする処理と、を含む、候補区間の選定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
公共車両の定期路線に対応する道路区間を、前記定期路線に対応しない道路区間に比べて前記低速区間として抽出され易くする、請求項1に記載の候補区間の選定装置。
【請求項3】
前記制御部は、更に、
前記候補区間に設置される前記ワイヤレス給電器が電力を供給する給電期間の選定処理を実行する、請求項1に記載の候補区間の選定装置。
【請求項4】
前記給電期間の選定処理は、
前記候補区間の前記低速期間を前記給電期間とする処理を含む、請求項3に記載の候補区間の選定装置。
【請求項5】
前記交通量は、OD交通量であり、
前記制御部は、
前記OD交通量に相当する台数の模擬車両を道路ネットワークに発生させた場合の交通流のシミュレート結果に基づいて、前記低速区間を抽出する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の候補区間の選定装置。
【請求項6】
前記OD交通量は、
実測された交通量に基づく統計データである、請求項5に記載の候補区間の選定装置。
【請求項7】
前記OD交通量は、
人為的に生成された仮想データである、請求項5に記載の候補区間の選定装置。
【請求項8】
ワイヤレス給電器を設置する道路の候補区間の選定装置が実行する、前記候補区間の選定方法であって、
前記選定装置の記憶部が、前記道路の走行環境と交通量とを含む入力データを記憶するステップと、
前記選定装置の制御部が、前記入力データを用いて前記候補区間の選定処理を実行するステップと、含み、
前記候補区間の選定処理は、
車両が所定速度以下の低速で走行する頻度が高い低速区間を抽出する処理と、
抽出された前記低速区間のうち、前記車両が前記低速で走行する低速期間が所定時間以上である前記低速区間を前記候補区間とする処理と、を含む、候補区間の選定方法。
【請求項9】
ワイヤレス給電器を設置する道路の候補区間の選定装置として、コンピュータを機能させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記道路の走行環境と交通量とを含む入力データを記憶する記憶部、及び、
前記入力データを用いて前記候補区間の選定処理を実行する制御部、として機能させ、
前記候補区間の選定処理は、
車両が所定速度以下の低速で走行する頻度が高い低速区間を抽出する処理と、
抽出された前記低速区間のうち、前記車両が前記低速で走行する低速期間が所定時間以上である前記低速区間を前記候補区間とする処理と、を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、候補区間の選定装置と選定方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車の路線バス(以下、「電動バス」という。)に適用される充電システムが記載されている。この充電システムは、電動バスの車載バッテリと、バス停留所に設けられた貯蔵用バッテリと、両バッテリ間で充放電回路を構成して電力を伝送する電力伝送装置と、車載バッテリの残量を収集する中央制御装置とを備える。
中央制御装置は、収集した車載バッテリの残量に基づいて、バッテリ充電が必要な電動バスを検出し、検出した電動バスに充電の実行指示を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-27159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の通り、充電スタンド以外の種々の場所において、電気自動車の車載バッテリに給電する方策が検討されている。また、装柱の給電方式として、有線給電方式又はワイヤレス給電方式が検討されている。
このうち、ワイヤレス給電方式では、例えば、誘導コイルを含む送電パネルを車道の地中に埋設する方策を採用し得るので、都市の景観を阻害しないという利点がある。
【0005】
しかし、ワイヤレス給電器を道路に設置する方策を採用するとしても、設置すべき道路の候補区間を選定する作業に手間がかかるという問題がある。
本開示は、かかる従来の問題点に鑑み、ワイヤレス給電器を道路に設置する場合の候補区間を容易に選定できるようにすることを第1の目的とする。
【0006】
一方、仮に選定した候補区間に実際にワイヤレス給電器を設置するとしても、設置したすべてのワイヤレス給電器が常に稼働状態であると、発電所管内での配電バランスが崩れて送電ロスが発生する可能性がある。
本開示は、かかる従来の問題点に鑑み、道路に設置されるワイヤレス給電器に対する効率的な給電期間を容易に選定できるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る装置は、ワイヤレス給電器を設置する道路の候補区間の選定装置であって、前記道路の走行環境と交通量とを含む入力データを記憶する記憶部と、前記入力データを用いて前記候補区間の選定処理を実行する制御部と、を備え、前記候補区間の選定処理は、車両が所定速度以下の低速で走行する頻度が高い低速区間を抽出する処理と、抽出された前記低速区間のうち、前記車両が前記低速で走行する低速期間が所定時間以上である前記低速区間を前記候補区間とする処理と、を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る方法は、ワイヤレス給電器を設置する道路の候補区間の選定装置が実行する、前記候補区間の選定方法であって、前記選定装置の記憶部が、前記道路の走行環境と交通量とを含む入力データを記憶するステップと、前記選定装置の制御部が、前記入力データを用いて前記候補区間の選定処理を実行するステップと、含み、前記候補区間の選定処理は、車両が所定速度以下の低速で走行する頻度が高い低速区間を抽出する処理と、抽出された前記低速区間のうち、前記車両が前記低速で走行する低速期間が所定時間以上である前記低速区間を前記候補区間とする処理と、を含む。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、ワイヤレス給電器を設置する道路の候補区間の選定装置として、コンピュータを機能させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、前記道路の走行環境と交通量とを含む入力データを記憶する記憶部、及び、前記入力データを用いて前記候補区間の選定処理を実行する制御部、として機能させ、前記候補区間の選定処理は、車両が所定速度以下の低速で走行する頻度が高い低速区間を抽出する処理と、抽出された前記低速区間のうち、前記車両が前記低速で走行する低速期間が所定時間以上である前記低速区間を前記候補区間とする処理と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ワイヤレス給電器を道路に設置する場合の候補区間を容易に選定することができる。
本開示によれば、道路に設置されるワイヤレス給電器に対する効率的な給電期間を容易に選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、交通情報処理システムの一例を示す概略構成図である。
図2図2は、センタ装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、実走行情報の構成例を示すテーブルである。
図4図4は、所定の時間帯のOD交通量の一例を示す交通量テーブルである。
図5図5は、交通流シミュレータによる情報処理の一例を示す説明図である。
図6図6は、交通流シミュレータの構成例を示すブロック図である。
図7図7は、交通流の補正処理の一例を示す説明図である。
図8図8は、候補区間の選定処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、給電期間の選定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
【0013】
(1) 本実施形態に係る装置は、ワイヤレス給電器を設置する道路の候補区間の選定装置であって、前記道路の走行環境と交通量とを含む入力データを記憶する記憶部と、前記入力データを用いて前記候補区間の選定処理を実行する制御部と、を備え、前記候補区間の選定処理は、車両が所定速度以下の低速で走行する頻度が高い低速区間を抽出する処理と、抽出された前記低速区間のうち、前記車両が前記低速で走行する低速期間が所定時間以上である前記低速区間を前記候補区間とする処理と、を含む。
【0014】
本実施形態の選定装置によれば、制御部が、車両が所定速度以下の低速で走行する頻度が高い低速区間を抽出する処理と、抽出された低速区間のうち、車両が低速で走行する低速期間が所定時間以上である低速区間を候補区間とする処理を実行するので、候補区間の選定処理が制御部により自動的に行われる。
このため、ワイヤレス給電器を道路に設置する場合の候補区間を容易に選定することができる。従って、第1の目的が達成される。
【0015】
(2) 本実施形態の選定装置において、前記制御部は、公共車両の定期路線に対応する道路区間を、前記定期路線に対応しない道路区間に比べて前記低速区間として抽出され易くしてもよい。
このようにすれば、公共車両の定期路線に対してワイヤレス給電器の候補区間を優先的に割り振る選定処理が可能となる。
【0016】
(3) 本実施形態の選定装置において、前記制御部は、更に、前記候補区間に設置される前記ワイヤレス給電器が電力を供給する給電期間の選定処理を実行してもよい。
本実施形態の選定装置によれば、制御部が、上記の給電期間の選定処理を実行するので、道路に設置されるワイヤレス給電器に対する効率的な給電期間を容易に選定することができる。従って、第2の目的が達成される。
【0017】
(4) 本実施形態の選定装置において、前記給電期間の選定処理は、前記候補区間の前記低速期間を前記給電期間とする処理を含んでもよい。
その理由は、低速期間以外の時間帯では、電気自動車が比較的高速で走行するため、ワイヤレス給電器を稼働させても電機自動車に送電できない可能性が高いからである。
【0018】
(5) 本実施形態の選定装置において、前記交通量がOD交通量である場合には、前記制御部は、前記OD交通量に相当する台数の模擬車両を道路ネットワークに発生させた場合の交通流のシミュレート結果に基づいて、前記低速区間を抽出してもよい。
このようにすれば、交通流のシミュレート結果から低速区間を抽出できるので、低速区間を人為的に判断する場合に比べて、正確かつ簡便に低速区間を抽出することができる。
【0019】
(6) 本実施形態の選定装置において、前記OD交通量は、実測された交通量に基づく統計データであってもよい。
この場合、シミュレート結果が統計的な交通状況に応じた交通流となるので、実際の交通状況に即した候補区間を選定することができる。
【0020】
(7) 本実施形態の選定装置において、前記OD交通量は、人為的に生成された仮想データであってもよい。
この場合、シミュレート結果が仮想的な交通状況に応じた交通流となるので、例えばユーザが想定する仮想的な交通状況に即した候補区間を選定することができる。
【0021】
(8) 本実施形態に係る方法は、上述の(1)から(7)に記載の候補区間の選定装置が実行する選定方法である。従って、本実施形態の選定方法は、上述の(1)から(7)に記載の候補区間の選定装置と同様の作用効果を奏する。
【0022】
(9) 本実施形態に係るコンピュータプログラムは、上述の(1)から(7)に記載の候補区間の選定装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムである。従って、本実施形態のコンピュータプローブは、上述の(1)から(7)に記載の候補区間の選定装置と同様の作用効果を奏する。
【0023】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0024】
〔用語の定義〕
本発明の実施形態を説明するに当たり、まず、本明細書で用いる用語の定義を行う。
「車両」:道路を通行する車両全般のことをいう。具体的には、本実施形態の車両には、自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスなどの他、自動二輪車も含まれる。車両の駆動源は、内燃機関に限定されない。
【0025】
従って、車両には、ICEV(Internal Combustion Engine Vehicle)、EV(Electric Vehicle)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、及びPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などが含まれる。
車両は、搭乗者による操作が必要な「通常運転車両」であってもよいし、搭乗者による操作が不要なレベル4以上の「自動運転車両」であってもよい。
【0026】
「通信車両」:基地局などの路側無線機との無線通信が可能な車両のことをいう。通信車両は、通常運転車両及び自動運転車両のいずれであってもよい。本実施形態では、単に「車両」というときは、通信車両とそれ以外の非通信車両の双方を含むものとする。
【0027】
「実走行情報」:実際に道路を走行する通信車両から得られる、当該車両の走行経路を特定するための各種の情報のことをいう。
実走行情報には、過去の情報である「走行実績情報」と、将来の情報である「走行予定情報」が含まれる。
【0028】
「走行実績情報」:実際に道路を走行する通信車両から得られる、当該車両が過去に走行した実走経路を特定するための各種の情報のことをいう。
走行実績情報には、車両ID、実走経路の通過点における車両位置、車両速度、車両方位及びこれらの発生時刻などが含まれる。走行実績情報は、プローブデータ又はフローティングカーデータと称される。車両位置と時刻が分かれば車両速度を算出できるので、走行実績情報は、少なくとも実走経路の通過点の位置と発生時刻を含んでおれば足りる。
【0029】
「走行予定情報」:実際に道路を走行する通信車両から得られる、当該車両が将来に走行する予定経路を特定するための各種の情報のことをいう。
走行予定情報には、車両ID、予定経路の通過点における車両位置、車両速度、車両方位及びこれらの予定時刻などが含まれる。車両位置と時刻が分かれば車両速度を算出できるので、走行予定情報は、少なくとも車両位置と時刻が含まれておれば足りる。
【0030】
「リンク」:交差点などの所定地点であるノード間を繋ぐ、上り又は下りの方向を有する道路区間のことをいう。
ある交差点から見て、当該交差点に向かって流入する方向のリンクのことを、「流入リンク」いう。ある交差点から見て、当該交差点から流出する方向のリンクのことを、「流出リンク」という。
【0031】
「ワイヤレス給電器」:電気自動車の車載バッテリに非接触で給電する装置のことをいう。ワイヤレス給電器は、例えば、商用電源又は設置型バッテリなどよりなる電源と、電源に電気的に接続される誘導コイルを含む送電パネルとから構成される。
ワイヤレス給電器の設置位置は、送電パネルの設置位置を意味する。また、ワイヤレス給電器の設置方式は、例えば、車道に送電パネルを埋設する方式、或いは、車道を上から覆うルーフ又はトンネルの天井部分に送電パネルを取り付ける方式などを採用し得る。
【0032】
「候補区間」:ワイヤレス給電器の送電パネルを設置するのに適した区間として、人為的又はコンピュータにより選定される道路区間のことをいう。本実施形態では、交通流シミュレータ21に候補区間の選定処理を実行させる。
候補区間の選定対象となる道路区間の単位は、例えば、道路ネットワークを構成するリンクを採用し得る。もっとも、道路区間の単位は、リンクを複数に分割した小区間(例えば長さ50mの区間)であってもよいし、複数のリンクを繋いだ区間であってもよい。
【0033】
〔交通情報処理システム〕
図1は、本実施形態に係る交通情報処理システムの一例を示す概略構成図である。
本実施形態の交通情報処理システムでは、センタ装置5が、車両位置と通過時刻を含む実走行情報を通信車両1から収集する。センタ装置5は、収集した実走行情報を利用して所定のデータ処理を施し、所定の道路区間(例えばリンク)の旅行時間及び渋滞状況などの交通情報を通信車両1の搭乗者などに提供するサービスを行う。
【0034】
図1に示すように、交通情報処理システムは、通信車両1に搭載された車載機2及び通信装置3と、路側に設置された無線基地局4及びセンタ装置5と、を備える。
通信車両1と無線基地局4は、無線通信が可能である。無線基地局4とセンタ装置5は、所定の通信回線6を介して有線通信が可能である。もっとも、無線基地局4とセンタ装置5との間の通信も無線通信であってもよい。
【0035】
車載機2は、車速センサ、方位センサ、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、ナビゲーション装置、メモリ、及び計時装置などを含む。
車載機2は、通信車両1の位置と時刻などの実走行情報に含めるべきデータを所定時間ごと又は所定距離ごとに収集し、メモリに蓄積する。
【0036】
通信装置3は、通信車両1に常設された通信インタフェース又は一時的に搭載される携帯端末である。携帯端末は、例えば、スマートフォン又はタブレット型コンピュータなどが採用され得る。通信装置3は、メモリに蓄積された実走行情報を送信可能である。
【0037】
実走行情報のうち、走行予定情報は、車載機2のナビゲーション装置が生成する。具体的には、ナビゲーション装置は、搭乗者が入力した出発地点及び目的地点を入力情報として経路探索処理を実行し、通信車両1の予定経路を生成する。
また、ナビゲーション装置は、予定経路の通過位置及び通過時刻などを含むデータ(走行予定情報)を生成する。生成されたデータは、いったんメモリに蓄積され、通信装置3によりセンタ装置5宛てに送信される。
【0038】
無線基地局4は、通信車両1から受信した実走行情報(すなわち、走行実績情報及び走行予定情報)をセンタ装置5に転送する。
実走行情報は、光ビーコンやITS(Intelligent Transport Systems)無線機などの路側装置(図示せず)を介して、センタ装置5に転送してもよい。
【0039】
〔センタ装置の構成例〕
図2は、センタ装置5の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、センタ装置5は、送受信部10、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14、及び、記憶部12に構築される複数のデータベース15,16,17を備える。送受信部10は、無線基地局4と制御部11との間で、実走行情報や実際の渋滞状況などの各種のデータを送受信する。
【0040】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)などを含む演算処理装置である。制御部11には、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの集積回路が含まれていてもよい。
制御部11は、記憶部12に格納されたコンピュータプログラム18をメモリ(RAM)に読み出し、読み出したプログラム18に従って所定の情報処理を行う。
【0041】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを含む補助記憶装置である。記憶部12は、フラッシュROM(Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、又はSDカードを含んでもよい。
記憶部12に格納されるコンピュータプログラム18には、制御部11を交通流シミュレータ21又は信号制御装置22として機能させるためのアプリケーションプログラムなどが含まれる。
【0042】
入力部13は、ユーザが制御部11に対して所定の操作指令を行うための入力インタフェースである。入力部13には、例えば、マウス及びキーボードなどのヒューマンインタフェースが含まれる。
表示部14は、制御部11のGPU(Graphic Processing Unit)により画面表示される液晶パネルなどのディスプレイ機器である。表示部14は、コンピュータプログラム18による画像処理に応じて、操作ウィンドウ及び動画などの各種の画像を表示する。
【0043】
〔複数のデータベースの内容〕
図2に示すように、複数のデータベース15,16,17には、走行情報データベース15、走行環境データベース16、及びパラメータデータベース17が含まれる。以下、これらの内容を説明する。
【0044】
(走行情報データベース)
走行情報データベース15は、複数の通信車両1から収集した実走行情報が格納されるデータベースである。図3は、実走行情報の構成例を示すテーブルである。
図3の「項目」の欄に示すように、実走行情報の情報種別には、「ノード情報」、「リンク情報」、「位置情報」及び「信号機情報」などが含まれる。
【0045】
ノード情報のデータ内容には、通信車両1が通過した或いは通過予定のノード(交差点)の有効データ数nと、そのノード番号とが含まれる。
通信車両1の車載機2は、交差点を通過するごとに、その通過時刻(秒単位)と通過した交差点のノード番号を実走行情報に含める。
【0046】
リンク情報のデータ内容には、通信車両1が通行した或いは通行予定のリンクの有効データ数nと、そのリンク番号が含まれる。
通信車両1の車載機2は、特定のリンクの車線を通過するごとに、その通行時刻とリンク番号と車線番号を実走行情報に含める。
【0047】
位置情報のデータ内容には、所定時間又は所定距離ごとに収集された車両位置の情報数nと、その車両位置(例えば緯度及び経度)とが含まれる。
通信車両1の車載機2は、所定時間又は所定距離を走行するごとに、現在時刻、車両位置、車両情報(車種や全長全幅など)、車両速度及び絶対方位を実走行情報に含める。
【0048】
信号機情報のデータ内容には、通信車両1が光ビーコン(図示せず)その他の路側機から取得した交通信号機の信号機情報の数と、その信号機情報の詳細内容が含まれる。
通信車両1は、通過した交差点の時刻と、その通過時点における交通信号機の現示及び作業モード番号などを実走行情報に含める。なお、実走行情報が走行予定情報である場合は、信号機情報を含める必要はない。
【0049】
(走行環境データベース)
走行環境データベース16は、デジタル道路地図(DRM:Digital Road Map)のデータ(以下、「地図データ」という。)が格納されるデータベースである。
地図データには、センタ装置5の管轄エリアに属するリンク及びノード(交差点)の位置(緯度及び経度)、それらの識別番号、各リンクの車線数などのデータが含まれる。走行環境データベース16には、交差点に設置された信号機の信号情報(例えば時間ごとの信号灯色)も含まれる。
【0050】
(パラメータデータベース)
パラメータデータベース17は、交通流のシミュレーションに必要な各種のパラメータが格納されるデータベースである。
パラメータには、出発ゾーンと到着ゾーンごとに発生交通量と消滅交通量を定義するOD表(マトリックス)、OD表のセルごとに算出された各ゾーン間のOD交通量、リンクごとの車両速度(例えば規制速度)などが含まれる。このうち、OD交通量は、所定の時間帯ごとに記録される。「OD」は、「Origin」と「Destination」の略語である。
【0051】
図4は、所定の時間帯のOD交通量の一例を示す交通量テーブルである。
図4の交通量テーブルでは、起点/終点がOD表のセルA1、A5、A6、A10、A12である場合の交通量が規定されている。
具体的には、起点をセルA1とし終点をセルA5とする交通量が所定時間内に40台あることを示す。また、起点をセルA10とし終点をセルA5とする交通量が150台あることを示す。他の場合も同様である。なお、車両の台数値は図示に限定されない。
【0052】
〔センタ装置の機能〕
前述の通り、センタ装置5の制御部11は、記憶部12から読み出したコンピュータプログラム18を実行することにより、交通流シミュレータ21として機能し得る。
交通流シミュレータ21は、デジタル地図の所定エリア(例えば1つの県、地方、都市又は州など)に含まれるリンク網よりなる道路ネットワークに、複数の模擬車両SVを試験的に走行させ、リンク旅行時間及び渋滞長などの交通評価指標を出力する装置である。
【0053】
交通流シミュレータ21は、データベース15,16,17からシミュレーションに必要なデータを読み出し、車両通行に関する交通流シミュレーションを実行する。
本実施形態では、ユーザによる入力部13への操作入力により、シミュレーションを行うエリア、OD交通量、規制区間、渋滞区間などの所定の設定入力が行われる。交通流シミュレータ21は、設定された条件に従ってシミュレーションを実行する。
【0054】
具体的には、交通流シミュレータ21は、設定されたエリアに含まれる複数のゾーンのOD表とOD交通量を読み出し、所定の分布交通量モデルに基づくアルゴリズムにより、所定時間経過ごとの車両1台ごとの挙動を演算する。
また、交通流シミュレータ21は、演算した車両の挙動を道路ネットワークの画像に対するアニメーションとして表示部14に表示する。
【0055】
センタ装置5の制御部11は、記憶部12から読み出したコンピュータプログラム18を実行することにより、複数の交通信号制御機を制御する信号制御装置22としても機能し得る。
従って、センタ装置5の送受信部10は、管轄エリア内の車両感知器や交通信号制御機(図示せず)とも、通信回線6を介して通信可能に接続されている。
【0056】
信号制御装置22は、送受信部10が受信した車両感知器の感知信号に基づいて、系統制御や広域制御などの交通感応制御を行い、この制御の結果生成した各交差点の信号制御パラメータを、送受信部10から交通信号制御機に送信する。
上記の交通感応制御には、例えば、MODERATO(Management by Origin-DEstination Related Adaptation for Traffic Optimization)制御やプロファイル制御などを含む複数種類の制御が含まれる。
【0057】
信号制御装置22は、交通感応制御の結果の出力である、所定時間ごとの信号灯器の灯色切り替えタイミング等に関する信号制御指令を、所定周期(例えば1分)ごとに交通信号制御機に送信する。
【0058】
〔交通流シミュレータの構成例〕
図5は、交通流シミュレータ21による情報処理の一例を示す説明図である。
図5に示すように、交通流シミュレータ21の入力データには、所定エリア内の道路ネットワークなどの「走行環境」、所定の時間帯の「OD交通量」、及び、ユーザが意図的に設定し得る通行規制又は突発的な渋滞位置などの「設定情報」が含まれる。
交通流シミュレータ21の出力データ(交通評価指標)は、「リンク旅行時間」、「渋滞長」、「待ち行列長」、及びリンクに対する「車両通過台数」のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0059】
入力データの一種であるOD交通量は、例えば、実測された交通量に基づく統計データである。この場合、交通流シミュレータ21が生成する交通流は、実際の道路網で発生する交通流と近似する。
具体的には、統計データとしてのOD交通量は、車両の起点(出発地)と終点(目的地)の間の交通量を求めたもので、例えば、過去の所定期間(例えば1年間)分だけ蓄積された実走行情報から生成される。
【0060】
また、統計データとしてのOD交通量は、国又は自治体が定期的に実施する統計調査の結果得られた調査統計データであってもよい。
入力データの一種であるOD交通量は、上記の統計データではなく、ユーザにより人為的に生成された仮想データであってもよい。この場合、交通流シミュレータ21が生成する交通流は、ユーザが想定する仮想的な交通状況を反映した交通流となる。
【0061】
交通流シミュレータ21は、例えば、複数の出発地点から複数の模擬車両SVを発生させ、各々の模擬車両SVが目的地点まで到達した時点で模擬車両SVを消滅させる。
この際、交通流シミュレータ21は、所定の制御周期(例えば、0.1~1.0秒)ごとの車両位置の時系列データよりなる道路ネットワーク上の交通流を生成し、生成した交通流に基づいて、各道路区間(リンク)の旅行時間、渋滞長、及び待ち行列長などの交通評価指標を算出する。
【0062】
交通流シミュレータ21は、道路ネットワークに発生させる複数の模擬車両SVのうちの一部を、実走行情報により経路が既知である通信車両1に対応する車両(以下、「実走行車両RV」という。)に指定することができる。
例えば、起点が図4のセルA1を通り、終点が図4のセルA5を通る、3台の通信車両1の実走行情報が走行情報データベース15に存在する場合には、A1/A5の40台の車両のうちの3台を実走行車両RVに指定される。
【0063】
図6は、交通流シミュレータ21の構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、交通流シミュレータ21は、制御周期ごとに各模擬車両SVの経路を選択する経路選択部23と、制御周期ごとにリンク旅行時間などの所定の交通評価指標を算出する指標算出部24と、を備える。
【0064】
経路選択部23は、所定の経路選択モデルに従って各模擬車両SVの経路を選択する処理を、制御周期ごとに実行する。
経路選択部23は、指標算出部24から逐次入力される交通評価指標(例えばリンク旅行時間)を用いて、各模擬車両SVの経路選択を実行する。経路選択部23は、選択した各模擬車両SVの経路を、制御周期ごとに指標算出部24に出力する。
【0065】
模擬車両SVの経路選択モデルは、例えば、次の算出式で定義される経路計算指標が最小となる経路を選択するモデルを採用すればよい。
経路計算指標(秒)=走行距離/規制速度+重み係数×走行時間+料金×時間係数
経路選択部23は、模擬車両SVが実走行車両RVである場合は、実走行情報に基づく経路をそのまま採用する。
【0066】
具体的には、実走行情報が走行実績情報(プローブデータ)である場合は、経路選択部23は、当該情報から特定される実走経路を採用する。実走行情報が走行予定情報である場合は、経路選択部23は、当該情報から特定される予定経路を採用する。
【0067】
指標算出部24は、経路選択部23から逐次入力される経路情報に従って、各模擬車両SVを道路ネットワーク上で移動させる。また、指標算出部24は、所定の車両挙動モデルに従って各模擬車両SVを、道路ネットワーク上で移動させる。
指標算出部24は、各模擬車両SVを道路ネットワーク上で移動させるごとに、各時点のリンク旅行時間などの交通評価指標を算出する。指標算出部24は、算出したリンク旅行時間などの交通評価指標を経路選択部23に出力する。
【0068】
模擬車両SVの車両挙動モデルは、種々のモデルを採用し得るが、例えば、先行車両と追従車両との車間距離、及び、先行車両及び追従車両の速度から求まる模擬車両SVの加減速度によって挙動を表現するモデルを採用することが好ましい。
この場合、渋滞の延伸又は消滅、及び、個々の模擬車両SVの加減速度などを道路ネットワーク上で表現することができる。
【0069】
〔交通流の補正処理〕
図7は、交通流の補正処理の一例を示す説明図である。
図7において、実渋滞データAは、管轄エリアに含まれる交通信号制御機を実際に遠隔制御する交通管制センター(図示せず)で計測された渋滞長である。模擬渋滞データSは、補正処理の前に交通流シミュレータ21が出力する渋滞長である。
【0070】
図7に示すように、交通流シミュレータ21は、A>Sならば、リンクに「ダミー車両DV」を追加して、模擬渋滞データSを実渋滞データAと一致させる。ダミー車両DVの追加台数は、A>Sの場合の補正台数となる。
交通流シミュレータ21は、A<Sならば、リンクから「模擬車両SV」を削除して、模擬渋滞データSを実渋滞データAと一致させる。模擬車両SVの削除台数は、A<Sの場合の補正台数となる。
【0071】
ダミー車両DVの通過台数及び模擬車両SVの削除台数は、渋滞が発生したリンクを含む交通流の補正台数として、記憶部12の所定領域に記録される。補正台数に基づく交通流の補正は、次回以後のシミュレーションにおいて実行される。
これにより、補正処理を実行した後の交通流シミュレータ21は、渋滞が発生したリンクを含む経路の交通流について、実際の交通状況により近い交通流をシミュレートできるようになる。
【0072】
〔候補区間の選定処理〕
図8は、候補区間の選定処理の一例を示す説明図である。
図8の選定処理は、電気自動車に給電する場合に使用される、ワイヤレス給電器を設置する道路の候補区間を選定する処理である。
例えば、ワイヤレス給電器の送電パネルを道路に埋設する場合を想定すると、車両の通過時間が長い道路区間、すなわち低速走行の頻度が高い道路区間ほど、車両が送電パネルの直上に長時間滞在するので、給電量が多くなると考えられる。
【0073】
そこで、本実施形態では、交通流シミュレータ21が演算する交通流において、模擬車両SVの通過時間がなるべく長くなる道路区間、すなわち、模擬車両SVが低速になる頻度が高い道路区間を、ワイヤレス給電器を設置する場合の候補区間として選定する。
交通流シミュレータ21が実行可能な動作モードには、上記の候補区間の選定処理も含まれる。従って、交通流シミュレータ21を有する本実施形態のセンタ装置5は、ワイヤレス給電器を設置するのに適した「候補区間の選定装置」としても機能し得る。
【0074】
以下、図8を参照しつつ、候補区間の選定処理の具体例を説明する。
なお、本実施形態では、「低速走行の頻度」は、例えば、リンクLiを通行するすべての模擬車両SVのうち、所定速度以下の低速走行が発生した車両の台数(度数)であるとする。また、図8中の各パラメータの意味は、次の通りである。
Li :所定エリア内の道路ネットワークを構成するリンク(iはリンク番号)
N :1つのリンクLiにおける低速車両(例えば20km/h以下の模擬車両SV)の発生回数
【0075】
t :1日(24時間)を所定周期(例えば30分)で進行する時間帯
Fi :リンクLiの発生回数Nの度数分布
Ti :リンクLiの度数分布Fiにおいて、N≧Th1となる時間帯tが連続して発生する場合の複数の時間帯tの合計期間(以下、「低速期間」という。)
Th1:発生回数Nの下限閾値(例えば100回)
Th2:低速期間Tiの下限閾値(例えば3時間)
【0076】
図8に示すように、動作モードが候補区間の選定処理に設定された交通流シミュレータ21は、所定の入力データを読み込む(ステップST11)。
前述の通り、入力データには、所定エリア内の道路ネットワークなどの「走行環境」、所定の時間帯の「OD交通量」、及び、ユーザが意図的に設定し得る通行規制又は突発的な渋滞位置などの「設定情報」が含まれる(図5参照)。
【0077】
次に、交通流シミュレータ21は、読み込んだ入力データに基づいて、交通流シミュレーションを実行する(ステップST12)。
具体的には、ユーザが指定するエリア、OD交通量、規制区間、及び渋滞区間などの所定条件を含む入力データに基づいて、複数の模擬車両SVの挙動を演算することにより、道路ネットワークに発生する交通流のシミュレーションを実行する。
【0078】
次に、交通流シミュレータ21は、低速区間の抽出処理を実行する(ステップST13)。ここで、低速区間は、車両が所定速度以下の低速で走行する頻度が高い道路区間(例えばリンクLi)のことである。
また、低速区間の抽出処理は、リンクLiごとに生成した低速車両の発生回数Nの度数分布Fiに基づいて、上記の低速区間を抽出する処理である。具体的には、低速区間の抽出処理は、以下の処理1から処理3を含む。
【0079】
処理1:模擬車両SVの時刻ごとの位置及び速度に基づいて、横軸が時間帯tであり縦軸が発生回数Nである度数分布Fiを、道路ネットワークのリンクLiごとに生成する。
処理2:生成したリンクLiの度数分布Fiについて、N≧Th1を満たす連続した複数の時間帯tである低速期間Tiの有無を判定する。
【0080】
処理3:N≧Th1を満たす低速期間Tiが存在するリンクLiの中から、Ti≧Th2を満たすリンクLiの存否を判定し、当該不等式を満たすリンクLiを、抽出対象の低速区間とする。
次に、交通流シミュレータ21は、抽出した低速区間をワイヤレス給電器の設置に適した候補区間とする(ステップST14)。具体的には、抽出した低速区間を、ワイヤレス給電器の設置場所の候補区間として記憶部12に記憶させる。
【0081】
次に、交通流シミュレータ21は、記憶した候補区間を表示部14に表示させる(ステップST15)。候補区間の表示形式は特に限定されないが、例えば候補区間は、斜線付きの道路として表示部14に表示される。
図8の例では、交差点J1と交差点J2の間のリンクと、交差点J2と交差点J3の間のリンクが候補区間として表示されている。これにより、交通流シミュレータ21が選定した候補区間が、ユーザに対して視認可能に提示される。
【0082】
ステップST13の抽出処理において、リンクLiが、バスなどの公共車両の定期路線に対応する場合は、例えば、低速車両の発生回数Nに重み係数α(>1)をかける、或いは、発生回数Nの下限閾値Th1を他のリンクLiよりも高めに設定してもよい。
この場合、公共車両の定期路線に対応するリンクLiが、定期路線に対応しない他のリンクLiに比べて低速区間として抽出され易くなる。従って、定期路線に対してワイヤレス給電器の候補区間を優先的に割り振る選定処理が可能となる。
【0083】
〔給電期間の選定処理〕
図9は、給電期間の選定処理の一例を示す説明図である。
図9の選定処理は、候補区間に設置されたワイヤレス給電器から電力を供給する期間(以下、「給電期間」という。)を選定する処理である。
例えば、候補区間であっても、車両が高速で通行して給電できない時間帯もあるので、候補区間に設置したワイヤレス給電器が常に稼働状態にあるのは非効率である。
【0084】
そこで、本実施形態では、交通流シミュレータ21は、候補区間の選定処理(図8)に加えて、選定した候補区間にワイヤレス給電器が設置されたと仮定した場合に、設置されたワイヤレス給電器による給電期間の選定処理を実行する。
交通流シミュレータ21が実行可能な動作モードには、上記の給電期間の選定処理も含まれる。従って、交通流シミュレータ21を有する本実施形態のセンタ装置5は、道路に設置済みのワイヤレス給電器による「給電期間の選定装置」としても機能し得る。
【0085】
以下、図9を参照しつつ、給電期間の選定処理の具体例を説明する。
図9に示すように、動作モードが給電期間の選定処理に設定された交通流シミュレータ21は、図8の選定処理により選定された候補区間(リンクLi)を記憶部12から読み出す(ステップST21)。
次に、交通流シミュレータ21は、読み込んだ候補区間(リンクLi)に関する発生回数Nの度数分布Fiを記憶部12から読み出す(ステップST22)。
【0086】
次に、交通流シミュレータ21は、読み出した度数分布Fiに基づいて、候補区間のワイヤレス給電器が給電する時間帯(給電期間)を決定する(ステップST23)。
具体的には、交通流シミュレータ21は、読み出した度数分布Fiにおける、N≧Th1となる低速期間Tiを、候補区間の給電期間とする。その理由は、低速期間Ti以外の時間帯では、電気自動車が比較的高速で走行するため、ワイヤレス給電器を稼働させても電機自動車に送電できない可能性が高いからである。
【0087】
また、交通流シミュレータ21は、候補区間を識別可能な道路地図を表示部14に表示させるとともに、図9のステップST23により決定した給電期間の時間情報を、候補区間の近傍に表示させる。これにより、交通流シミュレータ21が選定した給電期間が、ユーザに対して視認可能に提示される。
【0088】
図9のステップST23の処理により、例えば次の給電パターン1及び給電パターン2などの給電パターンが選定され得る。従って、これらのパターンは、表示部14によりユーザに提示され得る。
給電パターン1
平日は都市部に含まれる候補区間のワイヤレス給電器が電力を供給し、休日は郊外に含まれる候補区間のワイヤレス給電器が電力を供給する。
【0089】
給電パターン2:
1つのリンクLiの度数分布Fiに複数の低速期間Ti1,Ti2が存在する場合は、第1の低速期間Ti1(例えば通勤時間帯)に上り方向の道路のワイヤレス給電器が電力を供給し、第2の低速期間Ti2(例えば帰宅時間帯)に下り方向の道路のワイヤレス給電器が電力を供給する。
【0090】
〔その他の変形例〕
上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態において、候補区間の抽出に用いる道路区間の単位は、必ずしもリンクLiに限るものではなく、1つのリンクLiを複数に分割して定義された小区間であってもよいし、複数のリンクLiを繋いだ区間であってもよい。
【0091】
上述の実施形態では、交通シミュレータ21の入力データとしてOD交通量を採用するが、交通量はOD交通量に限定されない。
例えば、連続して繋がる複数のリンクLiで構成される1つの道路区間における候補区間を選定する場合など、起点と終点が自明である道路区間の場合には、当該道路区間に発生し得る統計的又は仮想的な交通量を、入力データとしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 通信車両
2 車載機
3 通信装置
4 無線基地局
5 センタ装置(選定装置)
6 通信回線
10 送受信部
11 制御部
12 記憶部
13 入力部
14 表示部
15 走行情報データベース
16 走行環境データベース
17 パラメータデータベース
18 コンピュータプログラム
21 交通流シミュレータ
22 信号制御装置
23 経路選択部
24 指標算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9