IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-発振器 図1
  • 特開-発振器 図2
  • 特開-発振器 図3
  • 特開-発振器 図4
  • 特開-発振器 図5
  • 特開-発振器 図6
  • 特開-発振器 図7
  • 特開-発振器 図8
  • 特開-発振器 図9
  • 特開-発振器 図10
  • 特開-発振器 図11
  • 特開-発振器 図12
  • 特開-発振器 図13
  • 特開-発振器 図14
  • 特開-発振器 図15
  • 特開-発振器 図16
  • 特開-発振器 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115318
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
H03B5/32 Z
H03B5/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020954
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】上原 純
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 久浩
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA32
5J079CB02
5J079FA02
5J079FA05
5J079FA14
5J079FA21
5J079FB02
5J079FB05
5J079FB39
5J079FB48
5J079GA02
5J079JA01
5J079JA06
(57)【要約】
【課題】内部の回路により精度良い故障診断が可能な発振器等の提供。
【解決手段】発振器4は、振動子10と、振動子10を複数の励振レベルで発振させることが可能に構成された発振回路30、発振回路30から出力される発振信号OSCの振幅検出を行う振幅検出回路40と、複数の励振レベルでの発振時における振幅検出の結果に基づいて故障診断を行う故障診断回路50を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子と、
前記振動子を複数の励振レベルで発振させることが可能に構成された発振回路と、
前記発振回路から出力される発振信号の振幅検出を行う振幅検出回路と、
複数の励振レベルでの発振時における前記振幅検出の結果に基づいて故障診断を行う故障診断回路と、
を含むことを特徴とする発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の発振器において、
前記発振回路は、
可変電流源と、
前記可変電流源から供給される電流に基づいて前記振動子を駆動する駆動回路と、
を含み、
前記複数の励振レベルは、前記可変電流源から供給される電流の値によって設定されることを特徴とする発振器。
【請求項3】
請求項1に記載の発振器において、
前記振幅検出回路は、
前記発振信号の包絡線の検波回路を含み、
前記故障診断回路は、
前記検波回路の出力電圧に基づいて前記故障診断を行うことを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項3に記載の発振器において、
前記振幅検出回路は、
前記検波回路の前記出力電圧と比較用電圧を比較して前記発振回路の発振動作の検出信号を出力する比較回路を含むことを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項1に記載の発振器において、
前記故障診断回路は、
前記振動子が第1励振レベル~第n励振レベル(nは2以上の整数)で駆動されたときの前記発振信号の振幅である第1振幅~第n振幅に基づいて、前記故障診断を行うことを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項5に記載の発振器において、
前記故障診断回路は、
前記第1振幅~前記第n振幅が所与の範囲にあるか否かを検出することで、前記故障診断を行うことを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項5に記載の発振器において、
前記故障診断回路は、
前記振動子が駆動される励振レベルを低い励振レベルから高い励振レベルへと変化させたときの振幅検出結果と、前記振動子が駆動される励振レベルを高い励振レベルから低い励振レベルに変化させたときの振幅検出結果とに基づいて、前記故障診断を行うことを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項1に記載の発振器において、
前記故障診断回路は、
発振器の起動時に行われる故障診断モードにおいて前記故障診断を行うことを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項1に記載の発振器において、
前記発振回路の発振動作を検出する発振動作検出回路を含み、
前記振幅検出回路は、前記発振動作検出回路が含む発振動作検出用の振幅検出回路と兼用されることを特徴とする発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器等に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子等の振動子を発振させてクロック信号を生成する発振器としては、例えば特許文献1に開示される従来技術がある。特許文献1では、発振信号の振幅を検出し、異常を判断するための閾値を設定して、その閾値以上に振幅が達していない場合に、異常が発生したと判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-118057公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、発振信号の振幅を検出し、振幅の検出値と閾値によって故障を判断している。このため振動子が特定の励振状態であるときの故障しか検出できず、精度の良い故障診断を実現することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、振動子と、前記振動子を複数の励振レベルで発振させることが可能に構成された発振回路と、前記発振回路から出力される発振信号の振幅検出を行う振幅検出回路と、複数の励振レベルでの発振時における前記振幅検出の結果に基づいて故障診断を行う故障診断回路と、を含む発振器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態の発振器の構成例。
図2】本実施形態の発振器の詳細な構成例。
図3】発振回路の構成例。
図4】振幅検出回路、故障診断回路の構成例。
図5】振幅検出回路の動作を説明する信号波形図。
図6】励振レベルを変化させたときの良品での周波数偏差の特性例。
図7】励振レベルを変化させたときの良品でのCI値の特性例。
図8】励振レベルを変化させたときの不良品での周波数偏差の特性例。
図9】励振レベルを変化させたときの不良品でのCI値の特性例。
図10】励振レベルを変化させたときの不良品での周波数偏差の特性例。
図11】励振レベルを変化させたときの不良品でのCI値の特性例。
図12】CI値と振幅の関係を示す図。
図13】各励振レベルでの発振信号の振幅に基づき故障診断を行う手法の説明図。
図14】発振器の動作を説明するフローチャート。
図15】発振動作検出回路と振幅検出回路を兼用する手法の説明図。
図16】振幅検出回路の他の構成例。
図17】他の構成例の動作を説明する信号波形図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0008】
1.発振器
図1に本実施形態の発振器4の構成例を示す。発振器4は、振動子10と発振回路30と振幅検出回路40と故障診断回路50を含む。
【0009】
振動子10は、電気的な信号により機械的な振動を発生する素子である。振動子10は、例えば水晶振動片などの振動片により実現できる。例えば振動子10は、カット角がATカットやSCカットなどの厚みすべり振動する水晶振動片、音叉型水晶振動片、又は双音叉型水晶振動片などにより実現できる。例えば振動子10は、SPXO(Simple Packaged Crystal Oscillator)の発振器に内蔵される振動子であってもよいし、恒温槽を備えない温度補償型水晶発振器(TCXO)に内蔵されている振動子や、恒温槽を備える恒温槽型水晶発振器(OCXO)に内蔵されている振動子であってもよい。なお本実施形態の振動子10は、例えば厚みすべり振動型、音叉型又は双音叉型以外の振動片や、水晶以外の材料で形成された圧電振動片などの種々の振動片により実現することも可能である。例えば振動子10として、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子や、シリコン基板を用いて形成されたシリコン製振動子としてのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子等を採用することも可能である。
【0010】
発振回路30は振動子10を発振させる回路である。例えば発振回路30は、振動子10を発振させることで発振信号を生成する。発振回路30は、例えば振動子10の一端及び他端に電気的に接続される発振用の駆動回路と、キャパシターや抵抗などの受動素子により実現できる。駆動回路は、例えばバイポーラートランジスターやCMOSのインバーター回路により実現できる。駆動回路は、発振回路30のコア回路であり、駆動回路が、振動子10を電圧駆動又は電流駆動することで、振動子10を発振させる。発振回路30としては、例えばインバーター型、ピアース型、コルピッツ型、又はハートレー型などの種々のタイプの発振回路を用いることができる。なお本実施形態における接続は電気的な接続である。電気的な接続は、電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。電気的な接続は受動素子等を介した接続であってもよい。
【0011】
振幅検出回路40は発振信号OSCの振幅を検出する。即ち振幅検出回路40は、発振回路30から出力される発振信号OSCの振幅検出を行う。発振信号OSCの振幅検出は、発振信号OSCの振幅に応じた電圧を検出できるものであればよく、例えば発振信号OSCのピーク電圧又はピークツーピーク電圧の検出により実現できる。或いは発振信号OSCの振幅検出は、正弦波の発振信号OSCの積分により得られるDC電圧の検出などにより実現しててもよい。
【0012】
故障診断回路50は発振器4の故障診断を行う。故障診断は例えば発振器4に異常が発生しているかを検出する処理であり、故障診断は異常検出と言うこともできる。故障診断は発振器4の故障診断であり、例えば振動子10の故障診断である。故障診断回路50は、例えば発振器4の故障診断として自己故障診断を行う。例えば故障診断回路50は、外部計測装置を用いることなく、自身の回路、処理で故障診断を行う。
【0013】
そして本実施形態では発振回路30は、振動子10を複数の励振レベルで発振させることが可能に構成されている。励振レベルはドライブレベルと呼ばれるものであり、振動子10の等価抵抗をRL、振動子に流れる電流値をIとした場合に、DL=RL×Iと表すことができる。電流値は例えば実効電流値である。発振回路30はこの励振レベルDLを可変に変化させることができるように構成されている。例えば発振回路30は、駆動回路が振動子10に流す電流を可変に制御することで、振動子10を複数の励振レベルで発振させることを可能にしている。
【0014】
そして振幅検出回路40は、発振回路30から出力される発振信号OSCの振幅検出を行い、故障診断回路50は、複数の励振レベルでの発振時における振幅検出の結果に基づいて故障診断を行う。例えば発振回路30が振動子10を第1励振レベル~第n励振レベルで発振させたときに、振幅検出回路40は、第1励振レベル~第n励振レベルでの発振時における発振信号OSCの振幅検出を行う。ここでnは2以上の整数である。そして故障診断回路50は、第1励振レベル~第n励振レベルでの発振時における振幅検出回路40での振幅検出結果に基づいて、発振器4の故障診断を行う。ここで振幅検出結果は、発振信号OSCの振幅自体であってもよいし、振幅に相当する検出結果であってもよい。
【0015】
以上のように本実施形態の発振器4では振動子10を複数の励振レベルで発振させることができる。そして複数の励振レベルでの振動子10の発振時における発振信号OSCの振幅検出が行われ、その振幅検出結果に基づいて、発振器4の故障診断が行われる。このようにすればクロック周波数を計測する外部計測装置などを用いなくても、発振器4の内部の回路だけで故障診断が可能になり、自己故障診断を実現できる。また振動子10の励振レベルを様々に変化させたときの振幅検出結果に基づいて故障を検出できるため、発振器4の回路だけで、精度の良い故障診断が可能になる。
【0016】
図2に本実施形態の発振器4の詳細な構成例を示す。発振器4は振動子10と回路装置20を含む。振動子10は回路装置20に電気的に接続されている。例えば振動子10及び回路装置20を収納するパッケージの内部配線、ボンディングワイヤー又は金属バンプ等を用いて、振動子10と回路装置20は電気的に接続されている。なお回路装置20、発振器4は図2の構成には限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に置き換えるなどの種々の変形実施が可能である。
【0017】
回路装置20は、IC(Integrated Circuit)と呼ばれる集積回路装置である。例えば回路装置20は、半導体プロセスにより製造されるICであり、半導体基板上に回路素子が形成された半導体チップである。そして回路装置20は、パッドPVDD、PGND、PX1、PX2、PCKを含む。なおクロック信号の出力イネーブル制御用のパッドなどを設けてもよい。パッドは、半導体チップである回路装置20の端子である。例えばパッド領域では、絶縁層であるパシベーション膜から金属層が露出しており、この露出した金属層により回路装置20の端子であるパッドが構成される。パッドPVDD、PGNDは、各々、電源パッド、グランドパッドである。外部の電源供給デバイスからの電源電圧VDDがパッドPVDDに供給される。パッドPGNDは、グランド電圧であるGNDが供給されるパッドである。GNDはVSSと呼ぶこともでき、グランド電圧は例えば接地電位である。本実施形態ではグランドを、適宜、GNDと記載する。例えばVDDは高電位側電源に対応し、GNDは低電位側電源に対応する。パッドPX1、PX2は、振動子10の接続用のパッドである。パッドPCKは、出力クロック信号CKQの出力用のパッドである。パッドPVDD、PGND、PCKは、各々、発振器4の外部接続用の外部端子である端子TVDD、TGND、TCKに電気的に接続される。例えばこれらの各パッドと各端子は、パッケージの内部配線、ボンディングワイヤー又は金属バンプ等を用いて電気的に接続される。
【0018】
発振回路30は、パッドPX1、PX2を介して振動子10に電気的に接続される。パッドPX1、PX2は、振動子接続用のパッドである。発振回路30の発振用の駆動回路34は、パッドPX1とパッドPX2の間に設けられる。また発振回路30は不図示の可変容量回路を含むことができる。可変容量回路は、例えば振動子10の一端及び他端の少なくとも一方での容量を変化させる回路であり、可変容量回路の容量の調整により、発振回路30の発振周波数を調整できるようになっている。即ち可変容量回路がパッドPX1、PX2の少なくとも一方に電気的に接続されることで、発振回路30の負荷容量を可変に調整できるようになる。可変容量回路は、例えばバラクター等の可変容量素子により実現できる。例えば可変容量回路は少なくとも1つの可変容量素子により構成される。
【0019】
波形整形回路38は、発振回路30からの発振信号OSCの波形整形を行って、クロック信号CKを出力する。例えば波形整形回路38は、正弦波の発振信号OSCの波形整形を行って、矩形波のクロック信号CKを出力する。
【0020】
制御回路60はロジック回路であり、種々の制御処理を行う。例えば制御回路60は、回路装置20の全体の制御を行ったり、回路装置20の動作シーケンスの制御を行う。また制御回路60は、発振回路30、振幅検出回路40、故障診断回路50、温度補償回路70、電源回路90、又はメモリー68等の制御を行ってもよい。制御回路60は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線によるASIC(Application Specific Integrated Circuit)の回路により実現できる。
【0021】
メモリー68は回路装置20で用いられる各種の情報を記憶する。メモリー68は、例えば不揮発メモリーなどである。不揮発性メモリーはFAMOS(Floating gate Avalanche injection MOS)メモリー又はMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)メモリー等のEEPROMであるが、これに限らず、OTP(One Time Programmable)メモリー又はヒューズ型ROM等であってもよい。或いはメモリー68はRAM等の揮発性のメモリーにより実現してもよい。
【0022】
温度補償回路70は、発振回路30の発振周波数の温度補償を行う。温度補償は、温度変動による発振周波数の変動を抑制して補償する処理である。具体的には温度補償回路70は、温度センサー72からの温度検出信号に基づいて温度補償を行う。例えば温度補償回路70は、温度センサー72からの温度検出電圧に基づいて温度補償電圧を生成し、生成された温度補償電圧を、発振回路30が有する可変容量回路に対して出力することで、温度補償を行う。この場合には発振回路30の可変容量回路は、バラクター等の可変容量素子により実現される。例えば振動子10の周波数温度特性を補償する温度補償電圧が多項式により近似される場合に、温度補償回路70は、当該多項式の係数情報に基づいてアナログ方式の温度補償を行う。或いは温度補償回路70がデジタル方式の温度補償を行うようにしてもよい。この場合には、可変容量回路は、例えばキャパシターアレイと、キャパシターアレイに接続されるスイッチアレイとにより実現でき、温度補償回路70は、例えばロジック回路により実現できる。
【0023】
温度センサー72は温度を検出するセンサーである。具体的には温度センサー72は、環境の温度に応じて変化する温度依存電圧を、温度検出電圧として出力する。具体的には温度センサー72は、例えばPN接合の順方向電圧が有する温度依存性を用いることで、温度に依存して電圧が変化する温度検出電圧を出力する。なお温度センサー72としてデジタル方式の温度センサー回路を用いる変形実施も可能である。この場合には温度検出データをD/A変換して温度検出電圧を生成すればよい。
【0024】
出力回路80は、発振信号OSCに基づき生成されたクロック信号CKをバッファリングして出力する回路である。例えば出力回路80は、クロック信号CKをバッファリングして、出力クロック信号CKQとしてパッドPCKに出力する。例えば出力回路80は、シングルエンドのCMOSの信号形式で出力クロック信号CKQを出力する。なお出力回路80が、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)、PECL(Positive Emitter Coupled Logic)、HCSL(High Speed Current Steering Logic)、又は差動のCMOS(Complementary MOS)等の信号形式で、差動のクロック信号を出力してよい。
【0025】
また発振回路30や波形整形回路38と出力回路80との間に、クロック信号CKの周波数を逓倍するPLL回路を設けてもよい。このようにすれば出力回路80は、発振周波数を逓倍した周波数の出力クロック信号CKQを出力できるようになる。
【0026】
電源回路90は、パッドPVDDからの電源電圧VDDやパッドPGNDからグランド電圧GNDが供給されて、回路装置20の内部回路用の種々の電源電圧を内部回路に供給する。例えば電源回路90は、電源電圧VDDをレギュレートしたレギュレート電源電圧を、発振回路30、波形整形回路38、振幅検出回路40等の回路装置20の各回路に供給する。
【0027】
そして図2では発振回路30は、可変電流源32と駆動回路34を含む。可変電流源32は電流値が可変の電流を駆動回路34に供給する。駆動回路34は、可変電流源32から供給される電流に基づいて振動子10を駆動する。例えば駆動回路34は、可変電流源32からの電流を振動子10に流すことで振動子10を駆動する。そして複数の励振レベルは、可変電流源32から供給される電流の値によって設定される。例えば可変電流源32が、電流値が互いに異なる第1電流~第n電流を駆動回路34に供給し、駆動回路34が、この第1電流~第n電流に基づいて振動子10を駆動することで、振動子10が複数の励振レベルで発振するようになる。例えばドライブレベルである励振レベルは、前述したようにDL=RL×Iと表すことができる。従って、可変電流源32が、駆動回路34に供給する電流Iを可変に変化させることで、振動子10が複数の励振レベルで発振するようになる。このようにすれば、可変電流源32を発振回路30に設けることで、振動子10を複数の励振レベルで発振させることが可能に構成される発振回路30を実現できるようになる。
【0028】
また振幅検出回路40は検波回路42を含む。検波回路42は、発振信号OSCの包絡線の検波を行う。例えば検波回路42は、発振信号OSCの包絡線を抽出する検波を行う。例えば検波回路42が正弦波の発振信号OSCのピーク電圧を検出してホールドすることなどにより、包絡線検波が実現される。そして故障診断回路50は、検波回路42の出力電圧に基づいて故障診断を行う。このようにすれば、検波回路42が発振信号OSCの包絡線の検波を行うことで、発振信号OSCのピーク電圧等が、発振信号OSCの振幅の電圧として検波回路42から出力されるようになる。そして故障診断回路50は、検波回路42の出力電圧を、発振信号OSCの振幅検出結果として、故障診断を行うことが可能になる。
【0029】
また振幅検出回路40は比較回路44を含む。比較回路44は、検波回路42の出力電圧と比較用電圧を比較して発振回路30の発振動作の検出信号を出力する。例えば比較回路44は、検波回路42の出力電圧が比較用電圧を超えた場合に、発振回路30の発振動作の検出信号をアクティブレベルにする。このようにすれば例えば発振器4の起動時において、発振信号OSCの振幅が徐々に大きくなり、比較用電圧に対応する振幅になった場合に、発振動作が正常に行われたことを、検出信号により制御回路60等に通知できるようになる。
【0030】
図3に発振回路30の詳細な構成例を示す。発振回路30は、可変電流源32と駆動回路34を含む。また発振回路30は容量回路CA1、CA2を含むことができる。
【0031】
可変電流源32と駆動回路34は、高電位側電源ノードである電源ノードと、低電位側電源ノードであるGNDノードとの間に直列に設けられる。容量回路CA1は、振動子10の一端が接続されるパッドPX1側のノードNA1とGNDノードの間に設けられる。容量回路CA2は、振動子10の他端が接続されるパッドPX2側のノードNA2とGNDノードの間に設けられる。容量回路CA1、CA2は、例えば可変容量回路である。そして容量回路CA1、CA2の容量が調整されることで、発振周波数が調整され、発振周波数の温度補償処理などが実現される。
【0032】
駆動回路34はバイポーラートランジスターBPを含む。バイポーラートランジスターBPのコレクターは、可変電流源32の電流Iの供給ノードであるノードNA3に接続され、ベースはノードNA1に接続され、エミッターはGNDノードに接続される。そしてコレクターとベースの間には抵抗RAが設けられている。
【0033】
可変電流源32は例えばカレントミラー回路により実現できる。カレントミラー回路は、不図示の基準電流生成回路からの基準電流IRFをカレントミラーした電流Iを駆動回路34に供給する。具体的には、カレントミラー回路は、ドレインとゲートが接続され、ソースからドレインに基準電流IRFが流れる第1トランジスターと、そのゲートが第1トランジスターのゲートに接続され、電流Iが流れる第2トランジスターとにより構成される。そして第2トランジスターのトランジスターサイズが可変になるように構成されており、これにより可変電流源32は、電流値が可変の電流Iを駆動回路34に供給する。具体的には、第2トランジスターは、例えば電源ノードとノードNA3の間に並列接続された複数のユニットトランジスターと、スイッチ回路とにより構成できる。スイッチ回路により複数のユニットトランジスターの中から選択されたユニットトランジスターの個数に応じて、電流Iの電流値が可変に設定される。そして駆動回路34は可変電流源32からの電流Iにより振動子10を駆動しており、電流Iの電流値が変化することで、振動子10が複数の励振レベルで発振するようになる。そして図3では、パッドPX1側であるXI側の発振信号OSCが発振回路30から出力される。
【0034】
図4に振幅検出回路40、故障診断回路50の構成例を示す。振幅検出回路40は、検波回路42と比較回路44を含む。
【0035】
検波回路42は、トランジスターTB1、電流源IS1、電圧源VBS、抵抗RB1、キャパシターCB1、CB2を含む。トランジスターTB1、電流源IS1は、電源ノードとGNDノードの間に直列に設けられる。電流源IS1とキャパシターCB2は、トランジスターTB1のドレインのノードNB1とGNDノードの間に並列に設けられる。トランジスターTB1はN型のトランジスターであり、N型のトランジスターTB1のオープンドレイン接続の構成になっている。
【0036】
キャパシターCB1は、発振信号OSCの入力ノードと、トランジスターTB1のゲートのノードNB2の間に設けられる。また抵抗RB1、電圧源VBSはノードNB2とGNDノードの間に直列に設けられる。キャパシターCB1はDCカット用のキャパシターであり、このキャパシターCB1により、発振信号OSCのDC成分がカットされAC成分がノードNB2に伝達されるようになる。電圧源VBSは、DC成分がカットされた発振信号OSCの振幅中心電圧に対応するバイアス電圧を設定する。ノードNB1には電圧をホールドするためのキャパシターCB2が設けられており、電流源IS1の電流を流す能力は、トランジスターTB1の電流供給能力よりも十分に小さくなっている。これによりトランジスターTB1のドレインのノードNB1に、発振信号OSCのピーク電圧がホールドされるようになり、発振信号OSCの包絡線が検波されて、ピーク電圧に対応する出力電圧VDQが検波回路42から出力されるようになる。
【0037】
比較回路44は、トランジスターTB2、電流源IS2、電圧源VCS、抵抗RB2、キャパシターCB3、コンパレーターCPBを含む。トランジスターTB2、電流源IS2は、電源ノードとGNDノードの間に直列に設けられる。電流源IS2とキャパシターCB3は、トランジスターTB2のドレインのノードNB3とGNDノードの間に並列に設けられる。トランジスターTB2はN型のトランジスターであり、N型のトランジスターTB2のオープンドレイン接続の構成になっている。また抵抗RB2、電圧源VCSは、トランジスターTB2のゲートのノードNB4とGNDノードの間に直列に設けられる。このように比較回路44は、検波回路42と同等のレプリカ構成になっており、回路の対称性が維持される構成となっている。そして電圧源VCSによりノードNB3に比較用電圧VCPが出力されるようになる。またコンパレーターCPBの第1入力端子である反転入力端子には、比較用電圧VCPが入力され、コンパレーターCPBの第2入力端子である非反転入力端子には、検波回路42の出力電圧VDQが入力される。そしてコンパレーターCPBは、出力電圧VDQが比較用電圧VCPを超えると、検出信号SDTをアクティブレベルにする。
【0038】
故障診断回路50は、A/D変換回路52と処理回路54を含む。A/D変換回路52は、検波回路42の出力電圧VDQをA/D変換して、出力電圧VDQに対応するA/D変換データを出力する。このA/D変換データは、発振信号OSCの振幅検出結果である振幅データである。処理回路54は、この振幅データに基づいて、故障診断の判断処理等を行う。処理回路54は例えばロジック回路により構成される。
【0039】
図5は振幅検出回路40の動作を説明する信号波形図である。電源投入等による発振器4の起動時に、負論理のイネーブル信号XENがアクティブレベルであるローレベルになり、発振回路30の動作がイネーブルになる。これにより図5に示すように発振信号OSCの振幅が成長して徐々に大きくなる。そして検波回路42が発振信号OSCの包絡線を検波し、検波回路42の出力電圧VDQが比較用電圧VCPを超えると、比較回路44が出力する検出信号SDTがアクティブレベルになる。これにより発振信号OSCの振幅レベルが規定振幅レベルに達して、正常な動作が可能になったことを、制御回路60等に通知できるようになる。
【0040】
2.複数の励振レベルでの振幅検出による故障診断
本実施形態では、振動子10を複数の励振レベルで発振させたときの発振信号OSCの振幅検出結果に基づいて故障診断を行う手法を採用している。以下では本実施形態の故障診断手法について詳細に説明する。
【0041】
図6は励振レベルを変化させたときの良品での周波数偏差の特性例である。横軸は励振レベルであり、対数スケールになっている。縦軸は周波数偏差である。周波数偏差は公称周波数に対する周波数のずれを表すものである。図6に示すように、良品の発振器4では、励振レベルが高いときに周波数偏差が若干上昇するだけであり、ヒステリシス特性も殆ど生じていない。図7は、励振レベルを変化させたときの良品でのCI値の特性例である。横軸は励振レベルであり、対数スケールになっている。縦軸はCI値である。CI値は発振時の振動子10を等価回路で表現したときの直列抵抗成分に対応するものであり、直列共振周波数における等価抵抗値である。図7に示すように、良品の発振器4では、励振レベルを変化させたときにもCI値は殆ど変化しない。
【0042】
図8は励振レベルを変化させたときの不良品での周波数偏差の特性例である。図8に示すように、不良品では、励振レベルを変化させたときに周波数偏差も図6の良品に比べて大きく変化する。また励振レベルを変化させたときの周波数偏差にヒステリシス特性が現れている。即ち低い励振レベルから高い励振レベルへと増加させたときの各励振レベルでの周波数偏差と、高い励振レベルから低い励振レベルへと減少させたときの各励振レベルでの周波数偏差とが異なるというヒステリシス特性になっている。図9は、励振レベルを変化させたときの不良品でのCI値の特性例である。CI値についても、図8の周波数偏差と同様に、励振レベルを変化させたときにCI値が大きく変化してしまうと共に、励振レベルを増加させたときのCI値と減少させたときのCI値が異なるというヒステリシス特性が現れている。
【0043】
図10図11も、励振レベルを変化させたときの不良品での周波数偏差、CI値の特性例である。図10図11の不良品においても、励振レベルを変化させたときに周波数偏差、CI値が大きく変化すると共にヒステリシス特性が現れている。
【0044】
例えば振動子10に異物が付着するなどの不具合が発生すると、異物による不要な共振周波数が原因となって、励振レベルを変化させたときに周波数偏差やCI値に大きな変化が生じる。そしてDLDの検査においては、ネットワークアナライザー等の外部計測装置によりクロック周波数等をモニターすることで、図8図10に示すような周波数偏差が異常となる不良品を検出できる。
【0045】
しかしながら、DLDの検査にはクロック周波数等を測定する外部計測装置が必要であり、発振器4の内部回路による自己故障診断を実現できないという課題がある。一方、励振レベルを変化させずに発振信号の振幅を検出して異常を判断する手法では、特定の励振レベルでの振動子の発振信号の振幅しか検出しないため、図8図11に示すような不良品の異常な特性を検出できないという問題がある。例えば図8図10では励振レベルを変化させることで周波数偏差の異常を検出しているが、特定の励振レベルだけではこのような異常を検出できない。
【0046】
そこで本実施形態では、振動子10の励振レベルを変化させながら発振信号OSCの振幅を検出することで、故障診断を実現している。例えば図12はCI値と発振信号OSCの振幅の関係を示す図である。図12では発振信号OSCのピークツーピーク電圧を振幅としている。図12に示すようにCI値が増加するにつれて振幅は小さくなる。例えば図3において振動子10の両端には負荷容量が存在し、この負荷容量と振動子10の等価抵抗とにより、振動子10の振幅が減少する。例えば等価抵抗に対応するCI値が高くなるほど、負荷容量とCI値によるCRの特性により振動子10の振幅が減少する。このようにCI値が増加するにつれて振幅が単調減少する特性であるため、図8図10のようなCI値の異常は、振幅の異常として検出できるようになる。従って、本実施形態のように、振動子10を複数の励振レベルで発振させ、複数の励振レベルでの発振信号OSCの振幅を検出し、複数の励振レベルでの発振時における振幅検出の結果を判断することで、発振器4の故障診断を実現できるようになる。そして、この故障診断は、発振器4の発振回路30、振幅検出回路40、故障診断回路50により実現でき、ネットワークアナライザー等の外部計測装置が不要であるため、発振器4の内部回路による自己故障診断の実現が可能になる。また本実施形態では、特定の励振レベルではなく、複数の励振レベルでの発振信号OSCの振幅を検出しているため、図8図10のように不良品における周波数偏差やCI値の特性が製品毎に異なっていても、複数の励振レベルでの振幅検出結果から、不良品を精度良く検出することが可能になる。
【0047】
例えば本実施形態では故障診断回路50は、振動子10が第1励振レベル~第n励振レベルで駆動されたときの発振信号OSCの振幅である第1振幅~第n振幅に基づいて、故障診断を行う。例えば図3の発振回路30の可変電流源32が、互いに異なる第1電流~第n電流を駆動回路34に供給することで、駆動回路34は振動子10を第1励振レベル~第n励振レベルで駆動することができる。そして図4の振幅検出回路40の検波回路42が、第1励振レベル~第n励振レベルで振動子10が発振しているときの発振信号OSCの包絡線を検波することで、発振信号OSCの振幅に対応する出力電圧VDQが出力されるようになる。そして故障診断回路50は、第1励振レベル~第n励振レベルで振動子10が発振している時の振幅に対応する出力電圧VDQに基づいて、故障診断を行う。例えば故障診断回路50は、第1励振レベル~第n励振レベルでの振幅が、図7のCI値に対応するような振幅である場合には、故障は発生しておらず、発振器4は良品であると判断する。一方、故障診断回路50は、第1励振レベル~第n励振レベルでの振幅が、図9図11のCI値に対応するような振幅である場合には、故障が発生しており、発振器4は不良品であると判断する。このようにすれば、振動子10の励振レベルを第1励振レベル~第n励振レベルというように変化せて、第1励振レベル~第n励振レベルでの発振信号OSCの振幅である第1振幅~第n振幅を検出することで、発振器4の故障を精度良く検出できるようになる。
【0048】
また故障診断回路50は、第1励振レベル~第n励振レベルでの発振信号OSCの第1振幅~第n振幅が所与の範囲にあるか否かを検出することで、故障診断を行う。ここで所与の範囲は、発振器4に故障が発生していなく良品であると判断する基準となる許容範囲である。例えば図6図7に示すような多数の良品の検査結果に基づいて、許容範囲である所与の範囲を規定できる。そして第1励振レベル~第n励振レベルでの第1振幅~第n振幅が、所与の範囲内であれば、故障が発生していなく良品であると判断し、所与の範囲外であれば、故障が発生しており不良品であると判断する。例えば図13では、励振レベルDLV1~DLVnでの発振信号OSCの振幅AP1~APnが検出されている。励振レベルDLV1~DLVnは第1励振レベル~第n励振レベルであり、振幅AP1~APnは第1振幅~第n振幅である。そして本実施形態では、振幅AP1~APnが、所与の範囲である許容範囲TLR1~TLRn内にあるか否かを検出することで、故障診断を行う。このようにすれば、第1励振レベル~第n励振レベルでの第1振幅~第n振幅が所与の範囲にあるか否かを検出するという簡素な処理で、故障診断を実現できるようになる。従って、小規模な回路構成で、良品か不良品かを判断する故障診断を実現できるようになる。
【0049】
例えば本実施形態では、図13の励振レベルDLV1~DLVnに対応づけて、振幅AP1~APnの許容範囲TLR1~TLRnをテーブルデータとして、例えば図2の不揮発性メモリー等のメモリー68に記憶しておく。そして故障診断回路50は、このテーブルデータに基づいて、DLV1~DLVnの各励振レベルで検出された各振幅が、各振幅に対応するTLR1~TLRnの各許容範囲内にあるか否かを判断する。この場合にTLR1~TLRnの各許容範囲は各振幅毎に異ならせてもよいし、同じレンジの範囲にしてもよい。このようにすればテーブルデータを用いた簡素な処理で故障診断の処理を実現できるようになる。
【0050】
また故障診断回路50は、振動子10が駆動される励振レベルを低い励振レベルから高い励振レベルへと変化させたときの振幅検出結果と、振動子10が駆動される励振レベルを高い励振レベルから低い励振レベルに変化させたときの振幅検出結果とに基づいて、故障診断を行ってもよい。例えば振動子10の励振レベルを、低い励振レベルであるDLV1から、高い励振レベルであるDLVnに変化させたときの発振信号OSCの振幅を、例えばAPX1~APXnとして検出して保持しておく。また振動子10の励振レベルを、高い励振レベルであるDLVnから、低い励振レベルであるDLV1に変化させたときの発振信号OSCの振幅を、例えばAPYn~APY1として検出して保持しておく。そして例えば各励振レベルでの各振幅の差の絶対値である|APX1-APY1|、|APX2-APY2|・・・|APXn-APYn|が、所与の範囲にあるか否かを判断することで故障診断を行う。例えば|APX1-APY1|・・・|APXn-APYn|が、良品の許容範囲である所与の範囲内にある場合には良品と判断し、所与の範囲外である場合には不良品と判断する。この場合の所与の範囲も、図6図7に示すような多数の良品の検査結果に基づき設定できる。このようにすれば、図8図11に示すように励振レベルを増加させたときと減少させたときとで異なる特性となるヒステリシス特性が現れた場合に、これを不良品として故障が発生したと判断できるようになる。
【0051】
図14は本実施形態の動作を説明するフローチャートである。まず電源投入等により発振器4が起動される(ステップS1)。そして発振信号OSCの振幅が所定振幅になったか否かが判断される(ステップS2)。具体的には図4において比較回路44が、検波回路42の出力電圧VDQが比較用電圧VCPを超えたか否かを検出することで、発振信号OSCの振幅が所定振幅になったか否かが判断される。そして振幅が所定振幅になった場合には、図5に示すように比較回路44の検出信号SDTがアクティブレベルになり、発振回路30による発振動作が正常に起動したことが制御回路60に通知される。その後、発振器4の動作モードが故障診断モードに設定される(ステップS3)。そして故障診断モードでは、図3の可変電流源32により振動子10の励振レベルを変化させて、各励振レベルでの発振信号OSCの振幅検出結果が取得される(ステップS4)。例えば故障診断回路50が、検波回路42の出力電圧VDQをA/D変換することで振幅検出結果が取得される。そして振幅検出結果に基づいて故障診断が行われる(ステップS5)。例えば故障診断回路50が、図13で説明した手法により各励振レベルでの振幅が許容範囲内にあるか否かを判断することで、故障診断が実現される。
【0052】
このように本実施形態では故障診断回路50は、発振器4の起動時に行われる故障診断モードにおいて故障診断を行う。例えば図14では、ステップS1で発振器4が起動されて、ステップS2で発振信号OSCの振幅が適切な振幅になったことが検出された後に、故障診断モードに設定される。このようにすれば、発振器4の起動時における故障診断モードにおいて発振器4の自己故障診断を行うことが可能になる。従って、発振器4の起動毎に毎回、故障診断が行われるようになるため、発振器4の信頼性を大幅に向上できるようになる。なお外部の処理装置等からの指示により、発振器4のクロック出力を一時的に停止し、停止期間において故障診断モードに設定して、発振器4の故障を診断するような変形実施も可能である。
【0053】
また本実施形態では、図15に示すように発振器4は、発振回路30の発振動作を検出する発振動作検出回路41を含み、振幅検出回路40は、発振動作検出回路41が含む発振動作検出用の振幅検出回路と兼用されるものであってもよい。例えば図14のステップS1、S2のように発振器4の起動時に発振振幅が規定の振幅になったかを検出するために発振動作検出回路41が設けられる。そしてこの発振動作検出回路41には、図15に示すように、発振信号OSCの検波回路42と、検波回路42の出力電圧VDQと比較用電圧VCPを比較する比較回路44を含む振幅検出回路40が設けられる。本実施形態では、このように発振動作検出回路41が含む振幅検出回路40を、発振器4の故障診断用の振幅検出回路と兼用する。このようにすれば、故障診断のために振幅検出回路を新たに設けなくても、発振動作検出回路41の振幅検出回路40を有効活用して故障診断を実現できるため、発振器4に設けられる回路の小規模化を実現できるようになる。
【0054】
なお振幅検出回路40等については本実施形態で説明した構成には限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図16の振幅検出回路40では、基準電圧VRFを、ラダー抵抗回路45を構成する抵抗R1~Rmにより抵抗分割する。またラダー抵抗回路45の各抵抗分割ノードに各スイッチが配置されるスイッチ回路46を設ける。そして図17の信号波形図に示すように、スイッチ回路46の各スイッチをスイッチ信号SWSELにより時分割にオンしていくことで、比較用電圧VCPを徐々に大きくする。そしてコンパレーターCPCにより、検波回路42の出力電圧VDQと比較用電圧VCPを比較し、比較用電圧VCPが出力電圧VDQを超えたところで、振幅判定信号JAPがアクティブレベルであるハイレベルになる。これにより発振信号OSCの振幅をデジタルデータとして検出できるようになる。
【0055】
また検波回路42の構成も図4の構成には限定されず、例えば検波回路42としてダイオードとキャパシターを用いた包絡線検波回路などを用いてもよい。また例えば正弦波の発振信号OSCの半波整流等の整流を行って、整流後の信号からDC電圧を生成して、振幅を表す出力電圧VDQとして出力するようにしてもよい。
【0056】
以上に説明したように本実施形態の発振器は、振動子と、振動子を複数の励振レベルで発振させることが可能に構成された発振回路と、発振回路から出力される発振信号の振幅検出を行う振幅検出回路と、複数の励振レベルでの発振時における振幅検出の結果に基づいて故障診断を行う故障診断回路を含む。
【0057】
本実施形態によれば、複数の励振レベルで振動子を発振させたときに発振信号の振幅検出結果に基づいて、故障診断が行われるようになる。これにより、精度の良い故障診断が可能になる。
【0058】
また本実施形態では、発振回路は、可変電流源と、可変電流源から供給される電流に基づいて振動子を駆動する駆動回路と、を含み、複数の励振レベルは、可変電流源から供給される電流の値によって設定されてもよい。
【0059】
このようにすれば、可変電流源を発振回路に設けることで、振動子を複数の励振レベルで発振させることが可能に構成される発振回路を実現できるようになる。
【0060】
また本実施形態では、振幅検出回路は、発振信号の包絡線の検波回路を含み、故障診断回路は、検波回路の出力電圧に基づいて故障診断を行ってもよい。
【0061】
このようにすれば、検波回路が発振信号の包絡線の検波を行うことで、発振信号に対応する出力電圧を出力できるようになる。
【0062】
また本実施形態では、振幅検出回路は、検波回路の出力電圧と比較用電圧を比較して発振回路の発振動作の検出信号を出力する比較回路を含んでもよい。
【0063】
このようにすれば例えば発振器の起動時において、発振信号の振幅が大きくなり、比較用電圧に対応する振幅になった場合に、発振動作が正常に行われたことを、検出信号により通知できるようになる。
【0064】
また本実施形態では、故障診断回路は、振動子が第1励振レベル~第n励振レベル(nは2以上の整数)で駆動されたときの発振信号の振幅である第1振幅~第n振幅に基づいて、故障診断を行ってもよい。
【0065】
このようにすれば、振動子の励振レベルを第1励振レベル~第n励振レベルというように変化せて、第1振幅~第n振幅を検出することで、発振器の故障を精度良く検出できるようになる。
【0066】
また本実施形態では、故障診断回路は、第1振幅~第n振幅が所与の範囲にあるか否かを検出することで、故障診断を行ってもよい。
【0067】
このようにすれば、第1励振レベル~第n励振レベルでの第1振幅~第n振幅が所与の範囲にあるか否かを検出するという簡素な処理で、故障診断を実現できるようになる。
【0068】
また本実施形態では、故障診断回路は、振動子が駆動される励振レベルを低い励振レベルから高い励振レベルへと変化させたときの振幅検出結果と、振動子が駆動される励振レベルを高い励振レベルから低い励振レベルに変化させたときの振幅検出結果とに基づいて、故障診断を行ってもよい。
【0069】
このようにすれば、励振レベルを増加させたときと減少させたときとで異なる特性となるヒステリシス特性が現れた場合に、故障が発生したと判断できるようになる。
【0070】
また本実施形態では、故障診断回路は、発振器の起動時に行われる故障診断モードにおいて故障診断を行ってもよい。
【0071】
このようにすれば、発振器の起動時における故障診断モードにおいて発振器の自己故障診断を行うことが可能になる。
【0072】
また本実施形態では、発振回路の発振動作を検出する発振動作検出回路を含み、振幅検出回路は、発振動作検出回路が含む発振動作検出用の振幅検出回路と兼用されてもよい。
【0073】
このようにすれば、故障診断のために振幅検出回路を新たに設けなくても、発振動作検出回路の振幅検出回路を有効活用して故障診断を実現できるようになる。
【0074】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また発振器、回路装置の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0075】
4…発振器、10…振動子、20…回路装置、30…発振回路、32…可変電流源、34…駆動回路、38…波形整形回路、40…振幅検出回路、41…発振動作検出回路、42…検波回路、44…比較回路、45…ラダー抵抗回路、46…スイッチ回路、50…故障診断回路、52…A/D変換回路、54…処理回路、60…制御回路、68…メモリー、70…温度補償回路、72…温度センサー、80…出力回路、90…電源回路、BP…バイポーラートランジスター、CA1、CA2…容量回路、CB1、CB2、CB3…キャパシター、CK…クロック信号、CKQ…出力クロック信号、CPB、CPC…コンパレーター、OSC…発振信号、SDT…検出信号、TB1、TB2…トランジスター、VDQ…出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17